説明

液体噴射装置

【課題】液体噴射ヘッド内のノズル近傍における不純物の滞留を防止し、液体の流速を必要以上に上げることなく不純物の排除を可能とした液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】各圧力室31に共通な液体を貯留する共通液室24と、前記共通液室に連通する第1の圧力室31aおよび第2の圧力室31bと、前記第1圧力室に連通する第1のノズル30aおよび前記第2の圧力室に連通する第2のノズル30bと、前記第1の圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる第1の圧電振動子20aおよび前記第2の圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる第2の圧電振動子20bと、前記第1の圧力室と前記第2の圧力室とを連通し、天井がノズルプレートの吐出面とは非並行な面として構成される連通流路33と、を備え、前記第1の圧力発生手段および前記第2の圧力発生手段を駆動させることで、前記連通流路内に液体の流れを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表的なものとして、例えば、記録紙等の記録媒体(噴射対象)に対して液体状のインクを吐出・着弾させて記録を行うインクジェット式プリンター(液体噴射装置の一種。以下、プリンターという。)に搭載されるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという。)を挙げることができる。この他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターに用いられる色材、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイに用いられる有機材料、電極形成に用いられる電極材等、様々な種類の液体の噴射に液体噴射ヘッドが用いられている。
【0003】
近年、上記プリンターにおいて、記録ヘッドとインクタンクとを一対のインク循環用チューブで連結し、当該循環用チューブの途中に設けられたポンプによってインクタンクと記録ヘッドとの間でインクを循環させる構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構成によれば、増粘したインクや気泡等の不純物が記録ヘッドのノズル近傍に滞留することが抑制されるが、ポンプ等の大掛かりな装置をプリンター内、又はプリンター外に設ける必要があった。
そこで、ポンプを必要としない循環方法として、圧電素子の駆動を利用してインクの循環を行うことが考えられる。その具体的な手段としては、例えば圧力室同士を、連通流路を介して連結させて、圧力室同士で液体の循環を行う方法がある。この連通流路はノズル近傍に配置されることが好ましい。
【0004】
なお、上記課題は、インクジェット式プリンターに限らず、液体噴射装置であれば、例えば、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等にも同様に発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3097718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、連通流路がノズル近傍に配置されることによって液体の噴射に影響を及ぼすことがあるため、過度に連通流路内の流速を上げることはできず、それにより連通流路内に滞在する気泡等の不純物を除去することができなかった。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、連通流路内に滞在する気泡等の不純物を、連通流路内の流速を上げる必要なく除去することが可能な液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、各圧力室に、共通な液体を貯留する共通液室と、前記共通液室に連通する第1の圧力室および第2の圧力室と、前記第1の圧力室に連通する第1のノズルおよび前記第2の圧力室に連通する第2のノズルと、前記第1の圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる第1の圧力発生手段および前記第2の圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる第2の圧力発生手段と、前記第1のノズルおよび前記第2のノズルが形成されたノズルプレートと、前記第1の圧力室と前記第2の圧力室とを連通し、前記ノズルプレートの液体の噴射面に対向する天井が、前記噴射面に対し傾きを持った面として構成される連通流路とを備え、前記第1の圧力発生手段および前記第2の圧力発生手段を駆動させることで、前記連通流路内に液体の流れを生じさせる液体噴射装置。
【0009】
上記構成によれば、連通流路内に滞在した、気泡等の液体に対する比重が1より小さい不純物には、連通流路内の液体の流れによる力に加え、連通流路の天井において、浮力の分力が連通流路内の液体の流れ方向に加わり、天井を伝って連通流路から排出されていく。したがって、連通流路内の流速を過度に上げる必要なく連通流路内に滞在する気泡等の不純物を除去しやすくなる。
【0010】
また上記構成において、前記連通流路の一端の開口面積および他端の開口面積は、前記第1のノズルおよび前記第2のノズルの前記噴射面における開口面積よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、連通流路の一端の開口面積および他端の開口面積が、ノズルの噴射面における開口面積よりも小さいので、ノズルの噴射面における開口から侵入した気泡等の不純物が連通流路内に入りにくくなる。
【0012】
また、上記構成において、前記連通流路は、各圧力室において前記共通液室とは反対側であって前記ノズルと連通する側の端部にそれぞれ開口しているのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、ノズルにより近い位置で液体の流れを生じさせることができる。このため、ノズル近傍における不純物の滞留をより確実に防止することが可能となる。
【0014】
また、上記構成において、前記連通流路が、各圧力室において前記ノズルの中心軸に対して偏心した位置に開口する構成を採ることができる。
【0015】
この構成によれば、連通流路からの液体の流れが、平面視においてノズルの接線方向となるのでノズル近傍において渦が生じる。この渦によりノズル近傍の不純物をより効果的に除去することが可能となる。
【0016】
また、上記構成において、前記第1の圧力発生手段と前記第2の圧力発生手段との駆動タイミングを異ならせることで前記連通流路に液体の流れを生じさせる構成を採用することが好ましい。
【0017】
さらに、上記構成において、前記第1の圧力発生手段と前記第2の圧力発生手段との駆動順を変えることで、前記連通流路内における液体の流れの向きを変える構成を採用することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、連通流路内における液体の流れの向きを変えることで、第1の圧力室と第2の圧力室との間で圧力が偏ることが防止される。これにより、液体噴射ヘッド内部の流路における圧力をより確実に安定させることができる。
【0019】
そして、上記構成において、前記ノズルを封止するキャップ部材を備え、前記キャップ部材によって各ノズルが封止された状態で各圧力発生手段を駆動させることで、前記連通流路により強い液体の流れを生じさせる構成を採用することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、連通流路内により強い液体の流れを生じさせることで、ノズル近傍における不純物の滞留を一層確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態におけるインクの循環経路を主に説明する模式図。
【図2】記録ヘッドの構成を説明する図3におけるA−A断面図。
【図3】流路基板の構成を説明する平面図。
【図4】プリンターの電気的な構成を説明するブロック図。
【図5】記録モードにおける各種動作パターンのタイミングチャート。
【図6】記録ヘッドの要部断面図。
【図7】クリーニングモードにおける動作パターンのタイミングチャート。
【図8】第2の実施形態の構成について説明する図。
【図9】第3の実施形態の構成について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。
なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1はプリンターの構成のうち、インクの循環経路を主に説明する模式図である。なお、本実施形態の液体においては、一種類のインクを循環させる構成について説明するが、他のインクについても同様の構成であるため、その説明については省略する。
例示したプリンターは、記録紙等の記録媒体(着弾対象:図示せず)の表面に対して液体のインクを噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンターは、インクカートリッジ1と、サブタンク2と、記録ヘッド3と、キャップ部材4と、ワイパー部材5と、を備えている。
【0024】
インクカートリッジ1は、インクを貯留する貯留部材(液体貯留源の一種)であり、プリンター本体側に着脱可能に配設されている。サブタンク2は、インクカートリッジ1と記録ヘッド3との間に配設されており、インクカートリッジ1からのインクがインク供給チューブ8を通じて供給され、当該インクを貯留するように構成されている。インク供給チューブ8の途中には供給調整弁9が設けられており、この供給調整弁9によってインクカートリッジ1からサブタンク2へのインクの供給・非供給を切替えることができるようになっている。この供給調整弁9の切替えは、サブタンク2に貯留されているインクの残量に応じて行われる。
【0025】
サブタンク2と記録ヘッド3とは、一対のインク循環チューブ10a,10bによって接続されている。第1のインク循環チューブ10aはサブタンク2と記録ヘッド3の第1の循環流路21a(後述)とを連通している。また、第2のインク循環チューブ10bはサブタンク2と記録ヘッド3の第2の循環流路21bとを連通している。第1のインク循環チューブ10aの途中には、例えばギヤポンプなどから構成される循環ポンプ11が配設されている。この循環ポンプ11が作動することにより、図1において矢印で示すように、インク循環チューブ10a,10bを介してサブタンク2と記録ヘッド3との間でインクが循環するように構成されている。なお、インクの循環方向については、循環ポンプ11によって逆転させることができる。インクの循環の詳細については後述する。
【0026】
記録ヘッド3の移動範囲内であって、記録紙等の記録媒体に対して画像等の記録を行わない休止状態等において記録ヘッド3が位置付けられるホームポジションには、キャップ部材4とワイパー部材5が設けられている。キャップ部材4は、記録ヘッド3のノズル形成面(後述のノズルプレート27の面)のノズル30(30a,30b)全てを覆うことが可能な大きさの板材であり、ゴムやエラストマー等の弾性部材から作製されている。このキャップ部材4は、図示しない移動機構により、ホームポジションに位置する記録ヘッド3のノズル形成面に対して当接する封止状態と、ノズル形成面から離隔して待機する待機状態とに切替えられる。封止状態では、キャップ部材4が、その弾性によりノズル形成面に密着するので、ノズル30からインクの溶媒が蒸発することが抑制される。そして、この封止状態で後述するクリーニングが実行される。
【0027】
ワイパー部材5は、キャップ部材4と同様にゴムやエラストマー等の弾性部材から作製された板材であり、移動機構によりホームポジションに位置する記録ヘッド3のノズル形成面に対して先端部が当接する状態と、ノズル形成面から離隔して待機する待機状態とに切替えられる。当接状態において記録ヘッド3が移動することでワイパー部材5の先端部がノズル形成面を摺動する。これにより、例えばクリーニング処理後にノズル形成面に付着した余分なインク滴を取り除くことができ、記録ヘッド3からインク滴が垂れ落ちて記録紙を汚す等の不具合を防止することができる。
【0028】
図2は、記録ヘッド3の構成を説明する断面図である。また、図3は、記録ヘッド3における流路基板26の構成を説明する平面図である。なお、図2は、図3におけるA−A断面図である。
図2に示すように、記録ヘッド3は、ケース16と、流路ユニット17と、振動子ユニット18a,18bとから概略構成されている。
ケース16は、合成樹脂製のブロック状部材であり、その先端面(記録時における記録媒体と対向する側の面)には流路ユニット17が接合されている。また、ケース16の内部には、2つの振動子ユニット18a,18bに対応して、合計2つの収容空部19a,19bが形成されている。各収容空部19a,19b内には、各圧電振動子20a,20bの先端を先端側開口に臨ませた状態で振動子ユニット18a,18bがそれぞれ収容されている。ケース16内部において各収容空部19a,19bの外側には、第1の循環流路21aと第2の循環流路21bがそれぞれケース16の高さ方向を貫通した状態で形成されている。
【0029】
第1の循環流路21aのケース16基端側の端部(上端部)は、図1に示した第1のインク循環チューブ10aと直接的又は仲介部材などを介して間接的に連通する一方、第1の循環流路21aのケース16先端側の端部(下端部)は、第1の連通口23a(図3参照)を介して流路ユニット17の共通液室24と連通している。同様に、第2の循環流路21bの上端部は、第2のインク循環チューブ10bと直接的又は間接的に連通する一方、第2の循環流路21bの下端部は、第2の連通口23b(図3参照)を介して流路ユニット17の共通液室24と連通している。
【0030】
流路ユニット17は、流路基板26とノズルプレート27と振動板28とから構成されている。ノズルプレート27は、ドット形成密度に対応したピッチで多数(例えば、360個)のノズル30を列状に開設した薄い板状部材であり、例えば、ステンレス板によって構成している。この列設されたノズル30(30a,30b)によってノズル列(ノズル群)が構成される。本実施形態のノズルプレート27には、一つの種類(色)のインクに対応する第1のノズル列29a(図3参照)および第2のノズル列29bが記録ヘッド3の主走査方向に横並びで形成されている。ノズル列29を構成する各ノズル30は、隣のノズル列29(29a,29b)のノズル30に対してノズル列設方向(ノズル列方向)において、互い違いとなるように半ピッチずらした状態で配列されている。
【0031】
上記の流路基板26は、例えば、シリコン基板から作製された板材であり、共通液室24となる空部と、圧力室31(31a,31b)となる空部と、インク供給口32となる空部と、がエッチング等により形成されている。上記の圧力室31は、ノズル列方向とは略直交する方向に細長い空部であり、ノズル30に対応する数だけ形成されている。当該圧力室31は、長手方向の一端部がノズル30と連通すると共に、他端部がインク供給口32を介して共通液室24に連通している。また、各圧力室31は、一端部を隣のノズル列側に向けると共に、ノズル列方向において当該隣のノズル列の圧力室31に対して互い違いとなるように形成されている。
【0032】
さらに、第1のノズル列29aに対応する第1の圧力室31aと、この第1の圧力室31aに隣り合う第2のノズル列29bに対応する第2の圧力室31bとは、連通流路33によって一対一で連通しており、第1の圧力室31aに開口する連通流路開口部33aと、第2の圧力室31bに開口する連通流路開口部33bをもつ。
より詳しくは、第1のノズル列29a側の第1のノズル30aと第2のノズル列29b側の第2のノズル30bとの間で、隣り合うノズルに対応する圧力室同士が連通流路33によって互いに連通している。第1の圧力室31aに対応する第1の圧電振動子20aと、第2の圧力室31bに対応する第2の圧電振動子20bと、をそれぞれ駆動させることで、この連通流路33にインクの流れを生じさせることができるように構成されている。
【0033】
そして、連通流路33において、連通流路開口部33aの断面積を、連通流路開口部33bの断面積よりも小さくすることで、連通流路33の天井331はノズルプレート27の吐出面271に対し傾きを持った面で構成される。これによって連通流路33内に滞在する気泡は、天井331を伝って第2の圧力室31bへと排出されるため、連通流路33内のインク流速を過度に上げることなく気泡を除去しやすくなる。なお、インクの流れが逆の場合、連通流路開口部33aの断面積を連通流路開口部33bの断面積より大きくすることでもノズルプレート27の吐出面271に対し傾きを持った面を構成することができ、同様の効果が得られるため、どちらかに限定されない。
【0034】
また、連通流路開口部33aの断面積と連通流路開口部33bの断面積が同じ場合でも、ノズルプレート27の吐出面271に対し傾きを持った天井331を構成することができる。例として、連通流路開口部33aと連通流路開口部33bが長方形状の場合、連通流路開口部33aのノズルプレート27の吐出面271と平行な辺の長さと、連通流路開口部33bのノズルプレート27の吐出面271と平行な辺の長さが異なることで、ノズルプレート27の吐出面271に対し傾きを持った天井331を構成することができる。
【0035】
また、連通流路33の一端の開口面積と他端の開口面積とは、ノズル30の吐出側の開口面積よりも小さく設定されている。このため、連通流路33内には気泡や異物、一例としてノズル30から圧力室31へ混入される気泡、が入りにくくなっている。
【0036】
また、連通流路33は、各圧力室31において共通液室24とは反対側であって、ノズル30と連通する側の一端部の内壁面にそれぞれ開口している。このように、連通流路33を、ノズル30により近い位置に開口させることにより、後述するように、ノズル30により近い位置でインクの流れを生じさせることができる。このため、ノズル30近傍における不純物の滞留をより確実に防止することが可能となる。この点の詳細については後述する。
【0037】
共通液室24は、図3に示すように、第1のノズル列29aの第1の圧力室31a群と第2のノズル列29bの第2の圧力室31b群を囲繞するように形成された各圧力室31に共通なインク貯留空部であり、第1のノズル列29aと第2のノズル列29bにそれぞれ沿って形成された主液室24a,24bと、各主液室24a,24bをそれぞれ一方の端部(図3における上側の端部)で連通させる連通液室24cとから成る。各圧力室31は、この共通液室24に対してそれぞれインク供給口32を介して連通している。
また、主液室24aの他方の端部(図3における左下の端部)は、第1の連通口23aを介して第1の循環流路21aと連通し、主液室24bの他方の端部(図3における右下の端部)は、第2の連通口23bを介して第2の循環流路21bと連通している。これにより、サブタンク2から、第1のインク循環チューブ10a、第1の循環流路21a、共通液室24、第2の循環流路21b、および第2のインク循環チューブ10bを通って、サブタンク2に戻る循環経路が形成されている。さらに、この流路ユニット17では、共通液室24からインク供給口32および圧力室31を通ってノズル30に至る一連の個別インク流路がノズル毎に形成されている。
【0038】
なお、流路基板26は、複数の基板を積層して構成される場合もある。また、圧力室31からノズル30に至る部分(流路)に関し、例えば「ノズル連通口」等のように圧力室31とは異なる称呼が付される場合もあるが、本実施形態では、当該部分も含めて圧力室31としている。
【0039】
振動板28は、ステンレス鋼等の金属製の支持板35にPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂フィルム36をラミネート加工した二重構造の複合板材であり、圧力室31の一方の開口面を封止してこの圧力室31の容積を変動させるためのダイヤフラム部37を有すると共に、共通液室24の一方の開口面を封止するコンプライアンス部38が形成された部材である。
そして、ダイヤフラム部37は、圧力室31に対応した部分の支持板35にエッチング加工を施し、当該部分を環状に除去して圧電振動子20の自由端部の先端を接合するための島部39を形成することで構成されている。この島部39は、圧力室31の平面形状と同様に、ノズル列に直交する方向に細長いブロック状に形成されている。また、この島部39の周りの樹脂フィルム36が弾性体膜として機能する。また、コンプライアンス部38として機能する部分、すなわち共通液室24に対応する部分は、この共通液室24の開口形状に倣って支持板35がエッチング加工で除去されて樹脂フィルム36のみとなっている。
【0040】
各振動子ユニット18a,18bにおける圧電振動子20(本発明における圧力発生手段の一種であって20a,20b)は、縦方向に細長い櫛歯状に形成されており、数十μm程度の極めて細い幅に切り分けられている。そして、この圧電振動子20は、縦方向に伸縮可能な縦振動型の圧電振動子として構成されている。各圧電振動子20は、固定端部を固定板41上に接合することにより、自由端部を固定板41の先端縁よりも外側に突出させて所謂片持ち梁の状態で固定されている。そして、各圧電振動子20における自由端部の先端は、ダイヤフラム部37を構成する島部39に接合される。
フレキシブルケーブル42は、各圧電振動子20を駆動する駆動信号を固定板41とは反対側となる固定端部の側面で圧電振動子20と電気的に接続されている。また、各圧電振動子20を支持する固定板41は、圧電振動子20からの反力を受け止め得る剛性を備えた金属製の板材によって構成される。そして、噴射パルスの電位変化に応じて圧電振動子20の自由端部が素子長手方向に伸縮すると、島部39が圧力室31側に押されたり、圧力室31から離隔する側に引っ張られたりする。これにより、圧力室31の容積が変動し、圧力室31内のインク圧力が変化する。この圧力変動を利用してノズル30からインク(インク滴)を噴射させることができる。
【0041】
次に、プリンターの電気的構成について説明する。図4は、プリンターの電気的な構成を説明するブロック図である。
図4に示すように、本実施形態におけるプリンターは、プリンターコントローラー44と、プリントエンジン45とを備えている。プリンターコントローラー44は、図示しないホストコンピューター等の外部装置からの印刷データ等を受信する外部インターフェイス46(外部I/F46)と、各種データを記憶するRAM47と、各種データ処理のための制御ルーチン等を記憶したROM48と、CPU等からなる制御部49とを備えている。また、記録ヘッド3に供給する駆動信号を発生可能な駆動信号発生回路50と、クロック信号を生成する発振回路51と、記録動作の駆動信号及びメンテナンス動作の制御信号等をプリントエンジン45側に送信するための内部インターフェイス52(内部I/F52)等を備えている。そして、これらの各部は、内部バスを介して電気的に相互に接続されている。また、プリントエンジン45は、記録ヘッド3、循環ポンプ11、及びキャップ部材4等の駆動系統を備えている。
【0042】
制御部49は、プリンターにおける各種制御を行う部分である。例えば、記録動作の制御では、外部装置から受信した印刷データに基づいてドットパターンデータを生成し、生成したドットパターンデータを記録ヘッド3に転送する。また、循環ポンプ11を作動させてサブタンク2と記録ヘッド3との間でインクの循環を行ったり、初期充填時やクリーニング時においてキャップ部材4を記録ヘッド3のノズル形成面に当接させて封止したりする。
【0043】
駆動信号発生回路50は、第1の駆動信号COM1を発生可能な第1の駆動信号発生部50aと、第2の駆動信号COM2を発生可能な第2の駆動信号発生部50bとを備えている。そして、駆動信号発生回路50は、これらの第1の駆動信号COM1および第2の駆動信号COM2を、所定の周期Tで繰り返し発生するように構成されている。各駆動信号COM1,COM2には、記録ヘッド3のノズル30からインクを噴射させるための噴射パルス、インクが噴射されない程度にノズル30におけるメニスカスを微振動させる微振動パルス、及び、後述するカウンターパルスが含まれている。噴射パルスや微振動パルスについては、この種のプリンターで用いられている周知のものを用いることができるため、その説明を省略する。
【0044】
また、カウンターパルスは、噴射パルスの駆動電圧(最低電位から最高電位までの電位差)をノズル30からインクが噴射されない程度まで低下させたものである。本実施形態において、第1の駆動信号COM1には、噴射パルスと第1の微振動パルスが含まれている。また第2の駆動信号COM2には、第1の駆動信号COM1の噴射パルスと同一タイミングで発生されるカウンターパルスと、第1の駆動信号COMの第1の微振動パルスとは異なるタイミングで発生される第2の微振動パルスが含まれている。この第2の微振動パルスは、第1の微振動パルスと同一の波形から構成され、同一周期における第1の微振動パルスに対してΔtだけ遅延して発生する。このΔtは、例えば、微振動パルス全体の時間幅(微振動パルスの始端から終端までの時間)の1/2程度に設定される。
【0045】
さらに駆動信号発生回路50は、後述するクリーニングモードにおいて、クリーニング用駆動信号を発生するように構成されている。具体的には、第1の駆動信号発生部50aからは第1のクリーニング用駆動信号COM1cが発生され、第2の駆動信号発生部50bからは第2のクリーニング用駆動信号COM2cが発生される。本実施形態における第1のクリーニング用駆動信号COM1cには、噴射パルスよりも駆動電圧が大きく設定された第1のクリーニングパルスが、繰り返し周期T内に2つ含まれる。また、第2のクリーニング用駆動信号COM2cには、第1のクリーニング用駆動信号COM1cにおける第1のクリーニングパルスとは異なるタイミングで発生される第2のクリーニングパルスが繰り返し周期T内に2つ含まれる。この第2のクリーニングパルスは、第1のクリーニングパルスと同一の波形から構成され、同一周期において対応する第1のクリーニングパルスに対してΔt′だけ遅延して発生する。
【0046】
次に、上記の構成において、記録媒体に対して画像やテキスト等を記録する記録モード(印刷モード)における各種動作パターンについて図5のタイミングチャート及び図6の記録ヘッドの要部断面図を用いて説明する。なお、図5において、噴射パルスによって圧電振動子20が駆動される期間をDPとし、カウンターパルスによって圧電振動子20が駆動される期間をCPとし、第1の微振動パルスによって圧電振動子20が駆動される期間をVP1とし、第2の微振動パルスによって圧電振動子20が駆動される期間をVP2としている。また。Aで示す上段が第1の圧力室31a側についてのタイミングチャートであり、Bで示す下段が、第1の圧力室31aと連通流路33を介して連通する第2の圧力室31b側についてのタイミングチャートである。
【0047】
同一の周期において第1の圧力室31aに対応する第1のノズル30aと、第2の圧力室31bに対応する第2のノズル30bの両方からインクを噴射する場合、図5(a)の期間T(1)で示すように、第1の圧力室31aに対応する第1の圧電振動子20aおよび第2の圧力室31bに対応する第2の圧電振動子20bには、第1の駆動信号COM1の噴射パルスがそれぞれ同じタイミングで印加される。これにより、第1のノズル30aおよび第2のノズル30bからはインクが同時に噴射される。このとき、各圧力室31a,31bには、同じタイミングで同程度の圧力変化が生じるので、両圧力室31a,31bを連通する連通流路33には、インクの流れが殆ど生じない。
【0048】
同一の周期において第1の圧力室31aに対応する第1のノズル30aからインクを噴射させる一方、第2の圧力室31bに対応する第2のノズル30bからはインクを噴射させない場合、図5(a)の期間T(2)で示すように、第1の圧力室31aに対応する第1の圧電振動子20aには、第1の駆動信号COM1の噴射パルスが選択されて印加される一方、これと同じタイミングで、第2の圧力室31bに対応する第2の圧電振動子20bには第2の駆動信号COM2のカウンターパルスが選択されて印加される。これにより、第1のノズル30aからはインクが噴射される。これに対し、第2の圧力室31bでは、第1の圧力室31aにおける圧力変動と同じタイミングで、第2のノズル30bからインクが噴射されない程度の圧力変化が生じるので、第1の圧力室31a側から連通流路33を通じて第2の圧力室31b側へインクが流れることが抑制される。即ち、第1の圧力室31a側で生じた圧力が第2の圧力室31b側に逃げることが抑制される。これにより、同一の周期において第1のノズル30aと第2のノズル30bの両方からインクを噴射する場合と、第1のノズル30aのみからインクを噴射させる場合とで第1のノズル30aから噴射されるインクの量、飛翔速度、飛翔方向等の噴射特性が変動することが防止される。
【0049】
同様に、同一の周期において第2の圧力室31bに対応する第2のノズル30bのみからインクを噴射させる場合、図5(a)の期間T(3)で示すように、第1の圧電振動子20aにカウンターパルスが選択されて印加される一方、これと同じタイミングで、第2の圧力室31bに対応する第2の圧電振動子20bには噴射パルスが選択されて印加される。これにより、第2のノズル30bからはインクが噴射されるのに対し、第1の圧力室31aでは、第2の圧力室31bにおける圧力変動と同じタイミングで、第1のノズル30aからインクが噴射されない程度の圧力変化が生じるので、第2の圧力室31b側から連通流路33を通じて第1の圧力室31a側へインクが流れることが抑制される。
【0050】
また、同一の周期において第1の圧力室31aに対応する第1のノズル30aと、第2の圧力室31bに対応する第2のノズル30bの両方においてインクを噴射させない場合、図5(b)の期間T(4)で示すように、第1の圧力室31aに対応する第1の圧電振動子20aには、第1の駆動信号COM1の第1の微振動パルスが選択されて印加される一方、第2の圧力室31bに対応する第2の圧電振動子20bには、第2の駆動信号COM2の第2の微振動パルスが選択されて印加される。
これにより、両圧力室31a,31bには、ノズル30からインクが噴射されない程度の圧力変動が生じ、この圧力変動によってノズル30におけるメニスカスが微振動される。ここで、上述したように、第2の微振動パルスは、同一周期における第1の微振動パルスに対してΔtだけ遅延して発生するので、第1の圧電振動子20aの駆動タイミングと、第2の圧電振動子20bの駆動タイミングが異なる。
より具体的には、図5に示すように、第1の微振動パルスにより第1の圧電振動子20aが駆動されることで第1の圧力室31aが初期の基準容積から一旦膨張した後、当該第1の圧力室31aが基準容積まで収縮するタイミングで、第2の微振動パルスにより第2の圧電振動子20bが駆動されて第2の圧力室31bが膨張するようにΔtが設定されている。
【0051】
これにより、図6に示すように、第1の圧力室31a側の内圧が増加するタイミングで第2の圧力室31b側の内圧が減少するので、第1の圧力室31aの内圧と第2の圧力室31bの内圧の差がより大きくなる。その結果、同図において矢印で示すように、第1の圧力室31a側から連通流路33を通じて第2の圧力室31b側へのインクの流れが生じる。このため、ノズル近傍に重点的にインクの流れを生じさせることができ、第2の圧力室31bにおける第2のノズル30b近傍の増粘したインク、沈降したインクの顔料、或いは気泡などの不純物がこの流れによって除去されやすくなる。即ち、これらの不純物がノズル30近傍に滞留しにくくなる。
また、連通流路33の天井331がノズルプレート27の吐出面271に対し傾きを持った面として構成されるため、連通流路33内に滞在する気泡は天井331を伝って第2の圧力室31bへと排出されやすくなる。
さらに、ノズル30付近で局所的に増粘したインクなどの不純物は、流れによって撹拌されて均一化されることとなり、これにより、不純物の滞留を防ぐことができるのである。この不純物は、インク供給口32を通じて共通液室24側、即ち、上記の循環経路側に流される。したがって、循環経路上の不純物は、別途、循環ポンプ11によるインクの循環により、サブタンク2側に排出される。なお、第2の微振動パルスにより第2の圧力室31bの容積が膨張した後、基準容積まで単独で収縮する際に連通流路33に生じるインクの流れは上記の場合と比較して十分に小さい。
【0052】
ところで、上記のように第1の圧力室31a側から連通流路33を通じて第2の圧力室31b側にインクの流れを生じさせた場合、一時的に、両者の間で圧力の不均衡が生じる。両圧力室31a,31bにおける圧力は時間の経過と共に共通液室24を通じて徐々に均衡するが、より短い間隔で連続的にインクを噴射させる場合(所謂高周波駆動)等では、できるだけ早く圧力を均衡させることが望ましい。そこで、連通流路33に上記とは逆方向の流れを生じさせることで、より短時間で圧力を均衡させることができる。
具体的には、図5(b)の期間T(5)で示すように、第1の圧力室31aに対応する第1の圧電振動子20aに、第2の駆動信号COM2の第2の微振動パルスが印加される一方、第2の圧力室31bに対応する第2の圧電振動子20bには、第1の駆動信号COM1の第1の微振動パルスが選択されて印加される。このため、第1の微振動パルスにより第2の圧電振動子20bが駆動されることで第2の圧力室31bの容積が一旦膨張した後、当該第2の圧力室31bが収縮するタイミングで、第2の微振動パルスにより第1の圧電振動子20aが駆動されて第1の圧力室31aが膨張する。これにより、第1の圧力室31aの内圧と第2の圧力室31bの内圧の差が大きくなり、第2の圧力室31b側から連通流路33を通じて第1の圧力室31a側へのインクの流れが生じる。その結果、第1のノズル30aの近傍における不純物の滞留が防止されると共に、両圧力室31a,31bにおける圧力がより短時間で均衡する。即ち、第1の圧力室31aと第2の圧力室31bとの間で圧力が偏ることが防止される。これにより、記録ヘッド3内部の流路における圧力をより確実に安定させることができる。また、逆方向の流れを生じさせることで、ノズル付近で局所的に増粘したインクがさらに撹拌されることとなるため、増粘したインクをより均一化することができる。
【0053】
次に、上記の構成において、ホームポジションに位置付けられた記録ヘッド3のノズル形成面をキャップ部材4で封止した状態で当該記録ヘッド3内の流路により強いインクの流れを生じさせることで当該流路内の不純物を除去するクリーニングモード(循環クリーニングモード)における動作パターンについて図7のタイミングチャートを用いて説明する。
なお、図7において、第1のクリーニングパルスによって圧電振動子20が駆動される期間をCLP1とし、第2のクリーニングパルスによって圧電振動子20が駆動される期間をCLP2としている。また。図5と同様に、Aで示す上段が第1の圧力室31a側についてのタイミングチャートであり、Bで示す下段が、当該第1の圧力室31aと連通流路33を介して連通する第2の圧力室31b側についてのタイミングチャートである。
【0054】
クリーニング処理では、図7の期間T(1)で示すように、第1の圧力室31aに対応する第1の圧電振動子20aには、第1のクリーニング用駆動信号COM1cの2つの第1のクリーニングパルスが順次印加される。
一方、第2の圧力室31bに対応する第2の圧電振動子20bには、第2のクリーニング用駆動信号COM2cの2つの第2のクリーニングパルスが順次印加される。これにより、両圧力室31a,31bには、噴射パルスによって駆動する場合よりも強い圧力変動が生じる。
ここで、上述したように、第2のクリーニング用駆動信号COM2cの各第2のクリーニングパルスは、同一周期において対応する第1のクリーニングパルスに対してΔt′だけそれぞれ遅延して発生するので、第1の圧電振動子20aの駆動タイミングと、第2の圧電振動子20bの駆動タイミングが異なる。
より具体的には、第1のクリーニングパルスにより第1の圧電振動子20aが駆動されることで第1の圧力室31aの容積が一旦膨張した後、当該第1の圧力室31aが収縮するタイミングで、第2のクリーニングパルスにより第2の圧電振動子20bが駆動されて第2の圧力室31bが膨張するようにΔt′が設定されている。
【0055】
これにより、第1の圧力室31a側の内圧が増加するタイミングで第2の圧力室31b側の内圧が減少し、第1の圧力室31aの内圧と第2の圧力室31bの内圧の差が、記録モードにおける微振動動作の場合よりも大きくなる。その結果、第1の圧力室31a側から連通流路33を通じて第2の圧力室31b側へ、記録モードにおける微振動動作の場合よりもより強いインクの流れが生じる。
【0056】
続いて、図7の期間T(2)で示すように、第1の圧力室31aに対応する第1の圧電振動子20aには、第2のクリーニング用駆動信号COM2cの2つの第2のクリーニングパルスが順次印加される一方、第2の圧力室31bに対応する第2の圧電振動子20bには、第1のクリーニング用駆動信号COM1cの2つの第1のクリーニングパルスが順次印加される。
これにより、第1のクリーニングパルスにより第2の圧電振動子20bが駆動されることで第2の圧力室31bの容積が一旦膨張した後、当該第2の圧力室31bが収縮するタイミングで、第2のクリーニングパルスにより第1の圧電振動子20aが駆動されて第1の圧力室31aが膨張する。その結果、第2の圧力室31b側から連通流路33を通じて第1の圧力室31a側へより強いインクの流れが生じる。さらに、両圧力室31a,31bにおける圧力がより短時間で均衡する。
【0057】
このように、上記のクリーニング動作を所定の回数だけ繰り返して行うことにより、各圧力室31a,31bにおけるノズル30近傍の増粘したインク、沈降したインクの顔料、或いは気泡などの不純物がこの流れによって除去される。この不純物は、インク供給口32を通じて共通液室24側、即ち、上記の循環経路側に流される。したがって、循環経路上の不純物は、循環ポンプ11によるインクの循環により、サブタンク2側に排出される。
【0058】
次に、本発明における他の実施形態について説明する。
(第2の実施形態)
図8は、本実施形態の構成を説明する図であり、(a)は流路基板26の拡大平面図、(b)は記録ヘッド3の要部断面図である。
本実施形態では、第1の圧力室31aと、第2の圧力室31bとを連通する連通流路33の、各圧力室31a,31bにおける開口位置が上記第1の実施形態と異なっている。
具体的には、連通流路33は、各圧力室31a,31bの一端部においてノズル30の中心軸に対して偏心した位置にそれぞれ開口している。そして、上記第1の実施形態と同様に、第1の圧力室31aに対応する第1の圧電振動子20aと、第2の圧力室31bに対応する第2の圧電振動子20bとを、タイミングをずらしてそれぞれ駆動させることで、連通流路33にインクの流れを生じさせることができるように構成されている。このとき、連通流路33からのインクの流れが、平面視においてノズル30の接線方向となるので、図8(b)において矢印で示すように、ノズル近傍では渦が生じる。この渦によりノズル近傍の不純物をより効果的に除去することが可能となる。
【0059】
(第3の実施形態)
図9は、本実施形態における流路基板26の構成を説明する平面図である。
本実施形態においては、第1のノズル列29aと第2のノズル列29bには、それぞれ異なる色のインクが割り当てられている。このため、サブタンク2との間で形成される循環経路も、第1のノズル列29aと第2のノズル列29bとで別個独立している。したがって、共通液室24もノズル列毎に設けられている。
具体的には、第1のノズル列29aに対応する共通液室24′と第2のノズル列29bに対応する共通液室24″との2つの共通液室24が流路基板26に形成されている。また、同図に示すように、同一ノズル列29において隣り合う一対の圧力室同士が連通流路33によって連通している。即ち、同一ノズル列29における隣り合う圧力室31a,31bのうちの一方の圧力室が第1の圧力室31aに相当し、他方の圧力室が第2の圧力室31bに相当する。連通流路33は、各圧力室31a,31bにおいて共通液室24とは反対側であってノズル30と連通する側の一端部の内壁にそれぞれ開口している。そして、第1の実施形態と同様に、第1の圧力室31aに対応する第1の圧電振動子20aと、第2の圧力室31bに対応する第2の圧電振動子20bと、をそれぞれ駆動させることで、この連通流路33にインクの流れを生じさせることができるように構成されている。
さらに、第1の実施形態と同様に、連通流路33の天井331はノズルプレート27の吐出面271に対し傾きを持った面で構成されるため、これによって連通流路33内に滞在する気泡は、天井331を伝って第2の圧力室31bへと排出され、連通流路33内のインク流速を過度に上げることなく気泡を除去しやすくなる。
当該第3の実施形態における制御方法については、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略するが、この構成においても上記第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0060】
なお、上記各実施形態においては、プリンター本体側からのインクをサブタンク2で受けてからこのサブタンク2と記録ヘッド3との間でインクを循環させるタイプのプリンターを例示したが、これには限られず、インクを循環させないタイプのプリンターにも本発明を適用することができる。
【0061】
なお、上記各実施形態では、圧力発生手段として、所謂縦振動型の圧電振動子20を例示したが、これには限られず、例えば、所謂撓み振動型の圧電振動子や発熱素子等のその他の圧力発生手段を採用することも可能である。
【0062】
また、本発明は、複数の駆動信号を用いて噴射制御が可能な液体噴射装置であれば、プリンターに限らず、プロッター、ファクシミリ装置、コピー機等、各種のインクジェット式記録装置や、記録装置以外の液体噴射装置、例えば、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…インクカートリッジ、2…サブタンク、3…記録ヘッド、4…キャップ部材、10…インク循環チューブ、11…循環ポンプ、20a…第1の圧力発生手段としての第1の圧電振動子、20b…第2の圧力発生手段としての第2の圧電振動子、21…循環流路,24…共通液室、26…流路基板、27…ノズルプレート、28…振動板、29…ノズル列、30a…第1のノズル、30b…第2のノズル、31a…第1の圧力室、31b…第2の圧力室、33…連通流路、33a,33b…連通流路開口部、49…制御部、50…駆動信号発生回路、271…噴射面としての吐出面、331…天井。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各圧力室に、共通な液体を貯留する共通液室と、
前記共通液室に連通する第1の圧力室および第2の圧力室と、
前記第1の圧力室に連通する第1のノズルおよび前記第2の圧力室に連通する第2のノズルと、
前記第1の圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる第1の圧力発生手段および前記第2の圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる第2の圧力発生手段と、
前記第1のノズルおよび前記第2のノズルが形成されたノズルプレートと、
前記第1の圧力室と前記第2の圧力室とを連通し、前記ノズルプレートの液体の噴射面に対向する天井が、前記噴射面に対し傾きを持った面として構成される連通流路とを備え、
前記第1の圧力発生手段および前記第2の圧力発生手段を駆動させることで、前記連通流路内に液体の流れを生じさせる液体噴射装置。
【請求項2】
前記連通流路の一端の開口面積および他端の開口面積は、前記第1のノズルおよび前記第2のノズルの前記噴射面における開口面積よりも小さく設定されている請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記連通流路は、各圧力室において前記共通液室とは反対側であって前記ノズルと連通する側の端部にそれぞれ開口している請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記連通流路は、各圧力室において前記ノズルの中心軸に対して偏心した位置に開口している請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記第1の圧力発生手段と前記第2の圧力発生手段との駆動タイミングを異ならせることで前記連通流路に液体の流れを生じさせる請求項1から請求項4の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記第1の圧力発生手段と前記第2の圧力発生手段との駆動順を変えることで、前記連通流路内における液体の流れの向きを変えることが可能な請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記ノズルを封止するキャップ部材を備え、
前記キャップ部材によって各ノズルが封止された状態で各圧力発生手段を駆動させることで、前記連通流路により強い液体の流れを生じさせる請求項1から請求項6の何れか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−139825(P2012−139825A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292058(P2010−292058)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】