説明

流路デバイスの製造方法

【課題】 特に、安定して高精細の流路部を形成することが可能な流路デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明の流路デバイスの製造方法は、第1基材1の基材表面に流路の形状パターンからなるマスク層3を形成する工程、前記基材表面から前記マスク層の表面にかけて第2基材2を接合する工程、前記第1基材あるいは前記第2基材の少なくとも一方に前記マスク層3にまで貫通する貫通孔4を形成する工程、前記貫通孔4から前記マスク層3を除去して前記流路を形成する工程、
を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材間に中空状の流路を安定して高精細に形成するための流路デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記に示す特許文献には、マイクロ流路デバイスに関する発明が開示されている。
マイクロ流路デバイスには基材間に中空状のマイクロ流路が形成されている。従来では、マイクロ流路を、基材にミリングやブラスト等の機械加工により形成し、あるいは、基材に抜き型プレス等により抜き落とし加工にて形成し、又は、感光性樹脂よりなる基材にフォトリソグラフィ技術を用いて形成していた。そして、凹形状のマイクロ流路が形成された基材表面に接着層を介して蓋をして、基材間に中空状のマイクロ流路を構成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−284626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のマイクロ流路の形成方法では、高精細化に限界があった。また、蓋材をプレス加工によりマイクロ流路が形成された基材表面に接合するときに、蓋材が変形したり、あるいは蓋材と基材間を接合するための接着層がマイクロ流路内部にはみ出し、マイクロ流路の形状が変形したり、マイクロ流路を閉塞する恐れがあった。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、特に、安定して高精細の流路部を形成することが可能な流路デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における流路デバイスの製造方法は、
第1基材の基材表面に流路の形状パターンからなるマスク層を形成する工程、
前記基材表面から前記マスク層の表面にかけて第2基材を接合する工程、
前記第1基材あるいは前記第2基材の少なくとも一方に前記マスク層にまで貫通する貫通孔を形成する工程、
前記貫通孔から前記マスク層を除去して前記流路を形成する工程、
を有することを特徴とするものである。
【0007】
このように、本発明では、第1基材の基材表面に流路の形状パターンからなるマスク層を形成し、第1基材の基材表面側を第2基材で覆った後、第1基材あるいは第2基材にマスク層にまで通じる貫通孔を形成し、前記貫通孔から腐食溶解液等を注入し前記マスク層を溶解除去して第1基材と第2基材間に中空状の流路を形成する。これにより本発明では従来の機械加工等と異なって高精細の流路を適切且つ簡単に形成することができる。また、従来のようにプレス加工時や接着層の流入により生じやすかった流路の閉塞を適切に回避することができる。以上により、本発明では安定して高精細の流路を形成することができ、微細な流路を有する流路デバイスの量産化を図ることが可能になる。
【0008】
本発明では、前記流路は、幅狭流路部と、前記幅狭流路部に連結する前記幅狭流路部よりも幅が広い幅広流路部とを有し、
前記マスク層を、前記幅狭流路部の形状パターンと前記幅広流路部の形状パターンとを有して形成し、
前記貫通孔を、前記マスク層の前記幅広流路部の形状パターンと対向する位置に形成し、
前記マスク層を除去して、前記幅狭流路部と前記幅広流路部とを有する前記流路を形成することが可能である。
【0009】
本発明では、流路の一部に幅が狭い、具体的には幅が数十μm〜数μm程度の幅狭流路部が形成される形態であっても前記幅狭流路部を再現性良く高精細に形成することが可能である。
【0010】
また本発明では、フォトリソグラフィ技術により、前記流路の形状パターンからなる前記マスク層を形成することが好ましい。これにより、高精細の流路を安価に形成することが可能になる。
【0011】
また本発明では、前記第1基材あるいは前記第2基材の一方に、一部流路パターンの前記貫通孔を形成し、他方に、導入口パターン及び導出口パターンの前記貫通孔を形成し、前記一部流路パターンの貫通孔が形成された側の基材表面に、前記マスク層の除去後、第3基材を接合して、前記一部流路パターンの貫通孔側を塞ぐことが好ましい。これにより、導入口及び導出口を有するとともに、一部流路パターンの貫通孔と、マスク層を除去して前記第1基材と第2基材との間に形成された流路とが一体化された流路を形成することができる。
【0012】
上記において、前記第3基材の表面に電極部を形成し、前記第3基材を前記一部流路パターンの貫通孔内に設置することが可能である。これにより流体を流路に流しながら、前記流体に対する電気的な測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では従来の機械加工等と異なって高精細の流路を適切且つ簡単に形成することができる。また、従来のようにプレス加工時や接着層の流入により生じやすかった流路の閉塞を適切に回避することができる。以上により、本発明では安定して高精細の流路を形成することができ、微細な流路を有する流路デバイスの量産化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1の各図は、本実施形態における流路形成の原理を説明するための工程図(縦断面)、
【図2】図2(a)は、本実施形態における流路デバイス10の部分縦断面を模式図で示したものである。図2(b)は、図2(a)に示す流路デバイス10に形成される中空状のマイクロ流路14の外形(点線で示す)と前記マイクロ流路14に通じる導入口15及び導出口16の形状を示す平面図、図2(c)は、前記マイクロ流路14のうち第1基材11に形成される一部流路17,17の外形を示す平面図、
【図3】図3(a)は、本実施形態における流路デバイスの製造工程を示す部分縦断面図であり、図3(b)は、レジスト層の平面図、
【図4】図4(a)は、図3(a)の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図であり、図4(b)は、マスク層の平面図、
【図5】図5は、図4(a)の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図、
【図6】図6(a)は、図5の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図、図6(b)は、第2基材12上の銅箔25に形成される抜きパターンの平面図、図6(c)は、第1基材11下の銅箔21に形成される抜きパターンの裏面図、
【図7】図6(a)の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図、
【図8】図8(a)は、図7の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図、図8(b)は、図8の工程にて除去されたマスク層の形状、すなわちマイクロ流路の形状を点線で示すとともに、導入口パターン及び導出口パターンの貫通孔26,27の平面図、図8(c)は、流路デバイスを真下から見たときに現れる一部流路パターンの貫通孔28,28と、導入口パターン及び導出口パターンの貫通孔26,27の裏面図、
【図9】図8(a)の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まずは図1を用いて本実施形態におけるマイクロ流路の製造方法の原理を説明する。図1の各図は、製造工程における流路デバイスの縦断面を模式図で示したものである。
【0016】
図1(a)の工程では、第1基材1の上面1aにマイクロ流路の形状パターンからなるマスク層3を形成する。第1基材1には樹脂やガラス等を使用できるが、ポリイミド樹脂を用いることが好適である。また、マスク層3の材質は問わないが銅、アルミニウム、ニッケル等の溶解しやすい金属を用いることが好適である。たとえば、マスク層3を銅箔にて形成することができる。本実施形態では、第1基材1と基材表面に銅箔が形成されたフレキシブルプリント基板用の銅貼り基板を用いることが出来る。
【0017】
図1(a)の工程では、第1基材1の上面1aに形成された銅箔に対し、フォトリソグラフィ技術を用いて、マイクロ流路の形状パターンとなるマスク層3を形成することができる。
【0018】
次に図1(b)の工程では、第2基材2を第1基材1の上面1aからマスク層3の表面にかけて接合する。第1基材1と第2基材2間を熱圧着させることができ、あるいは接着層を用いて基材1,2間を接合することができる。第2基材2も第1基材1と同様にポリイミドであることが好適である。
【0019】
図1(b)の工程によりマスク層3の上下面及び側面全体が基材1,2で覆われた状態になる。
【0020】
次に図1(c)の工程では、第1基材1の下面1bに、マスク層3にまで通じる複数の貫通孔4,4を形成する。図1(c)には図示していないが、第1基材1の下面1bには銅箔が設けられており、前記銅箔に対し、フォトリソグラフィ技術を用いて貫通孔4,4を形成すべき部分に抜きパターンを形成する。そして前記抜きパターンから露出する第1基材1をエッチングにより除去し、図1(c)に示す貫通孔4、4を形成する。ポリイミド樹脂からなる第1基材1をエッチングする際に使用されるエッチング液はアルカリ性であり、このとき、マスクである銅箔は除去されない。
【0021】
図1(c)に示すように貫通孔4,4はマスク層3の一部に対向して形成されるため、貫通孔4,4からは、マスク層3の一部が露出した状態となっている。
【0022】
そして図1(d)に示す工程では、貫通孔4,4から酸性のエッチング液を注入して銅箔で形成された前記マスク層3を除去する。このときポリイミド樹脂で形成された基材1,2はエッチングの影響を受けない。
【0023】
図1(d)に示すように、第1基材1と第2基材2との間に、中空状のマイクロ流路5を形成することができる。マイクロ流路5は、第1基材1に形成した貫通孔4,4と一体化している。
【0024】
なお図1では第1基材1に貫通孔4を設けてマスク層3を除去しているが、第2基材2にマスク層3にまで通じる貫通孔を設けてマスク層3を除去することもできる。
【0025】
図2(a)は、本実施形態における流路デバイス10の部分縦断面を模式図で示したものである。図2(b)は、図2(a)に示す流路デバイス10に形成される中空状のマイクロ流路14の外形(点線で示す)と前記マイクロ流路14に通じる導入口15及び導出口16の形状を示す平面図、図2(c)は、前記マイクロ流路14のうち第1基材11に形成される一部流路17,17の外形を示す平面図である。
【0026】
図2(a)に示すように流路デバイス10は、第1基材11と、第1基材11の上面11aに形成された第2基材12と、第1基材11の下面11bに形成された第3基材13との積層構造で形成される。
【0027】
各基材11,12,13は樹脂やガラス等で形成されるが、本実施形態の流路デバイス10を血液等の流体をマイクロ流路14に流して所定の実験を行う用途に使用する場合には、耐薬品性や親水性の高いポリイミド樹脂を使用することが好適である。
【0028】
図2(a)(b)に示すように流路デバイス10には中空状のマイクロ流路14が形成される。マイクロ流路14は、幅が狭い幅狭流路部14aと、幅狭流路部14aの両側に形成される幅狭流路部14aよりも幅が広い幅広流路部14bとを有して形成される。幅狭流路部14aと幅広流路部14bとは連結して形成されている。本実施形態では、幅狭流路部14aの幅寸法を数十μm〜数μmの範囲で形成することが可能である。
【0029】
図2(a)に示すように幅狭流路部14aは、第1基材11と第2基材12の間に形成される。図2(a)に示すように幅狭流路部14aの位置には第1基材11の一部11cが残されているが、幅広流路部14bの位置では第1基材11が除去されており、幅広流路部14bは、第2基材12と第3基材13との間に形成される。図2(a)に示すように、幅広流路部14bの高さ寸法は、幅狭流路部14aよりも第1基材11の厚さ分だけ大きくなっている。
【0030】
幅広流路部14bの形状を考察すると、第1基材11の部分では、図2(c)に示すように、幅狭流路部14aが形成されていない一部流路17の形態となっている。
【0031】
図2(a)(b)に示すように、第2基材12には、幅広流路部14bに通じる導入口15と導出口16が形成されている。よって、導入口15から中空状のマイクロ流路14へ流体を流し、マイクロ流路14内を流れた前記流体を導出口16から排出することが可能である。
【0032】
図2(b)では、導入口15及び導出口16の平面形状が円形状であるが形状を限定するものではない。導入口15及び導入出口16の幅寸法は、幅広流路部14bの幅寸法よりも小さく形成される。
【0033】
図2(a)に示すように、第3基材13の上面13aには、電極層18が形成され、前記電極層18は第1基材11に形成された一部流路17の位置に配置される。電極層18の材質は特に限定するものではないが、後述する製造方法によれば銅で形成することが可能である。
【0034】
図2に示す流路デバイス10は、血液等の流体をマイクロ流路14に流しながら電気的な測定を行うことが可能な医療用や個人用の検査プレートを構成できる。
【0035】
図2に示す構造の流路デバイス10は、図1に示すマイクロ流路の形成方法を利用して製造することができる。
【0036】
図3〜図9を用いて図2に示す流路デバイス10の製造方法を説明する。
図3(a)は、本実施形態における流路デバイスの製造工程を示す部分縦断面図であり、図3(b)は、レジスト層の平面図を示す。
【0037】
図3(a)の工程では、例えばポリイミド樹脂から成る第1基材11の上下に銅箔20,21が形成されたフレキシブルプリント基板用の両面銅貼り基板22を用意する。第1基材11の厚さ寸法は数十μm、銅箔20,21の厚さ寸法は数μm〜数十μmであり、図3(a)に示すように、第1基材11の厚さ寸法は、銅箔20,21よりも大きい。
【0038】
銅箔20上の全面にレジスト層を塗布し、露光現像により図3(a)(b)に示す形状のレジスト層23を残す。図3(b)に示すレジスト層23の平面形状は、マイクロ流路の形状パターンであり、幅狭流路部の形状パターン23aと、幅広流路部の形状パターン23bとを有している。本実施形態では、幅狭流路部の形状パターン23aを数十μm〜数μmの微細な幅寸法に高精度に形成することが可能である。
【0039】
図4(a)は、図3(a)の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図であり、図4(b)は、マスク層の平面図を示す。
【0040】
図4(a)の工程では、図3(a)のレジスト層23に覆われていない銅箔20をエッチングにて除去する。エッチングはウエットエッチングであってもドライエッチングであってもよい。このとき、レジスト層23に覆われていない銅箔20は除去されるが、第1基材11はエッチングの影響を受けないエッチング条件でエッチングを行う。エッチング後、レジスト層23を除去する。
【0041】
これにより図4(b)に示す平面形状の銅箔20がマスク層24として残される。図4(b)に示すように、マスク層24は、幅狭流路部の形状パターン24aと幅広流路部の形状パターン24bとを有して構成される。
【0042】
なお銅貼り基板22には基準穴(図示しない)をNCドリル等で形成しておくことが好ましい。基準穴に基づいてマスク層24の形成位置等を調整することができる。
【0043】
図5は、図4(a)の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図である。
【0044】
図5に示す工程では、例えばポリイミド樹脂からなる第2基材12と第2基材12の片面に形成された銅箔25とを有するフレキシブルプリント基板用の片面銅貼り基板31を用意する。第2基材12の厚さ寸法は第1基材11の厚さ寸法と同程度である。そして図5に示すように第2基材12の銅箔25が形成されていない側の面12aを第1基材11の上面11aからマスク層24の表面にかけて例えば熱圧着により接合する。第1基材11及び第2基材12に熱可塑性ポリイミドを用いることで、第1基材11と第2基材12とを適切に熱圧着させることが出来る。あるいは接着層を用いて片面銅貼り基板31を第1基材11の上面11aからマスク層24の表面にかけて接合してもよい。なお、片面銅貼り基板31の接合の際に基準穴が塞がらないように片面銅貼り基板31には予め大きめに基準穴(図示しない)を開口させておくことが好適である。
【0045】
図6(a)は、図5の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図、図6(b)は、第2基材12上の銅箔25に形成される抜きパターンの平面図、図6(c)は、第1基材11下の銅箔21に形成される抜きパターンの裏面図、である。
【0046】
図6(a)の工程では、第2基材12上の銅箔25に対して図示しないレジスト層を用いて図6(a)(b)に示す導入口の抜きパターン25a及び導出口の抜きパターン25bを形成する。このようにフォトリソグラフィ技術を用いて高精度に抜きパターン25a,25bを形成することができる。
【0047】
図6(a)では、抜きパターン25a,25bを、マスク層24の幅広流路部の形状パターン24bと高さ方向にて対向する位置に形成する。抜きパターン25a,25bの形状は図6(b)に示すように円形状であってもよいし円形状以外の形状であってもよい。抜きパターン25a,25aを、血液等の流体を注入・排出することが可能な程度の大きさで形成する。
【0048】
また図6(a)の工程では、第1基材11下の銅箔21に対して図示しないレジスト層を用いて図6(a)(c)に示す一部流路の抜きパターン21aを形成する。このようにフォトリソグラフィ技術を用いて高精度に抜きパターン21aを形成することができる。
【0049】
図6(a)では、抜きパターン21aを、マスク層24の幅広流路部の形状パターン24bと高さ方向にて対向する位置に形成する。例えば、抜きパターン21aの平面形状は図6(b)に示すようにマスク層24に形成される幅広流路部の形状パターン24b(図4(b)参照)のうち、幅狭流路部の形状パターン24aに近い部分を除いた形状で形成される。このため、図6(a)に示すように、銅箔21の一部21bが、マスク層24の幅狭流路部の形状パターン24aと高さ方向で対向する位置に残される。
【0050】
図7は、図6(a)の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図を示す。
【0051】
図7に示す工程では、残された銅箔25をマスクとして、抜きパターン25a,25bから露出する第2基材12をエッチングにより除去し、マスク層24にまで通じる貫通孔26,27を形成する。同様に、残された銅箔21をマスクとして、抜きパターン21aから露出する第1基材11をエッチングにより除去し、マスク層24にまで通じる貫通孔28を形成する。このとき、第1基材11及び第2基材12をエッチングにて除去できるが、銅箔21,25はエッチングの影響を受けない条件でエッチングを行う。例えばアルカリ液を用いてポリイミドから成る第1基材11及び第2基材12のみを適切にエッチングでき、第1基材11及び第2基材12にマスク層24にまで通じる各貫通孔26,27,28,28を形成することができる。
【0052】
図7に示す工程により、第1基材11には、一部流路パターンの貫通孔28を形成でき、第2基材12には、導入口パターン及び導出口パターンの貫通孔26,27を形成することができる。貫通孔28,28の間には、マスク層24の幅狭流路部の形状パターン24aと対向する位置に第1基材11の一部11cが残される。
【0053】
なお図7に示す導入口パターン及び導出口パターンの貫通孔26,27を第1基材11に、一部流路パターンの貫通孔28を第2基材12に形成するようにしてもよい。
【0054】
図8(a)は、図7の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図、図8(b)は、図8の工程にて除去されたマスク層の形状、すなわちマイクロ流路の形状を点線で示すとともに、導入口パターン及び導出口パターンの貫通孔26,27の平面図、図8(c)は、流路デバイスを真下から見たときに現れる一部流路パターンの貫通孔28,28と、導入口パターン及び導出口パターンの貫通孔26,27の裏面図である。
【0055】
図8(a)の工程では、貫通孔26,27,28からマスク層24をエッチングにて除去する。例えば、酸性のエッチング液を貫通孔26,27,28から注入してマスク層24を腐食溶解させる。このとき、ポリイミド樹脂から成る第1基材11及び第2基材12はエッチングの影響を受けない。また、マスクとして残されていた銅箔21,25(図7参照)もこの工程で除去される。
【0056】
エッチング液はいずれかの貫通孔26,27,28から注入すればよいが、大きく開口している貫通孔28を利用することで、マスク層24を確実且つ迅速に除去することが可能である。
【0057】
図8(a)に示す工程を行うことで、マスク層24を除去した部分にマイクロ流路14を形成することができる。マイクロ流路14は図2で説明したと同様に、幅狭流路部14aと、幅狭流路部14aの両側に位置する幅広流路部14bとで構成される(図8(b)参照)。
【0058】
図8(a)に示すように、マイクロ流路14の幅狭流路部14aの部分には第1基材11の一部11cが残されており、幅狭流路部14aの高さ寸法は、マスク層24の厚さ寸法となっている。一方、幅広流路部14bの高さ寸法は、図8(a)(c)に示す第1基材11に形成された一部流路を構成する貫通孔28の部分も加わり、マスク層24の厚さ寸法+第1基材11の厚さ寸法となっている。
【0059】
図9は、図8(a)の次に行われる製造工程を示す流路デバイスの部分縦断面図である。
【0060】
図9の工程では、例えばポリイミド樹脂から成る第3基材13の上面13aに銅箔が形成されたフレキシブルプリント基板用の銅貼り基板29を用意する。そしてフォトリソグラフィ技術を用いて、前記銅箔から電極層18,18を形成する。この電極層18,18の厚さ寸法は第1基材11よりも薄く形成される。
【0061】
図9では電極層18を第1基材11に形成された貫通孔28,28に対向する位置に形成する。
【0062】
次に図9の工程では、第3基材13の表面13aの第1基材11と対向する位置に接着層30を設ける。接着層30は例えば感光性接着シートであり、第3基材13の表面13aから電極層18の表面にかけて付与された感光性接着シートを露光現像して電極部18及びマイクロ流路14の部分に位置する感光性接着シートを除去し、第1基材11と接合させる部分に前記感光性接着シートを残す。
【0063】
そして、図9の矢印で示すように、第1基材11と第3基材13とを接着層30を介して接合する。これにより、第1基材11に形成された貫通孔28を塞ぐことができ、前記貫通孔28を第1基材11と第2基材12間に形成されたマイクロ流路14と一体化した図2に示す一部流路17として機能させることができる。一方、第2基材12側に形成された貫通孔26,27は図2に示す導入口15及び導出口16を構成する。
【0064】
本実施形態では、図1や図3ないし図9に示す流路デバイスの製造方法に示すように、第1基材1,11の基材表面にマイクロ流路の形状パターンからなるマスク層3,24を形成し、第1基材1,11の基材表面からマスク層3,24にかけて第2基材2,12で覆った後、第1基材1,11あるいは第2基材2,12にマスク層3,24にまで通じる貫通孔4,26,27,28を形成し、前記貫通孔から例えばエッチング液を注入し前記マスク層3,24を溶解除去して基材間に中空状のマイクロ流路5,14を形成する。
【0065】
これにより本実施形態では従来の機械加工等と異なって高精細のマイクロ流路5,14を適切且つ簡単に形成することができる。また、従来のようにプレス加工時や接着層の流入により生じやすかったマイクロ流路の変形や閉塞を適切に回避することができる。以上により、本実施形態では安定して高精細のマイクロ流路5,14を形成することができ、量産化を図ることが可能になる。
【0066】
本実施形態では、図3ないし図9に示した流路デバイスの製造方法では例えば、図9の工程で接着層30を用いて第1基材11と第3基材13間を接合しているが、仮に接着層30がマイクロ流路14にはみ出しても、接着層30がマイクロ流路14にはみ出す領域は、高い高さ寸法を有し、且つ幅寸法が広い幅広流路部14bであり、非常に幅の狭い幅狭流路部14aに接着層が流入することはない。
【0067】
また図8の工程で、幅の広い貫通孔28を利用してマスク層24を除去することで、幅狭流路部の形状パターン24a及び幅広流路部の形状パターン24bを有するマスク層24全体を確実に除去できる。
【0068】
このため幅が狭く従来において閉塞されやすかった幅狭流路部14aを本実施形態では、再現性良く高精細に形成することができる。
【0069】
また本実施形態では、フォトリソグラフィ技術により、マイクロ流路の形状パターンからなるマスク層3,24を形成することができるため、安価に高精細のマイクロ流路5,14の形成が可能になる。
【0070】
図3ないし図9に示す流路デバイスの製造方法では、図8,図7工程により、第1基材11に、一部流路パターンの貫通孔28を形成し、第2基材12に導入口パターン及び導出口パターンの貫通孔26,27を形成している。そして、図8のマスク層24の除去後、一部流路パターンの貫通孔28を形成した第1基材11側に第3基材13を接合して、前記一部流路パターンの貫通孔28側を塞いでいる。
【0071】
これにより、マイクロ流路14に通じる導入口15及び導出口16を簡単に形成できるとともに、貫通孔28を、マスク層14を除去して形成されたマイクロ流路14と一体化して一部流路17にでき、第1基材11,第2基材12及び第3基材13の積層内に、中空状のマイクロ流路14を安定して高精細に形成することができる。
【0072】
また本実施形態では図9に示す工程で、第3基材13の表面に電極部18を形成し、電極層18を一部流路となる第1基材11に形成された貫通孔28内に設置している。これにより、電極層18を高い高さ寸法で形成され幅寸法が広い幅広流路部の位置に設置でき、マイクロ流路14に流体を流しながら所定の電気的な検査を行うことが可能な検査プレートを簡単且つ適切に製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0073】
1、11 第1基材
2、12 第2基材
3 マスク層
4、26、27、28 貫通孔
5、14 マイクロ流路
10 流路デバイス
13 第3基材
14a 幅狭流路部
14b 幅広流路部
15 導入口
16 導出口
17 一部流路
18 電極層
20、21 銅箔
22、29、31 銅貼り基板
23 レジスト層
24 マスク層
24a 幅狭流路部の形状パターン
24b 幅広流路部の形状パターン
30 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材の基材表面に流路の形状パターンからなるマスク層を形成する工程、
前記基材表面から前記マスク層の表面にかけて第2基材を接合する工程、
前記第1基材あるいは前記第2基材の少なくとも一方に前記マスク層にまで貫通する貫通孔を形成する工程、
前記貫通孔から前記マスク層を除去して前記流路を形成する工程、
を有することを特徴とする流路デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記流路は、幅狭流路部と、前記幅狭流路部に連結する前記幅狭流路部よりも幅が広い幅広流路部とを有し、
前記マスク層を、前記幅狭流路部の形状パターンと前記幅広流路部の形状パターンとを有して形成し、
前記貫通孔を、前記マスク層の前記幅広流路部の形状パターンと対向する位置に形成し、
前記マスク層を除去して、前記幅狭流路部と前記幅広流路部とを有する前記流路を形成する請求項1記載の流路デバイスの製造方法。
【請求項3】
フォトリソグラフィ技術により、前記流路の形状パターンからなる前記マスク層を形成する請求項1又は2に記載の流路デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1基材あるいは前記第2基材の一方に、一部流路パターンの前記貫通孔を形成し、他方に、導入口パターン及び導出口パターンの前記貫通孔を形成し、前記一部流路パターンの貫通孔が形成された側の基材表面に、前記マスク層の除去後、第3基材を接合して、前記一部流路パターンの貫通孔側を塞ぐ請求項1ないし3のいずれか1項に記載の流路デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第3基材の表面に電極部を形成し、前記第3基材を前記一部流路パターンの貫通孔内に設置する請求項4記載の流路デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−50951(P2012−50951A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197352(P2010−197352)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(593124819)株式会社三陽 (1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】