説明

液体組成物

【課題】pHに影響されることなく、アミノ酸が配合されていても10−ヒドロキシ−2−デセン酸の安定性が改善された液体組成物を提供する。
【解決手段】アミノ酸及び10-ヒドロキシ-2-デセン酸を含有する液体組成物において、シクロデキストリン類を配合することにより10-ヒドロキシ-2-デセン酸を安定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、10−ヒドロキシ−2−デセン酸が安定化された液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
10−ヒドロキシ−2−デセン酸は、ローヤルゼリーに特異的に含まれている有機酸であり、抗腫瘍作用、菌発育阻止作用を持つと言われている。ローヤルゼリーは蛋白質、脂質、炭水化物をはじめ、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、脂肪酸等の栄養成分をバランスよく含み、滋養、強壮、体質改善等広範な薬理作用を示すなど高度の機能性を有することから健康食品、医薬品、化粧品として利用されている。
【0003】
しかしながら、10−ヒドロキシ−2−デセン酸の安定性に関する研究は、ほとんど行われていなく、単一水溶液(クエン酸緩衝液)中では、pHに関係なく安定であるが、ドリンク剤等の製剤に他の成分と共に配合した場合に、その安定性が損なわれることが知られていた。
【0004】
従来、ローヤルゼリーとアミノ酸等を配合したpH3.5のドリンク剤(特許文献1参照)が知られているが、10−ヒドロキシ−2−デセン酸を配合した比較的高いpHの液剤については知られていない。
【0005】
また、一般的に、溶液中の成分の安定化方法として、窒素置換やビタミンC等の抗酸化剤を用いる方法(特許文献2及び3参照)が知られているが、これらの方法を用いても10−ヒドロキシ−2−デセン酸を十分に安定化することはできなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2005−35979号公報
【特許文献2】特開平9−252752号公報
【特許文献3】特開平7-258165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らがローヤルゼリー配合のドリンク剤を開発しようとしたところ、以下の欠点が判明した。すなわち、10−ヒドロキシ−2−デセン酸の単一水溶液にアミノ酸を配合することにより、10−ヒドロキシ−2−デセン酸の安定性が著しく低下すること、さらにpHが高くなるに従いその度合いが顕著であることが判明した。
【0008】
本発明は、pHに影響されることなく、アミノ酸が配合されていても10−ヒドロキシ−2−デセン酸の安定性が改善された液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、シクロデキストリン類を配合することにより、アミノ酸を含有する溶液中で10−ヒドロキシ−2−デセン酸を安定化できること、さらに、pHが高い範囲でより顕著に安定化効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アミノ酸、10-ヒドロキシ-2-デセン酸、及びシクロデキストリン類を含む液体組成物。
(2)シクロデキストリン類が、α型、β型、γ型及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上である上記(1)に記載の液体組成物。
(3)シクロデキストリン類が、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、6-o-マルトシル-β-シクロデキストリンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である上記(1)に記載の液体組成物。
(4)アミノ酸が、タウリン、アスパラギン酸、ヒスチジン、トレオニン、リジン、ロイシン、バリン、アルギニン、メチオニン及びそれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上である上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の液体組成物。
(5)シクロデキストリン類の配合量が、10-ヒドロキシ-2-デセン酸1質量部に対して5質量部以上である上記(1)から(4)のいずれかに記載の液体組成物。
(6)アミノ酸と10-ヒドロキシ-2-デセン酸を含む液体組成物にシクロデキストリン類を添加することによる10-ヒドロキシ-2-デセン酸の安定化方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によりpHに影響されることなく、アミノ酸を配合した液体組成物においても10−ヒドロキシ−2−デセン酸を安定に配合することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いる10−ヒドロキシ−2−デセン酸は、公知の化合物であり、ローヤルゼリーからの抽出物もしくは合成品のいずれであってもよく、又は、これを含むローヤルゼリーの形態で配合されてもよい。その配合量は、製剤全体に対して、1×10-5〜1.0w/v%、好ましくは1×10-5〜1×10-1w/v%、さらに好ましくは、5×10-4w/v%〜3×10-2w/v%である。1×10-5w/v%未満であると液剤に配合したときの10−ヒドロキシ−2−デセン酸又はこれを含むローヤルゼリーの薬理作用を発現しにくくなり、1.0w/v%を超えて配合すると内服液剤としたときに風味の点から好ましくないからである。
【0013】
本発明で用いるシクロデキストリン類としては、例えばα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又は誘導体であるマルトシル−α−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−γ−シクロデキストリン、グルコシル−α−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、グルコシル−γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンであり、1種又は2種以上配合することができる。特に好ましいのは、水溶性が高いシクロデキストリン類であり、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン及び、グルコシル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、6-o-マルトシル-β-シクロデキストリンが挙げられる。
【0014】
シクロデキストリン類の配合量は、10−ヒドロキシ−2−デセン酸1質量部に対して5質量部以上であれば本発明の効果を奏するが、製剤設計上の観点から、好ましくは10〜100質量部である。
【0015】
本発明の液体組成物に配合されるアミノ酸としては、タウリン、トレオニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、システイン、メチオニンから選ばれる中性アミノ酸、又はアスパラギン酸、グルタミン酸から選ばれる酸性アミノ酸及びそれらの塩、又はアルギニン、ヒスチジン、リジンから選ばれる塩基性アミノ酸及びそれらの塩が挙げられる。これらの配合量が0.05w/v%以上のときに、顕著に10−ヒドロキシ−2−デセン酸の分解を促進する。
【0016】
本発明の液剤組成物は、シクロデキストリンを配合することによりpHの値に影響されることなく10−ヒドロキシ−2−デセン酸を安定化することができるが、飲料としたときの防腐性、風味等を考慮し、通常pH2〜7、好ましくはpH2.5〜6程度である。
【0017】
本発明の液体組成物は、乳糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、ステビア抽出物、スクラロース、アセスルファムカリウム等を甘味剤またはエネルギー源として配合することが出来る。
【0018】
また、その他の成分として、ビタミン類、ミネラル類、生薬および生薬抽出物、カフェイン、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどを本発明の効果を損なわない範囲で配合することが出来る。
【0019】
また、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、保存料、pH調整剤などの製剤技術一般に使用される物質を配合することができ、また、界面活性剤などを溶解補助剤として本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0020】
本発明の液体組成物は常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり適量の精製水で溶解させた後、pHを調整し、残りの精製水を加えて全量調整する。
【0021】
本発明の液体組成物は、例えば健康飲料、栄養補給飲料などの各種飲料、ドリンク剤、シロップ剤などの医薬品や医薬部外品の内服液剤に適用できる。
【実施例】
【0022】
以下実施例および比較例により、本発明を詳細に説明する。
【0023】
実施例1〜20
表1及び表2の処方に従い常法により液体組成物を得た。
ただし、10−ヒドロキシ−2−デセン酸は、生ローヤルゼリー200mgに10倍量の精製水を加え、クエン酸ナトリウムでpH5.0に調整し、90度で30分加温攪拌後に遠心分離(日立工機製Himac CT5DL、ロータ:RT3S(スイング)、3000rpm×20分)し、上澄み液から得た。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
比較例1〜10
表3の処方に従い常法により液体組成物を得た。
ただし、10−ヒドロキシ−2−デセン酸は、実施例で示した方法と同様に調製した。
【0027】
【表3】

【0028】
実施例1から20、及び比較例1から10で得た組成物を65℃恒温槽にて4週間保管後、10−ヒドロキシ−2−デセン酸含量を液体クロマトグラフ法(カラム:TSK-gel ODS-80TS(東ソー)、移動相:水:メタノール:リン酸=550:450:1、流速:1ml/分、検出波長:232nm)により定量した。調製直後の10−ヒドロキシ−2−デセン酸含量に対する65℃、4週間後の残存率(%)を表4に示した。その結果、シクロデキストリンを配合することにより、優れた10−ヒドロキシ−2−デセン酸の安定化効果が得られた。
【0029】
【表4】

【0030】
試験例
表5から表7の処方に従い常法により液体組成物を得た。
ただし、10−ヒドロキシ−2−デセン酸は、実施例で示した方法と同様に抽出したものを使用した。表7で得た液体組成物を65℃恒温槽にて4週間保管後、10−ヒドロキシ−2−デセン酸含量を液体クロマトグラフ法により定量した。調製直後の10−ヒドロキシ−2−デセン酸含量を100%とし、65℃で4週間保存後の残存率(%)を図1に示した。
表5及び表6に示したとおり、10−ヒドロキシ−2−デセン酸の安定化においては、従来の窒素置換やビタミンC等の抗酸化剤を用いる場合と比較して、本発明の安定化技術が優れていることが認められた。
また、表7及び図1に示したとおり、タウリンを配合しない緩衝液においては10−ヒドロキシ−2−デセン酸はpH3から4.5の範囲で安定であるが、タウリンを配合した緩衝液においては10−ヒドロキシ−2−デセン酸は不安定化され、pHが高い方がその傾向が強く認められた。
【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【0033】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によりアミノ酸を配合した液体組成物に10−ヒドロキシ−2−デセン酸を安定に配合することが可能になったことから内服液剤等の医薬品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は調製直後の10−ヒドロキシ−2−デセン酸含量に対する65℃で4週間保存後の残存率(%)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸、10-ヒドロキシ-2-デセン酸、及びシクロデキストリン類を含む液体組成物。
【請求項2】
シクロデキストリン類が、α型、β型、γ型及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
シクロデキストリン類が、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及び6-o-マルトシル-β-シクロデキストリンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項4】
アミノ酸が、タウリン、アスパラギン酸、ヒスチジン、トレオニン、リジン、ロイシン、バリン、アルギニン、メチオニン及びそれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項5】
シクロデキストリン類の配合量が、10-ヒドロキシ-2-デセン酸1質量部に対して5質量部以上である請求項1から4のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項6】
アミノ酸と10-ヒドロキシ-2-デセン酸を含む液体組成物にシクロデキストリン類を添加することによる10-ヒドロキシ-2-デセン酸の安定化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−39402(P2007−39402A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227326(P2005−227326)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】