説明

海洋生物養殖システム

【課題】本発明は海洋生物を陸上で養殖するための水槽とその水槽を使用した養殖システム、特に長期間海水を交換しないでもすむ養殖システムを実用化することにある。
【解決手段】海洋生物を陸上で養殖するため、養殖生物の糞などから発生するアンモニア成分を好気性バクテリアを使用し亜硝酸を経て硝酸塩に変換し、嫌気性バクテリアを使用し硝酸塩も窒素ガスに還元する装置を実現し、飼料の残渣など固形成分も除去し、海水の交換を不要にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋生物を内陸で養殖するための、水を浄化する為の装置と、これらを使用して行う海洋生物養殖システムに関する。特に長期間海水を交換しないでもすむ養殖システムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2000−157096
【特許文献2】特開2006−217822
特許文献1は水槽中の窒素成分を魚などの水中生物に無害な低濃度に維持し、長期にわたる飼育、繁殖、養殖を可能にする水槽に関しての発明である。
特許文献2は水槽の底面に蓄積した魚介類が食べ残した餌や糞を主成分とする有機固形物を、効率的に除去しうる魚介類の養殖システム及び養殖方法に関する発明である。
【0003】
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0004】
従来内陸で海洋生物を養殖するためにはいくつかの解決しなければならない課題がある。そのひとつは海水の定期的な交換を不要にすることである。海水を交換するには海水の輸送の費用、排水の公害(塩害)など多くの課題があり、内陸で海洋生物の養殖事業を考えた場合、採算の点から実用化が難しかった。
【0005】
そこで海水を交換しないでもすむ養殖システムの実用化が望まれていた。本発明の課題のひとつは、海水をしばしば換える必要のない海水浄化システムを実現することにある。
【0006】
従来のシステムにおいて海水を換える目的は4つあり、第一の目的は海洋生物の排泄物に含まれる水溶性の成分特にアンモニアの影響を除くためである。
海洋生物に対しアンモニアは強い毒性を示す。アンモニアを除去するのに有効な方法はバクテリアによる濾過を行わせることである。好気性バクテリアの一種であるアンモニア酸化菌はアンモニアを酸化し亜硝酸に変換することができる。本発明はバクテリアを活用しアンモニアを亜硝酸に効率よく換えるシステムを実現することを目的としている。
【0007】
なお本文で使用する「濾過」は「濾して不要成分を除去」という本来の意味以外に、「浄化」、「有害成分を無害成分に変換」、「除去」という意味にも一般的に使用されている。本願においても同様に使用する。
【0008】
アンモニアが酸化されて生じるこの亜硝酸は、アンモニアより毒性が低いとはいえやはり蓄積されると海洋生物に悪い影響を与える。亜硝酸は同じく好気性バクテリアである亜硝酸酸化菌により硝酸塩に変換させる事ができる。本発明はバクテリアを活用し亜硝酸を硝酸塩に効率よく換えるシステムを実現することも目的としている。
【0009】
硝酸塩は硝酸性窒素、いわゆる窒素肥料の成分と同じであり、植物プランクトンや植物は硝酸性窒素を吸収して育つ。この物質は海洋生物に対して急性の毒性はないが、これも長期間蓄積され濃度が高くなると海洋生物の健康が害される。この硝酸塩まで除去することができれば海水に排出されたアンモニア及びその2次発生物の除去を完結できる。
【0010】
硝酸塩の除去に対して本発明は二つの方法を提案する。ひとつは植物の根から肥料として吸収させる方法である。これは使用する植物の種類によっては人の食用になり、一石二鳥の効果がある。しかし、海洋生物により発生したアンモニアに起因する硝酸塩を多量に、継続的に吸収するためには、単純に水槽に海草を植えれば良いことにはならない。本発明では植物により多量に安定に硝酸塩を吸収する方法を提案している。
【0011】
硝酸塩の除去を行う他の方法は嫌気性バクテリアによる濾過である。硝酸塩は従来から、脱窒菌とも呼ばれる嫌気性バクテリアにより分解処理される事が知られている。嫌気性バクテリアが有効に利用できれば、硝酸塩および硝酸性窒素を窒素ガスに還元でき、空気中に放出処理が可能となる。
【0012】
しかし、酸素が無くても生きられる嫌気性バクテリア棲む領域は自然界でも干潟などに限られていた。
また、一般に嫌気性バクテリアは活性度が低く、海洋生物養殖に使用するには不十分であった。
【0013】
この課題解決のため、従来からバクテリアを使った海水濾過装置がいろいろ考えられてきた。しかしアンモニア、亜硝酸の処理は好気性バクテリアを使った酸化処理であり、増殖に酸素の存在が必要条件である一方、硝酸塩の処理は嫌気性バクテリアを使った還元処理という海水中に酸素がなるべく存在しないことが必要という、相反する条件のため、小型の一体型濾過装置は今まで実現していなかった。
【0014】
本発明の課題のひとつは、水槽から硝酸塩をも有効に取り除き、純度の高い海水を再生し、海洋生物養殖において海水の再利用を実現することである。本発明は嫌気性バクテリアを活性化し、海洋生物が発生させるアンモニア及びその派生物質をほぼ完全に取り除くことができる装置および方法を提案している。硝酸塩を取り除き、その後に残った水は純度の高い海水であり、海洋生物の養殖に再利用できる。
【0015】
一方、排泄物の中の水に溶けにくい固形成分もそのまま放置すると汚濁の原因になる。
従来、海水を換える第二の目的は、これを除去することにある。
本発明を実施することにより、これを好適に回収し除去することができる。
【0016】
海洋生物を水中で飼育すると水中に含まれる酸素が減少する。海水を換える第三の目的は海水中に酸素を補給することであるが、これは本発明を待つまでもなく空気をポンプで送り、水中で放散することによりしばしば行われている。
本発明では後述のように、固形物を除去するための空気ポンプと水浄化のための散気管を使用し、これらにより空気を水中に排出するので酸素補給の効果を併せ持たせることができる。
【0017】
海水を換える第四の目的は鉄分やカルシウム分等、いわゆるミネラル成分を補給することにある。本発明ではこれを有効に供給する方法を開示している。
【0018】
また前記濾過装置をユニット化し、水槽内からの取り出しや、移動を容易にすることも本発明の課題である。本発明の浄化装置は極力保守作業を少なくしているが、装置の増設などで濾過装置を移動させることがある。
【0019】
内陸で海洋生物の養殖を事業化するには、海水の交換以外にも解決しなければならない課題がある。
【0020】
養殖される海洋生物の生態はいろいろであるが、たとえばあわびなど海底で岩等に隠れて生活する性質のものがある。隠れ家がないと養殖生物にストレスが溜まり、食欲が衰えまたは拒食症になり、生育が遅れたり、死んだりすることがある。これらを防ぐためには何らかの隠れ家を提供することが必要である。
本発明を実施することにより、狭い水槽内でも海洋生物の隠れ家も確保することが可能となる。
【0021】
前述の様に、本システムの機能を維持するためには定期的な保守作業が必要となる。そのために、前記好気性バクテリアによるアンモニア及び亜硝酸酸化手段と、前記嫌気性バクテリアによる硝酸塩還元手段と、前記植物による硝酸塩吸収手段及び、前記固形物回収手段をそれぞれ機能別にまとめ、濾過装置としてユニット化し、前記水槽内に設置すれば、保守点検や出し入れがしやすい。濾過装置はいくつかの機能を複合してユニット化しても良い。
【0022】
養殖を事業として成立させるためには、手軽に、低コストで行えることが必要である。
従来は必要な装置が大掛かりになるため、養殖を事業として行うために、ある程度の規模が必要とされた。そのため水槽も大型になり、コンクリートで造るのが一般的であった。
しかしコンクリート製では設置場所の制限や設置のための手間がかかり、ちょっとした空地や最近あちこちに見られる廃校跡などを養殖場として活用することは難しかった。
また一度設置してしまうとその移動や交換などが難しかった。
【0023】
本発明の、他の目的は廃校跡の教室、不要になった倉庫や鋼鈑製ガレージの内部など、場所を選ばずに設置できる養殖システムを構築することである。
前記の水槽に関してはその軽量なこと、断熱性があること、安価であることの理由から発泡スチロールを代表とする発泡プラスチックを使用できれば好都合である。
本発明の更なる目的は発泡プラスチックを水槽として使用可能にすることにある。
【0024】
また、本発明は狭い場所でも海洋生物の養殖を可能にする方法を提案している。そのひとつの方法として水槽を重ねて使用することも有効である。しかし水槽内には多量の海水を入れるためその重量と水圧は非常に大きくなる。本発明は発泡プラスチックの水槽を補強しつつ補強材を利用してスタック状に重ねる方法を提案している。
【0025】
前述の特許文献1の特開2000−157096にはこれらの課題の一部を解決する方法が開示されている。しかし、この装置の一番の課題は還流ポンプ、水流ポンプがそれぞれ無関係に働いており、水の流れが複雑にいりこみ、浄化するための一連の流れになっていない。
【0026】
また特許文献2の特開2006−217822は、糞や残滓を吸い上げる装置を開示している。しかし、これは固形成分を吸上げる方法を開示しているに過ぎず、魚介類にとってより毒性の強いアンモニアなどの除去に関しては言及していない。
【0027】
本発明は上記2つの文献に示された発明と異なり、水をひとつの流れとして総合的に水質浄化と汚濁物質の除去を行い、水の交換を実用上不要にするシステムを実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
海洋生物を養殖する水槽において、好気性バクテリアによるアンモニア及び亜硝酸酸化手段と、嫌気性バクテリアによる硝酸塩還元手段または植物による硝酸塩吸収手段の少なくても一方及び、固形物回収手段を用い海洋生物養殖システムの水を濾過する。
【0029】
すなわち、前記水槽または共用する水が循環する水槽群内に、前記各手段すべてまたは一部が、それぞれが、単独にまたは複合され、濾過装置としてユニット化され、生物が排出するアンモニア及び固形物、その2次発生物である亜硝酸、及び硝酸塩除去する。
【0030】
本発明を実現するために随所に上昇水流または下降水流を起こす必要がある。水槽内にパイプを設置し、その中に孔のあいた小径のパイプでできた散気管を挿入し、送気管より空気を送り込み、パイプの中を上昇する気泡を発生させ、その泡とともに水を上昇させる空気ポンプを用いると、水槽下部の水を上部へと送り込むことができる。その時水槽下部は水が汲み出されるためにパイプの下部に向かって水流が生じ、大きさの限られた濾過装置内に用いられると濾過装置内の下から水が汲み出されるために濾過装置内では下降水流が生じる。
【0031】
またこの分野の用語としてネット濾過装置とボックス型濾過装置という言葉がよく用いられる。
【0032】
コーガ石等バクテリアが定着しやすい多孔質物質をネットに収めて、そのネットの下方へ空気を送出する散気管を配したものを水槽に設置する。前記多孔質物質及びネット及び散気管を一体化してユニット化したものをネット濾過装置という。ネットの下から空気を送る事によりコーガ石等に定着したアンモニア酸化菌(好気性バクテリア)を活性化し、その働きにより水槽内のアンモニア成分を酸化し亜硝酸に変換させる。
【0033】
同時にコーガ石等に定着した亜硝酸酸化菌(好気性バクテリア)をも活性化し、その働きにより水槽内の亜硝酸成分を酸化し硝酸塩に変換させる。
この2つの作用は前記ネット濾過装置内で並行して行わせることができるが、別途亜硝酸成分を酸化し硝酸塩に変換させる専用のネット濾過装置を水槽内に設けても良い。
【0034】
水槽内で海洋生物を養殖する場合、餌にミネラル成分を混入することもあるが、水中に解けているミネラル成分が不足しがちなため、前記ネット濾過装置内にカルシウムまたは鉄分を含んだミネラル収納部を配置し、上昇水流により水中にミネラル成分を溶出させても良い。
【0035】
水を透過できる多孔質または細かい網状の素材で高さの低い中空の立体物を構成し、その中空部分に貫通させて前記空気ポンプの下端を接続する。これを底面フィルターと称する。
前記濾過水槽内に前記底面フィルターを挿入し、上部にバクテリアを定着した前記ゼオライトを配置する。前記底面フィルターの内部の水を空気ポンプにより汲み出すことにより、コーガ石周辺に下降水流を生じさせバクテリアによる濾過を行わせる装置をボックス型濾過装置と称する。
【0036】
ボックス型濾過装置の上部で水面付近にあるコーガ石には水中の酸素が多く含まれている表面水が流れ込むため、比較的好気性のバクテリアが繁殖しやすく、底面に近い部分には酸素が途中で好気性バクテリアに消費され少なくなり、嫌気性バクテリアが棲息しやすい環境が生じる。
したがってボックス型濾過装置はアンモニア、亜硝酸を酸化する作用のほかに硝酸塩の還元(窒素ガスとして分離する)作用もある。
【0037】
この時使用されるコーガ石等とは前記ゼオライトである。
【0038】
以下に解決手段の全体の構成とその構成ユニットについて述べる。
【0039】
海洋生物を養殖する水槽において、好気性バクテリアによるアンモニア及び亜硝酸酸化手段と、嫌気性バクテリアによる硝酸塩還元手段または植物による硝酸塩吸収手段及び、固形物回収手段を、単独にまたは複合された濾過装置にまとめ、それを水槽内に設置するか、または水槽外に配置し水槽内の水を循環させる事により、海洋生物養殖システムを実現する。
【0040】
前記濾過装置は、内部に、好気性バクテリアが定着した炭素繊維とコーガ石の少なくても一方が挿入され、その下部に散気管を配し、前記散気管より吹き出された空気の上昇により励起され上昇する水を、前記炭素繊維またはコーガ石に定着した好気性バクテリアにより濾過する、いわゆるネット濾過装置で構成される。
【0041】
前記濾過装置の一つとして、前記水槽内で養殖される海洋生物へ供給された餌の残滓や糞を水面上部に吸い上げる吸上装置で構成される。
また、前記水槽の内部底面近傍に傾斜部を設けることにより水中に放出され、沈降する糞や餌を有効に集積することができる。
前記水槽の内部底面に集積された糞や餌の残滓を水流ポンプにより水面上部へくみ上げ、回収する為に、前記水槽下部から上部へ続くパイプと前記パイプ内下部に配置された空気ポンプとにより構成された、吸上装置を水槽内に配する。
前記吸上装置の前記パイプの吸込口に、水流の向きを変えるためのL字管をつけて水の吸水方向を換えることができる。
【0042】
また、前記傾斜部の上方に前記水槽内を上下に区分する仕切床またはネットを設けることができる。前記仕切床またはネットは、養殖生物の通過できない大きさの格子状またはネット状またはスノコ状であれば、糞や残滓は下部に落下して、養殖生物と糞や残滓を分離する事ができる。
仕切床は養殖する生物が貝類やひらめなど海底に生息する生物の場合有効で、ネットは回遊魚などの場合に有効である。
【0043】
前記吸上装置より吹き出される糞と餌の残渣および水は前記水槽の上部に設けられた流し樋上に吹き出され、前記流し樋に案内され、これも水槽上部に敷かれた残滓フィルター上に吐き出される。残滓フィルターは不織布などを用いる。
【0044】
前記ネット濾過装置の、前記散気管より吹き出された空気の上昇により、ネット濾過装置内部に上昇水流を励起し、上昇水流により前記ネット濾過装置の上方に吹き出された水も、前記流し樋上に吹き出され、前記残滓フィルター上に吐き出され、吸上装置では回収できなかった細かな残滓等も回収できる。
【0045】
前記ネット濾過装置と、前記吸上装置と、前記流し樋及び前記残滓フィルターを濾過装置として一体化し濾過装置としてコンパクトにまとめると取り扱いや保守がしやすくなる。
【0046】
また糞や残滓を回収する別の手段として、または並行して用いられる手段として、固形物収拾機を水槽底面に挿入する事ができる。これは小型箱状の容器の底面に、多孔質または細かい網状の素材で高さの低い底面フィルターを設置し、それを貫通してパイプを接続し、そのパイプの反対側の端部に水流ポンプを接続して前記底面フィルター内の水を吸い出す装置を構成する。
【0047】
前記箱状の容器に層状にスポンジと不織布でできたフィルターを挿入する。水流ポンプを動作させ、前記底面フィルターの中の水が汲み出される事により前記固形物収拾機回収装置に周囲の水とともに糞や残滓を吸い込む。これを後で回収する事により糞や残滓を取り除くことができる。これは前記吸上げ装置の替りに用いてもよく、併用して用いても良い。
【0048】
前記濾過装置と養殖生物の生育域を分けるために、水槽内に仕切壁を設け、前記水槽内側の壁には仕切壁取付部を設ける。
前記濾過装置を前記水槽に着脱するときに、前記仕切壁を取り外すことを可能にしておくと、濾過装置の保守や交換がスムーズにできる。
【0049】
養殖生物が海老やある種の魚類の場合、隠れ家が必要になり、そのために前記水槽の底面または仕切床またはネットに炭素繊維を固着して配することができる。
【0050】
また前記仕切床またはネットに炭素繊維を固着した場合、前記仕切床またはネットの下方に散気管を配し送気すると炭素繊維が揺らぎ、海草の様に見えるためいっそう隠れ家としての効果が大きい。
また仕切床またはネット下に散気管を配する代わりにまたは散気管と併用して仕切床またはネット上または水槽底面に、水流ポンプを配し、水流により炭素繊維をなびかせ、隠れ家の効果を高めることができる。
【0051】
養殖する生物が貝類などの場合、前記仕切壁または前記水槽の壁面にとまり棚を取り付け、または前記水槽の底部または仕切床上にとまり木を配する事により、貝類などが張り付く部分の面積を広げ、水槽内により多くの個体数の養殖が可能になる。また貝類は板状の棚や止まり木の下に張り付く場合が多いので、断面がT字型にとまり木を構成する場合が多い。
【0052】
底面に汲水管を敷き、前記汲水管間の要所に穴をあけ、前記汲水管を埋めるように砂を敷いた植物濾過水槽を用い、植物を生育させ、LEDや蛍光灯の光源で光を照射可能にし、前記水槽より送られてきた硝酸塩を含む海水を注ぎ込み、前記汲水管より吸水した海水を前記水槽に戻すことを可能にした植物濾過水槽を、水中に生じる硝酸塩を吸収するために用いることができる。
【0053】
前記濾過装置は、底面フィルターと前記底面フィルター上部に配された前記ゼオライトまたは砂と、砂の上部に配置された植物収納ボックスと、前記植物収納ボックス内に収容された前記コーガ石、前記欧州産Bims、木炭、前記珊瑚砂等多孔質材で構成される土壌改良剤とを有し、水耕栽培の可能な植物を前記植物収納ボックス内の前記土壌改良材に植え、前記植物に光源で光を照射可能にし、前記植物収納ボックス内に前記水槽内の海水を注ぎ込み、前記底面フィルターにより海水を前記水槽に戻す植物濾過水槽を水中に生じる硝酸塩を吸収するために用いることができる。
【0054】
前記植物の根の一部を分離し肥料不足分追加ボックスに挿入し、前記肥料不足分追加ボックスには水溶性植物肥料を挿入し、前記水溶性植物肥料が前記槽内の水に混入しない様に構成して、前記植物の根の一部から不足がちな肥料、例えばカリやリンを供給することができる。
【0055】
前記肥料不足分追加ボックスに肥料と淡水を継続的に供給するため、不足分肥料供給装置を配し、前記肥料不足分追加ボックス内に追加すべき水溶性肥料と、淡水を挿入し、その水溶液が不足分肥料追加ボックスに流れ込むように構成するとなお好ましい。
【0056】
前記植物濾過装置を、前記水槽の外に設置し、前記水槽より送られてきた海水を注ぎ込み、前記汲水管より吸水した海水を前記水槽に送ることにより、前記植物濾過装置を水槽内に設置したのと同様な効果をもたらすことが可能になる。
【0057】
また、硝酸塩を窒素ガスと水に還元するために下記のような窒素ガス分離装置を用いることもできる。
この窒素ガス分離装置は、底面に汲水管を敷き、前記汲水管の要所に穴をあけ、前記汲水管を埋めるように下部濾材を敷き詰める。
前記下部濾材上部には多数の孔が開けられている中間ガス分離版を配する。この孔は濾材を上下に分離し水を透過させるためのものである。
【0058】
前記中間ガス分離版には上方にガス放出パイプが貫通して取り付けられている。
前記中間ガス分離版の上部には好気性バクテリアを主に定着したコーガ石が敷き詰められ、中間ガス分離版の下部には嫌気性バクテリアを定着させるために同じくコーガ石を敷き詰める。
【0059】
水槽内の水が注ぎこまれる状態で、前記汲水管より水を吸引すると、前記窒素ガス分離装置内にゆるい下降水流が生じる。上部濾材によりまだ残留しているアンモニア、亜硝酸を濾過され、硝酸塩を含んだ水は中間ガス分離版の孔をとおり下部濾材に接し、そこに棲息している嫌気性バクテリアにより窒素ガスと水に還元される。ここで生じた窒素ガスは窒素ガス分離装置内を上昇するが、中間ガス分離版により、ガス放出パイプに導かれて空気中に放出される。
【0060】
このとき窒素ガスは好気性バクテリアと触れないため酸化されることは少ない。
また上室には中間ガス分離板近傍の水を吸い上げ窒素ガス分離装置外に配する為の空気ポンプを配しても良い。
【0061】
前記水槽内に篭または編みを挿入する。水中内に硝酸塩成分があると自然に藻が篭や網の網目に付着し繁殖する。この藻により硝酸塩を藻に吸収させる事が可能となる。
【0062】
海水中の硝酸塩を減少させる為に、海草に硝酸塩を吸収させる方法もある。底面に底面フィルターを配し、その上部に前記ゼオライトまたは砂を挿入し、前記ゼオライトまたは砂にワカメ、ホンダワラ、アマモ等海草を植え、前記海草に海水中の硝酸塩を吸収させる。この装置を海草浄化装置という。
【0063】
植物に硝酸塩を吸収させる方法の一つとして水耕栽培が可能な植物を用いる方事もできる。ここでは植物濾過装置として水槽内に挿入して用いる事ができる他に、植物濾過水槽として、前記水槽外に独立した水槽をとして配しても良い。ここでは外部に配した水槽を用いた例で説明する。
【0064】
栽培する植物を植物収納ボックスに入れる。
植物濾過水槽は栽培する植物濾過水槽の種類により植物の水面からの高さと水深部の深さが異なる。水深部の深さに応じてその植物の根の部分が水槽内の水面に対し適当な位置に来るように水槽内で鉢を置く高さを調節する。
植物濾過水槽内に植物収納ボックスを置くための上下仕切り板を穴あき板などで作りその下にコーガ石などを敷き詰める。コーガ石には嫌気性のバクテリアを定着させ、ボックス型濾過装置と同様な構造をとり、その効果を持たせると更に良い。
【0065】
植物の生育を促進するために照明を用いて光を照射すると良い。光源は蛍光灯、電球も用いる事はできるが、LEDがエネルギー効率の面と低電圧で扱えるため、取り扱いやすいのと、育成する植物に最低な波長の光を選んで照射できるので最も実用性が高い。
【0066】
本願特許の発明者による最近の研究と実験によりトマトなどは海水での育成が実用になりつつある
海洋生物の養殖のため硝酸塩を吸収して水を浄化するという役割のほかに、硝酸塩(窒素肥料の一種)を積極的に利用して水耕栽培も併用し、採算性をよくする事も可能になる。
【0067】
植物の育成という観点で捉えた場合窒素肥料のみでは養分が偏ってしまうことがある。
不足分を補ってバランスを浴するために必要な成分をどのように与えるかも課題であるが、その成分によっては水槽に混入すると主目的である養殖中の海洋生物に悪影響を与える事がある。
【0068】
それを防ぐために前記植物収納ボックス54内に肥料不足分追加分ボックス52を設け、この中に不足する肥料を供給する。前記肥料不足分追加ボックには植物濾過水槽に植えている植物の根を分け挿入する。大切な事は前記肥料不足分追加分ボックス52内と水槽の水が混入しない様にすることである。
【0069】
これらのような構成を持たせる事により、水槽から硝酸塩をも有効に取り除き、純度の高い海水を再生し、海洋生物養殖に再利用することを実現する。
【0070】
養殖システムを設置したり移動したりすることを容易にし、実用性を高めるために軽量化をすることは大切である。また設置可能な環境を拡げ、設置後の運用経費を低減するために、水槽に断熱性を持たせることは有効である。
前記水槽または植物濾過水槽または脱膣水槽は、底面、側面の両方またはそれらの一方または一部を発泡プラスチックで形成すると、軽量化と断熱性を高める事、更に低価格化が可能になる。
【0071】
前記水槽または植物濾過水槽または脱膣水槽の側面周囲及び底面に沿うように補強パイプを回設する。前記補強パイプは、上下に複数回設し、要所で上下を略鉛直に配した連結パイプで接続し、連結パイプ上部には他の水槽の連結パイプ下部に接合するための接合部上端接合部を設け、連結パイプ下部には他の水槽の連結パイプ上部に接合するための下端接合部を設け、ひとつの水槽の上端連結部に他の水槽の下端連結部を嵌めこむことにより、水槽を重ねる事が可能になる。
【0072】
また環境温度による水槽内の養殖生物への影響を少なくするために、水槽は野外ではなく室内に設置する事が好ましい。しかし設備に要する費用を少なくするために、鉄板で構成された小屋(物置、ガレージ、小型ドーム等)が良く用いられる。
【0073】
しかしこの欠点は断熱性が少なく外気により室内の温度の影響が大きい事にある。
小屋の断熱性を高めるためには屋根または壁や、小屋の内側に発泡プラスチックを貼り付ける方法が良い。特に屋根や外壁に行うと外断熱となりその効果は大きい。
【0074】
水槽の配置はスタック状に多段重ねる事により床面積を減らすことが可能になるが、あまり高くなると作業がやりにくくなる。その場合最下段の水槽を床面から下げる事により作業がしやすくなる。
【発明の効果】
【0075】
本発明を実施する事により、海水中のアンモニア、亜硝酸、硝酸塩、糞や餌の残滓などの固形物を効果的に除去する事ができるため、海水の定期的な交換を不要にすることができ、海水を交換する事による海水の輸送の費用、排水の公害(塩害)などが解決でき、り、内陸での海洋生物養殖事業の採算が上がり易く、実用化が容易になった。
【0076】
従来のシステムにおいて海水を換える目的は4つあり、第一の目的は海洋生物の排泄物に含まれる、毒性の強い水溶性の成分特にアンモニアの影響を除く事にあったが、本発明を実施する事により、アンモニアは好気性バクテリアにより亜硝酸化され、その亜硝酸も好気性バクテリアにより毒性の低い硝酸塩に変えられる。亜硝酸塩も嫌気性バクテリアにより還元され窒素ガスと水に分解されるか、または植物の肥料として吸収され完全に無毒化される。
本発明においては、アンモニア、亜硝酸の処理は好気性バクテリアを使った酸化処理であり、増殖に酸素の存在が必要条件である一方、硝酸塩の処理は嫌気性バクテリアを使った還元処理という、相反する条件を利用し、ボックス型濾過装置または窒素ガス分離装置によって小型の一体型濾過装置を実現している。
【0077】
本発明はこのようにして海洋生物が発生させるアンモニア及びその派生物質をほぼ完全に取り除くことができる装置および方法を提案している。硝酸塩を取り除き、その後に残った水は純度の高い海水であり、海洋生物の養殖に再利用できる。
【0078】
一方、排泄物の中の水に溶けにくい固形成分も吸上げ装置または固形物収拾機により回収する事により海水の汚濁を防ぐ事ができる。
【0079】
海洋生物を水中で飼育すると水中に含まれる酸素が減少する。海水を換える第三の目的は海水中に酸素を補給することであるが、これは本発明を待つまでもなく空気をポンプで送り、水中で放散することによりしばしば行われている。
本発明では後述のように、固形物を除去するための空気ポンプと水浄化のための散気管を使用し、これらにより空気を水中に排出するので酸素補給の効果を併せ持たせることができる。
【0080】
海水を換える第四の目的は鉄分やカルシウム分等、いわゆるミネラル成分を補給することにあったが、本発明ではネット濾過装置にミネラル収納部を設け、そこにカルシウムや鉄などを入れておく事によりミネラルを適宜補給する事ができる。
【0081】
また前記濾過装置をユニット化し、仕切り壁を着脱可能にした事により水槽内からの取り出しや、移動を容易にすることが可能になった。
【0082】
また本発明を実施する事により、たとえばあわびなど養殖生物に、とまり棚や止まり木など隠れ家を提供する事ができ、養殖生物にストレスが溜まり、食欲が衰え生育が遅れたり、拒食症になることを防ぐことが可能となる。
【0083】
養殖を事業行う設備に、軽量、断熱性、安価である発泡スチロールを代表とする発泡プラスチックを使用する事を実現した。そのため設置場所の制限や設置のための手間がかかず、ちょっとした空地や最近あちこちに見られる廃校跡、不要になった倉庫や鋼鈑製ガレージの内部など、場所を選ばずになどを養殖場として活用することも可能となった。
また一度設置した後もその移動や交換などが可能になった。
【0084】
また、本発明は水槽をスタック状に複数段重ねて設置使用することができるため、狭い場所にも設置か可能である。
【0085】
又発泡プラスチック製(発泡ポリスチレン等)のドームハウス内にも設置でき、特にその断熱性の高い特徴を生かし、また水槽も発泡プラスチックで出来ているため温度の維持管理が容易になる。
【0086】
本発明は、前述の特許文献1の特開2000−157096に開示されている方法と異なり、水の流れが整然と、一連の流れとして総合的に水質浄化と汚濁物質の除去を行い、水の交換を実用上不要にするシステムを実現している。
【本発明を実施する最良の方法】
【0087】
図にしたがって本発明の実施例を説明する。図はわかりやすくするためすべて水槽の側面は透過するように描いている。
【0088】
図1は本装置の正面図で、水槽を3段構成にしている。図2はその平面図、図3はその最下段の水槽を取り出した時の平面図、図4は図1内に設置されたネット濾過装置である。図2及び図3においては水槽蓋2を取り外して描いている。
【0089】
養殖システムの軽量化と断熱効果及び低価格化のために、前記水槽1及び植物濾過水槽または脱膣水槽は、底面、側面を発泡プラスチックで形成する。
【0090】
水槽1は発泡プラスチック板を組み合わせて作った方形の水槽で、その上部は開放されているが、通常使用するときは水槽蓋2で上面を覆う。
【0091】
前記水槽1の側面周囲及び底面に沿うように補強パイプを回設する。前記補強パイプは、上下に2段に回設し、要所で上下を略鉛直に配した連結パイプで接続し、連結パイプ上部には他の水槽の連結パイプ下部に接合するための上端接合部を設け、連結パイプ下部には他の水槽の連結パイプ上部に接合するための下端接合部を設け、ひとつの水槽の上端連結部に他の水槽の下端連結部を嵌めこむことにより、水槽を3段に重ねる。
【0092】
3段に構成した水槽のうち上段及び中段の水槽は海洋生物を養殖するための水槽とし、下段は主に海水浄化のための水槽とした例で説明するが、この構成にとらわれる事はない。
【0093】
下段の水槽に隣接して植物濾過水槽49を設置する。
【0094】
本装置全体の水の流れは以下の通りである。図1において各水槽の左右両端付近にオーバーフローパイプがあり、これにより上下3段の水槽がつながっている。各水槽右端のオーバーフローパイプに汲み上げ用パイプ6が挿入されている。汲み上げ用パイプ6の下端には汲み上げポンプ4が接続され、これにより下段の水槽から上段の水槽へ水を汲み上げる。
【0095】
最下段の水槽において、水位がオーバーフローパイプの上端を越えると、超えた水はその水槽の下段に位置する水槽に流れ込む。このようにして水槽内の水は各水槽間を循環する。
【0096】
前記水槽1に、好気性バクテリアによるアンモニア及び亜硝酸酸化手段を前記ネット濾過装置7としてユニット化し水槽1内に設置する。前記ネット濾過装置7には、内部に好気性バクテリアが定着したコーガ石を挿入し、その下部に散気管を配し、前記散気管より吹き出された空気の上昇により励起され上昇する水を、前記炭素繊維またはコーガ石に定着した好気性バクテリアにより酸化させる。
【0097】
またネット濾過装置7に吸上げ装置8と水流し樋13とパンチ板14及び残滓フィルター15を一体にまとめる事により装置をコンパクト化する。
【0098】
また嫌気性バクテリアによる硝酸塩還元手段を前記ボックス型濾過装置16としてユニットにまとめ水槽1に設置する。
【0099】
水槽1が比較的小型の場合は、ネット濾過装置とボックス型濾過装置を隣接させ一体化し、ネットボックス複合濾過装置21としてこれを水槽内に設置すると良い。
【0100】
この嫌気性バクテリアによる還元をより強力に行うために水槽1内に窒素ガス分離装置を設置する事もできる。
また硝酸塩を植物に吸収させる手段として水槽内に海草濾過装置を設置する。
【0101】
また植物による硝酸塩吸収手段として植物濾過水槽49を用い、水槽1外に設置する。前記オーバーフローパイプ5を通して水槽1の中段の水槽より供給された水を注ぎ込み、前記植物濾過水槽底面に配した底面フィルター19より汲み出した水を水排出口12に通して水槽1の下段の水槽に注ぐことで、水槽1と植物濾過水槽49の水を共有化する。
【0102】
また固形物収拾機を水槽底面に設置する事により糞や残滓を回収する。
前記水槽1の内部底面近傍に傾斜板37を設け、水中に放出され沈降する糞や餌を水槽底面の中心部に集積する。
前記水槽1の底面に集積された糞や残滓を水流ポンプ39により、前記吸上装置8の前記吸上げ用パイプ6の吸込口近傍に集め、吸上げ装置8で水流し樋13へ排出し、パンチ板上の残滓フィルターで漉し取り回収する。残滓フィルターは不織布を用いると性能面や価格面で好都合である。
【0103】
また糞や残滓を回収するための第2の手段として、前記固形物収拾機23を水槽底面に挿入する。
【0104】
また、養殖生物が魚類の場合、前記傾斜部の上方に前記水槽内を上下に区分する仕切床を設ける。前記仕切床は、養殖生物の通過できない大きさの格子状とする。
【0105】
前記ネット濾過装置の、前記散気管より吹き出された空気の上昇により、ネット濾過装置内部に上昇水流を励起し、上昇水流により前記ネット濾過装置の上方に吹き出された水も、前記流し樋上に吹き出され、前記残滓フィルター上に吐き出され、吸上装置では回収できなかった細かな残滓等も回収できる。
ミネラル成分を補給するため、前記ネット濾過装置内にカルシウムまたは鉄分を含んだミネラル収納部を配置する。
【0106】
前記濾過装置と養殖生物の生育域を分けるために、水槽内に仕切壁を設け、前記水槽内側の壁には仕切壁取付部を設ける。
前記濾過装置を前記水槽に着脱するときに、前記仕切壁を取り外すことを可能にしておく。
【0107】
養殖生物が、あわびなど貝類の場合、隠れ家確保のために前記仕切り壁3に前記仕切り棚41を設ける。
【0108】
また、硝酸塩を窒素ガスと水に還元するために前記窒素ガス分離装置29もあわせて水槽1内に設置する。
【0109】
また環境温度による水槽内の養殖生物への影響を少なくするために水槽は野外でなく小屋内に設置する。
鉄板で構成された小屋の屋根や外壁に発泡プラスチックを貼り付け、その外側を樹脂塗料でコーティングし保護する。
【0110】
また濾過装置と養殖生物との領域を分けるために仕切り壁3を設ける。前記仕切り壁の下部には水と後述する固形物を通すための切欠きがある。
【0111】
養殖生物がかきやあわびなど海底や岩に張り付いて生息する生物の張り付く場所を確保するために、とまり棚を仕切壁3や水槽1の側壁に設ける。
【産業上の利用可能性】
【0112】
近年海洋生物に関しては自然保護の観点や地球温暖化の影響により、以前のように自由に捕獲や漁ができなくなってきている。日本では伝統的に魚介類特に魚肉を蛋白源として活用している。一方世界的に見ても健康志向の影響で魚類の消費が増加しており、今後海洋での漁のみに依存することはできず、養殖の重要性が高まっている。
【0113】
また、海洋生物はその資源保護の為禁漁期間が定められているものも多く、何時でも漁をする事ができる訳ではない。養殖はこれが適用される事は無いので、禁漁期間に出荷できれば市場価格の安定に寄与すると共に事業としての採算性の面からも利点は多い。
【0114】
しかし、従来は従来海洋生物の養殖が行われているのは海岸近辺に限られている。それは長期間安定した飼育環境を維持するのは内陸では難しかったからである。海洋生物を水槽で飼育すると、餌の残滓や排泄物が生じ、水中に溜まってしまう。
【0115】
淡水生物や海岸近辺であれば適時新しい水と交換することにより継続して飼育が可能であるが、内陸で海洋生物の養殖を行う場合は、新鮮な海水を確保するために海から輸送しなければならず、また使用済みの水も塩害の恐れがあるため容易に廃棄することができない。したがって、従来内陸での海洋生物の養殖は一部実験で行われている例があるぐらいで本格的に採算のあったシステムとはなっていなかった。
【0116】
以上の課題を解決できる本発明は海洋生物の養殖が場所を選ばずにできるようにしたシステムを提供するものであり、社会的に要請の強い、日本の食糧事情の一端を解決することに寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】 本発明の水槽正面図(3段構成にした例)。
【図2】 本発明の水槽平面図。
【図3】 本発明の水槽3段目の平面図。
【図4】 本発明の水槽内に設置されたネット濾過装置と吸上げ装置の4面図及び断面図。
【図5】 本発明の水槽内に設置されたボックス型濾過装置の4面図及び断面図。
【図6】 本発明の水槽内に設置されたネット濾過装置の4面図及び断面図。
【図7】 本発明の水槽内に設置されたネット型及びボックス型複合濾過装置の4面図及び断面図。
【図8】 本発明の水槽内に設置された海草濾過装置の4面図及び断面図。平面図。
【図9】 本発明の水槽内に設置された窒素ガス分離装置の4面図及び断面図。平面図。
【図10】 固形物収集機
【図11】 本発明の水槽内の上下仕切メッシュ板が取り付けたれている例の2面図と断面図
【図12】 植物を使った海洋生物養殖システム正面図、平面図及び断面図。
【図13】 植物収納ボックスと不足分肥料供給装置
【符号の説明】
【0118】
1 水槽
2 水槽蓋
3 仕切壁
4 汲み上げポンプ
5 オーバーフローパイプ
6 吸上げ用パイプ
7 ネット濾過装置
8 吸上げ装置
9 空気ポンプ
10 ミネラル収納部
11 水取り入れ口
12 水排出口
13 流し樋
14 パンチ板
15 残滓フィルター
16 ボックス型濾過装置
17 散気管
18 炭素繊維
19 底面フィルター
20 送気管
21 ネット型及びボックス型複合濾過装置。
22 水取り入れ口。
23 固形物収集機。
24 仕切板。
25 海草濾過装置。
26 海草。
27 育成用LED。
28 コーガ石・珊瑚・木炭・欧州産BIMS等多孔質材であるゼオライト。
29 窒素ガス分離装置。
30 嫌気性バクテリアが定着した濾材。
31 汲水用穴あきパイプ
32 窒素ガス放出パイプ。
33 窒素ガス。
34 中間ガス分離板。
35 植物。
36 パンチ板又はネット型底板。
37 傾斜板。
38 仕切床またはネット。
39 水流ポンプ。
40 ポンプからの排出口。
41 とまり棚またはとまり木。
42 濾過材。
43 水取り入れ孔
44 接続パイプ
45 スポンジ。
46 残滓フィルター
47 通り孔
48 ネット濾過装置に定着した藻
49 植物濾過水槽
50 上部フタ
51 水耕栽培用土壌改良材
52 肥料不足分追加ボックス
53 藻
54 植物収納ボックス
55 不足分肥料供給装置(水溶性カリ、水溶性リン酸、等)
56 仕切り壁取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋生物を養殖する水槽において、好気性バクテリアによるアンモニア及び亜硝酸酸化手段と、嫌気性バクテリアによる硝酸塩還元手段または植物による硝酸塩吸収手段の少なくても一方及び、固形物回収手段を有する海洋生物養殖システム。
【請求項2】
前記海洋生物を養殖する水槽において、前記好気性バクテリアによるアンモニア及び亜硝酸酸化手段と、前記嫌気性バクテリアによる硝酸塩還元手段と、前記植物による硝酸塩吸収手段及び、前記固形物回収手段のうち、前記各手段すべてまたは一部が、それぞれ単独の濾過装置にまたは複合された濾過装置としてユニット化され、前記水槽内に設置され、または別の水槽であるが前記水槽と水を共有化された別の水槽として構成されている事を特徴とする請求項1の海洋生物養殖システム。
【請求項3】
前記濾過装置は、内部に、好気性バクテリアが定着した炭素繊維、コーガ石、黒雲母流紋岩、欧州産Bims等多孔質材のゼオライトのうち、少なくてもその一つが挿入され、その下部に散気管を配し、前記散気管より吹き出された空気の上昇により励起され上昇する水を、前記ゼオライトに定着した好気性バクテリアにより濾過するネット濾過装置である、請求項2の海洋生物養殖システム。
【請求項4】
前記ネット濾過装置の前記散気管より吹き出された空気の上昇により、ネット濾過装置内部に上昇水流を励起し、上昇水流により前記ネット濾過装置の上方に吹き出された水が、流し樋上に吹き出され、前記流し樋に案内され、残滓フィルター上に吐き出される、請求項3の海洋生物養殖システム。
【請求項5】
前記ネット濾過装置内にカルシウムまたは鉄分を含んだミネラル収納部を配置した請求項3乃至請求項4の海洋生物養殖システム。
【請求項6】
前記濾過装置は、養殖される海洋生物へ供給された餌の残滓や糞を水面上部に吸い上げる前記固形物回収手段としての吸上装置を有する前記濾過装置である、請求項2の海洋生物養殖システム。
【請求項7】
前記吸上装置は前記水槽下部から上部へ続くパイプと前記パイプ内下部に配置された空気ポンプとにより構成された、請求項6の海洋生物養殖システム。
【請求項8】
前記吸上装置の前記パイプの下部である吸込口に、水流の向きを変えるためのL字管をつけた請求項6乃至請求項7の海洋生物養殖システム。
【請求項9】
前記吸上装置より吹き出される糞と餌の残渣および水は前記水槽の上部に設けられた流し樋上に吹き出され、前記流し樋に案内され、水槽上部に敷かれた残滓フィルター上に吐き出される、請求項6乃至請求項8の海洋生物養殖システム。
【請求項10】
前記ネット濾過装置と、前記吸上装置と、前記流し樋及び前記残滓フィルターを濾過装置として一体化した請求項2乃至請求項9の海洋生物養殖システム。
【請求項11】
前記濾過装置は、底面フィルターと前記底面フィルター上部に配された前記ゼオライトまたは砂と、砂の上部に配置された植物収納ボックスと、前記植物収納ボックス内に収容された前記コーガ石、前記欧州産Bims、木炭、前記珊瑚砂等多孔質材で構成される土壌改良剤とを有し、水耕栽培の可能な植物を前記植物収納ボックス内の前記土壌改良材に植え、前記植物に光源で光を照射可能にし、前記植物収納ボックス内に前記水槽内の海水を注ぎ込み、前記底面フィルターにより海水を前記水槽に戻すことを特徴にした植物濾過装置である請求項2の海洋生物養殖システム。
【請求項12】
前記植物の根の一部を分離し肥料不足分追加ボックスに挿入し、前記肥料不足分追加ボックスには水溶性植物肥料を挿入し、前記水溶性植物肥料が前記槽内の水に混入しない様に構成した事を特徴とした、請求項11の海洋生物養殖システム。
【請求項13】
前記肥料不足分追加ボックスに肥料と淡水を継続的に供給するため、不足分肥料供給装置を配し、前記肥料不足分追加ボックス内に追加すべき水溶性肥料と、淡水を挿入し、その水溶液が不足分肥料追加ボックスに流れ込むように構成された、請求項11乃至12の海洋生物養殖システム。
【請求項14】
前記植物濾過装置を、前記水槽の外に設置し、前記水槽より送られてきた海水を注ぎ込み、前記汲水管より吸水した海水を前記水槽に送ることを可能にした、請求項11乃至請求項13の海洋生物養殖システム。
【請求項15】
前記植物濾過装置の前記植物がトマトである、請求項11乃至請求項14の海洋生物養殖システム。
【請求項16】
前記濾過装置は、底面に底面フィルターを配置し、前記底面フィルター上に前記ゼオライトを挿入し、上方から前記水槽内の海水を注ぎ込み、前記底面フィルターより吸水した海水を前記水槽に戻すボックス濾過装置である請求項2の海洋生物養殖システム。
【請求項17】
前記濾過装置は、前記ネット濾過装置及びボックス濾過装置を複合した濾過装置である請求項2乃至請求項5及び請求項10または請求項16の海洋生物養殖システム。
【請求項18】
前記濾過装置は、底面に底面フィルターを配置し、前記底面フィルター上に前記ゼオライトまたは砂を挿入し、前記ゼオライトまたは砂に海草を植えた事を特徴とする海草濾過装置である請求項2の海洋生物養殖システム。
【請求項19】
底面に汲水管を敷き、前記汲水管間の要所に穴をあけ、前記汲水管を埋めるように下部濾材を敷き詰め、前記下部濾材上部に中間ガス分離版を配し、前記中間ガス分離版は多数の孔が開けられているとともに上部からガス放出パイプが貫通しており、前記中間ガス分離版の上部に上部濾材を敷き詰め、前記汲水パイプより汲み出した水を前記水槽に送る事を可能にした窒素ガス分離装置を有する請求項2の海洋生物養殖システム。
【請求項20】
周囲に藻を有した篭または網を、水中に配した請求項1乃至請求項2の海洋生物養殖システム。
【請求項21】
前記周囲に藻を有した篭または網に光源により光を照射可能にした請求項20の海洋生物養殖システム。
【請求項22】
小型箱状の容器の底面に、底面フィルターを設置し、前記底面フィルターの前記底面フィルターに接続されているパイプの他の一端に水流ポンプを接続し、前記箱状の容器に層状にスポンジと不織布を挿入した固形物収拾機を用いた請求項1乃至2の海洋生物養殖システム。
【請求項23】
前記水槽内部の底面近傍に傾斜部を設けた請求項1乃至2の海洋生物養殖システム。
【請求項24】
前記水槽内部の底面に水流ポンプを設けた請求項1乃至2の海洋生物養殖システム。
【請求項25】
前記傾斜部の上方に前記水槽内を上下に区分する仕切床またはネットを設け、前記仕切床は格子状またはスノコ状をしている、請求項1乃至請求項2の海洋生物養殖システム。
【請求項26】
前記水槽内に仕切壁を設け、前記水槽の内側の壁には仕切壁取付部を設け、前記濾過装置を前記水槽に着脱するときに、前記仕切壁を取り外すことを可能にした請求項2の海洋生物養殖システム。
【請求項27】
前記仕切壁または前記水槽の壁面にとまり棚を取り付けた、または前記水槽の底部または仕切床上にとまり木を配した請求項1乃至請求項26の海洋生物養殖システム。
【請求項28】
前記水槽の底面または仕切床またはネットに炭素繊維を固着し、または炭素繊維を固着した部材を配し、前記水槽の仕切床またはネットの下方に散気管を配した、請求項1または請求項25の海洋生物養殖システム。
【請求項29】
前記水槽または前記濾過装置は、底面、側面の両方またはそれらの一方または一部を発泡プラスチックで形成した請求項1乃至請求項28の海洋生物養殖システム。
【請求項30】
前記水槽または前記濾過装置の側面周囲及び底面に沿うように補強パイプを複数段回設し、複数の要所で上下の回設されたパイプを略鉛直に配した連結パイプで接続し、連結パイプ上部には他の水槽の連結パイプ下部に接合するための上端接合部を設け、連結パイプ下部には他の水槽の連結パイプ上部に接合するための下端接合部を設け、ひとつの水槽の上端連結部に他の水槽の下端連結部を嵌めこむことにより、水槽を重ねる事が可能な請求項1乃至請求項29の海洋生物養殖システム。
【請求項31】
屋根または壁または内部天井または壁面に発泡プラスチックを貼り付けてなす構造物内または発泡プラスチック製構造物内に設置された、請求項1乃至33の海洋生物養殖システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−22282(P2009−22282A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182002(P2008−182002)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(591057647)
【Fターム(参考)】