説明

浸漬塗布方法、分散液及び電子写真感光体

【課題】浸漬塗布の際に、被塗布基材の表面に均一に塗膜を形成する。
【解決手段】駆動装置44により浸漬装置46を用いて被塗布基材20を浸漬塗布槽22に浸漬させる。その際、液受けタンク26から供給配管42を介して送液される塗液流量をやや少なめにし、浸漬塗布槽22に被塗布基材20の浸漬による塗液溢れ量を制御する。次いで、被塗布基材20が浸漬塗布槽22内に浸漬して停止した後、被塗布基材20を浸漬装置46により引き上げ開始する時点までに、液受けタンク26からの塗液送液流量(または塗液循環流量)をステップ上または連続的に循環手段である循環用ポンプ30により増加させ、被塗布基材20の表面に塗膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗布基材を塗布液中に浸漬し、ついで引き上げて塗布を行う浸漬塗布方法、その分散液、およびその応用例に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置は高速でかつ高印字の品質が得られ、複写機およびレーザービームプリンター等の電子写真装置において利用されている。電子写真装置に於いて用いられる感光体として有機の光導電性材料を用いた有機感光体が主流となっており、感光体の構成も電荷移動型錯体構造や電荷発生材料を結着樹脂中に分散した機能分離型の感光体へと変遷し性能が向上している。
【0003】
この機能分離型感光体の場合、現在ではアルミニウム基体の上に下引層をまず形成しその後電荷発生層および電荷輸送層の感光層を形成する場合が多い。近年電子写真装置においてコロトロンに代わりオゾン発生が少ない接触帯電方式の帯電装置が用いられるようになり、感光体にかかる負荷が増大している。画質欠陥を防ぎ、感光体の寿命を維持するために各塗布層の改良が求められている。
【0004】
接触帯電装置を用いた場合には感光体の局所的な劣化部に接触帯電時に加わる局所的な高電場により電気的なピンホールを生じこれが画質欠陥となって生じる場合があった。このピンホールリークは上述の感光体自体の塗膜欠陥により発生する場合もあるが、それ以外に電子写真装置内から発生した導電性の異物が感光体中に接触または感光体中に貫入することにより接触帯電装置と感光体基体との導電路を形成しやすくなっているために生じることもある。顕著な場合には電子写真装置内の他の部材から混入したカーボンファイバーやキャリア粉などの異物や電子写真装置内に混入したゴミが感光体に突き刺さり、接触帯電装置からのリーク点を形成する場合もある。また、物理的な接触により表面層が削れることにより薄膜化が顕著となり感光体が短命化することが問題になっている。
【0005】
ピンホールリークに対して、各塗布層を厚膜化し、かつ電気特性上の安定性の確保や表面滑性の付与などの目的で、微粒子を含有する層を導電性基材上に塗布形成する方法がこれまで講じられてきている。その一つの例として、ブロッキング(電荷注入制御)能と抵抗調整能との機能を両有する導電粉分散層を基材上に塗布し、ブロッキング(電荷注入制御)層と抵抗調整層との機能を両有する下引層(以降分散型下引層と称する)として使用する方法がある。リーク防止の観点からは下引層は厚い程大きな効果を有し、10μm以上の膜厚が求められているが、厚膜化した時には良好な電気特性を得るため抵抗を低減する必要があるが、その場合は電荷のブロッキング性が弱くなり画質欠陥としてのカブリを増加させる傾向にある。これまで酸化チタン導電粉などを用いて実用化されている分散型下引層の膜厚は1〜数μm程度の範囲にとどまっており、従来の材料を用いた場合には厚膜化による耐リーク性向上と電気特性の安定化およびカブリなどの感光体に要求されるすべての特性値を満足しうる分散型下引層はなかった。
【0006】
下引き層のみならず上層の感光層を厚膜化しピンホールリーク性を付与することも考えられる。特に最外層の感光層では感光体の寿命を長くするために厚膜化のみならず表面エネルギーの低い微粒子を分散し表面に滑性を持たせ塗膜の摩耗を抑制することが行われる。
【0007】
いずれの場合でも厚膜化すると重力による液ダレにより均一な成膜が得られないという生産技術上の問題が生じる。ひどい場合、局所的に所望の膜厚が得られずかえってピンホールリークを生じてしまうこともあり得る。
【0008】
電子写真感光体の塗布技術として従来、浸漬塗布法が用いられている。浸漬塗布法は、電子写真感光体の如く、塗膜の平滑性を重視する場合に用いられる塗布方法である。一般的に、浸漬塗布機では、被塗布基材を塗布液中に浸漬し、次に適度な速度でこれを引き上げて塗布を行う。この場合、例えば、特許文献1に記載されているように、塗布槽とは別に塗液回収のための塗液回収タンクを設けて、塗液を連続的に循環させることが好ましく、それにより塗布槽の液面変動の防止、塗液組成の均一化、塗布槽上の塗液表面の汚れ防止などの目的が有効に達成される。
【0009】
適当な環境設定、基材周辺の雰囲気安定化を図れば円筒の周方向には均一な成膜が得られる反面、重力の影響により特に厚膜になると軸方向に液ダレが生じ上端部が薄い膜厚分布を示す。塗布槽内の粘度を上げることにより液ダレは改善できるが、所望の膜厚を得るためには塗布速度を落とす必要があり生産性が悪化する。上端付近の塗布速度を平均速度より早くすることも考えられるが、複雑なパターンを塗液ごとに設定しなければならず、また制御機構を付加するための費用がかかる。
【0010】
【特許文献1】特開昭59−90667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者はこのような課題に鑑み、接触帯電装置を用いた場合でもピンホールリークや感光体の短命化が生じないような液ダレの少ない塗膜を浸漬塗布法にて提供するには、被塗布基材の浸漬、停止後から引き上げまでの間に循環流量を増加させること、構造粘性のような特異的な流動特性を示す分散塗液を使用することであることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
また、本発明者はこのような課題に鑑み、接触帯電装置を用いた場合でもピンホールリークや感光体の短命化が生じないような厚膜感光体を浸漬塗布などの塗布法にて提供するには構造粘性のような特異的な流動特性を示す高濃度の微粒子を含む分散塗液を用いることであることを見いだし、そのような塗液を平滑、安定、かつ生産性良く塗布する方法を見いだし、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願発明は以下の特徴を有する。
【0014】
(1)被塗布基材を浸漬する塗布槽と、前記塗布槽に塗液を供給及び回収するために前記塗液を循環する循環流路と、前記循環流路内に設けられた循環手段とを有する浸漬塗布装置によって被塗布基材を被覆する浸漬塗布方法において、前記循環手段は、前記被塗布基材が前記塗布槽に浸漬後停止してから引き上げを開始する時点までに前記塗液の循環流量を増加させるように制御される浸漬塗布方法である。
【0015】
(2)微粒子を含有する分散液の被塗布基材上への浸漬塗布方法において、塗膜の形成が、室温における流動特性が以下の(1)式および(2)式で表される分散液に円筒の被塗布基材を浸漬、塗布する浸漬塗布方法である。
【0016】
(数4)
η=kDn−1 …(1)
0.7≧n≧0.2 …(2)
(式中、Dは剪断速度(1/s)、ηは粘度(Pa・s)、k(Pa・sn)は定数である。)
【0017】
(3)前記塗液が微粒子を分散した分散液であり、前記分散液の室温における流動特性が以下の(1)式および(2)式で表される分散液である。
【0018】
(数5)
η=kDn−1 …(1)
0.7≧n≧0.2 …(2)
(式中、Dは剪断速度(1/s)、ηは粘度(Pa・s)、k(Pa・sn)は定数である。)
【0019】
(4)前記塗液が微粒子を分散した分散液であって、前記分散液中に分散含有される前記微粒子の比表面積が10m/g以上であり、前記微粒子の重量濃度が20重量%以上50重量%以下であり、前記微粒子とバインダ樹脂とを含む固形分の重量濃度が45重量%以上70重量%以下であり、前記分散液の室温における流動特性が以下の(1)式および(2)式で表される分散液である。
【0020】
(数6)
η=kDn−1 …(1)
0.7≧n≧0.2 …(2)
(式中、Dは剪断速度(1/s)、ηは粘度(Pa・s)、k(Pa・sn)は定数である。)
【0021】
(5)前記微粒子を含有する分散液に浸漬塗布して被塗布基材上に前記微粒子を含む塗布層を形成する塗布方法であって、液受けタンクと、液受けタンク内撹拌装置と、循環用ポンプと、フィルタと、浸漬塗布槽と、それらを連結する配管とを有する循環型浸漬塗布装置を用い、前記分散液の液温制御、前記分散液の濃度制御、および剪断速度制御の少なくとも1種類を制御することにより浸漬塗布槽表面の粘度が経時的に一定となるよう制御される上記(2)記載の浸漬塗布方法である。
【0022】
(6)前記浸漬塗布槽の手前にて最も大きな剪断を加える剪断速度制御手段が設けられている上記(5)記載の浸漬塗布方法である。
【0023】
(7)前記剪断速度制御手段は、前記循環型浸漬塗布装置の配管中で最も口径が小さい配管またはフィルタである上記(6)記載の浸漬塗布方法である。
【0024】
(8)前記浸漬塗布槽の底面には、剪断速度を制御するための複数の孔が設けられている上記(6)記載の浸漬塗布方法である。
【0025】
(9)被塗布基材を浸漬する塗布槽と、前記塗布槽に塗液を供給及び回収するために前記塗液を循環する循環流路と、前記循環流路内に設けられた循環手段とを有する浸漬塗布装置によって被塗布基材を少なくとも一層被覆することにより製造される電子写真感光体において、前記循環手段は、前記被塗布基材が浸漬後停止してから引き上げを開始する時点までに塗液の循環流量を増加させるように制御され、引き上げ塗布した塗布層の膜厚が1μm以上の感光層を少なくとも一層有する電子写真感光体である。
【0026】
(10)微粒子を含有する分散液を導電性基材上に浸漬塗布してなる微粒子を含む塗布層を有する電子写真感光体において、室温における流動特性が以下の(1)式および(2)式で表され、浸漬塗布により形成される前記微粒子を含む塗布層が1μm以上の膜厚である感光層を少なくとも一層有する電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡単な条件変更にて、平滑な塗膜が得られ、環境負荷が少なく、生産性の良い成膜方法が提供される。電子写真感光体の塗布方法に用いた場合には、ピンホールリーク等の画質欠陥を生じない電子写真感光体及び電子写真装置を獲得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
[浸漬塗布方法及び分散液]
本発明の浸漬塗布方法は、被塗布基材を浸漬する塗布槽と、前記塗布槽に塗液を供給及び回収するために前記塗液を循環する循環流路と、前記循環流路内に設けられた循環手段とを有する浸漬塗布装置によって被塗布基材を被覆する浸漬塗布方法において、前記循環手段は、前記被塗布基材が前記塗布槽に浸漬後停止してから引き上げを開始する時点までに前記塗液の循環流量を増加させるように制御されるものである。
【0029】
上記循環手段としては、例えば循環ポンプを挙げることができ、循環ポンプとしては、例えばギアポンプ、ダイアフラムポンプ、ロータリーポンプなどが好ましい。
【0030】
浸漬塗布方法では一般的に、引き上げ速度が速いほど膜厚が厚くなることが知られている。特に、前記のような塗布槽への塗液の供給及び回収を繰り返して行う浸漬塗布装置では、循環流量が遅い場合、基材の引き上げ速度と流速との間の相対速度の関係から膜厚が厚くなる。よって、塗膜上端付近塗布時の流量が中腹以降塗布時の流量より小さければ上端部付近の塗膜を比較的厚く塗布できる。
【0031】
特開平1−171674号公報には、引き上げ開始した時点から少なくとも所定の時間が経過するまで塗液の供給量を漸次増加する方法が提示されている。しかし、この方法では流量の複雑な制御機構が必要であり、流量を無段階に、かつ滑らかに変化させないと基材周囲に膜厚の厚いリング状の縞が生じてしまう。
【0032】
本発明では、基材引き上げ開始以前に循環ポンプ設定を変化させ、流量をステップ上または連続的に増加させたときの応答遅れにより、塗膜上端部での浸漬塗布槽内の流速が中腹部に比べて遅くなり、その結果、上端部が厚く塗布されることを特徴とする。厚いリング状の縞を発生させず所望の効果を得るには、流量を増加させるタイミングが重要である。このタイミングは塗液の種類、浸漬塗布槽のフタ、フード、塗布条件などにより適宜決められるが、以下に示す(1)式においてn=1付近のニュートン性に近い塗液では基材の引き上げ開始の直前から1秒前以内とすることが望ましい。以下に示すような0.7≧n≧0.2である非ニュートン性流体では粘性の回復が遅くなることが多く、この場合流量変更位置を1秒より早めに行う方がよい。
【0033】
以上のような相対速度による上端部厚膜化による膜厚分布改善に加え、構造粘性を示す微粒子分散液では粘度による効果が期待できる。微粒子を含有し室温における流動特性が以下のような指数法則(1)式および(2)式のような構造粘性を示す高濃度の微粒子を含む分散液では、流速が遅い場合塗液にかかる剪断速度が低く分子間会合や凝集により高い粘性を示す。
【0034】
(数7)
η=kDn−1 …(1)
0.7≧n≧0.2 …(2)
(式中、Dは剪断速度(1/s)、ηは粘度(Pa・s)、k(Pa・sn)は定数である。)
【0035】
流量を増加させた場合、微粒子の会合や凝集状態がほぐれ粘度が減少するが、時間依存性により一定の粘度になるまでに応答遅れが生じる。基材引き上げ開始以前の適当な時点で流量を増加させれば、塗膜上端部引き上げ時のみに比較的高い粘度を保持でき、結果として厚い膜が得られ膜厚分布が改善できる。
【0036】
(1)式および(2)式で表される流動特性付与するためには、例えば、分散液中に分散含有される微粒子の比表面積が10m/g以上であり、微粒子の重量濃度が20wt%以上50wt%以下であり、微粒子とバインダ樹脂とを含む固形分の重量濃度が45wt%以上70wt%以下であればよい。分散液が高濃度の場合、溶剤が揮発する前の塗膜の湿潤膜厚を減らすことができ、揺動性による粘度上昇による効果と合わせて液ダレ防止に寄与する。また低濃度の塗液と比較して溶剤排出量を削減できるという環境上の利点も有する。
【0037】
前記分散液の流動特性は、市販の簡易レオメータ、例えば東機産業製RE550により測定される。液と接触するプローブ部分は一般に共軸円筒型、コーン型、並行平板型が使用されるが、測定中の塗液にかかる剪断が場所によらず一定となるコーン型が好ましい。測定中の温度変化や溶剤揮発による濃度変化を抑制するために、プローブ周辺に一定温度の温水循環システムや溶剤トラップによりプローブ周囲の溶剤濃度を飽和させることが適宜行われる。このような簡易レオメータではプローブの一定回転速度に相当する剪断速度とプローブにかかるトルクからずれ(剪断)応力τ(Pa)を測定する。図1のような流動曲線を描くには回転速度を変化させ測定を継続する。
【0038】
特許第3131650号および特許第3273256号には、図1の流動曲線から(3)式により分散液の評価を行っている。分散液の特性として重要な降伏応力τを求める場合(3)式は有効であるが、該公報ではτをゼロと近似しているし、また(3)による粘度の定義ではn=1の時以外粘度の単位に矛盾が生じる。ちなみに前記式(1)や(2)で表される流動特性を示す分散液の場合、降伏応力はゼロとならないことが多く高価なレオメータで測定するか、キャッソンの式にて解析的に評価することが必要となる。
【0039】
浸漬塗布では特に塗布される膜厚が粘性に依存するので一定の定義に基づいた粘度が所望される。ここでは簡易レオメータにて求めたある一定の剪断速度Dとそのときにかかる応力τより(4)式のように見かけの粘度が定義される。
【0040】
(数8)
τ=τ+ηD…(3)
η=τ/D …(4)
【0041】
図2に前記式(1)で示される分散液の流動特性を説明するために、剪断速度と上記定義による粘度との関係を模式的に示す。n=1のいわゆるニュートン流体では剪断速度の変化によらず粘度が一定となる。このような場合、流量を変化させても粘度は一定であり、上述の粘度変化の効果による膜厚分布の改善効果は望めない。これに対し、図2に示されたように(1)式のような流動特性を示す分散液では流量が増加し剪断速度が大きくなると粘度が低下する。このような液を乾燥膜厚が15μmを超えるような塗膜を塗布した場合、液ダレ時の剪断速度(数s−1オーダー)でも粘度が変わらず液ダレが生じやすい。液ダレを抑える粘度の上昇は、溶剤の揮発による濃度の上昇、および液膜内温度の低下によるが、これらの急激な変化はオレンジピールや白化などの二次障害を発生させる。
【0042】
本発明者は前記式(2)で表される分散液は、図2に示されるように、液ダレ時のように剪断速度が低い場合粘度が高くなることに注目した。
【0043】
漬塗布循環機内ではポンプ、攪拌機周辺、フィルタ通過時に高い剪断が、配管中や浸漬塗布槽にて比較的緩やかな剪断がかかる。実用的な剪断速度範囲としては、10〜10000s-1程度となることが一般に知られている。塗布時の剪断速度は一般に10s-1程度と考えられ、そのときの粘度は式(2)に剪断速度を代入して求められる。分散液によってはチクソトロピック性より、ポンプなどでの強い剪断の影響が残り、粒子の凝集や会合が遅れ計算された値より実際には低い粘度となることもある(図2に示された例では剪断速度が上昇する際(行き)よりも下降する際(帰り)の粘度が低くなっており、測定にかかる剪断の影響より下降時の粘度が低くなっている)。塗布された塗膜にかかる剪断速度は1s-1程度になり急激に粘度が上昇し液ダレを抑えることができる。
【0044】
このような分散液を用いることにより乾燥膜厚が15μmを超えるような塗膜を塗布した場合でも液ダレの少ない平滑な塗膜が得られる。nの値が0.7を超えてしまうと十分な粘度上昇による液ダレ防止効果が得られず、0.2より小さい場合分散液を一定の分散状態に保持することが難しくなる。
【0045】
このように剪断速度が上昇すると粘度が下がるような揺動性を示す塗液として、高濃度の微粒子の分散液が考えられる。低剪断速度領域では分子間会合や凝集により高い粘性を示すが、剪断を加えることにより会合や凝集状態がほぐれ粘度が減少する。
【0046】
以上のような浸漬塗布方法、および分散液を用い、1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは15μmを越えるような膜厚を少なくとも一層有するような電子写真感光体では、上端部付近での膜厚分布が改善され、接触帯電装置を用いた場合でも上端部付近でのピンホールリークを抑制することができる。このような厚膜(例えば15μmを超える膜)一層でも耐リーク性は得られるが、機能分離型感光体の場合さらに性能を向上させるために二層以上を上記の方法、及び分散液を用いることが好ましい。
【0047】
電子写真感光体の塗布技術として従来用いられている浸漬塗布法では、塗布される膜厚が塗液の粘度に依存する。浸漬塗布にて安定な成膜を得る上で重要なのは塗膜が形成される浸漬塗布槽表面の塗液の粘度を経時的に一定にすることである。ニュートン流体の場合温水循環や溶剤追加方式により液温(例えば、10〜35℃の一定温度)と濃度を制御することにより粘度を一定化できる。しかし、前記式(1),(2)で表されるような流動特性を示す分散液の場合それらに加えて塗液にかかる剪断をも制御し一定化する必要がある。低剪断領域での塗液のゲル化を防ぐために、少なくとも図3に示すような循環型の浸漬塗布システムが不可欠である。
【0048】
浸漬塗布装置の構成を図3に示す。図3に示すように、浸漬塗布槽22の上部には回収配管24の一端が連結され、回収配管24の他端は液受けタンク26に連結されている。液受けタンク26には、塗液が貯留されており、撹拌装置28により撹拌されている。また、液受けタンク26には、各種センサが設けられ、例えば温度センサ48、粘度計50が配設されている。液受けタンク26と浸漬塗布槽22とは、さらに供給配管42により連結され、この供給配管42の供給ラインには、循環用ポンプ30とフィルタ20が設けられている。一方、浸漬装置46は、被塗布基材20を把持するとともに、駆動装置44により被塗布基材20を主に上下移動させて被塗布基材20を浸漬塗布槽22に浸漬、引き上げをする。
【0049】
次に、上記浸漬塗布装置の動作の一例について説明する。駆動装置44により浸漬装置46を用いて被塗布基材20を浸漬塗布槽22に浸漬させる。その際、液受けタンク26から供給配管42を介して送液される塗液流量をやや少なめにして、浸漬塗布槽22に被塗布基材20の浸漬による塗液溢れ量を制御する。次いで、被塗布基材20が浸漬塗布槽22内に浸漬して停止した後、被塗布基材20を浸漬装置46により引き上げ開始する時点までに、液受けタンク26からの塗液送液流量(または塗液循環流量)をステップ上または連続的に循環手段である循環用ポンプ30により増加させ、被塗布基材20の表面に塗膜を形成してもよい。
【0050】
または、上述した式(1),(2)における塗液粘度になるように、循環ライン特に送液ラインに剪断速度制御手段を設けてもよい。前記剪断速度制御手段として、図3の浸漬塗布装置の供給配管42、循環用ポンプ30、フィルタ40の少なくとも1種を用いることが望ましく、これらにより塗液の剪断速度をコントロールすることが好ましい。
【0051】
循環ライン中では各剪断速度が異なるため、前記式(1),(2)で表されるような分散液を循環すると循環ライン中の粘度に分布が生じる。さらに、剪断が大きくなり微粒子が会合や凝集状態から解放される速度と剪断が小さくなり元の会合や凝集状態に戻る場合の速度が異なるために、剪断速度一定の場合でも剪断のかかり方によって粘度は一定とはならない。(1)式の剪断速度Dは循環機内で、浸漬塗布槽付近で10s−1前後、循環配管中で100s−1前後、フィルタ部で1000s−1前後、さらにポンプ部分で1000から10000s−1程度の剪断分布をもつ。
【0052】
分散される微粒子の存在比が高い場合、微粒子は経時で徐々に会合や凝集する可能性がある。この場合浸漬塗布槽での粘度は漸増し、塗布される膜厚も徐々に厚膜化する。また循環ライン中に経時で剪断速度が漸増する箇所がある場合、塗布される膜厚は徐々に薄膜化する。
【0053】
本発明者は、浸漬塗布槽表面での剪断速度のみならずその手前の剪断、特に最も剪断速度が大きい部位での剪断速度を経時で一定に保つ必要があることを見いだした。最も剪断速度が大きい部位としてその他の配管よりも小さな口径の配管、特にその他の配管よりも小さな口径の供給配管42を使うことが可能である。その口径の小さな配管の前後にテーパー加工を施すなど適切な処理を行えば、微粒子の沈降や堆積がなく塗液にかかる剪断速度を一定にできる。なお、実際の配管の口径は循環流量により適宜設定される。また剪断速度を一定化する他の簡便な方策として、塗液中の泡や異物除去を目的としたフィルタ40の孔径を分散微粒子に適したサイズにすることが挙げられる。
【0054】
また、浸漬塗布槽22の底面に、複数の孔を設けてもよい。これにより、塗液循環時に所望の剪断速度に制御することができ、その結果、浸漬塗布槽22の塗液表面の粘度をほぼ一定に保つことができる。
【0055】
なお、浸漬塗布以外の例えばスプレー塗布、スパイラル塗布、リング塗布、リングスライドホッパ塗布、リング押し出し塗布法などにおいても、基材と塗液が接触する成膜部以前での剪断速度制御により前記式(1),(2)で表されるような流動特性を示す分散液を使用することが可能である。
【0056】
[電子写真感光体]
次に、電子写真感光体(以下「感光体」という)について説明する。図4〜図11は、感光体の断面図である。感光体は、導電性基材1と、この導電性基材1上に形成された下引層2と、当該下引層2の上に形成された感光層3と、から構成されている。さらに感光層3は、電荷発生層31と電荷輸送層32との2層構造でも良く、また下引層2の上に下引き層4や、感光層3の上に保護層5を設けてもよい。
【0057】
図12〜図13は評価に用いた電子写真装置の概略図である。電子写真装置は、図12〜図13に示すように、電子写真感光体7と、電子写真感光体7を帯電させるコロナ放電方式の帯電装置8と、帯電装置8に電圧を印加する電源9と、電子写真感光体7を露光する露光装置10と、電子写真感光体7上のイメージ画像を現像する現像装置11と、電子写真感光体7上の現像されたイメージ画像を転写媒体に転写する転写装置12と、電子写真感光体7の表面をクリーニングするクリーニング装置13と、イレーズ装置14と、電子写真感光体7により転写されたイメージ画像を定着させる定着装置15とを備えている。帯電装置8は電子写真感光体7に接触して設けられていても良い。この接触型電子写真装置では除電器14が設けられていないものもある。
【0058】
上記帯電装置8の接触帯電用部材は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置され、電圧を感光体に直接、均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである。また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、交流いずれも用いることができる。又、直流+交流の形で印加することもできる。
【0059】
電子写真感光体7に用いる円筒基材としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケルなどの金属ドラムとしてもよいし、シート、紙、プラスチック又はガラス上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅、インジウム等の金属を蒸着したり、酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着したものとしてもよいし、金属箔をラミネートしたり、或いは、カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散し塗布することによって導電処理したもの等でもよい。
【0060】
また、導電性基材の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。尚、導電性基材を金属パイプとした場合、表面は素管のままであってもよいし、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0061】
下引層2は、リーク耐性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要であり、微粒子として金属酸化物微粒子を用いることが好ましい。金属酸化物微粒子としては10〜1011Ω・cm程度の粉体抵抗が必要であり、中でも上記抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子を用いるのが好ましい。尚、上記範囲の下限よりも金属酸化物微粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。
【0062】
金属酸化物微粒子に表面処理を行うことも可能である。表面処理にあたっては、該金属酸化物微粒子の表面積が表面処理後の電子写真特性に大きく影響する。金属酸化物微粒子としては、比表面積が10m/g以上のものが用いられる。比表面積値が10m/g 以下のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性を得にくい欠点がある。
【0063】
また、金属酸化物微粒子は2種以上混合して用いることもできる。
【0064】
下引層2の形成用塗布液のバインダ樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などを用いることができる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。
【0065】
下引層2の形成用塗布液中の金属酸化物微粒子とバインダ樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0066】
下引層2の形成用塗布液には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。シランカップリング剤は金属酸化物の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いることもできる。ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどである。ジルコニウムキレート化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0067】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0068】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0069】
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0070】
下引層2の形成用塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。
【0071】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0072】
微粒子を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。さらにこの下引層2を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0073】
このようにして得られた下引層2の形成用塗布液を用い、導電性基材上に下引層2が成膜される。
【0074】
また、下引層2は、ビッカース強度が35以上とされていることが好ましい。さらに、下引層は、厚さが15μm以上が好ましく、さらに好ましくは20μm以上50μm以下とされていることが好ましい。
【0075】
また、下引層2の表面粗さはモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)〜1/2λに調整される。表面粗さ調整のために下引層2中に樹脂粒子を添加することもできる。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。
【0076】
また、表面粗さ調整のために下引層2を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
【0077】
さらに、この下引層2と感光層3との間に、電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために中間層を設けてもよい。中間層は、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などがある。
【0078】
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0079】
シリコン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどである。これらのなかでも特に好ましく用いられるシリコン化合物はビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
【0080】
有機ジルコニウム化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0081】
有機チタン化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0082】
有機アルミニウム化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0083】
中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす。したがって、中間層を形成する場合には、0.1〜3μmの膜厚範囲に設定される。
【0084】
感光層3の電荷発生層31は、電荷発生物質を真空蒸着により形成するか、有機溶剤及び結着樹脂とともに分散し塗布することにより形成される。
【0085】
分散塗布により電荷発生層31を形成する場合、電荷発生物質を有機溶剤及び結着樹脂、添加剤等とともに分散し、得られた分散液を塗布することにより電荷発生層31は形成される。
【0086】
本発明において、電荷発生材料としては、公知の電荷発生物質なら何でも使用できる。赤外光用ではフタロシアニン顔料、スクアリリウム、ビスアゾ、トリスアゾ、ペリレン、ジチオケトピロロピロール、可視光用としては縮合多環顔料、ビスアゾ、ペリレン、トリゴナルセレン、色素増感した金属酸化物微粒子等を用いる。これらの中で、特に優れた性能が得られ、好ましく使用される電荷発生物質として、フタロシアニン系顔料が用いられる。これを用いることにより、特に高感度で、繰り返し安定性の優れる電子写真感光体が得られることができる。また、フタロシアニン顔料は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった感度が得られる結晶型であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることができる。特に好ましく用いられる電荷発生物質としては、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロススフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、オキシチタニルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン等が挙げられる。
【0087】
本発明に用いるフタロシアニン顔料結晶は、公知の方法で製造されるフタロシアニン顔料を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。上記の処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、さらには数種の混合系、水とこれら有機溶剤の混合系があげられる。使用される溶剤は、顔料結晶に対して、1〜200部、好ましくは10〜100部の範囲で用いる。処理温度は、−20℃〜溶剤の沸点以下、好ましくは−10〜60℃の範囲で行う。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。磨砕助剤は顔料に対し0.5〜20倍、好ましくは1〜10倍用いればよい。また、公知の方法で製造されるフタロシアニン顔料結晶を、アシッドペースティングあるいはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕あるいは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御することもできる。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、濃度70〜100%、好ましくは95〜100%のものが使用され、溶解温度は、−20〜100℃好ましくは−10〜60℃の範囲に設定される。濃硫酸の量は、フタロシアニン顔料結晶の重量に対して、1〜100倍、好ましくは3〜50倍の範囲に設定される。析出させる溶剤としては、水あるいは、水と有機溶剤の混合溶剤が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
【0088】
電荷発生層31に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂をあげることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。これらの中で特にポリビニルアセタール樹脂が好ましく用いられる。
【0089】
また、電荷発生物質と結着樹脂との配合比(重量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。
【0090】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0091】
分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。さらにこの電荷発生層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0092】
さらにこの分散の際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることは高感度・高安定性に対して有効である。
【0093】
さらに、電荷発生材料は電気特性の安定性向上、画質欠陥防止などのために表面処理を施すことができる。表面処理剤としてはカップリング剤などを用いることができるがこれに限定されるものではない。表面処理に用いるカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。これらのなかでも特に好ましく用いられるシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
【0094】
また、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどの有機ジルコニウム化合物も用いることができる。また、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどの有機チタン化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などの有機アルミニウム化合物も用いることができる。
【0095】
さらに、この電荷発生層31用塗布液には電気特性向上、画質向上などのために種々の添加剤を添加することもできる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。シランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどである。ジルコニウムキレート化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0096】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0097】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0098】
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0099】
さらにこの電荷発生層31を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0100】
電荷輸送層32に含有される電荷輸送物質としては、公知のものならいかなるものでも使用可能であるが、下記に示すものを例示することができる。2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル-ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N´−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N´−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4´−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4´−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4´−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N´−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質。あるいは以上に示した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などがあげられる。これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合せて使用できる。
【0101】
電荷輸送層32の結着樹脂は公知のものであればいかなるものでも使用することが出来るが、電機絶縁性のフィルム形成可能な樹脂が好ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等があげられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、単独又は2種類以上混合して用いられるが、特にポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が電荷輸送材との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れ好ましく用いられる。結着樹脂と電荷輸送物質との配合比(重量比)はいずれの場合も任意に設定することができるが、電気特性低下、膜強度低下に注意しなくてはならない。電荷輸送層32の厚みは5〜50μm、好ましくは10〜40μmが適当である。さらにこの電荷輸送層32を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。塗布に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0102】
さらに、本発明の電子写真感光体7には電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層中に酸化防止剤・光安定剤などの添加剤を添加する事ができる。
【0103】
たとえば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
【0104】
酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル フェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル 4´−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2´−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチル フェノール)、2−t−ブチル−6−(3´−t−ブチル−5´−メチル−2´−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、4,4´−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4´−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル フェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル フェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチル エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。ヒンダードアミン系化合物ではビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N´−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。有機イオウ系酸化防止剤としてジラウリル−3,3´−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3´−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3´−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β-ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3´−チオジプロピオネート、2−メルカプト ベンズイミダゾールなどが挙げられる。有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチル フェニル)−フォスフィートなどが挙げられる。
【0105】
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われフェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
【0106】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
【0107】
ベンゾフェノン系光安定剤として2−ヒドロキシ−4−メトキシ ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシ ベンゾフェノン、2,2´−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシ ベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系系光安定剤として2−(−2´−ヒドロキシ−5´−メチル フェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−3´−(3'',4'',5'',6''−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5´−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(−2´−ヒドロキシ−3´−t−ブチル 5´−メチルフェニル−)−5−クロロ ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´−t−ブチル 5´−メチルフェニル−)−5−クロロ ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−t−ブチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−5´−t−オクチル フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−t−アミル フェニル−)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。その他の化合物として2,4−ジ−t−ブチルフェニル 3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシベンゾエート、ニッケル ジブチル-ジチオカルバメートなどがある。
【0108】
また感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有せしめることができる。本発明の感光体に使用可能な電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などをあげる事ができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl、CN、NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。また、電荷輸送層にはシリカやPTFEのような微粒子を含有させることもできる。
【0109】
また塗布液には塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
【0110】
本発明の電子写真感光体7は、必要に応じて感光層3上に保護層5を設けることも出来る。この保護層5は、積層構造からなる電子写真感光体7では帯電時の電荷輸送層32の化学的変化を防止したり、感光層3の機械的強度をさらに改善する為に用いられる。この保護層5は、硬化性樹脂、電荷輸送性化合物を含むシロキサン樹脂硬化膜、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成された膜などから成る。硬化性樹脂としては公地の樹脂であれば何でも使用できるが、例えばフェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シロキサン樹脂等が挙げられる。電荷輸送性化合物を含むシロキサン樹脂硬化膜の場合、電荷輸送性化合物として公知の材料であればいかなるものでも使用可能であるが、例えば特開平10−95787号公報、特開平10−251277号公報、特開平11−32716号公報、特開平11−38656号公報、特開平11−236391号公報に示された化合物等が挙げられるがこれに限定されるものではない。保護膜が導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成された膜である場合、導電性材料としては、N,N´−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1´−ビフェニル]−4,4´−ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモンあるいは酸化アンチモンとの固溶体の担体またはこれらの混合物、あるいは単一粒子中にこれらの金属酸化物微粒子を混合したもの、あるいは被覆したものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
この保護層に用いる結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられ、これらは必要に応じて架橋して使用することも出来る。保護層には酸化防止剤を含有させることができる。酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル フェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル 4´−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2´−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチル フェノール)、2−t−ブチル−6−(3´−t−ブチル−5´−メチル−2´−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、4,4´−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4´−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル フェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル フェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチル エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。ヒンダードアミン系化合物ではビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N´−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。有機イオウ系酸化防止剤としてジラウリル−3,3´−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3´−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3´−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3´−チオジプロピオネート、2−メルカプト ベンズイミダゾールなどが挙げられる。有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチル フェニル)−フォスフィートなどの公知の酸化防止剤の他、シロキサン樹脂と結合可能な水酸基、アミノ基、アルコキシシリル基等の官能基を有する酸化防止剤などが挙げられる。
【0112】
さらに、保護層5にはシリカやPTFEのような微粒子を含有させることもできる。保護層5の厚みは1〜20μm、好ましくは1〜10μmが適当である。さらにこの保護層5を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。塗布に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、できるだけ下層を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
【0113】
本発明により得られた電子写真感光体7は、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザービームプリンター、ディジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリなどの電子写真装置に用いることができる。レーザービームとしては高精細な画像を得るために350〜800nmの光を発振するレーザーが好ましい。さらに、レーザービームとしては高精細な画像を得るためにスポット径10μm以下が好ましく、さらに好ましくは3×10μm以下が好ましく用いられる。
【0114】
本発明により得られた電子写真感光体は、高解像度を得るための電荷発生層31より上層の機能層の膜厚は50μm以下、好ましくは40μm以下が好ましく用いられる。機能層が薄膜の場合は本発明の粒子分散型下引層と高強度な保護層の組み合わせが特に有効に用いられる。
【0115】
また、本電子写真感光体は一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも合わせて用いることができる。高精細な画像を得るためのトナーの粒子径としては、10μm以下が好ましく、さらに8μm以下が好ましく用いられる。これらのトナーは公知の製造方法に寄り得ることが出来るが、特に溶解懸濁法、重合法によって得られる球形トナーが好ましく用いられる。また、トナーには表面潤滑剤(金属脂肪酸塩)や研磨効果を有する微粒子を添加することもできる。
【0116】
また、本発明の製造法を用いて製造された電子写真感光体は、帯電ローラーや帯電フィルム、帯電ブラシを用いた接触帯電方式においても電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる。
【実施例】
【0117】
以下本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例1から実施例7および比較例1から比較例3は、上述した式(1),(2)で表される分散液による浸漬塗布に関する。また、実施例8から実施例10および比較例4から比較例7は、浸漬塗布時における循環流量の増加制御に関する。
【0118】
[実施例1]
酸化亜鉛:(平均粒子径70μm:テイカ社製試作品:比表面積値15m/g)100重量部をトルエン500重量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学社製)1.5重量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。
【0119】
前記表面処理を施した酸化亜鉛60重量部(平均粒子径70μm:テイカ社製試作品:比表面積値15m/g)と硬化剤のブロック化イソシアネート(「スミジュール3175」:住友バイエルンウレタン社製)15重量部と、ブチラール樹脂BM−1(積水化学社製)15重量部をメチルエチルケトン85重量部に溶解した溶液38重量部と、メチルエチルケトン25重量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005重量部を添加し、さらに濃度調整を行い60.5wt%の塗布用分散液を得た。
【0120】
得られた分散液を50ml採取した液を23.5℃にて温浴させた。翌日ゲル化した液に極力振動を与えないように注意しながら、簡易レオメータ、東機産業製RE550にてコーン型プローブを使用し剪断速度0.38から96s−1の範囲で流動特性を評価し、最小自乗法により(1)式のkおよびnを求めた。
【0121】
この分散液を、浸漬塗布槽の手前の配管が内径21mmであり循環フィルタの目開きが絶対濾過精度で25μmであるフィルタを含む浸漬塗布循環機内で、毎分10リットルの流量にて循環した。この浸漬塗布槽に直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材14本を一度に浸漬後毎分320mmの引き上げ速度にて塗布し、160℃、60分の乾燥硬化を行い平均膜厚25μmの目視上均一な塗布層を得た。結果を表1に示した。
【0122】
[実施例2]
実施例1の濃度調整後の濃度を59.5wt%とした以外は、実施例1と同様に分散液を作成し分散液を評価した。
【0123】
この分散液を浸漬塗布槽手前の配管の一部(長さ300mm)を内径13mmの配管に変更した以外は、実施例1と同様の条件で循環した。この浸漬塗布槽に直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材14本を一度に浸漬後毎分265mmの引き上げ速度にて塗布し、160℃、30分の乾燥硬化を行い平均膜厚25μmの目視上均一な塗布層を得た。2日おきに1週間程度まで確認塗布を行い、平均膜厚の経時変化を確認した。結果を表1に示した。
【0124】
[実施例3]
実施例1の濃度調整後の濃度を59.5wt%とした以外は、実施例1と同様に分散液を作成し分散液を評価した。
【0125】
この分散液を循環フィルタの目開きを45μmとした以外は、実施例1と同様の条件で循環した。この浸漬塗布槽に直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材14本を一度に浸漬後毎分265mmの引き上げ速度にて塗布し、160℃、30分の乾燥硬化を行い平均膜厚25μmの目視上均一な塗布層を得た。2日おきに1週間程度まで確認塗布を行い、平均膜厚の経時変化を確認した。結果を表1に示した。
【0126】
[実施例4]
実施例1と同様の方法で作成した下引層塗布用分散液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、160℃、30分の乾燥硬化を行い厚さ23μmの下引層を得た。
【0127】
次に、下引層上に感光層を形成した。まず、電荷発生物質としてのCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10部、n−酢酸ブチル300部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を電荷発生層用の塗布液として下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0128】
さらに、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′]ビフェニル−4,4′−ジアミン4部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量4万)6重量部とをクロルベンゼン80重量部を加えて溶解した塗布液を電荷発生層上に形成し、130℃、40分の乾燥を行うことにより膜厚25μmの電荷輸送層を形成し感光体を得た。
【0129】
以上のようにして得られた電子写真感光体を、接触帯電装置、中間転写装置を有する富士ゼロックス社製フルカラープリンターDocuPrint C620に搭載しプリント画質を調べたところ、良好な画質が得られた。さらに、連続1万枚のプリントテストを行ったが、リーク欠陥の発生もない優れた維持性を示した。
【0130】
[比較例1]
比較例としてまず、塗液に微粒子を含まず、塗布速度と狙い膜厚がほぼ同等となるような溶解した塗液を用い上端ダレとの比較を行った。塗液として電子写真感光体の電荷輸送層で使用されるN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′]ビフェニル−4,4′−ジアミン4部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量4万)6重量部とをテトラヒドロフラン40重量部とメチルエチルケトン40重量部を加えて溶解したものを用いた。実施例1同様の条件で循環、塗布したあとに130℃、40分の乾燥を行うことにより膜厚25μmの塗膜を得た。塗膜を目視観察すると、塗膜上端から40mm位置までの間にちぢれ上のスジが見られ、下端から50mm位置までの塗膜は白濁していた。膜厚の結果を表1に示した。
【0131】
[比較例2]
次に、比較例1で観察されたような表面故障が発生しない塗液濃度に上げ、塗布速度を抑えた以外は比較例1と同等の条件で塗布を行った。塗液としてN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′]ビフェニル−4,4′−ジアミン 8部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量4万)12重量部とをテトラヒドロフラン30重量部とメチルエチルケトン30重量部を加えて溶解したものを用いた。結果として平滑な塗膜が得られたが、塗布速度は毎分100mmとかなり遅くなった。膜厚の結果を表1に示した。
【0132】
[比較例3]
実施例3で循環していた分散液の循環を停止した。その結果5分程度で浸漬塗布槽表面の塗液が固化し塗布できる状態ではなくなった。15分後には表面の固化した皮を取り除かないと循環できないほど強固なものとなった。
【0133】
[実施例5]
実施例3で循環していた分散液を実施例1に記載した循環機の設定にて循環を行った。この状態で実施例2および3同様の塗布を行い、膜厚を確認した。結果を表1に示した。
【0134】
[実施例6]
実施例1の濃度調整後の濃度を45.0wt%とした以外は、実施例1と同様に分散液を作成し分散液を評価した。
【0135】
この分散液を実施例1と同様の条件で循環した。この浸漬塗布槽に直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材14本を一度に浸漬後毎分200mmの引き上げ速度にて塗布し、160℃、30分の乾燥硬化を行い平均膜厚16.5μmの目視上均一な塗布層を得た。結果を表1に示した。
【0136】
[比較例4]
比較例として、塗液に微粒子を含まず、塗布速度と狙い膜厚がほぼ同等となるような溶解した塗液を用い上端ダレとの比較を行った。塗液として電子写真感光体の電荷輸送層で使用されるN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′]ビフェニル−4,4′−ジアミン4部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量4万)6重量部とをテトラヒドロフラン20重量部とメチルエチルケトン20重量部を加えて溶解したものを用いた。実施例6同様の条件で循環、塗布したあとに130℃、40分の乾燥を行うことにより膜厚16.3μmの塗膜を得た。塗膜を目視観察すると、塗膜上端から10mm位置までの間にちぢれ上のスジが見られた。膜厚の結果を表1に示した。
【0137】
【表1】

【0138】
<評価方法>
初期平均膜厚/初期上端ダレ:循環後3バッチ目以内のバッチから特定の位置での塗布基材を採取し渦電流膜厚計にて(フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ MMS)膜厚を測定したもの。平均膜厚/上端ダレの定義は以下の通り。
【0139】
平均膜厚:基材上下端部から50mm位置、および基材中央部の3周にて90度刻み周4点測定したものの平均。
【0140】
上端ダレ:(上記平均膜厚)−(塗膜上端から15mmの周にて90度刻み周4点測定したものの平均)。
【0141】
定数k、および指数nは図2に示したような粘度η剪断速度Dの関係に、最小自乗法にて式(1)をフィッティングすることにより求められる。なお、フィッティングには剪断速度を大きくしていく際(行き)の粘度の値を用いた。実施例1〜6、比較例1、2、4において、フィッティングにより求まった式と実測値との間の誤差、相関係数の2乗値は0.95以上であり良好な相関を示した。測定には、東機産業製RE550、プレートとして半径24mm、1°のコーンプレートを用い、0.3〜100s−1の剪断速度範囲で測定を行った。
【0142】
<評価結果>
表1の実施例1から実施例3および実施例6,7と比較例1,2,4との比較より、式(1)、(2)を満たす条件にて浸漬塗布することによって、塗布速度を早め、生産性を上げても、基材上端の液ダレを抑えることができることが判明した。また、実施例5では、剪断速度が他の実施例に比べ若干制御されていないために、膜厚増加率が他の実施例に比べ高いが許容範囲内である。なお、実施例5より、さらに剪断速度の制御をより精度よく行うことにより、上記膜厚増加を抑制することができる。
【0143】
[実施例8]
(塗液調製工程)
N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′]ビフェニル−4,4′−ジアミン40部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万)60重量部とをテトラヒドロフラン280重量部及びトルエン120重量部に十分に溶解混合した後、四フッ化エチレン樹脂粒子10重量部を加えてさらに混合した。このとき、室温を25℃に設定し、混合工程における液温度を25℃設定し、混合工程における液温度を25℃に保った。
【0144】
次に、上記混合液について分散工程を実施してフッ素系樹脂含有層用塗工液を調製した。かかる分散工程においては、冷却水発生装置に20℃の水を導入し、その水を冷却水として冷却水送液用配管内を循環させた。このとき、冷却装置における冷却水の温度が14℃となるように制御することで、サンドクラインダー内の塗工液の温度を50℃に保持した。なお、ここで得られた塗液は、ニュートン性流体に近いものである。
【0145】
(浸漬塗布工程)
前記塗液を、循環流路を有する浸漬塗布装置にて毎分約10リットルの流量にて循環した。この塗液の流量を毎分約3リットルに変更直後に直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材10本を毎分1000mmで浸漬した。浸漬完了後5秒間停止した後、引き上げ直前1秒前に流量を毎分約10リットルに上げた直後に毎分130mmの引き上げ速度にて基材外周面に塗布を行った。その後、130℃、60分の乾燥硬化を行い平均膜厚約30μmの目視上均一な塗布層を得た。
【0146】
[実施例9]
(塗液調製工程)
酸化亜鉛:(平均粒子径70μm:テイカ社製試作品:比表面積値15m/g)100重量部をトルエン500重量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学社製)1.5重量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。得られた表面処理酸化亜鉛を蛍光X線により分析した結果、Si元素強度はZn元素強度の1.5×10−5であった。
【0147】
前記表面処理を施した酸化亜鉛60重量部と硬化剤のブロック化イソシアネート(「スミジュール3175」:住友バイエルンウレタン社製)15重量部とブチラール樹脂 BM−1(積水化学社製)15重量部をメチルエチルケトン85重量部に溶解した溶液38重量部とメチルエチルケトン25重量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005重量部を添加し、金属微粒子分散液を得た。なお、ここで得られた塗液は、非ニュートン性流体である。
【0148】
(浸漬塗布工程)
前記金属微粒子分散液を、循環流路を有する浸漬塗布装置にて毎分約10リットルの流量にて循環した。この塗液の流量を毎分約3リットルに変更直後に直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材10本を毎分1000mmで浸漬した。浸漬完了直後流量を毎分約8リットルに上げ5秒間停止した後、毎分320mmの引き上げ速度にて基材外周面に塗布を行った。その後、170℃、60分の乾燥硬化を行い平均膜厚約25μmの目視上均一な塗布層を得た。
【0149】
[実施例10]
実施例9と同様の行程にて平均膜厚約25μmの下引き層を形成した。次に、下引層上に感光層を形成した。まず、電荷発生物質としてのCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10部、n−酢酸ブチル300部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を電荷発生層用の塗布液として下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0150】
さらに、電荷発生層上に、実施例8と同様の行程にて平均膜厚約30μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0151】
以上のようにして得られた電子写真感光体を、接触帯電装置、中間転写装置を有する富士ゼロックス社製フルカラープリンターDocu Print C620に搭載しプリント画質を調べたところ、良好な画質が得られた。さらに、連続1万枚のプリントテストを行ったが、上端付近の薄膜部でもリーク欠陥の発生のない優れた維持性を示した。
【0152】
[比較例4]
流量を毎分約3リットルから毎分約10リットルに上げる時点を基材引き上げ開始後1秒後とした以外は、実施例8と同様な行程にて平均膜厚約30μmの塗布層を得た。
【0153】
[比較例5]
流量を毎分約3リットルから毎分約10リットルに上げる時点を基材引き上げ開始後5秒経過した後とした以外は、実施例8と同様な行程にて塗布層を得たが、塗膜上端から10mm付近に円周縞が発生した。
【0154】
[比較例6]
流量を毎分約3リットルから毎分約10リットルに上げる時点を基材引き上げ開始直後とした以外は、実施例9と同様な行程にて塗布層を得たが、塗膜上端から15mm付近に円周縞が発生した。
【0155】
[比較例7]
比較例6と同様の行程にて平均膜厚約25μmの下引き層を形成した。次に、実施例10同様の行程にて下引層上に感光層を形成した。さらに、電荷発生層上に、比較例4と同様の行程にて平均膜厚約30μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0156】
以上のようにして得られた電子写真感光体を、接触帯電装置、中間転写装置を有する富士ゼロックス社製フルカラープリンターDocuPrint C620に搭載しプリント画質を調べたところ、塗膜上の円周縞発生相当位置に画質欠陥が見られた。また、連続1万枚のプリントテストを行った後、上端付近では偏摩耗が見られ、ひどいサンプルではリーク欠陥が発生した。
【0157】
【表2】

【0158】
<評価方法>
平均膜厚:基材上下端部から50mm位置、および基材中央部の3周にて90度刻み周4点における塗布基材を採取し、渦電流膜厚計にて(フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ MMS)膜厚を測定したものの12点の平均。
【0159】
上端ダレ:(上記平均膜厚)−(塗膜上端から15mmの周にて90度刻み周4点測定したものの平均)。なお、上端ダレの目標値は通常平均膜厚の5%以下である。
【0160】
定数k、および指数nは剪断上昇時の流動特性から評価したもの。粘度は循環機内の実用剪断速度範囲である10〜10000 s−1を(1)式に代入することにより計算される。
【0161】
実施例8,9と比較例4,5,6の結果から、引き上げを開始する時点までに流速を変更させることにより基材の上端ダレを抑制し、均一塗膜とすることができることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の浸漬塗布方法及び分散液は、基材の浸漬塗布を行う分野であればいずれの分野でも用いることができるが、特に円筒形基材、または電子写真用感光体の基材の外表面塗膜形成に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】流動曲線を示す図である。
【図2】分散液の流動抑制を説明する図である。
【図3】本発明の浸漬塗布方法を行う浸漬塗布装置の構成の概要を示す図である。
【図4】電子写真感光体の構成の一例を示す断面図である。
【図5】電子写真感光体の構成の他の例を示す断面図である。
【図6】電子写真感光体の構成の他の例を示す断面図である。
【図7】電子写真感光体の構成の他の例を示す断面図である。
【図8】電子写真感光体の構成の他の例を示す断面図である。
【図9】電子写真感光体の構成の他の例を示す断面図である。
【図10】電子写真感光体の構成の他の例を示す断面図である。
【図11】電子写真感光体の構成の他の例を示す断面図である。
【図12】電子写真装置の構成の一例を示す概略図である。
【図13】電子写真装置の構成の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0164】
1 導電性基材、2,4 下引層、3 感光層、5 保護層、7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 電源、10 露光装置、11 現像装置、12 転写装置、13 クリーニング装置、14 イレーズ装置、15 定着装置、20 被塗布基材、22 浸漬塗布槽、24 回収配管、26 液受けタンク、28 撹拌装置、30 循環用ポンプ、31 電荷発生層、32 電荷輸送層、40 フィルタ、42 供給配管、44 駆動装置、46 浸漬装置、48 温度センサ、50 粘度計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布基材を浸漬する塗布槽と、前記塗布槽に塗液を供給及び回収するために前記塗液を循環する循環流路と、前記循環流路内に設けられた循環手段とを有する浸漬塗布装置によって被塗布基材を被覆する浸漬塗布方法において、
前記循環手段は、前記被塗布基材が前記塗布槽に浸漬後停止してから引き上げを開始する時点までに前記塗液の循環流量を増加させるように制御されることを特徴とする浸漬塗布方法。
【請求項2】
微粒子を含有する分散液の被塗布基材上への浸漬塗布方法において、
塗膜の形成が、室温における流動特性が以下の(1)式および(2)式で表される分散液に円筒の被塗布基材を浸漬、塗布することを特徴とする浸漬塗布方法。
(数1)
η=kDn−1 …(1)
0.7≧n≧0.2 …(2)
(式中、Dは剪断速度(1/s)、ηは粘度(Pa・s)、k(Pa・sn)は定数である。)
【請求項3】
前記塗液が微粒子を分散した分散液であり、前記分散液の室温における流動特性が以下の(1)式および(2)式で表されることを特徴とする分散液。
(数2)
η=kDn−1 …(1)
0.7≧n≧0.2 …(2)
(式中、Dは剪断速度(1/s)、ηは粘度(Pa・s)、k(Pa・sn)は定数である。)
【請求項4】
前記微粒子を含有する分散液に浸漬塗布して被塗布基材上に前記微粒子を含む塗布層を形成する塗布方法であって、
液受けタンクと、液受けタンク内撹拌装置と、循環用ポンプと、フィルタと、浸漬塗布槽と、それらを連結する配管とを有する循環型浸漬塗布装置を用い、前記分散液の液温制御、前記分散液の濃度制御、および剪断速度制御の少なくとも1種類を制御することにより浸漬塗布槽表面の粘度が経時的に一定となるよう制御されることを特徴とする請求項2記載の浸漬塗布方法。
【請求項5】
前記浸漬塗布槽の手前にて最も大きな剪断を加える剪断速度制御手段が設けられていることを特徴とする請求項4記載の浸漬塗布方法。
【請求項6】
前記剪断速度制御手段は、前記循環型浸漬塗布装置の配管中で最も口径が小さい配管またはフィルタであることを特徴とする請求項5記載の浸漬塗布方法。
【請求項7】
被塗布基材を浸漬する塗布槽と、前記塗布槽に塗液を供給及び回収するために前記塗液を循環する循環流路と、前記循環流路内に設けられた循環手段とを有する浸漬塗布装置によって被塗布基材を少なくとも一層被覆することにより製造される電子写真感光体において、
前記循環手段は、前記被塗布基材が浸漬後停止してから引き上げを開始する時点までに塗液の循環流量を増加させるように制御され、
引き上げ塗布した塗布層の膜厚が1μm以上の感光層を少なくとも一層有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項8】
微粒子を含有する分散液を導電性基材上に浸漬塗布してなる微粒子を含む塗布層を有する電子写真感光体において、
室温における流動特性が以下の(1)式および(2)式で表され、浸漬塗布により形成される前記微粒子を含む塗布層が1μm以上の膜厚である感光層を少なくとも一層有することを特徴とする電子写真感光体。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−7155(P2006−7155A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190831(P2004−190831)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】