説明

流体噴射装置

【課題】装置の大型化及びコスト増を抑制できる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】所定の光の照射を受けて硬化する材料を含む流体を記録媒体Wに向けて噴射する噴射ヘッド42と、記録媒体に向けて所定の光を照射する照射装置20と、所定の光が有するエネルギーの少なくとも一部を用いて、噴射ヘッドからの噴射前の流体を加熱する加熱装置25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、普通紙を代表とする様々な記録媒体に対して印刷可能な記録装置として、インクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、記録ヘッドの記録媒体に対向する面に設けられた吐出口(以下、ノズル)から色材であるインクを直接記録媒体に対して吐出して、記録媒体上に着弾、浸透若しくは定着させることで記録媒体上に画像を形成する記録装置であり、工程の単純さ、印刷時における静粛性及び印字、印画品質の点で非常に優れた特徴がある。
【0003】
近年、インクジェット記録装置を用いて、樹脂や金属等のインク吸収性を有さない種々の材料を記録媒体として画像記録を行う場合があり、このような記録媒体に対してインクを定着させるために、光硬化型インクが用いられていることが多い。通常、この光硬化型インクを用いたインクジェット記録装置には、インクを硬化させるための紫外線照射装置が配設されており、記録媒体に画像を記録する際は、インクを記録媒体に着弾させた直後に、インクの硬化が可能な一定の照射時間及び照射回数の条件下で、紫外線照射装置に具備された光源から紫外線を照射してインクを硬化定着させている。
【0004】
紫外線硬化型インクは、従来の水性インクに比べて温度に対する粘度変化の勾配が大きく、特に温度が低いほど温度に対する粘度の変化量が大きい傾向がある。一方、インクを吐出するためのノズルを有するインクジェット方式のプリントヘッドは、吐出するインク滴の速度、大きさといった特性がインクの粘度に大きく影響を受けるため、プリントヘッド内のインクは、常に所定の粘度に保たれることが望ましい。
そこで、特許文献1には、ヘッド部を加熱して所定の温度に維持する加熱手段を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−182103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
特許文献1に記載された技術のように、専用の加熱手段を設けた場合、装置の大型化及びコスト増を招くという問題を生じさせてしまう。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、装置の大型化及びコスト増を抑制できる流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の流体噴射装置は、所定の光の照射を受けて硬化する材料を含む流体を記録媒体に向けて噴射する噴射ヘッドと、前記記録媒体に向けて前記所定の光を照射する照射装置と、前記所定の光が有するエネルギーの少なくとも一部を用いて、前記噴射ヘッドからの噴射前の前記流体を加熱する加熱装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、本発明の流体噴射装置では、流体を硬化させるために用いる所定の光のエネルギーの少なくとも一部で、前記噴射ヘッドからの噴射前の流体を加熱するため、専用の加熱手段を設ける必要がなくなり装置の大型化及びコスト増を抑制することが可能になる。
【0010】
上記の流体噴射装置における前記加熱装置としては、前記所定の光の光源部を収容するとともに、前記噴射ヘッドに前記流体を供給する流路部が外周に巻回された筺体を含む構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、所定の光のエネルギーで加熱される筺体との間の熱伝導で流路部における流体を加熱することが可能になる。
【0011】
また、上記の流体噴射装置における前記加熱装置としては、前記所定の光の照射方向を、前記記録媒体に向く方向と、前記噴射ヘッドに向く方向及び該噴射ヘッドに前記流体を供給する流路部に向く方向のいずれか一方とに切り替える切替装置を含むことを特徴とするものである。
これにより、本発明では、前記所定の光の照射方向を切り替えて、前記噴射ヘッドに向く方向及び該噴射ヘッドに前記流体を供給する流路部に向く方向のいずれか一方とすることにより、照射される光のエネルギーにより、噴射ヘッドまたは流路部における流体を加熱することができる。
【0012】
また、上記の流体噴射装置においては、前記記録媒体に向けての前記所定の光の照射状況に応じて、前記記所定の光の照射方向を制御する制御装置を有する構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、流体を硬化させるために記録媒体に向けて所定の光を照射している間を除いて、前記所定の光の照射方向を切り替えて、前記噴射ヘッドに向く方向及び該噴射ヘッドに前記流体を供給する流路部に向く方向のいずれか一方とすることができる。
【0013】
また、上記の流体噴射装置における前記照射装置としては、前記記録媒体と前記噴射ヘッドとの走査方向に関して、前記噴射ヘッドを挟んだ両側に設けられ、前記加熱装置としては、複数の前記照射装置のそれぞれに対応して設けられる構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、噴射ヘッドに対して走査方向の後方側に位置する照射装置は、記録媒体上の流体を硬化させるために用い、走査方向の前方側に位置する照射装置に対応して設けられた加熱装置を用いて噴射ヘッドまたは流路部における流体を加熱することができる。
【0014】
また、上記の流体噴射装置における前記所定の光としては、赤外線の波長帯域を含む構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、噴射ヘッドまたは流路部における流体を効果的に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る流体噴射装置の平面模式図である。
【図2】キャリッジにヘッドユニットが搭載された側面図である。
【図3】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図4】ワークの繰出し動作を説明した図である。
【図5】第2実施形態に係るヘッドユニットを示す図である。
【図6】他の実施形態に係るヘッドユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の流体噴射装置の実施の形態を、図1ないし図6を参照して説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0017】
(第1実施形態)
図1に示すように、インクジェットプリンター(流体噴射装置)301は、帯状のワーク(記録媒体)W上に機能液滴(流体、インク)による描画・印刷を行う描画装置302と、ロール状に巻回された長尺のワークWを繰出す繰出し装置303と、繰出されたワークWを所定の送り経路に沿って送るための送り装置304と、ワークWを巻き取る巻取り装置305と、を備えている。
【0018】
すなわち、このプリンター301は、ロール・ツー・ロール方式で処理を行うものであり、先ず、繰出し装置303により繰出されたワークWを、送り装置304が送り経路に沿って描画装置302に送ってゆく。そして、描画装置302によりワークWに描画処理を行った後、送り装置304により描画装置302からワークWの処理済みの部分を送り出すと共に、送り出された処理済みのワークWを巻取り装置305で順次巻き取るようになっている。なお、プリンター301には、各装置を統括制御する制御装置306が設けられており、上記一連の動作は、制御装置306による制御に基づいて行われる。
【0019】
描画装置302は、機台311と、機台311上の全域に広く載置され、記録ヘッド(噴射ヘッド)42を有する描画手段12と、描画手段12に添設するように機台311上に載置したヘッド保守手段331と、を備えている。
【0020】
描画手段12は、送り装置304によって導入されたワークWをセットするセットテーブル316と、複数の記録ヘッド42を搭載したヘッドユニット322と、ヘッドユニット322を垂設して支持するキャリッジ(支持部材)321と、キャリッジ321を介し、機台311上においてヘッドユニット322をX軸方向およびY軸方向に移動させるX・Y移動機構312と、キャリッジ321の温度を調整する温度調整装置30(図2参照)とを有している。 なお、ここでは、ワークWの搬送方向(ワークWの長手方向)をX軸方向とし、X軸方向と直交し、かつ水平な方向をY軸方向とし、これらX軸方向及びY軸方向と直交する鉛直方向をZ軸方向として説明を行うものとする。
【0021】
X・Y移動機構312は、機台311上の描画スペースに配設され、描画スペース内においてワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル313と、機台に立設された一対の支柱318を介してX軸テーブル313を直交に跨いで配設され、キャリッジ321を介してヘッドユニット322をY軸方向に移動させるY軸テーブル314と、を有している。
【0022】
X軸テーブル313は、X軸方向の駆動系であるX軸モータ(図示省略)駆動のX軸スライダ315に、セットテーブル316をX軸方向に移動自在に搭載して構成されている。同様に、Y軸テーブル314は、Y軸方向の駆動系であるY軸モータ(図示省略)駆動のY軸スライダ317を有し、これにキャリッジ321をY軸方向に移動自在に搭載して構成されている。
【0023】
温度調整装置30は、例えばペルチェ素子を有しており、ペルチェ素子への通電を切り替えることによりキャリッジ321の温度を調整する。温度調整装置30の駆動(すなわちペルチェ素子への通電)は、制御装置306によって制御される。
【0024】
図2に示すように、ヘッドユニット322には、ワークWに対向させて、記録ヘッド42、紫外線照射部(照射装置)20、環境計測装置21が設けられている。記録ヘッド42は、図3に示すように、記録ヘッド42は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針52を有する機能液導入部51と、機能液導入部51に連なる2連のヘッド基板53と、機能液導入部51の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体54と、を備えている。接続針52は、図外の機能液タンクに、図2に示す流路管(流路部)60を介して接続され、機能液導入部51に機能液を供給する。ヘッド本体54は、キャビティ55(ピエゾ圧電素子)と、多数の噴射ノズル58が開口したノズル面57を有するノズルプレート56と、で構成されている。記録ヘッド42を吐出駆動すると、(ピエゾ圧電素子に電圧が印加され)キャビティ55のポンプ作用により、噴射ノズル58から機能液滴が噴射される。また、記録ヘッド42は、図示しないヘッドプレート介してヘッドユニット322に複数保持されており、各ノズル列がX軸方向に連続(一部が重複)するように配置され、全記録ヘッド42のノズル列により1描画ラインが形成されている。1描画ラインの長さは、上記したワークWの実描画領域のX軸方向の幅長に対応している。
なお、図2における記録ヘッド42は、簡略的に図示されている。
【0025】
紫外線照射部20は、制御装置306の制御によりワークに向けて紫外線(所定の光)を照射するものであり、記録ヘッド42を挟んだY軸方向両側に設けられている。各紫外線照射部20は、上記紫外線の光源部が内部に収容されたランプハウス(筺体)25をそれぞれ備えている。光源部としては、上記紫外線の波長帯域や赤外線の波長帯域を含む光を発光する、例えば水銀ランプ等が用いられる。
【0026】
図2に示すように、各ランプハウス25の外周には、機能液タンクと記録ヘッド42との間を接続する上述した流路管60がそれぞれ巻回されている。本実施形態では、この流路管60が巻回されたランプハウス25が流路管60内の機能液を加熱するための加熱装置を構成している。
【0027】
環境計測装置21は、記録ヘッド42及びワークWの周辺環境状態を計測するものであり、ここでは温度センサで構成されており、−Y側に位置する紫外線照射部20の−Y側に配置されている。環境計測装置21による環境計測処理は制御装置306により制御され、計測結果は制御装置306に出力されて処理される。
これら、記録ヘッド42、紫外線照射部20及び環境計測装置21は、キャリッジ321に保持されて一体的にY軸方向に移動する。
【0028】
上記の描画手段12による描画処理は、X軸テーブル313の駆動によるワークWのX軸方向への移動およびこれに同期した機能液滴吐出ヘッド323の吐出駆動から成る主走査と、ヘッドユニット322のY軸方向への移動である副走査と、を交互に繰り返すことにより、1タクト分の描画動作が行われる。
【0029】
ヘッド保守手段331のフラッシングユニット332は、セットテーブル316に支持されている。他方、ヘッド保守手段331の吸引ユニット333、ワイピングユニット334、および吐出不良検査ユニット335は、描画スペースおよびワークWの送り経路からY軸方向に外れた位置に配設されたユニット移動テーブル336により、X軸方向に移動可能に支持されている。上記のY軸テーブル314は、描画スペースからY軸方向に外れた位置までヘッドユニット322を移動可能に構成されており、ユニット移動テーブル336とY軸テーブル314が交差する領域が記録ヘッド42に保守を行う保守スペースとなっている。そして、保守スペースに臨んだヘッドユニット322に対し、吸引ユニット333、ワイピングユニット334、および吐出不良検査ユニット335を用いて保守を行う場合には、ユニット移動テーブル336を駆動して、各ユニットを保守スペース(ヘッドユニット322)に適宜臨ませるようになっている。
【0030】
送り装置304は、繰出し機台351上に配設され、図4に示すように、繰出しリール352から繰出されたワークWをセットテーブル316に送り込む繰出し側送りローラ341と、巻取り機台361に配設され、セットテーブル316から処理済みのワークWを送り出す巻取り側送りローラ342と、繰出し側送りローラ341を正逆回転させる繰出し側送りモータ343と、巻取り側送りローラ342を正逆回転させる巻取り側送りモータ344と、を備えている。繰出し側送りモータ343および巻取り側送りモータ344は、エンコーダ付のサーボモータまたはステッピングモータで構成されており、その回転量からワークWの送り量が制御装置306で制御される。
【0031】
また、制御装置306は、送り装置304における、繰出し側送りモータ343および巻取り側送りモータ344の回転量を調整することにより、ワークWに加わる搬送方向(X方向)の力、すなわち張力を制御することが可能である。
【0032】
図4中の符号381は、ワークWの繰出し不足を検出する繰出し側第1限界センサであり、符号382は、ワークWに予め作り込まれたチップ部品等が破壊されない限界位置を検出する繰出し側第2限界センサである。これら両センサ381、382により、繰出し用限界センサが構成されている。
【0033】
繰出し装置303は、描画処理中に1タクト分のワークWを送り装置304(繰出し側送りローラ341)に繰出すようになっている。本実施形態のプリンター301は、描画処理時にセットテーブル316をX軸方向に移動させる構成となっており、描画処理中にワークWを繰出しリール352から繰出すことにより、セットテーブル316の移動を許容する。
【0034】
巻取り装置305は、機台311の下流側に添設された巻取り機台361に設置されており、図外の巻取り支持フレームに回転自在に軸支され、送り装置304から送られてきた描画済みのワークWを巻き取る巻取りリール362と、巻取りリール362を正逆回転させる巻取りモータ363と、を備えている。そして、巻取りモータ363を正駆動して巻取りリール362を正回転させると、巻取り側送りローラ342からのワークWが巻取りリール362に巻き取られるようになっている。
【0035】
制御装置306は、上記描画装置302、繰出し装置303、送り装置304、巻取り装置305、記録ヘッド42、紫外線照射部20、撮像装置21等、プリンター301を構成する各種機器の動作を統括的に制御する。また制御装置306は、ワークWへ描画する際のスキャン回数(走査回数)、各スキャン動作で流体を噴射する位置情報等の印刷データを保持しており、描画処理(流体噴射処理)を行う際には、印刷データに基づいて上記プリンター301を構成する各種機器の動作を制御する。
【0036】
続いて、上記のプリンター301における印刷動作について説明する。
ワークWに記録を行う場合、図2に示すように、セットテーブル316上にワークWを配置し、キャリッジ321をY方向に走査移動させながら記録ヘッド42から機能液を噴射してワークW上に機能液を配置する。
【0037】
ワークW上に配置された機能液に対しては、記録ヘッド42に対して走査方向後方側に位置する紫外線照射部20から紫外線が照射される。機能液に紫外線が照射されることによって当該機能液は固化(硬化)し、ワークW上に定着する。このようにしてワークWへの記録が行われる。
【0038】
ここで、紫外線照射部20におけるランプハウス25は、光源部から照射される光のエネルギーにより加熱されることになる。そのため、ランプハウス25の外周に巻回された流路管60は、当該ランプハウス25を介して加熱される。そのため、機能液タンクから流路管60を介して供給される機能液は、流路管60を流動する間に加熱された状態で記録ヘッド42に導入される。
【0039】
このように、本実施形態では、紫外線照射部20から照射される光のエネルギーの一部を用いて、記録ヘッド42から噴射される前の機能液を加熱できるため、専用の加熱手段を別途設ける必要がなく、装置の大型化及びコスト増を抑制することが可能である。特に、本実施形態では、機能液を記録ヘッド42に導入するための流路管60をランプハウス25に巻回しているため、流動する機能液を連続的に加熱することができ、温度分布が生じない一定の条件で機能液を噴射することが可能になる。
【0040】
(第2実施形態)
続いて、プリンター301の第2実施形態について、図5を参照して説明する。
この図において、図1乃至図4に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態は、主として紫外線照射部20の構成が第1実施形態と異なっているため、以下、相違点について説明する。
【0041】
図5に示すように、本実施形態における流路管60は、ヘッドユニット322の−Z側の面に各紫外線照射部20と対向するように配置されている。
各紫外線照射部20は、ランプハウス25がY軸と平行な軸線26周りに回転自在に支持されている。また、ランプハウス25は、回転駆動装置(切替装置)27によって軸線26周りに回転駆動される。回転駆動装置27の駆動は、制御装置CONTにより制御される。換言すると、ランプハウス25は、制御装置CONTの制御の下、回転駆動装置27の駆動により軸線26周りに回転することで、図5中、実線で示すように、紫外線の照射方向がワークWに向く方向(−Z方向;ワーク照射位置)と、図5中、二点鎖線で示すように、流路管60に向く方向(+Z方向;流路管照射位置)とに切り替え可能となっている。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0042】
上記の構成のプリンター301では、一方の紫外線照射部20はワーク照射位置で紫外線を照射し、他方の紫外線照射部20は流路管照射位置で紫外線を照射する。
具体的には、例えば記録ヘッド42を−Y方向に走査移動させて機能液をワークW上に噴射する場合、制御装置CONTは、走査方向の後方側である+Y側(図5中、右側)に位置する紫外線照射部20については、ワーク照射位置でワークW上の機能液に紫外線を照射させるため、回転駆動装置27の駆動によりランプハウス25をワーク照射位置に回転移動させ、走査方向の前方側である−Y側(図5中、左側)に位置する紫外線照射部20については、ワークWに紫外線を照射する必要がないことから、回転駆動装置27の駆動により、ランプハウス25を流路管照射位置に回転移動させて紫外線照射面を流路管60に向け、流路管60に光を照射する。
【0043】
また、走査方向を反転させ、記録ヘッド42を+Y方向に走査移動させて機能液をワークW上に噴射する場合、上記とは逆に走査方向の後方側である−Y側(図5中、左側)に位置する紫外線照射部20については、ランプハウス25をワーク照射位置に回転移動させ、走査方向の前方側である+Y側(図5中、右側)に位置する紫外線照射部20については、ランプハウス25を流路管照射位置に回転移動させて紫外線照射面を流路管60に向け、流路管60に光を照射する。
【0044】
このように、紫外線照射部20による紫外線の照射状況に応じて、光の照射方向を切り替えることにより、機能液の硬化に寄与しない位置の紫外線照射部20を加熱装置として機能させ、当該紫外線照射部20からの光照射により、流路管60を介して内部を流動する機能液を加熱することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、流路管60に対して紫外線を照射するため、効果的に機能液を加熱するためには、紫外線を吸収する材料で流路管60を形成することが好ましい。また、光源部として水銀ランプ等のブロードバンド光を用いることにより、紫外線の他に、例えば赤外線の波長帯域を含むことになり、より効果的に流路管60を介して噴射前の機能液を加熱することが可能である。
【0046】
また、上記第2実施形態では、ランプハウス25をY軸と平行な軸線26周りに回転させる構成としたが、これに限定されず、例えばX軸と平行な軸線周りに回転させる構成としてもよい。この構成では、ランプハウス25を回転移動させることにより、紫外線照射面をワークWに向く方向及び流路管60に向く方向に加えて、記録ヘッド42に向く方向に切り替えることが可能になる。そのため、機能液の硬化に寄与しない位置の紫外線照射部20については、例えば紫外線照射面を記録ヘッド42に向けたり、記録ヘッド42に向く方向と流路管60に向く方向との間を揺動(往復移動)させ、両方を加熱する構成として、より効果的に噴射前の機能液を加熱することも可能である。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0048】
例えば、上記第2実施形態では、ランプハウス25を回転させる構成を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば図6に示すように、Y方向に紫外線を出射するようにランプハウス25を固定して設置し、X軸と平行な軸線周りに回転する反射ミラー28を設け、紫外線を照射する方向に応じて反射ミラー28を回転移動させることにより、容易に紫外線照射方向を切り替えることができる。また、この構成では、ランプハウス25と比較して軽量の反射ミラー28を回転させればよいため、装置構成の簡素化及び小型化化を図ることができる。
また、上記実施形態で示したランプハウス25や反射ミラー28の回転駆動は、制御装置CONTによる自動駆動に限られず、オペレータによる手動操作としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、シリアル方式のプリンター301に本発明を適用したが、これに限定されるものではなく、例えばキャリッジに複数の流体噴射ヘッドを搭載し、その複数の流体噴射ヘッドの全吐出ノズルにより、記録媒体の噴射走査方向に直交する方向における記録対象幅をカバーする幅広の記録ラインが構成された、いわゆるラインプリンターにも同様に適用することも可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、機能液を硬化させるエネルギー光として紫外線を用いる構成を例示したが、これに限定されるものではなく、噴射に用いる流体の硬化特性に応じて、レーザ光を用いる等、適宜変更可能である。
【0051】
なお、上述した実施形態においては、流体噴射装置がインクジェットプリンターである場合を例にして説明したが、インクジェットプリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
また、上述の実施形態においては、流体噴射装置が、インク等の液体を流体として噴射する流体噴射装置である場合を例にして説明したが、本発明の流体噴射装置は、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用することができる。流体噴射装置が噴射可能な液体としては、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体が含まれる。
【0052】
また、上述した実施形態において、流体噴射装置から噴射される液体としては、インクのみならず、特定の用途に対応する液体を適用可能である。流体噴射装置に、その特定の用途に対応する液体を噴射可能な噴射ヘッドを設け、その噴射ヘッドから特定の用途に対応する液体を噴射して、その液体を所定の物体に付着させることによって、所定のデバイスを製造可能である。例えば、本発明の流体噴射装置は、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、及び面発光ディスプレイ(FED)の製造等に用いられる電極材、色材等の材料を所定の分散媒(溶媒)に分散(溶解)した液体(液状体)を噴射する流体噴射装置に適用可能である。
【0053】
また、流体噴射装置としては、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置、ジェルを噴射する流体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
20…紫外線照射部(照射装置)、 25…ランプハウス(筺体、加熱装置)、 27…回転駆動装置(切替装置)、 30…温度調整装置(調整装置)、 32駆動装置(離間装置)、 42…記録ヘッド(噴射ヘッド)、 57…ノズル面、 58…ノズル、 60…流路管(流路部)、 301…プリンター(流体噴射装置)、 306…制御装置、 321…キャリッジ(支持部材)、 CONT…制御装置、 W…ワーク(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の光の照射を受けて硬化する材料を含む流体を記録媒体に向けて噴射する噴射ヘッドと、
前記記録媒体に向けて前記所定の光を照射する照射装置と、
前記所定の光が有するエネルギーの少なくとも一部を用いて、前記噴射ヘッドからの噴射前の前記流体を加熱する加熱装置と、
を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1記載の流体噴射装置において、
前記加熱装置は、前記所定の光の光源部を収容するとともに、前記噴射ヘッドに前記流体を供給する流路部が外周に巻回された筺体を含むことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1記載の流体噴射装置において、
前記加熱装置は、前記所定の光の照射方向を、前記記録媒体に向く方向と、前記噴射ヘッドに向く方向及び該噴射ヘッドに前記流体を供給する流路部に向く方向のいずれか一方とに切り替える切替装置を含むことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
請求項3記載の流体噴射装置において、
前記記録媒体に向けての前記所定の光の照射状況に応じて、前記記所定の光の照射方向を制御する制御装置を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の流体噴射装置において、
前記照射装置は、前記記録媒体と前記噴射ヘッドとの走査方向に関して、前記噴射ヘッドを挟んだ両側に設けられ、
前記加熱装置は、複数の前記照射装置のそれぞれに対応して設けられることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の流体噴射装置において、
前記所定の光は、赤外線の波長帯域を含むことを特徴とする流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−218709(P2011−218709A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92025(P2010−92025)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】