説明

液体移送装置

【課題】液体移送ヘッドの構成を簡単にし、小型化を容易にする。
【解決手段】個別インク流路10内には、前方の端部に複数の端部に個別電極12を覆うように絶縁層15が形成されているとともに、絶縁層15の後方に隣接する領域に絶縁層16が形成されている。個別電極12にグランド電位が付与されたときには、絶縁層15表面におけるインクの濡れ角が絶縁層16表面におけるインクの濡れ角よりも大きく(限界濡れ角よりも大きく)、個別インク流路10の絶縁層15に対向する部分にはインクが流れ込まない。個別電極に駆動電位Vが付与されたときには、絶縁層15表面の個別電極12に対応する部分におけるインクの濡れ角が、絶縁層16におけるインクの濡れ角とほぼ等しくなり(限界濡れ角以下となり)、個別インク流路10の絶縁層15に対向する部分にインクが流れ込み、吐出口10aからインクが吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を移送する液体移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙等の被記録媒体にインクを排出して画像等を記録する形式のプリンタには、ノズルから被記録媒体へ向けてインクを噴射するインクジェット方式の記録ヘッドが一般的に採用されている。しかし、このようなインクジェット方式の記録ヘッドにおいては、インクに噴射圧力を発生させるための流路構造やアクチュエータの構造が特殊で複雑なものとなり、そのために、複数のノズルを高密度に配置して記録ヘッドの小型化を図るにも限界があった。
【0003】
そこで、本願発明者は、ある電極の表面を絶縁層が覆っている状態で、電極電位が変化したときに絶縁層表面における液体の濡れ角(撥液性)が変化する現象(エレクトロウェッティング現象)を利用した、新しい方式の記録ヘッドを提案している(例えば、特許文献1参照)。この記録ヘッドは、複数の凹溝でそれぞれ形成された複数の個別流路を備えている。そして、各個別流路(凹溝の底面)には個別電極が設けられており、さらに、個別電極の表面は絶縁層で覆われている。また、ヘッド内のインクはグランド電位(接地電位)に保持された共通電極に接触しており、インクの電位は常にグランド電位となっている。さらに、個別流路の上流側には、その先端の排出部に向けてインクを加圧するポンプが設けられている。
【0004】
ここで、個別電極の電位がグランド電位であり、インクと個別電極との間に電位差がない状態では、それらの間に挟まれた絶縁層の表面におけるインクの濡れ角は、凹溝底面の絶縁層が設けられていない領域と比べて大きくなっている。そのため、インクが絶縁層の表面を越えて排出部へ流れることができず、排出部からインクが排出されない。一方、個別電極の電位がグランド電位とは異なる所定の電位に切り換えられたときには、インクと個別電極との間に電位差が生じて、それらの間に挟まれた絶縁層の表面におけるインクの濡れ角が小さくなる(エレクトロウェッティング現象)。すると、ポンプにより加圧されたインクが、絶縁層の表面を濡らして排出部へ移動することができるようになり、排出部からインクが排出される。
【0005】
【特許文献1】特開2005−288875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に記載された記録ヘッドにおいては、個別電極が形成された基材の個別流路と反対側の表面や基材の側面等に個別電極に電位を付与するための配線部を形成するとともに、基材に貫通孔を形成し、貫通孔を介して個別電極と配線部との接続を行うことにより、配線部が個別流路内のインクに接触してしまうのを防止することができる。しかしながら、記録ヘッドを、基材に貫通孔を形成し、貫通孔を介して個別電極と配線部とを接続する構成にすると、記録ヘッドの構造が複雑になり、その製造コストも高くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、構造が簡単で製造コストが安価な液体移送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体移送装置は、少なくとも一表面において絶縁性を有する基材と、基材の一表面において間隔を空けて並べて配置され、導電性を有する液体が個別に移送される複数の液体移送経路と、基材の一表面の、複数の液体移送経路内の領域にそれぞれ配置された複数の個別電極と、複数の個別電極からそれぞれ引き出され、基材の一表面に沿って延びる複数の配線部と、基材の一表面において少なくとも複数の個別電極を覆うように配置され、液体に対する濡れ角が個別電極と液体との電位差に応じて変化する第1絶縁層と、同じく基材の一表面において複数の配線部を覆うように設けられ、且つ、複数の液体移送経路内の、少なくとも第1絶縁層の配置領域に対して液体の移送方向に隣接する領域に配置された第2絶縁層と、複数の配線部の端部にそれぞれ設けられた複数の端子を介して、複数の個別電極に対してそれぞれ電位を付与する電位付与手段とを備えている。個別電極と液体との間の電位差が少なくとも所定電位差未満であるときの、第1絶縁層の液体に対する濡れ角が、第2絶縁層の液体に対する濡れ角よりも大きい。
【0009】
これによると、個別電極と配線部とが共に基材の一表面に形成されているので、個別電極と配線部とを基材の一表面において接続することができる。したがって、個別電極と配線部とを接続するために基材に貫通孔を形成する必要がなく、液体移送装置の構造を簡単にすることができるとともに、その製造コストも低減することができる。さらに、配線部が第2絶縁層により覆われているため、導電性を有する液体が配線部に接触するのが防止される。
【0010】
また、液体移送装置において個別電極を覆う第1絶縁層に第2絶縁層が隣接しており、さらに、少なくとも個別電極と液体との間の電位差が所定の電位差未満であるときには第1絶縁層の濡れ角が第2絶縁層の濡れ角よりも大きいため、第1絶縁層と第2絶縁層との間で液体のメニスカスを確実に停止させることができる。
【0011】
また、本発明の液体移送装置においては、複数の配線部は、複数の液体移送経路の間にそれぞれ配置されていてもよい。これによると、配線部が、液体移送装置に配置された個別電極から、複数の液体移送経路の間の領域を通って端子まで延びているため、個別電極への電圧印加時に、第2絶縁層の、液体移送経路内に露出する部分の濡れ角が変化することがない。
【0012】
また、本発明の液体移送装置においては、複数の配線部は、複数の液体移送経路内にそれぞれ配置されていてもよい。これによると、配線部が液体移送経路内に配置されていることから、複数の液体移送経路の間を狭めて液体移送経路の集積度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の液体移送装置においては、複数の配線部は、複数の個別電極から、液体の移送方向上流側にそれぞれ引き出されていてもよい。これによると、多数の個別電極を高い集積度で配置した場合でも、液体の移送方向上流側に複数の端子を引き出して、電圧印加手段と接続することができる。
【0014】
このとき、第2絶縁層は、複数の液体移送経路に跨って、前記第1絶縁層の配置領域に隣接する領域から複数の端子の近傍まで、連続的に形成されていてもよい。これによると、基材の一表面に第2絶縁層を一度に形成することができ、液体移送装置を製造する製造工程を簡略化することができる。
【0015】
また、本発明の液体移送装置においては、電位付与手段は、複数の個別電極のそれぞれに対して所定の第1電位と第2電位の2種類の電位を選択的に付与するものであり、個別電極に第1電位が付与されたときの、第1絶縁層の液体に対する濡れ角は、液体移送経路内において液体が第2絶縁層から前記第1絶縁層へ移動可能となる所定の限界濡れ角よりも大きく、個別電極に前記第2電位が付与されたときには、第1絶縁層の前記液体に対する濡れ角が低下して、所定の限界濡れ角以下になるように構成されていてもよい。これによると、個別電極に第1電位が付与されたときには、個別電極表面の第1絶縁層の液体に対する濡れ角が、背圧や流路形状、液体の表面張力等により定まる限界濡れ角よりも大きく、液体移送経路において第2絶縁層から第1絶縁層に液体が流れない。一方、個別電極に第2電位が付与されたときには、第1絶縁層の濡れ角が限界濡れ角以下となることから、液体移送経路において第2絶縁層から第1絶縁層に液体が流れる。
【0016】
このとき、本発明の液体移送装置においては、個別電極に第2電位が付与されたときに、第1絶縁層の液体に対する濡れ角が第2絶縁層の液体に対する濡れ角とほぼ等しいか、又は小さくなってもよい。これによると、第2絶縁層から第1絶縁層に液体がスムーズに流れる。
【0017】
また、本発明の液体移送装置においては、複数の液体移送経路と連通し、これら複数の液体移送経路にそれぞれ液体を供給する共通液室を有していてもよい。これによると、共通液室に液体を供給することにより、共通液室から複数の液体移送経路に液体を供給することができる。
【0018】
このとき、本発明の液体移送装置においては、共通液室は、複数の液体移送経路が配置された基材の一表面とは異なる平面上に配置されていてもよい。これによると、配線部と共通液室とが異なる平面上にあるため、共通液室を避けるように配線部を引き回す必要がなく、配線部の配置自由度が高まる。
【0019】
さらにこのとき、共通液室の内面に、一定電位に保持された共通電極が配置されていてもよい。これによると、共通液室内の液体が一定電位に保たれるため、液体と個別電極との間の電位差が変動しにくくなり、安定した動作が可能になる。
【0020】
また、本発明の液体移送装置においては、共通液室は、複数の液体移送経路と同じく基材の一表面に配置され、基材の一表面において、複数の個別電極から複数の端子までそれぞれ延びる複数の配線部が共通液室を通過しており、少なくとも共通液室内において、複数の配線部が第2絶縁層で覆われていてもよい。これによると、基材の一表面に共通液室が配置されている場合に、共通液室内において配線部を第2絶縁層で覆うことにより、配線部を液体との間で絶縁しつつ、共通液室内に配置することができ、配線部の配置の自由度が高まる。
【0021】
このとき、基材の一表面の共通液室の内面を構成する領域に、一定電位に保持された共通電極が配置され、共通液室内を通過する複数の配線部が絶縁層を介して共通電極とそれぞれ交差していてもよい。これによると、共通液室内において、複数の配線部を、共通電極を避けるように配置する必要がなく、配線部の配置の自由度が高まる。
【0022】
さらにこのとき、本発明の液体移送装置においては、共通電極は、複数の配線部と交差する部分において、配線部の延在方向に関する長さが局所的に短くなっていてもよい。これによると、配線部との交差部分において共通電極の配線部延在方向に関する長さが局所的に短くなっていることから、絶縁層の配線部と共通電極との間に挟まれる部分の静電容量を極力小さく抑えることができる。
【0023】
又はこのとき、共通電極は、共通液室内において前記絶縁層を完全に覆っていてもよい。これによると、共通液室内において、配線部を覆う絶縁層が露出しないため、配線部への電圧印加によって絶縁層の撥液性が変化しても共通液室内における液体流動には影響が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1実施形態は、記録用紙にインク(液体)を移送して印刷を行うプリンタに本発明を適用した一例である。図1は、第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。図1に示すように、プリンタ100は、吐出口10aを備えた複数の個別インク流路10(液体移送経路)を含むインク移送ヘッド1(液体移送装置)と、このインク移送ヘッド1にチューブ4を介して接続されたインクタンク5とを備えている。そして、プリンタ100は、インク移送ヘッド1の複数の吐出口10aから、記録用紙P(図5参照)に向けてそれぞれインクを吐出させて、記録用紙Pに所望の画像を記録する。なお、プリンタ100において用いられるインクは、水を主成分とし、染料と溶剤とを添加した水系染料インク、顔料と溶剤とを添加した水系顔料インクなどの、導電性を有するインクである。また、以下では、図1における前後方向及び左右方向をそれぞれ前後方向及び左右方向と規定して説明する。
【0025】
図2は図1のインク移送ヘッド1の一部を拡大した分解斜視図、図3は図2の平面図、図4(a)は図3のA−A線断面図、図4(b)は図3のB−B線断面図である。図1〜図4に示すように、インク移送ヘッド1は、その略下半分を構成する下部部材2と、その略上半分を構成する上部部材3とが接合されて構成されたものであり、その内部に、左右方向に延びた共通インク流路9(共通液室)が配置されているとともに、共通インク流路9から分岐して前方に延びた複数の個別インク流路10が、左右方向に等間隔に配置されている(間隔を空けて並べて配置されている)。
【0026】
共通インク流路9は、複数の個別インク流路10の上流側(後方)に設けられており、これら複数の個別インク流路10の全てに連通している。また、共通インク流路9はチューブ4を介してインクタンク5に接続されており、インクタンク5から共通インク流路9にインクが供給され、さらに、共通インク流路9から個別インク流路10にインクが供給される。ここで、インクタンク5は共通インク流路9よりもやや高い位置に配置されており、インクタンク5からの背圧が作用することにより、共通インク流路9内のインクには、常に吐出口10aに向かう流れが生じている。このように、インク移送ヘッド1に複数の個別インク流路10が設けられるとともに、複数の個別インク流路10に連通する共通インク流路9が設けられているので、インクタンク5から共通インク流路9にインクを供給することにより、複数の個別インク流路10にインクを容易に供給することができる。
【0027】
次に、インク移送ヘッド1を構成する下部部材2及び上部部材3についてそれぞれ説明する。
【0028】
下部部材2は、基材11の上面(一表面)に複数の個別電極12、複数の配線部13、複数の端子14、絶縁層15、16及び共通電極17が形成されることによって構成されている。基材11は、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセタール等の絶縁性材料からなる略矩形の平面形状を有する板状体や、表面に酸化シリコン層を形成したシリコンの板状体のように、少なくとも表面が絶縁性を有する板状体である。複数の個別電極12は、略矩形の平面形状を有しており、複数の個別インク流路10に対応して、基材11前方の端部(個別インク流路10内の領域)に基材11の左右方向に等間隔で配列されている。
【0029】
複数の配線部13は、各個別電極12の右後方の角部から右方に、隣接する個別電極12の間の領域まで延び、そこから基材11の後方に略直角に折れ曲がり、基材11の上面における複数の個別インク流路10の間の領域、及び、共通インク流路9の底面(内面)となる領域を通過して、基材11後方の端部に形成された端子14まで延びている。つまり、配線部13は、個別電極12から個別インク流路10におけるインクの移送方向の上流側に引き出されている。ここで、複数の配線部13が複数の個別インク流路10の間に配置されていることから、個別インク流路10内のインクが配線部13に接触するのが防止される。
【0030】
複数の端子14は、基材11後方の端部の左右方向に関して複数の個別インク流路10の間に重なる部分に形成されており、略矩形の平面形状を有している。また、複数の端子14はそれぞれドライバIC4(電位付与手段)に接続されており、ドライバIC4によって端子14及び配線部13を介して、複数の個別電極12に個別にグランド電位(第1電位)及び駆動電位V(第2電位)のいずれかの電位が選択的に付与される。このように、複数の配線部13が個別インク流路10におけるインクの移送方向の上流側に引き出され、複数の端子14が基材11の後方の端に配置されているため、多数の個別電極12を高集積度で配置した場合でも、基材11後方の端部に配置された複数の端子14においてドライバIC4との接続を行うことができる。なお、ドライバIC4は、基材11上面の後方の端部に配置され、端子14と直接接続されていてもよく、図示しないフレキシブルプリント基板(FPC)等を介して端子14と接続されていてもよい。
【0031】
ここで、複数の個別電極12、複数の配線部13及び複数の端子14は、金属などの導電性材料からなり、スクリーン印刷、スパッタ法、蒸着法等により形成することができる。さらに、複数の個別電極12、複数の配線部13及び複数の端子14が全て基材11の上面に形成されているので、基材11の上面においてこれらを互いに接続することができる。したがって、これらを接続するために基材11に貫通孔を形成する必要がなく、インク移送ヘッド1の構造を簡単にすることができるとともに、その製造コストを低減することができる。また、複数の個別電極12、複数の配線部13及び複数の端子14が全て基材11の上面に配置されるので、これらを上記方法により一度に形成することができる。
【0032】
そして、複数の個別電極12、複数の配線部13及び複数の端子14が、上述したように配置されることにより、基材11の上面においては、前方の端部に複数の個別電極12が左右方向に沿って配置され、後方の端部に複数の端子14が左右方向に沿って配置され、隣接する個別インク流路10の間に個別インク流路10と平行に、複数の個別電極12と複数の端子14とを接続する複数の配線部13が配置されることになり、複数の個別電極12、複数の配線部13及び複数の端子14の配置が簡単なものとなる。
【0033】
絶縁層15(第1絶縁層)は、フッ素系樹脂等の絶縁性材料からなり、基材11上面の前方の端部において左右方向に延び、複数の個別電極12を覆っている。絶縁層15は、基材11と同じ絶縁材料から形成されてもよい。絶縁層15は、スピンコート法により基材11上面の全域に絶縁材料を形成し、レーザにより不要な部分を除去することによって形成する。このほか、基材11上面に絶縁層15を形成する部分を除いてマスクを施し、CVD法により絶縁層15を形成することも可能であり、基材11の上面に絶縁性材料を塗布することによって絶縁層15を形成することも可能である。
【0034】
絶縁層16(第2絶縁層)は、アルミナ等、絶縁層15とは異なる絶縁性材料からなり、前後方向に関して、絶縁層15の後方(インクの移送方向)に隣接する領域(絶縁層15の配置領域に隣接する領域)から複数の端子14よりもやや前方の部分まで(端子14の近傍まで)、複数の個別インク流路10に跨って連続的に形成されている。これにより、絶縁層16は、複数の配線部13が形成された領域と、複数の個別インク流路10の絶縁層15が形成いない領域の大半を覆っている。ここで、絶縁層16は、絶縁材料の微粒子を基材11に噴射することによって堆積させるエアロゾルデポジション法(AD法)によって形成される。このほか、CVD法やスパッタ法等によっても絶縁層16を形成することが可能である。このとき、絶縁層16は、基材11上面の連続した領域に形成されているので、上記方法により、絶縁層16を一度に形成することができる。
【0035】
共通電極17は、絶縁層15が形成された基材11の上面の前後方向に関する略中央部よりもやや後方の、共通インク流路9の底面(内面)となる領域において、左右方向に延びている。共通電極17は、平面視で配線部13を覆っている絶縁層16に重なる部分(絶縁層16を介して配線部13と交差する部分)において前後方向に関する長さ(配線部13の延在方向に関する長さ、幅)が局所的に短くなっており、その他の部分においてはこれらの部分よりも大きい一定の幅で延びている。これにより、絶縁層15を介して配線部13と共通電極17とが交差する部分の面積が小さくなり、絶縁層15の配線部13と共通電極17とに挟まれた部分の静電容量を極力小さくすることができる。また、共通電極17は、図示しない位置においてドライバIC4に接続されており、ドライバIC4により常にグランド電位(第1電位)に保持されている。これにより、共通インク流路9内及び共通インク流路9に連通する複数の個別インク流路10内のインクは常にグランド電位に保持される。なお、共通電極17は個別電極12、配線部13及び端子14と同様の導電性材料からなり、これらと同様、スクリーン印刷、スパッタ法、蒸着法等により形成することができる。
【0036】
上部部材3は、基材21に複数の隔壁22、凹部23及び隔壁24が形成されることによって構成されている。基材21は、シリコン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセタール等の絶縁性材料からなる、前後方向に関する長さが基材11よりもやや短い略矩形の平面形状を有する板状体である。なお、基材21は、基材11と同じ材料である必要はなく、絶縁性材料からなるものであってもよい。
【0037】
複数の隔壁22は、それぞれ基材21下面の平面視で隣接する個別インク流路10の間に重なる部分から下方に突出し、基材21の前方の端部から前後方向の略中央部まで、前後方向に延びている。そして、下部部材2と上部部材3とが接合されることにより、基材11の上面、基材12の下面及び隔壁22によって囲まれる複数の空間がそれぞれ個別インク流路10となり、隣接する個別インク流路10は、隔壁22によって互いに隔てられる。このとき、前述したように、複数の隔壁22が絶縁層16の配線部13を覆っている部分を覆っているので、仮に絶縁層16に部分的な破損があっても、隔壁22によって個別インク流路10内のインクが配線部13に接触してしまうのを確実に防止することができる。
【0038】
凹部23は、基材21下面の前後方向に関する略中央部と基材21後方の端部との間の部分に、左右方向に基材21の略全長にわたって形成されている。そして、下部部材2と上部部材3とが接合されたときに、基材11の上面と凹部23とによって囲まれる空間が共通インク流路9となる。隔壁24は、基材21下面の後方の端部から下方に、隔壁22の下端と同じ位置まで突出し、左右方向に基材21の略全長にわたって延びている。
【0039】
次に、インク移送ヘッド1の動作について図5を用いて説明する。図5は、インク移送ヘッド1の動作を示す図である。
【0040】
インク移送ヘッド1においては、個別電極12と個別インク流路10内のインクとの間に電位差が生じると、その電位差に応じて、絶縁層15の個別電極12に対向する部分におけるインクの濡れ角が変化する(エレクトロウェッティング現象)。より詳細には、個別電極12と個別インク流路10内のインクとの間の電位差がVであるときの絶縁層15の濡れ角θは、個別電極12と個別インク流路10内のインクとの間に電位差が生じていないときの絶縁層15の濡れ角θ、絶縁層15の比誘電率ε、真空の誘電率ε、気液界面の表面張力γ及び絶縁層15の厚みtとの間に、
cosθ=cosθ+1/2×[(ε×ε)/(γ×t)]×V
の関係がある。したがって、個別電極12と個別インク流路10内のインクとの間の電位差Vが増加するのに伴って、cosθが増加する。つまり、θが小さくなり、絶縁層15表面の撥液性が低下する。
【0041】
そして、インク移送ヘッド1において吐出口10aからインクを吐出しないときには、図5(a)に示すように、個別電極12にグランド電位が付与されており、個別電極12とグランド電位に保持された個別インク流路10内のインクとの間には電位差が生じていない。このとき、絶縁層15表面におけるインクの濡れ角(例えば110°)は、絶縁層16表面におけるインクの濡れ角(例えば60°)よりも大きく、個別インク流路10の絶縁層16と対向する部分から絶縁層15と対向する部分にインクが移動可能となるときの絶縁層15の濡れ角(限界濡れ角)よりも大きくなっている。これにより、個別インク流路10内のインクのメニスカスは絶縁層15と絶縁層16との間で停止し、個別インク流路10の絶縁層15に対向する部分にインクが流れ込まず、吐出口10aからインクが吐出されない。なお、上記限界濡れ角は、絶縁層15の表面におけるインクの濡れ角、及び絶縁層16の表面におけるインクの濡れ角の他に、インクの表面張力、共通インク流路9及び個別インク流路10の流路構造、インクタンク5から共通インク流路9に流れ込むインクの背圧の大きさなどによって決まる。
【0042】
一方、吐出口10aからインクを吐出するときには、図5(b)に示すように、個別電極12に駆動電位Vを付与する。これにより、個別電極12と個別インク流路10a内のインクとの間に電位差(所定電位差)が生じ、絶縁層15表面におけるインクの濡れ角が小さくなり、限界濡れ角以下となる。したがって、個別電極10aの絶縁層15に対向する部分にインクが流れ込み、吐出口10aから記録用紙Pにインクが吐出される。
【0043】
このとき、絶縁層15の表面におけるインクの濡れ角は、絶縁層16の表面における濡れ角とほぼ等しいか、又は小さくなっている。これにより、個別インク流路10内においてインクがスムーズに移送される。特に、本実施形態のように、絶縁層15が基材11上面の前方の端部に位置する形態では、絶縁層15の表面におけるインクの濡れ角を絶縁層16の表面における濡れ角よりも小さくすることによって、これらの濡れ角が等しい場合よりもインクの移送がスムーズになる。また、配線部13が隣接する個別インク流路10の間に配置されており、さらにこの部分が隔壁22に覆われているので、個別電極12に駆動電位Vが付与されたときに、絶縁層16の個別インク流路10に露出する部分におけるインクの濡れ角が変化することはない。さらに、個別インク流路10内のインクが共通電極17により常にグランド電位に保持されているので、個別インク流路10内のインクと個別電極12との間の電位差に変動が発生しにくく、安定した動作が可能となる。
【0044】
なお、個別電極12に駆動電位Vが付与されたときに絶縁層15表面におけるインクの濡れ角が絶縁層16表面におけるインクの濡れ角とほぼ等しくなることから、個別電極12に駆動電位Vよりも小さい電位が付与された場合には(個別電極12と個別インク流路10内のインクとの間の電位差が所定電位差未満のときには)、絶縁層15表面におけるインクの濡れ角は絶縁層16表面におけるインクの濡れ角よりも大きくなり、個別インク流路10内のインクのメニスカスは絶縁層15と絶縁層16との間で停止する。
【0045】
以上に説明した第1実施形態によると、個別電極12、配線部13及び端子14が全て基材11の上面に形成されているので、これらを基材11の上面において接続することができる。したがって、基材11に貫通孔を形成する必要がなく、インク移送ヘッド1の構造を簡単にすることができるとともに、その製造コストを低減することができる。さらに、配線部13が絶縁層16に覆われているため、個別インク流路10内のインクが配線部13に接触するのが防止される。
【0046】
また、個別電極12に駆動電位V未満の電位を付与したとき(個別電極12と個別インク流路10内のインクとの間の電位差が所定電位差未満のとき)には、絶縁層15表面におけるインクの濡れ角が絶縁層16表面におけるインクの濡れ角よりも大きくなるので、吐出口10aからインクを吐出しないときに、個別インク流路10内のメニスカスを絶縁層15と絶縁層16との間で停止させることができる。
【0047】
また、配線部13が隣接する個別インク流路10の間の部分に形成され、絶縁層16の配線部13を覆っている部分が、隔壁22によって覆われているため、個別電極12に駆動電位Vを付与したときに、個別インク流路10内の絶縁層16に覆われた部分におけるインクの濡れ角が変化してしまうことがない。
【0048】
また、インク移送ヘッド1の内部には、共通インク流路9が形成され、共通インク流路9から複数の個別インク流路10にインクが供給されるので、インクタンク5からチューブ4を介して共通インク流路9にインクを供給することにより、複数の個別インク流路10に容易にインクを供給することができる。
【0049】
また、個別電極12に駆動電位Vが付与されたときの絶縁層15の表面におけるインクの濡れ角が絶縁層16の表面における濡れ角とほぼ等しくなっているので、個別インク流路10内においてインクがスムーズに移送される。
【0050】
また、共通インク流路9内に共通電極17が設けられているので、共通インク流路9及び個別インク流路10内のインクをグランド電位に保持することができる。したがって、インクと個別電極12との間の電位差が変動しにくくなり、安定した動作が可能となる。
【0051】
また、共通電極17は、配線部13と交差する部分において幅が局所的に短くなっているため、配線部13と共通電極17とが重なる部分の面積が小さくなり、絶縁層16の配線部13と共通電極17との間に挟まれた部分の静電容量を極力小さくすることができる。
【0052】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同じ構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0053】
一変形例では、図6に示すように、個別電極32が基材11上面の前方の端部よりもやや後方に配置されており、絶縁層35(第1絶縁層)が個別電極32を覆うように左右方向に延びており、絶縁層35の前方及び後方に隣接する領域に、それぞれ絶縁層36a、36b(第2絶縁層)が形成されている(変形例1)。なお、絶縁層35は、絶縁層15(図2参照)と同じ絶縁性材料からなり、絶縁層36a、36bは絶縁層16(図2参照)と同じ絶縁性材料からなる。
【0054】
この場合、吐出口10aからインクを吐出しないときには、図7(a)に示すように、個別電極32に駆動電位Vが付与されており、絶縁層35表面の個別電極12に対向する部分におけるインクの濡れ角が限界濡れ角以下となっているため、共通インク流路9及び複数の個別インク流路10の全域にインクが位置している。そして、吐出口10aにはメニスカスが形成されインクが吐出口10aから吐出することはない。
【0055】
そして、吐出口10aからインクを吐出する際には、図7(b)に示すように、インクを吐出する吐出口10aに対応する個別電極12にグランド電位を付与する。すると、絶縁層35表面のこの個別電極12に対向する部分におけるインクの濡れ角が限界濡れ角よりも大きくなり、個別インク流路10内の絶縁層35上に停留していたインクは、この部分よりもインクの濡れ角が小さい、絶縁層36a、36bが形成された領域に向けて、個別インク流路10の前方及び後方に移動する。そして、個別インク流路10の前方に移動したインクにより、個別インク流路10の絶縁層36aに対向する部分に停留していたインクが前方に押し出され、吐出口10aから記録用紙Pに吐出される。
【0056】
なお、変形例1においては、個別インク流路10内のインクに、吐出口10aからインクを吐出しないときの吐出口10aにおけるインクの表面張力よりも小さな背圧が作用していてもよいが、インクタンク5(図1参照)が共通インク流路9とほぼ同じ高さに位置し、個別インク流路10内のインクに背圧が作用していないことが好ましい。
【0057】
また、変形例1では、絶縁層35の前方及び後方にそれぞれ絶縁層36a、36bが形成されていたが、図8に示すように、絶縁層35の後方に絶縁層36bが形成され、絶縁層35の前方には絶縁層が形成されていなくてもよい(変形例2)。
【0058】
別の一変形例では、図9に示すように、各個別インク流路10前方の端部よりもやや後方の左右方向の略中央部に略矩形の平面形状を有する個別電極42aが形成され、個別電極42aの4つの角の外側に、それぞれ略直角三角形の平面形状を有する個別電極42bが形成されている。個別電極42aは配線部43a及び端子44aを介して、個別電極42bは配線部43b及び端子44bを介して、それぞれドライバIC4に接続されており、グランド電位及び駆動電位Vのいずれかの電位が選択的に付与される。また、絶縁層45(第1絶縁層)個別電極42a、42bを覆うようにが左右方向に延び、絶縁層45の前方及び後方に隣接する領域には絶縁層46(第2絶縁層)が形成され、配線部43a、43bを覆っている。(変形例3)。なお、絶縁層45は、絶縁層15(図2参照)と同じ絶縁性材料からなり、絶縁層46は絶縁層16(図2参照)と同じ絶縁性材料からなる。
【0059】
この場合、インクを吐出しないときには、図10(a)に示すように、ドライバIC4により、個別電極42aにグランド電位が付与されているとともに、個別電極42bに駆動電位Vが付与されている。これにより、個別電極42bに対向する部分におけるインクの濡れ角が限界濡れ角以下となり、絶縁層45の他の部分におけるインクの濡れ角が限界濡れ角よりも大きくなっている。これにより、個別インク流路10の絶縁層45に対向する部分のうち、個別電極42bに対向する部分にのみインクが存在しており、個別インク流路10の絶縁層45に対向する部分のうち、個別電極42aに対向する部分を含む左右方向に延びた領域には気泡Gが存在している。そして、この気泡Gによって、個別インク流路10内のインクが吐出口10aに流れるのがせき止められている。
【0060】
吐出口10aからインクを吐出する際には、図10(b)に示すように、個別電極42aに駆動電位Vを付与するとともに、個別電極42bにグランド電位を付与する。すると、絶縁層45の個別電極42bに対向する部分におけるインクの濡れ角が限界濡れ角よりも大きくなるとともに、絶縁層45の個別電極42aに対向する部分におけるインクの濡れ角が限界濡れ角以下となることによってインクが移動し、個別インク流路10の絶縁層45に重なる部分においては、個別電極42aに対向する部分にのみインクが位置することになる。これに伴って、個別インク流路10内の気泡Gも移動し、個別インク流路10の絶縁層15に対向する部分のうち、左右方向に関して個別電極42aの両側に位置し、個別電極42bに対向する部分を含んで前後方向に延びた2つの領域に位置する。これにより、個別インク流路10内のインクは気泡Gによってせき止められなくなり、吐出口10aから記録用紙Pにインクが吐出される。
【0061】
別の一変形例では、図11に示すように、複数の個別インク流路の各々に、個別電極12の前方に、前後方向に等間隔で配列された3つの電極51a、51b、51cが形成され、左右方向に配列された電極51a同士、51b同士及び51c同士がそれぞれ配線部52により互いに接続されている。さらに、絶縁層55(第1絶縁層)が、左右方向に関して隣接する個別インク流路50の間の前後方向に延びた領域、並びに、前後方向に関して複数の個別電極12及び複数の電極51a、51b、51cに重なる領域に連続的に形成されており、絶縁層56(第2絶縁層)が、絶縁層55の後方に隣接して形成されている。また、複数の電極51a、51b、51cは、基材11の上面の図示しない位置においてドライバIC4に接続されており、ドライバIC4により、駆動電位V及びグランド電位のいずれかの電位が付与される。また、隣接する個別インク流路50の間に隔壁は配置されていない(変形例4)。なお、絶縁層55は、絶縁層15(図2参照)と同じ絶縁性材料からなり、絶縁層56は絶縁層16(図2参照)と同じ絶縁性材料からなる。
【0062】
この場合、吐出口50aからインクを吐出しないときには、個別電極12及び電極51a、51b、51cにグランド電位が付与されており、第1実施形態と同様、絶縁層55に対向する部分にインクが流れ込まない。そして、インクを吐出する際には、第1実施形態と同様、図12(a)に示すように、個別電極12に駆動電位Vを付与すると、共通インク流路9内のインクが絶縁層55の個別電極12に対向する部分に流れ込む。
【0063】
次に、図12(b)に示すように、電極51aに駆動電位Vを付与すると、インクはさらに電極51aに対向する部分まで流れ込む。そして、インクが電極51aに流れ込んだ時点で、図12(c)に示すように、個別電極12の電位をグランド電位に戻すと、個別電極12に対向する部分に位置していたインクが前後方向に移動して、電極51aに位置していたインクは共通インク流路9内のインクから切り離される。
【0064】
この後、電極51bに駆動電位Vを付与し、インクが電極51bに対向する部分に流れ込んだ時点で電極51aの電位をグランド電位に戻し、さらにその後、電極51cに駆動電位Vを付与し、インクが電極51cに対向する部分に流れ込んだ時点で電極51bの電位をグランド電位に戻すことにより、インクが電極51b、51cに対向する部分に順次移動し、最終的に、図11(d)に示すように、吐出口50aから記録用紙Pにインクが吐出される。なお、変形例4においては、左右方向に隣接する複数の電極51a同士、電極51b同士、電極51c同士が接続されていたが、これらが互いに接続されておらず、個別にドライバIC4に接続されていてもよい。
【0065】
別の一変形例では、図13に示すように、共通電極67が本実施の形態と同様、左右方向に延びているとともに、左右方向に関して隣接する個別インク流路10の間に重なる位置において、前後方向に延び、共通インク流路9内において絶縁層15を完全に覆っている(変形例5)。この場合には、共通インク流路9内において絶縁層16の配線部13を覆っている部分が露出しないため、配線部13の電位が変化し、絶縁層16のこの配線部13に対向する部分におけるインクの濡れ角が変化しても、共通インク流路9におけるインクの移動に影響が与えられるのを防止することができる。
【0066】
別の一変形例では、図14に示すように、配線部83が、各個別電極12後方の端部の左右方向に関する略中央部から後方に引き出されて、個別インク流路10内を通過し、さらに、共通インク流路9内の共通電極87よりも前方の部分において右方に略直角に折れ曲がっている。また、共通電極87は、一定の幅で左右方向に延びている(変形例6)。この場合でも、各配線部83は、右方の図示しない位置においてドライバICと接続され、ドライバICにより個別電極12に電位が付与される。そして、この場合には、隣接する個別インク流路10の間の部分に配線部が形成されていないため、個別インク流路10同士の間隔を狭めて、個別インク流路10の集積度を高めることが可能となる。
【0067】
さらに、この場合には、配線部83と共通電極87とが重ならないため、絶縁層16に余分な静電容量が発生するのを防止することができる。また、配線部83が共通電極87と交差しないように配置されているため、第1実施形態の場合のように、絶縁層85における静電容量を小さくするために共通電極87の幅を局所的に狭くする必要がないので、共通電極87の形成が容易になる。
【0068】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、記録用紙にインクを移送して印刷を行うプリンタに本発明を適用した第1実施形態とは別の一例である。第2実施形態のプリンタは、図1のプリンタ100においてインク移送ヘッド1をインク移送ヘッド101に置き換えたものである。以下では、インク移送ヘッド101について説明する。
【0069】
図15は、第2実施形態に係るインク移送ヘッド101の図2相当の分解斜視図である。図16は、図15の平面図である。図17(a)は図16のC−C線断面図である。図17(b)は図16のD−D線断面図である。
【0070】
図15〜図17に示すように、インク移送ヘッド101は、その略下半分を構成する下部部材102とその略上半分を構成する上部部材103とが接合されることにより構成されており、前方の先端部に吐出口110aを有し、下部部材102と上部部材103との間に、前後方向に延びた複数の個別インク流路110が左右方向に等間隔に配列されて形成されているとともに、上部部材103の上部に、左右方向に延びた共通インク流路109が形成される。つまり、共通インク流路109は、個別インク流路110が配置された基材111の上面とは異なる平面に形成される。
【0071】
下部部材102は、基材111の上面(一表面)に複数の個別電極112、複数の配線部113、複数の端子114、絶縁層115、116が形成されることによって構成されている。基材111は、シリコン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセタール等の絶縁性材料からなる、略矩形の平面形状を有する板状体である。
【0072】
複数の個別電極112は、それぞれ略矩形の平面形状を有しており、基材111上面の前方の端部に複数の個別インク流路110に対応して、左右方向に等間隔で配列されている。
【0073】
複数の配線部113は、それぞれ個別電極112の右後方の角部から右方に隣接する個別電極112の間の領域まで延び、そこから後方に略直角に折れ曲がり、基材111上面の後方の端部に形成された端子114まで延びている。つまり、配線部113は、個別電極112から個別インク流路10におけるインクの移送方向の上流側に引き出されている。ここで、共通インク流路109が基材111の上面と異なる平面に形成されているため、配線部113を、共通液室109を避けるように引き回すことなく配置することができる(配線部113の配置の自由度が高くなっている)。
【0074】
複数の端子114は、それぞれ略矩形の平面形状を有し、基材111後方の端部の、平面視で配線部113に重なる位置に配置されている。また、複数の端子114は、図12に示すように、それぞれドライバIC104に接続されており、ドライバIC104により、端子114及び配線部113を介して、個別電極112に個別にグランド電位(第1電位)及び駆動電位V(第2電位)のいずれかの電位が選択的に付与されている。このように、複数の配線部113が個別インク流路110におけるインクの移送方向の上流側に引き出され、複数の端子114が基材111の後方の端に配置されているため、多数の個別電極112を高集積度で配置した場合でも、基材111後方の端部に配置された複数の端子においてドライバIC104との接続を行うことができる。なお、ドライバIC104は、基材11上面の後方の端部に配置され、端子114と直接接続されていてもよく、図示しないフレキシブルプリント基板(FPC)等を介して端子114と接続されていてもよい。
【0075】
ここで、複数の個別電極112、複数の配線部113及び複数の端子114は、金属などの導電性材料からなり、スクリーン印刷、スパッタ法、蒸着法等により形成することができる。そして、複数の個別電極112、複数の配線部113及び複数の端子114が全て基材111の上面に形成されているので、これらを基材111上面において接続することができる。したがって、これらを接続するために基材111に貫通孔を形成する必要がなく、インク移送ヘッド101の構造を簡単にすることができるとともに、その製造コストを低減することができる。また、複数の個別電極112、複数の配線部113及び複数の端子114が全て基材111の上面に配置されるので、これらを上記方法により一度に形成することができる。
【0076】
絶縁層115(第1絶縁層)は、フッ素系樹脂等、基材111とは異なる絶縁性材料からなり、基材111上面の前方の端部において左右方向に延び、複数の個別電極112を覆っている。ここで、絶縁層115は、スピンコート法により基材111の上面全域に絶縁材料を形成した後、レーザにより不要な部分を除去することにより形成される。また、基材111の上面にマスキングを施してCVD法により絶縁層115を形成することも可能であり、基材111上面に絶縁材料を塗布して絶縁層115を形成することも可能である。
【0077】
絶縁層116(第2絶縁層)は、アルミナ等、絶縁層115とは異なる絶縁性材料からなり、前後方向に関して、絶縁層115の後方(インクの移送方向)に隣接する領域(絶縁層115の配置領域に隣接する領域)から複数の端子114よりもやや前方の領域まで(端子114の近傍まで)、複数の個別インク流路110に跨って連続的に形成されている。絶縁層116は、絶縁材料の微粒子を基材111に噴射することによって堆積させるエアロゾルデポジション法(AD法)によって形成される。このほか、CVD法やスパッタ法等によっても絶縁層116を形成することが可能である。このとき、絶縁層116は、基材111上面の連続した領域に形成されているので、上記方法により、絶縁層116を一度に形成することができる。
【0078】
上部部材103は、基材121の下面に複数の隔壁122及び隔壁124が形成され、基材121の上面に隔壁125、126及び共通電極127が形成され、基材121を貫通する貫通孔128が形成されることによって構成されている。基材121は、前後方向に関する長さが基材111よりもやや短い略矩形の平面形状を有する板状体であり、基材111と同様、シリコン、ポリイミドなどの絶縁性材料からなる。
【0079】
複数の隔壁122は、それぞれ、基材121の下面の平面視で隣接する個別インク流路110の間に重なる部分から下方に突出し、基材121前方の端部から後方の端部付近まで前後方向に延びている。隔壁124は基材121の下面の平面視で基材111後方の端部から下方に複数の隔壁122の下端と同じ高さまで突出し、左右方向に基材121の略全長にわたって延びている。また、前述した複数の隔壁122後方の端は隔壁124に接続され、複数の隔壁122と隔壁124とは一体となっている。そして、下部部材102と上部部材103とが接合されることにより、基材111の上面、基材121の下面、複数の隔壁122及び隔壁124に囲まれた空間が複数の個別インク流路110となる。
【0080】
隔壁125は、基材121上面の前方の端部付近から上方に突出し、左右方向に基材121の略全長にわたって延びている。隔壁126は、基材121上面の後方の端部から上方に突出し、左右方向に基材121の略全長にわたって延びている。そして、基材121の上面、隔壁125、126及び基材121の上方に位置する図示しない部材によって囲まれる空間が共通インク流路109となる。
【0081】
共通電極127は、基材121上面の隔壁125と隔壁126との間の部分に、左右方向に基材121の略全長にわたって延びている。つまり、共通電極127は、共通インク流路109の内面に形成されている。共通電極127は、常にグランド電位(第1電位)に保持されており、これにより、共通インク流路109内のインクは常にグランド電位に保持される。共通電極127は、個別電極112、配線部113及び端子114と同様の導電性材料からなり、これらと同様、スクリーン印刷、スパッタ法、蒸着法等により形成することができる。
【0082】
複数の貫通孔128は、略円形の平面形状を有しており、共通電極127と隔壁126との間に、平面視で左右方向に関して複数の個別インク流路110の略中央部に重なる位置にそれぞれ形成されている。複数の貫通孔128は、基材121を上下方向に貫通しており、複数の貫通孔128を介して、共通インク流路109と各個別インク流路110とが連通している。これにより、共通インク流路109内のインクが各個別インク流路110に供給される。また、共通インク流路109と複数の個別インク流路110とが連通していることにより、複数の個別インク流路110内のインクがグランド電位に保持される。
【0083】
次に、インク移送ヘッド101により、記録用紙Pにインクを吐出する方法について図18を用いて説明する。図18は、インク移送ヘッド101により記録用紙Pにインクを吐出する方法を示す図である。
【0084】
インク移送ヘッド101において吐出口110aからインクを吐出しないときには、図18(a)に示すように、個別電極112にグランド電位が付与されており、個別電極112とグランド電位に保持された個別インク流路110内のインクとの間に電位差は生じていない。このとき、絶縁層115の表面におけるインクの濡れ角(例えば110°)は絶縁層116の表面におけるインクの濡れ角(例えば60°)よりも大きく、個別インク流路110の絶縁層116と対向する部分から絶縁層115と対向する部分にインクが移動可能となるときの絶縁層115の濡れ角(限界濡れ角)よりも大きくなっている。これにより、個別インク流路110内のインクのメニスカスは絶縁層115と絶縁層116との間で停止し、個別インク流路110の絶縁層115に対向する部分にはインクが流れ込まず、吐出口110aからインクが吐出されない。
【0085】
一方、吐出口110aからインクを吐出するときには、図18(b)に示すように、個別電極112に駆動電位Vを付与する。すると、個別電極112と個別インク流路110内のインクとの間に電位差が生じ、絶縁層115表面のこの個別電極115に対向する部分におけるインクの濡れ角が小さくなり、限界濡れ角以下となる。これにより、個別インク流路110において、絶縁層115に対向する部分にインクが流れ込み、吐出口110aから記録用紙Pにインクが吐出される。
【0086】
このとき、絶縁層115の表面におけるインクの濡れ角は、絶縁層116の表面におけるインクの濡れ角とほぼ等しくなっている。これにより、個別インク流路110内においてインクがスムーズに移送される。また、配線部113が隣接する個別インク流路110の間に配置されており、さらにこの部分が隔壁122に覆われているので、個別電極112に駆動電位Vが付与されたときに、絶縁層116の個別インク流路110に露出する部分におけるインクの濡れ角が変化することはない。さらに、個別インク流路110内のインクが共通電極117により常にグランド電位に保持されているので、個別インク流路110内のインクと個別電極112との間の電位差に変動が発生しにくく、安定した動作が可能となる。
【0087】
なお、第2実施形態においても、個別電極112に駆動電位Vが付与されたときに絶縁層115表面におけるインクの濡れ角が絶縁層116表面におけるインクの濡れ角とほぼ等しくなることから、個別電極112に駆動電位Vよりも小さい電位が付与された場合には(個別電極112と個別インク流路110内のインクとの間の電位差が所定電位差未満のときには)、絶縁層115表面におけるインクの濡れ角は絶縁層116表面におけるインクの濡れ角よりも大きくなり、個別インク流路110内のインクのメニスカスは絶縁層115と絶縁層116との間で停止する。
【0088】
以上に説明した第2実施形態によると、個別インク流路110と共通インク流路109とが異なる平面上にあるため、配線部113を、共通インク流路109を避けて引き回す必要がなく、配線部113の配置の自由度が高まる。
【0089】
また、複数の個別電極112、複数の配線部113及び複数の端子114が全て基材111の上面に形成されているので、これらを基材111上面において接続することができる。したがって、これらを接続するために基材111に貫通孔を形成する必要がなく、インク移送ヘッド101の構造を簡単にすることができるとともに、その製造コストも低減することができる。さらに、配線部113が絶縁層116に覆われているため、個別インク流路110内のインクが配線部113に接触するのが防止される。
【0090】
また、個別電極112に駆動電位V未満の電位を付与したとき(個別電極112と個別インク流路110内のインクとの間の電位差が所定電位差未満のとき)には、絶縁層115表面におけるインクの濡れ角が絶縁層116表面におけるインクの濡れ角よりも大きくなるので、吐出口110aからインクを吐出しないときに、個別インク流路110内のメニスカスを絶縁層115と絶縁層116との間で停止させることができる。
【0091】
また、配線部113が個別インク流路10の間の領域を通って端子114まで延びているとともに、絶縁層116の配線部113を覆っている部分が、隔壁122に覆われているため、個別電極112に駆動電位Vを付与したときに、絶縁層116の個別インク流路110に露出している部分におけるインクの濡れ角が変化してしまうことがない。
【0092】
また、個別電極112に駆動電位Vが付与されたときの絶縁層115の表面におけるインクの濡れ角が絶縁層116の表面における濡れ角とほぼ等しくなっているので、個別インク流路110内においてインクがスムーズに移送される。
【0093】
また、共通インク流路109内に共通電極127が設けられているので、共通インク流路109及び個別インク流路110内のインクを常にグランド電位に保持することができる。したがって、個別インク流路110内のインクと個別電極112との間の電位差が変動しにくくなり、安定した動作が可能となる。
【0094】
次に、第2実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0095】
第2実施形態では、複数の個別インク流路110の上方に共通インク流路109が配置されていたが、共通インク流路は、複数の個別インク110の下方(個別インク流路110とは異なる平面)に配置されていてもよい。例えば、一変形例では、図19に示すように、基材111の平面視で各個別インク流路110の後方の端部付近に基材111を貫通する、略円形の平面形状を有する貫通孔138が形成されており、基材111の下面に共通電極137が形成されている。そして、基材111と基材111の下方に位置する図示しない部材とにより画定される、基材111の下面を天井面とする空間が共通インク流路139となっている(変形例7)。この場合でも、共通インク流路139内のインクは複数の個別インク流路110に流れ込み、第2実施形態と同様にして吐出口110aからインクが吐出される。
【0096】
また、第2実施形態においても、第1実施形態の変形例1、2、3、6と同様に、個別電極、配線部及び端子の配置を変更することも可能であり、第1実施形態の変形例4の電極51a、51b、51c(図11参照)と同様の電極を設けた構成とすることも可能である。
【0097】
また、第1実施形態においては、共通インク流路9内に共通電極17が設けられ、第2実施形態においては、共通インク流路109内に共通電極127が設けられていたが、共通液室内に共通電極が設けられていなくてもよい。さらに、共通インク流路が形成されておらず、インクタンクから直接複数の個別インク流路にインクが供給されるように構成されていてもよい。
【0098】
また、第1、第2実施形態においては、それぞれ基材11、111が絶縁性材料により構成されたものであったが、これには限られず、例えば、導電性材料からなる基材の表面に絶縁性材料の層が形成されたものなど、少なくともその表面において絶縁性を有しているものであればよい。また、インクを記録用紙Pに向けて移送するものに限られず、例えば、ドラム等の転写体に向けてインクを移送するものであってもよい。
【0099】
以上に説明した第1、2実施形態では、本発明を、インクを移送するインク移送ヘッドに適用した例について説明したが、試薬、生体溶液、配線材料溶液、電子材料溶液、冷媒用、燃料用などインク以外の導電性の液体を移送する液体移送装置に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のインク移送ヘッドの一部を示す分解斜視図である。
【図3】図2のインク移送ヘッドの平面図である。
【図4】(a)が図3のA−A線断面図であり、(b)。がB−B線断面図である。
【図5】図2のインク移送ヘッドの動作を示す断面図である。
【図6】変形例1の図3相当の平面図である。
【図7】変形例1の図5相当の断面図である。
【図8】変形例2の図3相当の平面図である。
【図9】変形例3の図3相当の平面図である。
【図10】変形例3のインク移送ヘッドの動作を示す平面図である。
【図11】変形例4の図3相当の平面図である。
【図12】変形例4の動作を示す断面図である。
【図13】変形例5の図3相当の平面図である。
【図14】変形例6の図3相当の平面図である。
【図15】本発明の第2実施形態における図2相当の分解斜視図である。
【図16】図15のインク移送ヘッドの平面図である。
【図17】(a)が図16のC−C線断面図であり、(b)が図16のD−D線断面図である。
【図18】図16のインク移送ヘッドの動作を示す断面図である。
【図19】変形例7の図15相当の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0101】
1 インク移送ヘッド
4 ドライバIC
9 共通インク流路
10 個別インク流路
11 基材
12 個別電極
13 配線部
14 端子
15 絶縁層
16 絶縁層
17 共通電極
22 隔壁
32 個別電極
35 絶縁層
36 絶縁層
42a、42b 個別電極
43a、43b 配線部
44a、44b 端子
66 共通電極
75 絶縁層
76 絶縁層
83 配線部
85 絶縁層
86 絶縁層
101 インク移送ヘッド
104 ドライバIC
109 共通インク流路
110 個別インク流路
111 基材
112 個別電極
113 配線部
114 端子
115 絶縁層
116 絶縁層
122 隔壁
127 共通電極
137 共通電極
139 共通インク流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一表面において絶縁性を有する基材と、
前記基材の一表面において間隔を空けて並べて配置され、導電性を有する液体が個別に移送される複数の液体移送経路と、
前記基材の一表面の、前記複数の液体移送経路内の領域にそれぞれ配置された複数の個別電極と、
前記複数の個別電極からそれぞれ引き出され、前記基材の一表面に沿って延びる複数の配線部と、
前記基材の一表面において少なくとも前記複数の個別電極を覆うように配置され、前記液体に対する濡れ角が前記個別電極と前記液体との電位差に応じて変化する第1絶縁層と、
同じく前記基材の一表面において前記複数の配線部を覆うように設けられ、且つ、前記複数の液体移送経路内の、少なくとも前記第1絶縁層の配置領域に対して液体の移送方向に隣接する領域に配置された第2絶縁層と、
前記複数の配線部の端部にそれぞれ設けられた複数の端子を介して、前記複数の個別電極に対してそれぞれ電位を付与する電位付与手段とを備え、
前記個別電極と前記液体との間の電位差が少なくとも所定電位差未満であるときの、前記第1絶縁層の前記液体に対する濡れ角が、前記第2絶縁層の前記液体に対する濡れ角よりも大きいことを特徴とする液体移送装置。
【請求項2】
前記複数の配線部は、前記複数の液体移送経路の間にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体移送装置。
【請求項3】
前記複数の配線部は、前記複数の液体移送経路内にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体移送装置。
【請求項4】
前記複数の配線部は、前記複数の個別電極から、液体の移送方向上流側にそれぞれ引き出されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の液体移送装置。
【請求項5】
前記第2絶縁層は、前記複数の液体移送経路に跨って、前記前記第1絶縁層の配置領域に隣接する領域から前記複数の端子の近傍まで、連続的に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液体移送装置。
【請求項6】
前記電位付与手段は、前記複数の個別電極のそれぞれに対して所定の第1電位と第2電位の2種類の電位を選択的に付与するものであり、
前記個別電極に前記第1電位が付与されたときの、前記第1絶縁層の前記液体に対する濡れ角は、前記液体移送経路内において前記液体が前記第2絶縁層から前記第1絶縁層へ移動可能となる所定の限界濡れ角よりも大きく、
前記個別電極に前記第2電位が付与されたときには、前記第1絶縁層の前記液体に対する濡れ角が低下して、前記所定の限界濡れ角以下になるように構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液体移送装置。
【請求項7】
前記個別電極に前記第2電位が付与されたときに、前記第1絶縁層の前記液体に対する濡れ角が前記第2絶縁層の前記液体に対する濡れ角とほぼ等しいか、又は小さくなることを特徴とする請求項6に記載の液体移送装置。
【請求項8】
前記複数の液体移送経路と連通し、これら複数の液体移送経路にそれぞれ液体を供給する共通液室を有することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の液体移送装置。
【請求項9】
前記共通液室は、前記複数の液体移送経路が配置された前記基材の一表面とは異なる平面上に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の液体移送装置。
【請求項10】
前記共通液室の内面に、一定電位に保持された共通電極が配置されていることを特徴とする請求項9に記載の液体移送装置。
【請求項11】
前記共通液室は、前記複数の液体移送経路と同じく前記基材の一表面に配置され、
前記基材の一表面において、前記複数の個別電極から前記複数の端子までそれぞれ延びる前記複数の配線部が前記共通液室を通過しており、
少なくとも前記共通液室内において、前記複数の配線部が前記第2絶縁層で覆われていることを特徴とする請求項8に記載の液体移送装置。
【請求項12】
前記基材の一表面の前記共通液室の内面を構成する領域に、一定電位に保持された共通電極が配置され、
前記共通液室内を通過する前記複数の配線部が前記第2絶縁層を介して前記共通電極とそれぞれ交差していることを特徴とする請求項11に記載の液体移送装置。
【請求項13】
前記共通電極は、前記複数の配線部と交差する部分において、前記配線部の延在方向に関する長さが局所的に短くなっていることを特徴とする請求項12に記載の液体移送装置。
【請求項14】
前記共通電極は、前記共通液室内において前記第2絶縁層を完全に覆っていることを特徴とする請求項12に記載の液体移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−80684(P2008−80684A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264326(P2006−264326)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】