説明

液中プラズマ処理装置、金属ナノ粒子製造方法及び金属担持物製造方法

【課題】 装置の低コスト化及び小型化を実現するとともに、不純物の混入がない高品質の金属ナノ粒子及び金属担持物を生成でき、かつ、この生成を、高速で、短時間に、十分な量で得ることができる。
【解決手段】 溶液に所定の処理を行って金属ナノ粒子又は金属担持物を生成する液中プラズマ処理装置1であって、溶液が収められた容器30と、マイクロ波を出力するマイクロ波発振器10と、マイクロ波を溶液に与えて該溶液内にプラズマを励起させる電極42とを備え、この電極42が、プラズマの励起によりナノ粒子となる金属で形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中プラズマにより金属ナノ粒子又は金属担持物を生成する液中プラズマ処理装置、金属ナノ粒子製造方法及び金属担持物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子とは、直径が1〜100nm程度の微粒子をいう。このナノ粒子は、比表面積が極めて大きいこと、量子サイズ効果によって特有の物性を示すことなど、一般的な大きさの固体(バルク)の材料とは異なることから、様々な分野で研究・利用が進められている。
例えば、金、銀、銅などの電気抵抗値が小さい金属のナノ粒子は、分散剤や希釈剤によってペースト状のインクとすることで、IC基板などに電気配線を形成できる。また、金のナノ粒子は、様々な反応に対して触媒活性を示すことが見出されており、例えば、トイレの脱臭触媒として実用化されている。
【0003】
一方、この金のナノ粒子は、卑金属酸化物や活性炭に担持させると、優れた触媒活性を発現することが知られている。
このように、所望の金属を特定の担体に担持させた触媒を、金属担持触媒という。
この金属担持触媒の他の具体例として、例えば、アルミナナノ粒子を担体とし、白金を担持対象とする白金金属担持触媒などがある。この金属担持触媒は、近年、燃料電池などに使用されている。
【0004】
ところで、それら金属ナノ粒子や金属担持触媒は、その製造方法が、従来から種々提案されている。
例えば、触媒活性成分又は担体からなる物質(触媒成分)が溶けた溶液を、超音波により微細な液滴とし、この液滴をプラズマのエネルギーにより熱分解し、この熱分解により製造した微粒子触媒を水溶液中に沈澱させて捕集するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
これによれば、それまでの触媒製造方法に比べて触媒性能の優れた微粒子触媒を製造することができる。また、連続的かつ簡単に、低コストで、微粒子触媒を製造できる。さらに、組成比が一定な合金触媒又は複合酸化物触媒を、製造ロット間のばらつきなく製造できる。
【0005】
一方、多くの実用化されている金属担持触媒製造方法は、液相の化学還元法である。担体となる微粒子、超微粒子を金属塩溶液中に分散させ、還元反応によって担体表面上に金属ナノ粒子を析出させるものである。
金属ナノ粒子を得る際には担体を使用しなければよく、保護剤を併用してコロイド状にし、多くの金属ナノ粒子の製造に用いられている。
【0006】
加えて、電子線照射による還元反応を用いて金属担持触媒を精製する方法がある。具体的には、酸化鉄(FeO)、酸化金酸(HAuCl)、保護剤高分子、還元補助剤(2-propanol)、超純水を混合した液体をガラス瓶に入れ、4.8MeVの電子線を6kGy照射することで、金属担持触媒を得ている。
【0007】
また、電子線照射に代えて、ガンマ線照射、超音波加振あるいは、紫外線照射によっても還元が起きることが知られている(例えば、特許文献2、3参照。)。中でも超音波加振は、簡便であり、容易に量産可能なプロセスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−87965号公報
【特許文献2】特開2008−266214号公報
【特許文献3】特開2008−19162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した技術においては、次のような問題があった。
例えば、特許文献1に記載の技術では、一回の処理で生成される触媒の量が非常に少なかった。具体的には、例えば、触媒活性化成分である硝酸ニッケル0.47[g]と、硝酸アルミニウム1.77[g]とを、100[cc]の水に溶かし、十分混合した後、微粒子触媒製造装置を用いて所定の処理を行った結果、得られた完成触媒の量は、0.5[g/h]であった。
【0010】
また、電子線照射による還元反応を用いる方法では、4.8MeVの電子線を必要としていた。この4.8MeVの電子線を得るための装置は、大型で高価であった。しかも、電子加速器は、多くの場合、部屋あるいは建物くらいの大きさとなるので、電離放射線防止規則の適用を受けることになり、管理に有資格者が必要であった。
【0011】
さらに、化学還元法では20時間もの長時間処理が必要とされた。
加えて、化学還元法では使用した還元剤が酸化された状態で残留したり、用いた金属塩の対イオンや金属錯体の配位子が残留するなどし、不純物として金属ナノ粒子および金属担持物の表面に吸着してしまう問題が解決されていない。
電子線、ガンマ線、超音波などを使用する場合においても、還元剤こそ使用しないものの、金属塩もしくは錯体を使用するため不純物の混入は不可避である。
【0012】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、装置の低コスト化及び小型化を実現するとともに、不純物の混入がない高品質の金属担持物を生成でき、かつ、この生成を、高速で、短時間に、十分な量で得ることができる液中プラズマ処理装置、金属ナノ粒子製造方法及び金属担持物製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明の液中プラズマ処理装置は、溶液に所定の処理を行って金属ナノ粒子又は金属担持物を生成する液中プラズマ処理装置であって、溶液が収められた容器と、マイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、マイクロ波を溶液に与えて該溶液内にプラズマを励起させる電極とを備え、この電極が、プラズマの励起によりナノ粒子となる金属で形成された構成としてある。
【0014】
また、本発明の金属ナノ粒子製造方法は、溶液に所定の処理を行ってナノ粒子を生成する液中プラズマ処理方法であって、溶液を容器に収める工程と、容器の側面に配置されるとともに先端が溶液中に突出した電極に、パルス状のマイクロ波を供給する工程と、電極の先端でマイクロ波によりプラズマを励起させて、電極を破砕し、この破砕した電極の形成材料をナノ粒子として生成する工程とを有した方法としてある。
【0015】
また、本発明の金属担持物製造方法は、溶液に所定の処理を行って金属担持物を生成する液中プラズマ処理方法であって、担体が分散した溶液を容器に収める工程と、容器の側面に配置されるとともに先端が溶液中に突出した電極に、パルス状のマイクロ波を供給する工程と、電極の先端でマイクロ波によりプラズマを励起させて、電極を破砕し、この破砕した電極の形成材料をナノ粒子として担体に担持させる工程とを有した方法としてある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液中プラズマ処理装置、金属ナノ粒子製造方法及び金属担持物製造方法によれば、電子加速器のような大きな装置を必要としないため、低コストで小型の液中プラズマ処理装置を実現できる。
また、金属塩、錯体、還元剤を使用しないため、これらに由来する対イオン、配位子、酸化された還元剤等の不純物を含まず、きわめて高純度の金属ナノ粒子や金属担持物を得ることができる。
さらに、液中プラズマ源により溶液中にプラズマを発生させる方法のため、高速で、短時間に、十分な量で金属ナノ粒子や金属担持物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における液中プラズマ処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】マイクロ波電力の波形を示す波形図である。
【図3】同軸導波管と液中プラズマ源の構成を示す側面断面図である。
【図4】液中プラズマ源のうち支持部材の構成を示す斜視図である。
【図5】液中プラズマ源のうち電極付近の構成を示す側面断面図である。
【図6】電極の繰り出し機構の構成を示す側面断面図である。
【図7】本発明の実施形態における液中プラズマ処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態における液中プラズマ処理装置の他の動作を示すフローチャートである。
【図9】実施例で得られた金属ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
【図10】実施例で得られた白金金属担持物の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る液中プラズマ処理装置、金属ナノ粒子製造方法及び金属担持物製造方法の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
[液中プラズマ処理装置]
まず、本発明の液中プラズマ処理装置の実施形態について、図1を参照して説明する。
同図は、本実施形態の液中プラズマ処理装置の構成を示す正面図である。
【0020】
同図に示すように、液中プラズマ処理装置1は、マイクロ波発振器10と、導波管20と、容器30と、液中プラズマ源40とを有している。
ここで、マイクロ波発振器10は、マグネトロンボックス11と、マイクロ波電源12と、マイクロ波電源コントローラ13とを有している。
マグネトロンボックス11は、マイクロ波を生成して出力する。
マイクロ波電源12は、マグネトロンボックス11にマイクロ波生成用の電力を供給する。
マイクロ波電源コントローラ13は、マイクロ波電源12に信号を送って、マイクロ波の出力などを調整・制御する。
【0021】
なお、図1においては、マグネトロンボックス11、マイクロ波電源12、マイクロ波電源コントローラ13をそれぞれ別構成で示したが、別構成に限るものではなく、これらを一体構成とすることができる。
また、マイクロ波は、一般に、波長が100μm〜1m、周波数が300MHz〜3THzの電磁波をいう。
【0022】
導波管20は、マイクロ波発振器10から出力されたマイクロ波を容器30へ伝搬する。
導波管20には、アイソレータ21、パワーメータ22、チューナ23などの立体回路を取り付けることができる。
アイソレータ21は、負荷から反射してきたマイクロ波が再びマグネトロンへ戻らないように、ダミーロードで吸収し、熱に変換する。
パワーメータ22は、出射、反射それぞれのマイクロ波電力を測定する。
【0023】
チューナ23は、負荷インピーダンスの整合を行なう。
チューナ23には、スリースタブチューナと、EHチューナがある。
スリースタブチューナは、三本のスタブを調整して、負荷の消費電力を最大にする。
EHチューナは、導波管20のE分岐とH分岐にプランジャを設け、これを出し入れすることで、チューニングをとる。
なお、液中プラズマ処理装置1を実施する場合は、スリースタブチューナとEHチューナのいずれを用いてもよい。
【0024】
また、導波管20には、コーナ導波管24や終端プランジャ25などを用いることができる。
さらに、導波管20は、同軸導波管変換器26を有している。
この同軸導波管変換器26の構造については、後記の(液中プラズマ源)で詳述する。
【0025】
容器(アプリケータ)30は、液体を入れる器である。この容器30に収められた液体の中でプラズマを発生させる。
この容器30の側面32(図5参照)の一部には、液中プラズマ源40の支持体43(後述)を取り付けるための孔31(図5参照)が穿設されている。
支持体43は、後述するように、キャップ状に形成されており、スカート部43−1と天板部43−2とを有している。孔31は、天板部43−2とスカート部43−1の一部(天板部43−2の近傍)が嵌合可能な大きさに穿設されている。
【0026】
この容器30は、例えば、テフロン(登録商標)などの樹脂やガラスで形成することが望ましい。この理由としては、仮に、容器30が金属で形成されていたとすると、収められた液体が酸性水になるため、電池になって電気分解や腐食を起こす可能性があるからである。
なお、テフロン製の容器30の外側に、ステンレス容器を備えたり、金属製の容器の内側にテフロン塗装を施して使用することもできる。金属製の容器を使うことにより、マイクロ波の漏洩を防止できる。
【0027】
この容器30には、金属ナノ粒子や金属担持物を製造するための溶液が投入される。
金属ナノ粒子を製造する場合、溶液には、水などの溶媒を使用する。
これに対し、金属担持物を製造する場合、上記の溶媒に担体粒子を分散させたものを使用する。担体は、各種セラミック、ガラス、あるいはカーボン材料などがあり、目的に応じて、適宜選ぶことが可能であり必要である。担体の濃度は、溶媒に対し、0.1〜10重量%といった範囲に設定できる。
この状態で、マイクロ波液中プラズマを発生させると、プラズマの熱と電界などにより、電極金属は溶融、電気分解などの反応により破砕され金属ナノ粒子や金属担持物が生成される。
【0028】
(液体への供給電力)
次に、液体(溶液)に供給される電力について、説明する。
液体には、この液中にプラズマを発生させて金属ナノ粒子又は金属担持物を生成するための電力が供給される。
この電力は、直流パルスではなく、2.45GHz、5.8GHz、9.5GHz帯などの周波数スペクトルが単一のマイクロ波である。このため、共振構造、伝送路インピーダンスの最適化などにより、高い電力供給効率が可能となる。
【0029】
液中プラズマでは、従来技術として直流パルスによる放電の例がある。
直流パルスは、基本周波数およびその奇数倍のきわめて広範囲の周波数成分を含むので、伝送路および負荷(液体のインピーダンス)との完全な整合が難しく、結果として反射電力が大きく、負荷への電力供給効率は低くなる。
一方、駆動電力をマイクロ波にすることで、電極42への負荷を小さくできる。
すなわち、マイクロ波は単周波数なので、極めて効率的に電力を供給すること、および電極を誘電体で覆うなど無電極化することが可能になる。
マイクロ波は、理論的には無反射にすることも可能であり、この場合の負荷への電力供給効率は、マグネトロンの発振効率のみが最も大きな損失となるだけなので、電力効率は、70%近くになる。この数値は、他の方法と比較して極めて高い効率である。
【0030】
また、直流パルスにおいては、液体の導電率を制御する必要がある。これは、導電率が低い場合は液体に余計な電解質を混入する必要があること、あるいは、既に導電率が必要よりも高い場合にはプラズマを得ることができないことを意味する。
これに対して、マイクロ波は、水の大きな比誘電率(約80)と大きな誘電正接(約10)によりエネルギーを吸収させてプラズマを生じさせるので、このような導電率の制御は不要であり、よって、不純物を入れる必要もなく、多くの物質に適用できる。液体として、水が適当であることも、他方式に対する特長となる。
【0031】
マイクロ波電力は、図2に示すように、複数周期を一パルスとするパルス状であることが望ましい。
定常的にプラズマ放電可能なマイクロ波電力をプラズマ源に投入すると、その電力により激しい発熱が生じ、電極42が破壊する。しかるに、プラズマが生じるための電力は高く、試作機では、2kW以上のピークパワーを必要とした。この相反する要求を同時に実現するためには、電力供給はマイクロ波パルスであることが必要になる。
一方、マイクロ波パルスのパルス幅を1μ秒よりも短くすれば、プラズマはコロナ放電すなわち非熱平衡プラズマとなり、温度上昇が抑えられ、電極42の損耗は著しく少なくなる。しかし、液体に与えられるエネルギーは小さくなるため、反応速度が遅くなるか、または条件によっては金属担持物が生成されない可能性がある。
【0032】
(液中プラズマ源)
次に、液中プラズマ源の構成について、図3〜図5を参照して説明する。
図3は、液中プラズマ源の構成を示す断面図である。図4は、液中プラズマ源を構成する支持部材を示した斜視図である。図5は、液中プラズマ源を構成する電極及びその周囲を拡大した要部拡大図である。
なお、本実施形態においては、同軸導波管変換器26の同軸管41が液中プラズマ源40に含まれるものとする。
【0033】
液中プラズマ源40は、導波管20を伝搬してきたマイクロ波を液体に供給するための装置である。
この液中プラズマ源40は、図3に示すように、同軸管41と、電極42と、支持体43と、封止部材44と、絶縁部材45とを有している。
同軸管41は、同軸導波管変換器26の一部を構成しており、導波管20からマイクロ波を受けて伝搬させる。
一般に、同軸導波管変換器26では、導波管20(管体26−1)と同軸管41とが垂直に接続されている。このため、マイクロ波は、管体26−1から同軸管41に伝わるときに、その伝搬方向を垂直方向に変えて伝わっていく。
【0034】
この同軸管41は、同軸管構造で形成されており、同軸管外部導体41−1と、同軸管内部導体41−2とを有している。
同軸管外部導体41−1は、同軸導波管変換器26の管体26−1の表面から外方に向かって突設された管状部材である。この同軸管外部導体41−1の中心軸方向は、同軸導波管変換器26の管体26−1の中心軸に対して垂直方向である。
この同軸管外部導体41−1の内径は、特性インピーダンスが50Ωとなるような寸法にしてある。
特性インピーダンスは、管の内外径比により変更できる。負荷(プラズマ)に整合するよう調整することも可能である。
【0035】
同軸管内部導体41−2は、棒状又は筒状の部材であって、同軸管外部導体41−1の中空に、同軸管外部導体41−1と同軸で配置されている。
この同軸管内部導体41−2の一方の端部は、同軸導波管変換器26の管体26−1の内面(同軸管外部導体41−1が取り付けられている部分に対向する面)に当接している。また、他方の端部には電極42が延設されている。
なお、同軸管内部導体41−2の直径は、試作機においては10mmとしたが、必ずしも10mmが最適であるわけではなく、前述したように、適宜変更可能である。
【0036】
同軸管内部導体41−2が管体26−1に当接している部分には、支持部材50が取り付けられている。
支持部材50は、図3及び図4に示すように、第一支持部材51と、第二支持部材52とを有している。
第一支持部材51は、頂部が截断された截頭錐体の形状に形成されており、底部51−1が管体26−1の孔26−2に嵌合している。また、底部51−1の中央から頂部截断面(截頭面51−2)の中央に向かって直線状に貫通孔51−3が穿設されている。この貫通孔51−3には、同軸管内部導体41−2の一方の端部が嵌合する。
【0037】
この第一支持部材51が截頭錐体の形状に形成してあるのは、次の理由による。
方形導波管の伝送基本モードは、TEモードまたはTMモードである。一方、同軸線路の伝送基本モードは、TEMモードである。このように、方形導波管と同軸線路では、伝送モードが異なるが、同軸導波管変換器26は、それらの整合をとって、マイクロ波を伝搬可能にしている。
整合の手法には様々なものがあるが、本実施形態の同軸導波管変換器26は、第一支持部材51の形状により整合をとっている。
第一支持部材に関する公知の形状としてワイングラス形があるが、その曲線形状が複雑なために加工が困難であるという欠点がある。これに対し、本実施形態の第一支持部材51は、截頭錐体であり、加工が容易である。
【0038】
また、ワイングラス形は、平均電力1MW、あるいは尖頭値電力1MWといった大電力用変換器に用いられるが、そこまでの大電力を扱わない場合には、截頭錐体の形状でも発熱が生じず、実用的な整合をとることができる。これは、発明者が、平均電力500W〜1kW、尖頭値電力5kWにおいて電磁界シミュレーションを行なった結果、ワイングラス形と同等の電磁界分布が得られたことからわかった。
さらに、他の利点としては、第一支持部材51の表面にエッジがないことから、放電を防止できることが挙げられる。
しかも、スリースタブチューナ23を設けることで、さらに整合させることができる。
【0039】
第二支持部材52は、截頭錐体部52−1と、ネジ部52−2とを有している。
截頭錐体部52−1は、頂部が截断された截頭錐体の形状に形成されており、底部52−3の中心から頂部截断面(截頭面)の中央に向かって直線状に貫通孔52−4が穿設されている。
また、截頭錐体部52−1には、傾斜(テーパ)に沿って複数のスリット52−5が形成されており、一種のコレットチャックとなっている。スリット間にある歯部52−6は、貫通孔52−4に嵌合された同軸管内部導体41−2を支持する。
【0040】
ネジ部52−2は、截頭錐体部52−1の底部52−3から延設した円筒形状の部材であって、外周に雄ネジ52−7が形成されている。また、ネジ部52−2の中空52−8と截頭錐体部52−1の貫通孔52−4が連通している。
一方、第一支持部材51の截頭面51−2の中央には貫通孔51−3が穿設されており、この貫通孔51−3には、雌ネジ51−4が形成されている。これにより、第二支持部材52の雄ネジ52−7が、第一支持部材51の雌ネジ51−4に螺入することができ、この螺入により、第二支持部材52の貫通孔52−4及び中空52−8と、第一支持部材51の貫通孔51−3が連通する。
【0041】
なお、第一支持部材51の截頭面51−2の外縁の径は、第二支持部材52の底部52−3の外縁の径と同じである。これにより、第一支持部材51の雌ネジ51−4に第二支持部材52のネジ部52−2を螺入してもエッジが表れないので、放電を防止できる。
【0042】
電極42は、図5に示すように、胴部が円柱形状に形成されるとともに、一方の端部が円錐形状に形成されており、他方の端部に同軸管内部導体41−2の他方の端部が取り付けられている。電極42の一端を円錐形状とするにより、この先端46に電界を集中させ、電界強度を上げることができる。
そして、電極42の先端46を液中に露出させることで、この部分にプラズマを発生させることができる。
【0043】
この電極42は、プラズマにより粉砕されてナノ粒子となるため、金属ナノ粒子や金属担持物を得ようとする者にとってナノ粒子を作成したい金属で形成されている。
この金属は、溶媒と反応せず、融点が高すぎない金属が適応する。例を挙げれば、金、白金などの貴金属があり、これらは水を含む各種溶媒に反応を示さない。金属の融点が高い場合、金属ナノ粒子の生成速度は低下する。もし、これらの金属と反応する溶媒を使用すれば、金属の化合物が生じ、ナノ粒子が生成されないおそれがある。
【0044】
支持体43は、同軸管外部導体41−1の一端(同軸導波管変換器26の管体26−1に接続していない方の端部)を蓋するように取り付けられたキャップ状部材である。
この支持体43は、スカート部43−1と、天板部43−2とを有している。
スカート部43−1の裾部43−3は、同軸管外部導体41−1の一端に接続している。
スカート部43−1のうち天板部43−2の近傍は、容器30の孔31に嵌合されたときに、天板部43−2とともに容器30の内部に露出する。この露出したスカート部43−1の外周にはネジ溝43−4が形成されている。ここに止めリング43−5を螺合することで、支持体43が容器30の側面32に固定される。
この孔31から露出した天板部43−2及びスカート部43−1の一部は、液体に浸される。
【0045】
また、支持体43は、中空部43−6を有している。中空部43−6は、同軸管外部導体41−1の中空と連通している。
この中空部43−6は、スカート部43−1の内面から天板部43−2の中央に向かって次第に内径が小さくなるように、先細りのテーパ状に形成されている。そして、天板部43−2の中央には、小さい孔43−7が穿設されている。これにより、この孔43−7から電極42の先端46が少し突出する。
【0046】
さらに、支持体43の天板部43−2の表面には、耐熱部材43−8が取り付けられている。
耐熱部材43−8は、プラズマ熱により支持体43が損耗し、孔43−7の径が大きくなるのを防ぐ。この耐熱部材43−8は、電極42と同様、ナノ粒子を作成したい金属(例えば、金や白金など)で形成することができる。
【0047】
封止部材44は、支持体43の内面(中空部43−6の側面)と電極42との間に設けられた環状部材である。
この封止部材44は、電極42を支持するとともに、同軸管41の内部に液体が流入するのを防止する。
絶縁部材45は、支持体43の中空部43−6の側面と電極42との間であって、封止部材44と天板部43−2の孔43−7との間(つまり、容器30に液体を入れたときの封止部材44と液体との間)に設けられた環状部材である。
この絶縁部材45は、電極42を支持する機能と、液体が同軸管41や導波管20に侵入しないように封止する機能と、封止部材44がプラズマに直接暴露して熱的損傷を受けるのを防止する機能とを有している。これにより、封止部材44の寿命を延ばして、液中プラズマ源40の延命を可能とする。
【0048】
ここで、封止部材44と絶縁部材45について、さらに説明する。
封止部材44の材質は、変形して周囲の金属と密着する程度の弾力性があり、かつマイクロ波によって発熱しないように誘電損が小さい材質を使う必要がある。また、プラズマからの熱を多少受けるためにある程度の耐熱性を有することが望ましい。
そこで、弾力性のある柔らかい材料として、例えば、ゴム、PTFE(Polytetrafluoroethylene:ポリテトラフルオロエチレン)あるいは軟らかいプラスチック材料などが考えられる。しかし、これらの材料は一般に耐熱温度が低い。これらの耐熱温度が低い材料を本目的で使用すると、プラズマからの輻射熱、表面を走る沿面放電、中心電極の高温化などにより短時間で破壊され、水漏れ、酸性水への不純物混入などが生じる。一方、耐熱温度が高い材料は、ガラス、セラミックなどを代表として、固い材料が多く、金属と密着させて、水を封止するのには不向きである。
【0049】
また、絶縁部材45にセラミックなどを使い、ろう付けすることも考えられるが、本目的には適さない。
その理由として、中心電極42は、高温になるために熱膨張が大きく、通常のろう付けではひずみにより破壊してしまう。この熱膨張による形状変化を吸収するためには複雑な構造を必要とするが、中心電極42が消耗品となるために、これは本目的には適さない。
さらに、封止部材44としてPTFEを用い、これをプラズマの放電部分から導波管20の方へ後退させれば、熱の問題は緩和できる。ただし、マイクロ波は、表皮効果により電極42の表面を伝わり、結果的に水へも伝播するため、電極42の先端46に伝播する前に減衰してしまう。
【0050】
そこで、発明者は、封止部材44としてプラスチックを用い、その液体側を絶縁部材45としてのセラミックで覆い保護するという二重構造を創作した。
プラスチックは、PTFEを使用する。これは、マイクロ波帯における誘電損が少なく、過大な誘電率がなく、なるべく高い耐熱性があるからである。ただし、これらの条件を満たす材料であれば、PTFEに限るものではない。
セラミックは、アルミナ(Al203)を使用する。これは、PTFEと同様にマイクロ波帯における誘電損が少なく、過大な誘電率がなく、高い耐熱性と機械的強度があるからである。このような構造にすることによって、電極42の先端46のみが液体に露出し、かつプラズマを長時間維持できる耐熱構造を実現することが可能となる。ただし、これらの条件を満たす材料であれば、アルミナに限るものではない。
【0051】
(電極繰り出し機構)
次に、電極の繰り出し機構について、図6を参照して説明する。
同図は、繰り出し機構の構成を示す断面図である。
前述したように、電極42は、プラズマの発生により先端が破砕する。ここで、金属ナノ粒子の製造量が少量の場合は、電極42の破砕量も少ないため、特に問題はないが、金属ナノ粒子の製造量が多くなり、何度もプラズマを発生させると、破砕量が多くなって、電極42の先端が支持体43の孔43−7よりも中へ入り込んでしまい、マイクロ波の供給が不十分となって、溶液中でプラズマが発生しなくなるか、その発生に時間がかかってしまうという課題があった。
そこで、この課題を解消するために、発明者は、電極42の繰り出し機構を発明した。
【0052】
繰り出し機構は、液中プラズマ源40の同軸管内部導体41−2及び電極42を改良した構造となっている。
同軸管内部導体41−2は、同図に示すように、円筒形状に形成されている。そして、先端(容器30側)が、先細りの円錐形状に形成されており、他端が、支持部材50の貫通孔52−4、51−3を通って管体突部26−3に達している。
【0053】
この同軸管内部導体41−2の内部には、電極42と、支持部材41−3と、プランジャ41−4が備えられている。
電極42は、円柱形状に形成されており、同軸管内部導体41−2の内部に、同軸管内部導体41−2と同軸で備えられている。
この電極42は、一端が支持体43の孔43−7から突出し、容器30に入れられた溶液中に露出している。一方、電極42の他端は、同軸管内部導体41−2の内部で終端している。
また、電極42は、図3に示す電極42よりも中心軸方向の長さを長くしてある。これにより、一つの電極42で製造できる金属ナノ粒子の量を増やすことができ、さらに、電極42の取り替え時期を延ばすことができる。
【0054】
なお、電極42の一端(溶液側)は、図3では、先細りの円錐形状に形成されているが、図6では、円柱形状に形成されている。これは、図3に示す電極42のように先細りにすれば、この先端にマイクロ波を集中されることができるが、図6に示す電極42のように、径が短い(細い)場合は、先細りにしなくても、その先端にマイクロ波が集中し、プラズマの発生を十分に促すことができるからである。
【0055】
支持部材41−3は、円筒形状に形成されており、同軸管内部導体41−2の内部であって電極42の外周を囲む位置に配置されている。つまり、支持部材41−3は、同軸管内部導体41−2の中心軸と電極42の中心軸が一致するように、電極42を支持する。
この支持部材41−3を配置することで、電極42が、孔43−7に対して垂直方向にまっすぐ繰り出すようにすることができる。
【0056】
プランジャ41−4は、同軸管内部導体41−2をシリンジとしたときの押子の機能を有しており、同軸管内部導体41−2の内部に、同軸管内部導体41−2と同軸で備えられている。
このプランジャ41−4は、一端が電極42の他端に当接し、他端が管体突部26−3から突出している。
【0057】
管体突部26−3は、管体26から外部へ向かって突出するように取り付けられた部材である。
この管体突部26−3は、管状に形成されており、一方の開口が管体26に接合している。そして、この管体突部26−3の中空と第一支持部材51の貫通孔51−3と第二支持部材52の貫通孔52−4が連通している。
このため、同軸管内部導体41−2の他端が貫通孔51−3、52−4を通して管体突部26−3の内部に嵌合している。また、プランジャ41−4が貫通孔51−3、52−4を通して管体突部26−3の内部を貫通している。
【0058】
さらに、管体突部26−3の内部側面のうち、少なくともプランジャ41−4に接する面には、雌ネジ26−4が形成されている。また、プランジャ41−4の外周の一部には、雄ネジ41−5が形成されている。
これら管体突部26−3の雌ネジ26−4とプランジャ41−4の雄ネジ41−5が螺合することで、プランジャ41−4を同軸管内部導体41−2の内部へ捻じ込むことができる。
【0059】
プランジャ41−4の捻じ込みは、その中心軸を中心としてまわすことにより行われる。
プランジャ41−4を捻じ込むと、このプランジャ41−4の一端に当接している電極42が、そのプランジャ41−4に押されて、捻じ込み方向(電極42の中心軸方向)に移動する。これにより、電極42の先端が支持部材43の孔43−7から突出する。こうして、電極42を溶液のある方向に向かって送り出すことができる。
また、電極42の繰り出しを捻じ込みにより行うことで、電極42を支持体43の孔43−7から突出させる長さを微調整することができる。
【0060】
なお、プランジャ41−4の他端には、図6に示すように、ツマミ部41−6を設けることができる。
ツマミ部41−6は、電極42の繰り出しを行う者がプランジャ41−4をまわす際につまんで持つ部分である。このツマミ部41−6は、例えば、角柱形状に形成したり、外周にギザを形成したり、ラバーを取り付けたりすることができる。これにより、ツマミ部41−6がつまみ易くなり、滑らなくなるので、プランジャ41−4の捻じ込みが容易になる。
【0061】
また、本実施形態においては、電極の繰り出し構造を図6に示す構造としたが、繰り出し構造は、同図に示す構造に限るものではなく、種々の構造を用いることができる。例えば、プランジャ41−4の他端を中心軸方向に少しずつ押したり叩いたりすることで電極42を繰り出すような構造とすることもできる。
【0062】
[液中プラズマ処理方法]
次に、本実施形態の液中プラズマ処理装置の動作(液中プラズマ処理方法)について、図7、図8を参照して説明する。
図7は、本実施形態の液中プラズマ処理装置を用いてナノ粒子を生成する手順を示すフローチャートである。図8は、本実施形態の液中プラズマ処理装置を用いて金属担持物を生成する手順を示すフローチャートである。
【0063】
(金属ナノ粒子製造方法)
図7に示すように、液中プラズマ処理装置1には、ナノ粒子を作成したい金属で形成された電極42と、同じくナノ粒子を作成したい金属で形成された耐熱部材43−8が取り付けられている(ステップ10)。
液中プラズマ処理装置1の容器30に、溶媒のみを投入する(ステップ11)。
マイクロ波発振器10の電源を入れ、マグネトロンボックス11でマイクロ波を発生させる。この発生したマイクロ波は、導波管20を伝搬し、液中プラズマ源40から容器30の溶媒へ供給される。これにより、溶媒の中では、電極42の先端46の近傍で液中プラズマが発生する(ステップ12)。
この液中プラズマの熱と電界などにより、電極42を形成する金属は、溶融、電気分解などの反応により破砕され、溶媒中にナノ粒子が生成される(ステップ13)。
【0064】
(で形成された金属担持物製造方法)
図8に示すように、液中プラズマ処理装置1には、ナノ粒子を作成したい金属電極42と、同じくナノ粒子を作成したい金属で形成された耐熱部材43−8が取り付けられている(ステップ20)。
担体粒子が分散した溶媒を容器30に投入する(ステップ21)。担体の濃度は、溶媒に対し、0.1〜10重量%といった範囲に設定する。
マイクロ波発振器10の電源を入れ、マグネトロンボックス11でマイクロ波を発生させる。この発生したマイクロ波は、導波管20を伝搬し、液中プラズマ源40から容器30の溶媒へ供給される。これにより、溶媒の中では、電極42の先端46の近傍で液中プラズマが発生する(ステップ22)。
この液中プラズマの熱と電界などにより、電極42を形成する金属は、溶融、電気分解などの反応により破砕され、これが溶媒中に分散した担体上に付着・成長し、金属担持物が生成される(ステップ23)。
【0065】
[実施例]
次に、本実施形態の実施例について説明する。
【0066】
(実施例1:金属ナノ粒子の製造)
装置は、図1に示す液中プラズマ処理装置1を用意した。
この液中プラズマ処理装置1には、白金で形成された電極42と、同じく白金で形成された耐熱部材43−8を取り付けた。
また、マイクロ波発振器10のマグネトロンボックス11とマイクロ波電源12は、1セット構成であって、ミクロ電子(株)製、UM-1500EC-B、製造番号0101-1569のものを使用した。マイクロ波電源コントローラ13は、発明者が独自に製作したものを使用した。
【0067】
液中プラズマ処理装置1の容器30に精製水500mlを入れた。
次いで、マイクロ波発振器10の電源を入れ、マイクロ波を発生させた。
マイクロ波は、導波管20を伝搬し、同軸導波管変換器26、そして液中プラズマ源40を介して精製水に与えられた。これにより、精製水の内部にプラズマが発生した(液中プラズマの放電)。
このときのマイクロ波電力は、600W、時間は、600secであった。
なお、照射時間が600secとなった時点で、液温が80℃を突破したため、マイクロ波の照射を終了した。これは、液温が80℃以上になると、導電性が高いために沸騰が起こりやすくなるからである。ちなみに、マイクロ波の照射をさらに続けると、液温が90℃を超過し、溶液は完全に沸騰状態となる。
【0068】
プラズマ点火後、精製水は黒く濁りはじめ、実験終了時には、ほぼ不透明となった。
この溶液をポリビンに入れ、1日放置したが、液は、一様に黒く濁ったままであり、沈殿物は無かった。これは、生成されたナノ粒子が数十nm以下であり、かつ一様であることを意味する。
【0069】
このナノ粒子が生成された溶液の電子顕微鏡(TEM)像を、図9に示す。
同図は、透過電子顕微鏡(TEM)により溶液を30万倍の倍率で撮影したものである。
同図に示すように、溶液内には、2〜5nmの白金ナノ粒子が生成されたことがわかった。
【0070】
(実施例2:金属担持物の製造)
装置は、図1に示す液中プラズマ処理装置1を用意した。
この液中プラズマ処理装置1には、白金で形成された電極42と、同じく白金で形成された耐熱部材43−8を取り付けた。
マイクロ波発振器10のマグネトロンボックス11,マイクロ波電源12,マイクロ波電源コントローラ13は、実施例1で使用したものと同じものを使用した。
【0071】
精製水500mlに対し、担体粒子であるシリカナノ粒子(平均粒径50nm)を10重量%となるように混ぜいれ、これを液中プラズマ処理装置1の容器30に入れた。
次いで、マイクロ波発振器10の電源を投入し、マグネトロンボックス11からマイクロ波を出力させた。マイクロ波は、導波管20を伝搬し、液中プラズマ源40を介して溶液に与えられた。これにより、溶液内にプラズマが発生した(液中プラズマの放電)。このときのマイクロ波電力は600W、時間は600secであった。
なお、照射時間が600secとなった時点で、液温が80℃を突破したため、マイクロ波の照射を終了した。これは、液温が80℃以上になると、導電性が高いために沸騰が起こりやすくなるからである。ちなみに、マイクロ波の照射をさらに続けると、液温が90℃を超過し、溶液は完全に沸騰状態となる。
【0072】
プラズマ点火後、溶液は黒く濁りはじめ、実験終了後にはほぼ不透明となった。
この溶液をポリビンに入れ、1日放置したが、液は一様に黒く濁ったままであった。また、沈殿物はなかった。
この金属担持物が生成された溶液の電子顕微鏡像を図10に示す。同図は、透過電子顕微鏡(TEM)により溶液を15万倍の倍率で撮影したものである。
同図に示すように、溶液内では、シリカナノ粒子に白金が担持されていた(同図中、白い矢印で指し示した部分)。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の液中プラズマ処理装置、金属ナノ粒子製造方法及び金属担持物製造方法によれば、金属から金属塩を経ることなく、金属材料からナノ粒子を製造できるので、生産工程を単純化でき、製造時間を短縮できる。
また、溶媒中に金属塩、錯体、還元剤に由来する不純物を含まないため、きわめて純度の高い金属ナノ粒子及び金属担持物を製造することが可能となり、これにより期待される高活性表面により、高い触媒能が得られる。
さらに、電子加速器のような大きな装置を必要としないため、低コストで小型の装置により金属ナノ粒子や金属担持物を、十分な量で製造できる。
【0074】
以上、本発明の液中プラズマ処理装置、金属ナノ粒子製造方法及び金属担持物製造方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る液中プラズマ処理装置、金属ナノ粒子製造方法及び金属担持物製造方法は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、容器を一つのみ備えた構成としたが、容器は、一つに限るものではなく、二つ以上備えることもできる。
また、上述した実施形態では、導波管の構成は、図1に示した構成としたが、この構成に限るものではなく、溶液にマイクロ波を伝搬できるものであれば、任意の構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、マイクロ波によって励起された液中プラズマを用いて、溶液中に金属ナノ粒子や金属担持物を生成する技術に関する発明であり、本技術を用いて高活性触媒を製造することで燃料電池の低価格化、ナノペーストの高純度化に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 液中プラズマ処理装置
10 マイクロ波発振器
20 導波管
30 容器
31 孔
32 側面
40 液中プログラム源
42 電極
42−8 耐熱部材
44 封止部材
45 絶縁部材
46 先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液にマイクロ波を与えて金属ナノ粒子又は金属担持物を生成する液中プラズマ処理装置であって、
前記溶液が収められた容器と、
マイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、
前記マイクロ波を前記溶液に与えて該溶液内にプラズマを励起させる電極とを備え、
この電極が、前記プラズマの励起により前記金属ナノ粒子となる金属で形成された
ことを特徴とする液中プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記電極の一部が、円錐形状に形成されており、
この円錐形状の先端が、前記溶液に接触した
ことを特徴とする請求項1記載の液中プラズマ処理装置。
【請求項3】
前記容器の側面であって前記溶液を収めたときの水面よりも下方に、前記電極を通す孔を有し、
前記電極と前記孔との間に、封止部材を配置し、
この封止部材の前記溶液側に、絶縁部材を配置した
ことを特徴とする請求項1又は2記載の液中プラズマ処理装置。
【請求項4】
前記電極を支持するとともに前記孔に通される支持体と、
この支持体のうち前記溶液に接する面に取り付けられた耐熱部材とを有し、
この耐熱部材が、前記プラズマの励起により前記金属ナノ粒子となる金属で形成された
ことを特徴とする請求項3記載の液中プラズマ処理装置。
【請求項5】
前記電極を前記溶液に向けて送り出す繰り出し機構を備えた
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液中プラズマ処理装置。
【請求項6】
溶液にマイクロ波を与えて金属ナノ粒子を生成する金属ナノ粒子製造方法であって、
溶液を容器に収める工程と、
前記容器の側面に配置されるとともに先端が前記溶液中に突出した電極に、パルス状のマイクロ波を供給する工程と、
前記電極の先端で前記マイクロ波によりプラズマを励起させて、前記電極を破砕し、この破砕した前記電極の形成材料を金属ナノ粒子として生成する工程とを有した
ことを特徴とする金属ナノ粒子製造方法。
【請求項7】
溶液にマイクロ波を与えて金属担持物を生成する金属担持物製造方法であって、
担体が分散した溶液を容器に収める工程と、
前記容器の側面に配置されるとともに先端が前記溶液中に突出した電極に、パルス状のマイクロ波を供給する工程と、
前記電極の先端で前記マイクロ波によりプラズマを励起させて、前記電極を破砕し、この破砕した前記電極の形成材料を金属ナノ粒子として前記担体に担持させる工程とを有した
ことを特徴とする金属担持物製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−58064(P2011−58064A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210313(P2009−210313)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(500036831)アリオス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】