説明

液体供給ヘッド

【課題】液体の大気接触を抑制するとともに、液体の飛散を抑制する。
【解決手段】両端が閉じられた樋形状で、一方の側面に液体の注入口を、他方の側面に液体の供給口を、それぞれ有する本体と、本体の供給口に連設され、供給口から流出する液体を傾斜面に沿って流下させる傾斜板と、本体内に注入口と供給口とを仕切るように本体の長手方向に沿って配置された整流板とを備え、整流板により、本体の注入口から注入された液体を本体の長手方向に沿って流動させるとともに、上辺と下辺とのいずれか一方から液体を迂回させて供給口に誘導するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給ヘッドに関し、さらに詳しくは、例えばプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」と記す)用の平面ガラス基板のような処理対象に対し、ウエット処理の際に用いられる洗浄液、現像液、エッチング液のような薬液を注ぎかけるために主として用いられる液体供給ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばPDPでは、平面ガラス基板に電極を形成する場合、基板全体に導電膜を形成し、その後、レジストを塗布してレジストのパターニングを行い、レジストのない導電膜部分をエッチングで除去することにより、平面ガラス基板の所望の位置に電極を形成するようにしている。
【0003】
上記の工程においては、レジストのパターニングの際には平面ガラス基板に現像液を注ぎかける。また、エッチングの際には平面ガラス基板にエッチング液を注ぎかける。
【0004】
したがって、PDPのような薄型平面パネルの製造工程では、上述した現像液やエッチング液のような各種の薬液を平面ガラス基板に注ぎかけるための液体供給装置が用いられている。そして、このような液体供給装置の液体供給ヘッドは、ノズルタイプ、スリットタイプなど、様々な構造のものが知られている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−207403号公報
【特許文献2】特開2005−15913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した現像液やエッチング液のような薬液は、大気と接触すると劣化しやすい。また、薬液の供給口やその位置に起因して、薬液が処理チャンバ内で液状あるいはミスト状に飛散したり、薬液の揮発成分が飛散する状況で使用される。
【0007】
したがって、このような薬液については、薬液の劣化に伴って加工精度が低下したり、劣化を補うための薬液コストが高くなるという問題がある。また、薬液が液状あるいはミスト状に飛散することにより、薬液が処理チャンバ外へ漏洩する機会が増え、作業環境悪化、設備稼働率低下の一因となる。
【0008】
このため、薬液の劣化を防止でき、かつ薬液が処理チャンバ内で飛散しないような液体供給ヘッドの出現が望まれていた。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、本体に液体の整流板を内装するとともに、液体の供給口を水平な一定幅の開口とし、この供給口から液体の処理対象まで液体が飛散せずかつ均一に処理対象に流下するように傾斜板を設けることで、液体の大気接触を抑制するとともに、液体の飛散を抑制するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、両端が閉じられた樋形状で、一方の側面に液体の注入口を、他方の側面に液体の供給口を、それぞれ有する本体と、本体の供給口に連設され、供給口から流出する液体を傾斜面に沿って流下させる傾斜板と、本体内に注入口と供給口とを仕切るように本体の長手方向に沿って配置された整流板とを備え、整流板は、本体の注入口から注入された液体を本体の長手方向に沿って流動させるとともに、上辺と下辺とのいずれか一方から液体を迂回させて供給口に誘導してなる液体供給ヘッドである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体が薬液である場合には、薬液の大気接触を抑制して、薬液の劣化を防止することができる。また、薬液の飛散や漏洩を防止することができるので、それに起因する作業環境の悪化、および設備稼働率の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の液体供給ヘッドは、現像液やエッチング液のような各種の薬液を処理対象に供給するために主として用いられるが、薬液に限定されず、あらゆる種類の液体に利用可能である。
【0013】
本体は、両端が閉じられた樋形状で、一方の側面に液体の注入口を、他方の側面に液体の供給口を、それぞれ有するものであればよい。本体の断面形状は、半円形、矩形、台形、三角形など、どのような形状であってもよい。注入口は、少なくとも1つあればよいが、液体を本体の長手方向に均等に行き渡らせるためには、本体の長手方向に沿って多数設けることが望ましい。供給口は、液体が一定の流量で間断なく供給口から流出する際でも供給口が塞がれない程度の幅を有していることが望ましい。また、供給口は、本体の長手方向全体にわたって一定の幅で切れ目なく形成されていることが望ましい。この供給口は、液体の落下方向に向けて配置されていてもよい。
【0014】
傾斜板は、本体の供給口に連設され、供給口から流出する液体を傾斜面に沿って流下させることができるものであればよい。この傾斜板は、傾斜板上を液体が流下する際の液体流下端面が鋭利に形成されていることが望ましい。傾斜板は、たとえば液体が薬液である場合には、その薬液に対して耐薬品性を有していればよく、加工の容易性の点からは、塩化ビニルのような樹脂で形成することが望ましい。
【0015】
整流板は、本体内に注入口と供給口とを仕切るように本体の長手方向に沿って配置されていればよい。この整流板は、長手方向に沿う上辺と下辺とのいずれか一方が本体に当接するように取り付けられ、本体の注入口から注入された液体を本体の長手方向に沿って流動させるとともに、上辺と下辺とのいずれか他方から液体を迂回させて供給口に誘導する機能を有していればよい。整流板は、複数の整流板から構成されていてもよい。
【0016】
上記構成においては、本体を長手方向に水平に支持可能な支持部をさらに備えていてもよい。この支持部は、本体の複数箇所をそれぞれ支持する複数の支持棒と、それらの複数の支持棒をそれぞれネジで取り付けることによって本体の水平度を調整することが可能な支持板から構成することが望ましい。この場合、支持部は、本体を、伏せた状態で搬送される処理対象の平面基板に対し平面基板の平面に平行で、かつその長手方向が平面基板の搬送方向に対して交差するように配置可能であることが望ましい。さらに支持部は、本体の複数箇所をそれぞれ支持する複数の支持棒に取り付けたネジを調整することで、傾斜板と伏せた状態で搬送される平面基板との間隔を調整できることが望ましい。
【0017】
上記の平面基板としては、ガラス、石英、セラミック等の基板や、これらの基板上に、電極、絶縁膜、誘電体層、保護膜等の所望の構成物を形成した基板が含まれる。
【0018】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳述する。なお、本発明はこれによって限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【0019】
実施形態1
図1は本発明の実施形態1の液体供給ヘッドの構成を示す斜視図である。
図において、Gは処理対象であり、例えばPDPのような薄型平面パネルに用いられる平面ガラス基板である。本実施形態では、処理対象Gをガラス基板Gとして説明する。ガラス基板Gは、図中矢印Fで示す方向に搬送される。Fで示した方向については、左右どちらに搬送されてもよいが、揺動するのではなく、いずれか一方の方向に継続的に搬送される。
【0020】
1は液体供給ヘッドである。液体供給ヘッド1は、筒状の本体2、整流板3、傾斜板4、支持棒5、支持板6から構成されている。
【0021】
筒状の本体2は断面が矩形である。本体2は上板が支持棒5で支持されている。支持棒5は支持板6にネジで取り付けられており、支持棒5のネジを調整することで本体2の水平度を調整することができる。さらに、支持棒5のネジを調整することで、傾斜板4とガラス基板Gとの間隔Kを調整することもできる。
【0022】
本体2の一方の側面には薬液の注入口(図示していない)が設けられており、他方の側面にはスリット状の供給口(開口)2aが設けられている。供給口2aの下方には傾斜板4が取り付けられている。
【0023】
液体供給ヘッド1は、傾斜板4とガラス基板Gとの距離が一定の間隔Kとなるような位置に支持されている。
【0024】
薬液の注入口にはホース7が接続されており、本体2へはホース7から薬液が供給される。
【0025】
本体2の長手方向の端面は、図では内部が見やすいように開口となっているが、実際は平板(側板)で閉じられている。
【0026】
本体2の内部には整流板3が設けられている。整流板3は上辺が本体2の上板に固定され、下辺と下板との間に隙間が設けられている。整流板3は注入口から注入された薬液の流勢を阻止して、薬液を本体2の長手方向に沿って流動させ、それにより薬液が本体2の長手方向に均一に行き渡るようにする役目を持っている。
【0027】
ホース7から送られてきた薬液は、注入口から本体2内に入り、整流板3で阻止されて、図中矢印Lで示すように整流板3の下方を迂回して、供給口2aから流出し、傾斜板4の上を流れて、矢印Mで示すようにガラス基板Gに注ぎかけられる。
【0028】
図2は本体の断面を示す拡大図である。
この図に示すように、薬液は、矢印Lで示すように、注入口2bから本体2内に注入され、整流板3で整流され、整流板3の下方を迂回して供給口2aから流出し、傾斜板4に沿って自然流下し、ガラス基板に注ぎかけられる。
【0029】
現像液やエッチング液のような薬液は、ガラス基板全体に行き渡るように、ガラス基板に対して均等に注ぎかける必要があるが、整流板3の整流作用により、薬液の流量が均一化され、薬液をガラス基板に対して均等に注ぎかけることができる。
【0030】
傾斜板4の傾斜角度θは、薬液の流量、傾斜板の長さとの兼ね合いによって、0〜90度の範囲で任意に設定可能であるが、液供給均一性と液飛散防止効果をより高めるためには、10〜60度の範囲に設定することが望ましい。
【0031】
図3は傾斜板の先端を示す説明図である。
傾斜板4の先端4aは、液垂れ防止のために先端4aの角度αが90度未満になるように加工している。この先端4aの角度αは、傾斜板4の傾斜角度θ未満に設定することが望ましい。
【0032】
この液垂れ防止構造により、ガラス基板への薬液供給の均一性を確保し、加工精度の向上を図っている。また、この構造は、処理の停止などで薬液が流れないときの析出物発生防止に有効であり、析出物によるガラス基板のキズを防止することができ、そのメンテナンス機会を軽減することができる。
【0033】
本体2、整流板3、傾斜板4、支持棒5、支持板6は、使用する薬液に対して耐性を持つものであれば、どのような材料を用いて作製されてもよいが、通常は金属あるいは樹脂で作製される。傾斜板については、加工性が良好である点を考慮して塩化ビニルを用いて作製している。
【0034】
液体供給ヘッドの実際の寸法としては、本体2を平面的に見た場合の長手方向の長さは1500mm、短手方向の長さ(幅)は100mm、液体供給ヘッド1の高さK(ガラス基板Gまでの距離)は50mm程度にそれぞれ設定する。液体供給ヘッド1の高さは、薬液が飛散しない範囲(5〜100mmの範囲)で適宜設定してよい。
【0035】
薬液としては、たとえばCr、Al、Cuのような金属電極を形成する際に用いられる塩酸、リン酸、塩化第二鉄、塩化第二銅などを含む酸性水溶液、または過マンガン酸カリウムを含む水溶液、アルカリ性水溶液、などのエッチング液を適用することができる。この場合、薬液の液温は30〜40℃程度、液量は20〜40リットル/分程度に設定する。
【0036】
ガラス基板Gのサイズは1500×1000mm程度までの大きさのものを適用することができる。この場合、ガラス基板の搬送速度は1800mm/分程度に設定する。搬送速度は1000〜15000mm/分の範囲で適宜設定してよい。
【0037】
実施形態2
図4は本発明の実施形態2の構成を示す説明図である。
本実施形態は、本体2の供給口2aが下向きの例である。この下向きの供給口2aから傾斜板4に薬液を供給する。このように、傾斜板4に薬液を供給する供給口2aは横方向に限定されず、下方向であってもよい。
【0038】
実施形態3
図5は本発明の実施形態3の構成を示す説明図である。
本実施形態は、整流板が複数ある例である。図では3つの整流板3a,3b、3cを設けている。このように、整流板3は1つに限定されず、2つ以上あってもよい。
【0039】
実施形態4
図6は本発明の実施形態4の構成を示す説明図である。
本実施形態では、図1の実施形態1と比較して、本体2の上部に開口2cが設けられている。その他の点については実施形態1と同じである。
この開口2cにより、薬液の量が確認できるので、薬液の量の調整が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態1の液体供給ヘッドの構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態1の本体の断面を示す拡大図である。
【図3】実施形態1の傾斜板の先端を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態2の構成を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態3の構成を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態4の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 液体供給ヘッド
2 本体
2a 供給口
2b 注入口
2c 開口
3,3a,3b,3c 整流板
4 傾斜板
5 支持棒
6 支持板
7 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が閉じられた樋形状で、一方の側面に液体の注入口を、他方の側面に液体の供給口を、それぞれ有する本体と、
本体の供給口に連設され、供給口から流出する液体を傾斜面に沿って流下させる傾斜板と、
本体内に注入口と供給口とを仕切るように本体の長手方向に沿って配置された整流板とを備え、
整流板は、本体の注入口から注入された液体を本体の長手方向に沿って流動させるとともに、上辺と下辺とのいずれか一方から液体を迂回させて供給口に誘導してなる液体供給ヘッド。
【請求項2】
本体を長手方向に水平に支持可能な支持部をさらに備えてなる請求項1記載の液体供給ヘッド。
【請求項3】
支持部は、本体を、伏せた状態で搬送される処理対象の平面基板に対し平面基板の平面に平行で、かつその長手方向が平面基板の搬送方向に対して交差するように配置可能である請求項1記載の液体供給ヘッド。
【請求項4】
供給口が、本体の長手方向全体にわたって一定の幅で切れ目なく形成されてなる請求項1記載の液体供給ヘッド。
【請求項5】
供給口が液体の落下方向に向けて配置されてなる請求項1記載の液体供給ヘッド。
【請求項6】
整流板が複数の整流板からなる請求項1記載の液体供給ヘッド。
【請求項7】
傾斜板は、傾斜板上を液体が流下する際の液体流下端面が鋭利に形成されてなる請求項1記載の液体供給ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−255657(P2006−255657A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79897(P2005−79897)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(599132708)富士通日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】