流体用ポンプ制御装置
【課題】制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる流体用ポンプ制御装置を提供すること。
【解決手段】エンジンコントロールユニット(ECU)40と、ECU40からの制御信号に基づきPWM制御されるポンプモータ19を内蔵する燃料ポンプ16と、ポンプモータ19に対する電力供給を制御するポンプコントローラ20と、エンジンの運転状態を検出するセンサ類31とを備える燃料供給システム10において、ポンプコントローラ20に備わる制御部21が、出力回路22のパワートランジスタTrを駆動するPWM制御信号のデューティ比Duが大きい場合には周波数fを低くし、デューティ比Duが小さい場合には周波数fを高くする。
【解決手段】エンジンコントロールユニット(ECU)40と、ECU40からの制御信号に基づきPWM制御されるポンプモータ19を内蔵する燃料ポンプ16と、ポンプモータ19に対する電力供給を制御するポンプコントローラ20と、エンジンの運転状態を検出するセンサ類31とを備える燃料供給システム10において、ポンプコントローラ20に備わる制御部21が、出力回路22のパワートランジスタTrを駆動するPWM制御信号のデューティ比Duが大きい場合には周波数fを低くし、デューティ比Duが小さい場合には周波数fを高くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されてPWM制御される電動ポンプの駆動を制御するためのポンプ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、PWM制御(パルス幅変調制御)により駆動が制御されている種々の電動ポンプ(燃料ポンプ、ウォータポンプ、オイルポンプなど)が搭載されている。そして、例えば、燃料ポンプの駆動を制御する燃料ポンプ制御装置にて、高精度な燃料ポンプ制御を実現するには、ポンプ制御信号を実際のポンプ駆動に適した信号に変換する必要がある。すなわち、例えばエンジンコントローラが所定割込毎に演算した低周波数デューティ信号(PWM制御信号)を出力する場合、燃料ポンプ制御装置において、低周波数デューティ信号を高周波信号に変換する。この場合、高周波信号によるポンプ駆動により、ポンプモータの時定数(速度指令に対する応答性)よりも早い周期で、ポンプモータを高速スイッチングさせて燃料ポンプの滑らかな動作を実現している(特許文献1参照)。なお、燃料ポンプ以外のウォータポンプなどのポンプ制御においても同様の制御が実施されている。
【特許文献1】特開平07−317620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記したポンプ制御装置では、PWM制御信号の周波数を高くすることによりポンプモータを高速スイッチングさせているため、制御装置(特に、駆動回路)からの発熱が大きくなるという問題があった。このため、制御装置(駆動回路)に対して特別な放熱性対策を講じなければならなかった。
【0004】
ここで、制御装置(特に、駆動回路)からの発熱を抑えるためには、PWM制御信号の周波数を低くすればよい。しかしながら、PWM制御信号の周波数を低くすると、ポンプ騒音が大きくなってしまう(周波数が可聴域に入る)という問題が発生する。
【0005】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる流体用ポンプ制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る流体用ポンプ制御装置は、車両駆動源を制御するメインコントローラと、前記メインコントローラからの制御信号に基づきPWM制御されるモータを内蔵する流体用ポンプと、前記流体用ポンプのモータに対する電力供給を制御するサブコントローラと、前記車両駆動源の駆動状態を検出する状態検出手段とを備える流体用ポンプ制御装置において、前記サブコントローラは、前記状態検出手段の検出結果に基づいて、前記流体用ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数を可変する周波数制御手段を有することを特徴とする。
なお、車両駆動源としては、エンジンのみ、エンジンと電動式モータの併用、あるいは電動式モータのみ等を挙げることができる。
【0007】
この流体用ポンプ制御装置では、車両駆動源の駆動状態を検出する状態検出手段を備え、状態検出手段の検出結果(回転数や負荷など)に基づいて、流体用ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数(駆動周波数)を可変する周波数制御手段を有している。これにより、PWM制御される流体用ポンプの駆動周波数を、車両駆動源の駆動状態に応じて可変させることができる。従って、ポンプ騒音を抑えたい状況と制御装置からの発熱を抑えたい状況とに応じて、流体用ポンプの駆動周波数を可変することができるので、制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。
【0008】
例えば、ポンプ騒音が駆動源の作動音や車両走行音などによりかき消される状況においては、ポンプ騒音が発生しても実用上問題になることはない。従って、このような状況(駆動源が高負荷・高回転で駆動されている状態)において、流体用ポンプの駆動周波数を低くすることにより、サブコントローラからの発熱を抑えつつポンプ騒音の問題も解消することができる。
【0009】
本発明に係る流体用ポンプ制御装置においては、前記周波数制御手段は、前記状態検出手段により検出される前記駆動源の出力が大きくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を低くしていき、前記状態検出手段により検出される前記駆動源の出力が小さくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を高くしていくことが望ましい。
【0010】
この流体用ポンプ制御装置では、周波数制御手段により、状態検出手段により検出される駆動源の出力が大きくなるにしたがってPWM制御信号の周波数が低くされていく。これにより、駆動源の作動音や車両走行音などが大きくなるにしたがって、PWM制御信号の周波数が低くされていくので、制御装置からの発熱が抑えられる一方、ポンプ騒音が大きくなる。しかしながら、ポンプ騒音は駆動源の作動音や車両走行音などによってかき消されるため、実用上問題になることはない。
また、周波数制御手段により、状態検出手段により検出される駆動源の出力が小さくなるにしたがってPWM制御信号の周波数が高くされていく。これにより、駆動源の作動音や車両走行音などが小さくなってポンプ騒音がかき消されない状況下では、ポンプ騒音が抑えられる。
【0011】
このように、この流体用ポンプ制御装置によれば、制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。これにより、制御装置に対して特別な放熱対策を講じる必要もなくなり、制御装置の放熱構造を簡素化することもできる。
【0012】
そして、本発明に係る流体用ポンプ制御装置は、前記車両駆動源として、エンジンと電動式モータとを併用するものに適用するのが好適である。
車両駆動源としてエンジンと電動式モータとを併用するハイブリッド車では、制御装置の発熱とポンプ騒音との問題がより顕著となるため、ハイブリッド車に対して本発明を適用することにより、より大きな効果を得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る流体用ポンプ制御装置においては、車両の走行速度を検出する車速検出手段をさらに有し、前記サブコントローラは、前記車速検出手段により検出された車両の走行速度がゼロより大きく、かつ所定値より小さいと判定した場合に、前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を可聴域内で所定値よりも低く設定することが望ましい。
【0014】
最近の車両、特に駆動源として電動式モータを使用するハイブリッド車や電気自動車などでは走行音の静寂性が高く、車両が接近していることが歩行者などに認識されにくい場合がある。このような場合に、車両のクラクションを使用することなく、歩行者などに車両の接近を認識させたいという要望がある。
そこで、本発明では、ポンプ騒音を利用して歩行者などに車両の接近を認識させることができるようにした。すなわち、本発明に係る流体用ポンプ制御装置では、サブコントローラによって、車速検出手段により検出された車両の走行速度がゼロより大きく、かつ所定値より小さいと判定された場合、周波数制御手段によりPWM制御信号の周波数が可聴域内で所定値よりも低く設定される。これにより、流体用ポンプのポンプ騒音により、歩行者などに車両の接近を認識させることができる。
【0015】
また、本発明に係る流体用ポンプ制御装置においては、前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を所定値よりも低く設定することを許可する低周波設定許可手段をさらに有し、前記サブコントローラは、前記低周波設定許可手段により前記PWM制御信号の低周波設定が許可された場合に限り、前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を可聴域内で所定値よりも低く設定することが望ましい。
【0016】
このように低周波設定許可手段を設けて、この低周波設定許可手段によりPWM制御信号の低周波設定が許可された場合に限り、前記サブコントローラが周波数制御手段を介してPWM制御信号の周波数を可聴域内で所定値よりも低く設定することにより、歩行者などに車両の接近を認識させる必要がある場合にのみポンプ騒音を発生させることができるからである。
【0017】
そして、前記周波数の可聴域内における所定値は、15000Hz以下に設定すればよい。
このような周波数に設定することにより、人がポンプ騒音を認識する(聞き取る)ことができるので、歩行者などに車両の接近を確実に認識させることができるからである。
【0018】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る燃料ポンプ制御装置は、燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンク内に設置されて前記燃料タンク内の燃料をエンジンに供給する燃料ポンプと、前記エンジンの駆動制御を行うエンジンコントローラと、前記エンジンコントローラからの制御信号に基づき前記燃料ポンプへの電力供給をPWM制御する燃料ポンプコントローラとを有する燃料ポンプ制御装置において、前記燃料ポンプコントローラは、前記状態検出手段の検出結果に基づいて、前記燃料ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数を可変する周波数制御手段を有し、前記周波数制御手段は、前記状態検出手段により検出される前記エンジンの出力が大きくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を低くしていき、前記状態検出手段により検出される前記エンジンの出力が小さくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を高くしていくことを特徴とする。
【0019】
この燃料ポンプ制御装置では、エンジンの運転状態を検出する状態検出手段を備え、状態検出手段の検出結果(エンジン出力や回転数など)に基づいて、燃料ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数(駆動周波数)を可変する周波数制御手段を有している。これにより、PWM制御される燃料ポンプの駆動周波数を、エンジンの運転状態に応じて可変させることができる。従って、ポンプ騒音を抑えたい状況と制御装置からの発熱を抑えたい状況とに応じて、燃料ポンプの駆動周波数を可変することができるので、制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。
【0020】
具体的には、燃料ポンプコントローラに備わる周波数制御手段により、状態検出手段により検出されるエンジンの出力が大きくなるにしたがってPWM制御信号の周波数が低くされていく。これにより、エンジンの運転音や車両走行音などが大きくなるにたがって、PWM制御信号の周波数が低くされていくので、制御装置からの発熱が抑えられる一方、ポンプ騒音が大きくなる。しかしながら、ポンプ騒音はエンジンの運転音や車両走行音などによってかき消されるため、実用上問題になることはない。
また、周波数制御手段により、状態検出手段により検出されるエンジンの出力が小さくなるにしたがってPWM制御信号の周波数が高くされていく。これにより、エンジンの運転音や車両走行音などが小さくなってポンプ騒音がかき消されない状況下では、ポンプ騒音が抑えられる。
【0021】
このように、この燃料ポンプ制御装置によれば、燃料ポンプコントローラからの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。これにより、燃料ポンプコントローラに対して特別な放熱対策を講じる必要もなくなり、燃料ポンプコントローラの放熱構造を簡素化することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る流体用ポンプ制御装置によれば、上記した通り、制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の流体用ポンプ制御装置を具体化した最も好適な実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態は、エンジンと電動式モータとを併用するハイブリッド車の燃料供給システムに本発明を適用したものである。
【0024】
そこで、この燃料供給システムについて、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の流体用ポンプ制御装置を適用した燃料供給システムの概略構成を示す図である。この燃料供給システム10は、不図示のエンジンの燃焼室に通じる吸気ポートに設けられたインジェクタ11,12,13,14に燃料を供給するものである。この燃料供給システム10では、燃料タンク15から燃料ポンプ16および燃料配管17等を介してインジェクタ11〜14に供給される燃料が吸気ポートへ噴射供給されるようになっている。電動式の燃料ポンプ16は、ポンプモータ19を備えており、燃料タンク15に内蔵されている。そして、燃料ポンプ16は、ポンプモータ19の駆動により燃料タンク15に貯溜された燃料を汲み上げ、燃料パイプ17へ吐出してインジェクタ11〜14へ圧送するようになっている。この燃料ポンプ16には燃料フィルタ18が付随して設けられており、燃料ポンプ16内に吸入される燃料が燃料フィルタ18によって濾過されるようになっている。
【0025】
ここで、燃料ポンプ16には、ポンプコントローラ20が接続されている。ポンプコントローラ20は、燃料ポンプ16に備わるポンプモータ19の駆動制御を行うものであり、本発明の「サブコントローラ」に相当する。そして、ポンプコントローラ20によってポンプモータ19の駆動制御が行われることにより、燃料タンク15の中の燃料が、燃料フィルタ18、燃料ポンプ16および燃料パイプ17等を通じてインジェクタ11〜14へ圧送される。インジェクタ14へ圧送された燃料は、インジェクタ11〜14の作動に伴い吸気ポートへ噴射され、吸入空気と共に可燃混合気を形成して燃焼室に取り込まれる。
【0026】
このポンプコントローラ20には、図2に示すように、制御部21と出力回路22とが備わっている。図2は、ポンプコントローラ20の構成を示すブロック図である。制御部21は、後述するエンジンコントロールユニット40からの指令に基づいて、ポンプモータ19の駆動を制御(PWM制御)するためのPWM制御信号(デューティ比および周波数が可変)を決定するものである。つまり、制御部21は、本発明の「周波数制御手段」に相当する。このため、制御部21は、図3に示すデューティ比DuとPWM周波数fとの関係をマップ化したマップデータを有している。これにより、制御部21では、デューティ比Duを決定すると、そのデューティ比Duに対応するPWM周波数fが決定されるようになっている。具体的には、制御部21において、PWM周波数fが、図3に示すように、デューティ比Duが大きくなるにしたがって低くなるように設定され、デューティ比Duが小さくなるにしたがって高くなるように設定される。なお、図3は、PWM制御信号におけるデューティ比とPWM周波数との関係(マップデータの内容)を示す図である。
【0027】
そして、制御部21で決定されたPWM制御信号が出力回路22に入力されて出力回路22からポンプモータ19に電力が供給されて燃料ポンプ16が駆動されるようになっている。これにより、ポンプモータ19は、デューティ比Duが大きいときには低い周波数で駆動され、デューティ比Duが小さいときには高い周波数で駆動される。
【0028】
そして、出力回路22には、図4に示すように、ポンプモータ19を駆動するためのパワートランジスタTrと、ポンプモータ19に並列接続されたダイオードDとを備え、電源Vcに接続されている。これにより、ポンプコントローラ20では、後述するエンジンコントロールユニット40からの指令に基づき制御部21で生成されたPWM制御信号(デューティ比および周波数が可変)に基づき、パワートランジスタTrを駆動(スイッチング)することにより、ポンプモータ19に対する電力供給を制御するようになっている。なお、図4は、ポンプコントローラ20における出力回路22の回路図である。
【0029】
このようなポンプコントローラ20には、不図示のエンジンを統括制御するエンジンコントロールユニット(ECU)40が接続されている。ECU40には、クランク角センサ等の各種センサ類31から出力される各種信号が入力されるようになっている。つまり、センサ類31が、本発明の「状態検出手段」に相当する。そして、ECU40は、これらの入力信号に基づきエンジンの運転状態を検出し、エンジンの運転状態に応じた燃料供給制御を実行するために、燃料ポンプ16およびインジェクタ11〜14をそれぞれ制御する。なお、燃料供給制御とは、エンジンの運転状態に応じて、燃料ポンプ16の吐出量(ポンプモータ19の回転数)、およびインジェクタ11〜14から噴射される燃料量(燃料噴射量)とその噴射タイミングを制御することである。また、ECU40は、これらの入力信号に基づき、スロットル等の各種アクチュエータ32に制御信号を出力する。
【0030】
さらに、ECU40には、車両の走行速度を検出する車速センサ33が接続されている。これにより、車両の走行速度がECU40を介してポンプコントローラ20の制御部21に入力されるようになっている。なお、車速センサ33が、本発明の「車速検出手段」に相当する。また、ECU40には、低周波数設定許可スイッチ34が接続されている。この低周波設定許可スイッチ34は、運転者が操作するもので、低速走行時にトランジスタTrを駆動するためのPWM制御信号の周波数を低く設定することを許可する場合にONされる。そして、低周波数設定許可スイッチ34がONされると、そのON信号がECU40を介してポンプコントローラ20の制御部21に入力されるようになっている。これにより、運転者が低周波数設定許可スイッチ34をONにした場合、後述するように、車両の低速走行時に制御部21によりPWM制御信号の周波数が低く設定されるようになっている。
【0031】
ここで、ECU40は、周知の構成、すなわち中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、バックアップRAM、外部入力回路及び外部出力回路等を備えている。ECU40は、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMと、外部入力回路及び外部出力回路等とをバスにより接続してなる論理演算回路を構成している。ROMは、エンジンに制御に関する所定の制御プログラムを予め記憶している。RAMは、CPUの演算結果を一時記憶するものである。バックアップRAMは、予め記憶したデータを保存するものである。CPUは、入力回路を介して入力される各種センサ等の検出値に基づき、所定の制御プログラムに従って各種制御等を実行するものである。なお、ECU40は、本発明の「メインコントローラ」あるいは「エンジンコントローラ」に相当する。
【0032】
次に、上記のように構成された燃料供給システムにおける燃料ポンプ16(ポンプモータ19)の基本制御について説明する。燃料ポンプ16(ポンプモータ19)は、ECU40からの指令に基づいてポンプコントローラ20により制御される。具体的には、ECU40が各種センサ類31から出力される各種信号からエンジンの運転状態を検出し、その状態に応じてポンプコントローラ20にポンプモータ19の駆動に関する指令を出す。そして、そのECU40からの指令に基づき、ポンプコントローラ20の制御部21がポンプモータ19を駆動するためのデューティ比Duを決定する。また、制御部21は、デューティ比Duを決定すると、デューティ比DuとPWM周波数fとのマップデータに基づきPWM周波数fを決定する。このとき、PWM周波数fは、図3に示すように、デューティ比Duが大きくなるにしたがって低くなるように設定され、デューティ比Duが小さくなるにしたがって高くなるように設定される。
【0033】
そして、制御部21により、デューティ比DuとPWM周波数fとが決定されたPWM制御信号が出力回路22に入力されて、パワートランジスタTrがON/OFF(スイッチング)される。その結果、出力回路22からポンプモータ19に供給される電力量が制御される。これにより、ポンプモータ19の回転数(燃料ポンプ16からの吐出流量)が制御されて、エンジンの運転状態に適した燃料量が燃料ポンプ16から供給されるようになっている。
【0034】
ここで、パワートランジスタがON/OFFする際にスイッチング時間が存在するため、図5に示すように、トランジスタ電圧VCE、トランジスタ電流IC、およびパワートランジスタ損失PD(=VCE×IC)が変化する。図5は、PWM周波数が一定(高周波数)の場合に、パワートランジスタTrのON/OFFに伴うトランジスタ電圧VCE、トランジスタ電流IC、およびパワートランジスタ損失PDの変化の様子を示す図である。なお、図5においては、実線がデューティ比が大きい場合を示し、破線がデューティ比が小さい場合を示す。
【0035】
そして、パワートランジスタ損失PDは、図5に示すように、デューティ比Duが小さいとき(例えば、デューティ比20%)のときよりも、デューティ比Duが大きいとき(例えば、デューティ比80%)の方が大きくなる。なぜなら、パワートランジスタ損失PDは、スイッチング損失PDswとON損失PDonとの合計になるが、スイッチング損失PDsw、ON損失PDonともに、デューティ比Duが大きくなるにしたがって大きくなるからである。このため一般的にポンプコントローラにおいては、デューティ比Duが大きいときに問題が生じないように、パワートランジスタの放熱設計がなされている。具体的には、十分な放熱性をもったヒートシンクを設けるなどの放熱対策が講じられている。
【0036】
これに対して本実施の形態では、ポンプコントローラ20の制御部21により、トランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数が可変される。具体的には、デューティ比Duが大きい場合(例えば、デューティ比80%程度)にはPWM周波数fが低く変更され(例えば、PWM周波数10kHz程度)、デューティ比Duが小さい場合(例えば、デューティ比20%程度)にはPWM周波数fが高く変更される(例えば、PWM周波数20kHz程度)。これにより、デューティ比Duが大きい場合において、パワートランジスタ損失PDを小さくすることができる。
【0037】
具体的には、図6に示すように、トランジスタのON損失PDonはほとんど変わらないが、スイッチング損失PDswは発生頻度が減って大きく減少する。図6は、デューティ比Duが大きい場合において、本発明と従来技術とにおけるパワートランジスタTrのON/OFFに伴うトランジスタ電圧VCE、トランジスタ電流IC、およびパワートランジスタ損失PDの変化を対比した図である。なお、図6においては、実線が本発明の場合を示し、破線が従来技術の場合を示す。ここで、ON損失PDon自体は小さな損失であるから、パワートランジスタ損失PDへの影響は小さい。一方、スイッチング損失PDswは大きな損失であるから、パワートランジスタ損失PDへの影響が大きい。このため、パワートランジスタ損失PDを減少させるためには、スイッチング損失PDswを小さくすることが効果的である。そして、本実施の形態では、デューティ比Duが大きい場合にPWM周波数fを低く設定することにより、スイッチング損失PDswを減少させている。これにより、パワートランジスタTrの発熱を小さくすることができるので、パワートランジスタTrの放熱構造を簡素化することができる。
【0038】
ここで、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fを低く設定すると、周波数fが可聴域に入ってしまいポンプ騒音が発生して問題となる。ところが、ポンプコントローラ20の制御部21は、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号のデューティ比Duに反比例するように周波数fを設定する。このため、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fが低く設定されてポンプ騒音が発生するのは、PMW制御信号のデューティ比Duが大きいとき、つまり燃料ポンプ16からの吐出流量が大きくてエンジンが高負荷かつ高回転で運転されている場合である。従って、ポンプ騒音は、エンジン音や車両走行音などによってかき消されるため、実用上問題になることはない。一方、エンジンが低負荷かつ低回転で運転されている場合には、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fが高く設定されるため、ポンプ騒音が抑えられる。
このようにして本実施の形態では、トランジスタTrからの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。そして、ポンプコントローラ20に対して特別な放熱対策を講じる必要がなくなるため、ポンプコントローラ20の放熱構造を簡素化することができる。
【0039】
続いて、低速走行時における燃料ポンプ16(ポンプモータ19)の制御について説明する。この制御は、低周波設定許可スイッチ34がONされた場合に実行される。そこで、この低速走行時におけるポンプコントローラ20による燃料ポンプ16(ポンプモータ19)の制御内容について図7を参照しながら説明する。図7は、低速走行時におけるポンプコントローラ20による燃料ポンプ16(ポンプモータ19)の制御内容を示すフローチャートである。
【0040】
まず、ポンプコントローラ20の制御部21により、低周波数設定許可スイッチ34がONされているか否かが判断される(S1)。このとき、低周波数設定許可スイッチ34がONされている場合には(S1:YES)、S2〜S4の処理が実施される。一方、低周波数設定許可スイッチ34がONされていない場合には(S1:NO)、この処理ルーチンは終了する。
【0041】
そして、低周波数設定許可スイッチ34がONの場合、S2の処理において、ポンプコントローラ20の制御部21により、ECU40から入力される車速信号に基づき、車速がゼロでないか否かが判断される(S2)。このとき、車速がゼロでないと判断された場合には(S2:YES)、車速が所定速度K(例えば、20km/h程度)より小さいか否かがさらに判断される(S3)。なお、S2の処理において、車速がゼロであると判断された場合には(S2:NO)、この処理ルーチンは終了する。
【0042】
S3の処理において、車速が所定速度Kより小さいと判断された場合には(S3:YES)、ポンプコントローラ20の制御部21により、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fが一定の低周波数(例えば、10kHz程度。ただし、老齢者など高周波数の音を聞き取りにくい人達にも確実に認識させるためには、5kHz程度が望ましい)に設定される(S4)。このため、燃料ポンプ16からポンプ騒音が発生する(人に認識される)。これにより、走行音の静寂性が高くても、クラクションを鳴らすことなく、燃料ポンプ16から発せられるポンプ騒音により、車両が接近していることを歩行者などに認識させることができる。そして、低周波数設定許可スイッチ34が運転者によってONにされない場合には、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fが一定の低周波数に設定されることはなく、高周波数(例えば、20kHz程度)に設定されているため、燃料ポンプ16からポンプ騒音は発生しない(人に認識されない)。従って、低速走行時でも歩行者などに車両の接近を知らせる必要がない場合(例えば、車庫入れ時など)には、運転者は運転に集中することができる。
【0043】
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る燃料供給システム10によれば、ポンプコントローラ20の制御部21において、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fがデューティ比Duに対応して可変される。すなわち、デューティ比Duが小さい場合(エンジン出力が小さい場合)には、PWM周波数fが高く設定される。これにより、デューティ比Duが大きい場合に、パワートランジスタTrの損失PDを減少させることができる。従って、パワートランジスタTrの発熱を小さくすることができるので、パワートランジスタTrの放熱構造を簡素化することができる。
また、PMW周波数fが低く設定されてポンプ騒音が発生するのは、PMW制御信号のデューティ比Duが大きいとき、つまり燃料ポンプ16からの吐出流量が大きくてエンジンが高負荷かつ高回転で運転されている場合である。このため、ポンプ騒音は、エンジン音や車両走行音などによってかき消されるため、実用上問題になることはない。
従って、本実施の形態に係る燃料供給システム10によれば、トランジスタTrからの発熱を抑えつつ、燃料ポンプ16から発生するポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。
【0044】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態では、燃料ポンプ16に備わるポンプモータ19の駆動制御に本発明を適用したものを例示したが、本発明は燃料ポンプに備わるポンプモータ以外のモータ、例えばウォータポンプに備わるポンプモータや、オイルポンプに備わるポンプモータなどにも適用することができる。
【0045】
また、上記した実施の形態では、本発明をエンジンと電動式モータとを併用するハイブリッド車に適用したものを例示したが、本発明はエンジンのみが駆動源である車両や、電動式モータのみが駆動源である電気自動車などにも適用することができる。なお、電気自動車に本発明を適用する場合には、燃料ポンプが存在しないので、燃料ポンプ以外の電動式ポンプに対して適用する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の流体用ポンプ制御装置を適用した燃料供給システムの概略構成を示す図である。
【図2】ポンプコントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】PWM制御信号におけるデューティ比とPWM周波数との関係(マップデータの内容)を示す図である。
【図4】ポンプコントローラにおける出力回路の回路図である。
【図5】PWM周波数が一定(高周波数)の場合に、パワートランジスタTrのON/OFFに伴うトランジスタ電圧VCE、トランジスタ電流IC、およびパワートランジスタ損失PDの変化の様子を示す図である。
【図6】デューティ比Duが大きい場合において、本発明と従来技術とにおけるパワートランジスタTrのON/OFFに伴うトランジスタ電圧VCE、トランジスタ電流IC、およびパワートランジスタ損失PDの変化を対比した図である。
【図7】低速走行時におけるポンプコントローラによる燃料ポンプ(ポンプモータ)の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
10 燃料供給システム
11,12,13,14 インジェクタ
15 燃料タンク
16 燃料ポンプ
17 燃料配管
19 ポンプモータ
20 ポンプコントローラ(サブコントローラ)
21 制御部(周波数制御手段)
22 出力回路
31 センサ類(状態検出手段)
32 アクチュエータ
33 車速センサ
34 低周波数設定許可スイッチ
40 エンジンコントロールユニット(メインコントローラ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されてPWM制御される電動ポンプの駆動を制御するためのポンプ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、PWM制御(パルス幅変調制御)により駆動が制御されている種々の電動ポンプ(燃料ポンプ、ウォータポンプ、オイルポンプなど)が搭載されている。そして、例えば、燃料ポンプの駆動を制御する燃料ポンプ制御装置にて、高精度な燃料ポンプ制御を実現するには、ポンプ制御信号を実際のポンプ駆動に適した信号に変換する必要がある。すなわち、例えばエンジンコントローラが所定割込毎に演算した低周波数デューティ信号(PWM制御信号)を出力する場合、燃料ポンプ制御装置において、低周波数デューティ信号を高周波信号に変換する。この場合、高周波信号によるポンプ駆動により、ポンプモータの時定数(速度指令に対する応答性)よりも早い周期で、ポンプモータを高速スイッチングさせて燃料ポンプの滑らかな動作を実現している(特許文献1参照)。なお、燃料ポンプ以外のウォータポンプなどのポンプ制御においても同様の制御が実施されている。
【特許文献1】特開平07−317620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記したポンプ制御装置では、PWM制御信号の周波数を高くすることによりポンプモータを高速スイッチングさせているため、制御装置(特に、駆動回路)からの発熱が大きくなるという問題があった。このため、制御装置(駆動回路)に対して特別な放熱性対策を講じなければならなかった。
【0004】
ここで、制御装置(特に、駆動回路)からの発熱を抑えるためには、PWM制御信号の周波数を低くすればよい。しかしながら、PWM制御信号の周波数を低くすると、ポンプ騒音が大きくなってしまう(周波数が可聴域に入る)という問題が発生する。
【0005】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる流体用ポンプ制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る流体用ポンプ制御装置は、車両駆動源を制御するメインコントローラと、前記メインコントローラからの制御信号に基づきPWM制御されるモータを内蔵する流体用ポンプと、前記流体用ポンプのモータに対する電力供給を制御するサブコントローラと、前記車両駆動源の駆動状態を検出する状態検出手段とを備える流体用ポンプ制御装置において、前記サブコントローラは、前記状態検出手段の検出結果に基づいて、前記流体用ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数を可変する周波数制御手段を有することを特徴とする。
なお、車両駆動源としては、エンジンのみ、エンジンと電動式モータの併用、あるいは電動式モータのみ等を挙げることができる。
【0007】
この流体用ポンプ制御装置では、車両駆動源の駆動状態を検出する状態検出手段を備え、状態検出手段の検出結果(回転数や負荷など)に基づいて、流体用ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数(駆動周波数)を可変する周波数制御手段を有している。これにより、PWM制御される流体用ポンプの駆動周波数を、車両駆動源の駆動状態に応じて可変させることができる。従って、ポンプ騒音を抑えたい状況と制御装置からの発熱を抑えたい状況とに応じて、流体用ポンプの駆動周波数を可変することができるので、制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。
【0008】
例えば、ポンプ騒音が駆動源の作動音や車両走行音などによりかき消される状況においては、ポンプ騒音が発生しても実用上問題になることはない。従って、このような状況(駆動源が高負荷・高回転で駆動されている状態)において、流体用ポンプの駆動周波数を低くすることにより、サブコントローラからの発熱を抑えつつポンプ騒音の問題も解消することができる。
【0009】
本発明に係る流体用ポンプ制御装置においては、前記周波数制御手段は、前記状態検出手段により検出される前記駆動源の出力が大きくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を低くしていき、前記状態検出手段により検出される前記駆動源の出力が小さくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を高くしていくことが望ましい。
【0010】
この流体用ポンプ制御装置では、周波数制御手段により、状態検出手段により検出される駆動源の出力が大きくなるにしたがってPWM制御信号の周波数が低くされていく。これにより、駆動源の作動音や車両走行音などが大きくなるにしたがって、PWM制御信号の周波数が低くされていくので、制御装置からの発熱が抑えられる一方、ポンプ騒音が大きくなる。しかしながら、ポンプ騒音は駆動源の作動音や車両走行音などによってかき消されるため、実用上問題になることはない。
また、周波数制御手段により、状態検出手段により検出される駆動源の出力が小さくなるにしたがってPWM制御信号の周波数が高くされていく。これにより、駆動源の作動音や車両走行音などが小さくなってポンプ騒音がかき消されない状況下では、ポンプ騒音が抑えられる。
【0011】
このように、この流体用ポンプ制御装置によれば、制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。これにより、制御装置に対して特別な放熱対策を講じる必要もなくなり、制御装置の放熱構造を簡素化することもできる。
【0012】
そして、本発明に係る流体用ポンプ制御装置は、前記車両駆動源として、エンジンと電動式モータとを併用するものに適用するのが好適である。
車両駆動源としてエンジンと電動式モータとを併用するハイブリッド車では、制御装置の発熱とポンプ騒音との問題がより顕著となるため、ハイブリッド車に対して本発明を適用することにより、より大きな効果を得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る流体用ポンプ制御装置においては、車両の走行速度を検出する車速検出手段をさらに有し、前記サブコントローラは、前記車速検出手段により検出された車両の走行速度がゼロより大きく、かつ所定値より小さいと判定した場合に、前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を可聴域内で所定値よりも低く設定することが望ましい。
【0014】
最近の車両、特に駆動源として電動式モータを使用するハイブリッド車や電気自動車などでは走行音の静寂性が高く、車両が接近していることが歩行者などに認識されにくい場合がある。このような場合に、車両のクラクションを使用することなく、歩行者などに車両の接近を認識させたいという要望がある。
そこで、本発明では、ポンプ騒音を利用して歩行者などに車両の接近を認識させることができるようにした。すなわち、本発明に係る流体用ポンプ制御装置では、サブコントローラによって、車速検出手段により検出された車両の走行速度がゼロより大きく、かつ所定値より小さいと判定された場合、周波数制御手段によりPWM制御信号の周波数が可聴域内で所定値よりも低く設定される。これにより、流体用ポンプのポンプ騒音により、歩行者などに車両の接近を認識させることができる。
【0015】
また、本発明に係る流体用ポンプ制御装置においては、前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を所定値よりも低く設定することを許可する低周波設定許可手段をさらに有し、前記サブコントローラは、前記低周波設定許可手段により前記PWM制御信号の低周波設定が許可された場合に限り、前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を可聴域内で所定値よりも低く設定することが望ましい。
【0016】
このように低周波設定許可手段を設けて、この低周波設定許可手段によりPWM制御信号の低周波設定が許可された場合に限り、前記サブコントローラが周波数制御手段を介してPWM制御信号の周波数を可聴域内で所定値よりも低く設定することにより、歩行者などに車両の接近を認識させる必要がある場合にのみポンプ騒音を発生させることができるからである。
【0017】
そして、前記周波数の可聴域内における所定値は、15000Hz以下に設定すればよい。
このような周波数に設定することにより、人がポンプ騒音を認識する(聞き取る)ことができるので、歩行者などに車両の接近を確実に認識させることができるからである。
【0018】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る燃料ポンプ制御装置は、燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンク内に設置されて前記燃料タンク内の燃料をエンジンに供給する燃料ポンプと、前記エンジンの駆動制御を行うエンジンコントローラと、前記エンジンコントローラからの制御信号に基づき前記燃料ポンプへの電力供給をPWM制御する燃料ポンプコントローラとを有する燃料ポンプ制御装置において、前記燃料ポンプコントローラは、前記状態検出手段の検出結果に基づいて、前記燃料ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数を可変する周波数制御手段を有し、前記周波数制御手段は、前記状態検出手段により検出される前記エンジンの出力が大きくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を低くしていき、前記状態検出手段により検出される前記エンジンの出力が小さくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を高くしていくことを特徴とする。
【0019】
この燃料ポンプ制御装置では、エンジンの運転状態を検出する状態検出手段を備え、状態検出手段の検出結果(エンジン出力や回転数など)に基づいて、燃料ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数(駆動周波数)を可変する周波数制御手段を有している。これにより、PWM制御される燃料ポンプの駆動周波数を、エンジンの運転状態に応じて可変させることができる。従って、ポンプ騒音を抑えたい状況と制御装置からの発熱を抑えたい状況とに応じて、燃料ポンプの駆動周波数を可変することができるので、制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。
【0020】
具体的には、燃料ポンプコントローラに備わる周波数制御手段により、状態検出手段により検出されるエンジンの出力が大きくなるにしたがってPWM制御信号の周波数が低くされていく。これにより、エンジンの運転音や車両走行音などが大きくなるにたがって、PWM制御信号の周波数が低くされていくので、制御装置からの発熱が抑えられる一方、ポンプ騒音が大きくなる。しかしながら、ポンプ騒音はエンジンの運転音や車両走行音などによってかき消されるため、実用上問題になることはない。
また、周波数制御手段により、状態検出手段により検出されるエンジンの出力が小さくなるにしたがってPWM制御信号の周波数が高くされていく。これにより、エンジンの運転音や車両走行音などが小さくなってポンプ騒音がかき消されない状況下では、ポンプ騒音が抑えられる。
【0021】
このように、この燃料ポンプ制御装置によれば、燃料ポンプコントローラからの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。これにより、燃料ポンプコントローラに対して特別な放熱対策を講じる必要もなくなり、燃料ポンプコントローラの放熱構造を簡素化することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る流体用ポンプ制御装置によれば、上記した通り、制御装置からの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の流体用ポンプ制御装置を具体化した最も好適な実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態は、エンジンと電動式モータとを併用するハイブリッド車の燃料供給システムに本発明を適用したものである。
【0024】
そこで、この燃料供給システムについて、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の流体用ポンプ制御装置を適用した燃料供給システムの概略構成を示す図である。この燃料供給システム10は、不図示のエンジンの燃焼室に通じる吸気ポートに設けられたインジェクタ11,12,13,14に燃料を供給するものである。この燃料供給システム10では、燃料タンク15から燃料ポンプ16および燃料配管17等を介してインジェクタ11〜14に供給される燃料が吸気ポートへ噴射供給されるようになっている。電動式の燃料ポンプ16は、ポンプモータ19を備えており、燃料タンク15に内蔵されている。そして、燃料ポンプ16は、ポンプモータ19の駆動により燃料タンク15に貯溜された燃料を汲み上げ、燃料パイプ17へ吐出してインジェクタ11〜14へ圧送するようになっている。この燃料ポンプ16には燃料フィルタ18が付随して設けられており、燃料ポンプ16内に吸入される燃料が燃料フィルタ18によって濾過されるようになっている。
【0025】
ここで、燃料ポンプ16には、ポンプコントローラ20が接続されている。ポンプコントローラ20は、燃料ポンプ16に備わるポンプモータ19の駆動制御を行うものであり、本発明の「サブコントローラ」に相当する。そして、ポンプコントローラ20によってポンプモータ19の駆動制御が行われることにより、燃料タンク15の中の燃料が、燃料フィルタ18、燃料ポンプ16および燃料パイプ17等を通じてインジェクタ11〜14へ圧送される。インジェクタ14へ圧送された燃料は、インジェクタ11〜14の作動に伴い吸気ポートへ噴射され、吸入空気と共に可燃混合気を形成して燃焼室に取り込まれる。
【0026】
このポンプコントローラ20には、図2に示すように、制御部21と出力回路22とが備わっている。図2は、ポンプコントローラ20の構成を示すブロック図である。制御部21は、後述するエンジンコントロールユニット40からの指令に基づいて、ポンプモータ19の駆動を制御(PWM制御)するためのPWM制御信号(デューティ比および周波数が可変)を決定するものである。つまり、制御部21は、本発明の「周波数制御手段」に相当する。このため、制御部21は、図3に示すデューティ比DuとPWM周波数fとの関係をマップ化したマップデータを有している。これにより、制御部21では、デューティ比Duを決定すると、そのデューティ比Duに対応するPWM周波数fが決定されるようになっている。具体的には、制御部21において、PWM周波数fが、図3に示すように、デューティ比Duが大きくなるにしたがって低くなるように設定され、デューティ比Duが小さくなるにしたがって高くなるように設定される。なお、図3は、PWM制御信号におけるデューティ比とPWM周波数との関係(マップデータの内容)を示す図である。
【0027】
そして、制御部21で決定されたPWM制御信号が出力回路22に入力されて出力回路22からポンプモータ19に電力が供給されて燃料ポンプ16が駆動されるようになっている。これにより、ポンプモータ19は、デューティ比Duが大きいときには低い周波数で駆動され、デューティ比Duが小さいときには高い周波数で駆動される。
【0028】
そして、出力回路22には、図4に示すように、ポンプモータ19を駆動するためのパワートランジスタTrと、ポンプモータ19に並列接続されたダイオードDとを備え、電源Vcに接続されている。これにより、ポンプコントローラ20では、後述するエンジンコントロールユニット40からの指令に基づき制御部21で生成されたPWM制御信号(デューティ比および周波数が可変)に基づき、パワートランジスタTrを駆動(スイッチング)することにより、ポンプモータ19に対する電力供給を制御するようになっている。なお、図4は、ポンプコントローラ20における出力回路22の回路図である。
【0029】
このようなポンプコントローラ20には、不図示のエンジンを統括制御するエンジンコントロールユニット(ECU)40が接続されている。ECU40には、クランク角センサ等の各種センサ類31から出力される各種信号が入力されるようになっている。つまり、センサ類31が、本発明の「状態検出手段」に相当する。そして、ECU40は、これらの入力信号に基づきエンジンの運転状態を検出し、エンジンの運転状態に応じた燃料供給制御を実行するために、燃料ポンプ16およびインジェクタ11〜14をそれぞれ制御する。なお、燃料供給制御とは、エンジンの運転状態に応じて、燃料ポンプ16の吐出量(ポンプモータ19の回転数)、およびインジェクタ11〜14から噴射される燃料量(燃料噴射量)とその噴射タイミングを制御することである。また、ECU40は、これらの入力信号に基づき、スロットル等の各種アクチュエータ32に制御信号を出力する。
【0030】
さらに、ECU40には、車両の走行速度を検出する車速センサ33が接続されている。これにより、車両の走行速度がECU40を介してポンプコントローラ20の制御部21に入力されるようになっている。なお、車速センサ33が、本発明の「車速検出手段」に相当する。また、ECU40には、低周波数設定許可スイッチ34が接続されている。この低周波設定許可スイッチ34は、運転者が操作するもので、低速走行時にトランジスタTrを駆動するためのPWM制御信号の周波数を低く設定することを許可する場合にONされる。そして、低周波数設定許可スイッチ34がONされると、そのON信号がECU40を介してポンプコントローラ20の制御部21に入力されるようになっている。これにより、運転者が低周波数設定許可スイッチ34をONにした場合、後述するように、車両の低速走行時に制御部21によりPWM制御信号の周波数が低く設定されるようになっている。
【0031】
ここで、ECU40は、周知の構成、すなわち中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、バックアップRAM、外部入力回路及び外部出力回路等を備えている。ECU40は、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMと、外部入力回路及び外部出力回路等とをバスにより接続してなる論理演算回路を構成している。ROMは、エンジンに制御に関する所定の制御プログラムを予め記憶している。RAMは、CPUの演算結果を一時記憶するものである。バックアップRAMは、予め記憶したデータを保存するものである。CPUは、入力回路を介して入力される各種センサ等の検出値に基づき、所定の制御プログラムに従って各種制御等を実行するものである。なお、ECU40は、本発明の「メインコントローラ」あるいは「エンジンコントローラ」に相当する。
【0032】
次に、上記のように構成された燃料供給システムにおける燃料ポンプ16(ポンプモータ19)の基本制御について説明する。燃料ポンプ16(ポンプモータ19)は、ECU40からの指令に基づいてポンプコントローラ20により制御される。具体的には、ECU40が各種センサ類31から出力される各種信号からエンジンの運転状態を検出し、その状態に応じてポンプコントローラ20にポンプモータ19の駆動に関する指令を出す。そして、そのECU40からの指令に基づき、ポンプコントローラ20の制御部21がポンプモータ19を駆動するためのデューティ比Duを決定する。また、制御部21は、デューティ比Duを決定すると、デューティ比DuとPWM周波数fとのマップデータに基づきPWM周波数fを決定する。このとき、PWM周波数fは、図3に示すように、デューティ比Duが大きくなるにしたがって低くなるように設定され、デューティ比Duが小さくなるにしたがって高くなるように設定される。
【0033】
そして、制御部21により、デューティ比DuとPWM周波数fとが決定されたPWM制御信号が出力回路22に入力されて、パワートランジスタTrがON/OFF(スイッチング)される。その結果、出力回路22からポンプモータ19に供給される電力量が制御される。これにより、ポンプモータ19の回転数(燃料ポンプ16からの吐出流量)が制御されて、エンジンの運転状態に適した燃料量が燃料ポンプ16から供給されるようになっている。
【0034】
ここで、パワートランジスタがON/OFFする際にスイッチング時間が存在するため、図5に示すように、トランジスタ電圧VCE、トランジスタ電流IC、およびパワートランジスタ損失PD(=VCE×IC)が変化する。図5は、PWM周波数が一定(高周波数)の場合に、パワートランジスタTrのON/OFFに伴うトランジスタ電圧VCE、トランジスタ電流IC、およびパワートランジスタ損失PDの変化の様子を示す図である。なお、図5においては、実線がデューティ比が大きい場合を示し、破線がデューティ比が小さい場合を示す。
【0035】
そして、パワートランジスタ損失PDは、図5に示すように、デューティ比Duが小さいとき(例えば、デューティ比20%)のときよりも、デューティ比Duが大きいとき(例えば、デューティ比80%)の方が大きくなる。なぜなら、パワートランジスタ損失PDは、スイッチング損失PDswとON損失PDonとの合計になるが、スイッチング損失PDsw、ON損失PDonともに、デューティ比Duが大きくなるにしたがって大きくなるからである。このため一般的にポンプコントローラにおいては、デューティ比Duが大きいときに問題が生じないように、パワートランジスタの放熱設計がなされている。具体的には、十分な放熱性をもったヒートシンクを設けるなどの放熱対策が講じられている。
【0036】
これに対して本実施の形態では、ポンプコントローラ20の制御部21により、トランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数が可変される。具体的には、デューティ比Duが大きい場合(例えば、デューティ比80%程度)にはPWM周波数fが低く変更され(例えば、PWM周波数10kHz程度)、デューティ比Duが小さい場合(例えば、デューティ比20%程度)にはPWM周波数fが高く変更される(例えば、PWM周波数20kHz程度)。これにより、デューティ比Duが大きい場合において、パワートランジスタ損失PDを小さくすることができる。
【0037】
具体的には、図6に示すように、トランジスタのON損失PDonはほとんど変わらないが、スイッチング損失PDswは発生頻度が減って大きく減少する。図6は、デューティ比Duが大きい場合において、本発明と従来技術とにおけるパワートランジスタTrのON/OFFに伴うトランジスタ電圧VCE、トランジスタ電流IC、およびパワートランジスタ損失PDの変化を対比した図である。なお、図6においては、実線が本発明の場合を示し、破線が従来技術の場合を示す。ここで、ON損失PDon自体は小さな損失であるから、パワートランジスタ損失PDへの影響は小さい。一方、スイッチング損失PDswは大きな損失であるから、パワートランジスタ損失PDへの影響が大きい。このため、パワートランジスタ損失PDを減少させるためには、スイッチング損失PDswを小さくすることが効果的である。そして、本実施の形態では、デューティ比Duが大きい場合にPWM周波数fを低く設定することにより、スイッチング損失PDswを減少させている。これにより、パワートランジスタTrの発熱を小さくすることができるので、パワートランジスタTrの放熱構造を簡素化することができる。
【0038】
ここで、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fを低く設定すると、周波数fが可聴域に入ってしまいポンプ騒音が発生して問題となる。ところが、ポンプコントローラ20の制御部21は、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号のデューティ比Duに反比例するように周波数fを設定する。このため、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fが低く設定されてポンプ騒音が発生するのは、PMW制御信号のデューティ比Duが大きいとき、つまり燃料ポンプ16からの吐出流量が大きくてエンジンが高負荷かつ高回転で運転されている場合である。従って、ポンプ騒音は、エンジン音や車両走行音などによってかき消されるため、実用上問題になることはない。一方、エンジンが低負荷かつ低回転で運転されている場合には、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fが高く設定されるため、ポンプ騒音が抑えられる。
このようにして本実施の形態では、トランジスタTrからの発熱を抑えつつ、ポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。そして、ポンプコントローラ20に対して特別な放熱対策を講じる必要がなくなるため、ポンプコントローラ20の放熱構造を簡素化することができる。
【0039】
続いて、低速走行時における燃料ポンプ16(ポンプモータ19)の制御について説明する。この制御は、低周波設定許可スイッチ34がONされた場合に実行される。そこで、この低速走行時におけるポンプコントローラ20による燃料ポンプ16(ポンプモータ19)の制御内容について図7を参照しながら説明する。図7は、低速走行時におけるポンプコントローラ20による燃料ポンプ16(ポンプモータ19)の制御内容を示すフローチャートである。
【0040】
まず、ポンプコントローラ20の制御部21により、低周波数設定許可スイッチ34がONされているか否かが判断される(S1)。このとき、低周波数設定許可スイッチ34がONされている場合には(S1:YES)、S2〜S4の処理が実施される。一方、低周波数設定許可スイッチ34がONされていない場合には(S1:NO)、この処理ルーチンは終了する。
【0041】
そして、低周波数設定許可スイッチ34がONの場合、S2の処理において、ポンプコントローラ20の制御部21により、ECU40から入力される車速信号に基づき、車速がゼロでないか否かが判断される(S2)。このとき、車速がゼロでないと判断された場合には(S2:YES)、車速が所定速度K(例えば、20km/h程度)より小さいか否かがさらに判断される(S3)。なお、S2の処理において、車速がゼロであると判断された場合には(S2:NO)、この処理ルーチンは終了する。
【0042】
S3の処理において、車速が所定速度Kより小さいと判断された場合には(S3:YES)、ポンプコントローラ20の制御部21により、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fが一定の低周波数(例えば、10kHz程度。ただし、老齢者など高周波数の音を聞き取りにくい人達にも確実に認識させるためには、5kHz程度が望ましい)に設定される(S4)。このため、燃料ポンプ16からポンプ騒音が発生する(人に認識される)。これにより、走行音の静寂性が高くても、クラクションを鳴らすことなく、燃料ポンプ16から発せられるポンプ騒音により、車両が接近していることを歩行者などに認識させることができる。そして、低周波数設定許可スイッチ34が運転者によってONにされない場合には、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fが一定の低周波数に設定されることはなく、高周波数(例えば、20kHz程度)に設定されているため、燃料ポンプ16からポンプ騒音は発生しない(人に認識されない)。従って、低速走行時でも歩行者などに車両の接近を知らせる必要がない場合(例えば、車庫入れ時など)には、運転者は運転に集中することができる。
【0043】
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る燃料供給システム10によれば、ポンプコントローラ20の制御部21において、パワートランジスタTrを駆動するPMW制御信号の周波数fがデューティ比Duに対応して可変される。すなわち、デューティ比Duが小さい場合(エンジン出力が小さい場合)には、PWM周波数fが高く設定される。これにより、デューティ比Duが大きい場合に、パワートランジスタTrの損失PDを減少させることができる。従って、パワートランジスタTrの発熱を小さくすることができるので、パワートランジスタTrの放熱構造を簡素化することができる。
また、PMW周波数fが低く設定されてポンプ騒音が発生するのは、PMW制御信号のデューティ比Duが大きいとき、つまり燃料ポンプ16からの吐出流量が大きくてエンジンが高負荷かつ高回転で運転されている場合である。このため、ポンプ騒音は、エンジン音や車両走行音などによってかき消されるため、実用上問題になることはない。
従って、本実施の形態に係る燃料供給システム10によれば、トランジスタTrからの発熱を抑えつつ、燃料ポンプ16から発生するポンプ騒音も実用上問題にならないようにすることができる。
【0044】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態では、燃料ポンプ16に備わるポンプモータ19の駆動制御に本発明を適用したものを例示したが、本発明は燃料ポンプに備わるポンプモータ以外のモータ、例えばウォータポンプに備わるポンプモータや、オイルポンプに備わるポンプモータなどにも適用することができる。
【0045】
また、上記した実施の形態では、本発明をエンジンと電動式モータとを併用するハイブリッド車に適用したものを例示したが、本発明はエンジンのみが駆動源である車両や、電動式モータのみが駆動源である電気自動車などにも適用することができる。なお、電気自動車に本発明を適用する場合には、燃料ポンプが存在しないので、燃料ポンプ以外の電動式ポンプに対して適用する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の流体用ポンプ制御装置を適用した燃料供給システムの概略構成を示す図である。
【図2】ポンプコントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】PWM制御信号におけるデューティ比とPWM周波数との関係(マップデータの内容)を示す図である。
【図4】ポンプコントローラにおける出力回路の回路図である。
【図5】PWM周波数が一定(高周波数)の場合に、パワートランジスタTrのON/OFFに伴うトランジスタ電圧VCE、トランジスタ電流IC、およびパワートランジスタ損失PDの変化の様子を示す図である。
【図6】デューティ比Duが大きい場合において、本発明と従来技術とにおけるパワートランジスタTrのON/OFFに伴うトランジスタ電圧VCE、トランジスタ電流IC、およびパワートランジスタ損失PDの変化を対比した図である。
【図7】低速走行時におけるポンプコントローラによる燃料ポンプ(ポンプモータ)の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
10 燃料供給システム
11,12,13,14 インジェクタ
15 燃料タンク
16 燃料ポンプ
17 燃料配管
19 ポンプモータ
20 ポンプコントローラ(サブコントローラ)
21 制御部(周波数制御手段)
22 出力回路
31 センサ類(状態検出手段)
32 アクチュエータ
33 車速センサ
34 低周波数設定許可スイッチ
40 エンジンコントロールユニット(メインコントローラ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動源を制御するメインコントローラと、前記メインコントローラからの制御信号に基づきPWM制御されるモータを内蔵する流体用ポンプと、前記流体用ポンプのモータに対する電力供給を制御するサブコントローラと、前記車両駆動源の駆動状態を検出する状態検出手段とを備える流体用ポンプ制御装置において、
前記サブコントローラは、前記状態検出手段の検出結果に基づいて、前記流体用ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数を可変する周波数制御手段を有することを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載する流体用ポンプ制御装置において、
前記周波数制御手段は、前記状態検出手段により検出される前記駆動源の出力が大きくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を低くしていき、前記状態検出手段により検出される前記駆動源の出力が小さくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を高くしていくことを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する流体用ポンプ制御装置において、
前記車両駆動源がエンジンと電動式モータとを併用するものであることを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載する流体用ポンプ制御装置において、
車両の走行速度を検出する車速検出手段をさらに有し、
前記サブコントローラは、前記車速検出手段により検出された車両の走行速度がゼロより大きく、かつ所定値より小さいと判定した場合に、前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を可聴域内で所定値よりも低く設定することを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載する流体用ポンプ制御装置において、
前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を所定値よりも低く設定することを許可する低周波設定許可手段をさらに有し、
前記サブコントローラは、前記低周波設定許可手段により前記PWM制御信号の低周波設定が許可された場合に限り、前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を可聴域内で所定値よりも低く設定することを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載する流体用ポンプ制御装置において、
前記周波数の可聴域内における所定値は、15000Hz以下であることを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項7】
燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンク内に設置されて前記燃料タンク内の燃料をエンジンに供給する燃料ポンプと、前記エンジンの駆動制御を行うエンジンコントローラと、前記エンジンコントローラからの制御信号に基づき前記燃料ポンプへの電力供給をPWM制御する燃料ポンプコントローラと、前記エンジンの状態を検出する状態検出手段とを有する燃料ポンプ制御装置において、
前記燃料ポンプコントローラは、前記状態検出手段の検出結果に基づいて、前記燃料ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数を可変する周波数制御手段を有し、
前記周波数制御手段は、前記状態検出手段により検出される前記エンジンの出力が大きくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を低くしていき、前記状態検出手段により検出される前記エンジンの出力が小さくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を高くしていくことを特徴とする燃料ポンプ制御装置。
【請求項1】
車両駆動源を制御するメインコントローラと、前記メインコントローラからの制御信号に基づきPWM制御されるモータを内蔵する流体用ポンプと、前記流体用ポンプのモータに対する電力供給を制御するサブコントローラと、前記車両駆動源の駆動状態を検出する状態検出手段とを備える流体用ポンプ制御装置において、
前記サブコントローラは、前記状態検出手段の検出結果に基づいて、前記流体用ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数を可変する周波数制御手段を有することを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載する流体用ポンプ制御装置において、
前記周波数制御手段は、前記状態検出手段により検出される前記駆動源の出力が大きくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を低くしていき、前記状態検出手段により検出される前記駆動源の出力が小さくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を高くしていくことを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する流体用ポンプ制御装置において、
前記車両駆動源がエンジンと電動式モータとを併用するものであることを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載する流体用ポンプ制御装置において、
車両の走行速度を検出する車速検出手段をさらに有し、
前記サブコントローラは、前記車速検出手段により検出された車両の走行速度がゼロより大きく、かつ所定値より小さいと判定した場合に、前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を可聴域内で所定値よりも低く設定することを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載する流体用ポンプ制御装置において、
前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を所定値よりも低く設定することを許可する低周波設定許可手段をさらに有し、
前記サブコントローラは、前記低周波設定許可手段により前記PWM制御信号の低周波設定が許可された場合に限り、前記周波数制御手段により前記PWM制御信号の周波数を可聴域内で所定値よりも低く設定することを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載する流体用ポンプ制御装置において、
前記周波数の可聴域内における所定値は、15000Hz以下であることを特徴とする流体用ポンプ制御装置。
【請求項7】
燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンク内に設置されて前記燃料タンク内の燃料をエンジンに供給する燃料ポンプと、前記エンジンの駆動制御を行うエンジンコントローラと、前記エンジンコントローラからの制御信号に基づき前記燃料ポンプへの電力供給をPWM制御する燃料ポンプコントローラと、前記エンジンの状態を検出する状態検出手段とを有する燃料ポンプ制御装置において、
前記燃料ポンプコントローラは、前記状態検出手段の検出結果に基づいて、前記燃料ポンプを制御するためのPWM制御信号の周波数を可変する周波数制御手段を有し、
前記周波数制御手段は、前記状態検出手段により検出される前記エンジンの出力が大きくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を低くしていき、前記状態検出手段により検出される前記エンジンの出力が小さくなるにしたがって前記PWM制御信号の周波数を高くしていくことを特徴とする燃料ポンプ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2008−232099(P2008−232099A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76290(P2007−76290)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】
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