説明

消音用途のための水性ベースのポリマー

水性媒質中、マクロモノマーおよび1つ以上のエチレン性不飽和モノマーから調製されるコポリマーが開示される。このコポリマーは音および振動低下用途に有用である。本発明はまた、音および振動低下のためのコーティング組成物を提供し、上記組成物は、ポリマー性マイクロ粒子の水性分散物を含有し、上記ポリマー性マイクロ粒子は上記に記載のコポリマーおよび充填材材料を含有し、上記充填材材料は上記コーティング組成物の20〜90重量パーセントを含有する(上記パーセントは上記コーティング組成物の全重量を基準とする)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、マクロモノマーによって調製されたコポリマー、およびこれらのコポリマーの消音用途における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
代表的に、前もってカットされたアスファルトベースもしくはゴムベースのパッチは、自動車の裏張りフロアパン、トランクのふた、およびドアに使用され、道路音、エンジン音および振動を低下または低減し、自動車の乗客コンパートメントに道路音、エンジン音および振動が広がるのを防ぐ。ロボットによる塗布が可能であるスプレー可能なコーティングは、労働力削減およびコスト削減、部品在庫の低減、ならびに制動性質のための設計規格における柔軟性を提供すること望まれる。水性のコーティングまたは高固体性コーティングは、空気乾燥のみによる硬化が適切である場合、トリムショップ(trim shop)用途に望ましい。これらのコーティングを、塗布後、約2〜3時間ですばやく乾燥させるか、焼結させて、このコーティングを組み立て作業の間に自動車の他の部分に移動させないことが重要である。
【0003】
一般的に、揮発性成分(例えば、水)を含む任意のコーティングは、揮発性成分のコーティング表面からの蒸発のため、容積の減少が起こるはずである。この揮発性成分がコーティングから別離するにつれ、このコーティングをすべての方向において内側に引くように収縮力が働く。しかし、任意の理論にとらわれることを意図することなく、このコーティングが十分な結合力を有するならば、このコーティングは1次元でのみ収縮する、すなわち、このコーティングが基材表面に平行な任意の方向に収縮することに抵抗する一方で、このコーティングの厚さは減少する、ということが考えられる。それとは逆に、コーティングが基材表面に平行な収縮に抵抗するのに十分な結合力を欠く場合、収縮力はこのコーティングが連続的な線状の空洞によって分かれた小さな平らな部分に分裂することを引き起こす。この表面欠陥は、一般的に「マッドクラッキング(mudcracking)」と示される。
【0004】
自動車産業は、スプレーで塗布されてすばやく乾燥されるか焼結されるコーティングを形成し得、マッドクラッキングを本質的に有さず、ならびに音および振動低下を提供する水性コーティング組成物からの十分な経済的利益を得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、水性媒質中、マクロモノマーの存在下で、1つ以上の重合可能なエチレン性不飽和モノマーを重合することにより調製されるコポリマーであって、上記マクロモノマーは、以下の交互の構造単位
【0006】
【化1】

を有する少なくとも30モルパーセントの残基を含み、式中、DMはドナーモノマーからの残基を表し、AMはアクセプターモノマーからの残基を表し、上記マクロモノマーの少なくとも15モルパーセントは以下の構造
【0007】
【化2】

のドナーモノマーを含有し、式中、Rは、直鎖もしくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、直鎖、環状もしくは分枝の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、C〜C20アルカリールおよびC〜C20アラルキルから選択され、ここで、上記マクロモノマーは、マレエートモノマー部分およびフマレートモノマー部分を実質的に含まず、そして上記マクロモノマーはルイス酸および遷移金属を実質的に含まない、コポリマーに関する。
【0008】
本発明はまた、音および振動低下のためのコーティング組成物を提供し、上記組成物は、ポリマー性マイクロ粒子の水性分散物を含有し、上記ポリマー性マイクロ粒子は上記に記載のコポリマーおよび充填材材料を含有し、上記充填材材料は上記コーティング組成物の20〜90重量パーセントを含有する(上記パーセントは上記コーティング組成物の全重量を基準とする)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本明細書で使用される場合、用語「マクロモノマー」および「コポリマー」は、合成されたマクロモノマーおよびコポリマーならびに上記マクロモノマーおよびコポリマーの合成に付随するが、共有結合でそれらに組み込まれない開始剤、触媒および他の要素からの残基を含有することが意味される。上記マクロモノマーおよびコポリマーの一部として考慮されるこのような残基および他の要素は、上記コポリマーと混合され得るか混ぜられ得、その結果、上記残基および他の要素は、上記コポリマーが容器間または溶媒もしくは分散物媒質間で移動される場合に上記コポリマーと共に残る傾向にある。
【0010】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に含まない」は、ある材料が偶発的な不純物として存在することを示すことが意味される。言い換えれば、上記材料は示された組成物に意図的に加えられていないが、意図された組成物成分の一部として不純物として持ち越されるため、微量レベルまたはわずかなレベルで存在し得る。
【0011】
用語「ドナーモノマー」は、エチレン二重結合において比較的高い電子密度を有する重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーを示し、そして用語「アクセプターモノマー」は、エチレン二重結合において比較的低い電子密度を有する重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーを示す。この概念は、Alfrey−Price Q−eスキームによってある程度定量化されている(Robert Z.Greenley,Polymer Handbook,Fourth Edition,Brandrup,Immergut and Gulke,editors,Wiley & Sons,New York,NY,pp.309−319(1999))。本明細書に引用されるすべてのe値は、他に示されない場合、上記Polymer Handbookにある値である。
【0012】
上記Q−eスキームにおいて、Qは、モノマーの反応性を表し、そしてeはモノマーの極性を表し、この極性は生じたモノマーの重合可能なエチレン性不飽和基の電子密度を示す。正のe値は、モノマーが比較的低い電子密度を有し、ならびにアクセプターモノマーであることを示す。アクセプターモノマーの非限定的な例としては、無水マレイン酸が挙げられ、3.69のe値を有する。低いもしくは負のe値は、モノマーが比較的高い電子密度を有し、ならびにドナーモノマーであることを示す。ドナーモノマーの非限定的な例としては、ビニルエチルエーテルが挙げられ、−1.80のe値を有する。
【0013】
本明細書で示される場合、「強いアクセプターモノマー」は、2.0より大きいe値を有するこれらのモノマーを含むことが意味される。用語「穏やかな(mild)アクセプターモノマー」は、0.5より大きいe値を有するこれらのモノマーから、2.0までの、および2.0のe値を有するこれらのモノマーを含むことが意味される。逆に、用語「強いドナーモノマー」は、−1.5未満のe値を有するこれらのモノマーを含むことが意味され、そして用語「穏やかなドナーモノマー」は、0.5未満のe値を有するこれらのモノマーから、−1.5のe値を有するこれらのモノマーまでを含むことが意図される。
【0014】
本発明で使用されるマクロモノマーは、コポリマー組成物に関し、上記コポリマーの残基の少なくとも30mol%、または少なくとも40mol%、または少なくとも50mol%、または少なくとも60mol%、または少なくとも75mol%がドナーモノマー−アクセプターモノマー対の交互の配列から誘導され、上記コポリマーは、以下の構造:
【0015】
【化3】

の交互のモノマー残基を有し、式中、DMはドナーモノマーからの残基を表し、AMはアクセプターモノマーからの残基を表す。ある実施形態において、上記コポリマーは、DMおよびAMの100%交互のコポリマーであり得る。別の実施形態において、少なくとも15mol%の上記コポリマーは、以下の構造(I):
【0016】
【化4】

を有するドナーモノマーを含有し得、式中、Rは、直鎖もしくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、1つ以上のメチル、直鎖、環状もしくは分枝の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、C〜C20アルカリールおよびC〜C20アラルキルである。さらなる実施形態において、少なくとも15mol%の上記コポリマーは、アクセプターモノマーとしてのアクリルモノマーを含有し得る。
【0017】
本発明のある実施形態において、上記コポリマーは構造Iに記載されるような穏やかなドナーモノマーとアクリルモノマーであり得る穏やかなアクセプターモノマーとの交互の残基の実質的な部分を組み込み得る。構造Iに記載のモノマーおよびアクリルモノマーを含有し得るモノマーの刊行されているe値の非限定的な列挙は、表1に示される。
【0018】
【表1】


【0019】
本発明において、上記マクロモノマーは、マレエートモノマー残基およびフマレートモノマー残基を実質的に含有し得ない。マレエートおよびフマレートモノマー残基は、2.0より大きいe値を有し得る。これらのタイプの多官能性モノマーは、上記コポリマーの過度の官能基性質のために熱硬化性組成物が短い品質保持期間を有し得るような、コーティングにおいて問題を生じさせ得る、多すぎる官能基を上記コポリマーに提供し得る。
【0020】
さらに、上記マクロモノマーは、遷移金属およびルイス酸を実質的に含有し得ない。上記に示されるように、遷移金属およびルイス酸は、穏やかなドナーモノマーと穏やかなアクセプターモノマーとの交互のコポリマーを作製するのに先行技術において使用されてきた。本発明においては、遷移金属またはルイス酸添加物は、上記コポリマー組成物の調製に使用されない。したがって、重合後のこれらの材料の除去が不必要であり、そして生じたコポリマー組成物は、遷移金属またはルイス酸を含有するコポリマー組成物において生じ得る欠陥を有さない。
【0021】
任意の適切なドナーモノマーが、本発明において使用され得る。非限定的な例としては、構造Iによって記載される穏やかなドナーモノマーが挙げられ得、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、イソプレノール、およびこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。構造Iのドナーモノマーは官能基を有し得る。例えば、構造IのドナーモノマーのR基としては、例えば、ヒドロキシ、エポキシ、カルボン酸、エーテル、カーバメート、アミド、およびこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0022】
上記構造Iの穏やかなドナーモノマーは、上記マクロモノマー中に、少なくとも15mol%、または少なくとも25mol%、または少なくとも30mol%、または少なくとも35mol%のレベルで存在し得る。上記構造Iの穏やかなドナーモノマーは、上記コポリマー組成物中に、50mol%まで、または47.5mol%まで、または45mol%まで、または40mol%までのレベルで存在し得る。使用される上記構造Iの穏やかなドナーモノマーのレベルは、上記コポリマー組成物に組み込まれるべき性質によって決定され得る。上記構造Iの穏やかなドナーモノマーからの残基は、上記コポリマー組成物中に、上記に述べた値を包含する任意の値の範囲で存在し得る。
【0023】
上記に言及した穏やかなドナーモノマーと共に使用され得る適切な他のドナーモノマーの非限定的な例としては、エチレン、ブテン、スチレン、置換スチレン、メチルスチレン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルピリジン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン、およびこれらの混合物が挙げられ得る。ビニルエステルは、カルボン酸のビニルエステルを含有し得、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニル3,4−ジメトキシベンゾエート、ビニルベンゾエート、およびこれらの混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。他のドナーモノマーの使用は、必要に応じて行われる。他のドナーモノマーが存在する場合の実施形態において、上記他のドナーモノマーは、上記コポリマー組成物の少なくとも0.01mol%、または少なくとも0.1mol%、または少なくとも1mol%、または少なくとも2mol%のレベルで存在し得る。さらに、上記他のドナーモノマーは、25mol%まで、または20mol%まで、または10mol%まで、または5mol%までのレベルで存在し得る。
【0024】
本発明のコポリマー組成物は、上記コポリマー鎖に沿った交互のドナーモノマー−アクセプターモノマー単位の一部としてのアクセプターモノマーを含有し得る。任意のアクセプターモノマーが使用され得る。適切なアクセプターモノマーとしては、強いアクセプターモノマーおよび穏やかなアクセプターモノマーが挙げられ得る。適切なアクセプターモノマーの非限定的な例は、以下の構造(II):
【0025】
【化5】

に記載のものであり、式中、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NR、および−ORからなる群より選択され、Rは、H、直鎖もしくは分枝のC〜C20アルキル、および直鎖もしくは分枝のC〜C20アルキルオールからなる群より選択され、Rは、H、直鎖もしくは分枝の、C〜C20アルキル、C〜C20アルキルオール、C〜C20アリール、C〜C20アラルキルおよびC〜C20アルカリールから選択される。Rは、二価の直鎖もしくは分枝のC〜C20アルキレン基である。
【0026】
本発明における使用に適切なアクセプターモノマーの例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびこれらの混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0027】
上記構造IIのアクリルアクセプターモノマーは、上記コポリマー組成物中に、少なくとも15mol%、または少なくとも25mol%、または少なくとも30mol%、または少なくとも35mol%のレベルで存在し得る。さらに、上記構造IIのアクリルアクセプターモノマーは、上記コポリマー組成物中に、50mol%まで、または47.5mol%まで、または45mol%まで、または40mol%までのレベルで存在し得る。
【0028】
本発明に使用され得る適切な他の穏やかなアクセプターモノマーの非限定的な例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ハロゲン化ビニル、ビニルアルキルスルホネート、アクロレイン、およびこれらの混合物が挙げられ得る。ハロゲン化ビニルとしては、塩化ビニルおよびフッ化ビニリデンが挙げられ得るが、これらに限定されない。他の穏やかなアクセプターモノマーの使用は、必要に応じて行われる。他の穏やかなアクセプターモノマーが存在する場合の実施形態において、上記他の穏やかなアクセプターモノマーは、上記コポリマー組成物の少なくとも0.01mol%、または少なくとも0.1mol%、または少なくとも1mol%、または少なくとも2mol%のレベルで存在し得る。さらに、上記他のアクセプターモノマーは、35mol%まで、または25mol%まで、または15mol%まで、または10mol%までのレベルで存在し得る。
【0029】
本発明の代替の実施形態において、上記マクロモノマーは、少なくとも250、または少なくとも500、または500〜10,000の範囲内の数平均分子量(Mn)を有し得る。
【0030】
他の実施形態において、上記マクロモノマーの多分散度または多分散指数は、3未満、または2.5未満であり得る。本明細書で使用される場合、「多分散指数(PDI)」は、以下の式:(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))より決定される。単分散性ポリマーは、1.0のPDIを有する。さらに、本明細書で使用される場合、MnおよびMwはポリスチレン基準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーより決定される。
【0031】
上記ドナーモノマー−アクセプターモノマー対の交互の配列の例は、以下の交互の構造III:
【0032】
【化6】

を有する残基を含有し得、式中、R、R、およびYは上記に規定される。ある実施形態において、Y基を含有する上記モノマー残基は、1つ以上のアクリルモノマーから誘導され、そしてR基およびR基を含有するモノマー残基は、ジイソブチレンおよび/またはイソブチレンから誘導される。本発明の上記コポリマー組成物はまた、他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含有し得る。
【0033】
ある実施形態において、本発明のマクロモノマーは、交互の構造中に組み込まれたすべてのモノマー残基を有し得る。イソブチレン(IB)とアクリルモノマー(Ac)との100%交互の構造を有するコポリマーの非限定的な例は、以下の構造IV:
(IV) −Ac−IB−Ac−IB−Ac−IB−Ac−IB−Ac−IB−Ac−IB−Ac−
によって示される。
【0034】
他の実施形態において、上記コポリマーは、構造V、コポリマーIB、Acおよび他のモノマーM、に示されるように交互の部分およびランダムな部分を含有し得る:
【0035】
【化7】

構造Vは、上記四角の中に示される交互の部分および上記下線部分に示されるランダムな部分を含有する、上記マクロモノマーの実施形態を示す。
【0036】
上記コポリマーのランダムな部分は、交互の構造によって上記マクロモノマーに組み込まれない、ドナーおよび/またはアクセプターモノマー残基を含有し得る。上記マクロモノマーのランダムな部分はさらに、他のエチレン性不飽和モノマーからの残基を含有し得る。本明細書中で示されるように、ドナーモノマー−アクセプターモノマー対の交互の配列から誘導される部分へのすべての参照は、構造Vの四角によって示されるモノマー残基の部分を含有することが意味される。
【0037】
本発明のコポリマー組成物の使用のための他のエチレン性不飽和モノマーは、アクセプターモノマーまたはドナーモノマーのように当該分野で従来分類され得ない、任意の適切なモノマーを含有し得る。
【0038】
ある実施形態において、上記他のエチレン性不飽和モノマー(例えば、構造Vの残基M)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能なモノマーから誘導され得る。本明細書で使用される場合、「エチレン性不飽和ラジカル重合可能なモノマー」および同様の用語は、ビニルモノマー、アリルモノマー、オレフィン、およびラジカル重合可能で、ドナーモノマーまたはアクセプターモノマーとして当該分野で分類されない他のエチレン性不飽和モノマーを包含することが意味される。
【0039】
Mが誘導され得るビニルモノマーの非限定的な例としては、メタクリルモノマー、アリルモノマー、およびこれらの混合物が挙げられ得る。残基Mは、アルキル基に1〜20個の炭素原子を有する任意のアルキルメタクリレートから誘導され得る。Mが誘導され得る、アルキル基に1〜20個の炭素原子を有するアルキルメタクリレートの例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ならびに官能性メタクリレート(例えば、ヒドロキシアルキルメタクリレート、オキシラン官能性メタクリレート、およびカルボン酸官能性メタクリレート)が挙げられ得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「アリルモノマー(複数も含む)」は、置換および/または非置換アリル官能基を含有するモノマーを意味し、上記アリル官能基としては例えば、以下の一般式VI、
(VI) HC=C(R10)−CH
で表される基であり、式中、R10は、水素、ハロゲン、またはC〜Cアルキル基である。ある実施形態において、R10は、水素またはメチルであり得、そして一般式VIは、非置換(メタ)アリル基(アリル基およびメタリル基の両方を包含する)を表し得る。任意の適切なアリルモノマーが使用され得る。適切なアリルモノマーの例としては、(メタ)アリルアルコール;(メタ)アリルエーテル(例えば、メチル(メタ)アリルエーテル);カルボン酸のアリルエステル(例えば、(メタ)アリルアセテート、(メタ)アリルブチレート、(メタ)アリル3,4−ジメトキシベンゾエート、および(メタ)アリルベンゾエートが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0041】
本発明のコポリマー組成物は、当該分野で公知の種々の従来技術を用いて調製され得る。ある実施形態において、上記コポリマー組成物は、(a)構造(I)のドナーモノマーを含有するドナーモノマー組成物を提供する工程、および(b)アクセプターモノマーを含有するエチレン性不飽和モノマー組成物を加える工程を含む方法によって調製され得る。さらなる実施形態において、上記エチレン性不飽和モノマー組成物は、構造IIのモノマーを含有し得る。別の実施形態において、上記エチレン性不飽和モノマー組成物は、フリーラジカル重合開始剤の存在下で、適切な反応容器中で上記ドナーモノマー組成物に加えられ得る。これらのモノマー溶液および生じた本発明のコポリマー組成物は、マレエートタイプのモノマー、フマレートタイプのモノマー、ルイス酸、および遷移金属を実質的に含有し得ない。
【0042】
ある実施形態において、上記構造Iのモノマーは、アクリルアクセプターモノマーの量を基準としてモル過剰量で存在し得る。構造Iのモノマーの任意の過剰量は、交互の構造の形成を促進するために本発明において使用され得る。代替の実施形態において、構造Iのモノマーの過剰量は、少なくとも10mol%であり得るか、25mol%までであり得る。
【0043】
構造Iの未反応のモノマーは、当該分野において公知の任意の適切な技術(例えば、エバポレーションであるが、これに限定されない)によって生じたコポリマー組成物から除去され得る。ある実施形態において、未反応のモノマーの除去は、反応容器への減圧の適用によって容易にされ得る。
【0044】
任意の適切なフリーラジカル開始剤が、本発明において使用され得る。適切なフリーラジカル開始剤の例としては熱的フリーラジカル開始剤、光開始剤、レドックス開始剤およびこれらの混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。適切な熱的フリーラジカル開始剤の例としては、過酸化物化合物、アゾ化合物、過硫酸化合物、およびこれらの混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0045】
上記重合反応は、当該分野で公知の任意の適切な技術を用いて実施され得る。上記反応は、バルクで(すなわち、希釈剤なしで)およびバッチ技術または連続重合技術を介して、実施され得る。バッチ技術は、米国特許第6,686,432号、第12欄、第33行〜第13欄、第15行に記載される。連続重合方法は、米国特許出願公開第2005/0113515号に記載される。
【0046】
ある実施形態において、本発明のコポリマーは、上記に記載のマクロモノマーの存在下、水性媒質中で重合可能なエチレン性不飽和モノマーを重合して、ポリマー性マイクロ粒子の水性分散物を形成することにより調製され得る。さらなる実施形態において、上記重合可能なエチレン性不飽和モノマーは、水性フリーラジカル開始乳化重合技術によって重合され得る。任意の機構に縛られることを意図することなく、上記エチレン性不飽和モノマーは、ポリマー骨格およびマクロモノマーグラフトを(フリーラジカル引き抜き反応を介して)形成し、上記ポリマー骨格に付属のマクロモノマー部分(すなわち、櫛様構造)を形成する。
【0047】
重合可能なエチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、末端メチレン基を有する有機酸のエステルのようなビニルモノマーが挙げられ得、上記末端メチレン基は、全モノマー投入物の30〜90重量パーセント、または40〜80重量パーセントを構成し得る。このようなエステルの非限定的な例としては、アルキル基に1〜18個の炭素原子を含有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートが挙げられ得る。
【0048】
ある実施形態において、上記エチレン性不飽和モノマーは、アルキル基に1〜3個の炭素原子を含有するアルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレートおよびエチルメタクリレート)を含有し得る。別の実施形態において、上記エチレン性不飽和モノマーは、アルキル基に4〜12個の炭素原子を含有するアルキルメタクリレート(例えば、ブチルメタクリレートおよびヘキシルメタクリレート);またはアルキル基に1〜8個の炭素原子を含有するアルキルアクリレート(例えば、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート);およびこれらの混合物を含有し得る。
【0049】
上記エチレン性不飽和モノマーは、上記他のビニルモノマーと共重合可能であるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸を含有し得る。任意の機構に縛られることを意図することなく、上記不飽和カルボン酸は塩基(例えば、有機アミン)による連続的な中性化をして生じるポリマー性ラテックスを実質的に安定化するための部位を提供することが考えられる。代替の実施形態において、上記不飽和カルボン酸は、モノマー投入物の0.1〜10重量パーセント、または1〜5重量パーセントを構成し得る。不飽和カルボン酸の非限定的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの混合物が挙げられ得る。
【0050】
別の実施形態において、上記エチレン性不飽和モノマーは、本明細書中に記載のビニルモノマー以外のビニル基を含有する共重合可能なモノマー材料であり得る。これらの材料の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、塩化アリル、およびアクリロニトリルのようなモノマーが挙げられ得る。上記不飽和モノマー材料は、モノマー投入物の0〜60重量パーセント、または0〜40重量パーセントを構成し得る。
【0051】
代替の実施形態において、上記マクロモノマーは、全モノマー投入物を基準として、0.5〜50重量パーセント、または5〜20重量パーセントの量で存在し得る。
【0052】
水性媒質中のポリマー性マイクロ粒子の分散物は、当該分野で周知の従来の乳化重合技術によって調製され得る。本発明における使用に適切な技術としては、従来的な乳化バッチ法、または連続法が挙げられ得る。バッチ法の例は以下のとおりであり得る。未反応のマイクロ分散物は、1〜4時間の期間をかけて、はじめに水で充填されている加熱された反応器に供給される。開始剤は、マイクロ分散物の一部として同時に供給され得るか、マイクロ分散物の供給前に反応容器に充填され得る。温度は、使用される特定の開始剤によって変化し得、そして使用される特定の開始剤に依存し得る。期間の長さは、変化し得る。ある実施形態において、上記期間は2時間〜6時間の範囲であり得る。別の実施形態において、反応温度は、25℃〜90℃の範囲であり得る。
【0053】
ある実施形態において、水および少量のモノマー投入物は、少量の界面活性剤およびフリーラジカル開始剤と共に反応器に添加され、核(seed)を形成し得る。残ったモノマー、界面活性剤、および水のプレエマルジョンは、上記開始剤と共に前述の時間の期間(3時間)かけて、80〜85℃の反応温度で、窒素ブランケットを用いて、供給され得る。1時間の保持後、上記モノマーの供給が完了したら、残ったフリーモノマー(過酸化水素/イソアスコルビン酸を含む)を還元するための後レドックス(post redox)供給物が上記反応器に添加され得る。上記ラテックス生成物は、pH8に中性化され得る。
【0054】
上記コポリマーの作製への使用に適切な界面活性剤は、乳化重合において従来的に使用されるもの、ならびにミセルを形成し得、および水性媒質中で重合するモノマーの粒子を安定化し得るものを含有し得る。
【0055】
使用され得る適切な表面活性化剤(surface active agent)は、イオン性タイプ、非イオン性タイプ、またはこれらの混合物を含み得る。
【0056】
アニオン性表面活性化剤の例としては、脂肪酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、およびアルカノールアミン塩のような通常の石鹸が挙げられ得、例えば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸アンモニウム、およびラウリン酸エタノールアミンが挙げられ得る。さらなる例は、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムのような、より高次の脂肪族硫酸塩およびスルホネートを含む合成石鹸材料より選択され得る。ある実施形態において、ラウリル硫酸ナトリウムが使用される。
【0057】

適切な非イオン性界面活性剤は、7〜18個の炭素原子および6〜60個の、またはそれより多くのオキシエチレン単位のアルキル基を有するアルキルフェノキシポリエトキシエタノール(例えば、ヘプチルフェノキシポリエトキシエタノール、オクタフェノキシポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシポリエトキシエタノール、およびドデシルフェノキシポリエトキシエタノール);長鎖カルボン酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸)のエチレンオキシド誘導体;長鎖アルコール(例えば、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、またはセチルアルコール)の類似のエチレンオキシド縮合物;疎水性炭化水素鎖を有するエーテル化またはエステル化ポリヒドロキシ化合物(例えば、6〜60個のオキシエチレン単位を有するソルビタンモノステアレート)のエチレンオキシド誘導体が挙げられ得る。
【0058】
使用される表面活性化剤の量は、上記モノマーの選択、表面活性化剤の選択、および上記モノマーの相対的な割合に基づいて変化し得る。代替の実施形態において、反応領域に供給される界面活性剤の全量は、モノマーの全重量を基準として0.1〜5重量パーセントの間、または0.1〜2.5重量パーセントの範囲内であり得る。
【0059】
任意の適切なフリーラジカル開始剤が、使用され得る。適切なフリーラジカル開始剤は、水溶性開始剤および油溶性開始剤を含有し得る。特定の開始剤(例えば、レドックス開始剤)の添加は、激しい発熱反応を生じ得る。したがって、反応が実施される直前に、上記開始剤を他の成分へ添加することが所望され得る。水溶性開始剤の例としては、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、ペルオキシ二硫酸カリウム、および過酸化水素が挙げられ得る。油溶性開始剤の例としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチル過安息香酸、および2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)が挙げられ得る。ある実施形態において、レドックス開始剤(例えば、ペルオキシ二硫酸アンモニウム/メタ重亜硫酸ナトリウム、またはt−ブチルヒドロペルオキシド/イソアスコルビン酸)が使用され得る。
【0060】
ある実施形態において、ポリマー性マイクロ粒子分散物の粒子サイズは、均等に小さくあり得る。代替の非限定的な実施形態において、重合後、上記ポリマー性マイクロ粒子の20パーセント未満は、5ミクロンより大きい、または1ミクロンより大きい平均直径を有し得、あるいは、上記マイクロ粒子は、0.01ミクロン〜10ミクロンの平均直径を有し得、あるいは、重合後の上記粒子の平均直径は、0.05ミクロン〜0.5ミクロンの範囲であり得る。上記粒子サイズは、粒子サイズ分析器(例えば、Coulterより市販の、the Coulter N4 instrument)を用いて測定され得る。上記粒子サイズ測定は、上記装置より提供される詳細な使用説明書に従い行われる。一般に、水性分散物のサンプルは、サンプル濃度が装置で必要とされる特定の限度内にあるまで、水で希釈される。測定時間は10分である。
【0061】
非限定的な実施形態において、上記マイクロ粒子分散物は、比較的低い粘度の材料を含有し得る。例えば、分散物は、20〜70パーセントの全固体含有量で直接的に調製され得る。上記ポリマーの分子量および上述の水性分散物の粘度は、互いに独立していることが考慮される。別の実施形態において、重量平均分子量は、1モルあたり数千〜500,000グラムより大きい範囲であり得る。
【0062】
本発明のコーティング組成物は、上述のポリマー性マイクロ粒子とは化学的に異なるポリマー性膜形成材料をさらに含有し得る。適切なポリマー性膜形成材料の非限定的な例としては、ポリエポキシド、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ならびに、これらの混合物およびコポリマーが挙げられ得る。
【0063】
ある実施形態において、ポリアクリレート膜形成材料(例えば、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、およびメタクリル酸より調製される、ACRONAL DS 3502ポリアクリレートコポリマーエマルジョン)は、上記コーティング組成物に含有され得る。ACRONAL DS 3502 Product Bulletin(1998、11月)を参照のこと。
【0064】
別の実施形態において、上記ポリマー性マイクロ粒子は、上記コーティング組成物中に、上記組成物の全樹脂固体を基準として、1〜40重量パーセント、または5〜30重量パーセントの範囲の量で存在し得る。
【0065】
必要に応じて、上記コーティング組成物は、上記コーティングの振動および音低下能力を改善するための充填材をさらに含有し得る。任意の適切な充填材が使用され得る。適切な充填材の非限定的な例としては、雲母、粉末状スレート、モンモリロナイトフレーク、ガラスフレーク、金属フレーク、グラファイト、滑石、酸化鉄、粘土鉱物、セルロース繊維、鉱物(mineral)繊維、炭素繊維、ガラスもしくはポリマー性繊維またはビーズ、フェライト、炭酸カルシウム、カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、有機改変粘土、メタケイ酸カルシウムのような鉱物繊維、天然ゴムまたは合成ゴム、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ粉末、およびこれらの混合物が挙げられ得る。ある実施形態において、上記充填材は、カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、およびこれらの混合物から選択され得る。
【0066】
代替の実施形態において、上記充填材材料は、上記コーティング組成物の全重量を基準として、上記コーティング組成物の20〜90重量パーセント、または50〜80重量パーセントを構成し得る。
【0067】
別の実施形態において、可塑剤は、これらのポリマーおよびコポリマーと共に、上記分散物相に含まれ得る。任意の適切な可塑剤が使用され得る。適切な可塑剤の非限定的な例としては、アジペート、ベンゾエート、グルタレート、イソフタレート、ホスフェート、ポリエステル、セバケート(sebacate)、スルホンアミド、グリコール、テレフタレート、およびこれらの混合物が挙げられ得る。可塑剤の量は、上記コーティング組成物の全重量の0.1〜50重量パーセントまでの範囲であり得る。
【0068】
他の実施形態において、本発明の組成物は、上記組成物の特定の用途に依存し得る種々の任意の成分および/または添加物(例えば、染料または顔料(例えば、カーボンブラックもしくはグラファイト)、強化剤、揺変剤、硬化促進剤(accelerators)、界面活性剤、エキステンダー、安定剤、腐食防止剤、希釈剤、発泡剤、および酸化防止剤)を含有し得る。適切な揺変剤としては、ヒュームドシリカ、ベントナイト、ステアリン酸コーティングされた炭酸カルシウム、脂肪酸/油誘導体および関連のウレタンシックナー(Rohm and Haasより市販のRM−8)が挙げられ得る。上記揺変剤は、20重量パーセントまでの量で存在し得る。任意の追加の成分(例えば、カーボンブラックまたはグラファイト)、発泡剤、膨張性ポリマー性ミクロスフェアまたはビーズ(例えば、ポリプロピレンまたはポリエチレンミクロスフェア)、界面活性剤および腐食防止剤(バリウムスルホナート)は、上記組成物の全重量の5重量パーセント未満の量で存在し得る。
【0069】
これらのコーティング生成物の粘度は、使用される装置のタイプ、必要な膜の厚さ、およびもたれ耐性(sag resistance)に基づいて用途特異的であり得る。代替の実施形態において、上記コーティング組成物の粘度は、1000センチポイズより大きい、または1000〜1,000,000センチポイズ(「cp」)(#7 spindle Brookfield measurementで2RPMで測定される)であり得る。さらなる実施形態において、スプレー可能な組成物は、上記Brookfield viscometerで20RPMで、周囲温度(約25℃)において100,000cp以下の粘度を有し得る。
【0070】
ある実施形態において、本発明のコーティング組成物は、高エネルギー真空撹拌器(例えば、Hockmeyerより市販のDual Disperser Model HHL−2−1000)において、上記ポリマー性マイクロ粒子分散物を上記コーティング組成物の他の成分と混合することにより調製され得る。
【0071】
上記コーティング組成物は、基材の表面に塗布され得る。任意の適切な塗布方法が使用され得、ならびに当該分野で公知の従来技術を含み得る。適切な塗布方法としては、スプレー、押出し、またはブレードによる手動方法が挙げられ得る。任意の適切な基材が使用され得る。適切な基材の非限定的な例としては、金属、ポリマーより形成されるもの(例えば、熱硬化性材料および熱可塑性材料)、ならびに金属およびポリマー性基材の組み合わせが挙げられ得る。本発明に従いコーティングされ得る適切な金属基材としては、鉄金属(例えば、鉄、鋼、およびそれらの合金)、非鉄金属(例えば、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、およびこれらの合金)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態において、上記基材は、冷間圧延鋼(cold rolled steel)、電気亜鉛めっき鋼(例えば、溶融電気亜鉛めっき鋼、もしくは電気亜鉛めっき鉄−亜鉛鋼)、アルミニウム、またはマグネシウムから形成され得る。処理される金属基材は、裸であり得るか、上記コーティングが塗布される前に前処理され得るか、または(例えば、電気コーティング(electrocoating)により)前塗装され得る。
【0072】
適切な熱硬化性材料は、ポリエステル、エポキシド、フェノール、ポリウレタン(例えば、反応射出成形(RIM)ウレタン熱硬化性材料)およびこれらの混合物を含有し得る。適切な熱可塑性材料としては、熱可塑性ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステル、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー、EPDMゴム、これらのコポリマーおよびこれらの混合物が挙げられ得る。
【0073】
実施した例を除いて、また別に示さない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される、成分の量、反応条件などについてのすべての数または表現は、全ての例において用語「約」で修飾されることが理解されるべきである。多くの数値範囲は、本特許願において開示される。これらの範囲は連続的であるため、上記範囲は、最小値および最大値の間のすべての値を包含する。特に別に示さない限り、本出願において明記される多くの数値範囲は、概数である。複数形は単数形を包含し、逆もまた同じであり、例えば、「a」または「an」は、1つより多くを包含し得る。
【0074】
本発明の特定の実施形態が例示の目的で上記に記載されるが、本発明の詳細における非常に多くの改変が、添付の特許請求の範囲に定義される本発明から逸脱することなく、なされ得る、ということは当業者にとって明らかである。本発明は、以下の特定の非限定的な実施例によって例示され得る。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は、本発明を例示することが意図され、いかなる方法においても本発明を限定するように解釈されるべきではない。実施例1は、マクロモノマーの調製を示す。実施例2および3は、水性媒質中で、実施例1のマクロモノマーの存在下、重合可能なエチレン性不飽和モノマーの混合物を重合することによる、2つの異なるコポリマーの調製を示す。
【0076】
実施例4および5は、実施例2および3のポリマー性マイクロ粒子の水性分散物を含有する音および振動低下のための、2つの異なるコーティング組成物の調製を示す。
【0077】
実施例1 マクロモノマーの調製(04−122−136A)
連続的な300ml連続撹拌反応器に、以下の投入物を、芳香族炭化水素であるSolvesso 100を充填した反応領域に、250℃の温度および600〜700psigで、導入した。放出圧力を600〜650psigにし、そして受容容器を十分な減圧下で170℃に設定した。
【0078】
【化8】

3つの投入を同時に開始し、そして反応を定常安定状態にした。生成物を2.5時間かけて連続的に収集した。
【0079】
ポリスチレン基準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定すると、生成物は約2500の重量平均分子量および約1200の数平均分子量を有した。生成物は、本質的に100%非揮発性であり、約90であると測定されたヒドロキシル数および約1230の不飽和当量(unsaturation equivalent weight)を有した。
【0080】
実施例2 (06−DLW−068)
撹拌器、熱伝対、窒素投入口、および2つの供給領域を備えた3L丸底フラスコに、以下の投入物を添加した:
【0081】
【化9】

上記投入物を、窒素ブランケット内で、80℃に加熱した。80℃において、以下の投入物を添加し、5分間保持した。
【0082】
【化10】

5分間の保持後、以下の投入物を添加し、30分保持した。
【0083】
【化11】

30分の保持後、以下のモノマープレエマルジョン供給物および開始剤供給物を3時間の期間をかけて添加した。
【0084】
【化12】

上記供給が完了した後、反応を1時間、80℃で保持した。反応を周囲温度まで冷却し、そして以下の溶液を添加して、pHを上げた。
【0085】
【化13】

ラテックスは、36.32%の固体含有量、9.05のpH値、および120cpsのBrookfield粘度(Spindle #2/60rpm)を有した。
【0086】
実施例3 (06−DLW−065)
上述と同様に備えた3L丸底フラスコに、以下の供給物を添加し、窒素ブランケット下で81℃に加熱した。
【0087】
【化14】

81℃で、以下を添加し、5分保持した。
【0088】
【化15】

次いで、以下を10分かけて添加し、さらに反応を30分保持した。
【0089】
【化16】

保持期間後、以下のモノマープレエマルジョンおよび開始剤供給物を3時間かけて添加し、次いで、80℃で1時間保持した。
【0090】
【化17】

1時間の保持期間後、以下の別個のものを添加し、反応をさらに2時間保持した。
【0091】
【化18】

この反応を次いで、≦50℃に冷却し、そして以下を添加して、pHを上げた。
【0092】
【化19】

ラテックスは、40.25%の固体含有量、8.11のpH値、および132.5cpsのBrookfield粘度(Spindle #2/60rpm)を有した。
【0093】
実施例4および5
以下の表2に示される組成物のそれぞれの成分を、低い撹拌速度で、パイントサイズの容器内で空気駆動(air−driven)モーターを用いて混合した。成分を表2に示される順番で容器に添加し、そして混合スピードをあげて、添加する間を通して渦を維持した。それぞれのサンプルを、撹拌器を備え、混合されるサンプルに少なくとも700mmHgの減圧度を与える真空チャンバー内に設置した。サンプルを、発泡が静まってから取り除いた(約35分)。
【0094】
【表2】

3〜4インチ長の展色サンプルを3インチ幅、120ミル厚さのコーティングテンプレートを用いて、ED−6060 electrocoat(PPG Industries,Inc.,Pittsburgh,Pennsylvaniaより市販)によりコーティングされた試験パネル上に調製した。各展色を周囲温度(約25℃)で空気乾燥した。
【0095】
マッドクラッキングを別のパネルのセットで評価した。このマッドクラッキング測定は、亀裂の数、幅および長さに基づく視覚的測定であった。それぞれのパネル上のコーティングを周囲温度(約25℃)で30分、次いで171℃で30分焼結した。
【0096】
それぞれのコーティングの音低下性を、Oberst ASTM試験方法E756−93(「Standard Test Method for Measuring Vibration−Damping Properties of Materials」)、セクション3および10を使用して測定した。この試験における音低下性の主要な測定は、損失率(材料の保持係数に対する損失係数の比率)である。Oberst値は、代表的に非コーティング鋼(厚さ30ミル)において0.001(鋼パネルをたたくと、「カン」と聞こえる)から、コーティングの能力が上がるにつれ、0.01(「ゴーン」)まで、0.1(「ドン」)まで、0.5(「ドスン」)までの範囲であり得る。Oberst試験方法は、コーティング−基材複合物の音損失率を測定する。
【0097】
それぞれの試験サンプルをOberst Barに塗布し、上記に記載のとおりに硬化した。このOberst Barは、特別なオイル硬化性(oil−hardening)均一基材原料 AISI/SAE GRD 0−1、1/32インチ(0.8mm)厚さ、1/2インチ(12.7mm)幅(McMaster−Carrより、部品番号89705−K121)から形成された金属バーである。それぞれの硬化されたコーティングの重量は、9.0±0.12グラムであった。Oberst損失率を、比較のために9.0グラムで規格化した。複合損失率を、200Hzで、10℃、25℃および40℃の温度で比較した。結果を以下の表3に報告する。
【0098】
【表3】

本発明の特定の実施形態が、例示の目的のために上記に記載されたが、本発明の詳細における非常に多くの改変が、添付の特許請求の範囲に定義される本発明から逸脱することなく、なされ得る、ということは当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒質中、マクロモノマーの存在下で、1つ以上の重合可能なエチレン性不飽和モノマーを重合することにより調製されるコポリマーであって、該マクロモノマーは、以下の交互の構造単位:
【化20】

を有する少なくとも30モルパーセントの残基を含み、式中、DMはドナーモノマーからの残基を表し、AMはアクセプターモノマーからの残基を表し、該マクロモノマーの少なくとも15モルパーセントは以下の構造:
【化21】

のドナーモノマーを含有し、式中、Rは、直鎖もしくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、直鎖、環状もしくは分枝の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、C〜C20アルカリールおよびC〜C20アラルキルから選択され、ここで、該マクロモノマーは、マレエートモノマー部分およびフマレートモノマー部分を実質的に含まず、そして該マクロモノマーはルイス酸および遷移金属を実質的に含まない、コポリマー。
【請求項2】
前記重合可能なエチレン性不飽和モノマーがポリマー骨格部分を形成し、そして前記マクロモノマーが該骨格に付属するポリマー部分を形成する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
前記マクロモノマーがフリーラジカル開始重合を介して調製される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
前記ドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、イソプレノールおよびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記アクセプターモノマーが、以下の構造:
【化22】

のモノマーの1つ以上を含有し、
式中、Rが、H、直鎖もしくは分枝のC〜C20アルキル、C〜C20アルキルオール、C〜C20アリール、C〜C20アルカリール、およびC〜C20アラルキルから選択される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記アクセプターモノマーが、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソボルニルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートから選択される、請求項5に記載のコポリマー。
【請求項7】
前記マクロモノマーが、500〜10,000の数平均分子量を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記マクロモノマーが、3未満の多分散度を有する、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項9】
前記重合可能なエチレン性不飽和モノマーがビニルモノマーである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項10】
前記ビニルモノマーが、以下の構造:
【化23】

であり、式中、Rは、Hまたはメチルであり、そしてRは、H、直鎖もしくは分枝のC〜C20アルキル、C〜C20アルキルオール、C〜C20アリール、C〜C20アルカリールおよびC〜C20アラルキルから選択される、請求項9に記載のコポリマー。
【請求項11】
前記ビニルモノマーが、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびメタクリル酸から選択される、請求項10に記載のコポリマー。
【請求項12】
前記重合が、水性媒質中の重合を介して実施される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項13】
50,000より大きい数平均分子量を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項14】
音および振動低下のためのコーティング組成物であって、
(a)ポリマー性マイクロ粒子の水性分散物であって、該ポリマー性マイクロ粒子は、水性媒質中、マクロモノマーの存在下で、1つ以上の重合可能なエチレン性不飽和モノマーを重合することにより調製されるコポリマーを含有し、該マクロモノマーは、以下の交互の構造単位:
【化24】

を有する少なくとも30モルパーセントの残基を含み、式中、DMはドナーモノマーからの残基を表し、AMはアクセプターモノマーからの残基を表し、該マクロモノマーの少なくとも15モルパーセントは以下の構造:
【化25】

のドナーモノマーを含有し、式中、Rは、直鎖もしくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、直鎖、環状もしくは分枝の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、C〜C20アルカリールおよびC〜C20アラルキルから選択され、ここで、該マクロモノマーは、マレエートモノマー部分およびフマレートモノマー部分を実質的に含まず、そして該マクロモノマーはルイス酸および遷移金属を実質的に含まない、ポリマー性マイクロ粒子の水性分散物;
(b)該コーティング組成物の約20〜90重量パーセントを構成する充填材(該重量パーセントは該コーティング組成物の全重量を基準とする)、
を含有する、組成物。
【請求項15】
前記重合可能なエチレン性不飽和モノマーがポリマー骨格部分を形成し、そして前記マクロモノマーが該骨格に付属するポリマー部分を形成する、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記マクロモノマーがフリーラジカル開始重合を介して調製される、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記ドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、イソプレノールおよびこれらの混合物から選択される、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
前記アクセプターモノマーが、以下の構造:
【化26】

のモノマーの1つ以上を含有し、式中、Rが、H、直鎖もしくは分枝のC〜C20アルキル、C〜C20アルキルオール、C〜C20アリール、C〜C20アルカリールおよび、C〜C20アラルキルから選択される、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項19】
前記アクセプターモノマーが、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソボルニルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートから選択される、請求項18に記載のコーティング組成物。
【請求項20】
前記マクロモノマーが、500〜10,000の数平均分子量を有する、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項21】
前記マクロモノマーが、3未満の多分散度を有する、請求項20に記載のコーティング組成物。
【請求項22】
前記重合可能なエチレン性不飽和モノマーがビニルモノマーである、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項23】
前記ビニルモノマーが、以下の構造:
【化27】

であり、式中、Rは、Hまたはメチルであり、そしてRは、H、直鎖もしくは分枝のC〜C20アルキル、C〜C20アルキルオール、C〜C20アリール、C〜C20アルカリールおよびC〜C20アラルキルから選択される、請求項22に記載のコーティング組成物。
【請求項24】
前記ビニルモノマーが、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびメタクリル酸から選択される、請求項23に記載のコーティング組成物。

【請求項25】
前記重合が、水性媒質中の重合を介して実施される、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項26】
50,000より大きい数平均分子量を有する、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項27】
前記充填材が、カルシウム、炭酸マグネシウム、メタケイ酸カルシウムを含有する、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項28】
前記充填材が、硫酸バリウム、セラミックビーズを含有する、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項29】
さらに可塑剤を含有する、請求項14に記載のコーティング組成物。

【公表番号】特表2010−501674(P2010−501674A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525680(P2009−525680)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/074805
【国際公開番号】WO2008/024603
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】