説明

流水検知装置

【課題】火災の発生時において、所定流量の通水が生じたときに、この通水によって弁体を正確に作動させて火災の発生とその規模を確実に検知することができる流水検知装置であって、圧力損失を防ぎつつ通水でき、内部構造を簡略化して製作やメンテナンスを容易に行うことができるコンパクトな流水検知装置を提供すること。
【解決手段】流入口11aと流出口11bを有するボデー11内に着座部45を設け、この着座部45に着座したボール弁体12をガイド20に案内されながら移動可能に設け、このボール弁体12の移動を検知機構30を介して検出すると共に、着座部45の二次側の所定移動範囲R内に絞り形状の絞り経路65を形成した流水検知装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スプリンクラー設備に使用され、火災発生時などに流路を開けて水を流すために用いられる流水検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の流水検知装置は、水の圧力によって作動する逆止弁構造の弁体を有し、この弁体を挟んで一次側・二次側がともに満水で加圧された状態で保持されている。弁体は、二次側からの水圧によって常時閉止し、一次側には放水時に作動するポンプ、二次側にはスプリンクラーヘッドが配管されている。
火災が発生すると、スプリンクラーヘッドが開放されて放水を開始し、放水が始まると流水検知装置の弁体が開状態になり流水流路が開かれる。弁体は、スピンドルに接続された構造となっており、弁体が動作したときにはスピンドルが回転し、この回転を外部に設置された検出装置で検出し、この検出結果を信号として制御盤に送って警報装置を作動させるようになっている。
【0003】
流水検知装置は、通常は共同住宅等の建物内の複数箇所に設置されており、この流水検知装置と接続している給水管は建物内で繋がっている。火災発生時においては、火災の規模に応じて所定のスプリンクラーが作動し、このスプリンクラーの作動によって、複数箇所に設けられた流水検知装置のうちの1台ないし多数台が作動するようになっている。スプリンクラーの作動数が変わった場合には、各流水検知装置に加わる圧力が変動するが、この場合でも通水したことを確実に検知して作動させければならない。
【0004】
このように、流水検知装置は、流水により弁体が開放したときにこの弁体の開状態を内部機構によって検出装置まで伝達して検出するものであるが、検出装置が作動しなければならない最低作動圧は0.1MPa、最低作動流量が50L/minと定められており、一般のチェッキ弁における使用条件よりも、低圧力・小流量の段階で弁体の動きを検知させる必要がある。このため、流水検知装置は、通水時の流量が少ないときに弁体を大きく開放させることができる構造にする必要がある。
また、流水検知装置には、通水時において許容される圧力損失が定められており、例えば、口径40Aの流水検知装置では、350L/minの流量で水が流れたときに許容できる圧力損失が0.05MPa以内となっている。
【0005】
ところで、一般的な構造のボールチェッキ弁は、使用条件や配管の取付位置が縦・横兼用であるため、封止部より二次側が大きく膨らんだ形状になっている。このため、一般的なボールチェッキ弁を流水検知装置の縦配管に使用しようとしても、圧力損失が規定の0.05MPa以上になり使用することができなかった。また、ボールチェッキ弁は、内部流路の形状により、最小流量のときの弁体の開度が小さく、弁体の角度をスピンドルの回転に変換しようとしても極小さい回転角度にしかならないために、流水の検知を行うことは困難であった。
【0006】
一方、一般的なスイングチェッキ式逆止弁についても、弁体の回転角度は、流量が少ないときに小さく、流量が増加するにつれてほぼ一定の割合で回転角度が大きくなるような構造になっている。このため、最小流量のときの弁体の開度が小さくなり、流水の検知を行うことは困難であった。
【0007】
しかも、上記のように、火災の規模によって作動スプリンクラーの数が変わった場合であっても、各弁体の回転角度に誤差を生じさせてはならず、最小量の所定流量(50L/min)の水が流れる場合でも弁体を確実に所定の角度まで回転させる必要がある。
【0008】
また、ボデー側に設けたシート面のシール性を向上させるために、Oリングなどのゴムを使用しているが、このOリングにゴミや錆などを噛み込んで傷が付いて漏水が生じることがあるため交換作業などを定期的に行う必要がある。このため、流水検知装置は、簡単にメンテナンスできる構造であることが必要になっている。
【0009】
この種の流水検知装置としては、例えば、特許文献1の流水検知装置がある。この流水検知装置は、逆止弁体から円弧状突起体を流入口側に向けて突設し、この突起体が弁座に入り込んだときに突起体と弁座内周との間に環状のすきま部を形成し、このすきま部を流路の断面積としている。この断面積は通常の流路の断面積に比較して非常に小さくなるため、低圧力・小流量の水が通水した場合に逆止弁体を大きく回動させることができるようにしている。
【0010】
また、特許文献2の流水検知装置は、弁体の弁座接触側にテーパー状に突出したスカートを設けている。これにより、連通口の一次側から二次側への流体の通過面積を小さくし、微量な水が流れた場合でも弁体を大きく回動させている。
【特許文献1】特許第3631843号公報
【特許文献2】特開2005−292113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1や2のスイングチェッキ式の流水検知装置は、弁体と流路との間に隙間状の絞り部位を設けて、この絞り部位によって少ない通水時にも弁体を大きく動かそうとしたものであり、隙間状の絞り部位は、弁体の一次側やボデー側に設けることが可能ではあるが、圧力損失や、或は、弁体のスピンドルに対する固定を考慮した場合、実際には弁体の一次側でなければ設けることが難しくなっていた。
【0012】
従って、これらの流水検知装置は、弁体の一次側に突起状の絞り部位を形成しているが、このように弁体に部品を取付けた場合、重量が増加することによって回転し難くなって作動が不安定になったり、この大きな重量の弁体を支えるために弁軸などの弁体保持部分が太くなって製作が複雑化するという問題があった。特に、円弧状突起体やスカート状部分は製作し難い形状であるためコストも増大するという問題もあった。さらに、部品点数の増加によって製作に手間がかかったり、また、メンテナンス作業も面倒になっていた。さらに、この突起状の部品をボデー内部に収納させる必要があることから、装置全体が大型化するという問題もあった。
【0013】
本発明は、上記した実情に鑑み、鋭意検討の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、火災の発生時において、所定流量の通水が生じたときに、この通水によって弁体を正確に作動させて火災の発生とその規模を確実に検知することができる流水検知装置であって、圧力損失を防ぎつつ通水でき、内部構造を簡略化して製作やメンテナンスを容易に行うことができるコンパクトな流水検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、流入口と流出口を有するボデー内に着座部を設け、この着座部に着座したボール弁体をガイドに案内されながら移動可能に設け、このボール弁体の移動を検知機構を介して検出すると共に、着座部の二次側の所定移動範囲内に絞り形状の絞り経路を形成した流水検知装置である。
【0015】
請求項2記載の発明は、絞り経路の内周面と前記ボール弁体の外周面とは約1mm程度のクリヤランスを有した流水検知装置である。
【0016】
請求項3記載の発明は、絞り経路の長さは、ボール弁体が移動したときにボール弁体の移動に伴って回動するボールガイドに設けたスピンドルの回転角度を約30°とした流水検知装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によると、火災の発生時において、所定流量の通水が生じたときに、この通水によって弁体を正確に作動させて火災の発生を確実に検知することができる流水検知装置であって、圧力損失を防ぎつつ通水でき、内部構造を簡略化して製作やメンテナンスを容易に行うことができるコンパクトな流水検知装置を提供できる。さらに、ボデーを鋳造などによって容易に製作することができるため、コストを抑えつつ製作することができる。
【0018】
請求項2に係る発明によると、弁体が流水から受ける力を大きくすることができ、最小流量による小さい圧力でも確実に弁体を作動させて流水検知を行うことができる流水検知装置である。
【0019】
請求項3に係る発明によると、小さい流量でもボール弁体を大きく動かすことができ、このボール弁体の移動によってスピンドルを大きく回動させて、確実に流水の検知を行うことができる流水検知装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明における流水検知装置の一例を実施形態に基づいて詳しく説明する。
装置本体1は、例えば、図示しない放水流路の一次側と二次側の間に設置されており、図示しないスプリンクラーの一次側に設置される。
図1ないし図3に示すように、装置本体1は、バルブボデー11と検知機構30を備え、ボデー11内には、ボール弁体12と、ガイド部20と、ボールガイド14を有している。
【0021】
ボデー11は、一次側に流入口11a、二次側に流出口11bを有し、この流入口11aと流出口11bは流路13で連通されている。ボデー11は、鋳鉄、ステンレス等の鋳造手段により形成され、ボデー11内部には、ボール弁体12が着座する位置にシートリング44を螺着によって取付け、このシートリング44は、ボール弁体12用の着座部45を有している。
【0022】
ボール弁体12は、ボデー11に内蔵され、ボデー11内を移動して着座部45に着座して流路13を開閉可能に設けている。
ボール弁体12は、ゴム又は合成樹脂製、或は、図示しない金属製球体の外側にゴム又は合成樹脂を包囲したものであり、外径を着座部45や流出口11bよりも大きく形成している。更に、金属製球体を有する構造のボール弁体12である場合、この金属製球体の飛び出しを防止するために、外径を着座部45、流出口11b、及び、ガイド部20の幅よりも大きくすることが有効である。或は、着座部45、流出口11bに図示しない突部を設けて、この突部よりも金属製球体の外径を大きく形成して飛び出しを防止するようにしてもよい。
【0023】
ガイド部20は、ボデー11内部に形成し、着座部45に着座したボール弁体12をこのガイド部20に案内されながら移動可能に設け、流出口11b側への移動を阻止しつつ流路13を開放できるようにしている。ガイド部20の幅Wは、図4においてボール弁体12の外径Dよりも小さく形成し、これにより、ボール弁体12をボデー11に収納した後に、ボール弁体12が流路13を開放する側に動く際に、ガイド部20に沿ってボデー11内を移動自在になるようにしている。
【0024】
検知機構30は、ボデー11と別体に設けており、ボール弁体12の移動を検知部であるリミットスイッチ50に伝達することで、この検知機構30で流水検知時の信号を検出するようにしたものである。この検知機構30には、遅延機構39を設けている。
【0025】
ボデー11には、着座部45の二次側のボール弁体12の所定移動範囲R内に絞り形状の絞り経路65を設けている。絞り経路65は、ボール弁体12が検知機構30をオンする位置まで流路13内に沿って上昇するような縮径状に設けている。本実施形態においては、この絞り経路65は、ボール弁体12が移動したときに、このボール弁体12の移動に伴って回動する後述のボールガイド14に設けたスピンドル15の回転角度が約30°になるような長さLに設けている。この長さLは、本実施形態においては、約30mmとなる。
図4において、絞り経路65は、略パイプ状に形成し、この絞り経路65の内周面とボール弁体12の外周面とは約1mm程度のクリヤランスCLを有するようにしている。
【0026】
図10は、本発明における装置本体1の流量特性と、これと対比するために、一般的な流量調整弁(例えば、グローブ弁)の流量特性をそれぞれ実線、二点鎖線で示している。
このグラフにおいて、流量10%のときの装置本体1の状態を図2に示しており、このとき、バルブ開度は30%開の状態となっている。一方、一般的な流量調整弁は、同じ流量10%のときにバルブ開度が30%となっている。このように、装置本体1は、一般的な流量調節弁に比較して少ない流量で開度をより大きくとることができ、着座した状態からバルブ開度30%までの開度範囲に絞り経路65を設けていることにより、より早く全開状態になり、流水検知装置として高い機能性を発揮している。
【0027】
ガイド部20の先端近傍位置のボデー11には、ボール弁体12の径よりも大きい開口部17を形成し、この開口部17よりボール弁体12を収納・取り出し可能に設けている。さらに、この開口部17には、カバー18を着脱自在に固着し、このカバー18により、流路13と連通した開口部17を被蓋している。カバー18は、図示しないボルト・ナットでボデー11に固着しており、このボルト・ナットを外してカバー18を取り外すようにすれば、開口部17が開放可能となる。
【0028】
ボールガイド14は、図1、図6に示すように薄板により略U字状に形成し、このボールガイド14を、ボール弁体12の移動方向に回動自在に設けたスピンドル15にボルト14a止めして軸着している。また、ボールガイド14の枢着部14bを軸着するスピンドル15をカバー18に設けている。これにより、部品点数及び組立工数の削減を図って取付けを容易にしている。ボールガイド14は、ボール弁体12の所定移動範囲R内に、ガイド部20側に張り出すように取付けられ、ボール弁体12がガイド部20に沿って移動したときに、押圧されて回転するようにしている。このときボールガイド14はスピンドル15を中心に回転し、このボールガイド14を介してボール弁体12の移動を遅延機構39によって検知機構30に伝達している。
【0029】
スピンドル15は、カバー18を貫通するように取付け、その一端側をボデー11の外方に突出させて、ボールガイド14の回転動作をボデー11の外部に伝達可能に設けている。スピンドル15の外部突出側には、端部付近を平行に切り欠いて平行二面部15aを設けている。また、カバー18におけるスピンドル15の軸着部分には図示しないシール部材を介在させており、この部分からの水漏れを防いでいる。
【0030】
ボデー11の開口部17付近の上方位置には、図3に示すようにストッパ部11eを設けており、スピンドル15が回転し続けたときに、ボールガイド14がこのストッパ部11eに当接して回転が止まる構造になっている。これにより、ボール弁体12は、カバー18の内部まで入り込むことなく、ボールガイド14は、ストッパ部11eにガイドされて安定した状態で弁を開放している。
【0031】
シートリング44の一次側には、ボールシート42、42を一、二次側に装着した状態でボールジスク41を取付け、ボールジスク41の一次側からインサート43を螺着によってボデー11に取付け固定して、流入口11a側にボールバルブ40を構成している。
【0032】
ボールバルブ40は、消火終了後の止水を主な目的としており、また、装置本体1の試験時の止水にも使用される。止水時には、ボールジスク41に軸着した図示しないステムを手動操作或は自動操作によって回転させて流路を閉じる。本例においては、ボールバルブ40をボデー11内に一体に内蔵しているが、ボデー11と別体に設けて直列するように配管に接続してもよい。また、ボールバルブ40の代わりとして、バタフライバルブ等のバルブを設けることもできる。
【0033】
また、流路13と連通するように排水口21を形成し、この排水口21からボデー11内の水を排水可能に設けている。
排水口21は、図1において、できるだけ上側のボール弁体12が移動するガイド部20から離れた位置に設けており、この排水口21から圧が逃げ難くしてより効果的にボール弁体12を開状態にするようにしている。排水口21には、ボール弁22を螺着によって接続しており、このボール弁22を開閉することにより、ボデー11内の排水を行うことができるようにしている。ボール弁22の開閉は、操作ハンドル23を図1の矢印のように手動操作によって行う。
【0034】
排水口21は、ガイド部20から離れた位置に設けていることで、排水したときに排水口21からボール弁体12までの間に水が残留することが懸念されるが、この対策としては、例えば、カバー18等に図示しないプラグを設け、このプラグから水を排水することにより解決できる。
【0035】
ボデー11の流入出口11a、11b付近には、これらと連通する連通路11c、11dを設けており、この連通路11c、11dに連通して圧力遮断弁24、24をそれぞれ設けている。さらに、圧力遮断弁24、24の二次側には、圧力計25、25を設けている。
【0036】
圧力計25は、流水検知装置に一般的に取付けられるものであり、特に、図1のように圧力計25の間に圧力遮断弁24を介在させると、ボデー11内部やボデー11が装着される配管内に水を張る際に、この圧力遮断弁24を閉状態にしておくことで急激な圧力上昇による圧力計25の破損を防ぐことができる。また、圧力計25の交換やメンテナンス時等においても同様に閉状態にすることで、これらを容易に行うことができる。
【0037】
図7ないし図9に示した検知機構30は、ボール弁体12、ボールガイド14、スピンドル15、作動部材31、ばね32、ロータリーダンパー33、回転体34、引張ばね35、リミットスイッチ50を有している。この検知機構30は、ボール弁体12がボールガイド14を押圧してスピンドル15が回転したときに、このスピンドル15の回転を受けてリミットスイッチ50に遅延して伝達できるようにしている。
また、遅延機構39は、作動部材31と、ばね32、ロータリーダンパー33、回転体34、引張ばね35とからなり、リミットスイッチ50への伝達を遅延できるようにしている。
【0038】
作動部材31は、略プレート状に形成している。リンクロッド36は、作動部材31とスピンドル15とを接続するものであり、このリンクロッド36の一端側に形成した凹状二面部36aをスピンドル15の平行二面部15aに嵌合させ、他端側を作動部材31の一端側に固定ナット37で固定することで、作動部材31とボデー11側のスピンドル15を、このリンクロッド36により軸着している。これにより、作動部材31の一端側はボールガイド14と同軸に固着され、この作動部材31は、ボールガイド14との回動に伴って回動できるようにしている。
また、作動部材31の他端側は、ピン状に突出形成した突出部31aを設けている。この突出部31aは、スピンドル15が回転したときにリンクロッド36を中心に回転できるようにしている。
【0039】
作動部材31の一端側付近には取付孔31bが穿孔され、この取付孔31bと検知機構30に設けたボルト等の掛止め部30aの間にばね32が張設された状態で取付けられている。ばね32には引張力が働いており、この引張力によって、通常時には、図8のように作動部材31を引張り方向に回転させて回転体34に係止し、また、作動部材31の回転によってスピンドル15に取付けられたボールガイド14をボール弁体12の着座方向に回転させている。
【0040】
回転体34は、一端側に作動部材31の突出部31aと係止可能な係止部34bを設け、他端側に引張ばね35取付け用の取付穴34cを設け、係止部34bと取付穴34cとの中央部位に装着穴34aを設けている。また、引張ばね35取付け側にリミットスイッチ50押圧用の押圧部34dを設けている。回転体34は、軸着穴34aにおいてロータリーダンパー33の回転軸33aと同軸に軸着され、回転体34が回転するときには、ロータリーダンパー33に対して後述のような作用を働かせている。
【0041】
回転体34の一端側には、作動部材31側の突出部31aと係止可能な係止部34bを設けており、突出部31aに対して、この係止部34bをばね32の引張力に対して抗する側から係止している。また、回転体34の他端側の取付穴34cと、ハウジング30cに突設して設けたボルト等の掛止め部30bの間に、引張ばね35の引張力を働かせた状態で取付けている。回転体34は、作動部材31との係止が外れたときに他端側のスイッチ押圧部34dが引張ばね35の引張力によって回転してリミットスイッチ50を作動可能に設けている。
【0042】
引張ばね35の引張力による回転体34の回転力は、ばね32の引張力による作動部材31の回転力よりも小さくなるようにし、これにより、非火災時には、回転体34がリミットスイッチ50をオンする方向に回転することがなく、誤動作を防いでいる。
掛止め部30bは、ハウジング30cの適宜位置に設けることができ、この掛止め部30bの位置を変えることで引張ばね35の引張力を調節でき、ロータリーダンパー33による遅延時間を変更できるようにしている。
【0043】
また、回転体34における引張ばね35の取付側に六角ボルト・ナット38を設け、この六角ボルト・ナット38を重りとして、回転体34を作用させている。これにより、回転体34には引張ばね35の引張力に加えて、六角ボルト・ナット38の重さによるトルクが加わっている。この六角ボルト・ナット38は、引張ばね35の引張力を強くすることにより、省略することもできる。
【0044】
押圧部34dは、引張ばね35の引張り方向に突設して設け、回転体34が回転したときにこの押圧部34dがリミットスイッチ50の接点51に確実に接離してこのリミットスイッチ50をオンオフできるようにしている。
また、引張ばね35の回転体34取付け側の基端部35aを、遅延機構39の適宜位置に設けることができるようにしている。
【0045】
ロータリーダンパー33は、図示しないボルト等によって検知機構30のハウジング30cに固定し、回転体34の中央部位と同軸に固着している。
ロータリーダンパー33は、一方向の回転が他方向の回転よりも負荷が大きくなるように構成しており、通常利用されているものを用いることができる。これにより、通水時のスピンドル15がボール弁体12によって回転する方向の負荷が、止水時のスピンドル15が元の状態に戻ろうとする回転方向の負荷よりも大きくなるようにしている。
【0046】
ロータリーダンパー33としては、例えば、図示しない筒状ケースの内周摺動面に摺動板の外周摺動面を当接させるように収納し、筒状ケース内にグリース等の高粘性流体を封入し、高粘性流体による回転反力を利用して負荷を起こさせるようにしたものがある。さらに、この場合、一方向のみに対して回転反力を発生させるために、摺動板とこの摺動板に入力するための入力軸との間にラチェット車を介在させたものがある。また、これ以外にも各種のロータリーダンパーがあるが、本発明においては、ロータリーダンパーの構造に拘ることはなく、様々なロータリーダンパーを用いることができる。
【0047】
続いて、装置本体1の動作を説明する。
装置本体1が設置された集合住宅に火災が発生し、この火災によって図示しないスプリンクラーヘッドが開放されて放水が始まると、ボデー11内のボール弁体12が移動を開始する。
【0048】
ボール弁体12が着座部45に着座した状態からボールガイド14に接触するまでの間には、この移動空間において、ボールガイド14が動作することがなく、これにより、ボール弁体12がごく僅かの漏水によって動いたとしても検知機構30に影響を与えることがない。
【0049】
図4においては、ボール弁体12が着座部45に着座した状態を示しているが、着座部45の二次側の流路の内径dは、ボール弁体12の外径Dよりも僅かに拡径して絞り経路65を設け、この絞り経路65によって絞り経路65の内周面とボール弁体12の外周面との間に約1mm程度のごく僅かのクリヤランスCLを設けるようにしているため、着座した状態からボール弁体12の移動により流路13が開の状態になるまでの間に急激に流水が増加することがない。
【0050】
続いて、ボール弁体12は、ガイド部20に沿って移動し、ボール弁体12がボールガイド14に接触すると、ボールガイド14を押し上げながら移動し、ボールガイド14に固着したスピンドル15が回転する。スピンドル15が回転すると、この回転に伴ってスピンドル15の先端側に固着された作動部材31が回転する。
このとき、ボール弁体12は、図1のボール弁体12が着座した状態を0°とし、この状態から図2のようにスピンドル15が約30°の角度に回転するまで、ボール弁体12は、絞り経路65内を上昇するように移動する。
【0051】
図2の状態までボール弁体12が移動すると(ボール弁体12が着座部45から約30mmの高さまで上昇すると)、図5に示すように、ボール弁体12と流路13との間には、クリヤランスCLよりも大きい空隙Sが生じ、この空隙S内をより大きい流量の水が流れる。
また、この状態において、ボールガイド14に固着されたスピンドル15の作用によって、後述のようにリミットスイッチ50の接点51が押され、バルブの開状態が検出される。
【0052】
絞り経路65は、図2の状態において、少なくとも最低作動流量である50L/minが流れるような口径に設定しているため、この絞り経路65によって少ない流量でボール弁体12が確実に移動を開始する。また、この絞り経路65内をボール弁体12が移動したときには、クリヤランスCLから空隙Sまでの状態に面積が徐々に拡径して流量が増加する。
【0053】
さらにボール弁体12が移動すると、図3のように、ボール弁体12に押されているボールガイド14がストッパ部11eに当接してボール弁体12の移動とボールガイド14の回転が停止し、バルブの全開状態となる。このとき、図6に示すように、ボール弁体12と流路13との間には最大の空隙S´が生じ、この空隙S´を最大流量(例えば、口径40Aの場合、350L/min)の水が流れる。
【0054】
スプリンクラーヘッドからの放水量は、開放されたヘッドの数によって異なるが、口径40Aの場合、火災を検知するために必要な最小流量が50L/min、最大流量が350L/minとなっている。最小流量を流すためのボール弁体12を図2の状態、最大流量を流すためのボール弁体12を図3の状態とすることにより、最小流量から最大流量までの検知を行うことが可能になる。特に、最小流量である50L/minのときにボール弁体12を最小の開度で動作させていることにより、スプリンクラー全体の放水量が増加して各スプリンクラーの流量が少なくなった場合でも、確実に検知することができる。
【0055】
一方、検知機構30(遅延機構39)において、作動部材31は、通常時には、図8のようにばね32の引張力によってボール弁体12が閉止する方向に押圧されているが、ばね32の引張力による作動部材31の回転力よりも、スピンドル15がボール弁体12によって回転する回転力のほうが大きくなるように設定しているため、ボール弁体12が図2の状態まで移動したときに、作動部材31は図9のように回転する。
【0056】
回転体34は、係止部34bが、作動部材31の突出部31aに係止していることで、通常時には、図8のようにばね32によって引張られて押圧部34dがリミットスイッチ50の接点51から離れた状態で保持されているが、水が流れて作動部材31が弁開側に回転したときにはこの作動部材31の突出部31aが係止部34bから離間するように回転するため、回転体34は自由に回転できる状態になる。
【0057】
回転体34には、係止部34bの他端側に、リミットスイッチ50側に引張る方向に回転させる引張ばね35が設けられており、また、軸着穴34aにおいて、ロータリーダンパー33の回転軸33aに軸着されているため、作動部材31の係止が外れたときには、引張ばね35の引張方向に軸着穴34aを中心にゆっくりと回転運動を開始する。
【0058】
ボール弁体12がボールガイド14を押圧し、回転体34が自由に回転できる状態になったときから、押圧部34dがリミットスイッチ50をオンするまでの遅延時間は、引張ばね35とロータリーダンパー33による負荷の力を予め調整しておくことにより適宜設定することができる。
この遅延時間は、例えば、10秒程度に設定するのが望ましいが、装置本体1の設置場所や使用条件などによって変更してもよく、遅延時間を変更する場合は、引張ばね35のハウジングへの取付位置を変えることで引張力を調整でき、任意の遅延時間にすることができる。
【0059】
上記のように、回転体34は、負荷がかかっていることでゆっくりと回転し、所定の遅延時間が経過したのちに図9のように回転が完了してリミットスイッチ50をオンし、このリミットスイッチ50は、図示しない制御盤に対して弁体が開放したことを知らせる信号を発する。この信号によって図示しない警報装置が作動し、火災の発生によるスプリンクラーの動作を知らせるようにしている。
【0060】
次に、火災が鎮火した場合、装置本体1の一次側に設置したボールバルブ40を全閉状態にして放水流路への流水を停止させるようにする。ボデー11内への流水が停止すると、ボール弁体12は自重によりガイド部20に沿って一次側に設置したボールバルブ40を全閉状態にして放水流路への流水を停止させるようにする。
【0061】
作動部材31は、突出部31aが回転体34の係止部34bを押圧するように回転するため、回転体34は引張ばね35の引張力に抗する方向に回転する。回転体34が回転すると、図8のように押圧部34dで押し込まれていた接点51が開放されてスイッチオフとなり、制御盤への信号が停止して警報装置の作動が停止する。
【0062】
一方、漏水などによって装置本体1内に5〜10L/min程度の微小流量の水が流れた場合には、この水量は50L/minに満たないため、ボール弁体12は、絞り経路65内を上昇するものの図2の状態まで達することがなく、作動部材31が完全に作動することはない。
【0063】
作動部材31の回転量が少なく、図9の状態まで達しない場合には、突出部31aに係止部34bが当たることによって回転体34は回転が抑止された状態になり途中で停止する。これにより、リミットスイッチ50はオンされることがなく、オフの状態を維持することができる。
【0064】
また、作動部材31が所定の位置まで完全に回転したとしても、この回転した状態を維持する時間が遅延時間(例えば10秒間)よりも短い場合には、回転体34にはロータリーダンパー33から負荷が加わっていることにより、回転体34が完全に回転することはない。これにより、流水時間が、例えば、9秒間である場合には、回転体34は引張ばね35の引張力によってリミットスイッチ50をオンする直前までは動作するが、流水が停止すると同時に作動部材31がばね32によって回転し、この作動部材31が回転体34を押圧してリミットスイッチ50のオフの方向に回転するため、リミットスイッチ50がオンになることはない。以上のように、漏水などの流水量が微小量である場合には、誤作動を防ぐことができる。
【0065】
なお、ロータリーダンパー33は、正逆両方の回転時に制動力(負荷)をかけるものと、片方の回転方向にのみ制動力がかかって逆回転時にはかからないものの2種類があり、必要に応じて何れかの仕様を選択することができる。
前者を使用すると、流水が停止したときにゆっくりと全閉位置に戻る作動が行われるため、配管にウォーターハンマーのような衝撃力が働くのを防ぐことができる。
一方、後者を使用すると、流水が停止したときに速やかに全閉位置に戻る作動が行われるため、スプリンクラーからの放水を急激に終了させることが可能となる。
【0066】
次に、本発明の流水検知装置の上記実施形態における作用を説明する。
本発明における装置本体1は、ボデー11内に設けた着座部45の二次側の所定移動範囲R内に絞り経路65を形成し、絞り経路65の内周面とボール弁体12の外周面とは約1mm程度の小さいクリヤランスCLを設けるようにしているので、ボール弁体12は、流水から大きな力を受けて、最小流量である50L/minの流量でも動くことができ、このボール弁体12の動作によってスピンドル15を30°の角度まで回転動作させることができる。
【0067】
このように、装置本体1は、小流量によってスピンドル15の角度を大きく動作させることができ、最低作動流量によって水が流れた場合でもこの流水を容易に検知し、例えば、スプリンクラーの作動数が変わった場合でも、検知機構30を確実に作動させて火災の発生とその規模を検知することができる。また、絞り経路65を設けていることにより、圧力損失を低減することができ、例えば、口径40Aにおいて、規定の0.05MPa以内に圧力損失を収めることができる。
【0068】
装置本体1は、ボールチェッキ方式の弁構造を呈しているので、弁体とスピンドルを固定する必要がなく、ボール弁体12の二次側におけるボデー11側に絞り経路65を設けることができる。これにより、全体を軽量化しつつ、弁体を確実に作動させることができ、また、ボデー11は、絞り経路65を設けた単純な構造であるため部品点数を抑えることができ、例えば、鋳造によって容易に製作することができるため、コストも抑えることができる。
【0069】
また、カバー18を取り外すことによりボール弁体12を容易に出し入れでき、シートリング44も簡単に着脱できるため、手間をかけずに組立て作業やメンテナンスを行うことができ、作業時間の短縮化も図ることができる。例えば、ゴミや配管の錆等が封止面にかみ込んでシート漏れが発生した場合には、ボデー11からカバー18を取り外してボール弁体12やシートリング44を交換し、カバー18を元に戻すことにより簡単に作業を完了することができる。
【0070】
また、流路13の流過面積を小さく絞って流速を速くし、より早く全開状態にできる構造に設けているため、弁体を特殊形状に設けて流過面積を絞ったバルブのようにバルブ全体が大きくなることがなく、コンパクト化を図ることが可能である。
さらに、ボール弁体12が移動するガイド部20は円弧である必要がなく、ガイド部20を小さくすることでよりコンパクトに形成できる。
【0071】
なお、絞り経路65の形状や長さ、ボール弁体12の外径は適宜変更することができ、これらを変更することにより、ボール弁体12の移動量を調節したり、検知機構30をオンする際のボールガイド14の角度などを変更することができ、検知機構30(遅延機構39)の仕様を変更することができる。
【0072】
また、本実施形態における装置本体1は、ボール弁体12が開状態に動作する場合に遅延機構39によって遅延させて信号を送るようにしたものであるが、作動方向を逆にしてボール弁体12が閉方向に動作する場合に使用することもできる。
【0073】
スピンドル15の取出し方向は、ボデー11の左右どちら側でも可能であり、予め、ボデー11の左右両側にそれぞれスピンドル15を設けた装置本体を設けておくことにより、設置場所の状況に応じてこの装置本体を設置することができ、例えば、狭い設置場所などにも配設することができる。また、このスピンドル15は、ボデー側に設けることもできる。
【0074】
ボールガイドは、ボール弁体12の一次側に設置することもでき、この場合、ボールガイドを作動させてボール弁体12を強制的に開放させるような構造に設けることもできる。
【0075】
また、本発明の流水検知装置は、標準のボールチェッキ弁に応用することもできる。通常、ボールチェッキ弁は、弁体の動作状態を外部に伝える機構を備えていないが、上記実施形態のようにボールガイド14やスピンドル15を装着することによって、ボールチェッキ弁において、開度表示を伝えることができたり、全閉・中間開度時等において弁体を固定保持する部位を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の流水検知装置の一例を示した断面図である。
【図2】図1の流水検知装置の動作開始の状態を示した断面図である。
【図3】図1の流水検知装置の全開状態を示した断面図である。
【図4】図1におけるA−A線断面図である。
【図5】図2におけるB−B線断面図である。
【図6】図2におけるC−C線要部断面図である。
【図7】検知機構を示した概略正面図である。
【図8】図1における遅延機構の作動状態を示した作用説明図である。
【図9】図3における遅延機構の作動状態を示した作用説明図である。
【図10】装置本体の流量特性を示したグラフである。
【符号の説明】
【0077】
1 装置本体
11 ボデー
11a 流入口
11b 流出口
12 ボール弁体
30 検知機構
44 シートリング
45 着座部
50 リミットスイッチ(検知部)
65 絞り
R 所定移動範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口と流出口を有するボデー内に着座部を設け、この着座部に着座したボール弁体をガイドに案内されながら移動可能に設け、このボール弁体の移動を検知機構を介して検出すると共に、前記着座部の二次側の所定移動範囲内に絞り形状の絞り経路を形成したことを特徴とする流水検知装置。
【請求項2】
前記絞り経路の内周面と前記ボール弁体の外周面とは約1mm程度のクリヤランスを有した請求項1記載の流水検知装置。
【請求項3】
前記絞り経路の長さは、ボール弁体が移動したときにボール弁体の移動に伴って回動するボールガイドに設けたスピンドルの回転角度を約30°とした請求項1又は2に記載の流水検知装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−333087(P2007−333087A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165824(P2006−165824)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(304017476)東洋バルヴ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】