説明

液剤塗布用マルチノズル

【課題】ノズルを高密度に配設可能な液剤塗布用マルチノズルを提供する。
【解決手段】液剤塗布用マルチノズルの本体を構成するケーシングブロック50cの先端に液剤塗布エリアに対応した隆起面52aを形成し、この隆起面52aに複数の吐出口54を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液剤塗布用マルチノズルに係り、特にハードディスクドライブ(HDD)用磁気ヘッドサスペンションの微細部分等に対する接着用液剤の塗布に適したマルチノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
HDDに使用される磁気ヘッドサスペンションは、キャリッジアーム等の支持軸に取り付けられるベースプレートと、ベースプレートから先方に延びるロードビームを有する。前記支持軸はVCM(Voice Coil Motor)を用いたアクチュエータで駆動され、これによってロードビームの先端側にフレクシャを介して取り付けられる磁気ヘッドをシーク方向に位置決め制御する。近年の高記録密度型HDDでは前記支持軸を駆動するアクチュエータだけでは高精度な磁気ヘッドの位置決め制御が困難なため、ベースプレートとロードビームとの間にさらに微動アクチュエータを設け、この微動アクチュエータによってロードビームをシーク方向に揺動させる二段階アクチュエータ型が採用されている。
【0003】
ところで、磁気ヘッドサスペンションに微動アクチュエータなどの各種部品を取り付けるのに一般的に接着用液剤が使用される。この液剤は絶縁性のものと導電性のものがあり、シリンジに蓄えられた液剤にエア圧(又はピストン等による機械的な圧)をかけてシリンジ先端のノズルから液剤を吐出させ対象ワークの所望の液剤塗布エリアに塗布する。一般的なノズルとしては図11(A)に示すものがあり、このノズル10の上端入口部10aをシリンジの吐出口に接続し、シリンジをロボットで支持した状態でノズル10を所定の液剤塗布エリアに移動させ、ノズル先端10bから液剤を点状に塗布する。或いは、図11(B)のようにロボットでノズル先端10bを移動させながら液剤をライン状に塗布する。
【0004】
図11(A)のノズル10はノズル先端10bの吐出口が一つのシングルノズルであるが、液剤塗布エリアが複数箇所または広範囲にわたる場合は塗布時間短縮のため図12(A)のようなマルチノズル20が使用されることがある。このマルチノズル20は液剤の流入側となる入口部20aが一系統であるが、ケーシングブロック20c内で吐出側が複数の通路に分岐し、この分岐通路の末端に位置する複数の円筒状ノズル20bから液剤を一斉に吐出する構造である。なお、ブロックに形成したマルチノズルについては特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−300257号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチノズルを使用して微量の液剤を広範囲に塗布したい場合、ノズルを狭ピッチで多数設ける必要がある。しかし、ノズルには最低限の円筒肉厚が必要であるし、ノズル間にも製作上最低限のピッチ隙間が必要である。このため、図12(A)のようなマルチノズル20ではノズル間ピッチを狭くするには限界がある。従って、図12(B)のように塗布した液剤30の量が少ないと液剤30が島状に分かれてしまう反面、図12(C)のように液剤30を塗布し過ぎると塗布厚が必要以上に大きくなって液剤30の使用量が増大すると共に接着性が低下するおそれがある。また、ノズルが細いためノズルが破損・変形しやすいという課題もある。本発明は以上の課題を解決すべくノズルを高密度に配設可能な液剤塗布用マルチノズルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、ケーシングブロックの先端に液剤塗布エリアに対応した隆起面を形成し、前記隆起面に液剤を吐出する複数の吐出口を形成した液剤塗布用マルチノズルを提供する。
前記隆起面は帯状の隆起面としてもよく、この帯状の隆起面に沿って液剤を吐出する吐出溝を形成してもよい。
前記隆起面は矩形帯状の隆起面としてもよく、この矩形帯状の隆起面に沿って液剤を吐出する吐出溝を形成するだけでなく、矩形帯状の隆起面の内側のケーシングブロックの先端に液剤を吐出する1又は2以上の吐出口を形成してもよい。
【0008】
本発明の別の形態として、ケーシングブロックの先端に液剤塗布エリアとしての孔部又は切欠きの縁部形状に対応した隆起部を形成し、前記隆起部の基部に沿って液剤を吐出する複数の吐出口を形成してもよい。この場合、前記隆起部の基部の複数の吐出口に代えて液剤を供給する長溝を形成してもよい。また、前記隆起部の側面に前記吐出口又は長溝に連通し隆起部の高さ方向に延在した溝部を形成してもよい。
【0009】
本発明は別の形態として、ケーシングブロックの先端に、磁気ヘッドを支持する磁気ヘッドサスペンションのロードビーム駆動用アクチュエータ素子が嵌合するベースプレートの孔部又は切欠きの縁部形状に対応した隆起部を形成し、前記隆起部の基部に沿って液剤を吐出供給する複数の吐出口又は長溝を形成した液剤塗布用マルチノズルを提供する。前記隆起部の側面には、前記吐出口又は長溝に連通し隆起部の高さ方向に延在した溝部を形成することができる。
【0010】
本発明は他の形態として、磁気ヘッドを支持する磁気ヘッドサスペンションのベースプレートとロードビームの組立体に液剤を塗布する液剤塗布用マルチノズルであって、前記マルチノズルの本体を構成するケーシングブロックの先端に、ロードビーム駆動用アクチュエータ素子が嵌合する前記ベースプレートの孔部又は切欠きの縁部形状に対応した隆起部を形成すると共に前記隆起部の基部に沿って液剤を吐出供給する複数の吐出口又は長溝を形成し、かつ、前記ケーシングブロックの先端にロードビームに対して液剤を塗布する吐出口を形成した液剤塗布用マルチノズルを提供する。前記隆起部の側面には、前記吐出口又は長溝に連通し隆起部の高さ方向に延在した溝部を形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ケーシングブロックの先端に液剤塗布エリアに対応した隆起面を形成し、この隆起面に液剤を吐出する複数の吐出口を形成しているので、従来のように円筒状ノズルを複数配設したマルチノズルのようにノズルの肉厚やノズル間最低すき間を考慮する必要がなく、吐出口の径を可及的に小さくすることで高密度の液剤塗布用マルチノズルが得られる。また、従来のマルチノズルに比べて破損・変形のおそれが少ないという利点がある。さらに、吐出口を形成した隆起面によって液剤塗布エリアが規定されるので、正確な位置と範囲での液剤塗布が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は本発明の第1の形態に係るマルチノズルの斜視図、(B)はマルチノズルの部分断面図。
【図2】本発明の第2の形態に係るマルチノズルの斜視図。
【図3】本発明の第3の形態に係るマルチノズルの斜視図。
【図4】(A)は本発明の第4の形態に係るマルチノズルの斜視図、(B)はマルチノズルの変形例の底面図、(C)はマルチノズルの別の変形例の底面図。
【図5】磁気ヘッドサスペンションの斜視図。
【図6】シリンジ、マルチノズルおよび磁気ヘッドサスペンションの斜視図。
【図7】(A)はケーシングブロックの下面斜視図、(B)は変形例に係るケーシングブロックの下面斜視図。
【図8】(A)はベースプレートとロードビームの組立体にマルチノズルを接近させた状態の側面図、(B)は磁気ヘッドサスペンションのベースプレートに液剤を塗布した状態の斜視図。
【図9】微動アクチュエータを嵌合したベースプレートの斜視図。
【図10】微動アクチュエータを嵌合したベースプレートの斜視図。
【図11】(A)はノズルの斜視図、(B)はノズルによる液剤線状塗布を示す側面図。
【図12】(A)はマルチノズルの斜視図、(B)と(C)はマルチノズルによる液剤塗布を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の形態
以下に本発明の第1〜第4の形態を図に基づいて説明する。図1(A)は第1の形態に係るマルチノズル50を示し、このマルチノズル50は中空立方体形状のケーシングブロック50cを有する。このケーシングブロック50cの上面中央には図示しないシリンジの吐出口に接続される筒状の入口部50aが形成されている。この入口部50aはケーシングブロック50c内の中空部に連通している。ケーシングブロック50cの下面中央には、矩形帯状の隆起部52が形成されている。この隆起部52の大きさ、形状は、液剤を塗布する対象ワークの液剤塗布エリアの大きさ、形状に対応している。隆起部52の矩形状の隆起面52aには、図1(B)に示すようにケーシングブロック50c内の中空部に連通する複数の吐出口54が隆起面52aに沿って等間隔に形成されている。吐出口54は従来公知の技術を使用して形成可能であり、例えばキリ加工、放電加工、レーザー加工によって形成することができる。吐出口54の数や大きさは液剤塗布量等に応じて任意に設定可能である。図示例では矩形状隆起面の辺々に各6個の吐出口54が形成されている。吐出口54の径は例えば0.03〜0.1mmとすることができる。従来の円筒状ノズルではノズル内径が0.15mm程度が限界であったが、本発明では0.1mm以下の径のノズルでも容易に形成することができる。
【0014】
ケーシングブロック50cの材質は、加工するノズルの径や塗布する液剤の種類に応じて任意に最適なものを選択することができる。金属類では例えば超硬金属、ダイス鋼、ハイス鋼、ステンレス鋼、銅などを使用することができる。非金属類では例えばセラミックスやルビーを使用することができる。また液剤が腐食性の場合は例えばステンレス鋼が適するし、熱伝導率を重視する場合は例えば銅が適する。熱等による変形を抑制する必要がある場合は例えばルビーを使用することができるし、耐熱性を重視する場合は例えばセラミックスを使用することができる。防錆ないし耐食性向上、非粘着性等向上のために必要に応じてケーシングブロックにコーティングを施すことができる。例えば摩擦係数を低減するためにDLCコーティングを施すことができるし、非粘着性等向上のためにフッ素樹脂コーティングを施すことができる。
【0015】
図1(A)のマルチノズル50は以下のように使用する。まずマルチノズル50を取り付けたシリンジをロボットアームに固定する。そしてこのロボットアームを操作してマルチノズル50を図1(B)のように液剤を塗布しようとする対象ワークWの近くまで移動させる。次に、マルチノズル50の隆起面を対象ワークWの液剤塗布エリアに平行に対面させ、両者の間に所定のすき間Cを確保する。このすき間Cの大きさは液剤塗布量に対応したものとし、塗布量(塗布厚)が多い(厚い)場合は大きめのすき間とし、塗布量(塗布厚)が少ない(薄い)場合は小さめのすき間とする。この状態で吐出口から液剤を所定量吐出させると、吐出された液剤が前記すき間Cに均一に拡散し、所定厚みで矩形状の塗布済液剤56が形成される。
【0016】
第2の形態
図2は第2の形態に係るマルチノズル60を示す。ケーシングブロック50cと入口部60aの関係は図1と同じである。このマルチノズル60のケーシングブロック60cの下面中央には矩形帯状の隆起部62が形成されている。この隆起部62の大きさ、形状は、液剤を塗布する対象ワークの液剤塗布エリアの大きさ、形状に対応している。隆起部62の矩形状の隆起面62aには一対の吐出溝64a、64bが形成されている。各吐出溝64a、64bの一端にはケーシングブロック60c内の中空部に連通する連通口66a、66bが接続されている。吐出溝64a、64bと連通口66a、66bは従来公知の技術を使用して形成可能であり、例えばキリ加工、放電加工、レーザー加工によって形成することができる。吐出溝の幅は例えば0.03〜0.1mmとすることができる。
【0017】
図2のマルチノズル60も使用法は図1のものと同じでよい。連通口66a、66bから液剤を所定量吐出させると、この液剤が吐出溝64a、64b全体に行き渡ると共に、吐出溝64a、64bから下方にはみ出した液剤が対象ワークの液剤塗布エリアに付着して所定厚みでコ字状の塗布済液剤68a、68bを形成する。なお、銀などの導電性微粒子を含有する液剤を塗布する場合、従来のノズルではノズル詰まりの問題があったが、このように吐出溝64a、64bにより液剤を塗布することでノズル詰まりの問題が解消する。
【0018】
第3の形態
図3は第3の形態に係るマルチノズル80を示す。ケーシングブロック80cと入口部80aの関係は図1と同じである。このマルチノズル80のケーシングブロック80cの下面中央には矩形状の隆起部82が形成されている。この隆起部82の隆起面82aの周縁部には一対のコ字状の吐出溝84a、84bが形成され、各吐出溝84a、84bの一端に図2と同様に連通口86a、86bが接続されている。隆起面82aの中央には比較的大きな第1吐出口87が形成され、この第1吐出口87の両側に比較的小さな第2吐出口88が形成されている。これら吐出口87、88はケーシングブロック80c内に連通している。吐出溝84a、84b、連通口86a、86bおよび吐出口87、88は従来公知の技術を使用して形成可能であり、例えばキリ加工、放電加工、レーザー加工によって形成することができる。吐出溝84a、84bの幅と吐出口87、88の径は例えば0.03〜0.1mmとすることができる。
【0019】
図3のマルチノズル80も使用法は図1のものと同じである。連通口86a、86bから液剤を所定量吐出させると、この液剤が吐出溝84a、84b全体に行き渡ると共に、吐出溝84a、84bから下方にはみ出した液剤が対象ワークの液剤塗布エリアに付着して所定厚みでコ字状の塗布済液剤90a、90bを形成する。また、第1吐出口87と第2吐出口88から吐出された液剤は点状の塗布液剤91、92を形成する。
【0020】
第4の形態
図4(A)は第4の形態に係るマルチノズル100を示す。ケーシングブロック100cと入口部100aの関係は図1と同じである。このマルチノズル100のケーシングブロック100cの下面中央には矩形帯状の隆起部102が形成されている。この隆起部102の基部の周縁にはケーシングブロック100c内に連通する複数の吐出口104が等間隔で形成されている。吐出口104は従来公知の技術を使用して形成可能であり、例えばキリ加工、放電加工、レーザー加工によって形成することができる。吐出口104の径は例えば0.03〜0.1mmとすることができる。隆起部102の厚みに対応した外側面には、前記吐出口104に対して垂直上方に連通した断面半円弧状の溝部106が形成されている。
【0021】
図4(A)のマルチノズル100も基本的使用法は図1のものと同じである。但し、液剤の塗布エリアは対象ワークに形成した孔部又は切欠きの縁部である。詳しくは図4(A)に示すように、対象ワークとしての板状ワーク108に前記隆起部102の形状に対応した一回り大きめの孔部108aが形成され、この孔部108aの縁部が液剤塗布エリアとなる。ロボットアームを操作してマルチノズル100の隆起部102を上方から孔部108aに嵌合させると共に、ケーシングブロック100cの下面と板状ワーク108との間、および孔部108a内面と隆起部102側面との間に所定のすき間を確保する。この状態で各吐出口104から液剤を所定量吐出させると、縁部上面に塗布済液剤110aを形成すると共に、溝部106に行き渡った液剤が孔部108a内面とのすき間に拡散して塗布済液剤110bを形成する。このように、本発明の第4の形態では三次元的な液剤塗布を一度に行うことができる。
【0022】
別の形態として図4(B)および図4(C)に示すマルチノズル110、120がある。図4(B)のマルチノズル110は隆起部102の基部に沿ってL字状の長溝112a、112bを形成したもので、長溝112a、112bの中央すなわち隆起部102の角部に近い部分にケーシングブロック内に連通する連通口114a、114bが形成されている。隆起部112の厚みに対応した外側面には図4(A)のような溝部106を形成していないが、孔部108a内面とのすき間を適正に確保することにより長溝112a、112bから吐出された液剤を同すき間に均一に導入することが可能である。
【0023】
図4(C)のマルチノズル120は隆起部122の基部に沿ってL字状の長溝122a、122bを形成したもので、長溝122a、122bの中央すなわち隆起部122の角部に近い部分にケーシングブロック内に連通する連通口124a、124bが形成されている。隆起部122の厚みに対応した外側面には前記長溝122a、122bに対して垂直上方に連通した断面半円弧状の溝部126が形成されている。この場合も図4(A)の場合と同様に塗布済液剤110a、110bを形成することができる。
【0024】
次に、本発明のマルチノズルの具体的適用例について説明する。図5はベースプレート132とロードビーム134を有する磁気ヘッドサスペンション130を示す。ベースプレート132にはキャリッジアーム等の支持軸を取り付けるための軸孔132aと、ロードビーム134をシーク方向に揺動させる微動アクチュエータ(圧電素子)を嵌合するための孔部132bが形成されている。微動アクチュエータはこの孔部132bの前後端縁に対して液剤で固着される。図6は微動アクチュエータの固着用液剤を塗布するためのケーシングブロック140をシリンジ141に取り付けた状態を示す。このケーシングブロック140の下面には図4のマルチノズルに類似したマルチノズル142が形成されている。詳しくは図7(A)に示すように、ケーシングブロック140の下面中央にベースプレート132の孔部132bの形状に対応し孔部132bよりは一回り小さな隆起部144が形成されている。隆起部144の厚み(隆起量)はベースプレート132の厚みとほぼ同じか、ベースプレート132の厚みよりも若干大きい。この隆起部144の前側と後側の基部に沿って複数の吐出口146が形成されている。隆起部144の厚みに対応した側面には、前記吐出口146に対して垂直上方に連通した断面半円弧状の溝部147が形成されている。また、隆起部144の下面の隆起面144aに、左右各3個の吐出口148a〜148cが形成されている。別の形態として、図7(B)に示すマルチノズル150がある。このマルチノズル150は複数の吐出口146に代えて長溝152を形成したもので、長溝152の一部にケーシングブロック内に連通する連通口が接続されている。
【0025】
前記マルチノズル142は以下のように使用する。すなわち、ロボットアームを操作して図8(A)に示すようにケーシングブロック140をベースプレート132の上方に移動させ、隆起部144を孔部132bの直上に位置合わせした状態でケーシングブロック140を下降させる。隆起部144の下面である隆起面144aがベースプレート132の下面に重ねられたロードビーム134の上面に対して所定のすき間で平行に対向するまでケーシングブロック140が下降すると、その位置でロボットアームを停止する。この状態では隆起部144が孔部132bの内面と所定のすき間を明けて嵌合され、かつ、ケーシングブロック140の下面とベースプレート132の上面との間にも所定のすき間が形成される。この状態で各吐出口146から液剤(絶縁性液剤)を吐出させると、図8(A)のように隆起部144の溝部147に吐出された液剤が孔部132b内面とのすき間に均一に拡散して塗布済液剤160a、160bが形成される。また、隆起面144aの吐出口148a〜148cから吐出された液剤によってロードビーム134の上面に点状の塗布済液剤162a〜162cが形成される。なお、図8(B)の164、166は従来のシングルノズルによってロードビーム134の上面に塗布した導電性液剤を示す(図8(A)の塗布済液剤162a〜162cは図示省略)。
【0026】
次に、ロボットアームを操作してケーシングブロック140を上昇させ、代わって図9のように矩形薄板状の一対の微動アクチュエータ170a、170bを孔部132bに嵌合する。これにより微動アクチュエータ170a、170bの前後両端が塗布済液剤160a、160bによってベースプレート132の孔部132bに固定されると共に、ロードビーム134の上面の塗布済液剤162a〜162cおよび導電性液剤164、166に微動アクチュエータ170a、170bの下面が接続される。最後に図10のように従来のシングルノズルによって微動アクチュエータ170a、170bの前端上面とベースプレート132との間に導電性液剤172a、172bを塗布する。
【0027】
このように本発明のマルチノズル142を使用すると孔部132bの縁部に対する液剤160a、160bの塗布と、ロードビーム134の上面に対する液剤162a〜162cの塗布を同時に行うことができる。従来の塗布方法ではベースプレート132に対する液剤塗布とロードビーム134に対する液剤塗布は別々の工程で行っていたが、本発明のマルチノズル142を使用することによりベースプレート132とロードビーム134に対する液剤塗布を同時に行うことができる。このことは、単に塗布時間の短縮という利点が得られるだけでなく、ベースプレート132とロードビーム134の両方の塗布位置の相対位置関係が極めて正確で誤差が生じないという利点も得られる。すなわち、従来の塗布方法ではベースプレート132の塗布工程とロードビーム134の塗布工程が別々になるためワークの工程間搬送に伴う位置決め誤差等によって前記塗布位置の相対位置関係にも誤差が発生しやすいが、本発明のマルチノズル142を使用すれば工程間搬送がないので位置決め誤差がなく、マルチノズル142の仕様によって前記相対位置関係が一定に定まることになる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の液剤塗布用マルチノズルは、磁気サスペンションの部品取付用に限らず広く産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0029】
10 ノズル
10a 上端入口部
10b ノズル先端
20 マルチノズル
20a 入口部
20b 円筒状ノズル
20c ケーシングブロック
30 液剤
50 マルチノズル
50a 入口部
50c ケーシングブロック
52 隆起部
52a 隆起面
54 吐出口
56 塗布済液剤
60 マルチノズル
60a 入口部
60c ケーシングブロック
62 隆起部
62a 隆起面
64a 吐出溝
66a 連通口
68a 塗布済液剤
80 マルチノズル
80a 入口部
80c ケーシングブロック
82 隆起部
82a 隆起面
84a、84b 吐出溝
86a、86b 連通口
87 吐出口
88 吐出口
90a、90b 塗布済液剤
91 塗布液剤
92 吐出口
100 マルチノズル
100a 入口部
100c ケーシングブロック
102 隆起部
104 吐出口
106 溝部
108 板状ワーク
108a 孔部
110 マルチノズル
110a 塗布済液剤
110b 塗布済液剤
112 隆起部
112a 長溝
114a 連通口
120 マルチノズル
122 隆起部
122a、122b 長溝
124a、124b 連通口
126 溝部
130 磁気ヘッドサスペンション
132 ベースプレート
132a 軸孔
132b 孔部
134 ロードビーム
140 ケーシングブロック
141 シリンジ
142 マルチノズル
144 隆起部
144a隆起面
146 吐出口
148a-148c 吐出口
147 溝部
150 マルチノズル
152 長溝
162a-162c 塗布済液剤
164 導電性液剤
170a、170b 微動アクチュエータ
172a、172b 導電性液剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングブロックの先端に液剤塗布エリアに対応した隆起面を形成し、前記隆起面に液剤を吐出する複数の吐出口を形成した液剤塗布用マルチノズル。
【請求項2】
ケーシングブロックの先端に液剤塗布エリアに対応した帯状の隆起面を形成し、前記帯状の隆起面に沿って液剤を吐出する吐出溝を形成した液剤塗布用マルチノズル。
【請求項3】
ケーシングブロックの先端に液剤塗布エリアに対応した矩形帯状の隆起面を形成し、前記矩形帯状の隆起面に沿って液剤を吐出する吐出溝を形成すると共に、矩形帯状の隆起面の内側のケーシングブロックの先端に液剤を吐出する1又は2以上の吐出口を形成した液剤塗布用マルチノズル。
【請求項4】
ケーシングブロックの先端に液剤塗布エリアとしての孔部又は切欠きの縁部形状に対応した隆起部を形成し、前記隆起部の基部に沿って液剤を吐出する複数の吐出口を形成した液剤塗布用マルチノズル。
【請求項5】
ケーシングブロックの先端に液剤塗布エリアとしての孔部又は切欠きの縁部形状に対応した隆起部を形成し、前記隆起部の基部に沿って液剤を供給する長溝を形成した液剤塗布用マルチノズル。
【請求項6】
ケーシングブロックの先端に液剤塗布エリアとしての孔部又は切欠きの縁部形状に対応した隆起部を形成し、前記隆起部の基部に沿って液剤を吐出する複数の吐出口を形成すると共に、前記隆起部の側面に前記吐出口に連通し隆起部の高さ方向に延在した溝部を形成した液剤塗布用マルチノズル。
【請求項7】
ケーシングブロックの先端に液剤塗布エリアとしての孔部周縁又は切欠き縁部形状に対応した隆起部を形成し、前記隆起部の基部に沿って液剤を供給する長溝を形成すると共に、前記隆起部の側面に前記長溝に連通し隆起部の高さ方向に延在した溝部を形成した液剤塗布用マルチノズル。
【請求項8】
ケーシングブロックの先端に、磁気ヘッドを支持する磁気ヘッドサスペンションのロードビーム駆動用アクチュエータ素子が嵌合するベースプレートの孔部又は切欠きの縁部形状に対応した隆起部を形成し、前記隆起部の基部に沿って液剤を吐出供給する複数の吐出口又は長溝を形成した液剤塗布用マルチノズル。
【請求項9】
磁気ヘッドを支持する磁気ヘッドサスペンションのベースプレートとロードビームの組立体に液剤を塗布する液剤塗布用マルチノズルであって、前記マルチノズルの本体を構成するケーシングブロックの先端に、ロードビーム駆動用アクチュエータ素子が嵌合する前記ベースプレートの孔部又は切欠きの縁部形状に対応した隆起部を形成すると共に前記隆起部の基部に沿って液剤を吐出供給する複数の吐出口又は長溝を形成し、かつ、前記ケーシングブロックの先端にロードビームに対して液剤を塗布する吐出口を形成した液剤塗布用マルチノズル。
【請求項10】
前記隆起部の側面に前記吐出口又は長溝に連通し隆起部の高さ方向に延在した溝部を形成した請求項8又は9の液剤塗布用マルチノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−227958(P2011−227958A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96106(P2010−96106)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000175722)サンコール株式会社 (96)
【Fターム(参考)】