説明

液体を塗布する方法及び装置、吸収性物品及びその製造方法

【課題】スパイラルスプレーの塗布開始時のフックを防止する。
【解決手段】液体を基材に塗布する液体塗布装置(1)において、液体吐出孔(15)と、液体吐出孔の周りに設けられ、液体吐出孔から吐出された液体のビードの外周囲に対しほぼ接するように加圧空気を噴射する複数の空気噴射孔(17)と、液体吐出孔からの液体の吐出の開始及び停止をおこなう弁体(31)と、複数の空気噴射孔から噴射される加圧空気の圧力を第一圧力と第一圧力より高い第二圧力との間で切り換える圧力切換装置(50)と、液体の吐出停止中に第一圧力で加圧空気を噴射し、液体の吐出開始と同時に又は液体の吐出開始から所定時間遅れて第二圧力で加圧空気を噴射するように圧力切換装置を制御する制御装置(63)とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を塗布する方法及び装置、吸収性物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御繊維化法を用いたスパイラルスプレーガンがある。スパイラルスプレーガンは、ホットメルトを1本の連続したビードとして吐出し、このビードにホットエアーを当てることにより、ホットメルトビードを引き伸ばして渦巻状に切れずにつながったファイバー状態で基材に塗布する。
【0003】
図6は、従来の液体塗布装置101を示す図である。液体塗布装置101は、液体としてのホットメルトを基材に塗布するスパイラルスプレーガン103を備えている。また、液体塗布装置101は、スパイラルスプレーガン103へホットメルトを供給するホットメルト供給系102と、ホットメルトの吐出を制御するための圧縮空気をスパイラルスプレーガン103へ供給する弁体作動空気供給系104と、ホットメルトファイバーに旋回運動を与えるホットエアーをスパイラルスプレーガン103へ供給するホットエアー供給系106とを備えている。
【0004】
スパイラルスプレーガン103は、ホットメルトバルブ105とスパイラルノズル107とを備えている。
スパイラルノズル107は、ホットメルト吐出孔108と、ホットメルト吐出孔108の回りに複数のホットエアー噴出孔110とを有する。ホットメルトは、ホットメルト吐出孔108から吐出され、ホットメルトビードを形成する。複数のホットエアー噴出孔110から噴出された加圧ホットエアーがホットメルトビードの外周囲に対しほぼ接するように、複数のホットエアー噴出孔110は方向づけがなされている。加圧ホットエアーは、ホットメルトビードを延伸してファイバー状にし、かつ延伸されたホットメルトファイバーに旋回運動を付与して、螺旋状スプレーパターン112を形成する。
【0005】
ホットメルト供給系102は、ホットメルトタンク109を備えている。ホットメルトは、ホットメルトタンク109からスパイラススプレーガン103のホットメルト入口111へ供給される。
【0006】
ホットメルトは、ホットメルト入口111からホットメルトバルブ105の内部に形成されたホットメルト室119へ送られる。ホットメルト室119の出口121には、弁座123が設けられている。弁体125は、弁座123と当接して出口121を閉じる閉位置と、弁座123から離れて出口121を開き、ホットメルト室119をホットメルト通路127へ連通させる開位置との間を移動できる。弁体125は、弁棒126の一端部に設けられている。弁棒126の他端部には、ピストン129が設けられている。ピストン129は、ホットメルトバルブ105の内部に形成されたシリンダ室131内で摺動可能である。
【0007】
弁体作動空気供給系104は、エアーレギュレーター133と電磁弁135とを備えている。圧縮空気は、エアーレギュレーター133により所定の圧力に調整されて電磁弁135へ送られる。圧力調整された圧縮空気は、電磁弁135が開いたときにホットメルトバルブ105の圧縮空気入口130を通してシリンダ室131へ送られる。これにより、圧縮空気がシリンダ室131内のピストン129を上方へ移動させ、弁棒126を上方へ移動させる。弁体125は、弁座123から離れて出口121を開く。ホットメルト室119のホットメルトは、出口121からホットメルト通路127を通り、ホットメルト通路127と連通しているホットメルト吐出孔108からホットメルトビードとして吐出される。
【0008】
電磁弁135が閉じられたときは、シリンダ室131への圧縮空気の供給が停止されるとともにシリンダ室131が大気へ開放される。これによって、ピストン129は、ホットメルトバルブ105の内部に設けられたスプリング137の付勢力により下方へ移動させられ、弁棒126を下方へ移動する。弁体125は、弁座123に当接して出口121を閉じ、ホットメルト吐出孔108からのホットメルトビードの吐出を停止する。
【0009】
ホットエアー供給系106は、エアーレギュレーター113とホットエアーマニホールド115とを備えている。圧縮空気は、エアーレギュレーター113により所定の圧力に調整されてホットエアーマニホールド115へ送られる。圧縮空気は、ホットエアーマニホールド115で加熱されて、加圧ホットエアーとして、ホットエアーマニホールド115からスパイラルスプレーガン103のホットエアー入口117へ供給される。加圧ホットエアーは、ホットエアー入口117からホットエアー通路139を通りホットエアー室141へ送られる。ホットエアー室141には、複数のホットエアー噴出孔110が連通しているので、加圧ホットエアーは、複数のホットエアー噴出孔110から噴出される。加圧ホットエアーは、ホットメルト吐出孔108から吐出されたホットメルトビードを延伸してファイバー状にし、かつ延伸されたホットメルトファイバーに旋回運動を付与して、螺旋状スプレーパターン112を形成する。
【0010】
従来の液体塗布装置101の動作を以下に説明する。
【0011】
液体塗布装置101が作動を開始すると、圧縮空気は、ホットエアー供給系106により所定の圧力に調整され且つ加熱されてホットエアー入口117へ常時供給される。これにより、加圧ホットエアーは、スパイラルノズル107に設けられた複数のホットエアー噴出孔110から常時噴射されている。このとき、複数のホットエアー噴出孔110から常時噴射されている加圧ホットエアーの流量は、所望の塗布幅Wを有する螺旋状塗布パターンを得るために、延伸されたホットメルトファイバーに十分な旋回運動を付与するのに必要な流量である。
【0012】
基材へのホットメルトの塗布を開始するために、電磁弁135が開かれると、圧縮空気がピストン129を上昇させ弁体125を弁座123から離し出口121を開ける。これにより、ホットメルト室119のホットメルトがホットメルト通路127を通りスパイラルノズル107のホットメルト吐出孔108から吐出される。
【0013】
ホットメルト吐出孔108から吐出されたホットメルトは、ホットメルトビードを形成する。複数のホットエアー噴出孔110から噴出された加圧ホットエアーは、ホットメルトビードの外周囲に対して接触する。ホットメルトビードは、加圧ホットエアーにより延伸されたホットメルトファイバー状になり、かつ延伸されたホットメルトファイバーに旋回運動を付与して、螺旋状スプレーパターン112を形成する。螺旋状スプレーパターン112は、スパイラルスプレーガン103に対して相対的に移動する基材上に付着して、螺旋状塗布パターンを形成する。
【0014】
このような従来の液体塗布装置101の他に、さらに、スパイラルスプレーによるフック現象を防止するための液体塗布方法及び装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の液体塗布装置は、加圧空気をホットメルトビードに接触させてホットメルトビードを延伸させてホットメルトファイバーにするためのエアー噴射孔に加えて、さらに、ホットメルト吐出孔に隣接して第2エアー噴射孔を設けている。ホットメルトビードがエアー噴射孔からの加圧空気と接触するのに先立って第2エアー噴射孔からの加圧空気をホットメルトビードに作用させることにより、フック現象を防止している。
【0015】
【特許文献1】特開平9−136053号公報(段落0012〜段落0014、図1、図6、図8、図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図6に示した従来の液体塗布装置101により螺旋状スプレーパターン112を形成し基材上に付着させると、塗布開始時にフックを生じる。
図7は、基材上に付着した螺旋状塗布パターンを示す図である。図7の(A)、(B)、及び(C)は、基材150上に付着した螺旋状塗布パターン151、153、及び155をそれぞれ示している。基材150は矢印Xで示す方向に搬送され、破線Pは塗布開始位置を示している。螺旋状塗布パターンは、所望の塗布幅Wを有する。
【0017】
塗布開始のときに、ホットメルト吐出孔108から吐出されたホットメルトビードの先端に、複数のホットエアー噴出孔110から噴出された加圧ホットエアーが接触すると、螺旋状スパイラルパターンを形成する前に、ホットメルトビードの先端は、予測不可能な方向へ吹き飛ばされる。このため、ホットメルトビードの先端は、基材150上の不特定の位置に付着してフックHA、HB、HCを生じる。
【0018】
図7の(A)において、フックHAは、所望の塗布幅Wの内側に存在するが、塗布開始位置Pから外側へ大きくはみ出している。
図7の(B)において、フックHBは、所望の塗布幅Wの上側に大きくはみ出すとともに、塗布開始位置Pからも外側へ大きくはみ出している。
図7の(C)において、フックHCは、所望の塗布幅Wの下側に大きくはみ出すとともに、塗布開始位置Pからも外側へ大きくはみ出している。
【0019】
このように、塗布開始のときにスパイラルスプレーノズル107から吐出されたホットメルトビードの先端は、旋回を開始する前に、期待するパターンの塗布開始位置P及び期待するパターンの塗布幅Wから大きく外れた位置に付着する。そして、その付着する位置は定まらず、予測不可能であり、塗布開始ごとに異なる。フックは、期待する塗布幅W内に存在することもあるが、塗布幅Wの5倍程度離れた位置に付着することもある。
【0020】
その結果、必要としない位置にホットメルトが塗布されるため、製品不良を発生したり、製造機械を汚して生産性を低下させたりする。また、フック状のホットメルトビード先端は、螺旋状スパイラルパターンを形成するホットメルトファイバー直径の3〜10倍の幅を有する塊(涙状の滴、大粒のボタ落ち)となるため、大きな塊となったホットメルトビードの保有熱が製品を溶かして穴を開けたり、製品の均一性を失わせたり、製品表面の風合いを損なったり、接着強度が強すぎたりする。
【0021】
本発明は、スパイラルスプレーにおける塗布開始時のフックを防止することができる液体塗布方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述した課題を解決する為に本発明では次のような方法とした。
すなわち、液体を基材に塗布する方法において、
複数の空気噴射孔から第一圧力で加圧空気を噴射する第一噴射工程と、
液体吐出孔から液体をビード状に吐出する吐出工程と、
前記複数の空気噴射孔から前記第一圧力よりも高い第二圧力で液体ビードに接触するように加圧空気を噴射する第二噴射工程とを設け、
前記吐出工程の開始と同時に又は前記吐出工程の開始から所定時間遅れて前記第二噴射工程を開始することにより、液体ビードの先端に前記第一圧力で加圧空気を接触させ、その後、前記第二圧力で加圧空気を液体ビードに接触させ延伸して液体ファイバーにし、且つ、液体ファイバーに旋回運動を与えることにより、基材上に液体の螺旋状塗布パターンを塗布する方法とした。
【0023】
また、本発明では次のような液体塗布装置とした。
すなわち、液体を基材に塗布する液体塗布装置(1)において、
液体吐出孔(15)と、
前記液体吐出孔の周りに設けられ、前記液体吐出孔から吐出された液体のビードの外周囲に対しほぼ接するように加圧空気を噴射する複数の空気噴射孔(17)と、
前記液体吐出孔からの液体の吐出の開始及び停止をおこなう弁体(31)と、
前記複数の空気噴射孔から噴射される加圧空気の圧力を第一圧力と第一圧力より高い第二圧力との間で切り換える圧力切換装置(50)と、
液体の吐出停止中に第一圧力で加圧空気を噴射し、液体の吐出開始と同時に又は液体の吐出開始から所定時間遅れて第二圧力で加圧空気を噴射するように前記圧力切換装置を制御する制御装置(63)とを設けた。
【0024】
また、本発明では次のような吸収性物品の製造方法とした。
すなわち、吸収性物品の製造方法において、
吸収性基材を所定方向に搬送する搬送工程と、
複数の空気噴射孔から第一圧力で加圧空気を噴射する第一噴射工程と、
液体吐出孔から液体をビード状に吐出する吐出工程と、
前記複数の空気噴射孔から前記第一圧力よりも高い第二圧力で液体ビードに接触するように加圧空気を噴射する第二噴射工程と、
前記吐出工程の開始と同時に又は前記吐出工程の開始から所定時間遅れて前記第二噴射工程を開始することにより、液体ビードの先端に前記第一圧力で加圧空気を接触させ、その後、前記第二圧力で加圧空気を液体ビードに接触させ延伸して液体ファイバーにし、且つ、液体ファイバーに旋回運動を与えることにより、搬送されている吸収性基材上に液体の螺旋状塗布パターンを付着させて吸収性物品を製造する工程とを設けた。
【0025】
また、本発明では上記製造方法により製造された吸収性物品を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、スパイラルスプレーの塗布開始時のフックを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の液体塗布装置1を示す図である。液体塗布装置1は、液体としてのホットメルトを基材に塗布するスパイラルスプレーガン3を備えている。また、液体塗布装置1は、スパイラルスプレーガン3へホットメルトを供給するホットメルト供給系5と、ホットメルトの吐出を制御するための圧縮空気をスパイラルスプレーガン3へ供給する弁体作動空気供給系7と、ホットメルトファイバーに旋回運動を与えるホットエアーをスパイラルスプレーガン3へ供給するホットエアー供給系9とを備えている。
【0029】
スパイラルスプレーガン3は、ホットメルトバルブ11とスパイラルノズル13とを備えている。
スパイラルノズル13は、液体吐出孔としてのホットメルト吐出孔15と、ホットメルト吐出孔15の周りに複数の空気噴射孔としてのホットエアー噴出孔17とを有する。ホットメルトは、ホットメルト吐出孔15から吐出され、ホットメルトビードを形成する。複数のホットエアー噴出孔17から噴出された加圧ホットエアーがホットメルトビードの外周囲に対しほぼ接するように、複数のホットエアー噴出孔17は方向づけがなされている。加圧ホットエアーは、ホットメルトビードを延伸してファイバー状にし、かつ延伸されたホットメルトファイバーに旋回運動を付与して、螺旋状スプレーパターン19を形成する。
【0030】
ホットメルト供給系5は、ホットメルトタンク21を備えている。ホットメルトは、ホットメルトタンク21からスパイラルスプレーガン3のホットメルト入口23へ供給される。
【0031】
ホットメルトは、ホットメルト入口23からホットメルトバルブ11の内部に形成されたホットメルト室25へ送られる。ホットメルト室25の出口27には、弁座29が設けられている。弁体31は、弁座29と当接して出口27を閉じる閉位置と、弁座29から離れて出口27を開き、ホットメルト室25をホットメルト通路33へ連通させる開位置との間を移動できる。弁体31は、弁棒35の一端部に設けられている。弁棒35の他端部には、ピストン37が設けられている。ピストン37は、ホットメルトバルブ11の内部に形成されたシリンダ室39内で摺動可能である。
【0032】
弁体作動空気供給系7は、エアーレギュレーター41と電磁弁43とを備えている。圧縮空気は、エアーレギュレーター41により所定の圧力に調整されて電磁弁43へ送られる。圧力調整された圧縮空気は、電磁弁43が開いたときにホットメルトバルブ11の圧縮空気入口45を通してシリンダ室39へ送られる。これにより、圧縮空気がシリンダ室39内のピストン37を上方へ移動させ、弁棒35を上方へ移動させる。弁体31は、弁座29から離れて出口27を開く。ホットメルト室25のホットメルトは、出口27からホットメルト通路33を通り、ホットメルト通路33と連通しているホットメルト吐出孔15からホットメルトビードとして吐出される。
【0033】
電磁弁43が閉じられたときは、シリンダ室39への圧縮空気の供給が停止されるとともにシリンダ室39が大気へ開放される。これによって、ピストン37は、ホットメルトバルブ11の内部に設けられたスプリング47の付勢力により下方へ移動させられ、弁棒35を下方へ移動する。弁体31は、弁座29に当接して出口27を閉じ、ホットメルト吐出孔15からのホットメルトビードの吐出を停止する。
【0034】
ホットエアー供給系9は、エアーレギュレーター49、絞り弁51、電磁弁53、及びホットエアーマニホールド55とを備えている。圧縮空気は、エアーレギュレーター49により所定の圧力に調整される。圧力調整された圧縮空気は、絞り弁51と電磁弁53とへ送られる。絞り弁51は、可変絞り弁として示されているが固定絞り弁であってもよい。
【0035】
絞り弁51は、電磁弁53が閉じられているときに、エアーレギュレーター49から絞り弁51を通してホットエアーマニホールド55へ流れる圧縮空気の流量を第一所定流量に調整する。
電磁弁53が開くと、エアーレギュレーター49から絞り弁51及び電磁弁53を通してホットエアーマニホールド55へ流れる圧縮空気の流量が第二所定流量になる。
【0036】
圧縮空気は、ホットエアーマニホールド55で加熱されて、加圧ホットエアーとして、ホットエアーマニホールド55からスパイラルスプレーガン3のホットエアー入口57へ供給される。加圧ホットエアーは、ホットエアー入口57からホットエアー通路59を通りホットエアー室61へ送られる。ホットエアー室61には、複数のホットエアー噴出孔17が連通しているので、加圧ホットエアーは、複数のホットエアー噴出孔17から噴出される。加圧ホットエアーは、ホットメルト吐出孔15から吐出されたホットメルトビードを延伸してファイバー状にし、かつ延伸されたホットメルトファイバーに旋回運動を付与して、螺旋状スプレーパターン19を形成する。
【0037】
絞り弁51及び電磁弁53は、ホットエアーマニホールド55の入口付近Mの圧力を切り換える圧力切換装置50を構成する。圧力切換装置50は、入口付近Mにおける圧縮空気の圧力を切り換えることによって、複数のホットエアー噴出孔17から噴出される加圧ホットエアーの流量を変えることができる。
【0038】
電磁弁53が閉じられているときは、絞り弁51がエアーレギュレーター49からホットエアーマニホールド55へ流れる圧縮空気を絞り、ホットエアーマニホールド55の入口付近Mの圧力を第一所定圧力にする。これにより、複数のホットエアー噴出孔17から噴出される加圧ホットエアーの流量を第一所定流量にする。第一所定流量の加圧ホットエアーは、ホットメルト吐出孔15から吐出されたホットメルトビードを延伸してファイバー状にし、且つ、延伸されたホットメルトファイバーに小さな旋回運動を付与する。この小さな旋回運動の直径は、基材に付着させる螺旋状塗布パターンの所望の塗布幅Wよりかなり小さく、約二分の一以下であるとよい。好ましくは、約三分の一以下、約四分の一以下、又は約五分の一以下の直径である。第一所定流量が大きいと、ホットメルトファイバーの旋回運動が大きくなるためフックを生ずる。一方、第一所定流量が小さすぎると、ホットメルトファイバーに旋回運動が与えられないために、ホットメルトファイバーの先端の塊が大きくなってしまう。
【0039】
一方、電磁弁53が開くと、電磁弁53は、エアーレギュレーター49から電磁弁53を通りホットエアーマニホールド55へ流れる圧縮空気の流れを許可するので、ホットエアーマニホールド55の入口付近Mの圧力が第二所定圧力になる。これにより、複数のホットエアー噴出孔17から噴出される加圧ホットエアーの流量が第二所定流量になる。第二所定流量の加圧ホットエアーは、ホットメルト吐出孔15から吐出されたホットメルトビードを延伸してファイバー状にし、かつ延伸されたホットメルトファイバーに旋回運動を付与して、所望の螺旋状スプレーパターン19を形成する。所望の螺旋状スプレーパターン19は、基材に付着すると、所望の塗布幅Wを有する螺旋状塗布パターンを形成する。
【0040】
第二所定圧力は、第一所定圧力よりも大きい。第二所定圧力は、所望の塗布幅Wを有する螺旋状塗布パターンを得るために、延伸されたホットメルトファイバーに十分な旋回運動を付与することができる加圧ホットエアーの流量(本実施例においては、第二所定流量)を得るのに必要な圧力である。第一所定圧力は、第二所定圧力の約二分の一から約四分の一程度がよく、好ましくは、約三分の一程度である。
【0041】
電磁弁43及び電磁弁53は、制御装置63に電気的に接続されている。制御装置63は、電磁弁43の開閉及び電磁弁53の開閉を制御する。
【0042】
図2は、基材上に付着した螺旋状塗布パターンの一例を概念的に示す図である。基材65は、矢印Xで示す方向に搬送された。破線Pは、塗布開始位置を示している。基材65上に付着した螺旋状塗布パターン67は、所望の塗布幅Wを有している。
螺旋状塗布パターン67の先端67LEは、所望の塗布幅Wの範囲内に収まり、且つ、塗布開始位置Pからはみ出してもいない。すなわち、フックの発生を防止することができた。
【0043】
本発明の液体塗布装置1の動作を以下に説明する。
【0044】
図3は、実施例1におけるホットメルトの吐出の開始及び停止とホットエアーの噴射の開始及び停止を示すタイムチャートである。
【0045】
液体塗布装置1が作動を開始すると、圧縮空気は、エアーレギュレーター49により所定の圧力に調整され絞り弁51へ供給される。このとき、電磁弁53は閉じているので、圧縮空気は、絞り弁51により絞られて、ホットエアーマニホールド55の入口付近Mの圧力は第一所定圧力に維持される。本実施例において、第一所定圧力は、0.012MPaに設定した。これにより、加圧ホットエアーは、スパイラルノズル13に設けられた複数のホットエアー噴出孔17から第一所定流量で噴射されている(第一噴射工程)。
【0046】
基材へのホットメルトの塗布を開始するために、制御装置63は、弁体作動空気供給系7の電磁弁43とホットエアー供給系9の電磁弁53とを図3の時間T1で同時に開く。
【0047】
電磁弁43が開かれると、圧縮空気がピストン37を上昇させ弁体31を弁座29から離し出口27を開ける。これにより、ホットメルト室25のホットメルトがホットメルト通路33を通りスパイラルノズル13のホットメルト吐出孔15から吐出される(吐出工程)。ホットメルト吐出孔15から吐出されたホットメルトは、ホットメルトビードを形成する。複数のホットエアー噴出孔17から噴出された加圧ホットエアーは、ホットメルトビードの外周囲に対して接触する。このとき、複数のホットエアー噴出孔17から噴出される加圧ホットエアーの流量は、まだ、第一所定流量であるか、あるいかは、第一所定流量よりもわずかに大きな流量である。したがって、ホットメルトビードは、加圧ホットエアーにより延伸されてホットメルトファイバー状になるが、延伸されたホットメルトファイバーに付与する旋回運動は小さい。これによって、ホットメルトビードの先端が不所望の方向へ大きく吹き飛ばされることを防止するとともに、ホットメルトビードを延伸してホットメルトファイバー状にすることができる。
【0048】
弁体作動空気供給系7の電磁弁43が開くのと同時にホットエアー供給系9の電磁弁53が開かれると、電磁弁53は、エアーレギュレーター49から電磁弁53を通りホットエアーマニホールド55へ流れる圧縮空気の流れを許可するので、ホットエアーマニホールド55の入口付近Mの圧力が第二所定圧力になる。本実施例において、第二所定圧力は、0.031MPaに設定した。これにより、加圧ホットエアーは、スパイラルノズル13に設けられた複数のホットエアー噴出孔17から第二所定流量で噴射される(第二噴射工程)。
【0049】
弁体作動空気供給系7の電磁弁43及びホットエアー供給系9の電磁弁53は、図3の時間T1で同時に開かれるが、第二所定流量の加圧ホットエアーがホットメルトビードに接触するのは、第一所定流量の加圧ホットエアーがホットメルトビードの先端に接触した後である。したがって、第二所定流量の加圧ホットエアーがホットメルトビードに接触しても、ホットメルトビードの先端が不所望の方向へ大きく吹き飛ばされることがない。第二所定流量の加圧ホットエアーは、ホットメルト吐出孔15から吐出されるホットメルトビードを延伸してファイバー状にし、かつ延伸されたホットメルトファイバーに旋回運動を付与して、所望の螺旋状スプレーパターン19を形成する。これによって、スパイラルスプレーガン3に対して相対的に移動する基材上に、所望の塗布幅Wを有する螺旋状塗布パターンを形成する。
【0050】
実施例1においては、弁体作動空気供給系7の電磁弁43及びホットエアー供給系9の電磁弁53を図3の時間T2で同時に閉じる。
【0051】
本実施例によれば、スパイラルスプレーの塗布開始時のフックの発生を防止することができる。そして、フックが減ることにより、ホットメルトの使用量を削減することができる。また、フックにともなう装置の汚れを防ぐことができるので、装置の維持管理を簡略にすることができる。
さらに、実施例によれば、ホットメルトの吐出を停止している間、空気流量を従来の三分の一程度に減らしているので、空気使用量を大幅に削減することができる。
本実施例によれば、塗布開始時のホットメルトビード先端の塊を小さくすることができるので、ホットメルトビードの保有熱で基材を溶かすことを防止することができる。したがって、従来よりも厚さの薄い基材にホットメルトビードを塗布することができる。
【実施例2】
【0052】
実施例2は、図1に示した実施例1の構成と同じ構成である。実施例1と異なる点は、制御装置63による弁体作動空気供給系7の電磁弁43及びホットエアー供給系9の電磁弁53の開閉タイミングである。
【0053】
図4は、実施例2におけるホットメルトの吐出の開始及び停止とホットエアーの噴射の開始及び停止を示すタイムチャートである。
【0054】
実施例1において、制御装置63は、弁体作動空気供給系7の電磁弁43とホットエアー供給系9の電磁弁53とを図3の時間T1で同時に開いた。実施例2においては、弁体作動空気供給系7の電磁弁43を開く時間T1に対して、ホットエアー供給系9の電磁弁53を開く時間T3を時間Tdだけ遅らせている。本実施例において、遅れ時間Tdは、5ミリ秒に設定した。これにより、フックを発生しない良好な螺旋状塗布パターンを得ることができた。
【0055】
実施例2においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0056】
遅れ時間Tdは、液体塗布装置の構成により異なるが、0ミリ秒から100ミリ秒の範囲内である。通常、0ミリ秒〜5ミリ秒、あるいは、0ミリ秒〜10ミリ秒がよい。遅れ時間Tdは、ホットエアー供給系9の電磁弁53からスパイラルノズル13のホットエアー噴出孔17までの長さ、ホットエアーマニホールド55の容積、ホットエアー室61の容積、スパイラルノズル13と基材との間の距離などのパラメータに応じて異なる。
【0057】
ホットメルト吐出孔15から吐出されたホットメルトビードの先端が、まず、第一所定流量の加圧ホットエアーと接触して延伸され、且つ小さな旋回運動を与えられ、その後、ホットメルトビードの先端が基材に付着する前に第二所定流量の加圧ホットエアーがホットメルトビードと接触して延伸させてホットメルトファイバーとし、延伸させたホットメルトファイバーを所望の螺旋スプレーパターンにするとよい。
【0058】
ホットメルトビードの先端が第一所定流量の加圧ホットエアーと接触せずにいきなり第二所定流量の加圧ホットエアーと接触すると、ホットメルトビードの先端が不所望の方向へ吹き飛ばされてフックを生じてしまう。一方、ホットメルトビードの先端が基材に付着した後に第二所定流量の加圧ホットエアーがホットメルトビードと接触しても、ホットメルトビードは、最初に基材に付着した先端に引っ張られて大きな塊をつくるおそれがある。
【0059】
そこで、ホットメルトビードの先端が、まず、第一所定流量の加圧ホットエアーと接触し、その後、ホットメルトビードの先端が基材に付着する前に第二所定流量の加圧ホットエアーがホットメルトビードに接触するように、遅れ時間Tdを設定するとよい。しかし、液体塗布装置の構成によっては、上記パラメータの影響により、ホットエアー供給系9の電磁弁53を開いた後、ホットエアー噴射孔17から噴射される加圧ホットエアーの流量が第二所定流量に達するまでにある程度時間を要することもある。その場合には、逆に、ホットエアー供給系9の電磁弁53を先に開き、その後、弁体作動空気供給系7の電磁弁43を開くという設定にする必要がある。
【実施例3】
【0060】
図5は、本発明の実施例3による液体塗布装置を示す図である。図1に示した液体塗布装置1においては、制御装置63が弁体作動空気供給系7の電磁弁43の開閉及びホットエアー供給系9の電磁弁53の開閉を制御することとした。これに対して、実施例3の液体塗布装置81においては、ホットエアー供給系9の電磁弁53を、空気駆動により弁が切り替わるスプールバルブ型切替弁73に交換して、弁体作動空気供給系7の電磁弁43からの圧縮空気によりスプールバルブ型切替弁73を開閉させることとした。これにより、制御装置63から電磁弁53へ至る電気配線が不要となり、制御系の構成が簡略になる。
【0061】
図5を参照して、弁体作動空気供給系7の電磁弁43とホットメルトバルブ11の圧縮空気入口45とを結ぶ通路71に、スプールバルブ型切替弁73に連通する通路72が接続されている。電磁弁43は、制御装置70に電気的に接続されている。制御装置70は、電磁弁43の開閉を制御する。
【0062】
基材へのホットメルトの塗布を開始するために、制御装置70は、弁体作動空気供給系7の電磁弁43を開く。電磁弁43が開かれると、圧縮空気が通路71を通りシリンダ室38へ送られて弁体31を上昇させてホットメルトの吐出を開始する。同時に、圧縮空気は、通路71から通路72を通りスプールバルブ型切替弁73を開く。これにより、ホットエアーマニホールド55の入口付近Mの圧力が第一所定圧力から第二所定圧力へ上昇し、ホットエアー噴出孔17から第二所定流量で加圧ホットエアーの噴出を開始する。ホットエアーマニホールド55の内部流路は長いので、ホットエアー噴出孔17からの加圧ホットエアーが第一所定流量から第二所定流量へ上昇するのは、ホットメルト吐出孔15からのホットメルトの吐出開始よりわずかに遅れる。これにより、フックのない螺旋状塗布パターンを基材上に形成することができる。
【実施例4】
【0063】
実施例1乃至実施例3に示した液体塗布方法を用いて、ホットメルト接着剤を吸収性基材に塗布し、吸収性物品を製造することができる。本方法により製造した吸収性物品は、製品表面の風合いがよく、使用感もよい。吸収性物品としては、ナプキン、オムツ製品、ペットケアー製品などがある。
【0064】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その特徴事項から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の液体塗布装置を示す図。
【図2】基材上に付着した螺旋状塗布パターンの一例を概念的に示す図。
【図3】実施例1におけるホットメルトの吐出の開始及び停止とホットエアーの噴射の開始及び停止を示すタイムチャート。
【図4】実施例2におけるホットメルトの吐出の開始及び停止とホットエアーの噴射の開始及び停止を示すタイムチャート。
【図5】本発明の実施例3による液体塗布装置を示す図。
【図6】従来の液体塗布装置を示す図。
【図7】基材上に付着した螺旋状塗布パターンを示す図。
【符号の説明】
【0066】
1 液体塗布装置
3 スパイラルスプレーガン
5 ホットメルト供給系
7 弁体作動空気供給系
9 ホットエアー供給系
11 ホットメルトバルブ
13 スパイラルノズル
15 ホットメルト吐出孔(液体吐出孔)
17 ホットエアー噴射孔(空気噴射孔)
19 螺旋状スプレーパターン
21 ホットメルトタンク
23 ホットメルト入口
25 ホットメルト室
27 出口
29 弁座
31 弁体
33 ホットメルト通路33
35 弁棒
37 ピストン
39 シリンダ室
41 エアーレギュレーター
43 電磁弁
45 圧縮空気入口
47 スプリング
49 エアーレギュレータ
50 圧力切換装置
51 絞り弁
53 電磁弁
55 ホットエアーマニホールド
57 ホットエアー入口
59 ホットエアー通路
61 ホットエアー室
63 制御装置
65 基材
67 螺旋状塗布パターン
67LE 先端
70 制御装置
71 通路
72 通路
73 スプールバルブ型切替弁
81 液体塗布装置
W 塗布幅
P 塗布開始位置
T1 開始時間
T2 停止時間
T3 開始時間
Td 遅れ時間
HA フック
HB フック
HC フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を基材に塗布する方法であって、
複数の空気噴射孔から第一圧力で加圧空気を噴射する第一噴射工程と、
液体吐出孔から液体をビード状に吐出する吐出工程と、
前記複数の空気噴射孔から前記第一圧力よりも高い第二圧力で液体ビードに接触するように加圧空気を噴射する第二噴射工程とを含み、
前記吐出工程の開始と同時に又は前記吐出工程の開始から所定時間遅れて前記第二噴射工程を開始することにより、液体ビードの先端に前記第一圧力で加圧空気を接触させ、その後、前記第二圧力で加圧空気を液体ビードに接触させ延伸して液体ファイバーにし、且つ、液体ファイバーに旋回運動を与えることにより、基材上に液体の螺旋状塗布パターンを塗布することを特徴とする方法。
【請求項2】
液体を基材に塗布する液体塗布装置であって、
液体吐出孔と、
前記液体吐出孔の周りに設けられ、前記液体吐出孔から吐出された液体のビードの外周囲に対しほぼ接するように加圧空気を噴射する複数の空気噴射孔と、
前記液体吐出孔からの液体の吐出の開始及び停止をおこなう弁体と、
前記複数の空気噴射孔から噴射される加圧空気の圧力を第一圧力と第一圧力より高い第二圧力との間で切り換える圧力切換装置と、
液体の吐出停止中に第一圧力で加圧空気を噴射し、液体の吐出開始と同時に又は液体の吐出開始から所定時間遅れて第二圧力で加圧空気を噴射するように前記圧力切換装置を制御する制御装置とを含む液体塗布装置。
【請求項3】
吸収性物品の製造方法であって、
吸収性基材を所定方向に搬送する搬送工程と、
複数の空気噴射孔から第一圧力で加圧空気を噴射する第一噴射工程と、
液体吐出孔から液体をビード状に吐出する吐出工程と、
前記複数の空気噴射孔から前記第一圧力よりも高い第二圧力で液体ビードに接触するように加圧空気を噴射する第二噴射工程と、
前記吐出工程の開始と同時に又は前記吐出工程の開始から所定時間遅れて前記第二噴射工程を開始することにより、液体ビードの先端に前記第一圧力で加圧空気を接触させ、その後、前記第二圧力で加圧空気を液体ビードに接触させ延伸して液体ファイバーにし、且つ、液体ファイバーに旋回運動を与えることにより、搬送されている吸収性基材上に液体の螺旋状塗布パターンを付着させて吸収性物品を製造する工程とを含む製造方法。
【請求項4】
請求項3の製造方法により製造された吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−95687(P2009−95687A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266576(P2007−266576)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】