説明

流体流動装置

【課題】ポンプ効率の低下を抑制して、磁性を有した異物によるポンプロック状態の発生を抑制した流体流動装置を提供する。
【解決手段】この課題を解決するために、流体を流動させるポンプ2と、当該ポンプ2に接続され前記流体が流通する流通路1とを備えた流体流動装置において、前記ポンプ2に流入される前記流体に混入した異物のうち磁性を有した異物を非磁性化する非磁性化手段6を設けて、前記磁性を有した異物を非磁性化させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流動装置、殊に流通路内を流れる流体に混入した異物の処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体流動装置は、流体流通用の流通路と、流体流動用の駆動源とを備え、駆動源の駆動によって流体を流動させることで、流通路に流体を流通させる。そして、当該駆動源には、流通路から流体を吸入する吸入口と吸入した流体を流通路に吐出する吐出口とを有したポンプが用いられており、当該ポンプとして、例えば、特許文献1等に示すような磁気結合ポンプがある。当該磁気結合ポンプは、回転軸と、回転軸の先端に固着された羽根車と、羽根車の裏面に固着され回転軸の周方向に沿ってNS着磁面が形成されたロータマグネットと、回転磁界を発生させるステータと、ロータマグネットとステータとを仕切る隔壁とを有する。
【0003】
ところで、上述のような流体流動装置は、既設の配管を流通路に用いることがあり、当該配管が鋼管等の鉄系材料を用いた管部材で構成されていると、当該配管の一部等が鉄粉等の磁性材からなる異物として流体に混入することがある。そして、当該磁性材からなる異物が流体内に混入すると、ポンプのロータマグネットのNS着地面と隔壁との微小な空隙に吸着、蓄積し、蓄積した当該異物が隔壁に干渉して羽根車が回転できなくなる所謂ポンプロック状態を生じることがある。
【0004】
対して、特許文献1の磁気結合ポンプは、羽根車に表面側から裏面側に向かって凹んだ凹部が形成されており、流体中に混入した磁性材からなる異物を、ロータマグネットの磁気吸引力によって凹部に吸着、収容する構成となっている。そして、磁性材からなる異物を当該凹部に吸着、収容することで、当該異物がNS着磁面と隔壁との微小な空隙に吸着、蓄積され難くなり、当該異物の蓄積によるポンプロック状態の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−285044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の磁気結合ポンプを備えた従来の流体流動装置では、凹部に異物を収容したことで、羽根車(凹部)に異物が蓄積するため、この異物の蓄積に伴いポンプ内の通水抵抗が増加して、ポンプ効率を低下させる恐れがある。
【0007】
そこで、この事情を鑑み、ポンプ効率の低下を抑制して、磁性を有した異物によるポンプロック状態の発生を抑制した流体流動装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の流体流動装置は、流体を流動させるポンプと、当該ポンプに接続され前記流体が流通する流通路とを備え、前記流体に混入して前記ポンプに流入される異物のうち磁性を有した異物を非磁性化する非磁性化手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
この流体流動装置として、前記非磁性化手段が、前記流体の溶存酸素を増加させる溶存酸素増加手段であることが好ましい。
【0010】
この流体流動装置として、前記流通路が、前記ポンプの吸入口に接続された第1経路を有し、前記溶存酸素増加手段として、前記第1経路から分岐し外部から酸素或いは空気を前記第1経路に供給する給気路と、当該給気路の開放と閉塞とを切り替える給気弁とを設けたことが好ましい。
【0011】
この流体流動装置として、前記流通路が、前記ポンプの吐出口に接続された第2経路を有し、前記溶存酸素増加手段が、前記第2経路の開放と閉塞とを切り替える第2経路切替弁を更に備えることが好ましい。
【0012】
この流体流動装置として、前記溶存酸素増加手段が、前記ポンプと前記給気弁と前記第2経路切替弁とを制御する制御部を更に備えることが好ましい。
【0013】
この流体流動装置として、前記溶存酸素増加手段が、前記第2経路に分岐して設けられ前記流体を前記第1経路に還流する還流路と、前記環流路に設けられ前記流体を貯留する貯留部と、前記還流路の前記貯留部より下流側に設けられ非磁性化された前記異物を捕捉する捕捉部と、前記捕捉部より下流側に設けられ前記第1経路に対して前記環流路の開放と閉塞とを切り替える異物回収弁とを更に備えることが好ましい。
【0014】
この流体流動装置として、前記溶存酸素増加手段が、前記貯留部に設けられ前記貯留部内の前記流体を冷却する冷却部を更に備えることが好ましい。
【0015】
この流体流動装置として、前記流通路が、前記第2経路の下流端と前記第1経路の上流端とを繋げた循環経路であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
このような構成としたことで、磁性を有した異物が非磁性化され易くなり、当該異物の磁気吸着によるポンプロック状態の発生を抑制し易くすることができると共に、前記異物の蓄積に伴うポンプ効率の低下を抑制し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の流体流動装置の構成説明図である。
【図2】同上の流体流動装置の非磁性化処理のフローチャートである。
【図3】第2実施形態の流体流動装置の構成説明図である。
【図4】同上の流体流動装置の非磁性化処理のフローチャートである。
【図5】第3実施形態の流体流動装置の構成説明図である。
【図6】同上の流体流動装置の非磁性化処理のフローチャートである。
【図7】1atmにおける水温と飽和溶存酸素量の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を例示して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
第1実施形態の流体流動装置について、以下、図面に用いて説明する。
【0020】
本実施形態の流体流動装置は、図1に示すように、流体流通用の流通路1と、流通路1内に流体を流動させる駆動源となるポンプ2と、ポンプ2の駆動を制御する制御部3とを備える。
【0021】
ポンプ2は、流体流動用のポンプ室を形成するハウジングと、ポンプ室内に配置され磁気従動部を有した羽根車と、ポンプ室外に配置され磁気従動部を磁気により回転駆動する磁気駆動部とを備える。ハウジングは、ポンプ2の外殻を形成するケースと、磁気駆動部の配置された空間をポンプ室から仕切る隔壁とを有し、ケースと隔壁とに囲まれた空間がポンプ室となる。そして、ケースは、流通路1内の流体をポンプ室内に吸入する吸入口と、ポンプ室内の流体を流通路1に吐出する吐出口とを有する。
【0022】
流通路1は、下流端が吸入口に接続された第1経路7と、上流端が吐出口に接続された第2経路8と、上流端が第2経路8に接続され下流端が第1経路7に接続された第3経路9とを有する。そして、流通路1内の流体はポンプ2の駆動に伴い第1経路7内からポンプ室内に吸入された後、ポンプ室内から第2経路8に吐出され、更に第2経路8から第3経路9に流動された後、第3経路9から第1経路7に流動される。そのため、流通路1は流体を循環させる循環経路となっており、流体流動装置は流体循環装置となっている。
【0023】
また、流体流動装置は、循環時に流体を作用させる作用部(第1作用部4、第2作用部5)を更に備える。第1作用部4は第2経路8と第3経路9との接続部位に設けられ、例えば、外部から流体に熱を与える熱源器等となっている。第2作用部5は第3経路9と第1経路7との接続部位に設けられ、例えば、流体の熱を外部に放出する放熱器等となっている。
【0024】
そのため、流体流動装置は熱源器(第1作用部4)で温められた流体の熱を放熱器(第2作用部5)から住居等の構造体の室内等に放出することで当該室内等を暖める所謂暖房装置となっている。そして、流通路1内を流動させる流体は、例えば、水となっている。なお、流体は水に限らず、不凍液や熱媒液等の液体や、当該液体や水に気体を混合した気液混合流体等であってもよい。
【0025】
また、流体流動装置は、磁性を有した異物を非磁性化する非磁性化手段6を更に備えており、既設の配管の流通路1利用時等に磁性を有した異物が流体に混入しても、当該磁性を有した異物によるポンプロック状態等を生じ難くする。
【0026】
当該非磁性化手段6は、例えば磁性を有した異物を非磁性の酸化物に変質させる等の、磁性を有した異物を酸化させることで非磁性化する。そして、非磁性化手段6は、流体内の溶存酸素量を増加させる溶存酸素増加手段60となっており、流体中の酸素量を増加させることで、磁性を有した異物を酸化させ易くする。
【0027】
溶存酸素増加手段60は、第1経路7に連通し第1経路7に空気を供給する給気路61と、給気路61の開閉を切り替える切替弁(給気弁62)と、第2経路8に設けられ第2経路8の開閉を切り替える切替弁(第2経路切替弁63)とを備える。
【0028】
給気路61は上流端を外部に開口させて、下流端を第1経路7に接続させており、第1経路7内を流体が流動することで、上流端から外気(空気)を給気路61内に吸入し、当該空気を第1経路7内に供給する。給気弁62は給気路61の途中に設けられ、給気路61を開放する開成状態と、給気路61を閉塞する閉成状態とに切り替わり、当該切替動作は制御部3に制御される。
【0029】
第2経路切替弁63は第2経路8の途中、好ましくはポンプ2の吐出口の近傍、に設けられ、第2経路8を開放する開成状態と、第2経路8を閉塞する閉成状態とに切り替わり、当該切替動作は制御部3に制御される。
【0030】
また、制御部3は、流通路1を介して作用部に流体を流通させる通常動作用の制御部としての機能に加えて、磁性異物を非磁性化させる非磁性化処理動作用の制御部としての機能を有する。そして、制御部3は、設置後の利用初期段階に通常動作を所定回数或いは所定時間行う等で所定の条件を満たすと、非磁性化処理動作用の制御に移行し、非磁性化処理動作を行う。
【0031】
なお、上述の所定の条件は利用初期段階のみに限らず、非磁性化処理動作後の所定期間毎等の定期的や、流体の交換や補給後や保守点検後の初回起動時等であってもよい。また、これら制御部3に実施時期を判断させる構成に限らず、外部からの指令が制御部3に入力されることで、制御部3が非磁性化処理動作用の制御に移行する構成であってもよい。
【0032】
非磁性化処理動作は、図2に示すように、制御部3がポンプ2や各切替弁(給気弁62、第2経路切替弁63)を制御することで行われており、非磁性化処理動作用の制御に移行すると、制御部3は第1ステップS11の制御処理を開始する。
【0033】
第1ステップS11では、ポンプ2が駆動状態であれば駆動を継続させてポンプ2を駆動状態に維持し、停止状態であれば駆動させて駆動状態に切り替え、ポンプ2の駆動状態を確保する。そして、制御部3はポンプ2の駆動状態を確保すると、第2ステップS12に移行する。また、制御部3は、非磁性化処理動作におけるポンプ2の駆動時間を計るタイマーを有し、第1ステップS11の制御処理後、上述の駆動時間の計測を開始する。
【0034】
第2ステップS12では、第2経路切替弁63が開成状態であれば第2経路切替弁63を開成状態に保持し、閉成状態であれば開成状態に切り替え、給気弁62が開成状態であれば給気弁62を開成状態に保持し、閉成状態であれば開成状態に切り替える。そして、第2ステップS12の制御処理により、流通路1内の流体の循環が確保されると共に、給気路61から空気が供給されて、流体は水に空気を混合した気液混合流体となる。そのため、流体流動装置は、第2ステップS12の制御処理後、給気路61を介して流通路1に気体を供給する給気運転を行うものとなる。
【0035】
また、制御部3は第2ステップS12で第2経路切替弁63及び給気弁62の開成状態を確保した後、ポンプ2の駆動時間が第1の所定時間経過すると、第3ステップS13に移行する。
【0036】
第3ステップS13は、ポンプ2の駆動時間が第2の所定時間以上経過したか否かを判定する判定制御となっている。そして、制御部3はポンプ2の駆動時間が第2の所定時間未満であれば第1ステップS11に戻り、第2の所定時間以上であれば第4ステップS14に移行する。
【0037】
第4ステップS14では、開成状態の給気弁62を閉成状態に切り替えて、給気路61からの空気の吸入を止め、開成状態の第2経路切替弁63を閉成状態に切り替えて、第2経路を閉塞する。そして、当該第2経路8の閉塞後もポンプ2が駆動するため、流体流動装置は吐出口側(第2経路8側)を締め切った状態でポンプ2から流体に流動圧を付与する締切り運転を行うものとなる。
【0038】
そのため、当該締切り運転により、ポンプ2の吐出口側や第2経路8の吐出口と第2経路切替弁63との間等に位置する流体が加圧され、当該流体の圧力が上昇する。そして、例えば、吐出口側の流体の水温約25℃の場合において、ポンプ2が停止状態の際には飽和溶存酸素量が約8mg/Lとなるのに対して、駆動状態で吐出口側の圧力(揚程)が約10mに上昇した際には飽和溶存酸素量が約16mg/Lに増加する。
【0039】
すなわち、吐出口側に位置する流体を締切り運転によって加圧したことで、当該流体の飽和溶存酸素量を増加させることができ、気液混合流体中の水に気液混合流体中の空気(酸素)を溶け易くすることができる。そのため、流体(水)の溶存酸素量が増加して、磁性異物は流体中に溶存した酸素(溶存酸素)と反応し易くなる等で非磁性化され易くなる。
【0040】
また、制御部3は、締切り運転開始後、ポンプ2の駆動時間が第3の所定時間に達すると、第5ステップS15に移行する。
【0041】
第5ステップS15は、第4ステップS14を行った累積回数が所定の設定値(設定回数)に達したか否かを判定する判定制御となっており、制御部3は、設定値を記憶し上述の累積回数をカウントするカウンターを有する。そして、当該累積回数が設定値未満であれば第1ステップS11に戻り、当該累積回数が設定値に達していると第6ステップS16に移行する。
【0042】
第6ステップS16では、第2経路切替弁63を開成状態に切り換える。そして、当該開成状態への切替後、制御部3は、ポンプ2を停止状態に切り替えて非磁性化処理を終了する、或いはポンプ2を駆動状態に維持して非磁性化処理用の制御から通常動作用の制御に移行し、非磁性化処理動作を終了して通常動作を開始する。
【0043】
上述のように、非磁性化処理動作を行うことで、流体の溶存酸素量が増加されて、磁性異物が非磁性化され易くなるため、ポンプ2内への磁性異物の磁気吸着を抑制し易くなり、磁気吸着に伴う磁性異物のポンプ2内への蓄積を抑制し易くなる。そのため、磁性異物の蓄積に伴うポンプロック状態の発生を抑制し易くすることができると共に、磁性異物の蓄積に伴うポンプ2の通水抵抗の増大等に伴うポンプ効率の低下を抑制し易くすることができる。そして、磁性異物のポンプ2内の蓄積を抑制したことで、隔壁や磁気従動部の破損等の発生を抑制し易くすることができる。
【0044】
なお、流体に混入する磁性異物は、例示の流通路1起因のものに限らず、作用部や給気路61等から流体内に混入したものや、外部の流体補給源(図示せず)による流体補給時等で外部から流体に混入したもの等であってもよい。また、給気路61は、第1経路7に空気を供給するものに限らず、外部の酸素供給源等から酸素を第1経路7に供給するものであってもよい。
【0045】
また、上述の各所定時間は、例示のポンプ2の駆動時間に限らず、切替弁の切替動作の実施からの経過時間や、非磁性化処理の開始からの経過時間等であってもよい。そして、第1の所定時間と第2の所定時間とを略同じにしてもよい。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態の流体流動装置について、以下、図3及び図4に用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成や均等な部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。そして、第2経路8において、吐出口に接続された端部(上流端)から第2経路切替弁63までを第2経路8の上流部81とし、第2経路切替弁63より下流側から第1作用部4(熱源器)に接続された端部(下流端)までを第2経路8の下流部82とする。
【0047】
本実施形態の流体流動装置は非磁性化手段6として、図3に示すように、第2経路8から分岐して設けられ流体を第1経路7に還す還流路64を更に備える。そして、還流路64は第2経路切替弁63で第2経路8から分岐しており、流体は還流路64を介することで第2経路8の下流部82及び作用部を介さずに第1経路7に還流される。
【0048】
第2経路切替弁63は、上流部81を下流部82に連通させ第2経路8を開放する開成状態(第1開成状態)と、上流部81を還流路64に連通させる還流用開成状態(第2開成状態)と、第2経路8を上流部81で閉塞する閉成状態とに切り替わる。
【0049】
第1開成状態では上流部81が下流部82に対して開放されると共に、還流路64に対して閉塞され、流体が上流部81から下流部82に流通する。第2開成状態では上流部81が下流部82に対して閉塞されると共に、還流路64に対して開放され、流体が上流部81から還流路64に流通する。閉成状態では上流部81が下流部82及び還流路64に対して閉塞され、第2経路8が上流部81で締め切られ、流体が上流部81に留まる。
【0050】
そのため、第2経路切替弁63は、三つの流路に対して開閉動作(連通する流路の切替動作)を行う所謂三方弁となっている。なお、第2経路切替弁63は閉成状態時に還流用開成状態となる切替弁であってもよく、三方弁に限らない。
【0051】
また、非磁性化手段6は、流体を貯留可能な貯留空間を備えた貯留部65と、非磁性化された磁性異物を捕捉する捕捉部66と、第1経路7に対して還流路64の開放と閉塞とを切り替える切替弁(異物回収弁67)とを更に備える。そして、貯留部65と捕捉部66と異物回収弁67は還流路64に設けられ、捕捉部66は還流路64の貯留部65より下流側に位置し、異物回収弁67は還流路64の捕捉部66より下流側に位置する。
【0052】
貯留部65は還流路64から流体が流入され、内部に流体を貯留可能となっており、例えば、貯留タンクとなっている。そして、貯留部65は、還流路64の上流側から内部に流体を流入させる流入口を底部に有し、内部の流体を還流路64の下流側に流出させる流出口を天井部より所定の距離低い位置に有する。そのため、貯留部65は内部の天井部周辺に空気が残留して空気溜りが形成され易くなっており、非磁性化処理動作時(詳細は後述する)に、貯留部65内で流体に空気(空気溜りの空気)を供給可能となっている。なお、貯留部65は貯留タンクに限らず、流体を貯留可能で後述の非磁性化処理動作を実施可能なものであればよい。
【0053】
捕捉部66は、流体が流通可能となっており、流体の流通時に、非磁性化された磁性異物を捕捉して、当該磁性異物を捕捉部66より下流側に流通し難くしている。そして、捕捉部66は、例えば、フィルタとなっており、捕捉した磁性異物を装置外に排出可能な構成が好ましい。なお、捕捉部66は非磁性化された磁性異物を捕捉可能であれば、フィルタに限らない。
【0054】
異物回収弁67は、還流路64を開放し還流路64の下流端から第1経路7への流体流通を可能にする開成状態と、還流路64を閉塞し還流路64から第1経路7への流体流通を不能にする閉成状態とに切り替わる。そして、異物回収弁67の切替動作は制御部3に制御される。
【0055】
そのため、流体流動装置は、第2経路8から作用部及び第3経路9を介して第1経路7に流体を流動させる循環運転に加えて、作用部及び第3経路9を介さずに還流路64を介して第1経路7に流体を流動させる還流運転を有する。
【0056】
また、非磁性化処理動作は、図4に示すように、制御部3がポンプ2や各切替弁(給気弁62、第2経路切替弁63、異物回収弁67)を制御することで行われる。そして、非磁性化処理動作が開始されると、制御部3は第1ステップS21でポンプ2の駆動状態を確保した後、第2ステップS22に移行する。
【0057】
第2ステップS22では、給気弁62と第2経路切替弁63と異物回収弁67の開成状態や閉成状態の切替等或いは状態維持を行い、給気弁62の開成状態と、第2経路切替弁63の第1開成状態と、異物回収弁67の閉成状態とを確保する。そのため、第2ステップS22の制御後、流体に空気等が供給され、流体流動装置は給気運転を行うものとなり、流体は気液混合流体になる。
【0058】
また、制御部3は、給気運転開始後、ポンプ2の駆動時間が第4の所定時間に達すると、第3ステップS23に移行する。
【0059】
第3ステップS23では、給気弁62を閉成状態に切り替え、第2経路切替弁63を第2開成状態に切り替え、異物回収弁67を閉成状態に維持し、気液混合流体を還流路64に流入させる。そして、異物回収弁67が閉成状態となるため、気液混合流体は貯留部65に貯留されると共に、貯留部65内で加圧される。
【0060】
そのため、第3ステップS23の制御後、流体流動装置は貯留部65に流体を貯留させる貯留運転を行うものとなる。そして、流体は貯留運転時に貯留部65内で加圧され、流体(水)の溶存酸素量が増加し易くなり、流体に混入した磁性異物は非磁性化され易くなる。
【0061】
また、制御部3は、貯留運転開始後、ポンプ2の駆動時間が第5の所定時間に達すると、第4ステップS24に移行する。
【0062】
第4ステップS24は、ポンプ2の駆動時間が第6の所定時間以上経過したか否かを判定する判定制御となっている。そして、制御部3はポンプ2の駆動時間が第6の所定時間未満であれば第1ステップS21に戻り、第6の所定時間以上であれば第5ステップS25に移行する。なお、第6の所定時間は第5の所定時間と同じであってもよい。
【0063】
第5ステップS25では、給気弁62を開成状態に切り替え、第2経路切替弁63を第2開成状態に維持し、異物回収弁67を開成状態に切り替える。そのため、流体は還流路64を介して第1経路7に流動(還流)され、流体流動装置は還流運転を行うものになり、非磁性化された磁性異物は還流路64を流れる際に捕捉部66で捕捉される。そして、還流運転での流体の流動により給気路61から流体に空気が供給されるため、磁性異物が非磁性化され易くなる。
【0064】
また、制御部3は、還流運転開始後、ポンプ2の駆動時間が第7の所定時間に達すると第6ステップS16に移行する。
【0065】
第6ステップS26では、第5ステップS25を行った累積回数が所定の設定値に達したか否かを判定する判定制御となっている。そして、制御部3は当該累積回数が設定値未満である第1ステップS21に戻り、当該累積回数が設定値に達していると第7ステップS27に移行する。
【0066】
第7ステップS27では、給気弁62及び異物回収弁67を閉成状態に切り替え、第2経路切替弁63を第1開成状態に切り換える。そのため、給気路61からの空気の供給が停止され、流体の流れる流路は、上述の還流路64を介した還流運転時の流路から、作用部及び第3経路9を介した循環運転時の流路と略同様の流路に切り替わる。
【0067】
また、上述の流路への切替後、制御部3は、ポンプ2を停止状態に切り替えて非磁性化処理動作を終了する、或いはポンプ2を駆動状態に維持して非磁性化処理動作用の制御から通常動作用の制御に移行し、非磁性化処理を終了して通常動作を開始する。
【0068】
上述のように、非磁性化処理動作を行うことで、ポンプ2内への磁性異物の磁気吸着が抑制され易くなり、磁気吸着に伴う異物のポンプ2内への蓄積を抑制し易くなる。そのため、磁性異物の蓄積に伴うポンプロック状態の発生を抑制し易くすることができると共に、ポンプ2の通水抵抗の増大等に伴うポンプ効率の低下を抑制し易くすることができる。そして、磁性異物のポンプ2内の蓄積を抑制したことで、隔壁や磁気従動部の破損等の発生を抑制し易くすることができる。更に、非磁性化処理時に、非磁性化された磁性異物を捕捉部66で捕捉することで、第1経路7に還流される流体中から当該磁性異物を除去し易くすることができる。
【0069】
また、貯留部65で飽和溶存酸素量を増加させる(流体を加圧する)ため、例えば貯留動作の流体加圧時のポンプ負荷が低減される等で、所定の飽和溶存酸素量に増加させる際に、第1実施形態の流体流動装置に比べて、ポンプ出力を低減し易くなる。そのため、非磁性化手段6を備えた流体流動装置において、ポンプ2に求められる出力を小さく抑え易くなり、ポンプ2の小型化や流体循環装置の低コスト化等を行い易くすることができる。
【0070】
なお、還流路64は第2経路切替弁63から分岐した構成に限らず、第2経路切替弁63より吐出口側(上流側)で分岐した構成であってもよい。このものでは、還流路64の当該分岐位置から貯留部65までの間に還流路64の開放と閉塞とを切り替える切替弁(還流弁)を設け、当該還流弁及び第2経路切替弁63の切替動作を組み合わせて、還流路64内に流体を流入する。
【0071】
(第3実施形態)
第3実施形態の流体流動装置について、以下、図5乃至図7に用いて説明する。なお、第2実施形態と同様の構成や均等な部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0072】
本実施形態の流体流動装置は非磁性化手段6として、図5に示すように、貯留部65内を冷却する冷却部68を更に備える。冷却部68は、例えば、ペルチェ素子等で構成され、貯留部65内に流入された流体の温度を低下させる。そして、図7に示すように、例えば、水温約25℃の場合では飽和溶存酸素量が約8mg/Lとなるのに対して、水温約7℃の場合では飽和溶存酸素量が約12mg/Lとなり、水(流体)は水温(温度)が低い程、飽和溶存酸素量が大きくなる。そのため、冷却部68で貯留部65内の流体を冷却することで、流体の飽和溶存酸素量が増加して、流体は溶存酸素量が増加し易くなる。
【0073】
また、非磁性化処理動作は、図6に示すように、制御部3がポンプ2や各切替弁(給気弁62、第2経路切替弁63、異物回収弁67)や冷却部68を制御することで行われる。そして、制御部3は第1ステップS31で、冷却部68に冷却動作を開始させた後、第2ステップS32に移行して、ポンプ2の駆動状態を確保した後、第3ステップS33に移行して、第3ステップS33で給気運転を開始する。
【0074】
給気運転開始後、制御部3はポンプ2の駆動時間が第4の所定時間に達すると、第4ステップS34に移行して、給気運転から貯留運転に切り替えた後、ポンプ2の駆動時間が第5の所定時間に達すると、第5ステップS35に移行する。そして、制御部3は第5ステップS35でポンプ2の駆動時間が第6の所定時間以上経過と判定すると、第6ステップS36に移行して、貯留運転から還流運転に切り替える。
【0075】
還流運転開始後、制御部3はポンプ2の駆動時間が第6の所定時間に達すると、第7ステップS37に移行する。そして、制御部3は第7ステップS37で還流運転の累積回数が設定値に達していると判定すると、第8ステップS38に移行して、給気弁62と第2経路切替弁63と異物回収弁67とを循環運転用の状態に切り替え、第9ステップS39に移行する。
【0076】
制御部3は第9ステップS39で冷却部68の冷却動作を停止する。そして、当該冷却部68の動作停止後、制御部3は、ポンプ2を停止状態に切り替えて非磁性化処理を終了する、或いはポンプ2を駆動状態に維持して非磁性化処理を終了し、通常動作を開始する。
【0077】
上述のように、貯留部65に冷却部68を設けたことで、貯留運転時に、貯留部65内に流入される流体が冷却され、冷却しない場合に比べて、流体の温度を低くすることができる。そのため、同じ圧力下(加圧量)において、冷却していない流体に比べて、流体の飽和溶存酸素量を増加させることができ、流体の溶存酸素量を増加させ易くなり、流体によって磁性異物を非磁性化させ易くなる。そして、冷却しない場合に比べて流体の溶存酸素量を増加させ易くなっているため、貯留運転時に、加圧量を抑えて流通路を構成する配管等の耐圧強度やポンプ出力を低減させたり、第5の所定時間を短縮させたりすることができる。
【0078】
また、流体流動装置は、第1乃至第3実施形態で例示の暖房装置等の加熱装置に限らず、冷房装置等の冷却装置や、冷房と暖房とを切り替えられる空気調和機等の熱交換装置であってもよい。もちろん、流体流動装置は、上述の加熱装置や冷却装置等の作用部での熱交換を必須構成とした熱交換装置のみに限らず、単に両作用部間で流体を循環させる装置であってもよい。このものでは、例えば、炭化水素系の燃料から発電を行う燃料電池装置と、燃料希釈用の水を貯留する貯水部とを作用部として、燃料電池装置と貯水部との間で上述の水を循環させる水循環装置等に用いることができる。
【0079】
また、流体流動装置は、流通路1内に流体を循環させる流体循環装置に限らず、例えば、給湯装置や浄水装置等の流通路1が第3経路9等を備えず流体が循環しない装置等であってもよい。このものでは、例えば、第2作用部5が外部から第1経路7内に流体を導入する流体導入部となり、第1作用部4が第2経路8内から外部に流体を放出する流体放出部となる。また、非磁性化された磁性異物を捕捉する捕捉部を流通路1に設けてもよく、当該捕捉部は捕捉した磁性異物を装置外に排出可能なものが好ましい。
【符号の説明】
【0080】
1 流通路
2 ポンプ
3 制御部
6 非磁性化手段
7 第1経路
8 第2経路
9 第3経路
60 溶存酸素増加手段
61 給気路
62 給気弁
63 第2経路切替弁
64 還流路
65 貯留部
66 捕捉部
67 異物回収弁
68 冷却部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流動させるポンプと、当該ポンプに接続され前記流体が流通する流通路とを備え、
前記流体に混入して前記ポンプに流入される異物のうち磁性を有した異物を非磁性化する非磁性化手段を設けたことを特徴とする流体流動装置。
【請求項2】
前記非磁性化手段が、前記流体の溶存酸素を増加させる溶存酸素増加手段であることを特徴とする請求項1に記載の流体流動装置。
【請求項3】
前記流通路が、前記ポンプの吸入口に接続された第1経路を有し、
前記溶存酸素増加手段として、前記第1経路から分岐し外部から酸素或いは空気を前記第1経路に供給する給気路と、当該給気路の開放と閉塞とを切り替える給気弁とを設けたことを特徴とする請求項2に記載の流体流動装置。
【請求項4】
前記流通路が、前記ポンプの吐出口に接続された第2経路を有し、
前記溶存酸素増加手段が、前記第2経路の開放と閉塞とを切り替える第2経路切替弁を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の流体流動装置。
【請求項5】
前記溶存酸素増加手段が、前記ポンプと前記給気弁と前記第2経路切替弁とを制御する制御部を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の流体流動装置。
【請求項6】
前記溶存酸素増加手段が、前記第2経路に分岐して設けられ前記流体を前記第1経路に還流する還流路と、前記環流路に設けられ前記流体を貯留する貯留部と、前記還流路の前記貯留部より下流側に設けられ非磁性化された前記異物を捕捉する捕捉部と、前記捕捉部より下流側に設けられ前記第1経路に対して前記環流路の開放と閉塞とを切り替える異物回収弁とを更に備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の流体流動装置。
【請求項7】
前記溶存酸素増加手段が、前記貯留部に設けられ前記貯留部内の前記流体を冷却する冷却部を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の流体流動装置。
【請求項8】
前記流通路が、前記第2経路の下流端と前記第1経路の上流端とを繋げた循環経路であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の流体流動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−219721(P2012−219721A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86620(P2011−86620)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】