説明

流動層ガス化方法及び装置

【課題】有機物原料を高いガス化率でガス化して大量のガス化ガスを生成できるようにした流動層ガス化装置を提供する。
【解決手段】有機物原料のガス化によって生成するチャーと流動媒体11とを流動層燃焼炉1で燃焼させて流動媒体11を加熱し、流動層燃焼炉1からの流動媒体11を分離器8により分離して流動層ガス化炉2に導入し、流動層ガス化炉2の流動層16に有機物原料Mを供給してガス化によりガス化ガス35を取り出し、ガス化によって生成したチャーと流動媒体11の一部を流動層燃焼炉1に循環する方法において、流動層ガス化炉2を第1室31と第2室32とで構成し、有機物原料Mを第1室31に供給し、第1室31において水分を蒸発除去した有機物原料を第2室32の流動層16内部に導入するようにし、第2室32において流動媒体11による混合加熱によってタールを分解しつつ有機物原料Mのガス化を行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物燃料を流動層によりガス化する流動層ガス化方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流動層燃焼炉及び流動層ガス化炉を用い、流動層ガス化炉でバイオマス、石炭などの有機物原料のガス化を行い、流動層ガス化炉で生成したチャーを流動層燃焼炉で燃焼させて流動媒体を加熱し、加熱した流動媒体を前記流動層ガス化炉に戻す流動層ガス化装置が提案されている(特許文献1等参照)。
【0003】
図10は上記特許文献1の流動層ガス化装置を示したもので、図中1は、流動層ガス化炉2で原料Mのガス化により生成したチャーと流動媒体を下部から導入するようにした流動層燃焼炉であり、流動層燃焼炉1は、下部の風箱3に空気管4によって供給される空気によりチャーと流動媒体を高速で流動化させつつ上昇する間にチャーを燃焼させて流動媒体を加熱する。5は流動層燃焼炉1の流動層に補助燃料を供給する補助燃料管、6は流動層燃焼炉1内上部に設けた熱回収用の熱交換器である。
【0004】
流動層燃焼炉1の上部は移送管7を介してサイクロンからなる分離器8に接続されており、該分離器8は外筒9と内筒10からなり、移送管7から外筒9内に接線方向に導入された未燃チャーと流動媒体を含む排ガスは遠心分離され、排ガス及び粒径の細かい灰分は内筒10から排出され、粒径の粗い未燃チャーと流動媒体11は、分離器8に接続した降下管12により下部の流動層ガス化炉2に供給されるようになっている。
【0005】
流動層ガス化炉2は、分離器8で分離された流動媒体11を導入する導入部13と、原料供給ライン14から供給された原料Mを流動媒体11の熱でガス化するガス化部15と、導入部13とガス化部15とを流動層16内で連通して導入部13からガス化部15へ流動媒体11を移送させる連通部17と、導入部13、連通部17及びガス化部15の下部に渡って形成された水蒸気を投入するボックス部18とからなり、そのボックス部18に水蒸気供給ライン19が接続されている。尚、図10において導入部13とガス化部15を連通部17で分けているのは、ガス化部15内で原料Mがガス化されることによる圧力の上昇によって、流動層ガス化炉2内の流動媒体11が分離器8に逆流するのを防止するためのものである。
【0006】
ガス化部15で生成されるガスは、流動化のための空気や窒素などの不活性ガスを含まない大量の水蒸気、水素(H)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)などが混在したガス化ガス20であり、生成したガス化ガス20は、排出管21より回収器22に導かれてガス化ガス20中に同伴した微粉末23が除去された後、内管24から導出され、例えば、加圧された後ガスタービン等に供給される。
【0007】
また、ガス化部15でガス化されなかったチャーと流動媒体の一部は、オーバーフロー管25から流動層燃焼炉1に循環され、再度燃焼と流動化とが行われるようになっている。
【特許文献1】特開2005−41959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の流動層ガス化装置においては、図10の場合にも示してあるように、流動層ガス化炉2におけるガス化部15の流動層16上に原料Mを供給して流動加熱によってガス化を行うようにしており、このため、原料Mとして例えば石炭とバイオマスのような有機物原料を供給した場合には、原料Mはしばらく流動層16上に滞留し、その間に加熱による水蒸気放出、熱分解が行われ、タールを多く含むガス化ガスが流動層16上部の気相に放出される。このガス化ガスは大量の水蒸気を含むために昇温され難く、しかもこのガス化ガスは流動層16内部の流動媒体11との接触による熱履歴を更に受けることがないため、ガス中のタール分は分解されずにガス化ガス20と共に排出管21から排出されてしまうことになる。
【0009】
このように、ガス化されない大量のタールがガス化部15から排出されるため、ガス化部15でのガス化率が低下してしまう問題があると共に、回収器22の内管から取り出されるガス化ガス20をタール除去装置に導いてタールを除去する際に、タール除去装置の負荷が増大するという問題がある。
【0010】
一方、上記タールの発生を減少させる方法の1つとして、原料Mをスクリューフィーダ等により流動層16の内部に供給することが考えられる。この方式によれば、原料Mと流動媒体との接触が高められることにより、タール分の生成を抑制できる効果が期待できる。しかし、この方式の場合には、スクリューフィーダ内で原料の熱分解が起こり、また水蒸気の流入・凝縮によって原料がスクリューフィーダ内で固化する問題があり、このためにスクリューフィーダを安定して運転できないという問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、有機物原料を高いガス化率でガス化して大量のガス化ガスを生成できるようにした流動層ガス化装置を提供しようとしてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、有機物原料のガス化によって生成したチャーと流動媒体とを流動層燃焼炉に導入して高速流動させつつチャーを燃焼させて流動媒体を加熱し、
前記流動層燃焼炉からの流動媒体を分離器により分離して流動層ガス化炉に導入し流動層を形成し、流動層ガス化炉に供給した有機物原料をガス化してガス化ガスを取り出すと共に、有機物原料のガス化によって生成したチャーと流動媒体の一部を前記流動層燃焼炉に循環するようにしている流動層ガス化方法であって、
前記流動層ガス化炉を第1室と第2室とで構成し、有機物原料を第1室に供給し、第1室において水分が蒸発除去された有機物原料を前記第2室の流動層内部に導入するようにし、第2室において流動媒体との混合加熱によってタールを分解しつつ有機物原料のガス化を行うようにしたことを特徴とする流動層ガス化方法である。
【0013】
請求項2の発明は、分離器で分離した流動媒体を分配手段を介して第1室と第2室とに供給するようにし、且つ第1室内の温度を検出する温度計を設け、該温度計の検出温度が設定温度になるように前記分配手段により第1室と第2室に供給する流動媒体の供給量を制御することを特徴とする請求項1に記載の流動層ガス化方法である。
【0014】
請求項3の発明は、流動層ガス化炉内上部に流動層内まで延びる分離壁を設けて第1室と第2室とを形成し、第1室において水分が除去された有機物原料が、前記分離壁下部を潜って第2室の流動層内部に導かれるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の流動層ガス化方法である。
【0015】
請求項4の発明は、第1室の水蒸気を水蒸気排出ファンにより排出すると共に、第1室内の圧力を検出する圧力計を設け、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記水蒸気排出ファンによる水蒸気の排出を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の流動層ガス化方法である。
【0016】
請求項5の発明は、第1室の水蒸気を調節弁を介して流動層燃焼炉に供給すると共に、第1室内の圧力を検出する圧力計を設け、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記調節弁の開度を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の流動層ガス化方法である。
【0017】
請求項6の発明は、第1室の水蒸気をエゼクタを介して流動層燃焼炉に供給すると共に、エゼクタに空気を供給して水蒸気を同伴させて流動層燃焼炉に導入する空気ファンを設け、更に第1室内の圧力を検出する圧力計を設け、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記空気ファンの空気供給量を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の流動層ガス化方法である。
【0018】
請求項7の発明は、有機物原料のガス化によって生成したチャーと流動媒体とを流動層燃焼炉に導入して高速流動させつつチャーを燃焼させて流動媒体を加熱し、
前記流動層燃焼炉からの流動媒体を分離器により分離して流動層ガス化炉に導入し流動層を形成し、流動層ガス化炉に供給した有機物原料をガス化してガス化ガスを取り出すと共に、有機物原料のガス化によって生成したチャーと流動媒体の一部を前記流動層燃焼炉に循環するようにしている流動層ガス化装置であって、
前記流動層ガス化炉を第1室と第2室とで構成し、前記第1室には有機物原料を供給する原料供給装置を備え、第1室で有機物原料の水分が除去された有機物原料を前記第2室の流動層内部に供給するようにしたことを特徴とする流動層ガス化装置である。
【0019】
請求項8の発明は、分離器で分離した流動媒体を第1室と第2室とに分配して供給する分配手段を備え、且つ第1室内の温度を検出する温度計を備え、該温度計の検出温度が設定温度になるように前記分配手段により第1室と第2室とに供給する流動媒体の供給量を制御する流動媒体制御器を備えたことを特徴とする請求項7に記載の流動層ガス化装置である。
【0020】
請求項9の発明は、第1室と第2室が、流動層ガス化炉内上部から流動層内まで延びる分離壁によって形成され、第1室において水分が除去された有機物原料が前記分離壁下部を潜るようにして第2室の流動層内部に導かれるようにしたことを特徴とする請求項7又は8に記載の流動層ガス化装置である。
【0021】
請求項10の発明は、第1室の水蒸気を排出する水蒸気排出ファンと、第1室内の圧力を検出する圧力計と、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記水蒸気排出ファンによる水蒸気の排出を制御する排出ファン制御器を備えたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の流動層ガス化装置である。
【0022】
請求項11の発明は、第1室の水蒸気を流動層燃焼炉に供給する水蒸気管と、該水蒸気管に配置した調節弁と、第1室内の圧力を検出する圧力計と、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記調節弁の開度を制御する調節弁制御器を備えたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の流動層ガス化装置である。
【0023】
請求項12の発明は、第1室の水蒸気を流動層燃焼炉に供給する水蒸気管と、該水蒸気管に配置したエゼクタと、エゼクタに空気を供給して水蒸気を同伴させて流動層燃焼炉に導入する空気ファンと、第1室内の圧力を検出する圧力計と、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記空気ファンの空気供給量を制御する空気ファン制御器を備えたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の流動層ガス化装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の請求項1〜12に記載の流動層ガス化方法及び装置によれば、第1室に有機物原料を供給して流動媒体との接触により有機物原料の水分を蒸発させ、水分が除去された有機物原料を第2室に供給し、第2室において流動媒体との混合加熱によってタールを分解しつつ有機物原料のガス化を行うようにしたので、有機物原料は第2室において効果的にガス化されると共に、加熱によって生成するタールは高温の流動媒体との接触により分解されて低質化ガスとなるため、有機物原料のガス化率が大幅に向上し、大量のガス化ガスを効果的に生成することができ、しかも、生成するガス化ガスからタールを除去するための後処理の負荷も低減できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1、図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、基本的な構成は図10と略同様であり、図10と同一の部分には同じ符号を付して説明は省略し、以下では本発明の特徴部分についてのみ詳述する。
【0027】
図1、図2の形態では、流動層16を形成している流動層ガス化炉2は、内側上部から流動層16内に亘って延びる分離壁30を設けて第1室31と第2室32とを形成している。この時、流動層ガス化炉2の下部に水蒸気、空気等のガス化剤を導入するボックス部18と前記分離壁30の下端との間に、流動層16内部を通して第1室31と第2室32とを連通する連通部33が形成されている。前記第1室31には有機物原料Mを供給するためのスクリューフィーダ等の原料供給装置34を設けている。
【0028】
上記構成によると、原料供給装置34から第1室31に供給された有機物原料Mは、流動層16の流動媒体により加熱されて水分が除去される。水分が除去された有機物原料Mは白抜き矢印M'のように前記分離壁30下部の連通部33を潜るように通って第2室32に導かれるため流動層16の内部を通ることになり、有機物原料Mは流動媒体11と良好に混合加熱されてガス化されるようになる。第2室32で生成したガス化ガス35はガス化ガス管36により取出され、サイクロン等からなる固形分除去装置37に導かれて固形分が除去された後、ガス処理装置38を介してガス化ガス取出ファン39に導かれるようになっている。
【0029】
尚、前記第1室31と第2室32は、前記したように流動層ガス化炉2内に分離壁30を設けることによって形成する以外にも形成することができる。例えば、図3に示すように、別体に構成した第1室31と第2室32を流動層16内の下部位置で連通路40により接続し、第1室31で乾燥した有機物原料M及び流動媒体を、連通路40を通して第2室32に供給するようにしたり、図4に示すように、別体に構成した第1室31と第2室32を、第1室31で乾燥した有機物原料Mと流動媒体がオーバーフロー管41によって第2室32の流動層16内部に供給されるようにしたり、図5に示すように、流動層ガス化炉2内に区画壁42を設け、且つ流動層16内下部に連通部43を設けるようにして第1室31と第2室32を形成するようにしてもよい。
【0030】
図1の流動層燃焼炉1からの流動媒体と未燃チャーを含む排ガスは、移送管7によりサイクロンからなる分離器8に導かれて排ガスが分離され、排ガスは排ガス処理装置44を介して排ガスファン45に導かれるようになっている。
【0031】
分離器8で分離された未燃チャーを含む流動媒体11が降下する降下管12には分配手段46が設けてあり、該分配手段46に接続した分配管47,48により前記第1室31と第2室32とに流動媒体11を分配して供給するようにしている。
【0032】
更に、前記第1室31には、該第1室31内上部の温度を検出する温度計49が設置してあり、該温度計49の検出温度が設定温度になるように前記分配手段46により分配管47,48を介して第1室31と第2室32とに供給する流動媒体11の供給量を制御する流動媒体制御器50を設けている。ここで、前記流動媒体制御器50に設定される設定温度は、例えば900℃前後の高温に加熱されて供給される流動媒体11が第1室31に供給されることにより、有機物原料Mが加熱され水分が完全に除去されて乾燥される温度、例えば100〜140℃の範囲の例えば110℃に設定する。
【0033】
前記分配手段46としては、図6に示すように降下管12にコントロールダンパ51を備えてダンパ角度を流動媒体制御器50からの信号によって制御するようにしたものや、図7に示すように降下管12から水平分岐した分配管47,48の水平部の夫々の内底部に空気を噴出するバブリング装置52a,52bを設け、各バブリング装置52a,52bに空気を供給する空気管53a,53bに設けた流量調節弁54a,54bの夫々の開度を流動媒体制御器50からの信号によって制御するようにしたもの等を用いることができる。図7の場合はバブリング装置52a,52bからの空気の噴出を停止すると対応する分配管47,48への流動媒体11の供給は停止され、空気の噴出を増加すると流動媒体11の供給量は増加される。
【0034】
図1の第1室31の上部には、第1室31内の水蒸気55を排出するための水蒸気管56が接続されており、該水蒸気管56はガス処理装置57を介して水蒸気排出ファン58に接続されている。更に、第1室31には該第1室31内の圧力を検出する圧力計59が設けてあり、該圧力計59の検出圧力が設定圧力を保持するように前記水蒸気排出ファン58による水蒸気55の排出を制御するようにした排出ファン制御器60を設けている。
【0035】
図1に示した形態の作動を説明する。
【0036】
図1の形態では、流動層ガス化炉2底部のボックス部18に水蒸気、空気等のガス化剤を供給して流動層16を形成した状態において、原料供給装置34により第1室31に有機物原料Mを供給する。この時、第1室31内上部の温度を検出している温度計49からの検出温度が流動媒体制御器50に入力され、該流動媒体制御器50は、前記温度計49による第1室31の検出温度が有機物原料Mの蒸発に適した設定温度(例えば110℃)になるように前記分配手段46を調節して分配管47,48を介し第1室31と第2室32とに供給する流動媒体11の供給量を制御する。
【0037】
更に、この時、第1室31内上部の圧力を検出している圧力計59からの検出圧力が排出ファン制御器60に入力され、該排出ファン制御器60は、前記圧力計59による検出圧力が第1室31での有機物原料Mの乾燥に適した滞留時間になるように前記水蒸気排出ファン58による水蒸気55の排出を制御する。
【0038】
従って、第1室31に供給された有機物原料Mは、流動層16の流動媒体11により加熱されて水分が除去され、水分が除去された有機物原料Mは第1室31の圧力により白抜き矢印M'のように分離壁30下部の連通部33を潜るように通って第2室32に導かれる。
【0039】
第2室32に導かれる有機物原料Mは、前記連通部33を通る際及び第2室32内において流動層16の流動媒体11によって良好に混合加熱されるため、有機物原料Mは第2室32において効果的にガス化されるようになると共に、加熱によって生成するタールは高温の流動媒体と接触しながら流動層16内を上昇することにより分解されて低質化ガスとなる。従って、第2室32での有機物原料Mのガス化率は大幅に高められ、大量のガス化ガス35が生成されてガス化ガス管36から取出されるようになる。又、上記したように第2室32で生成されるガス化ガス35中に含まれるタールが大幅に減少するため、ガス処理装置38によってタールを除去するための後処理の負荷が低減できるようになる。
【0040】
又、図1の形態では、第1室31において有機物原料Mの加熱により発生する水蒸気55を水蒸気管56によって外部に排出するようにしているので、原料供給装置34で水蒸気が凝縮し、凝縮水によって有機物原料が固着することで原料供給装置34が閉塞するといった問題を防止することができ、更に、第1室31の水蒸気55を外部に排出しているため、従来のように流動層ガス化炉2内において有機物原料Mの加熱によって発生する水蒸気もガス化のための目標温度(例えば800℃)まで加熱する必要がなく、従って、昇温のためのエネルギーを節減することができて、熱効率の向上を図ることができる。
【0041】
図8は本発明の他の形態を示したもので、前記第1室31の水蒸気55を排出する水蒸気管61を流動層燃焼炉1に供給するよう接続しており、該水蒸気管61に調節弁62を設け、前記第1室31内の圧力を検出する圧力計59からの検出圧力が設定圧力を保持するように前記調節弁62の開度を制御するようにした調節弁制御器63を設けている。
【0042】
図8の形態においても、図2の形態と同様に、第1室31に供給された有機物原料Mは第1室31で水分が除去されて乾燥され、水分が除去された有機物原料Mは第2室32に導かれてガス化されるので、有機物原料Mは第2室32で効果的にガス化されると共に、タールも熱分解により低質化されるため、第2室32での有機物原料Mのガス化率は大幅に向上し、大量のガス化ガス35を生成できるようになる。
【0043】
図9は本発明の更に他の形態を示したもので、前記第1室31の水蒸気55を排出する水蒸気管61を流動層燃焼炉1に供給するよう接続しており、該水蒸気管61にエゼクタ64を設け、該エゼクタ64に空気を供給して水蒸気55を同伴させて流動層燃焼炉1に導入させる空気ファン65を設け、前記第1室31内の圧力を検出する圧力計59からの検出圧力が設定圧力を保持するように前記エゼクタ64に対する空気供給量を制御するようにした空気ファン制御器66を設けている。
【0044】
図9の形態においても、図2の形態と同様に、第1室31に供給された有機物原料Mは第1室31で水分が除去されて乾燥され、水分が除去された有機物原料Mは第2室32に導かれてガス化されるので、有機物原料Mは第2室32で効果的にガス化されると共に、タールも熱分解により低質化されるため、第2室32での有機物原料Mのガス化率は大幅に向上し、大量のガス化ガス35を生成できるようになる。
【0045】
なお、本発明の流動層ガス化方法及び装置は、種々の有機物原料のガス化に用い得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示すフローチャートである。
【図2】図1における流動層ガス化炉部の詳細説明図である。
【図3】本発明における第1室と第2室からなる流動層ガス化炉の構成の一例を示す概略側面図である。
【図4】本発明における第1室と第2室からなる流動層ガス化炉の他の構成例を示す概略側面図である。
【図5】本発明における第1室と第2室からなる流動層ガス化炉の更に他の構成例を示す概略側面図である。
【図6】本発明における分配手段の一例を示す側面図である。
【図7】本発明における分配手段の他の例を示す側面図である。
【図8】本発明を実施する形態の他の例を示すフローチャートである。
【図9】本発明を実施する形態の更に他の例を示すフローチャートである。
【図10】従来の流動層ガス化装置の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 流動層燃焼炉
2 流動層ガス化炉
8 分離器
11 流動媒体
16 流動層
30 分離壁
31 第1室
32 第2室
33 連通部
34 原料供給装置
35 ガス化ガス
46 分配手段
47,48 分配管
49 温度計
50 流動媒体制御器
55 水蒸気
56 水蒸気管
57 ガス処理装置
58 水蒸気排出ファン
59 圧力計
60 排出ファン制御器
61 水蒸気管
62 調節弁
63 調節弁制御器
64 エゼクタ
65 空気ファン
66 空気ファン制御器
M 有機物原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物原料のガス化によって生成したチャーと流動媒体とを流動層燃焼炉に導入して高速流動させつつチャーを燃焼させて流動媒体を加熱し、
前記流動層燃焼炉からの流動媒体を分離器により分離して流動層ガス化炉に導入し流動層を形成し、流動層ガス化炉に供給した有機物原料をガス化してガス化ガスを取り出すと共に、有機物原料のガス化によって生成したチャーと流動媒体の一部を前記流動層燃焼炉に循環するようにしている流動層ガス化方法であって、
前記流動層ガス化炉を第1室と第2室とで構成し、有機物原料を第1室に供給し、第1室において水分が蒸発除去された有機物原料を前記第2室の流動層内部に導入するようにし、第2室において流動媒体との混合加熱によってタールを分解しつつ有機物原料のガス化を行うようにしたことを特徴とする流動層ガス化方法。
【請求項2】
分離器で分離した流動媒体を分配手段を介して第1室と第2室とに供給するようにし、且つ第1室内の温度を検出する温度計を設け、該温度計の検出温度が設定温度になるように前記分配手段により第1室と第2室に供給する流動媒体の供給量を制御することを特徴とする請求項1に記載の流動層ガス化方法。
【請求項3】
流動層ガス化炉内上部に流動層内まで延びる分離壁を設けて第1室と第2室とを形成し、第1室において水分が除去された有機物原料が、前記分離壁下部を潜って第2室の流動層内部に導かれるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の流動層ガス化方法。
【請求項4】
第1室の水蒸気を水蒸気排出ファンにより排出すると共に、第1室内の圧力を検出する圧力計を設け、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記水蒸気排出ファンによる水蒸気の排出を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の流動層ガス化方法。
【請求項5】
第1室の水蒸気を調節弁を介して流動層燃焼炉に供給すると共に、第1室内の圧力を検出する圧力計を設け、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記調節弁の開度を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の流動層ガス化方法。
【請求項6】
第1室の水蒸気をエゼクタを介して流動層燃焼炉に供給すると共に、エゼクタに空気を供給して水蒸気を同伴させて流動層燃焼炉に導入する空気ファンを設け、更に第1室内の圧力を検出する圧力計を設け、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記空気ファンの空気供給量を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の流動層ガス化方法。
【請求項7】
有機物原料のガス化によって生成したチャーと流動媒体とを流動層燃焼炉に導入して高速流動させつつチャーを燃焼させて流動媒体を加熱し、
前記流動層燃焼炉からの流動媒体を分離器により分離して流動層ガス化炉に導入し流動層を形成し、流動層ガス化炉に供給した有機物原料をガス化してガス化ガスを取り出すと共に、有機物原料のガス化によって生成したチャーと流動媒体の一部を前記流動層燃焼炉に循環するようにしている流動層ガス化装置であって、
前記流動層ガス化炉を第1室と第2室とで構成し、前記第1室には有機物原料を供給する原料供給装置を備え、第1室で有機物原料の水分が除去された有機物原料を前記第2室の流動層内部に供給するようにしたことを特徴とする流動層ガス化装置。
【請求項8】
分離器で分離した流動媒体を第1室と第2室とに分配して供給する分配手段を備え、且つ第1室内の温度を検出する温度計を備え、該温度計の検出温度が設定温度になるように前記分配手段により第1室と第2室とに供給する流動媒体の供給量を制御する流動媒体制御器を備えたことを特徴とする請求項7に記載の流動層ガス化装置。
【請求項9】
第1室と第2室が、流動層ガス化炉内上部から流動層内まで延びる分離壁によって形成され、第1室において水分が除去された有機物原料が前記分離壁下部を潜るようにして第2室の流動層内部に導かれるようにしたことを特徴とする請求項7又は8に記載の流動層ガス化装置。
【請求項10】
第1室の水蒸気を排出する水蒸気排出ファンと、第1室内の圧力を検出する圧力計と、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記水蒸気排出ファンによる水蒸気の排出を制御する排出ファン制御器を備えたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の流動層ガス化装置。
【請求項11】
第1室の水蒸気を流動層燃焼炉に供給する水蒸気管と、該水蒸気管に配置した調節弁と、第1室内の圧力を検出する圧力計と、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記調節弁の開度を制御する調節弁制御器を備えたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の流動層ガス化装置。
【請求項12】
第1室の水蒸気を流動層燃焼炉に供給する水蒸気管と、該水蒸気管に配置したエゼクタと、エゼクタに空気を供給して水蒸気を同伴させて流動層燃焼炉に導入する空気ファンと、第1室内の圧力を検出する圧力計と、該圧力計の検出圧力が設定圧力を保持するように前記空気ファンの空気供給量を制御する空気ファン制御器を備えたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の流動層ガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−94928(P2008−94928A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277236(P2006−277236)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】