説明

液剤吐出装置

【課題】 基板の表面全体に液剤を最小限の液量で均一に塗布することができるとともに、間欠吐出を可能とし、ノズル内に液剤を充填させる準備時間を解消して応答性を向上させることのできる液剤吐出装置を提供すること。
【解決手段】 ノズル3を、基板搬送手段11により搬送された基板Pの被液剤塗布面に上方から対向するように垂直に配設したノズルとするとともに、タンク2とノズル3とを連結するパイプ4の水平部分のノズル3近傍に、パイプ4をU字状に彎曲させたトラップ4aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の被液剤塗布面に対して液剤を間欠吐出する液剤吐出装置に係り、特に、間欠吐出の応答性を向上させることができ、液剤の吐出量を最小限に削減することのできる液剤吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば液晶表示素子を製造する工程において、基板の表面にポリイミドなどの高分子膜により配向膜を形成したのち、その膜面にラビング処理が行われる。そして、このラビング処理にはナイロンやポリエステルなどの植毛布が使用されているが、膜面にラビング布からの抜け毛やカスなどが付着することがあるため、これらの残渣を取り除くために基板の洗浄が行われている。
【0003】
このような従来の基板の洗浄装置の一例としては、基板を搬送する複数の回転ローラからなるローラコンベアを備え、このローラコンベアに沿って第1シャワー室、第2シャワー室、パドル洗浄室および乾燥室とが順に設置されており、前記各室間は基板を搬送するためのスリットが形成された隔壁により仕切られている。そして、パドル洗浄室、第1シャワー室および第2シャワー室では、純水、超純水、IPA(イソプロピルアルコール)あるいは純水とIPAの混合液などの洗浄液がパドルノズルあるいはシャワーノズルを備えた液剤吐出装置から吐出されて基板の洗浄が行われ、一方、乾燥室では、エアナイフにより洗浄された基板が乾燥されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−157196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような従来の液剤吐出装置のうち、特にパドルノズルによって基板の洗浄を行うパドル洗浄においては、液剤の流量を確保し液剤の吐出を安定させるためにパドルノズル内に液剤を充填させて吐出させる必要があった。そこで、間欠吐出を行うためには、その都度パドルノズル内に液剤を充填させなくてはならず、安定して液剤を吐出させるには準備時間が掛かるという問題があり、安定して液剤を吐出させるには、その間に連続吐出しなければならなかった。そのため、1つの基板を洗浄し終えつぎの基板が搬送されてくる間に吐出される液剤のロスが大きかった。また、パドルノズルにより間欠吐出を行おうとすると、吐出を停止している最中にノズル口から液剤が流下してしまうことがあり、ノズル口からつぎに液剤が吐出されるまでの間に空気が進入する問題を有していた。この結果、つぎに液剤の吐出を行う際に最初に空気が吐出されてしまい、液剤が一瞬遅れて吐出されることになり、基板の表面全体に均一に液剤を応答よく塗布することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、基板の表面全体に液剤を最小限の液量で均一に塗布することができるとともに、間欠吐出をする際に、ノズル内に液剤を充填させる準備時間を解消して応答性を向上させることのできる液剤吐出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため本発明の液剤吐出装置の特徴は、基板を水平に搬送する基板搬送手段と、基板の被液剤塗布面に塗布される液剤を備蓄するタンクと、前記タンクにパイプを介して連結され、前記基板の被液剤塗布面に対して前記液剤を吐出するノズルと、前記液剤の前記タンクからの供給を制御する液剤供給制御手段とを有する液剤吐出装置において、前記ノズルは、前記基板搬送手段により搬送される基板の被液剤塗布面に上方から対向するように垂直に配設したノズルとされ、前記タンクと前記ノズルとを連結する前記パイプの前記ノズル近傍に、前記パイプをU字状に彎曲させたトラップが設けられている点にある。
【0008】
このような構成を採用したことにより、ノズルから液剤を吐出することにより基板の被液剤塗布面に対して必要最小限の液量で液剤を吐出することができ、基板の被液剤塗布面に吐出された液剤を基板の被液剤塗布面全体に均一に塗布することができる。また、ノズル近傍に設けられたU字状に彎曲されたトラップにより液溜めができることにより、ノズルから液剤が流下する量を少なくして、ノズル内に空気が進入することを抑制できるので、液剤の応答性のよい間欠吐出が可能となる。
【0009】
また、本発明に係る液剤吐出装置の他の特徴は、前記タンクを2つ有し、前記各タンクと前記ノズルとはそれぞれパイプを介して連結され、前記各パイプの前記ノズル近傍に、それぞれ前記各パイプをU字状に彎曲させたトラップが設けられている点にある。
【0010】
このような構成を採用したことにより、ノズルから吐出される液剤の流量およびノズルへの液剤の供給をより安定させることができ、基板の被液剤塗布面に対して液剤を安定して塗布することができるとともに、液剤の間欠吐出の応答性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液剤吐出装置によれば、間欠吐出の応答性を向上させることができ、液剤のロスを減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の液剤吐出装置の実施形態について、先に説明した従来例と同じく液晶表示素子を構成する透明基板のラビング処理後の洗浄装置に採用した場合を例に説明する。
【0013】
図1は本実施形態の液剤吐出装置を採用した洗浄装置の概略図である。
【0014】
本実施形態における洗浄装置10は、図1に示すように、ラビング処理を施された基板Pを搬送する複数本の回転ローラ12からなるローラコンベアとしての基板搬送手段11を備えており、この基板搬送手段11に沿って基板Pの搬送方向上流(図1の右側)からブラシ室13、第1洗浄室14、第2洗浄室15、乾燥室16およびバッファ室17が順に配置されている。そして、前記各室13,14,15,16,17間は、基板Pを搬送するためのスリット18aが形成された隔壁18により仕切られている。なお、前記各スリット18aは、前記各洗浄室14,15における洗浄液が隣接する各室に浸入しないように基板Pとほぼ同径に形成されている。
【0015】
前記ブラシ室13には、ラビング処理の際に基板Pの裏面(非洗浄面)に付着したラビングブラシの抜け毛やカスといった残渣(図示せず)を取り除くための静電ブラシ19が前記基板搬送手段11により搬送されてきた基板Pの裏面に押し当てられるように配設されている。
【0016】
前記第1洗浄室14には、純水、超純水、IPA(イソプロピルアルコール)あるいは純水とIPAの混合液などの洗浄液を基板Pの表面(被液剤塗布面)の全体に吐出することのできる独立した複数の散液口を有するシャワーノズル20が配設されており、このシャワーノズル20には洗浄液が備蓄されたタンク22がパイプ21を介して連結されている。そして、前記パイプ21には、前記シャワーノズル20への洗浄液の供給をソレノイドバルブ(図示せず)の開閉により制御する液剤供給制御手段23が配設されている。なお、前記第1洗浄室14の前記シャワーノズル20から吐出される洗浄液は循環され繰り返し使用される。また、前記第1洗浄室14に配設されるシャワーノズル20は、基板Pの表面全体に均一に洗浄液を連続吐出できるものであれば複数配設してもよい。
【0017】
前記第2洗浄室15には本実施形態の前記液剤吐出装置1が配設されており、後述するノズル3が前記基板搬送手段11により搬送されてきた基板Pの表面の中心部に垂直に位置するように配設されている。なお、基板Pの表面とノズル3の先端部3aとの距離は35mm程度であることが好ましい。
【0018】
前記液剤吐出装置1は、純水、超純水、IPAあるいは純水とIPAの混合液などの洗浄液(新液)が備蓄された2つのタンク2,2と、前記各タンク2に備蓄された洗浄液を基板Pの表面に吐出するためのノズル3と、前記各タンク2と前記ノズル3とをそれぞれ連結するパイプ4,4と、前記各パイプ4,4に配設され前記各タンク2,2から前記ノズル3への洗浄液の供給をそれぞれソレノイドバルブ(図示せず)の開閉により制御する液剤供給制御手段5とを有している。
【0019】
前記ノズル3は、前記各パイプ4,4を通じて前記各タンク2,2から供給された洗浄液を下方に垂直に吐出する1点ノズルで、スリット口からカーテン状に洗浄液を吐出するパドルノズル、またはパイプよりも小径のノズルを用いることができる。その小径のノズル3の口径は好ましくは6mm程度のものがよい。
【0020】
前記各パイプ4,4は、前記ノズル3の上端部3bにおいて水平にそれぞれが対向するように連結されており、前記各パイプ4,4の水平部分の前記ノズル3の近傍にはそれぞれ前記各パイプ4,4をU字状に彎曲させたトラップ4a,4aが形成されている。
【0021】
前記各U字状のトラップ4aの高さhは200mm程度がよい。
【0022】
また、前記各U字状のトラップ4aの下端から、前記ノズル3の先端部3aとの距離xは15mm程度とする。
【0023】
この結果、パイプ4内に溜まった洗浄液を極力流れ出ないようにすることができる。
【0024】
なお、前記第2洗浄室15の前記液剤吐出装置1から吐出され使用された洗浄液は廃液タンク(図示せず)に備蓄されていき、前記液剤吐出装置1からは常に新しい洗浄液(新液)が供給される。
【0025】
前記乾燥室16には、その前室である前記第2洗浄室15において洗浄された基板Pに付着した洗浄液を吹飛ばし乾燥させるためのエアナイフ24が配設されている。
【0026】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の液剤吐出装置1の作用について説明する。
【0027】
まず、ラビング処理された基板Pが基板搬送手段11によりブラシ室13に搬送され、基板搬送手段11によりブラシ室13内を基板Pが搬送されながら静電ブラシ19が基板Pの裏面に回転接触して基板Pの裏面に付着したラビングブラシの抜け毛やカスといった残渣が取り除かれる。
【0028】
つぎに、ブラシ室13において裏面の残渣が取り除かれた基板Pが基板搬送手段11により第1洗浄室14に搬送され、循環され使用される洗浄液をシャワーノズル20から連続吐出して基板Pの表面が洗浄される。なお、第1洗浄室14における洗浄は、第2洗浄室15における仕上げ洗浄の際に洗浄むらや異物残りが生じることを防止するための本洗浄として基板Pの表面全体の異物を除去するための洗浄となっている。
【0029】
つぎに、第1洗浄室14において基板表面の本洗浄が行われ、表面全体に洗浄液がなじんだ基板Pが基板搬送手段11により第2洗浄室15に搬送され、新液をノズル3から基板Pの表面の中心部に吐出する。このとき、ノズル3から吐出される新液は液剤供給制御手段5により基板Pの表面全体に均一に塗布できる最小限の量が吐出され、基板Pの表面の中心部に吐出された新液はその表面張力により基板の表面全体に均一に塗布され、異物を含む本洗浄での洗浄液と新液が置換されて洗浄が行われる。そして、基板Pに対してノズル3から一定量の新液が吐出された後、液剤供給制御手段5により新液の吐出が停止され、つぎの基板Pが搬送されるまで待機状態となる。このとき、ノズル3と各タンク2,2とを連結するパイプ4,4の水平部分に設けられたトラップ4a,4aに新液が滞留しているので、つぎの基板Pが第2洗浄室15に搬送されると準備時間を必要とせずに新液の吐出を安定して行うことができる。なお、トラップ4a,4aに滞留された新液は、ノズル3の口径がパイプ径よりも小径に形成されているため場合はノズル3から流下することをさらに抑制することができ、つぎの吐出を行う際にノズル3に空気が進入してしまうことを抑制することができる。
【0030】
つぎに、第2洗浄室15において表面の仕上げ洗浄が行われた基板Pが基板搬送手段11により乾燥室16に搬送され、基板Pに付着した洗浄液がエアナイフ24から放出されるエアにより吹飛ばされて基板Pの乾燥が行われる。
【0031】
そして、乾燥室16において乾燥された基板Pが基板搬送手段11によりバッファ室17に搬送され、順次搬送された基板Pが複数枚ストックされる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の液剤吐出装置1によれば、新液による仕上げ洗浄を行う際に液剤の使用量を最小限に抑えることができ液剤のロスを大幅に削減することができる。さらに、ノズル3に空気が進入してしまうことを抑制することができ、トラップ4a,4aに液剤が滞留されるため間欠吐出の応答性を向上させることができる。
【0033】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、本実施形態においてはラビング処理後の基板の洗浄装置における洗浄液の塗布を一例として挙げているが、このほかにも液晶表示素子を製造する工程における現像装置における現像液の塗布やエッチング装置におけるエッチング液の塗布などにも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態の液剤吐出装置を採用した洗浄装置の概略図
【符号の説明】
【0035】
1 液剤吐出装置
2 タンク
3 ノズル
4 パイプ
4a トラップ
5 液剤供給制御手段
10 洗浄装置
11 基板搬送手段
12 回転ローラ
13 ブラシ室
14 第1洗浄室
15 第2洗浄室
16 乾燥室
17 バッファ室
18 隔壁
18a スリット
19 静電ブラシ
20 シャワーノズル
21 パイプ
22 タンク
23 液剤供給制御手段
24 エアナイフ
P 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に搬送する基板搬送手段と、基板の被液剤塗布面に塗布される液剤を備蓄するタンクと、前記タンクにパイプを介して連結され、前記基板の被液剤塗布面に対して前記液剤を吐出するノズルと、前記液剤の前記タンクからの供給を制御する液剤供給制御手段とを有する液剤吐出装置において、
前記ノズルは、前記基板搬送手段により搬送される基板の被液剤塗布面に上方から対向するように垂直に配設したノズルとされ、前記タンクと前記ノズルとを連結する前記パイプの前記ノズル近傍に、前記パイプをU字状に彎曲させたトラップが設けられていることを特徴とする液剤吐出装置。
【請求項2】
前記タンクを2つ有し、前記各タンクと前記ノズルとはそれぞれパイプを介して連結され、前記各パイプの前記ノズル近傍に、前記各パイプをU字状に彎曲させたトラップがそれぞれ設けられている請求項1に記載の液剤吐出装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−117952(P2007−117952A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316875(P2005−316875)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】