説明

消炎鎮痛薬及びアレルギー疾患治療薬

【課題】副作用がより少なく、より安全で、かつ、薬理活性がより優れている光学活性化合物を提供する。
【解決手段】式[I]


〔式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Qは、炭素数0〜3のスペーサー基を、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基等を、Rは、置換されていてもよいフェニル基等を、Rは、水素原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基等を、R、Rは、水素原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、式:−CO−R、又は式:−S(O)−Rで表される基を表す。Rはアミノ基、置換されていてもよいC1−6アルキル基等を表す。〕で表される複素環化合物、またはその複合体を有効成分として含有する消炎鎮痛剤組成物、及びアレルギー性疾患治療剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性な、複素環化合物(オキサ(チア)ゾリジン化合物)、又はその複合体を有効成分として含有する、消炎鎮痛剤及びアレルギー疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホリパーゼA(2)(以下、「PLA(2)」と略記する)は、生体膜の主要構成分であるグリセロリン脂質のグリセロール骨格のsn−2位に結合した脂肪酸を優先的に加水分解する酵素の総称である。この酵素は生体膜脂質の新生代謝に関わると同時に、その生成物及びその代謝物が強力かつ多様な生理活性を示す脂質メディエーターであることも知られている。一方の生成物アラキドン酸は、それ自身もメディエーターとして働くが、各々の炎症担当細胞により更にプロスタグランジン(以下、「PG」と略記する)類、トロンボキサン類、リポキシン類、ロイコトリエン(以下、「LT」と略記する)類等に代謝されて特徴ある生理反応を引き起こす(例えば非特許文献1参照)。また、リゾホスファチジルコリンもそれ自身が作用する他に血小板活性化因子(以下、「PAF」と略記する)やリゾホスファチジン酸(以下、「LPA」と略記する)の前駆体としても利用される。これらの脂質メディエーターは、本来は生体の恒常性維持のために機能しているが、炎症の関与する病態においては過剰生産されて症状の増悪に関与している。事実、このアラキドン酸カスケードに作用する薬剤として、ステロイド性抗炎症薬や種々の非ステロイド性抗炎症薬(以下、「NSAIDs」と略記する)が広く臨床にて使用されているが、PLA(2)はこのアラキドン酸カスケードの上流に位置し、これらの脂質メディエーター産生における律速段階の酵素であることから、抗炎症薬開発の有望なターゲットとして期待されている(例えば非特許文献2参照)。
【0003】
PLA(2)は近年、次々に新しいアイソザイムが発見されて20種類を超え、これらはその蛋白質構造や酵素活性面での特徴から4つのファミリーに分類されて全体としては大きなスーパーファミリーを形成している(例えば非特許文献3、非特許文献4参照)。各々のアイソザイムはその活性発現における特性も異なり、機能分担を行っていることが報告されているが、これらの中でIVA細胞質型PLA(2)(以下、「cPLA(2)」と略記する)はグリセロールの2位にアラキドン酸を結合したリン脂質に高い特異性を示し、あるいは、炎症性疾患において活性の上昇が認められ、その遺伝子欠損(所謂ノックアウト)マウスの知見(例えば非特許文献5、非特許文献6参照)からも炎症病態における脂質メディエーター産生を制御する主要なアイソザイムであり、高い安全性が期待できる有望な創薬ターゲットであると考えられている。即ち、このアイソザイムの活性を阻害することにより病態で亢進している脂質メディエーター産生を特異的かつ総合的に抑制することができ、炎症性疾患の治療及び/又は予防が可能であると考えられている。しかしながら、この酵素活性の阻害により臨床上有用な効果を示す物質は未だ開発されていないため、その開発が望まれている。
【0004】
オキサ(チア)ゾリジン化合物がcPLA(2)活性阻害作用或いは抗炎症作用を示すことは既に知られており、この化合物のラセミ体は特許文献1に記載されている。当該化合物は少なくともオキサ(チア)ゾリジン環構造の4位と5位に各々2つの置換基を結合することが可能であるために、それらの炭素原子に水素以外の置換基を各々1つ結合している化合物は、2種のジアステレオマー鏡像体対の構造からなる4種の構造異性体が存在する。これらの構造異性体の中で、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである光学活性複素環化合物が抗炎症作用を示し、当該ラセミ体化合物より安全性が高いことが特許文献2に記載されている。しかしながら、この化合物の医薬用途に関する特徴については知られていない。
【0005】
【非特許文献1】Irvine,R.,Biochemical Journal,204:3−16(1982).
【非特許文献2】Glaser,K.B.,Advances in Pharmacology,32:31−66(1995).
【非特許文献3】Dennis,E.A.,Trends in Biochemical Science,22:1−2(1997).
【非特許文献4】Balsinde,J.ら,Annual Review of Pharmacology and Toxicology,39:175−89(1999).
【非特許文献5】Uozumi,N.ら,Nature,390:619−22(1997).
【非特許文献6】Bonventre,J.V.ら,Nature,390:622−25 (1997).
【特許文献1】国際公開第03/000668号パンフレット
【特許文献2】特願2004−262913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、新規な消炎鎮痛剤組成物及びアレルギー性疾患治療剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは上記課題を解決する目的で鋭意研究を重ねてきた結果、PLA(2)活性阻害作用或いは抗炎症作用を示すオキサ(チア)ゾリジン化合物の1組の鏡像体対の中の、より安全性が高い下記式[I]で表される光学活性複素環化合物が、優れた消炎鎮痛薬理活性及び抗アレルギー薬理活性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、下記(1)〜(14)に示す組成物に関するものである。
(1)式[I]
【0009】
【化1】

【0010】
〔式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。
は、式:−(CH−(nは0〜3の整数を表す。)で表される基、又は、式:−CH=CH−で表される基を表す。
は、Aで置換されていてもよいC1−6アルキル基、Aで置換されていてもよいフェニルC1−6アルキル基、又はAで置換されていてもよいフェニル基を表す。
は、Aで置換されていてもよいフェニル基、Aで置換されていてもよいナフチル基、Aで置換されていてもよいインダニル基、Aで置換されていてもよい1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基、又は、Aで置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基を表す。
は、水素原子、Aで置換されていてもよいC1−6アルキル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルキニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニルカルボニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルコキシカルボニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニルオキシカルボニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニルスルホニル基、Aで置換されていてもよいベンゾイル基、Aで置換されていてもよいフェニルスルホニル基、又は、式
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、Qは−CO−、−CS−、若しくは−S(O)−を表す。
は、水素原子又はC1−6アルキル基を表す。
は、Aで置換されていてもよいC1−6アルキル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルキニル基、Aで置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、Aで置換されていてもよいC5−8シクロアルケニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、Aで置換されていてもよいフェニル基、Aで置換されていてもよいベンゾイル基、Aで置換されていてもよいフェニルスルホニル基、又は、Aで置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基を表し、mは1又は2を表す。)で表される基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、Aで置換されていてもよいフェニルC1−6アルキル基、Aで置換されていてもよいフェニル基、又は式:−Q−R(式中、Qは−CO−、又は−S(O)−を表す。
【0013】
は、アミノ基、Aで置換されていてもよいC1−6アルキル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルキニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルコキシ基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニルオキシ基、Aで置換されていてもよいC2−6アルキニルオキシ基、Aで置換されていてもよいモノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、Aで置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、Aで置換されていてもよいC5−8シクロアルケニル基、Aで置換されていてもよいフェニル基、Aで置換されていてもよいフェノキシ基、Aで置換されていてもよいアニリノ基、又は、Aで置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基を表し、mは1又は2を表す。)で表される基を表す。
【0014】
は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C1−6ハロアルキル基、C3−8シクロアルキル基、(ハロゲン原子、C1−6アルキル基若しくはC1−6ハロアルキル基で置換されてもよい)フェニル基、ピリジル基、チエニル基、C1−6アルコキシ基、メチレンジオキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、ベンゾイル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6ハロアルキルカルボニル基、C1−6ハロアルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。
は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルボニルアミノ基、モルホリノ基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されてもよいピリジル基を表す。
【0015】
は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、ピリジル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。
は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、又はC1−6アルキルスルホニル基、C1−6アルコキシカルボニル基を表す。〕で表される複素環化合物、及びその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする消炎鎮痛剤組成物。
【0016】
(2)5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、及びその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする消炎鎮痛剤組成物。
【0017】
(3)前記式[I]で表される複素環化合物及びその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、及び血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介される疼痛疾患の哺乳動物に投与する治療用及び/又は予防用組成物。
【0018】
(4)5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、及びその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、及び血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介される疼痛疾患の哺乳動物に投与する治療用及び/又は予防用組成物。
【0019】
(5)対象となる疼痛が、術後・外傷後痛、癌性疼痛、歯科領域の痛み、耳鼻科・呼吸器科領域の痛み、症候性神経痛、結石痛、痛風、月経痛、頭痛、腹痛、腰痛、関節痛、五十肩、頸肩腕症候群、腱鞘炎、打撲、捻挫又は筋肉痛である(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0020】
(6)哺乳動物に対して、式[I]で表される複素環化合物及びその複合体の少なくとも一種を投与することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、及び血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介される疼痛を緩和する方法。
【0021】
(7)哺乳動物に対して、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、及びその複合体の少なくとも一種を投与することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、及び血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介される疼痛を緩和する方法。
【0022】
(8)前記式[I]で表される複素環化合物及びその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とするアレルギー性疾患治療剤組成物。
【0023】
(9)5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、及びその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とするアレルギー性疾患治療剤組成物。
【0024】
(10)前記式[I]で表される複素環化合物及びその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、及び血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介されるアレルギー性疾患の哺乳動物に投与する治療用及び/又は予防用組成物。
【0025】
(11)5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、及びその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、及び血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介されるアレルギー性疾患の哺乳動物に投与する治療用及び/又は予防用組成物。
【0026】
(12)対象となるアレルギー性疾患が、アナフィラキシー、喘息、鼻炎、気管支炎、花粉症、結膜炎、腸炎、蕁麻疹、かぶれ、又はアトピー性皮膚炎である(8)〜(11)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0027】
(13)哺乳動物に対して、前記式[I]で表される複素環化合物及びその複合体の少なくとも一種を投与することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、及び血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介されるアレルギー性疾患の治療方法。
【0028】
(14)哺乳動物に対して、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、及びその複合体の少なくとも一種を投与することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、及び血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介されるアレルギー性疾患の治療方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明に用いる前記式[I]で表される複素環化合物及びその複合体は、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、及び血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介される病態症状を軽減することにより、疼痛を緩和し、あるいはアレルギー性症状を改善するため、それらを含有する組成物は、消炎鎮痛薬及びアレルギー疾患治療薬(治療薬又は予防薬)として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の組成物は、前記式[I]で表される複素環化合物(以下、「複素環化合物(I)」ということがある。)、好ましくは、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである複素環化合物(I)、及びその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有する。
【0031】
前記式[I]の定義において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、「C1−6アルキル基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、「C2−6アルケニル基」としては、ビニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、アリル基、2−ブテニル基等が挙げられる。
【0032】
「C2−6アルキニル基」としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基及びその異性体等が挙げられ、「C1−6アルキルカルボニル基」としては、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、tert−ブチルカルボニル基等が挙げられ、「C1−6アルコキシカルボニル基」としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0033】
「C2−6アルケニルカルボニル基」としては、エテニルカルボニル基、ビニルカルボニル基、アリルカルボニル基等が挙げられ、「C1−6アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基等が挙げられ、「C2−6アルケニルオキシ基」としては、エテニルオキシ基、プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、ヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0034】
「C2−6アルキニルオキシ基」としては、アセチニルオキシ基、プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基、ヘキシニルオキシ基等が挙げられ、「C2−6アルケニルオキシカルボニル基」としては、エテニルオキシカルボニル基、プロペニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられ、「C1−6ハロアルキル基」としては、クロロメチル基、ジクロロエチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0035】
「C1−6アルキルチオ基」としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等が挙げられ、「C1−6アルキルスルフィニル基」としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基等が挙げられ、「C1−6アルキルスルホニル基」としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等が挙げられる。
【0036】
「C2−6アルケニルスルホニル基」としては、エテニルスルホニル基、プロペニルスルホニル基、アリルスルホニル基等が挙げられ、「C3−7シクロアルキル基」としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられ、「C5−7シクロアルケニル基」としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0037】
「C1−6アルキルカルボニル基」としては、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基等が挙げられ、「5〜7員の複素環基」としては、ヘテロ原子として、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子の少なくとも一種を有し、5乃至7個の原子で構成される飽和又は不飽和の複素環基を意味し、具体的にはテトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、ピロリジニル基、ピラゾリジニル基、イミダゾリジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチアピラニル基、ピペリジノ基、ピペリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジル基、ピラジニル基、ピリジル基、モルホリノ基、モルホリニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0038】
「モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基」としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ヘキシルアミノ基等が挙げられる。
「モノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基」としては、メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、メチルエチルカルバモイル基等が挙げられ、「モノ若しくはジC1−6アルキルカルボニルアミノ基」とは、アセチルアミノ基、ジアセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、アセチルエチルカルボニルアミノ基等が挙げられ、「C1−6ハロアルコキシ基」としては、クロロメトキシ基、ジクロロエトキシ基、ブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0039】
また、「C1−6ハロアルコキシカルボニル基」としては、クロロメトキシカルボニル基、ジクロロエトキシカルボニル基、ブロモメトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基等が挙げられ、「C1−6アルキルカルボニルオキシ基」としては、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基等が挙げられ、「C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基」としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0040】
「複合体」とは、複素環化合物(I)と一定の比率でイオン結合、水素結合、或いは配位結合で相互作用する無毒性の低分子化合物とからなる複合体を意味し、水溶液中では当該化合物を遊離せしめるものである。具体的には、塩酸塩、有機酸塩、及びアミノ酸塩等の塩、水和物等の溶媒和物等が挙げられる。
【0041】
尚、複素環化合物(I)には、Rが水素原子である場合には、次に示す互変異性体が存在する。
【0042】
【化3】

【0043】
本発明はこの互変異性体も包含するものである。また、本発明化合物は場合によってはそのプロドラッグ化合物、及びその代謝物についても包含されるものである。
【0044】
本発明に用いる複素環化合物(I)は、例えば、特願2004−262913に記載の製造方法により得ることができる。
【0045】
本発明に用いる複素環化合物(I)の代表例を第1表に示す。尚、表中の記号及び略号は下記の意味を表す。
Me:メチル、Et:エチル、Pr:プロピル、Bu:ブチル、Hex:ヘキシル、Hep:ヘプチル、Allyl:アリル、Ac:アセチル、Naph:ナフチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、Bz:ベンゾイル、THP:テトラヒドロピラニル、n:ノルマル、c:シクロ、i:イソ、t:tert−、c:シクロ。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
【表7】

【0053】
【表8】

【0054】
複素環化合物(I)又はその複合体は、そのままであるいは慣用の製剤担体と共に人及び動物に投与することができる。
【0055】
投与単位形態としては特に限定がなく、必要に応じ全身性投与及び局所適用、即ち非全身性投与のいずれからも適宜選択して使用される。
斯かる投与単位形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口用液剤、トローチ剤等の経口投与製剤、或いは静脈注射、筋肉注射、皮下注射等の注射用溶液又は懸濁液等を例示できる。
【0056】
また、坐剤等の直腸投与やエアゾール剤や吸入用粉剤等の経気道(経鼻又は口内吸入)投与の形態を利用することもできる。局所投与に適した処方物としては炎症部位に皮膚や粘膜等を通して浸透するのに適した形態で、例えば液剤、リニメント剤、クリーム、乳剤、軟膏剤又はペースト、並びに眼、耳又は鼻への適用に適した滴剤をも包含する。
【0057】
投与されるべき有効成分の量としては特に限定がなく、投与の形態、選択された個々の化合物、投与される人又は動物により広い範囲から適宜選択されるが、所期の効果を発揮するためには1日当り体重1kg当り0.01〜100mgの用量にて1〜数回に分けて投与するのがよい。また、投与単位形態中に有効成分を0.1〜1000mg含有せしめるのがよい。
【0058】
本発明において錠剤、カプセル剤、顆粒剤、経口用液剤等の経口剤は常法にしたがって製造される。即ち、錠剤は、複素環化合物(I)及びその複合体の少なくとも一種を澱粉、乳糖、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、滑石、アラビアゴム等の製剤学的賦形剤と混合し、賦形することにより製造される。
カプセル剤は、複素環化合物(I)及びその複合体の少なくとも一種を不活性の製剤充填剤若しくは希釈剤と混合し、硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填することにより製造される。
経口溶液剤のシロップ剤若しくはエリキシル剤は、複素環化合物(I)及びその複合体の少なくとも一種を、蔗糖等の甘味剤、メチル−及びプロピル−パラベン類等の防腐剤、着色剤、調味剤等と混合して製造される。
【0059】
また非経口剤は常法に従って製造され、例えば、複素環化合物(I)及びその複合体の少なくとも一種を滅菌した液状担体に溶解して製造される。好ましい担体は水又は食塩水である。所望の透明度、安定性及び非経口使用の適応性を有する液剤は約0.1〜1000mgの有効成分を、水及び有機溶剤に溶解し且つ分子量が200〜5000であるポリエチレングリコールに溶解して製造される。
【0060】
かかる液剤には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ナトリウムカルボキシメチルセルローズ、メチルセルローズ等の潤滑剤が含有されているのが好ましい。さらには上記液剤中にベンジルアルコール、フェノール、チメロサール等の殺菌剤及び防カビ剤、さらに必要に応じ蔗糖、塩化ナトリウム等の等張剤、局所麻酔剤、安定剤、緩衝剤等が含まれてもよい。さらに安定性を高めるために非経口投与用薬剤は充填後冷凍され、この分野で公知の凍結乾燥技術により水を除去することができる。而して使用直前に凍結乾燥粉末から液剤を再調製することもできる。
【0061】
次に本発明の医薬組成物の製剤例を示す。
製剤例1 錠剤
配 合 量(重量部)
複素環化合物(I) 5
乳糖(日本薬局方品) 50
コーンスターチ(日本薬局方品) 25
結晶セルローズ(日本薬局方品) 25
メチルセルローズ(日本薬局方品) 1.5
ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方品) 1
【0062】
複素環化合物(I)、乳糖、コーンスターチ及び結晶セルローズを充分混合し、メチルセルローズの5%水溶液で顆粒化し200メッシュの篩に通して注意深く乾燥する。乾燥した顆粒はステアリン酸マグネシウムと混合して常法により打錠して錠剤1000錠が調製される。
【0063】
製剤例2 カプセル剤
配 合 量(重量部)
複素環化合物(I) 10
乳糖(日本薬局方品) 80
澱粉(日本薬局方品) 30
滑石(日本薬局方品) 5
ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方品) 1
【0064】
上記各成分を細かく粉末にし、均一な混合物となるように充分に撹拌した後、所望の寸法を有する経口投与用のゼラチンカプセルに充填することにより、1000個の2片ゼラチンカプセルが調製される。
【0065】
製剤例3 注射剤
配 合 量(重量部)
複素環化合物(I) 1
ポリエチレングリコール4000(日本薬局方品) 0.3
塩化ナトリウム(日本薬局方品) 0.9
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(日本薬局方品) 0.4
メタ重亜硫酸ナトリウム(日本薬局方品) 0.1
メチルーパラベン(日本薬局方品) 0.18
プロピルーパラベン(日本薬局方品) 0.02
注射用蒸留水 適宜
(最終容量) 100(mL)
【0066】
上記パラベン類、メタ重亜硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムを撹拌しながら80℃で上記の約半量の注射用蒸留水に溶解する。得られた溶液を40℃まで冷却し、複素環化合物(I)、次にポリエチレングリコール及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを添加してその溶液中に溶解する。次にその溶液に残余の蒸留水を加えて最終の容量に調製し、適当なフィルターを用いて滅菌濾過することにより滅菌し、非経口投与に適する水溶液製剤を得る。
【0067】
製剤例4 軟膏剤
配 合 量(重量部)
複素環化合物(I) 0.1
白色軟パラフィン 10
複素環化合物(I)を基材中に均一になるまで混和する。
【0068】
製剤例5 エアゾール剤
配 合 量(重量部)
複素環化合物(I) 0.25
エタノール 29.75
プロペラント22(クロロジフルオロメタン) 70
【0069】
複素環化合物(I)をエタノールと混合し、さらにプロペラント22の1部を添加して混和後に−30℃まで冷却し、充填装置に入れる。次いで投与に必用な量をステンレス容器に移し入れ、残りのプロペラント22で希釈することにより調製される。このステンレス容器にバルブユニットを装着して投与する。
【0070】
製剤例6 ドライパウダー吸入製剤
配 合 量(重量部)
複素環化合物(I) 5
ラクトース 95
【0071】
複素環化合物(I)をラクトースと均一に混合した後に、この混和物をドライパウダー吸入器に加える。
【0072】
製剤例7 坐剤
配 合 量(重量部)
複素環化合物(I) 0.225
飽和脂肪酸グリセリド 2.000
【0073】
複素環化合物(I)をNo.60メッシュU.S.篩に通し、必用最小限の加熱により予め溶解させた飽和脂肪酸グリセリド中に懸濁する。次いでこの混和物を表示容量2gの坐剤型に注入した後冷却する。
【0074】
次に、本発明の医薬品としての用途に関わる薬理活性について説明する。
国際疼痛学会(IASP, 1981)は痛みを「組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、そのような傷害を表す言葉を使って表現される感覚、情動体験」と定義している。つまり、患者が痛いといえば、痛みが存在しており、発症の状況からは急性痛と慢性痛に分類される。疼痛を発生源により分類すると、侵害受容性疼痛(体性痛、内臓痛)、神経因性疼痛(神経の障害による疼痛で、侵害刺激なしで疼痛が発生する)、心因性疼痛の3種に分類される。臨床の患者では複数のメカニズムが合わさって単純に分類できないことも多い。これらの中で侵害受容性疼痛は、疾患や外傷などによって組織損傷を受けた局所に発痛物質のブラジキニン、プロスタグランジン、ヒスタミン、セロトニンなどの炎症性メディエーターが産生され、セカンドメッセンジャー経由で痛覚受容器に働きかけて痛みを起こす。
【0075】
鎮痛薬は、他の感覚や意識を消失させることなく痛みを緩和又は消失させる薬物である。消炎鎮痛薬として使用される主なNSAIDsはプロスタグランジンの生合成を抑制することにより末梢受容レベルでの鎮痛作用を示す。麻薬性鎮痛薬は主として大脳皮質に作用して痛みの感受性を低下させるが、痛みに伴う不安・不快感を減弱することによって痛みをも和らげる精神的な要因も少なからず併せ持っている。
上記のいずれかの疼痛に有効な鎮痛薬の探索評価に使用する鎮痛薬理試験の方法は、モデル動物に下記のように疼痛を発症させて各疼痛反応に対する抑制効果を計測するものである。
【0076】
(a)熱刺激法
(i)黒く塗った皮膚に熱線を照射し皮膚のピクツキを指標とする。一定強度の熱線を照射して反応に至るまでの時間を測定する(D’Amour&Smith法)や時間を一定にして反応を引き起こすに要する熱線の強さを測定する(Hardy,Wolff&Goodell法)等の方法
(ii)熱板法:動物を一定温度(50〜70℃)の板上に置き、四肢を振る、足底を嘗める、跳躍する等を指標として、反応に至るまでの時間を計測する方法(Woolf&MacDonald法)
【0077】
(b)機械的刺激法
(i)剛毛で皮膚や角膜を突く方法(von Frey法)
(ii)マウスの尾をピンセットやクレンメではさみ、鳴くか振り返るかを指標として疼痛反応を測定する方法(Haffner法)
【0078】
(c)電気的刺激法:動物の四肢・尾などを電流で刺激する方法
(d)化学的刺激法
(i)Writhing法:マウスやラットの腹腔内に酢酸やPhenylquinoneなどを注射して引き起こされる、足の伸展運動や下半身のよじり運動を指標として疼痛反応を測定する方法
(ii)カンタリスで皮膚に水泡を作成して表皮を除き、酸などで刺激する方法
【0079】
これらの実験的に引き起こされる疼痛はいずれも表面痛であるが、(a)の熱刺激法は消炎鎮痛薬の薬効を評価し難い。その後、患者のニーズが高い消炎鎮痛薬を探索するために試験方法に更に改良が加えられ、上記の(a)又は(b)の刺激方法と他の炎症発症を組合わせた試験方法も開発された。試験動物の肢にCarrageenan、酵母懸濁液、又はAdjuvantなどを投与して炎症浮腫を発症させて過敏になった疼痛反応に対する評価方法(Randall−Selitto法等)がこれにあたる。
【0080】
上記のように、疼痛に作用する薬理活性を評価する目的で使用されている幾多の試験方法の中で、先ずは感度、再現性、定量性、スループットにおいて、スクリーニング試験にも使用できる方法は限られている。更に中枢神経系への作用でなく、炎症に伴った疼痛を抑える「消炎鎮痛薬」の評価に利用できる方法は限られ、酢酸等を腹腔内に投与して惹起するWrithing反応を利用する鎮痛薬理試験は最も標準的な方法であり、中でも惹起物質としては酢酸が最も安定した反応が観察されることからスクリーニングには最も適しているとされている。但し、酢酸Writhing試験は、消炎鎮痛薬以外の作用性の化合物も効果が測定されるために、通常は単独では鎮痛薬として結論を出すことはなく、別途に抗炎症活性の確認や、中枢神経系への作用の確認などと併せての評価解析となる。またそれ以外の「消炎鎮痛薬」試験方法として、炎症を惹起した後肢への加圧による疼痛反応や熱接触疼痛過敏反応を指標として炎症性疼痛に対する薬効を評価する方法における鎮痛活性も解析評価に利用される。
【0081】
次に、もう一つの用途に関わる抗アレルギー薬理活性について説明する。
アレルギー反応は、種々の抗原の侵入に始まる免疫反応から抗原抗体反応による炎症反応に至る一連のアレルギー性炎症である。アレルギー反応は現在、I、II、III、及びIV型に分類されている。
【0082】
生体ではこれら4つの反応が互いに独立して起こるのではなく、いくつかの型が同時に起こっていることもある。通常アレルギー反応とは、I型アレルギー反応を指し、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などの一般的アレルギー疾患の大部分がこのI型の反応で起こる。病態では、肥満細胞と結合しているIgE抗体に抗原が再結合して肥満細胞に連鎖反応が起こり、メディエーターが放出されて組織障害を起こす。炎症反応は、メディエーターによる滲出性炎症(即時)から炎症性細胞浸潤(遅発)を経て組織障害に対応する増殖性炎症(遅延)へと進行する。アレルギー炎症反応の反復により組織のリモデリングも進み、慢性炎症性の病態へと進行する。cPLA(2)はアレルギー炎症病態に関わる脂質メディエーターの生合成の律速段階の酵素であり、cPLA(2)の遺伝子を欠損したマウスはアレルギー炎症反応が減弱している。また、関連する脂質メディエーターに作用する抗アレルギー薬が臨床にて使用されている。免疫・アレルギー反応は種差も大きいため、cPLA(2)阻害剤の評価には、関連する作用性の比較対照薬が評価される適切な薬理試験において評価することが重要である。
【0083】
また、アレルギー薬理試験の病態モデルの作成法としては、下流の酵素群とのカップリングも含めて巧妙に制御されているcPLA(2)の阻害剤を評価する目的には、受動感作よりは能動感作の方法が好ましい。
【0084】
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、これらは単なる例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0085】
(酢酸Writhing)
Inoue,K.,Motonaga,A.&Nishimura,T.の方法(Arzneimittel Forshung/Drug Research,41(1):235−239(1991).)及びMurata,T.,らの方法(Nature,388:678−682(1997).)を参考にして行った。
即ち、0.6%酢酸/生理食塩水溶液8.0 mL/kgをICR系雄性マウス(6〜8週齢)の腹腔内に投与し、その5分後から20分後に観察されるWrithing(腹部を収縮させ、或いは体を捻り、後肢を伸展させる特有の苦悶症状)の回数を測定した。本発明化合物は、Tween80:エタノール:蒸留水(2:2:96)に均質化して酢酸注射による刺激の惹起1時間前に経口投与した。動物は経口投与前の1乃至2時間絶食させた。複素環化合物(I)の鎮痛作用は、Writhing反応回数の抑制にて評価した。陽性対照としてはインドメタシンを投与した。複素環化合物(I)は例えば第2表に示されるような鎮痛活性が測定された。尚、表中のWrithing回数の数字に付記した及び**は、Studentのt検定において各々p<5%及びp<1%の危険率で溶媒対照群に対して統計的に有意な差が算出されたことを、各々示す。
【0086】
【表9】

【実施例2】
【0087】
(Haffner法疼痛)
Haffner,F.の方法(Deut.Med.Wochr.55:731(1929).)及びTakagi,H.らの方法(Jap.J.Pharmac.16:287(1966).)を参考にして行った。即ち、上記の酢酸Writhing試験測定終了直後〜10分後の個体の尾根部を薬理試験用ピンセットで挟んだ時に、尾の方を振り向いたり、ピンセットをかもうとする反応を測定した。溶媒対照群はいずれも尾根部を挟んで2秒以内に上記の反応が観察され、消炎鎮痛薬インドメタシンと本発明化合物も同様に2秒以内に上記の反応が観察され、麻薬性の強い鎮痛作用は認められなかった。
【実施例3】
【0088】
(Carrageenan疼痛)
Lichtman,A.H.らの方法(Pain.109:319−27(2004).)を参考にして行った。即ち、ICR系雄性マウス(6〜8週齢)の右後肢足蹠に1%λ−Carrageenan/生理食塩水溶液50μlを皮内に投与を行った。非惹起群としては生理食塩水溶液50μlを同様に皮内に投与を行った。ホットプレート式鎮痛効果測定装置MK−350B(室町機械株式会社製)は、予め50℃に設定した。λ−Carrageenan投与により炎症性浮腫を惹起したICR系雄性マウスを熱板上に置き、熱を感じて浮腫を発症している右後肢を熱板から上げたり、右足底を嘗めるなど熱から逃避しようとする反応を起こす回数を30秒間計測した。
【0089】
複素環化合物(I)は、Tween80:エタノール:蒸留水(2:2:96)に均質化して、熱板上に置く刺激の惹起1時間前に経口投与した。動物は経口投与前の1時間絶食させた。
【0090】
複素環化合物(I)の鎮痛作用は、溶媒対照群の反応回数に対する抑制にて評価した。陽性対照としてはインドメタシンを経口投与した。λ−Carrageenanにより炎症性浮腫を惹起した個体では、非惹起群に比較して疼痛反応が有意に増加し、痛覚過敏反応が計測された。複素環化合物(I)は、例えば第3表に示されるように炎症性の痛覚過敏反応を抑制した。尚、表中の反応時間の数字に付記した**は、Studentのt検定においてp<1%の危険率で溶媒対照群に対して統計的に有意な差が算出されたことを示す。
【0091】
【表10】

【実施例4】
【0092】
(熱板法疼痛及び消化管傷害)
Woolfe,G.とMacDonald,A.D.の方法(J.Pharmac.Exptl.Therap.80:300(1944).)及びEddy,N.B.らの方法(J.Pharmac.Exptl.Therap.98:121(1950).)を参考にして行った。即ち、ホットプレート式鎮痛効果測定装置MK−350B(室町機械株式会社製)を用い、予め55℃に設定した熱板上にICR系雄性マウス(6〜8週齢)を置いた時、熱を感じて上下肢を熱板から上げたり、足底を嘗めるなど熱から逃避しようとする反応を起こすまでの時間を測定した。1群あたり8匹を用いて薬理試験を実施した。
【0093】
複素環化合物(I)は、Tween80:エタノール:蒸留水(5:5:90)に均質化して、熱板上に置く刺激の惹起2時間前に経口投与した。動物は経口投与前の2時間絶食させた。複素環化合物(I)の鎮痛作用は、溶媒対照群の反応時間との対比で評価した。比較対照としてはインドメタシンを経口投与した。陽性対照としては、熱板上に置く刺激の惹起15分前に30%エタノール/生理食塩水溶液を11ml/kg(0.33g/kg)用量を腹腔内に投与した。本発明化合物は例えば第4表に示されるように、インドメタシンと同様に、麻薬性の強い鎮痛作用は認められなかった。尚、表中の数字に付記したは、Studentのt検定において各々p<5%の危険率で溶媒対照群に対して統計的に有意な差が算出されたことを示す。
【0094】
また、経口投与後から鎮痛活性測定までの間に各動物個体の一般症状を観察した結果、本発明化合物の[I−44]の100及び300mg/kg投与群には溶媒対照群と比較して、毒性症状が観察されなかった。
【0095】
疼痛試験終了後の経口投与群の個体については、消化管傷害に関する一般薬理試験を行った。即ち、上記の経口投与3.5時間後に0.5%エバンスブルー/生理食塩溶液を尾静脈より注入した。更にその30分後にエーテル麻酔下で放血死させた後、胃から十二指腸部分を摘出し、胃の大弯に沿って切開し、内容物を生理食塩溶液にて洗浄した。エバンスブルーにより染色されている点状或いは線状の潰瘍状病変を計測した。本発明化合物は例えば第5表に示されるように、消化管傷害の副作用は極めて弱かった。
【0096】
【表11】

【0097】
【表12】

【0098】
以上の試験結果より、複素環化合物(I)、特に、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである複素環化合物(I)は、経口投与により優れた消炎鎮痛活性を示すことは明らかである。
【0099】
実施例1及び実施例3より、強い消炎鎮痛活性が示されたが、実施例2及び実施例4より、麻薬性の中枢神経系への副作用は弱いことが示された。
さらに、実施例4より、多くの消炎鎮痛薬において問題となっている消化管傷害の副作用が極めて弱く、安全性が高いことが示された。
【0100】
次に、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである、前記式[I]で表される複素環化合物が抗アレルギーI型薬理活性を示すことを説明する。
【実施例5】
【0101】
(ハプテン反復感作アレルギーI型皮膚炎)
Nagai,H.らの方法(J.Allergy Clin. Immunol.100:S39−44.(1997))を参考にして行った。即ち、BALB/c系雄性マウス(5週齢)の一方の耳介の表裏にアセトン:オリーブ油(3:1)に溶解した2,4−ジニトロフルオロベンゼン(以下、DNFBと略記する)溶液を塗布して感作した。その後、1週間毎にDNFB溶液を左右耳介に交互に塗布する感作を7回以上反復することにより、アレルギーI型反応を示す皮膚炎発症モデルを作成した。最終感作の1週間後に、同様に一方の耳介に0.1%DNFB溶液25μLを塗布することによりアレルギーI型反応を惹起した。感作物質を塗布する側の耳介の一定部位の厚さを、惹起前及び惹起後に経時的にデジタルノギス(JAPAN MICROMETER MFG.Co.Ltd. 製)を用いて3回測定して各々の平均値を算出した。各測定時間の耳介の厚さより惹起前の耳介の厚さを減じて耳介浮腫とした。
【0102】
被験化合物は、塗布投与の場合には0.1%Tween80/アセトン溶液に溶解し、感作物質を塗布する側の耳介の表裏に同様に塗布することによりその抗アレルギーI型炎症活性を評価した。単回投与の場合には0.1%DNFB溶液塗布の30分後に、2回投与を行う場合には0.1%DNFB溶液塗布の30分前及び15分後に、毎回20μlの被験化合物溶液を塗布した。陽性対照としてはDexamethasone−21−acetate(以下、DEX−Acと略記する、Sigma社製)を被験化合物と同様に投与溶液を作成し、塗布投与した。また、経口投与の場合にはTween80:エタノール:水(2:2:96)溶液に乳化・懸濁し、10ml/kgの薬剤溶液をDNFB塗布惹起の1時間前に経口投与した。経口投与群の動物は、投与前の1時間絶食させた。陽性対照としてはDexamethasone−21−acetate(以下、DEX−Acと略記する、Sigma社製)及びシングレア(モンテルカストナトリウム)錠(萬有製薬株式会社)を被験化合物と同様に投与溶液を作成し、経口投与した。
【0103】
抗アレルギー炎症活性は、溶媒対照区の耳介浮腫に対する阻害度(%)として算出した。即時型反応に対する薬理活性としては惹起45分後の、遅発型反応に対する薬理活性としては惹起6時間後、及び遅延型反応に対する薬理活性としては惹起24時間後の各耳介浮腫に対する阻害度をもって評価し、抗アレルギーI型炎症活性としては、即時型反応及び遅発型反応に対する薬理活性をもって評価した。塗布投与の溶媒対照群の耳介浮腫は、惹起45分後に0.14±0.01、6時間後に0.23±0.01、及び24時間後には0.19±0.02mmであった。また、経口投与の溶媒対照群の耳介浮腫は、惹起45分後に0.18±0.01、6時間後に0.24±0.01、及び24時間後には0.21±0.01mmであった。本発明化合物は例えば第6表に示されるような抗アレルギー炎症活性が測定された。
【0104】
【表13】

【0105】
陽性対照化合物のDEX−Acは即時型のアレルギー反応に対しては作用が認められなかったが、遅発から遅延型のアレルギー炎症反応を抑制した。抗ロイコトリエン薬のシングレア錠は即時型から遅発型のアレルギー反応を抑制したが、24時間後には抑制作用が認められなかった。本発明化合物[I−44]は即時反応から塗布並びに経口の投与いずれにおいても強力に阻害し、脂質メディエーター産生阻害を引き起こすcPLA(2)阻害薬として矛盾のない抗アレルギー炎症作用が見出された。
【0106】
以上の試験結果等により、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである複素環化合物(I)は優れた消炎鎮痛活性を示し、強力な抗アレルギー活性を有していることは明らかである。また、消炎鎮痛剤として最も問題となる消化管傷害の副作用は極めて弱い。
従って、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである複素環化合物(I)を有効成分として含有する組成物は、脂質メディエーターの関与する病態症状を軽減し、その関連する疾患に非常に効果的な作用を示し、消炎鎮痛剤組成物及びアレルギー性疾患治療剤組成物として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[I]
【化1】

〔式中、Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。
は、式:−(CH−(nは0〜3の整数を表す。)で表される基、または、式:−CH=CH−で表される基を表す。
は、Aで置換されていてもよいC1−6アルキル基、Aで置換されていてもよいフェニルC1−6アルキル基、またはAで置換されていてもよいフェニル基を表す。
は、Aで置換されていてもよいフェニル基、Aで置換されていてもよいナフチル基、Aで置換されていてもよいインダニル基、Aで置換されていてもよい1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基、または、Aで置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基を表す。
は、水素原子、Aで置換されていてもよいC1−6アルキル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルキニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニルカルボニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルコキシカルボニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニルオキシカルボニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニルスルホニル基、Aで置換されていてもよいベンゾイル基、Aで置換されていてもよいフェニルスルホニル基、または、式
【化2】

(式中、Qは−CO−、−CS−、若しくは−S(O)−を表す。
は、水素原子またはC1−6アルキル基を表す。
は、Aで置換されていてもよいC1−6アルキル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルキニル基、Aで置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、Aで置換されていてもよいC5−8シクロアルケニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、Aで置換されていてもよいフェニル基、Aで置換されていてもよいベンゾイル基、Aで置換されていてもよいフェニルスルホニル基、または、Aで置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基を表し、mは1または2を表す。)で表される基を表す。
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、Aで置換されていてもよいフェニルC1−6アルキル基、Aで置換されていてもよいフェニル基、または式:−Q−R(式中、Qは−CO−、または−S(O)−を表す。
は、アミノ基、Aで置換されていてもよいC1−6アルキル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニル基、Aで置換されていてもよいC2−6アルキニル基、Aで置換されていてもよいC1−6アルコキシ基、Aで置換されていてもよいC2−6アルケニルオキシ基、Aで置換されていてもよいC2−6アルキニルオキシ基、Aで置換されていてもよいモノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、Aで置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、Aで置換されていてもよいC5−8シクロアルケニル基、Aで置換されていてもよいフェニル基、Aで置換されていてもよいフェノキシ基、Aで置換されていてもよいアニリノ基、または、Aで置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基を表し、mは1または2を表す。)で表される基を表す。
は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C1−6ハロアルキル基、C3−8シクロアルキル基、(ハロゲン原子、C1−6アルキル基若しくはC1−6ハロアルキル基で置換されてもよい)フェニル基、ピリジル基、チエニル基、C1−6アルコキシ基、メチレンジオキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、ベンゾイル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6ハロアルキルカルボニル基、C1−6ハロアルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、カルバモイル基、またはモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。
は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルボニルアミノ基、モルホリノ基、フェニル基、またはハロゲン原子で置換されてもよいピリジル基を表す。
は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、ピリジル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、またはモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。
は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、またはC1−6アルキルスルホニル基、C1−6アルコキシカルボニル基を表す。〕
で表される複素環化合物、およびその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする消炎鎮痛剤組成物。
【請求項2】
5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、およびその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする消炎鎮痛剤組成物。
【請求項3】
前記式[I]で表される複素環化合物およびその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、および血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介される疼痛疾患の哺乳動物に投与する治療用および/または予防用組成物。
【請求項4】
5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、およびその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、および血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介される疼痛疾患の哺乳動物に投与する治療用および/または予防用組成物。
【請求項5】
対象となる疼痛が、術後・外傷後痛、癌性疼痛、歯科領域の痛み、耳鼻科・呼吸器科領域の痛み、症候性神経痛、結石痛、痛風、月経痛、頭痛、腹痛、腰痛、関節痛、五十肩、頸肩腕症候群、腱鞘炎、打撲、捻挫または筋肉痛である請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
哺乳動物に対して、前記式[I]で表される複素環化合物およびその複合体の少なくとも一種を投与することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、および血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介される疼痛を緩和する方法。
【請求項7】
哺乳動物に対して、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、およびその複合体の少なくとも一種を投与することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、および血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介される疼痛を緩和する方法。
【請求項8】
前記式[I]で表される複素環化合物およびその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とするアレルギー性疾患治療剤組成物。
【請求項9】
5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、およびその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とするアレルギー性疾患治療剤組成物。
【請求項10】
前記式[I]で表される複素環化合物およびその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、および血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介されるアレルギー性疾患の哺乳動物に投与する治療用および/または予防用組成物。
【請求項11】
5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、およびその複合体の少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、および血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介されるアレルギー性疾患の哺乳動物に投与する治療用および/または予防用組成物。
【請求項12】
対象となるアレルギー性疾患が、アナフィラキシー、喘息、鼻炎、気管支炎、花粉症、結膜炎、腸炎、蕁麻疹、かぶれ、またはアトピー性皮膚炎である請求項8〜11いずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
哺乳動物に対して、前記式[I]で表される複素環化合物およびその複合体の少なくとも一種を投与することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、および血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介されるアレルギー性疾患の治療方法。
【請求項14】
哺乳動物に対して、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである前記式[I]で表される複素環化合物、およびその複合体の少なくとも一種を投与することを特徴とする、脂質メディエーターであるアラキドン酸、その代謝物、リゾリン脂質、および血小板活性化因子(PAF)からなる群から選ばれる少なくとも一種により媒介されるアレルギー性疾患の治療方法。

【公開番号】特開2006−104198(P2006−104198A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263110(P2005−263110)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】