説明

液体吐出ヘッドの製造方法

【課題】圧電素子の変位ばらつきを低減し、歩留りを向上させること。
【解決手段】液体を吐出するノズルに連通する圧力室が形成される基板に、圧電体および電極を有する圧電素子を形成し(ステップS2)、形成された前記圧電素子の静電容量と前記圧電素子のサイズとを実測し(ステップS4)、実測結果から前記圧電素子の変位量を予測し(ステップS6)、予測された前記圧電素子の変位量に基づいて、前記圧電素子の変位量を変更する加工処理の補正値を決め(ステップS8)、前記補正値を用いて前記加工処理を行うことで前記圧電素子間の変位量のばらつきを補正する(ステップS10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の変位ばらつきを低減し、歩留りを向上させることができる液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドに形成されている複数のノズルからインクを記録媒体に打滴することにより記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方式の画像形成装置が知られている。インクジェット記録方式では、記録動作時の騒音が低く、ランニングコストが安く、高解像、高品質な画像記録が可能である。インクの打滴方式として、圧電素子の変位を利用した圧電方式がある。
【0003】
ところで、複数の圧電素子間における変位量のばらつきに起因して、複数のノズル間で吐出ばらつきが生じ、歩留りが低下するという課題がある。このような課題の解決のため、圧電素子の静電容量を測定し、測定した静電容量に基づいて、圧力室の幅、圧電素子上の耐湿保護膜の厚さまたは開口幅を変えることが提案されている(特許文献1)。具体的には、圧電素子の静電容量と変位量とは相関があり、静電容量が大きいほど変位量は大きくなるので、静電容量が大きい部分の圧力室サイズを小さくし、静電容量の小さい部分の圧力室サイズを大きくする補正をかける。若しくは、静電容量が大きい部分の耐湿保護膜の厚さを厚くし、静電容量の小さい部分の耐湿保護膜の厚さを薄くする。若しくは、静電容量の大きい部分の耐湿保護膜の開口サイズを小さくし、静電容量の小さい部分の耐湿保護膜の開口サイズを大きくする。
【0004】
また、一旦大きめに電極を形成し、その後電極をレーザでトリミングすることが提案されている(特許文献2、3)。
【特許文献1】特開2008−114372号公報
【特許文献2】特開2002−307696号公報
【特許文献3】特開2004−291643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の静電容量のバラツキには圧電体厚みや電極サイズのばらつきの効果を含む為、圧電素子の変位量を十分に補正しきることが困難であった。
【0006】
特許文献1に記載の発明では、圧電素子の静電容量と変位量とは確かに相関があるものの、圧電体の厚みや電極の面積といった圧電素子の形状サイズの違いが加工の補正値に十分にフィードバックされないので、変位量を十分に補正しきることが困難であった。
【0007】
また、特許文献2、3に記載の発明では、一旦大きめに電極を形成し、その後電極をレーザでトリミングしているので、一般に全素子の再加工が必要であり、工数がかかる。また、静電容量からのフィードバックが無いので、実際の変位ばらつきはそれほど収まらない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、圧電素子の変位ばらつきを低減し、歩留りを向上させることができる液体吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、液体を吐出するノズルに連通する圧力室が形成される基板に、圧電体および電極を有する圧電素子を形成する圧電素子形成ステップと、形成された前記圧電素子の静電容量と前記圧電素子のサイズとを実測する測定ステップと、前記測定ステップの実測結果から前記圧電素子の変位量を予測する変位量予測ステップと、予測された前記圧電素子の変位量に基づいて、前記圧電素子の変位量を変更する加工処理の補正値を決める補正値決定ステップと、前記補正値を用いて前記加工処理を行うことで前記圧電素子間の変位量のばらつきを補正する加工ステップと、を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
【0010】
これによれば、圧電素子の静電容量のみに基づいて加工する場合と比較して、圧電素子間の変位ばらつきが更に低減され、吐出性能が均一になるので、歩留りが向上する。
【0011】
例えば、前記補正値決定ステップにて、前記圧力室の開口面積の補正値を決定し、前記加工ステップにて、前記補正値に基づいて、前記基板に前記圧力室を形成する。
【0012】
また、例えば、前記補正値決定ステップにて、前記圧電素子上に形成する保護膜の厚み、および、前記保護膜に形成する開口部の開口面積のうち少なくとも一方を決定し、前記加工ステップにて、前記補正値に基づいて、前記圧電素子上に前記保護膜を形成する。
【0013】
また、例えば、前記補正値決定ステップにて、前記圧力室内に形成する耐液保護膜の厚みを決定し、前記加工ステップにて、前記基板に前記圧力室を形成するとともに、前記補正値に基づいて、前記圧力室内に前記耐液保護膜を形成する。
【0014】
例えば、前記測定ステップにて測定する前記圧電素子のサイズは、前記圧電体の厚み、および、前記電極の面積のうち、少なくともいずれかである。
【0015】
本発明の一態様では、前記圧電素子の静電容量およびサイズと前記圧電素子の変位量との関係を示す第1の変位特性情報、実測した前記圧電素子の静電容量、および、実測した前記圧電素子のサイズに基づいて、前記圧電素子の変位量を予測し、前記圧電素子の変位量と前記補正値との関係を示す第2の変位特性情報、および、予測した前記圧電素子の変位量に基づいて、前記補正値を求める。
【0016】
これによれば、補正値を的確且つ容易に求めることができる。
【0017】
また、本発明は、液体を吐出するノズルに連通する圧力室が形成される基板に、圧電体および電極を有する圧電素子を形成する圧電素子形成ステップと、形成された前記圧電素子の変位量または変位体積を実測する測定ステップと、前記測定ステップの実測結果に基づいて、前記圧電素子の変位量を変更する加工処理の補正値を決める補正値決定ステップと、前記補正値を用いて前記加工処理を行うことで前記圧電素子間の変位量のばらつきを補正する加工ステップと、を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
【0018】
例えば、前記補正値決定ステップにて、前記圧電素子上に形成する保護膜の厚み、および、前記保護膜に形成する開口部の開口面積のうち少なくとも一方を決定し、前記加工ステップにて、前記補正値に基づいて、前記圧電素子上に前記保護膜を形成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、圧電素子の変位ばらつきを低減し、歩留りを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0021】
[画像形成装置]
図1は、本発明を適用した液体吐出ヘッドを備えた画像形成装置の一例(インクジェット記録装置)を示す全体構成図である。
【0022】
図1に示すインクジェット記録装置100は、インク及び処理液を用いて、枚葉紙からなる記録媒体114上に画像形成を行う2液凝集方式が適用された画像形成装置である。
【0023】
インクジェット記録装置100は、主として、記録媒体114を供給する給紙部102と、記録媒体114に対して浸透抑制剤を付与する浸透抑制層形成部104と、記録媒体114に処理液を付与する処理液付与部106と、記録媒体114に色インクを打滴するインク打滴部(印字部)108と、色インクが打滴された記録媒体114の乾燥を行う乾燥部110と、記録媒体114上に形成された画像を定着させる定着部112と、画像が形成された記録媒体114を搬送して排出する排紙部113とを備えて構成される。
【0024】
図1では図示を省略するが、記録媒体114の搬送機構を構成する各圧胴126A〜126E、及びこれらに隣接して設けられる各渡し胴124A〜124Eには、それぞれ、記録媒体114の先端を保持する保持爪(グリッパ)が1又は複数形成されており、圧胴及び渡し胴の各保持爪間で記録媒体114の受け渡しが行われる。保持爪の構成については公知のものを適用すればよいため、ここでは説明を省略する。
【0025】
給紙部102には、記録媒体114を積載する給紙台120が設けられている。給紙台120の前方(図1において左側)にはフィーダボード122が接続されており、給紙台120に積載された記録媒体114は1番上から順に1枚ずつフィーダボード122に送り出される。フィーダボード122に送り出された記録媒体114は、渡し胴124Aを介して浸透抑制層形成部104の圧胴126Aに受け渡される。
【0026】
浸透抑制層形成部104は、処理液及びインクに含まれる水及び親水的な有機溶剤の記録媒体114への浸透を抑制する浸透抑制剤を付与する。浸透抑制剤としては、溶液中に樹脂をエマルジョンの形で分散、もしくは樹脂を溶解させたものを用いる。溶媒としては、有機溶剤または水を用いる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、石油類、等が好適に用いられる。記録用紙の温度T1を樹脂の最低造膜温度Tf1より高くしておく。Tf1とT1との差はおよそ10〜20℃が好ましい。これにより、樹脂が記録媒体114に付着後、即座に良好な膜を形成し、後から記録媒体114に付与されるインク及び処理液の溶媒の記録媒体114内部への浸透を良好に抑制することができる。記録媒体114の温度の調整は、圧胴126A内部にヒータ等の発熱体を設置するという方法や、記録媒体114の表面(上面)から熱風を当てる方法、赤外線ヒータ等を用いた加熱等があり、これらを組み合わせても良い。
【0027】
記録媒体114のカールが発生しにくい場合は、浸透抑制層形成部104を省略することも可能である。例えば、記録媒体114の種類に応じて浸透抑制剤の付与量(浸透抑制剤を付与しない場合を含む)を制御するようにしてもよい。
【0028】
浸透抑制層形成部104には、圧胴126Aの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126Aの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤吐出ヘッド130、及び浸透抑制剤乾燥ユニット132がそれぞれ設けられている。
【0029】
用紙予熱ユニット128及び浸透抑制剤乾燥ユニット132には、それぞれ所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥機が設けられる。圧胴126Aに保持された記録媒体114が、用紙予熱ユニット128や浸透抑制剤乾燥ユニット132に対向する位置を通過する際、熱風乾燥機によって加熱された空気(熱風)が記録媒体114上に吹き付けられる構成となっている。
【0030】
浸透抑制剤吐出ヘッド130は、圧胴126Aに保持される記録媒体114に対して浸透抑制剤を打滴するものであり、後述するインク打滴部108の各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bと同一構成が適用される。
【0031】
本例では、記録媒体114の表面に対して浸透抑制剤を付与する手段として、インクジェットヘッドを適用したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、塗布方式などの各種方式を適用することも可能である。これらの中でも、本例のようにインクジェット方式により浸透抑制剤を付与する態様が好ましく、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bによる各色インクの打滴位置及びその周辺のみに選択的に浸透抑制剤を付与することができる。
【0032】
浸透抑制層形成部104に続いて処理液付与部106が設けられている。浸透抑制層形成部104の圧胴126Aと処理液付与部106の圧胴126Bとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124Bが設けられており、圧胴126Aに保持された記録媒体114は、浸透抑制剤が付与された後、渡し胴124Bを介して圧胴126Bに受け渡される。
【0033】
処理液付与部106には、圧胴126Bの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126Bの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット134、処理液吐出ヘッド136、及び処理液乾燥ユニット138がそれぞれ設けられている。
【0034】
処理液付与部106の各部(用紙予熱ユニット134、処理液吐出ヘッド136、及び処理液乾燥ユニット138)については、上述した浸透抑制層形成部104の用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤吐出ヘッド130、及び浸透抑制剤乾燥ユニット132とそれぞれ同様の構成が適用されるため、ここでは説明を省略する。もちろん、浸透抑制層形成部104と異なる構成を適用することも可能である。
【0035】
本例では、圧胴126Bの直径は540mmであり、記録媒体114の全面に対して処理液が厚み5μmで付与される。
【0036】
本例で用いられる処理液は、後段のインク打滴部108に配置される各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bから記録媒体114に向かって吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する酸性液である。
【0037】
処理液乾燥ユニット138には、所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥機が設けられており、圧胴126Bに保持された記録媒体114が処理液乾燥ユニット138の熱風乾燥機に対向する位置を通過する際、熱風乾燥機によって加熱された空気(熱風)が記録媒体114上の処理液に吹き付けられる構成となっている。
【0038】
熱風乾燥機の温度や風量は、圧胴126Bの回転方向上流側に配置される処理液吐出ヘッド136により記録媒体114上に付与された処理液を乾燥させて、記録媒体114の表面上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)が形成されるような値に設定される。本例では、70℃の熱風にて1秒間の乾燥が行われる。
【0039】
記録媒体114の表面上に処理液の液体層(処理液層)が存在した状態でインク液滴が打滴されると、処理液層中にインク色材(インクドット)が浮遊して移動してしまい、画像品質の劣化を招く要因となる。そこで、図1に示すインクジェット記録装置100では、色材移動(ドット浮遊)による画像劣化を防止するために、記録媒体114上にインク液滴を打滴する前に、記録媒体114上の処理液を乾燥させて、記録媒体114上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層を形成する。
【0040】
本例の如く、記録媒体114上に処理液が付与される前に、用紙予熱ユニット134によって記録媒体114を予備加熱する態様が好ましい。この場合、処理液の乾燥に要する加熱エネルギーを低く抑えることが可能となり、省エネルギー化を図ることができる。
【0041】
処理液付与部106に続いてインク打滴部108が設けられている。処理液付与部106の圧胴126Bとインク打滴部108の圧胴126Cとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124Cが設けられており、圧胴126Bに保持された記録媒体114は、処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された後に、渡し胴124Cを介して圧胴126Cに受け渡される。このとき、渡し胴124Cで記録媒体114上の処理液層(凝集処理剤層)を追加乾燥(例えば60℃で加熱)する態様も好ましい。
【0042】
インク打滴部108には、圧胴126Cの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126Cの表面に対向する位置に、CMYKRGBの7色のインクにそれぞれ対応したインク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bが並んで設けられている。
【0043】
各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、上述した浸透抑制剤吐出ヘッド130や処理液吐出ヘッド136と同様に、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)が適用される。即ち、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、それぞれ対応する色インクの液滴を圧胴126Cに保持された記録媒体114に向かって吐出する。
【0044】
インク貯蔵/装填部(不図示)は、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bにそれぞれ供給するインクを各々貯蔵するインクタンクを含んで構成される。各インクタンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されており、各インク吐出ヘッドに対してそれぞれ対応するインクを供給する。インク貯蔵/装填部は、タンク内の液体残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0045】
インク貯蔵/装填部の各インクタンクから各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bにインクが供給され、画像信号に応じて各140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bから記録媒体114に対してそれぞれ対応する色インクが打滴される。
【0046】
各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、それぞれ圧胴126Cに保持される記録媒体114における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図1中不図示、図2に符号161で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bが圧胴126Cの回転方向(記録媒体114の搬送方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
【0047】
記録媒体114の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)について、記録媒体114と各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体114の画像形成領域に1次画像を記録することができる。これにより、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0048】
本例のインクジェット記録装置100は、最大菊半サイズの記録媒体(記録用紙)までの記録が可能であり、圧胴126Cとして、記録媒体幅720mmに対応した直径810mmのドラムが用いられる。インク打滴時のドラム回転周速度は、530mm/secである。また、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bのインク吐出体積は2plであり、記録密度は主走査方向(記録媒体114の幅方向)及び副走査方向(記録媒体114の搬送方向)ともに1200dpiである。
【0049】
また、本例では、CMYKRGBの7色の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0050】
インク打滴部108に続いて乾燥部110が設けられている。インク打滴部108の圧胴126Cと乾燥部110の圧胴126Dとの間には、これらに対接するように渡し胴124Dが設けられており、圧胴126Cに保持された記録媒体114は、各色インクが付与された後に、渡し胴124Dを介して圧胴126Dに受け渡される。
【0051】
乾燥部110には、圧胴126Dの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から、圧胴126Dの表面に対向する位置に、熱風ノズル機141およびIRヒータ144が交互に設けられている。
【0052】
記録媒体114の表面上に形成された固体状又は半固溶状の凝集処理剤層上にインク液滴が打滴されると、記録媒体114上には、インク凝集体(色材凝集体)が形成されるとともに、色材と分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が形成される。このようにして記録媒体114上に残った液体成分(溶媒成分)は、記録媒体114のカールだけでなく、画像劣化を招く要因となる。そこで、本例では、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bからそれぞれ対応する色インクが記録媒体114上に打滴された後、熱風ノズル機141およびIRヒータ144(赤外線ヒータ)により、記録媒体114上の液体成分を蒸発させる。
【0053】
本例では、記録媒体114の搬送方向に対して直交する方向に沿って4個の熱風ノズル機141と3個のIRヒータ144が配置されている。記録媒体114が乾燥部110の圧胴126Dの上面を通過する際、熱風ノズル機141から熱風が記録媒体114に向けて送風されるとともに、IRヒータ144から赤外線が記録媒体114に向けて放射される。例えば、熱風ノズル機141から70℃の熱風を10m/secで噴出するとともに、IRヒータ144から1000℃の赤外線を放射する。これにより、記録媒体114上の液体水分が蒸発し、記録媒体114が乾燥する。なお、熱風ノズル機141およびIRヒータ144については、後に詳説する。
【0054】
乾燥部110に続いて定着部112が設けられている。乾燥部110の圧胴126Dと定着部112の圧胴126Eとの間には、これらに対接するように渡し胴124Eが設けられている。圧胴126Dに保持された記録媒体114は、渡し胴124Eを介して圧胴126Eに受け渡される。
【0055】
定着部112には、圧胴126Eの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126Eの表面に対向する位置に、インク打滴部108による印字結果を読み取る印字検出部146、加熱ローラ148A、148Bがそれぞれ設けられている。
【0056】
印字検出部146は、インク打滴部108の印字結果(各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの打滴結果)を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
【0057】
加熱ローラ148A、148Bは、所定の範囲(例えば100℃〜180℃)で温度制御可能なローラであり、加熱ローラ148A、148Bと圧胴126Eとの間に挟みこまれた記録媒体114を加熱加圧しながら、記録媒体114上に形成された画像を定着させる。
【0058】
本例では、加熱ローラ148A、148Bの加熱温度は110℃、圧胴126Eの表面温度は60℃に設定される。また、加熱ローラ148A、148Bのニップ圧力は1MPaである。加熱ローラ148A、148Bの加熱温度は、処理液又はインクに含有されるポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定することが好ましい。
【0059】
定着部112に続いて排紙部113が設けられている。排紙部113には、画像が定着された記録媒体114を受ける排紙胴150と、該記録媒体114を積載する排紙台152と、排紙胴150に設けられたスプロケットと排紙台152の上方に設けられたスプロケットとの間に掛け渡され、複数の排紙用グリッパを備えた排紙用チェーン154とが設けられている。
【0060】
次に、インク打滴部108に配置されるインク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの構造について詳説する。なお、インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号160によってインク吐出ヘッド(以下、「液体吐出ヘッド」または単に「ヘッド」と称することもある。)を示すものとする。
【0061】
図2(a)はヘッド160の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)はその一部の拡大図であり、図2(c)はヘッド160の他の構造例を示す平面透視図である。また、図3はヘッド160の一部の立体的構成を示す断面図(図2(a)、(b)中のIV−IV線に沿う断面図)である。
【0062】
記録媒体114上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド160におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド160は、図2(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出口であるノズル161と、各ノズル161に対応する圧力室162を有する複数の圧力室ユニット163を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0063】
記録媒体114の搬送方向と略直交する方向に記録媒体114の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図2(a)の構成に代えて、図2(c)に示すように、複数のノズル161が2次元に配列された短尺のヘッドブロック160’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体114の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
【0064】
各ノズル161に対応して設けられている圧力室162は、その平面形状が概略正方形となっており、ノズル161と供給口164が設けられている。各圧力室162は共通流路165と連通している。共通流路165はインク供給源たるインク供給タンク(図示量略)と連通しており、インクは共通流路165を介して各圧力室162に分配供給される。
【0065】
圧力室162の天面を構成する振動板250には、絶縁体膜255を介して、共通電極260(本例にて「下電極」ともいう)と、圧電体270と、個別電極280(本例にて「上電極」ともいう)とを備えた圧電素子300が接合されており、個別電極280に駆動電圧を印加することによって圧電素子300が変形してノズル161からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路165から供給口164を通って新しいインクが圧力室162に供給される。
【0066】
圧電素子300上には、耐湿性を有する絶縁材料からなる耐湿保護膜200が形成されている。耐湿保護膜200は、上電極280の上面および側面と圧電体270の側面を覆っている。また、耐湿保護膜200には、開口部201が形成されている。このような耐湿保護膜200により、大気中の水分に因る圧電素子300の損傷を防止することができる。また、耐湿保護膜200の開口部201により、圧電素子300の変位を阻害することなく、インク吐出特性を良好にすることができる。
【0067】
また、圧力室162、供給口164および共通流路165の内壁面には、耐液体性を有する耐液保護膜216が形成されている。
【0068】
また、図3にて、複数の圧力室162および複数の圧電素子300が形成されている流路形成基板210に、複数のノズル161が形成されているノズル板220を固着することにより、複数の圧力室ユニット163を有する液体吐出ヘッド160が構成される。
【0069】
このような構造の圧力室ユニット163を図2(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0070】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿って圧力室ユニット163を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル161が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0071】
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
【0072】
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録媒体114の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体114の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録媒体114の幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録媒体114の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録媒体114の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
【0073】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法について、第1実施形態および第2実施形態に分けて説明する。特に、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の要部、すなわち圧電素子300間の変位ばらつきの補正手順について、説明する。
【0074】
(第1実施形態)
図4は、第1実施形態における変位ばらつき補正手順の一例の流れを示すフローチャートである。
【0075】
ステップS2にて、圧電素子300を流路形成基板210上に形成する。圧電素子300は、図3に示したように、下電極260および圧電体270および上電極280から構成されている。圧電素子300の形成の具体例は後に説明する。また、本例では、圧電素子300上の耐湿保護膜200の形成、圧力室162の形成、および、圧力室162の内壁面の耐液保護膜216の形成を、後述のステップS10にて行う。
【0076】
ステップS4にて、圧電素子300の変位量を決めるパラメータを測定する。本例では、圧電素子300の静電容量を測定するだけでなく、変形量ばらつきの要因となる圧電素子300のサイズを実測する。以下では、説明の便宜上、圧電素子300の静電容量および圧電体270の厚み(以下「圧電体厚み」という)を測定し、これらの測定結果に基づいて変位ばらつきを補正する場合について説明するが、圧電素子300の他のサイズ(例えば上電極280の面積)を測定して変位ばらつきを補正してもよい。
【0077】
圧電体厚みの測定方法としては、例えば、レーザ干渉計を用いて光学的に測定する方法、段差計を用いてメカニカルに測定する方法などが挙げられる。
【0078】
ステップS6において、ステップS4の測定結果に基づいて、圧電素子300の変位量の予測値を算出する。本例では、静電容量の測定結果および圧電体厚みの測定結果をパラメータとして、圧電素子300の静電容量およびサイズと圧電素子300の変位量との相関関係を示す第1の変位特性情報に基づいて、圧電素子300の変位量の予測値を算出する。例えば、重回帰分析を用いて、変位量を予測する。
【0079】
静電容量と変位量とは図5に示す相関関係があり、圧電体厚みと変位量とは図6に示す相関関係がある。また、静電容量を独立変数X1とし、圧電体厚みを独立変数X2とし、圧電素子300の変位量を従属変数Yとしたとき、変位量Yは数1にて表される。
【0080】
[数1]
Y=a×X1+b×X2+C
ここで、a、bは、それぞれ静電容量および圧電体厚みに対する係数である。係数aは図5に示した静電容量と変位量との相関関係から定まり、係数bは図6に示した圧電体厚みと変位量との相関関係から定まる。Cは定数である。
【0081】
図7は、数1を用いて予測した変位量(理論値)と実績値との相関を示す説明図である。実験によれば、重相関係数Rは0.9以上であった。
【0082】
ステップS8において、ステップS6で求めた圧電素子300の変位量の予測値をパラメータとして、圧電素子300の変位量と加工の補正値との相関関係を示す第2の変位特性情報に基づいて、加工の補正値を取得する。加工の補正値は、ステップS10にて変位量ばらつき補正のために流路形成基板210に施される加工の基準値との差分である。本例の液体吐出ヘッド160では、補正可能事項として、圧力室162の開口幅、耐湿保護膜200の開口部201の幅、耐湿保護膜200の厚み、圧力室162内の耐液保護膜216の厚みがある。図8(a)は圧力室162の開口幅の補正値と圧電素子300の変位量との相関関係データを示し、図8(b)は耐湿保護膜200の開口部201の幅の補正値と圧電素子300の変位量との相関関係データを示し、図8(c)は耐湿保護膜200の厚みの補正値と圧電素子300の変位量との相関関係データを示す。補正したい項目の相関関係データに基づいて、変位量の予測値(Y)に対応する補正値(Wa、Wb、Wc)を取得する。圧力室162の内壁面に形成する耐液保護膜216の厚みを補正値として取得してもよい。
【0083】
ステップS10において、ステップS8で求めた補正値となるように流路形成基板210の加工を行う。すなわち、基準値から補正値分だけ変更して加工を行う。本例では、圧力室162の開口幅、耐湿保護膜200の開口部201の開口幅、または、耐湿保護膜200の厚みを補正する。圧力室162の内壁面に形成する耐液保護膜216の厚みを補正してもよい。このような加工処理の具体例は後に説明する。
【0084】
以上、圧電素子300の静電容量および圧電体厚みを測定し、これらの測定値に基づいて変位量ばらつきを補正する場合を例に説明したが、本発明は、圧電素子300の静電容量および上電極280の面積を測定し、これらの測定値に基づいて変位量ばらつきを補正する場合にも本発明を適用できる。また、静電容量とともに、圧電体厚みおよび電極面積の両方を測定し、静電容量および圧電体厚みおよび電極面積の測定値に基づいて変位量ばらつきを補正する場合にも本発明を適用できる。図9は、電極面積と変位量との関係を示すグラフである。
【0085】
なお、電極面積の測定方法としては、例えば、デジタルカメラで撮像を行って、画像処理により測定する方法が挙げられる。
【0086】
つまり、本発明は、静電容量だけでなく、圧電素子300の変位のばらつきの要因となる製造ばらつきを含んだ圧電素子300のサイズ(例えば、圧電体厚み、電極面積)にも基づいて、変位量ばらつきを補正する。
【0087】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態における変位ばらつき補正手順の一例の流れを示すフローチャートである。
【0088】
ステップS22は、第1実施形態でのステップS2と同様である。
【0089】
ステップS24にて、圧電素子300の変位量または変位体積を測定する。本例では、変位量を予測するための圧電素子300の静電容量、圧電体270の厚み及び上電極280の面積についての測定は、行わない。
【0090】
圧電素子300の変位量または変位体積の測定方法としては、レーザードップラー振動計を用いて測定を行う方法がある。なお、変位量よりも変位体積を測定することが好ましい。実際の吐出速度および吐出体積を決めるパラメータである。例えば、レーザードップラー計で、圧電素子300の面の数点にて変位を測定することで、簡易的に変位体積を算出できる。
【0091】
ステップS26およびS28は、第1実施形態でのステップS8およびS10とそれぞれ同様である。
【0092】
[製造プロセス]
以下では、本発明の容易な理解のため、特許文献1(特開2008−114372号公報)に記載された製造方法(以下「従来例」という)に本発明を適用した場合について、説明する。なお、従来例と同じ点については、特許文献1に記載されているので簡単に説明し、従来例と異なる点については、詳細に説明する。
【0093】
図11〜図14は、圧力室162のサイズにより変位量ばらつきを補正する場合の液体吐出ヘッド160の製造処理の工程図である。
【0094】
図11(a)に示すように、流路形成基板210の表面に二酸化シリコン膜からなる振動板250を形成し、図11(b)に示すように、振動板250上に,酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜255を形成し、図11(c)に示すように、絶縁体膜255上に導電体からなる下電極260を形成する。次に、図11(d)に示すように、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる圧電体270(圧電体層)を形成し、図12(a)に示すように、導電体からなる上電極280を形成し、図12(b)に示すように、パターニングすることにより、圧電素子300を形成する。次に、図12(c)に示すように、流路形成基板210の全面にわたって保護膜200を形成した後、保護膜200を所定形状にパターニングすることで、開口部201等を形成し、図12(d)に示すように、流路形成基板210の全面にわたってリード電極290を形成する。
【0095】
次に、図13(a)に示すように、保護基板230を、流路形成基板210上に接着剤235を介して接着する。次に、図13(b)に示すように、流路形成基板210を、所定の厚みに薄くする。次に、図13(c)に示すように、流路形成基板210にマスク252を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図14(a)に示すように、流路形成基板210をマスク252を介して異方性エッチング(ウエットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力室162等を形成する。次に、図14(b)に示すように、耐液保護膜216を圧力室162の内壁面に形成する。
【0096】
本例では、図11(d)に示したように流路形成基板210上に圧電体270を形成後、圧電体270の厚みを測定する。また、図12(b)に示したように流路形成基板210上に上電極280を形成後、上電極280の面積を測定する。また、圧力室162の形成(図14(a))よりも前に、圧電素子300の圧電体270の静電容量を測定する。
【0097】
本例では、測定した静電容量と、測定した圧電体270の厚み及び上電極280の面積のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、圧電素子300の変位量を予測する。予測した変位量に基づいて、圧力室162の幅(図14(a)に示すW1、W2)を変更する。図13(c)に示すようにマスク252をパターニングする際、マスク252に設けられた開口の開口面積を変更することで、圧力室162の幅W1、W2を変更する。
【0098】
次に、図15に示すように、圧電素子300上の耐湿保護膜200の開口部201の幅d1、d2を変更する場合について説明する。
【0099】
本例では、測定した静電容量と、測定した圧電体270の厚み及び上電極280の面積のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、圧電素子300の変位量を予測する。予測した変位量に基づいて、耐湿保護膜200の開口部201の幅d1、d2を変更する。
【0100】
次に、図16に示すように、圧力室162内の耐液保護膜216の厚みt1、t2を変更する場合について説明する。
【0101】
本例では、測定した静電容量と、測定した圧電体270の厚み及び上電極280の面積のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、圧電素子300の変位量を予測する。予測した変位量に基づいて、圧力室162内の耐液保護膜216の厚みt1、t2を変更する。
【0102】
なお、本発明にて、圧電素子300の変位量を補正する加工は、圧力室162の開口面積の変更、圧電素子300上の耐湿保護膜200の厚み又は開口部201の開口面積の変更、圧力室162内の耐液保護膜216の厚みの変更、のうちいずれかひとつのみの変更を行う場合には限定されない。実測した圧電素子300のサイズ(圧電体270の厚み、電極面積など)に基づいて、変更する補正対象(圧力室162の開口面積、耐湿保護膜200の厚み又は開口部201の開口面積、耐液保護膜216の厚み)を選択してもよく、全ての補正対象を変更してもよい。
【0103】
また、測定は、流路形成基板210上の全ての圧電素子300について行う必要はない。複数の圧電素子の中から選定した1つ以上の圧電素子300について測定してもよい。また、複数の圧電素子300からなる圧電素子群毎の中から選定した1つ以上の圧電素子300毎に測定してもよい。
【0104】
また、圧電素子300毎に補正値を算出して、複数の圧力室162の開口面積、複数の圧電素子300上の耐湿保護膜200の厚みまたは開口幅、または、複数の圧力室162の耐液保護膜216の厚みを、圧電素子300毎に変更する場合に、本発明は限定されない。圧電素子群毎に補正値を算出して、複数の圧力室162の開口面積、複数の圧電素子300上の耐湿保護膜200の厚みまたは開口幅、または、複数の圧力室162の耐液保護膜216の厚みを、圧電素子群毎に変更してもよい。
【0105】
なお、本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明を適用した液体吐出ヘッドを備えた画像形成装置の一例を示す全体構成図
【図2】(a)液体吐出ヘッドの構造例を示す平面透視図、(b)は(a)の拡大図、(c)は他の構造例を示す平面透視図
【図3】液体吐出ヘッドの一部の立体的構成を示す断面図
【図4】第1実施形態における圧電素子の変位量ばらつき補正手順の一例の流れを示すフローチャート
【図5】静電容量と変位量との関係を示すグラフ
【図6】圧電体厚みと変位量との関係を示すグラフ
【図7】変位量の理論値と実績値との関係を示すグラフ
【図8】(a)は圧力室開口幅と変位量との関係を示すグラフ、(b)は耐湿保護膜開口幅と変位量との関係を示すグラフ、(c)は耐湿保護膜厚みと変位量との関係を示すグラフ
【図9】電極面積と変位量との関係を示すグラフ
【図10】第2実施形態における圧電素子の変位量ばらつき補正手順の一例の流れを示すフローチャート
【図11】液体吐出ヘッドの製造処理の第1の例の工程図その1
【図12】液体吐出ヘッドの製造処理の第1の例の工程図その2
【図13】液体吐出ヘッドの製造処理の第1の例の工程図その3
【図14】液体吐出ヘッドの製造処理の第1の例の工程図その4
【図15】液体吐出ヘッドの製造処理の第2の例の説明に用いる工程図
【図16】液体吐出ヘッドの製造処理の第3の例の説明に用いる工程図
【符号の説明】
【0107】
100…インクジェット記録装置、160…インク吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)、161…ノズル、162…圧力室、163…液体吐出素子、200…耐湿保護膜、201…耐湿保護膜の開口部、210…流路形成基板、216…耐液保護膜、220…ノズル板、250…振動板、260…下電極(共通電極)、270…圧電体、280…上電極(個別電極)、300…圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルに連通する圧力室が形成される基板に、圧電体および電極を有する圧電素子を形成する圧電素子形成ステップと、
形成された前記圧電素子の静電容量と前記圧電素子のサイズとを実測する測定ステップと、
前記測定ステップの実測結果から前記圧電素子の変位量を予測する変位量予測ステップと、
予測された前記圧電素子の変位量に基づいて、前記圧電素子の変位量を変更する加工処理の補正値を決める補正値決定ステップと、
前記補正値を用いて前記加工処理を行うことで前記圧電素子間の変位量のばらつきを補正する加工ステップと、
を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記補正値決定ステップにて、前記圧力室の開口面積の補正値を決定し、
前記加工ステップにて、前記補正値に基づいて、前記基板に前記圧力室を形成することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記補正値決定ステップにて、前記圧電素子上に形成する保護膜の厚み、および、前記保護膜に形成する開口部の開口面積のうち少なくとも一方を決定し、
前記加工ステップにて、前記補正値に基づいて、前記圧電素子上に前記保護膜を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記補正値決定ステップにて、前記圧力室内に形成する耐液保護膜の厚みを決定し、
前記加工ステップにて、前記基板に前記圧力室を形成するとともに、前記補正値に基づいて、前記圧力室内に前記耐液保護膜を形成することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記測定ステップにて測定する前記圧電素子のサイズは、前記圧電体の厚み、および、前記電極の面積のうち、少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記圧電素子の静電容量およびサイズと前記圧電素子の変位量との関係を示す第1の変位特性情報、実測した前記圧電素子の静電容量、および、実測した前記圧電素子のサイズに基づいて、前記圧電素子の変位量を予測し、
前記圧電素子の変位量と前記補正値との関係を示す第2の変位特性情報、および、予測した前記圧電素子の変位量に基づいて、前記補正値を求めることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】
液体を吐出するノズルに連通する圧力室が形成される基板に、圧電体および電極を有する圧電素子を形成する圧電素子形成ステップと、
形成された前記圧電素子の変位量または変位体積を実測する測定ステップと、
前記測定ステップの実測結果に基づいて、前記圧電素子の変位量を変更する加工処理の補正値を決める補正値決定ステップと、
前記補正値を用いて前記加工処理を行うことで前記圧電素子間の変位量のばらつきを補正する加工ステップと、
を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記補正値決定ステップにて、前記圧電素子上に形成する保護膜の厚み、および、前記保護膜に形成する開口部の開口面積のうち少なくとも一方を決定し、
前記加工ステップにて、前記補正値に基づいて、前記圧電素子上に前記保護膜を形成することを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−82939(P2010−82939A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253437(P2008−253437)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】