説明

液体塗布方法および液体塗布装置

【課題】気泡を含まない塗布の提供と塗布以外の液体の消費を防止する。
【解決手段】供給タンク1、ノズル3、保管タンク5とを備え、液体を低圧で供給タンク1からノズル3を通り、保管タンク5へ移送した後、続けて保管タンク5への供給路を閉口し、高い圧力で液体を供給タンク1からノズル3へ移送することにより、気泡を含まない液体をパージなしで塗布する。さらに、保管タンク5に移送された液体を供給タンク1へ回収することで、塗布以外の液体の消費を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個以上の穴を有するノズルを配列し、ノズル穴から対象物に液体を塗布する液体の塗布方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の気泡を含まずに液体を塗布する方法、また塗布以外の液体の消費を少なくする方法としては、ノズルヘッドに加圧された液体を送りパージすることにより、ノズルヘッドや吐出口内の気泡を液体とともに排出する方法や、液体の供給回路に含まれる気泡をノズルヘッドを通らない排出回路から液体とともに保管タンクへ戻す方法があった。
【0003】
この種の従来技術としては、特許文献1に記載された技術がある。図5は、特許文献1に記載された従来の塗布装置を示す構成図であり、11,12,13,14はヘッドユニット、21,22,23,24は各ヘッドユニット11乃至14にそれぞれ対応する供給路、31,32,33,34は排出路と、41は第1バルブ、42は第2バルブ、51は循環往路、52は循環復路、53はインクタンク、54はサブタンク、55は空気ポンプである。
【0004】
特許文献1に開示されるインクジェットノズルなどのように、液体を供給する供給タンク(インクタンク53)、供給タンクとノズルヘッド(ヘッドユニット11,12,13,14)を連結する供給回路、ノズルヘッドと保管タンク(サブタンク54)を連結する排出回路、排出回路と保管タンクの間に切換弁(第2バルブ42)などを設けるとともに、ノズルヘッドを通らない供給回路と排出回路からなる直結回路をさらに設け、その直結回路の間に切換弁(第1バルブ41)を設ける。
【0005】
このようにしておいて、まず直結回路の切換弁を閉じ、排出回路の切換弁を開放して、供給タンクから液体を供給することにより、ノズルヘッドの気泡を液体とともに保管タンクへ回収する。その後、直結回路の切換弁の開放により直結回路の気泡を液体とともに保管タンクへ回収する。更に、直結回路の切換弁と排出回路の切換弁の閉鎖により、ノズルヘッドからインクをパージしてノズルヘッド内の気泡を排出する。
【0006】
図5において、供給タンクはインキをノズルヘッドや直結回路に圧送していた。保管タンクは、圧送されてきたノズルヘッドや直結回路からのインキを保管していた。供給タンク、直結回路、供給タンクと保管タンク間などに設けられた切換弁は、開閉動作の組合せにより、供給タンクから圧送されたインクを、ノズルヘッド、排出回路、直結回路などを通過させ、含まれる空気を排出したり、ノズル板からパージしていた。
【特許文献1】特開平11−342634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、直結回路の切換弁を閉口し、排出回路の切換弁を開口した状態で、供給タンクからインクを圧送してノズルヘッド内の気泡を排出した後、直結回路の切換弁を開放して直結回路内のインクを排出した場合、ノズルヘッドの流動抵抗は直結回路の流動抵抗よりも大きいことから、ノズルヘッド回路には減圧に伴なう気泡が発生してくる。
【0008】
また、前記従来のパージまでの気泡発生防止方法では、ノズルヘッド内の気泡をパージにより排出した後に、改めて液体を塗布する場合、空気ポンプの停止に伴う減圧やノズル開口部の流速が大であり減圧していことから、空気ポンプ停止にともない、ノズル開口部から空気を吸い気泡が発生する。
【0009】
このように、気泡をなくすことができない問題点を有していた。
【0010】
さらに、従来の気泡発生防止方法では必ずパージが必要であり、実際に印刷に使うインク以外の量を必要とする問題点を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ノズルヘッド内の気泡排出開始から塗布完了までノズル内圧を下げないようにすることによりノズルヘッド内の気泡発生を防止し、気泡を含まない液体の塗布を提供すること、およびパージ動作をなくし、塗布以外の液体を必要としないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、供給タンクとノズルの間を結ぶ給液流路に設置された第1開閉弁と、前記ノズルと保管タンクの間を結ぶ排液流路に設置された第2開閉弁を開口し、前記供給タンク内に圧力を負荷し、液体を前記ノズルを貫通して前記保管タンクに移送する第1の工程と、前記第2開閉弁を閉口すると同時に前記供給タンク内に圧力を負荷し、前記ノズルの吐出口から液体を塗布した後、前記第1開閉弁を閉口すると同時に前記供給タンク内圧力を開放する第2の工程と、前記保管タンクと前記供給タンクの間を結ぶ循環流路に設置された第3開閉弁を開口すると同時に前記保管タンク内に圧力を負荷し、液体を前記保管タンクから前記供給タンクへ移送した後、前記保管タンク内の圧力を開放する第3の工程を有し、第1の工程から順次行うことを特徴とする。
【0013】
本発明は、2個以上の穴を有する吐出口が取付けられ、かつ液体の貫通路を有するノズルと、空気圧により供給される液体を貯蔵する供給タンクと、空気圧により供給され前記ノズルを通過した液体を貯蔵する保管タンクと、前記供給タンクと前記ノズルの間を結ぶ給液流路の途中に設置された第1開閉弁と、前記保管タンクと前記ノズルの間を結ぶ排液流路に設置された第2開閉弁と、前記保管タンクと前記供給タンクの間を結ぶ循環流路に設置された第3開閉弁を備え、前記ノズル、前記供給タンクおよび前記保管タンクのユニットが連結して1つの閉流路を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液体塗布方法によれば、吐出口から液垂れが発生しない程度の低く設定された空圧を付加することにより、供給タンクの液体をノズルヘッドを貫通させ保管タンクへと送り込む。また、保管タンクへの供給回路を遮断すると同時に、供給タンクの液面にかける空圧を高く設定し、ノズルヘッドから液体を塗布する。さらに、保管タンクの液面へ空圧を付加し、液体を供給タンクへと送り込む、という構成であり、このような構成によって、気泡の防止、パージの不要、簡便な液体再利用などを同時に実現することができる。
【0015】
また、本発明の液体塗布装置によれば、液体の塗布を簡便な構成で実現でき、さらには液体の循環流路を閉流路とすることで、塗布以外の液体消費の防止を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態1における液体塗布装置の液体循環回路図である。図1において、液体循環回路は、供給タンク1、第1の開閉弁2、ノズル3、第2の開閉弁4、保管タンク5、第3の開閉弁6が連結チューブ7を通じて有機的につながり、液体を供給タンク1から移送し、保管タンク5から回送する閉回路を構成している。
【0018】
ノズル3には、液体の通る貫通路とその貫通路に連結し2個以上の微細穴を有する吐出口8が取付けられ、液体を塗布するノズルユニットを構成している。
【0019】
供給タンク1には、圧縮空気が供給される第1のチューブ9が連結されており、保管タンク5には、圧縮空気が供給される第2のチューブ10が連結され、液体を移送する加圧回路を構成している。
【0020】
図2〜図4は図1に示す液体循環回路を有する塗布装置を用いたインクの塗布工程を示すものであり、第1の開閉弁2、第2の開閉弁4、第3の開閉弁6において開放した弁は白色、閉じた弁は黒色として示すことにする。
【0021】
図2は、図1に示す液体循環回路を有する塗布装置を用いてインクを塗布する第1の工程を示す。第1の開閉弁2と第2の開閉弁4を開口した後、圧縮空気供給の第1のチューブ9より供給タンク1の液面に低圧の圧縮空気を移送する第1の工程を行なうことにより、供給タンク1内の液体は連結チューブ7、第1の開閉弁2、ノズル3、連結チューブ7、保管タンク5へ移送されることとなり、連結チューブ7、ノズル3内に含まれる気泡が一緒に保管タンク5へ移送され、連結チューブ7およびノズル3内に気泡の無い状態を作り出すことができる。
【0022】
図3は、図2に示す第1の工程につづく第2の工程を示す。第1の工程につづいて、第2の開閉弁4を閉口すると同時に、圧縮空気供給の第1チューブ9より供給タンク1の液面に高圧の圧縮空気を移送する第2の工程を行なうことにより、供給タンク1内の液体は、連結チューブ7、ノズル3へ移送されることとなり、吐出口8の穴から液体を塗布されることとなり、気泡を含まない塗布を行なうことができる。塗布の停止は、第1の開閉弁2を閉口することにより行なう。
【0023】
図4は、図3に示す第2の工程につづく第3の工程を示す。第2の工程後、第1の開閉弁2を閉口しかつ供給タンク1への圧縮空気の供給を停止するとともに、第3の開閉弁6を開口し、圧縮空気供給の第2のチューブ10より保管タンク5の液面に圧縮空気を移送する第3の工程を行なう。この第3の工程により、保管タンク5の液体は、連結チューブ7、第3の開閉弁6、供給タンク1へ移送されることとなり、第1の工程で保管タンク5へ移送された液体を回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の塗布方法および装置は、気泡を防止することで均一な塗布を実現し、パージを不要とすることや液体の循環流路を閉流路することで塗布以外の液体消費の防止を実現するノズルシステムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態における塗布装置の液体循環流路図
【図2】本発明の実施の形態における気泡を除去する第1の工程を示す図
【図3】本発明の実施の形態における気泡を含まない塗布をする第2の工程を示す図
【図4】本発明の実施の形態における塗布以外の液体を回収する第3の工程を示す図
【図5】従来のインクジェットノズル装置図
【符号の説明】
【0026】
1 供給タンク
2 第1の開閉弁
3 ノズル
4 第2の開閉弁
5 保管タンク
6 第3の開閉弁
7 連結チューブ
8 吐出口
9 第1の圧縮空気供給用チューブ
10 第2の圧縮空気供給用チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給タンクとノズルの間を結ぶ給液流路に設置された第1開閉弁と、前記ノズルと保管タンクの間を結ぶ排液流路に設置された第2開閉弁を開口し、前記供給タンク内に圧力を付加し、液体を前記ノズルを貫通して前記保管タンクに移送する第1の工程と、
前記第2開閉弁を閉口すると同時に前記供給タンク内に圧力を付加し、前記ノズルの吐出口から液体を塗布した後、前記第1開閉弁を閉口すると同時に前記供給タンク内圧力を開放する第2の工程と、
前記保管タンクと前記供給タンクの間を結ぶ循環流路に設置された第3開閉弁を開口すると同時に前記保管タンク内に圧力を付加し、液体を前記保管タンクから前記供給タンクへ移送した後、前記保管タンク内の圧力を開放する第3の工程を有し、
第1の工程から順次行うことを特徴とする液体塗布方法。
【請求項2】
2個以上の穴を有する吐出口が取付けられ、かつ液体の貫通路を有するノズルと、空気圧により供給される液体を貯蔵する供給タンクと、空気圧により供給され前記ノズルを通過した液体を貯蔵する保管タンクと、前記供給タンクと前記ノズルの間を結ぶ給液流路の途中に設置された第1開閉弁と、前記保管タンクと前記ノズルの間を結ぶ排液流路に設置された第2開閉弁と、前記保管タンクと前記供給タンクの間を結ぶ循環流路に設置された第3開閉弁を備え、前記ノズル、前記供給タンクおよび前記保管タンクのユニットが連結して1つの閉流路を形成することを特徴とする液体塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−159126(P2006−159126A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356677(P2004−356677)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】