流量コントローラ、流量コントローラを備える流量制御システム、流量コントローラ制御プログラム、及び、流量制御プログラム
【課題】電源電圧が定格電圧を超える場合でも良好な流量制御精度が得られる流量コントローラ、流量制御システム、及び、流量コントローラ制御プログラムを提供すること。
【解決手段】全開時Duty算出プログラム43を実行することにより、比例電磁弁2を全開させる場合にコイル21に印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、比例電磁弁の定格電圧より高圧である場合に、比例電磁弁の定格電圧をバルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、比例電磁弁を全開状態とする場合における全開時のDutyの値を算出し、制御動作時流量制御プログラム44を実行することにより、算出された全開時のDutyの値を上限として、比例電磁弁のコイル21に印加する電圧のDutyを可変させることにより、比例電磁弁の開度を制御する。
【解決手段】全開時Duty算出プログラム43を実行することにより、比例電磁弁2を全開させる場合にコイル21に印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、比例電磁弁の定格電圧より高圧である場合に、比例電磁弁の定格電圧をバルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、比例電磁弁を全開状態とする場合における全開時のDutyの値を算出し、制御動作時流量制御プログラム44を実行することにより、算出された全開時のDutyの値を上限として、比例電磁弁のコイル21に印加する電圧のDutyを可変させることにより、比例電磁弁の開度を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量を設定された目標値に制御する流量コントローラ、流量制御システム、流量コントローラ制御プログラム、及び、流量制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、流量を設定された目標値に制御する流量コントローラは、機械・自動車・精密機器等の分野、半導体・バイオ等の先端分野、医療分野、食品分野など、幅広く利用されている。流量コントローラは、流量センサと比例電磁弁と制御回路を備え、制御回路が、流量センサにより計測される流量を目標流量に制御するように、比例電磁弁の開度を調整するようになっている。比例電磁弁の開度は、比例電磁弁のコイルに供給する電流又は電圧に比例して調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−206936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(1)しかしながら、流量コントローラは、仕様によって定格電圧が決められており、商用電源の電源電圧が仕様の定格電圧の範囲内で使用されることを前提として、流量制御の精度が保証されている。流量コントローラは、使用先において流量制御システムに組み付けられ、使用先の商用電源から電源電圧を印加されて駆動する。一方、電源電圧は、配電条件やノイズ等によって、公称電圧より高圧であったり、低圧であったりする。よって、流量コントローラの比例電磁弁に印加される最大電圧は、電源電圧により左右される。流量コントローラは、電源電圧が大きくなるにつれて、比例電磁弁のコイルに印加される印加電圧が高くなり、コイルの発熱量が大きくなる。比例電磁弁のコイルが仕様を超えて発熱すると、制御回路上の電子部品が破壊される恐れがある。
【0005】
上述したように、使用先での電源電圧は、配電条件やノイズ等によってばらつくため、流量コントローラの設置後に制御回路上の電子部品が破壊されるか否かは、流量コントローラを使用先の流量制御システムに実際に組み付けて稼働させてみなければ、わからない。制御回路上の電子部品が破壊されると、流量コントローラの流量制御精度が低下して製品の歩留まりを悪化させるため、使用先では、製品製造ラインを停止させて流量コントローラを交換したり微調整する等の措置が必要になる。このような不具合を回避するために、電源電圧のバラツキに対応できる流量コントローラが、産業界から強く求められている。
【0006】
(2)また、従来の流量コントローラは、流量制御システムに設置された後、例えば、流量コントローラの一次側に配置された開閉弁が流体制御中に弁閉され、流量センサが流量を計測しなくなると、制御流量を目標流量に近づけるために、比例電磁弁がコイルに電源電をそのまま印加され、全開される。この場合、実際には、比例電磁弁が流体制御していないにもかかわらず、コイルに定格電圧が印加されており、電力が無駄に使われていた。
【0007】
本発明は、上記問題点(1)を解決するためになされたものであり、電源電圧のバラツキに対応して良好な流量制御精度が得られる流量コントローラ、流量制御システム、及び、流量コントローラ制御プログラムを提供することを第1の目的とする。
本発明は、上記問題点(2)を解決するためになされたものであり、電力消費量を削減できる流量コントローラ、流量制御システム、及び、流量制御プログラムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量コントローラは、流体の流量を制御する流量コントローラにおいて、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、電源から印加される電源電圧をPWM制御することにより、前記流量センサが計測した制御流量を目標流量に制御するように前記電力を制御する制御回路と、を有し、前記制御回路は、前記比例電磁弁の定格電圧を記憶する定格電圧記憶手段と、前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記定格電圧記憶手段に記憶されている前記定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合におけるDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、前記全開時Duty算出手段により算出された前記Dutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、を有する。
【0009】
上記流量コントローラの前記流量制御手段は、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット設定手段を有することが、好ましい。
【0010】
上記第1の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量制御システムは、上記何れかの流量コントローラを適用していることが、好ましい。
【0011】
上記第1の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量制御システムは、配管上に設置された流量コントローラと、電源と前記流量コントローラに接続されて前記流量コントローラの動作を制御するコントローラと、を有する流量制御システムにおいて、前記流量コントローラが、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、前記比例電磁弁の定格電圧を記憶する定格電圧記憶手段と、を有すること、前記コントローラが、前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記定格電圧記憶手段に記憶されている前記定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合におけるDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、前記全開時Duty算出手段により算出された前記Dutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、を有する。
【0012】
上記第1の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量コントローラ制御プログラムは、流量制御システムのコントローラに適用されるものであって、流量センサと、コイルを備える比例電磁弁とを内蔵する流量コントローラの動作を、前記コントローラが電源から前記コイルに印加する電圧をPWM制御することにより制御する流量コントローラ制御プログラムにおいて、前記コントローラを、前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記比例電磁弁の定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合におけるDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、前記全開時Duty算出手段により算出された前記Dutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、して機能させる。
【0013】
上記第2の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量コントローラは、流体の流量を制御する流量コントローラにおいて、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、前記流量センサが計測した制御流量を目標流量に制御するように前記比例電磁弁に印加する電圧をPWM制御する制御回路と、を有し、前記制御回路は、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット手段を有する。
【0014】
上記第2の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量制御システムは、配管上に流量コントローラが設置され、前記流量コントローラの動作を制御するコントローラを有する流量制御システムにおいて、前記流量コントローラが、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、を有していること、前記比例電磁弁の前記コイルに印加する電圧をPWM制御するものであって、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット手段を有することを特徴とする。
【0015】
上記第2の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量制御プログラムは、前記流量コントローラを、前記比例電磁弁の前記コイルに印加する電圧をPWM制御するように機能させること、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するように、機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記態様の流量コントローラ、流量制御システム、及び、流量コントローラ制御プログラムは、比例電磁弁を全開させる場合にコイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、比例電磁弁の定格電圧より高圧である場合に、比例電磁弁の定格電圧をバルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、比例電磁弁を全開状態とする場合におけるDutyの値を算出し、その算出されたDutyの値を上限として、比例電磁弁のコイルに印加する電圧のDutyを可変させることにより、比例電磁弁の開度を制御する。これにより、電源電圧が定格電圧を超える場合に、比例制御弁を全開させたときに、コイルは、電源電圧を印加される時間が減り、電源から供給される電流が定格電流以下になる。そのため、比例電磁弁は、定格電力を超える電力がコイルに供給されなくなるため、コイルが仕様を超えて発熱し、制御回路を破壊させることがない。よって、上記態様の流量コントローラ、流量制御システム、及び、流量コントローラ制御プログラムによれば、電源電圧のバラツキに対応して良好な流量制御精度を得ることができる。
【0017】
また、上記構成の流量コントローラ、流量制御システム及び流量制御プログラムによれば、流体の流量制御を行う場合に、流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、制御流量を最低制御流量に制御する場合のDuty未満にするので、例えば、流体が流量コントローラに流れなくなった状態で比例電磁弁が全開された場合に、コイルの電力消費量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る流量制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】コントローラの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】流量コントローラの概略構成を示す断面図である。
【図4】制御回路の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】PWM制御の動作原理を説明する図である。
【図6】流量コントローラのメモリに記憶されている全開時Duty算出プログラムのフロー図である。
【図7】流量コントローラのメモリに記憶されている制御動作時流量制御プログラムのフロー図である。
【図8】流量コントローラのメモリに記憶されているパージ動作時流量制御プログラムのフロー図である。
【図9】Dutyにリミットをかけた場合におけるPWM制御の動作原理を説明する図である。
【図10】比較例と実施例における電源電圧とコイルに供給される電力の関係を示す図である。
【図11】電源電圧とコイル発熱量との関係を示す図である。図中実線は、本実施形態の流量制御システムにおける電源電圧とコイル発熱量との関係を示し、図中点線は、従来の流量制御システムにおける電源電圧とコイル発熱量との関係を示す。
【図12】流量非検出時における比較例と実施例の電流と消費電力とを比較する表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
<流量制御システムの概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係る流量制御システム50の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る流量制御システム50は、流体の供給源51と、レギュレータ52と、開閉弁53と、流量コントローラ1と、コントローラ54と、ノズル55とが備わっている。この流量制御システム50では、供給源51からの流体がレギュレータ52により調圧された後に開閉弁53に供給されている。そして、開閉弁53が開閉されることにより、流体が流量コントローラ1を介してノズル55から噴出されるようになっている。このとき、流量コントローラ1によって、ノズル55から噴出される流体の流量が目標流量になるように、自動的に調整されるようになっている。尚、コントローラ54は、開閉弁53のON/OFF制御(開閉制御)および流量コントローラ1の統括制御を行うものである。
【0021】
<コントローラの電子的制御構成>
図2は、コントローラ54の制御系の概略構成を示すブロック図である。
コントローラ54は、周知のマイクロコンピュータであって、中央処理装置(CPU)56とメモリ57と入出力インターフェース58とを備える。入出力インターフェース58には、ノズル55から出力する流体の流量(以下「目標流量」という。)を設定する流量設定手段59と、プロセス動作を制御する制御動作モードとパージ動作を制御するパージ動作モードとを切り替えるモード切替手段60が接続される。
【0022】
<流量コントローラの概略構成>
図3は、流量コントローラ1の概略構成を示す断面図である。
流量コントローラ1は、流体の流量を調整するための比例電磁弁2と、流体の流量を検出するための流量センサ3と、流量センサ3により検出される流量(以下「制御流量」という。)が所定の目標流量となるように比例電磁弁2を制御するための制御回路4とを備える。流量コントローラ1は、更に、ベースブロック5と、カバー6とを備える。ベースブロック5には、入口11と、出口12と、入口11と出口12との間に配置された流路13が形成される。そして、ベースブロック5には、比例電磁弁2と流量センサ3が固定される。ベースブロック5の入口11から流路13に入った流体は、流量センサ3に流れて流路13に戻り、更に比例電磁弁2を介して流路13を流れて出口12から流出するようになっている。カバー6は、比例電磁弁2と流量センサ3を覆うようにしてベースブロック5に固定される。制御回路4は、カバー6の内側に固定される。カバー6の上部には、外部配線用のコネクタ7が設けられる。比例電磁弁2及び流量センサ3は、それぞれ制御回路4に電気的に接続される。制御回路4は、コネクタ7に電気的に接続される。
【0023】
この実施形態の比例電磁弁2は、コイル21を巻いたボビン22と、ボビン22の中空部22aに固定された棒状をなす固定鉄心23と、コイル21とボビン22と固定鉄心23を支持するホルダ24と、固定鉄心23の先端(端面)に対応して配置され、固定鉄心23に吸引される略円板状をなす可動鉄心25と、可動鉄心25の先端(端面)中央に固定された弁体26と、可動鉄心25の先端(端面)に固定された板ばね27と、ホルダ24と組み合わされるボディ28と、ボディ28に形成され、弁体26が配置される弁室29と、ボディ28に形成され、弁体26に対応して弁室29に配置された弁座30と、ボディ28に形成され、弁室29に流体を導入する導入流路31と、ボディ28に形成され、弁室29から弁座30を経由して流体を導出する導出流路32と、ボディ28にて、弁座30の直下流に形成されたオリフィス33とを備える。
【0024】
上記構成の比例電磁弁2は、コイル21に通電されない非通電時には、板ばね27によって可動鉄心25が図中下方へ付勢されるので、可動鉄心25の先端(端面)に固定されている弁体26が弁座30に当接している。このため、比例電磁弁2は、導入流路31と導出流路32との間が遮断され、弁閉状態となる。一方、比例電磁弁2は、コイル21に通電される通電時には、コイル21が通電により励磁されるときの固定鉄心23の吸引力と板ばね27の付勢力との釣り合いにより可動鉄心25が変位する。比例電磁弁2は、弁座30に対する弁体26の位置、すなわち弁の開度が調整されるようになっている。この弁の開度は、コイル21に供給される電力(電流・電圧)に比例して調整される。
【0025】
この実施形態の流量センサ3は、抵抗体(熱線)の温度差を用いて流体の流量を測定するように構成された熱式のものである。この流量センサ3の詳しい構成については、本願出願人の出願に係る特開2005−345346号公報に記載されている。
【0026】
図4は、制御回路4の電気的構成を示すブロック図である。
この実施形態の制御回路4は、中央処理装置(CPU)41及びメモリ42等を内蔵して構成される。CPU41は、コネクタ7とコイル21と流量センサ3に接続されている。CPU41は、コネクタ7を介して図2に示すコントローラ54の入出力インターフェース58に電気的に接続され、コントローラ54を介して供給される電源電圧を利用して駆動する。そして、CPU41は、流量センサ3により計測された制御流量を受信しながら、比例電磁弁2のコイル21に供給する電力を制御する。この場合、コイル21に供給される電力は、メモリ42に格納されている各種制御プログラムを実行することにより、制御される。制御プログラムには、比例電磁弁2を全開状態にする場合におけるDutyの最大値を算出する全開時Duty算出プログラム43(全開時Duty算出手段の一例)と、プロセス動作時の流量を制御する制御動作時流量制御プログラム44(流量制御手段の一例)と、パージ動作時の流量を制御するパージ動作時流量制御プログラム45(流量制御手段の一例)とが、含まれる。CPU41は、メモリに格納されたプログラムに基づき比例電磁弁2を制御する信号を出力するようになっている。そして、制御回路4は、流量センサ3により検出される流量が所定の目標流量となるように比例電磁弁2を制御するようになっている。この実施形態では、制御回路4は、コイル21に供給する電力(特に電流)を可変させることにより、比例電磁弁2の開度を制御する。
【0027】
図5は、PWM制御の動作原理を説明する図である。
制御回路4は、図5に示すように、一定周期のパルス幅のデュ−ティ・サイクル(電圧を印加するON時間d1と電圧を印加しないOFF時間d2との比)を変え、比例電磁弁2の開度(電源からコイル21に印加される電圧)をPWM制御する。PWM制御時には、比例電磁弁2を全開させる場合にコイル21に印加される電圧(以下「バルブ全開時コイル印加電圧」という。)が、デューティ・サイクルに従ってパルス状にコイル21に印加される。このとき、コイル21に流れる電流は、コイル21のインピーダンスにより、パルス状に印加される電源電圧に追従して変化することができず、なまって出力される。そのため、コイル21を流れる電流は、デューティ・サイクル(ON時間d1の割合)に比例して増減される。よって、制御回路4は、デューティ・サイクルを可変させることによりコイル21に供給される電力を制御し、比例電磁弁2を任意の弁開度に応答性良く制御することができる。
【0028】
<全開時Duty算出プログラムの構成>
図6は、流量コントローラ1のメモリ42に記憶されている全開時Duty算出プログラム43のフロー図である。
制御回路4は、流量コントローラ1が客先の流量制御システム50に組み付けられ、コネクタ7にコントローラ54を接続された後、コントローラ54がON状態にされると、図6に示す全開時Duty算出プログラム43を起動する。尚、制御回路4は、コントローラ54の電源がONされる間、全開時Duty算出プログラム43を常時実行し、電源電圧の変化に応じて、比例制御弁2を全開状態とする場合におけるDutyの値(以下「全開時のDutyの値」という。)を変更するようになっている。
【0029】
具体的には、制御回路4は、先ず図6のステップ1(以下「S1」と略記する。)において、コントローラ54に接続される電源の電源電圧をコントローラ54に問い合わせ、コントローラ54からの返信により、電源電圧を計測する。
【0030】
そして、S2において、制御回路4は、比例電磁弁2にかける全開時のDutyの値を、数1に基づいて計算する。
【0031】
【数1】
【0032】
つまり、全開時のDutyの値は、比例電磁弁2の定格電圧を、S1で計測した電源電圧から基板消費電圧を減算した値(バルブ全開時コイル印加電圧)で割ることにより、計算される。ここで、比例電磁弁2の定格電圧は、コイル21を破損させないようにコイル21に印加できる電圧の上限値をいい、流量コントローラ1の製造過程において制御回路4のメモリ42に予め記憶されている。また、基板消費電圧は、制御回路4が動作時に消費する電圧をいい、流量コントローラ1の製造過程において制御回路4のメモリ42に予め記憶されている。基板消費電圧は、制御回路4の動作中常に一定であるため、実際にコイル21に印加される電圧は、電源電圧から基板消費電圧を減算した値となる。よって、比例電磁弁2の定格電圧をバルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、電源電圧のバラツキを把握できる。尚、メモリ42は、定格電圧記憶手段の一例となる。
【0033】
そして、S3において、S2で計算した全開時のDutyの値が100%未満であるか否かを判断する。全開時のDutyの値が100%以上である場合には(S3:NO)、バルブ全開時コイル印加電圧が比例電磁弁2の定格電圧を超えず、コイル21が仕様を超えて加熱される恐れがない。そのため、S5において、メモリ42に記憶されている既存の全開時のDutyの値を100%に設定する。これにより、コイル21には、バルブ全開時コイル印加電圧が非パルス状に(連続して)印加されることになる。その後、S1に戻り、電源電圧の監視を続行する。
【0034】
一方、全開時のDutyの値が100%未満である場合には(S3:YES)、バルブ全開時コイル印加電圧が比例電磁弁2の定格電圧を超え、コイル21が仕様を超えて加熱される恐れがある。そこで、制御回路4は、S4において、S2で計算した全開時のDutyの値を、メモリ42に記憶されている既存の全開時のDutyの値と書き換える。これにより、制御回路4は、書き換えられた全開時のDutyの値に従ってコイル21にバルブ全開時コイル印加電圧をパルス状に印加し、比例電磁弁2を全開させることになる。100%未満のDutyでバルブ全開時コイル印加電圧をコイル21にパルス状に印加することにより、コイル21に流れる電流は、非パルス状に(連続して)バルブ全開時コイル印加電圧をコイル21に印加した場合にコイル21に流れる電流より、減少する。そのため、流量コントローラ1は、バルブ全開時コイル印加電圧が比例電磁弁2の定格電圧を超える場合でも、比例電磁弁2のコイル21に供給される電力が比例電磁弁2の定格電力以下に抑えられるようになる。その後、S1に戻り、電源電圧の監視を続行する。
【0035】
全開時のDutyの値の調整方法について具体的数値を用いて説明すると、例えば、比例電磁弁2の定格電圧が13V、基板消費電圧が1V、電源電圧が16Vの場合、全開時のDutyの値は86.7%と算出される。この場合、PWM制御では、1周期のうちの86.7%がON時間d1とされ、13.3%がOFF時間d2とされる。そして、メモリ42に記憶されている既存の全開時のDutyの値が、上記計算により算出した全開時のDutyの値86.7%に書き換えられる。この場合、比例電磁弁2は、1周期のうち86.7%において、電源電圧16Vから基板消費電圧1Vを減算したバルブ全開時コイル印加電圧15Vがコイル21に印加される。この場合、コイル21に流れる電流は、バルブ全開時コイル印加電圧がコイル21に非パルス状に(連続して)印加された場合にコイル21に流れる電流に対して、86.7%に抑えられる。ここで、コイル21に供給される電力Wは、コイル21に流れる電流の電流値Iの2乗に、コイル21の抵抗値Rをかけることにより求められる(W=I2・R)。コイル21の抵抗値Rは一定であるため、電力Wは、電流値Iの2乗に比例する。そのため、比例電磁弁2のコイル21に供給される電力は、バルブ全開時コイル印加電圧がコイル21に非パルス状に印加された場合にコイル21に供給される電力に対して、(86.7%)2に制限される。この状態が、比例電磁弁2の全開状態とされる。
【0036】
<制御動作時流量制御プログラムの構成>
図7は、流量コントローラ1のメモリ42に記憶されている制御動作時流量制御プログラム44のフロー図である。
制御回路4は、コントローラ54のモード切替手段60に制御動作モードが設定され、コントローラ54から流量指令信号を受信すると、図7に示す制御動作時流量制御プログラム44を起動する。これにより、流量制御システム50のノズル55が出力される制御流体の流量が制御される。
【0037】
具体的には、制御回路4は、先ず図7のS11において、流量制御を行う。流量制御は、コントローラ54から流量設定手段59に入力された流量(以下「目標流量」という。)を受信し、流量センサ3が測定する制御流量を目標流量に一致させるように、比例電磁弁2のコイル21に電力を供給する。この場合、制御回路4は、メモリ42に記憶された全開時のDutyの値を上限としてデューティ・サイクルを可変させることにより、比例電磁弁2の開度を調整する。例えば、比例電磁弁2の定格電圧が13V、基板消費電圧が1V、電源電圧が16Vである場合、上述したように、全開時のDutyの値は86.7%と算出される。そこで、制御回路4は、Duty86.7%を上限とし、流量センサ3で計測した値をもとに、Dutyの値を可変制御することにより、比例制御弁2の開度を調整する。
【0038】
このような流量制御により、流量コントローラ1は、電源電圧が比例電磁弁2の定格電圧を超える場合であっても、定格電力を超える電力が流量制御中にコイル21に供給されなくなる。そのため、制御流体の制御中にコイル21が仕様温度を超えて発熱せず、コイル21の熱によって制御回路4が破壊されることがない。また、比例電磁弁2と共にカバー6内に収納される流量センサ3も、コイル21の発熱により周囲温度が上昇し、センサ精度を低下させることがない。
【0039】
そして、制御回路4は、S12において、制御流量の計測を行う。制御流量の計測は、流量センサ3が計測した流量を制御回路4が受信することにより、行われる。
そして、制御回路4は、S13において、最低制御流量が制御流量より多いか否かを判断する。ここで、最低制御流量とは、制御流量の下限値となる流量をいう。更に詳しく言えば、最低制御流量は、比例電磁弁2の板ばね27の付勢力に打ち勝つ力を可動鉄心25に付与するように弁を開いた状態の流量をいう。最低制御流量をDutyにリミットをかける閾値とする理由は、制御流量が最低制御流量以上になった場合に、比例電磁弁2が、制御流量を目標流量に一致させるように可動鉄心25を応答性良く動させて流量制御を行えるようにするためである。最低制御流量は、流量コントローラ1の製造過程において制御回路4のメモリ42に予め記憶されている。
【0040】
最低制御流量がS12で計測した制御流量以下である場合(S13:NO)、すなわち、制御流量が最低制御流量以上である場合には、S11に戻り、流量制御を行う。
【0041】
最低制御流量がS12で計測した制御流量より多い場合(S13:YES)、すなわち、制御流量が最低制御流量未満である場合には、比例電磁弁2に流体が供給されているので、S14において、その状態が、一定時間以上(例えば5秒)続くか否かを判断する。最低制御流量がS12で計測した制御流量より多い状態が一定時間以上続かない場合には(S14:NO)、S11に戻り、流量制御を行う。
【0042】
一方、最低制御流量がS12で計測した制御流量より多い状態が一定時間以上続く場合には(S14:YES)、比例電磁弁2に流体が供給されなくなった可能性が高いので、S15において、Dutyにリミットをかける。Dutyのリミットは、最低制御流量を確保するために比例電磁弁2のコイル21に供給される電力を制御する場合のDutyより、小さい値に設定される。これにより、コイル21に供給される電流が減るため、無駄に消費される電力が減る。換言すれば、流量コントローラ1は電力消費量を削減される。
その後、S11に戻り、上記と同様の処理によって比例電磁弁2が制御する制御流体の流量を監視する。
【0043】
図9は、Dutyにリミットをかけた場合におけるPWM制御の動作原理を説明する図である。
Dutyにリミットをかける動作についてより具体的に説明する。例えば、図中実線に示すように最低制御流量に対応するDuty(d11,d12)が、図中太い点線に示す全開時のDutyの値(d1,d2)に対して90%であるとする場合、図中太い実線に示すように、Dutyのリミットは、全開時のDutyの値に対して80%であるとされ、最低制御流量に対応するDutyより小さく設定される(d21,d22)。
【0044】
数値を用いて説明すると、比例電磁弁2の定格電圧が13V、基板消費電圧が1V、電源電圧が16Vである場合、全開時のDutyの値は上記数1より86.7%と算出される。そして、最低制御流量に対応するDutyは78.03%となり、Dutyのリミットは69.36%となる。これにより、Dutyを86.7%に設定してコイル21に、電源電圧16Vから基板消費電圧1Vを減算したバルブ全開時コイル印加電圧15Vを印加した場合、コイル21に流れる電流は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に流れる電流に対して86.7%に制限される。つまり、上述したW=I2・Rの計算式より、コイル21に供給される電力は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に供給される電力の(86.7%)2となり、比例電磁弁2が全開する。また、Dutyを78.03%に設定してコイル21にバルブ全開時コイル印加電圧15Vを印加した場合、コイル21に流れる電流は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に流れる電流に対して78.03%に制限される。つまり、上述したW=I2・Rの計算式より、コイル21に供給される電力は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に供給される電力の(78.03%)2となり、比例電磁弁2が最低制御流量を制御するように弁を小さく開く。更に、Dutyを69.36%に設定してコイル21にバルブ全開時コイル印加電圧15Vを印加した場合、コイル21に流れる電流は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に流れる電流に対して69.36%に制限される。つまり、上述したW=I2・Rの計算式より、コイル21に供給される電力は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に供給される電力の(69.36%)2となり、比例電磁弁2が、最低制御流量を制御する場合より更に小さい開度で弁を開く。従って、最低制御流量が一定時間以上続く場合には、比例電磁弁2が消費する電力が、最低制御流量を制御する場合に消費する電力より減らされる。
【0045】
<パージ動作時流量制御プログラムの構成>
図8は、流量コントローラ1のメモリ42に記憶されているパージ動作時流量制御プログラム45のフロー図である。
制御回路4は、コントローラ54のモード切替手段60にパージ動作モードが設定され、コントローラ54から比例電磁弁2を全開させる全開動作信号を受信すると、図8に示すパージ動作時流量制御プログラム45を起動する。これにより、流量コントローラ1及び流量制御システム50では、配管内のパーティクルの除去や、残存する制御流体のパージ流体への置換等が行われる。
【0046】
具体的には、制御回路4は、先ずS21において、比例電磁弁2を全開動作をさせる。すなわち、メモリ42から全開時のDutyの値を読み出し、読み出した全開時のDutyの値に従って比例電磁弁2のコイル21にバルブ全開時コイル印加電圧をパルス状に印加する。パージ動作時に比例電磁弁2を全開させる理由は、配管内を流れるパージ流体の流量を最大にして、配管内に残存する異物を除去させやすくしたり、配管内を乾燥させやすくしたりするためである。そして、比例電磁弁2の全開時には、全開時のDutyの値に従ってコイル21にバルブ全開時コイル印加電圧が印加されるので、電源電圧が流量コントローラ1の定格電圧を超える場合でも、コイル21に流れる電流は、比例電磁弁2の定格電流未満となる。よって、パージ動作時においても、コイル21が定格電力を超える電力を供給されて発熱することにより、流量センサ3のセンサ精度が低下したり、制御回路4が破壊させたりすることがない。
【0047】
尚、図8のS22の処理は図7のS12の処理と同様であり、図8のS23の処理は図7のS13の処理と同様であり、図8のS24の処理は図7のS14の処理と同様であり、図8のS25の処理は図7のS15の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
制御回路4は、パージ動作時流量制御プログラム45を実行した場合、制御動作時流量制御プログラム44を実行する場合と同様に、制御流量が最低制御流量未満となる状態が一定時間以上続くと、Dutyにリミットをかけ、コイル21に供給する電力を抑制する(S23:YES、S24:YES、S25)。これにより、パージ動作中に、開閉弁53が閉じられ、パージ流体が比例電磁弁2に流れなくなった場合でも、流量コントローラ1が消費する電力を削減することができるようになる。
【0049】
尚、本実施形態では、図7のS13〜15と図8のS23〜S25が、リミット設定手段の一例になる。
【0050】
以上説明したように、上記流量コントローラ1、流量制御システム50、及び、全開時Duty算出プログラム43(流量コントローラ制御プログラムの一例)は、比例電磁弁2を全開させる場合にコイル21に印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、比例電磁弁2の定格電圧より高圧である場合に、比例電磁弁2の定格電圧をバルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、比例電磁弁2を全開状態とする場合における全開時のDutyの値を算出し、その算出した全開時のDutyの値を上限として、比例電磁弁2のコイルに印加する電圧のDutyを可変させることにより、比例電磁弁2の開度を制御する。これにより、電源電圧が定格電圧を超える場合に、比例制御弁2を全開させたときに、コイル21は、電源電圧を印加される時間が減り、電源から供給される電流が定格電流以下になる。そのため、比例電磁弁2は、定格電力を超える電力がコイル21に供給されなくなるため、コイル21が仕様を超えて発熱し、制御回路4を破壊させることがない。よって、上記態様の流量コントローラ1、流量制御システム50、及び、全開時Duty算出プログラム43によれば、電源電圧のバラツキに対応して良好な流量制御精度を得ることができる。
【0051】
また、従来より、制御回路4に配置されたICチップにより、比例電磁弁2のコイル21に印加する電圧をPWM制御することが、行われている。本実施形態では、制御回路4のICチップに、全開時Duty算出プログラム43を記憶させることにより、電源電圧の変化に追従して、全開時のDutyの値を、比例制御弁2の定格電圧と制御回路4の基板消費電圧と電源の電源電圧に基づいて算出し、流量制御を行うように、制御回路4を機能させることが、可能である。よって、本実施形態の流量コントローラ1、流量制御システム50は、既存の制御回路4を利用して、良好な流量制御精度を安価に得ることができる。
【0052】
また、上記流量コントローラ1、流量制御システム50、制御動作時流量制御プログラム44(流量制御プログラムの一例)及び、パージ動作時流量制御プログラム45(流量制御プログラムの一例)によれば、制御流体又はパージ流体の流量制御を行う場合に、流量センサ3が計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、制御流量を最低制御流量に制御する場合のDuty未満にするので、例えば、制御流体又はパージ流体が流量コントローラ1に流れなくなった状態で比例電磁弁2が全開された場合に、コイル21の電力消費量を削減できる。
【実施例】
【0053】
発明者らは、下記の実施例と比較例について、カバー6内の温度上昇率を調べる実験を行った。
実施例では、基板消費電圧が1Vで最高仕様温度が75℃の制御回路4と、定格電圧が13Vで最低仕様印加電圧が14Vの比例電磁弁2を内蔵し、制御回路4と比例電磁弁2の仕様周囲温度が5℃以上50℃以下の流量コントローラ1を、流量制御システム50の開閉弁53とノズル55との間に配置した。そして、流量制御システム50のコントローラ54を流量コントローラ1のコネクタ7に接続し、商用電源から比例電磁弁2へ16Vの電源電圧を印加するように構成した。実施例の流量コントローラ1は、コントローラ54の電源がONされると、制御回路4により、図6に示す全開時Duty算出プログラム43が実行される。制御回路4は、例えば、電源電圧が16Vであることを計測すると(S1)、上記数1に、基板消費電圧1Vと比例電磁弁2の定格電圧13Vと電源電圧16Vを代入し、全開時のDutyの値86.7%であることを計算する(S2)。そして、計算した全開時のDutyの値をメモリ42に記憶されている既存の全開時のDutyの値と書き換える(S3)。
【0054】
このようにして構成された実施例に対して、発明者らは、窒素ガスを流しながら電源電圧を上昇させ、実施例に適用される流量コントローラ1のコイル21に供給される電力の変化を調べた。その実験結果を図10の太い実線に示す。尚、図10の細い実線で示すグラフは電源電圧の変化を示す。
実施例では、電源電圧を高圧にしても、コイル21に供給される電力は、比例電磁弁2の定格電力で一定にされた。
【0055】
上記実験に加え、発明者らは、流量コントローラ1の周囲温度を50℃に調整した状態で、実施例に対して窒素ガスを流しながら、電源電圧を14Vから定格電圧を超える17Vまで変化させ、各電源電圧におけるカバー6内の温度上昇を調べた。その結果を図11の実線に示す。
【0056】
実施例では、電源電圧を14Vから17Vまで変化させても、カバー6内の温度は、20℃以上上昇しない。この場合、制御回路4は、周囲温度50℃にコイル21の上昇温度20℃を加算した70℃の温度環境下で使用される。この温度環境は、制御回路4の最高仕様温度である75℃未満となる。よって、実施例では、電源電圧が比例電磁弁2の定格電圧を超える場合でも、カバー6内の温度を制御回路4の最高仕様温度未満とすることができ、制御回路4が破壊されない。
【0057】
一方、比較例は、上記実施例とハード構成が全く同じであるが、図6に示す全開時Duty算出プログラム43や図7に示す制御動作時流量制御プログラム44や図8に示すパージ動作時流量制御プログラム45が実行されず、電源電圧を比例電磁弁2に直接印加して流量制御を行うようにしている点が、上記実施例と相違している。
【0058】
このようにして構成された比較例に対して、発明者らは、窒素ガスを流しながら電源電圧を上昇させ、比較例に適用される流量コントローラ1のコイル21に供給される電力の変化を調べた。その実験結果を図10の点線に示す。尚、図10の細い実線で示すグラフは電源電圧の変化を示す。
比較例では、コイル21には、電源電圧から基板消費電圧を減算したバルブ全開時コイル印加電圧に相当する電力が供給され、電源電圧が高くなるにつれて、コイル21に供給される電力も高くなった。
【0059】
上記実験に加え、発明者らは、流量コントローラ1の周囲温度を50℃に調整した状態で、比較例に対して窒素ガスを流しながら、電源電圧を14Vから定格電圧を超える17Vまで変化させ、各電源電圧におけるカバー6内の温度上昇を調べた。その結果を図11の点線に示す。
【0060】
比較例では、電源電圧を14Vから17Vまで変化させると、カバー6内の温度は、電源電圧が高くなるにつれて、20℃から29.5℃まで温度上昇した。例えば、電源電圧が15.75Vである場合、カバー6内の温度は25℃上昇する。この場合、制御回路4は、周囲温度50℃にコイル21の上昇温度25℃を加算した75℃の温度環境下で使用される。この温度環境は、制御回路4の最高仕様温度である75℃以上となる。よって、比較例では、電源電圧の上昇とともにコイル21の発熱量が高くなり、制御回路4が破壊されてしまう。
【0061】
図10及び図11に示す実験結果より、実施例は、比較例と比べ、電源電圧が高くなっても、コイル21に供給される電力が一定の定格電力に制御されている。これによって、コイル21の発熱が抑制され、制御回路4の破壊が防止されることが、実証された。制御回路4の電子部品が破壊されないため、流量コントローラ1は正常に動作し、良好な流量制御精度が得られる。
【0062】
また、発明者らは、上記実施例と上記比較例を用いて、制御動作中に流量制御システム50の開閉弁53を閉じ、比例電磁弁2に窒素ガスを供給しなくなった場合におけるコイル21に供給される電流とコイル21によって消費される消費電力について調べる実験を行った。但し、この実験では、電源電圧を14V、比例電磁弁2の定格電圧を13V、基板消費電を1V、コイル21の抵抗値Rを85Ωに設定している。その実験結果を図12に示す。
【0063】
実施例では、流量コントローラ1が、図7に示す制御動作時流量制御プログラム44を実行し、窒素ガスの流量制御を行う(図7のS11)。流量コントローラ1は、流量制御中に流量センサ3により制御流量を計測しているが(S12)、開閉弁53が閉じられると、流量センサ3が測定する制御流量が最低制御流量より少なくなる状態が、一定時間以上続く(S13:YES、S14:YES)。この場合、流量コントローラ1は、例えば、メモリ42に記憶されている全開時のDutyの値に対して80%になるように、Dutyにリミットをかける。この実験では、比例電磁弁2の定格電圧が13V、電源電圧14Vから基板消費電圧1Vを減算したバルブ全開時コイル印加電圧が13Vであるので、全開時のDutyの値が100%に設定される。よって、図12に示すように、比例電磁弁2のコイル21には、80%のDutyでバルブ全開時コイル印加電圧13Vがパルス状に印加され、0.122Aの電流が供給された。
【0064】
一方、比較例では、流量コントローラ1が、図7に示す制御動作時流量制御プログラム44を実行せずに、窒素ガスの流量制御を行う。比較例では、流量コントローラ1が、流量制御中に流量センサ3により制御流量を計測しており、開閉弁53が閉じられると、流量センサ3が制御流量を検出しなくなる。この場合、流量コントローラ1は、流量を増加させるために、バルブ全開時コイル印加電圧13Vをコイル21にDuty制御せずに連続して印加され、比例電磁弁2を全開させる。よって、図12に示すように、比例電磁弁2のコイル21には、バルブ全開時コイル印加電圧13Vが連続して印加され、0.153Aの電流が流れた。
【0065】
上記実験の結果、図12に示すように、実施例によれば、コイル21に印加する電圧を80%Dutyで制御することにより、コイル21に流れる電流が比較例においてコイル21に流れる電流に対して20%削減された。
また、図12に示すように、比較例では流量コントローラ1の消費電力が1.99Wであったのに対して、実施例では流量コントローラ1の消費電力が1.27Wであった。よって、実施例によれば、消費電力が比較例の消費電力に対して36%削減された。
【0066】
この実験結果より、流量制御中に開閉弁53が閉じられ、比例電磁弁2に窒素ガスが流れなくなった場合、実施例は、Dutyがリミット(上記実験では80%)以上にならないようにDutyを制限することにより、比較例と比べ、コイル21に流れる電流や流量コントローラ1の消費電力を削減することができ、電力消費量を削減できることが実証された。
【0067】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、上記実施形態では、全開時Duty算出プログラム43と制御動作時流量制御プログラム44とパージ動作時流量制御プログラム45とを流量コントローラ1に内蔵される制御回路4のメモリ42に格納した。これに対して、全開時Duty算出プログラム43と制御動作時流量制御プログラム44とパージ動作時流量制御プログラム45とを非一時的な記憶媒体(CD−ROMやUSBメモリ等)に記憶させ、記憶媒体から流量制御システム50のコントローラ54にそれらのプログラム43,44,45をインストールさせて、コントローラ54から全開時のDutyの値や流量制御に関する信号を制御回路4に送信して比例電磁弁2の開度を調整するようにしても良い。この場合、バルブ全開時コイル印加電圧は、電源電圧から、流量制御システム50のコントローラ54が消費する電圧を減算することにより、算出することが望ましい。かかる構成の流量制御システムは、全開時のDutyの値の算出や流量制御を行う主体が、流量コントローラ1の制御回路4からコントローラ54に変わるだけで、制御回路4と同様の作用効果が得られる。
例えば、上記実施形態では、制御回路4に組み込まれるICチップによりPWM制御を行ったが、制御回路4のメモリ42に記憶させたソフトによってPWM制御を行っても良い。
例えば、上記実施形態では、熱式流量センサ3を流量コントローラ1に使用したが、温度変化によらない手法で流量を測定する流量センサを流量コントローラ1に適用しても良い。
例えば、上記実施形態の数1では、電源電圧から制御回路4の基板消費電圧を減算することにより、比例電磁弁2を全開させる場合にコイル21に印加されるバルブ全開時コイル印加電圧を算出した。これに対して、制御回路4の他に表示回路等の電源電圧を供給される部品がある場合には、電源電圧から、各部品が消費する消費電圧をトータルした値を減算することにより、比例電磁弁2を全開させる場合にコイル21に印加されるバルブ全開時コイル印加電圧を求め、そして、比例電磁弁2の定格電圧をバルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、全開時のDutyの値を求めるようにすると良い。
【符号の説明】
【0068】
1 流量コントローラ
2 比例電磁弁
3 流量センサ
4 制御回路
21 コイル
42 メモリ(定格電圧記憶手段の一例)
43 全開時Duty算出プログラム(流量コントローラ制御プログラム、全開時Duty算出手段の一例)
44 制御動作時流量制御プログラム(流量制御手段、流量制御プログラムの一例)
45 パージ動作時流量制御プログラム(流量制御手段、流量制御プログラムの一例)
50 流量制御システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量を設定された目標値に制御する流量コントローラ、流量制御システム、流量コントローラ制御プログラム、及び、流量制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、流量を設定された目標値に制御する流量コントローラは、機械・自動車・精密機器等の分野、半導体・バイオ等の先端分野、医療分野、食品分野など、幅広く利用されている。流量コントローラは、流量センサと比例電磁弁と制御回路を備え、制御回路が、流量センサにより計測される流量を目標流量に制御するように、比例電磁弁の開度を調整するようになっている。比例電磁弁の開度は、比例電磁弁のコイルに供給する電流又は電圧に比例して調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−206936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(1)しかしながら、流量コントローラは、仕様によって定格電圧が決められており、商用電源の電源電圧が仕様の定格電圧の範囲内で使用されることを前提として、流量制御の精度が保証されている。流量コントローラは、使用先において流量制御システムに組み付けられ、使用先の商用電源から電源電圧を印加されて駆動する。一方、電源電圧は、配電条件やノイズ等によって、公称電圧より高圧であったり、低圧であったりする。よって、流量コントローラの比例電磁弁に印加される最大電圧は、電源電圧により左右される。流量コントローラは、電源電圧が大きくなるにつれて、比例電磁弁のコイルに印加される印加電圧が高くなり、コイルの発熱量が大きくなる。比例電磁弁のコイルが仕様を超えて発熱すると、制御回路上の電子部品が破壊される恐れがある。
【0005】
上述したように、使用先での電源電圧は、配電条件やノイズ等によってばらつくため、流量コントローラの設置後に制御回路上の電子部品が破壊されるか否かは、流量コントローラを使用先の流量制御システムに実際に組み付けて稼働させてみなければ、わからない。制御回路上の電子部品が破壊されると、流量コントローラの流量制御精度が低下して製品の歩留まりを悪化させるため、使用先では、製品製造ラインを停止させて流量コントローラを交換したり微調整する等の措置が必要になる。このような不具合を回避するために、電源電圧のバラツキに対応できる流量コントローラが、産業界から強く求められている。
【0006】
(2)また、従来の流量コントローラは、流量制御システムに設置された後、例えば、流量コントローラの一次側に配置された開閉弁が流体制御中に弁閉され、流量センサが流量を計測しなくなると、制御流量を目標流量に近づけるために、比例電磁弁がコイルに電源電をそのまま印加され、全開される。この場合、実際には、比例電磁弁が流体制御していないにもかかわらず、コイルに定格電圧が印加されており、電力が無駄に使われていた。
【0007】
本発明は、上記問題点(1)を解決するためになされたものであり、電源電圧のバラツキに対応して良好な流量制御精度が得られる流量コントローラ、流量制御システム、及び、流量コントローラ制御プログラムを提供することを第1の目的とする。
本発明は、上記問題点(2)を解決するためになされたものであり、電力消費量を削減できる流量コントローラ、流量制御システム、及び、流量制御プログラムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量コントローラは、流体の流量を制御する流量コントローラにおいて、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、電源から印加される電源電圧をPWM制御することにより、前記流量センサが計測した制御流量を目標流量に制御するように前記電力を制御する制御回路と、を有し、前記制御回路は、前記比例電磁弁の定格電圧を記憶する定格電圧記憶手段と、前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記定格電圧記憶手段に記憶されている前記定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合におけるDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、前記全開時Duty算出手段により算出された前記Dutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、を有する。
【0009】
上記流量コントローラの前記流量制御手段は、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット設定手段を有することが、好ましい。
【0010】
上記第1の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量制御システムは、上記何れかの流量コントローラを適用していることが、好ましい。
【0011】
上記第1の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量制御システムは、配管上に設置された流量コントローラと、電源と前記流量コントローラに接続されて前記流量コントローラの動作を制御するコントローラと、を有する流量制御システムにおいて、前記流量コントローラが、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、前記比例電磁弁の定格電圧を記憶する定格電圧記憶手段と、を有すること、前記コントローラが、前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記定格電圧記憶手段に記憶されている前記定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合におけるDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、前記全開時Duty算出手段により算出された前記Dutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、を有する。
【0012】
上記第1の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量コントローラ制御プログラムは、流量制御システムのコントローラに適用されるものであって、流量センサと、コイルを備える比例電磁弁とを内蔵する流量コントローラの動作を、前記コントローラが電源から前記コイルに印加する電圧をPWM制御することにより制御する流量コントローラ制御プログラムにおいて、前記コントローラを、前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記比例電磁弁の定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合におけるDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、前記全開時Duty算出手段により算出された前記Dutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、して機能させる。
【0013】
上記第2の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量コントローラは、流体の流量を制御する流量コントローラにおいて、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、前記流量センサが計測した制御流量を目標流量に制御するように前記比例電磁弁に印加する電圧をPWM制御する制御回路と、を有し、前記制御回路は、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット手段を有する。
【0014】
上記第2の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量制御システムは、配管上に流量コントローラが設置され、前記流量コントローラの動作を制御するコントローラを有する流量制御システムにおいて、前記流量コントローラが、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、を有していること、前記比例電磁弁の前記コイルに印加する電圧をPWM制御するものであって、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット手段を有することを特徴とする。
【0015】
上記第2の目的を達成するために、本発明の一態様に係る流量制御プログラムは、前記流量コントローラを、前記比例電磁弁の前記コイルに印加する電圧をPWM制御するように機能させること、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するように、機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記態様の流量コントローラ、流量制御システム、及び、流量コントローラ制御プログラムは、比例電磁弁を全開させる場合にコイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、比例電磁弁の定格電圧より高圧である場合に、比例電磁弁の定格電圧をバルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、比例電磁弁を全開状態とする場合におけるDutyの値を算出し、その算出されたDutyの値を上限として、比例電磁弁のコイルに印加する電圧のDutyを可変させることにより、比例電磁弁の開度を制御する。これにより、電源電圧が定格電圧を超える場合に、比例制御弁を全開させたときに、コイルは、電源電圧を印加される時間が減り、電源から供給される電流が定格電流以下になる。そのため、比例電磁弁は、定格電力を超える電力がコイルに供給されなくなるため、コイルが仕様を超えて発熱し、制御回路を破壊させることがない。よって、上記態様の流量コントローラ、流量制御システム、及び、流量コントローラ制御プログラムによれば、電源電圧のバラツキに対応して良好な流量制御精度を得ることができる。
【0017】
また、上記構成の流量コントローラ、流量制御システム及び流量制御プログラムによれば、流体の流量制御を行う場合に、流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、制御流量を最低制御流量に制御する場合のDuty未満にするので、例えば、流体が流量コントローラに流れなくなった状態で比例電磁弁が全開された場合に、コイルの電力消費量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る流量制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】コントローラの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】流量コントローラの概略構成を示す断面図である。
【図4】制御回路の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】PWM制御の動作原理を説明する図である。
【図6】流量コントローラのメモリに記憶されている全開時Duty算出プログラムのフロー図である。
【図7】流量コントローラのメモリに記憶されている制御動作時流量制御プログラムのフロー図である。
【図8】流量コントローラのメモリに記憶されているパージ動作時流量制御プログラムのフロー図である。
【図9】Dutyにリミットをかけた場合におけるPWM制御の動作原理を説明する図である。
【図10】比較例と実施例における電源電圧とコイルに供給される電力の関係を示す図である。
【図11】電源電圧とコイル発熱量との関係を示す図である。図中実線は、本実施形態の流量制御システムにおける電源電圧とコイル発熱量との関係を示し、図中点線は、従来の流量制御システムにおける電源電圧とコイル発熱量との関係を示す。
【図12】流量非検出時における比較例と実施例の電流と消費電力とを比較する表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
<流量制御システムの概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係る流量制御システム50の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る流量制御システム50は、流体の供給源51と、レギュレータ52と、開閉弁53と、流量コントローラ1と、コントローラ54と、ノズル55とが備わっている。この流量制御システム50では、供給源51からの流体がレギュレータ52により調圧された後に開閉弁53に供給されている。そして、開閉弁53が開閉されることにより、流体が流量コントローラ1を介してノズル55から噴出されるようになっている。このとき、流量コントローラ1によって、ノズル55から噴出される流体の流量が目標流量になるように、自動的に調整されるようになっている。尚、コントローラ54は、開閉弁53のON/OFF制御(開閉制御)および流量コントローラ1の統括制御を行うものである。
【0021】
<コントローラの電子的制御構成>
図2は、コントローラ54の制御系の概略構成を示すブロック図である。
コントローラ54は、周知のマイクロコンピュータであって、中央処理装置(CPU)56とメモリ57と入出力インターフェース58とを備える。入出力インターフェース58には、ノズル55から出力する流体の流量(以下「目標流量」という。)を設定する流量設定手段59と、プロセス動作を制御する制御動作モードとパージ動作を制御するパージ動作モードとを切り替えるモード切替手段60が接続される。
【0022】
<流量コントローラの概略構成>
図3は、流量コントローラ1の概略構成を示す断面図である。
流量コントローラ1は、流体の流量を調整するための比例電磁弁2と、流体の流量を検出するための流量センサ3と、流量センサ3により検出される流量(以下「制御流量」という。)が所定の目標流量となるように比例電磁弁2を制御するための制御回路4とを備える。流量コントローラ1は、更に、ベースブロック5と、カバー6とを備える。ベースブロック5には、入口11と、出口12と、入口11と出口12との間に配置された流路13が形成される。そして、ベースブロック5には、比例電磁弁2と流量センサ3が固定される。ベースブロック5の入口11から流路13に入った流体は、流量センサ3に流れて流路13に戻り、更に比例電磁弁2を介して流路13を流れて出口12から流出するようになっている。カバー6は、比例電磁弁2と流量センサ3を覆うようにしてベースブロック5に固定される。制御回路4は、カバー6の内側に固定される。カバー6の上部には、外部配線用のコネクタ7が設けられる。比例電磁弁2及び流量センサ3は、それぞれ制御回路4に電気的に接続される。制御回路4は、コネクタ7に電気的に接続される。
【0023】
この実施形態の比例電磁弁2は、コイル21を巻いたボビン22と、ボビン22の中空部22aに固定された棒状をなす固定鉄心23と、コイル21とボビン22と固定鉄心23を支持するホルダ24と、固定鉄心23の先端(端面)に対応して配置され、固定鉄心23に吸引される略円板状をなす可動鉄心25と、可動鉄心25の先端(端面)中央に固定された弁体26と、可動鉄心25の先端(端面)に固定された板ばね27と、ホルダ24と組み合わされるボディ28と、ボディ28に形成され、弁体26が配置される弁室29と、ボディ28に形成され、弁体26に対応して弁室29に配置された弁座30と、ボディ28に形成され、弁室29に流体を導入する導入流路31と、ボディ28に形成され、弁室29から弁座30を経由して流体を導出する導出流路32と、ボディ28にて、弁座30の直下流に形成されたオリフィス33とを備える。
【0024】
上記構成の比例電磁弁2は、コイル21に通電されない非通電時には、板ばね27によって可動鉄心25が図中下方へ付勢されるので、可動鉄心25の先端(端面)に固定されている弁体26が弁座30に当接している。このため、比例電磁弁2は、導入流路31と導出流路32との間が遮断され、弁閉状態となる。一方、比例電磁弁2は、コイル21に通電される通電時には、コイル21が通電により励磁されるときの固定鉄心23の吸引力と板ばね27の付勢力との釣り合いにより可動鉄心25が変位する。比例電磁弁2は、弁座30に対する弁体26の位置、すなわち弁の開度が調整されるようになっている。この弁の開度は、コイル21に供給される電力(電流・電圧)に比例して調整される。
【0025】
この実施形態の流量センサ3は、抵抗体(熱線)の温度差を用いて流体の流量を測定するように構成された熱式のものである。この流量センサ3の詳しい構成については、本願出願人の出願に係る特開2005−345346号公報に記載されている。
【0026】
図4は、制御回路4の電気的構成を示すブロック図である。
この実施形態の制御回路4は、中央処理装置(CPU)41及びメモリ42等を内蔵して構成される。CPU41は、コネクタ7とコイル21と流量センサ3に接続されている。CPU41は、コネクタ7を介して図2に示すコントローラ54の入出力インターフェース58に電気的に接続され、コントローラ54を介して供給される電源電圧を利用して駆動する。そして、CPU41は、流量センサ3により計測された制御流量を受信しながら、比例電磁弁2のコイル21に供給する電力を制御する。この場合、コイル21に供給される電力は、メモリ42に格納されている各種制御プログラムを実行することにより、制御される。制御プログラムには、比例電磁弁2を全開状態にする場合におけるDutyの最大値を算出する全開時Duty算出プログラム43(全開時Duty算出手段の一例)と、プロセス動作時の流量を制御する制御動作時流量制御プログラム44(流量制御手段の一例)と、パージ動作時の流量を制御するパージ動作時流量制御プログラム45(流量制御手段の一例)とが、含まれる。CPU41は、メモリに格納されたプログラムに基づき比例電磁弁2を制御する信号を出力するようになっている。そして、制御回路4は、流量センサ3により検出される流量が所定の目標流量となるように比例電磁弁2を制御するようになっている。この実施形態では、制御回路4は、コイル21に供給する電力(特に電流)を可変させることにより、比例電磁弁2の開度を制御する。
【0027】
図5は、PWM制御の動作原理を説明する図である。
制御回路4は、図5に示すように、一定周期のパルス幅のデュ−ティ・サイクル(電圧を印加するON時間d1と電圧を印加しないOFF時間d2との比)を変え、比例電磁弁2の開度(電源からコイル21に印加される電圧)をPWM制御する。PWM制御時には、比例電磁弁2を全開させる場合にコイル21に印加される電圧(以下「バルブ全開時コイル印加電圧」という。)が、デューティ・サイクルに従ってパルス状にコイル21に印加される。このとき、コイル21に流れる電流は、コイル21のインピーダンスにより、パルス状に印加される電源電圧に追従して変化することができず、なまって出力される。そのため、コイル21を流れる電流は、デューティ・サイクル(ON時間d1の割合)に比例して増減される。よって、制御回路4は、デューティ・サイクルを可変させることによりコイル21に供給される電力を制御し、比例電磁弁2を任意の弁開度に応答性良く制御することができる。
【0028】
<全開時Duty算出プログラムの構成>
図6は、流量コントローラ1のメモリ42に記憶されている全開時Duty算出プログラム43のフロー図である。
制御回路4は、流量コントローラ1が客先の流量制御システム50に組み付けられ、コネクタ7にコントローラ54を接続された後、コントローラ54がON状態にされると、図6に示す全開時Duty算出プログラム43を起動する。尚、制御回路4は、コントローラ54の電源がONされる間、全開時Duty算出プログラム43を常時実行し、電源電圧の変化に応じて、比例制御弁2を全開状態とする場合におけるDutyの値(以下「全開時のDutyの値」という。)を変更するようになっている。
【0029】
具体的には、制御回路4は、先ず図6のステップ1(以下「S1」と略記する。)において、コントローラ54に接続される電源の電源電圧をコントローラ54に問い合わせ、コントローラ54からの返信により、電源電圧を計測する。
【0030】
そして、S2において、制御回路4は、比例電磁弁2にかける全開時のDutyの値を、数1に基づいて計算する。
【0031】
【数1】
【0032】
つまり、全開時のDutyの値は、比例電磁弁2の定格電圧を、S1で計測した電源電圧から基板消費電圧を減算した値(バルブ全開時コイル印加電圧)で割ることにより、計算される。ここで、比例電磁弁2の定格電圧は、コイル21を破損させないようにコイル21に印加できる電圧の上限値をいい、流量コントローラ1の製造過程において制御回路4のメモリ42に予め記憶されている。また、基板消費電圧は、制御回路4が動作時に消費する電圧をいい、流量コントローラ1の製造過程において制御回路4のメモリ42に予め記憶されている。基板消費電圧は、制御回路4の動作中常に一定であるため、実際にコイル21に印加される電圧は、電源電圧から基板消費電圧を減算した値となる。よって、比例電磁弁2の定格電圧をバルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、電源電圧のバラツキを把握できる。尚、メモリ42は、定格電圧記憶手段の一例となる。
【0033】
そして、S3において、S2で計算した全開時のDutyの値が100%未満であるか否かを判断する。全開時のDutyの値が100%以上である場合には(S3:NO)、バルブ全開時コイル印加電圧が比例電磁弁2の定格電圧を超えず、コイル21が仕様を超えて加熱される恐れがない。そのため、S5において、メモリ42に記憶されている既存の全開時のDutyの値を100%に設定する。これにより、コイル21には、バルブ全開時コイル印加電圧が非パルス状に(連続して)印加されることになる。その後、S1に戻り、電源電圧の監視を続行する。
【0034】
一方、全開時のDutyの値が100%未満である場合には(S3:YES)、バルブ全開時コイル印加電圧が比例電磁弁2の定格電圧を超え、コイル21が仕様を超えて加熱される恐れがある。そこで、制御回路4は、S4において、S2で計算した全開時のDutyの値を、メモリ42に記憶されている既存の全開時のDutyの値と書き換える。これにより、制御回路4は、書き換えられた全開時のDutyの値に従ってコイル21にバルブ全開時コイル印加電圧をパルス状に印加し、比例電磁弁2を全開させることになる。100%未満のDutyでバルブ全開時コイル印加電圧をコイル21にパルス状に印加することにより、コイル21に流れる電流は、非パルス状に(連続して)バルブ全開時コイル印加電圧をコイル21に印加した場合にコイル21に流れる電流より、減少する。そのため、流量コントローラ1は、バルブ全開時コイル印加電圧が比例電磁弁2の定格電圧を超える場合でも、比例電磁弁2のコイル21に供給される電力が比例電磁弁2の定格電力以下に抑えられるようになる。その後、S1に戻り、電源電圧の監視を続行する。
【0035】
全開時のDutyの値の調整方法について具体的数値を用いて説明すると、例えば、比例電磁弁2の定格電圧が13V、基板消費電圧が1V、電源電圧が16Vの場合、全開時のDutyの値は86.7%と算出される。この場合、PWM制御では、1周期のうちの86.7%がON時間d1とされ、13.3%がOFF時間d2とされる。そして、メモリ42に記憶されている既存の全開時のDutyの値が、上記計算により算出した全開時のDutyの値86.7%に書き換えられる。この場合、比例電磁弁2は、1周期のうち86.7%において、電源電圧16Vから基板消費電圧1Vを減算したバルブ全開時コイル印加電圧15Vがコイル21に印加される。この場合、コイル21に流れる電流は、バルブ全開時コイル印加電圧がコイル21に非パルス状に(連続して)印加された場合にコイル21に流れる電流に対して、86.7%に抑えられる。ここで、コイル21に供給される電力Wは、コイル21に流れる電流の電流値Iの2乗に、コイル21の抵抗値Rをかけることにより求められる(W=I2・R)。コイル21の抵抗値Rは一定であるため、電力Wは、電流値Iの2乗に比例する。そのため、比例電磁弁2のコイル21に供給される電力は、バルブ全開時コイル印加電圧がコイル21に非パルス状に印加された場合にコイル21に供給される電力に対して、(86.7%)2に制限される。この状態が、比例電磁弁2の全開状態とされる。
【0036】
<制御動作時流量制御プログラムの構成>
図7は、流量コントローラ1のメモリ42に記憶されている制御動作時流量制御プログラム44のフロー図である。
制御回路4は、コントローラ54のモード切替手段60に制御動作モードが設定され、コントローラ54から流量指令信号を受信すると、図7に示す制御動作時流量制御プログラム44を起動する。これにより、流量制御システム50のノズル55が出力される制御流体の流量が制御される。
【0037】
具体的には、制御回路4は、先ず図7のS11において、流量制御を行う。流量制御は、コントローラ54から流量設定手段59に入力された流量(以下「目標流量」という。)を受信し、流量センサ3が測定する制御流量を目標流量に一致させるように、比例電磁弁2のコイル21に電力を供給する。この場合、制御回路4は、メモリ42に記憶された全開時のDutyの値を上限としてデューティ・サイクルを可変させることにより、比例電磁弁2の開度を調整する。例えば、比例電磁弁2の定格電圧が13V、基板消費電圧が1V、電源電圧が16Vである場合、上述したように、全開時のDutyの値は86.7%と算出される。そこで、制御回路4は、Duty86.7%を上限とし、流量センサ3で計測した値をもとに、Dutyの値を可変制御することにより、比例制御弁2の開度を調整する。
【0038】
このような流量制御により、流量コントローラ1は、電源電圧が比例電磁弁2の定格電圧を超える場合であっても、定格電力を超える電力が流量制御中にコイル21に供給されなくなる。そのため、制御流体の制御中にコイル21が仕様温度を超えて発熱せず、コイル21の熱によって制御回路4が破壊されることがない。また、比例電磁弁2と共にカバー6内に収納される流量センサ3も、コイル21の発熱により周囲温度が上昇し、センサ精度を低下させることがない。
【0039】
そして、制御回路4は、S12において、制御流量の計測を行う。制御流量の計測は、流量センサ3が計測した流量を制御回路4が受信することにより、行われる。
そして、制御回路4は、S13において、最低制御流量が制御流量より多いか否かを判断する。ここで、最低制御流量とは、制御流量の下限値となる流量をいう。更に詳しく言えば、最低制御流量は、比例電磁弁2の板ばね27の付勢力に打ち勝つ力を可動鉄心25に付与するように弁を開いた状態の流量をいう。最低制御流量をDutyにリミットをかける閾値とする理由は、制御流量が最低制御流量以上になった場合に、比例電磁弁2が、制御流量を目標流量に一致させるように可動鉄心25を応答性良く動させて流量制御を行えるようにするためである。最低制御流量は、流量コントローラ1の製造過程において制御回路4のメモリ42に予め記憶されている。
【0040】
最低制御流量がS12で計測した制御流量以下である場合(S13:NO)、すなわち、制御流量が最低制御流量以上である場合には、S11に戻り、流量制御を行う。
【0041】
最低制御流量がS12で計測した制御流量より多い場合(S13:YES)、すなわち、制御流量が最低制御流量未満である場合には、比例電磁弁2に流体が供給されているので、S14において、その状態が、一定時間以上(例えば5秒)続くか否かを判断する。最低制御流量がS12で計測した制御流量より多い状態が一定時間以上続かない場合には(S14:NO)、S11に戻り、流量制御を行う。
【0042】
一方、最低制御流量がS12で計測した制御流量より多い状態が一定時間以上続く場合には(S14:YES)、比例電磁弁2に流体が供給されなくなった可能性が高いので、S15において、Dutyにリミットをかける。Dutyのリミットは、最低制御流量を確保するために比例電磁弁2のコイル21に供給される電力を制御する場合のDutyより、小さい値に設定される。これにより、コイル21に供給される電流が減るため、無駄に消費される電力が減る。換言すれば、流量コントローラ1は電力消費量を削減される。
その後、S11に戻り、上記と同様の処理によって比例電磁弁2が制御する制御流体の流量を監視する。
【0043】
図9は、Dutyにリミットをかけた場合におけるPWM制御の動作原理を説明する図である。
Dutyにリミットをかける動作についてより具体的に説明する。例えば、図中実線に示すように最低制御流量に対応するDuty(d11,d12)が、図中太い点線に示す全開時のDutyの値(d1,d2)に対して90%であるとする場合、図中太い実線に示すように、Dutyのリミットは、全開時のDutyの値に対して80%であるとされ、最低制御流量に対応するDutyより小さく設定される(d21,d22)。
【0044】
数値を用いて説明すると、比例電磁弁2の定格電圧が13V、基板消費電圧が1V、電源電圧が16Vである場合、全開時のDutyの値は上記数1より86.7%と算出される。そして、最低制御流量に対応するDutyは78.03%となり、Dutyのリミットは69.36%となる。これにより、Dutyを86.7%に設定してコイル21に、電源電圧16Vから基板消費電圧1Vを減算したバルブ全開時コイル印加電圧15Vを印加した場合、コイル21に流れる電流は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に流れる電流に対して86.7%に制限される。つまり、上述したW=I2・Rの計算式より、コイル21に供給される電力は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に供給される電力の(86.7%)2となり、比例電磁弁2が全開する。また、Dutyを78.03%に設定してコイル21にバルブ全開時コイル印加電圧15Vを印加した場合、コイル21に流れる電流は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に流れる電流に対して78.03%に制限される。つまり、上述したW=I2・Rの計算式より、コイル21に供給される電力は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に供給される電力の(78.03%)2となり、比例電磁弁2が最低制御流量を制御するように弁を小さく開く。更に、Dutyを69.36%に設定してコイル21にバルブ全開時コイル印加電圧15Vを印加した場合、コイル21に流れる電流は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に流れる電流に対して69.36%に制限される。つまり、上述したW=I2・Rの計算式より、コイル21に供給される電力は、バルブ全開時コイル印加電圧を100%Dutyでコイル21に印加した場合にコイル21に供給される電力の(69.36%)2となり、比例電磁弁2が、最低制御流量を制御する場合より更に小さい開度で弁を開く。従って、最低制御流量が一定時間以上続く場合には、比例電磁弁2が消費する電力が、最低制御流量を制御する場合に消費する電力より減らされる。
【0045】
<パージ動作時流量制御プログラムの構成>
図8は、流量コントローラ1のメモリ42に記憶されているパージ動作時流量制御プログラム45のフロー図である。
制御回路4は、コントローラ54のモード切替手段60にパージ動作モードが設定され、コントローラ54から比例電磁弁2を全開させる全開動作信号を受信すると、図8に示すパージ動作時流量制御プログラム45を起動する。これにより、流量コントローラ1及び流量制御システム50では、配管内のパーティクルの除去や、残存する制御流体のパージ流体への置換等が行われる。
【0046】
具体的には、制御回路4は、先ずS21において、比例電磁弁2を全開動作をさせる。すなわち、メモリ42から全開時のDutyの値を読み出し、読み出した全開時のDutyの値に従って比例電磁弁2のコイル21にバルブ全開時コイル印加電圧をパルス状に印加する。パージ動作時に比例電磁弁2を全開させる理由は、配管内を流れるパージ流体の流量を最大にして、配管内に残存する異物を除去させやすくしたり、配管内を乾燥させやすくしたりするためである。そして、比例電磁弁2の全開時には、全開時のDutyの値に従ってコイル21にバルブ全開時コイル印加電圧が印加されるので、電源電圧が流量コントローラ1の定格電圧を超える場合でも、コイル21に流れる電流は、比例電磁弁2の定格電流未満となる。よって、パージ動作時においても、コイル21が定格電力を超える電力を供給されて発熱することにより、流量センサ3のセンサ精度が低下したり、制御回路4が破壊させたりすることがない。
【0047】
尚、図8のS22の処理は図7のS12の処理と同様であり、図8のS23の処理は図7のS13の処理と同様であり、図8のS24の処理は図7のS14の処理と同様であり、図8のS25の処理は図7のS15の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
制御回路4は、パージ動作時流量制御プログラム45を実行した場合、制御動作時流量制御プログラム44を実行する場合と同様に、制御流量が最低制御流量未満となる状態が一定時間以上続くと、Dutyにリミットをかけ、コイル21に供給する電力を抑制する(S23:YES、S24:YES、S25)。これにより、パージ動作中に、開閉弁53が閉じられ、パージ流体が比例電磁弁2に流れなくなった場合でも、流量コントローラ1が消費する電力を削減することができるようになる。
【0049】
尚、本実施形態では、図7のS13〜15と図8のS23〜S25が、リミット設定手段の一例になる。
【0050】
以上説明したように、上記流量コントローラ1、流量制御システム50、及び、全開時Duty算出プログラム43(流量コントローラ制御プログラムの一例)は、比例電磁弁2を全開させる場合にコイル21に印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、比例電磁弁2の定格電圧より高圧である場合に、比例電磁弁2の定格電圧をバルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、比例電磁弁2を全開状態とする場合における全開時のDutyの値を算出し、その算出した全開時のDutyの値を上限として、比例電磁弁2のコイルに印加する電圧のDutyを可変させることにより、比例電磁弁2の開度を制御する。これにより、電源電圧が定格電圧を超える場合に、比例制御弁2を全開させたときに、コイル21は、電源電圧を印加される時間が減り、電源から供給される電流が定格電流以下になる。そのため、比例電磁弁2は、定格電力を超える電力がコイル21に供給されなくなるため、コイル21が仕様を超えて発熱し、制御回路4を破壊させることがない。よって、上記態様の流量コントローラ1、流量制御システム50、及び、全開時Duty算出プログラム43によれば、電源電圧のバラツキに対応して良好な流量制御精度を得ることができる。
【0051】
また、従来より、制御回路4に配置されたICチップにより、比例電磁弁2のコイル21に印加する電圧をPWM制御することが、行われている。本実施形態では、制御回路4のICチップに、全開時Duty算出プログラム43を記憶させることにより、電源電圧の変化に追従して、全開時のDutyの値を、比例制御弁2の定格電圧と制御回路4の基板消費電圧と電源の電源電圧に基づいて算出し、流量制御を行うように、制御回路4を機能させることが、可能である。よって、本実施形態の流量コントローラ1、流量制御システム50は、既存の制御回路4を利用して、良好な流量制御精度を安価に得ることができる。
【0052】
また、上記流量コントローラ1、流量制御システム50、制御動作時流量制御プログラム44(流量制御プログラムの一例)及び、パージ動作時流量制御プログラム45(流量制御プログラムの一例)によれば、制御流体又はパージ流体の流量制御を行う場合に、流量センサ3が計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、制御流量を最低制御流量に制御する場合のDuty未満にするので、例えば、制御流体又はパージ流体が流量コントローラ1に流れなくなった状態で比例電磁弁2が全開された場合に、コイル21の電力消費量を削減できる。
【実施例】
【0053】
発明者らは、下記の実施例と比較例について、カバー6内の温度上昇率を調べる実験を行った。
実施例では、基板消費電圧が1Vで最高仕様温度が75℃の制御回路4と、定格電圧が13Vで最低仕様印加電圧が14Vの比例電磁弁2を内蔵し、制御回路4と比例電磁弁2の仕様周囲温度が5℃以上50℃以下の流量コントローラ1を、流量制御システム50の開閉弁53とノズル55との間に配置した。そして、流量制御システム50のコントローラ54を流量コントローラ1のコネクタ7に接続し、商用電源から比例電磁弁2へ16Vの電源電圧を印加するように構成した。実施例の流量コントローラ1は、コントローラ54の電源がONされると、制御回路4により、図6に示す全開時Duty算出プログラム43が実行される。制御回路4は、例えば、電源電圧が16Vであることを計測すると(S1)、上記数1に、基板消費電圧1Vと比例電磁弁2の定格電圧13Vと電源電圧16Vを代入し、全開時のDutyの値86.7%であることを計算する(S2)。そして、計算した全開時のDutyの値をメモリ42に記憶されている既存の全開時のDutyの値と書き換える(S3)。
【0054】
このようにして構成された実施例に対して、発明者らは、窒素ガスを流しながら電源電圧を上昇させ、実施例に適用される流量コントローラ1のコイル21に供給される電力の変化を調べた。その実験結果を図10の太い実線に示す。尚、図10の細い実線で示すグラフは電源電圧の変化を示す。
実施例では、電源電圧を高圧にしても、コイル21に供給される電力は、比例電磁弁2の定格電力で一定にされた。
【0055】
上記実験に加え、発明者らは、流量コントローラ1の周囲温度を50℃に調整した状態で、実施例に対して窒素ガスを流しながら、電源電圧を14Vから定格電圧を超える17Vまで変化させ、各電源電圧におけるカバー6内の温度上昇を調べた。その結果を図11の実線に示す。
【0056】
実施例では、電源電圧を14Vから17Vまで変化させても、カバー6内の温度は、20℃以上上昇しない。この場合、制御回路4は、周囲温度50℃にコイル21の上昇温度20℃を加算した70℃の温度環境下で使用される。この温度環境は、制御回路4の最高仕様温度である75℃未満となる。よって、実施例では、電源電圧が比例電磁弁2の定格電圧を超える場合でも、カバー6内の温度を制御回路4の最高仕様温度未満とすることができ、制御回路4が破壊されない。
【0057】
一方、比較例は、上記実施例とハード構成が全く同じであるが、図6に示す全開時Duty算出プログラム43や図7に示す制御動作時流量制御プログラム44や図8に示すパージ動作時流量制御プログラム45が実行されず、電源電圧を比例電磁弁2に直接印加して流量制御を行うようにしている点が、上記実施例と相違している。
【0058】
このようにして構成された比較例に対して、発明者らは、窒素ガスを流しながら電源電圧を上昇させ、比較例に適用される流量コントローラ1のコイル21に供給される電力の変化を調べた。その実験結果を図10の点線に示す。尚、図10の細い実線で示すグラフは電源電圧の変化を示す。
比較例では、コイル21には、電源電圧から基板消費電圧を減算したバルブ全開時コイル印加電圧に相当する電力が供給され、電源電圧が高くなるにつれて、コイル21に供給される電力も高くなった。
【0059】
上記実験に加え、発明者らは、流量コントローラ1の周囲温度を50℃に調整した状態で、比較例に対して窒素ガスを流しながら、電源電圧を14Vから定格電圧を超える17Vまで変化させ、各電源電圧におけるカバー6内の温度上昇を調べた。その結果を図11の点線に示す。
【0060】
比較例では、電源電圧を14Vから17Vまで変化させると、カバー6内の温度は、電源電圧が高くなるにつれて、20℃から29.5℃まで温度上昇した。例えば、電源電圧が15.75Vである場合、カバー6内の温度は25℃上昇する。この場合、制御回路4は、周囲温度50℃にコイル21の上昇温度25℃を加算した75℃の温度環境下で使用される。この温度環境は、制御回路4の最高仕様温度である75℃以上となる。よって、比較例では、電源電圧の上昇とともにコイル21の発熱量が高くなり、制御回路4が破壊されてしまう。
【0061】
図10及び図11に示す実験結果より、実施例は、比較例と比べ、電源電圧が高くなっても、コイル21に供給される電力が一定の定格電力に制御されている。これによって、コイル21の発熱が抑制され、制御回路4の破壊が防止されることが、実証された。制御回路4の電子部品が破壊されないため、流量コントローラ1は正常に動作し、良好な流量制御精度が得られる。
【0062】
また、発明者らは、上記実施例と上記比較例を用いて、制御動作中に流量制御システム50の開閉弁53を閉じ、比例電磁弁2に窒素ガスを供給しなくなった場合におけるコイル21に供給される電流とコイル21によって消費される消費電力について調べる実験を行った。但し、この実験では、電源電圧を14V、比例電磁弁2の定格電圧を13V、基板消費電を1V、コイル21の抵抗値Rを85Ωに設定している。その実験結果を図12に示す。
【0063】
実施例では、流量コントローラ1が、図7に示す制御動作時流量制御プログラム44を実行し、窒素ガスの流量制御を行う(図7のS11)。流量コントローラ1は、流量制御中に流量センサ3により制御流量を計測しているが(S12)、開閉弁53が閉じられると、流量センサ3が測定する制御流量が最低制御流量より少なくなる状態が、一定時間以上続く(S13:YES、S14:YES)。この場合、流量コントローラ1は、例えば、メモリ42に記憶されている全開時のDutyの値に対して80%になるように、Dutyにリミットをかける。この実験では、比例電磁弁2の定格電圧が13V、電源電圧14Vから基板消費電圧1Vを減算したバルブ全開時コイル印加電圧が13Vであるので、全開時のDutyの値が100%に設定される。よって、図12に示すように、比例電磁弁2のコイル21には、80%のDutyでバルブ全開時コイル印加電圧13Vがパルス状に印加され、0.122Aの電流が供給された。
【0064】
一方、比較例では、流量コントローラ1が、図7に示す制御動作時流量制御プログラム44を実行せずに、窒素ガスの流量制御を行う。比較例では、流量コントローラ1が、流量制御中に流量センサ3により制御流量を計測しており、開閉弁53が閉じられると、流量センサ3が制御流量を検出しなくなる。この場合、流量コントローラ1は、流量を増加させるために、バルブ全開時コイル印加電圧13Vをコイル21にDuty制御せずに連続して印加され、比例電磁弁2を全開させる。よって、図12に示すように、比例電磁弁2のコイル21には、バルブ全開時コイル印加電圧13Vが連続して印加され、0.153Aの電流が流れた。
【0065】
上記実験の結果、図12に示すように、実施例によれば、コイル21に印加する電圧を80%Dutyで制御することにより、コイル21に流れる電流が比較例においてコイル21に流れる電流に対して20%削減された。
また、図12に示すように、比較例では流量コントローラ1の消費電力が1.99Wであったのに対して、実施例では流量コントローラ1の消費電力が1.27Wであった。よって、実施例によれば、消費電力が比較例の消費電力に対して36%削減された。
【0066】
この実験結果より、流量制御中に開閉弁53が閉じられ、比例電磁弁2に窒素ガスが流れなくなった場合、実施例は、Dutyがリミット(上記実験では80%)以上にならないようにDutyを制限することにより、比較例と比べ、コイル21に流れる電流や流量コントローラ1の消費電力を削減することができ、電力消費量を削減できることが実証された。
【0067】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、上記実施形態では、全開時Duty算出プログラム43と制御動作時流量制御プログラム44とパージ動作時流量制御プログラム45とを流量コントローラ1に内蔵される制御回路4のメモリ42に格納した。これに対して、全開時Duty算出プログラム43と制御動作時流量制御プログラム44とパージ動作時流量制御プログラム45とを非一時的な記憶媒体(CD−ROMやUSBメモリ等)に記憶させ、記憶媒体から流量制御システム50のコントローラ54にそれらのプログラム43,44,45をインストールさせて、コントローラ54から全開時のDutyの値や流量制御に関する信号を制御回路4に送信して比例電磁弁2の開度を調整するようにしても良い。この場合、バルブ全開時コイル印加電圧は、電源電圧から、流量制御システム50のコントローラ54が消費する電圧を減算することにより、算出することが望ましい。かかる構成の流量制御システムは、全開時のDutyの値の算出や流量制御を行う主体が、流量コントローラ1の制御回路4からコントローラ54に変わるだけで、制御回路4と同様の作用効果が得られる。
例えば、上記実施形態では、制御回路4に組み込まれるICチップによりPWM制御を行ったが、制御回路4のメモリ42に記憶させたソフトによってPWM制御を行っても良い。
例えば、上記実施形態では、熱式流量センサ3を流量コントローラ1に使用したが、温度変化によらない手法で流量を測定する流量センサを流量コントローラ1に適用しても良い。
例えば、上記実施形態の数1では、電源電圧から制御回路4の基板消費電圧を減算することにより、比例電磁弁2を全開させる場合にコイル21に印加されるバルブ全開時コイル印加電圧を算出した。これに対して、制御回路4の他に表示回路等の電源電圧を供給される部品がある場合には、電源電圧から、各部品が消費する消費電圧をトータルした値を減算することにより、比例電磁弁2を全開させる場合にコイル21に印加されるバルブ全開時コイル印加電圧を求め、そして、比例電磁弁2の定格電圧をバルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、全開時のDutyの値を求めるようにすると良い。
【符号の説明】
【0068】
1 流量コントローラ
2 比例電磁弁
3 流量センサ
4 制御回路
21 コイル
42 メモリ(定格電圧記憶手段の一例)
43 全開時Duty算出プログラム(流量コントローラ制御プログラム、全開時Duty算出手段の一例)
44 制御動作時流量制御プログラム(流量制御手段、流量制御プログラムの一例)
45 パージ動作時流量制御プログラム(流量制御手段、流量制御プログラムの一例)
50 流量制御システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流量を制御する流量コントローラにおいて、
流体の流量を計測する流量センサと、
コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、
電源から印加される電源電圧をPWM制御することにより、前記流量センサが計測した制御流量を目標流量に制御するように前記電力を制御する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、
前記比例電磁弁の定格電圧を記憶する定格電圧記憶手段と、
前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記定格電圧記憶手段に記憶されている前記定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合におけるDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、
前記全開時Duty算出手段により算出された前記Dutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、を有する
ことを特徴とする流量コントローラ。
【請求項2】
請求項1に記載する流量コントローラにおいて、
前記流量制御手段は、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット設定手段を有する
ことを特徴とする流量コントローラ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された流量コントローラを適用することを特徴とする流量制御システム。
【請求項4】
配管上に設置された流量コントローラと、電源と前記流量コントローラに接続されて前記流量コントローラの動作を制御するコントローラと、を有する流量制御システムにおいて、
前記流量コントローラが、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、前記比例電磁弁の定格電圧を記憶する定格電圧記憶手段と、を有すること、
前記コントローラが、
前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記定格電圧記憶手段に記憶されている前記定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合における全開時のDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、
前記全開時Duty算出手段により算出された前記Dutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、を有する
ことを特徴とする流量制御システム。
【請求項5】
流量制御システムのコントローラに適用されるものであって、流量センサと、コイルを備える比例電磁弁とを内蔵する流量コントローラの動作を、前記コントローラが電源から前記コイルに印加する電圧をPWM制御することにより制御する流量コントローラ制御プログラムにおいて、
前記コントローラを、
前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記比例電磁弁の定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合における全開時のDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、
前記全開時Duty算出手段により算出されたDutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、して機能させる
ことを特徴とする流量コントローラ制御プログラム。
【請求項6】
流体の流量を制御する流量コントローラにおいて、
流体の流量を計測する流量センサと、
コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、
前記流量センサが計測した制御流量を目標流量に制御するように前記比例電磁弁に印加する電圧をPWM制御する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット手段を有する
ことを特徴とする流量コントローラ。
【請求項7】
配管上に流量コントローラが設置され、前記流量コントローラの動作を制御するコントローラを有する流量制御システムにおいて、
前記流量コントローラが、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、を有していること、
前記比例電磁弁の前記コイルに印加する電圧をPWM制御するものであって、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット手段を有すること
を特徴とする流量制御システム。
【請求項8】
流量センサと、コイルを備える比例電磁弁とを内蔵する流量コントローラの動作を制御する流量制御プログラムにおいて、
前記流量コントローラを、
前記比例電磁弁の前記コイルに印加する電圧をPWM制御するように機能させること、
前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するように、機能させること
を特徴とする流量制御プログラム。
【請求項1】
流体の流量を制御する流量コントローラにおいて、
流体の流量を計測する流量センサと、
コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、
電源から印加される電源電圧をPWM制御することにより、前記流量センサが計測した制御流量を目標流量に制御するように前記電力を制御する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、
前記比例電磁弁の定格電圧を記憶する定格電圧記憶手段と、
前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記定格電圧記憶手段に記憶されている前記定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合におけるDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、
前記全開時Duty算出手段により算出された前記Dutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、を有する
ことを特徴とする流量コントローラ。
【請求項2】
請求項1に記載する流量コントローラにおいて、
前記流量制御手段は、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット設定手段を有する
ことを特徴とする流量コントローラ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された流量コントローラを適用することを特徴とする流量制御システム。
【請求項4】
配管上に設置された流量コントローラと、電源と前記流量コントローラに接続されて前記流量コントローラの動作を制御するコントローラと、を有する流量制御システムにおいて、
前記流量コントローラが、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、前記比例電磁弁の定格電圧を記憶する定格電圧記憶手段と、を有すること、
前記コントローラが、
前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記定格電圧記憶手段に記憶されている前記定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合における全開時のDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、
前記全開時Duty算出手段により算出された前記Dutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、を有する
ことを特徴とする流量制御システム。
【請求項5】
流量制御システムのコントローラに適用されるものであって、流量センサと、コイルを備える比例電磁弁とを内蔵する流量コントローラの動作を、前記コントローラが電源から前記コイルに印加する電圧をPWM制御することにより制御する流量コントローラ制御プログラムにおいて、
前記コントローラを、
前記比例電磁弁を全開させる場合に前記コイルに印加されるバルブ全開時コイル印加電圧が、前記比例電磁弁の定格電圧より高圧である場合に、前記比例電磁弁の前記定格電圧を前記バルブ全開時コイル印加電圧で割ることにより、前記比例電磁弁を全開状態とする場合における全開時のDutyの値を算出する全開時Duty算出手段と、
前記全開時Duty算出手段により算出されたDutyの値を上限として、前記コイルに印加する電圧のDutyを可変させ、前記比例電磁弁の開度を制御する流量制御手段と、して機能させる
ことを特徴とする流量コントローラ制御プログラム。
【請求項6】
流体の流量を制御する流量コントローラにおいて、
流体の流量を計測する流量センサと、
コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、
前記流量センサが計測した制御流量を目標流量に制御するように前記比例電磁弁に印加する電圧をPWM制御する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット手段を有する
ことを特徴とする流量コントローラ。
【請求項7】
配管上に流量コントローラが設置され、前記流量コントローラの動作を制御するコントローラを有する流量制御システムにおいて、
前記流量コントローラが、流体の流量を計測する流量センサと、コイルに供給される電力に比例して開度を調整される比例電磁弁と、を有していること、
前記比例電磁弁の前記コイルに印加する電圧をPWM制御するものであって、前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するリミット手段を有すること
を特徴とする流量制御システム。
【請求項8】
流量センサと、コイルを備える比例電磁弁とを内蔵する流量コントローラの動作を制御する流量制御プログラムにおいて、
前記流量コントローラを、
前記比例電磁弁の前記コイルに印加する電圧をPWM制御するように機能させること、
前記流量センサが計測する制御流量が、制御流量の下限値となる最低制御流量より少なくなったことを検出すると、Dutyを、前記制御流量を前記最低制御流量に制御する場合のDuty未満に制限するように、機能させること
を特徴とする流量制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−215913(P2011−215913A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83835(P2010−83835)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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