説明

液圧ブレーキシステム

【課題】 液圧ブレーキシステムにおいて、ポンプ装置の作動中にホイールシリンダ液圧の減圧要求があった場合に減圧弁において気泡発生現象が生じることを抑制する。
【解決手段】 液圧ブレーキシステム10において、減圧弁44からホイールシリンダ液圧を減圧する場合には、ポンプ装置16の作動を停止させ、ポンプ装置の作動とホイールシリンダ液圧の減圧とが同時に要求された場合には、マスタ通路34とマスタ遮断弁36とを含むバイパス液通路からホイールシリンダ液圧を減圧させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に装備される液圧ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用液圧ブレーキシステムでは、マスタシリンダによって発生するブレーキ液の液圧によらず、別途備える液圧源装置によって発生する液圧をホイールシリンダに供給してブレーキを作動させる形式のブレーキシステムが存在する。そのようなシステムでは、液圧源装置は、一般的に、ポンプ装置を有し、そのポンプ装置がリザーバからブレーキ液を汲み上げてその汲み上げたブレーキ液を加圧する構造とされている。また、そのようなシステムでは、ホイールシリンダの液圧の制御は、制御弁装置によって行われるのが一般的である。詳しく言えば、液圧源装置とホイールシリンダとの間に設けられた増圧弁と、リザーバとホイールシリンダとの間に設けられた減圧弁とを制御することによって、ブレーキペダル等のブレーキ操作部材の操作に応じたブレーキ力が得られるようにホイールシリンダ液圧が制御される。下記特許文献1に記載された液圧ブレーキシステムは、上記システムを具体的に示すものである。
【特許文献1】特開2003−205838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来から、液圧ブレーキシステムでは、ブレーキ液中に気泡が発生するという問題を抱えている。この気泡発生現象(「キャビテーション現象」と呼ばれる場合もある)は、急激な圧力の減少により生じる現象であり、ブレーキ液に溶存する気体,ブレーキ液中に含まれる水分等が原因する現象である。発生した気泡は、成長するとともにシステムを構成する構成部品,液通路等に滞留することとなり、システムのブレーキ性能を悪化させる一因となる。上記液圧ブレーキシステムでは、気泡発生現象は、上記減圧弁において多く発生する。詳しく言えば、減圧弁はオリフィスとして機能することから、減圧弁の前後においてブレーキ液の液圧差が生じ、その液圧差に起因して気泡が発生するのである。特に減圧弁前後の液圧差が大きい場合に、気泡発生現象は生じ易い。
【0004】
上述した従来の液圧ブレーキシステムでは、ポンプ装置と制御弁装置とは互いに独立して制御されるため、ホイールシリンダ液圧の減圧要求があった場合に、ポンプ装置の作動中に、ブレーキ液がホイールシリンダからリザーバへ還流する状態となる場合がある。一方、上記特許文献1に記載されたシステムもそうであるが、上述した従来の液圧ブレーキシステムでは、構造上の利点から、ホイールシリンダからリザーバへのブレーキ液の還流路(以下、「減圧液通路」という場合がある)が、リザーバからポンプ装置への供給路(以下、「ポンプリザーバ間液通路」という場合がある)に接続される構造とされる場合が多い。そのような構造のシステムにおいて、ポンプ装置の作動中にブレーキ液が還流させられる場合、上記ポンプリザーバ間液通路におけるブレーキ液の液圧はポンプ装置の作動により負圧とされているため、減圧液通路に配設された減圧弁の前後におけるブレーキ液の液圧差が大きくなる。つまり、上記構造を有する従来の液圧ブレーキシステムは、その構造に起因して、上記気泡発生現象が生じ易くなっているのである。
【0005】
本発明は、従来の液圧ブレーキシステムが抱える上記気泡発生現象の問題に鑑みてなされたものであり、液圧ブレーキシステムにおけるブレーキ液中の気泡発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の液圧ブレーキシステムは、ポンプ装置を有する液圧源装置と減圧弁を有する制御弁装置とを備え、減圧弁が配設された減圧液通路がポンプリザーバ間液通路に接続される構造を有する液圧ブレーキシステムを、ブレーキ液中の気泡発生を抑制するための2つの手段のうち少なくとも一方を備えるように構成したことを特徴とする。上記2つの手段のうちの1つは、減圧弁によるホイールシリンダ液圧の減圧時においてポンプ装置の作動を停止させる減圧時ポンプ停止手段であり、また、もう1つは、ポンプ装置の作動とホイールシリンダ液圧の減圧とが同時に要求された場合にバイパス液通路から減圧させるバイパス減圧手段である。
【発明の効果】
【0007】
上記2つの気泡発生抑制手段は、いずれも、ホイールシリンダからリザーバへのブレーキ液をポンプ装置の作動によって生じる負圧箇所に還流させない手段とされている。そのため、上記2つの気泡発生抑制手段のいずれかを機能させれば、減圧液通路に配設された減圧弁の前後の圧力差が大きくなることを回避することができ、その大きな圧力差に起因するブレーキ液の気泡発生現象を抑制することが可能となる。
【発明の態様】
【0008】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0009】
なお、下記(1)項は、請求可能発明の前提となる構成を記載した項であり、(1)項を直接的あるいは間接的に引用する(2)項以下の態様が、請求可能発明の態様である。また、下記各項と請求項との対応を示せば、(1)項,(2)項,(10)項を合わせたものが請求項1に相当し、(3)項が請求項2に、(4)項が請求項3に、(5)項が請求項4に、(6)項が請求項5に、(7)項が請求項6に、(8)項が請求項7に、(11)項が請求項8に、(12)項が請求項9に、それぞれ相当する。
【0010】
(1)ブレーキ液の液圧によってブレーキを作動させるホイールシリンダと、
ブレーキ液を貯留するリザーバと、
ポンプリザーバ間液通路によって前記リザーバと連通しそのリザーバからブレーキ液を汲み出してそのブレーキ液を加圧するポンプ装置を備えた液圧源装置と、
その液圧源装置と前記ホイールシリンダとを連通する増圧液通路に設けられた増圧弁と、前記ポンプリザーバ間液通路と前記ホイールシリンダとを連通する減圧液通路に設けられた減圧弁とを備えた制御弁装置と、
前記液圧源装置から供給されるブレーキ液の液圧である液圧源圧が設定された範囲である設定液圧範囲となるように前記ポンプ装置の作動を制御するポンプ装置制御部と、前記ホイールシリンダの液圧が運転者によって操作されるブレーキ操作部材の操作に応じた液圧となるように前記制御弁装置を制御する制御弁装置制御部とを備えた制御装置と
を含んで構成された液圧ブレーキシステム。
【0011】
本項は、先に説明したように、以下の請求可能発明の態様の前提となる構成を示した項であり、本項に記載の液圧ブレーキシステムは、請求可能発明が適用される対象となるブレーキシステムを示している。本項の態様の液圧ブレーキシステムは、既に公知のブレーキシステムであり、本項のシステムを構成する各構成要素は、既に公知の構成要素を広く採用することが可能である。
【0012】
(2)前記ポンプ装置制御部が、前記減圧弁による減圧が行われる場合に前記ポンプ装置の作動を停止させる減圧時ポンプ停止制御を行う減圧時ポンプ停止制御部を有する(1)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0013】
本項に記載の態様は、先に説明した減圧時ポンプ停止手段を備えた液圧ブレーキシステムである。本項の態様における減圧時ポンプ停止制御部を機能させれば、ホイールシリンダの減圧要求があった場合であっても、ポンプリザーバ間液通路が負圧とはならないため、減圧弁の前後の液圧差が比較的小さいものとなり、減圧弁におけるブレーキ液中の気泡の発生を抑制することが可能となる。液圧源装置の液圧源圧が所望のブレーキ性能を満足できる程度に高い場合等においては、ポンプ装置の作動を停止することが可能であるため、本項に記載の態様は、そのような場合において有効な態様である。
【0014】
(3)前記減圧時ポンプ停止制御部が、前記ホイールシリンダの液圧の減圧勾配が設定された値を下回る場合に前記減圧時ポンプ停止制御を行うものである(2)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0015】
ホイールシリンダ液圧の減圧勾配によって、減圧弁を通過するブレーキ液の流量、詳しくは、減圧弁の弁座とそれに着座する弁子の間つまりオリフィスとして機能する箇所を通過するブレーキ液の流量は変化する。減圧勾配が大きい場合は、比較的大量のブレーキ液が流れ、上記箇所の前後における液圧差は比較的小さい。それに対して、減圧勾配が小さい場合は、比較的少量のブレーキ液しか流れず、上記箇所の前後における液圧差は比較的大きくなる。本項の態様は、そのことを考慮して減圧時ポンプ停止制御を行う態様であり、本項の態様によれば、ポンプ装置の停止の頻度を比較的低くしたり,停止時間を比較的短くしたりすることができるため、液圧源装置の液圧源圧を比較的高く維持することが可能となる。なお、ホイールシリンダ液圧の減圧勾配は、センサ等によるホイールシリンダ液圧の実測の結果によって取得されるものであってもよく、制御装置によるホイールシリンダ液圧の制御における目標値あるいはその目標値から演算によって取得されるものであってもよい。
【0016】
(4)前記減圧時ポンプ停止制御部が、前記ブレーキ液の液温が設定された値を上回る場合に前記減圧時ポンプ停止制御を行うものである(2)項または(3)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0017】
一般的に、ブレーキ液の液温が高い場合に、低い場合に比較して、気泡発生現象が生じ易い。本項に記載の態様は、そのことに考慮して減圧時ポンプ停止制御を行う態様である。本項の態様によれば、ポンプ装置の停止の頻度を比較的低くしたり,停止時間を比較的短くしたりすることができるため、液圧源装置の液圧源圧を比較的高く維持することが可能となる。なお、ブレーキ液の液温は、ブレーキ液自体の液温を測定することによって取得してもよく、また、所定の液通路の温度、システムの環境温度等を測定して、その温度をブレーキ液の液温と擬制してもよい。
【0018】
(5)前記減圧時ポンプ停止制御部が、前記ブレーキ液の劣化の程度を直接的あるいは間接的に示すパラメータが設定された値を上回る場合に前記減圧時ポンプ停止制御を行うものである(2)項ないし(4)項のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム。
【0019】
一般的に、ブレーキ液の劣化が進行すれば、気泡発生現象が生じ易くなる。本項に記載の態様は、そのことに考慮して減圧時ポンプ停止制御を行う態様である。本項の態様によれば、ポンプ装置の停止の頻度を比較的低くしたり,停止時間を比較的短くしたりすることができるため、液圧源装置の液圧源圧を比較的高く維持することが可能となる。なお、上記ブレーキ液の劣化を示すパラメータは、例えば、ブレーキ液の粘性,密度等の物性値等の直接的なパラメータを始め、車両の走行距離、走行時間、システムの可動時間、ポンプ装置の作動回数,作動時間、システムが車両に装備されてからの経過時間等の間接的なパラメータをも広く採用可能である。
【0020】
(6)前記ポンプ装置制御部が、設定された禁止条件を充足する場合に前記減圧時ポンプ停止制御を禁止するポンプ停止制御禁止部を備えた(2)項ないし(5)項のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム。
【0021】
ブレーキシステムの性能上の要求から、ホイールシリンダの減圧時であってもポンプ装置を作動させる必要がある場合もある。本項に記載の態様は、そのことに考慮した制御を行い得る態様である。本項に記載の態様では、気泡発生の可能性が高くなることを甘受しつつ減圧弁から減圧するような態様とすることもでき、また、別の気泡発生抑制手段を機能させることで、ポンプ停止制御手段によらずに気泡の発生を抑制する態様とすることが可能である。
【0022】
(7)前記ポンプ停止制御禁止部が、前記液圧源圧が設定された値を下回っていることを前記禁止条件として前記減圧時ポンプ停止制御を禁止するものである(6)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0023】
例えば、必要なブレーキ力を得るためには、液圧源装置の液圧源圧をある程度の高さに保つ必要がある。本項に記載の態様は、そのようなことに鑑みた場合に有効な態様である。上記設定された値は、液圧源装置に設定されている前述の設定液圧範囲の下限値であってもよく、また、その下限値とは異なる値に設定することも可能である。
【0024】
(8)前記ポンプ停止制御禁止部が、前記制御装置において特定の制御が行われることを前記禁止条件として前記減圧時ポンプ停止制御を禁止するものである(6)項または(7)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0025】
本項にいう特定の制御とは、減圧時においてもポンプ装置の作動を要求される制御を意味する。本項に記載の態様によれば、当該液圧ブレーキシステムがそのような特定の制御を実行している場合において、ポンプ装置を作動させることが可能であり、システムの性能を高く維持することが可能である。
【0026】
(9)前記ポンプ停止制御禁止部が、前記特定の制御としてアンチロック制御,トラクションコントロール制御,車両姿勢制御から選ばれる少なくとも1つの制御が行われることを前記禁止条件として前記減圧時ポンプ停止制御を禁止するものである(8)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0027】
本項に記載の態様は、上記特定の制御を、具体的なものに限定した制御である。本項に列挙した3つの制御は、いずれも緊急性の高い制御であり、本項に記載の態様によれば、そのような緊急性の高い制御が実行されるときに、液圧源装置の液圧源圧を高く維持することが可能となる。なお、上記車両姿勢制御とは、車輪の各々ブレーキ力を制御することによって車両の姿勢を安定化させるような制御(いわゆる、VSC(vehicle stability control)制御)を意味し、例えば、車両旋回時における蛇行等を抑制するような制御が含まれる。
【0028】
(10)当該液圧ブレーキシステムが、前記ポンプリザーバ間液通路および前記減圧弁をバイパスして前記ホイールシリンダのブレーキ液を前記リザーバに還流させるバイパス液通路を含んで構成され、前記制御弁装置が、そのバイパス液通路に設けられてその液通路の連通の有無を切り換える切換弁を備え、
前記制御弁装置制御部が、前記ポンプ装置の作動と前記ホイールシリンダの減圧との両者が要求される場合に、前記切換弁を制御することによって、前記パイパス液通路を利用してホイールシリンダの液圧を減圧させるバイパス利用減圧制御を行うバイパス利用減圧制御部を有する(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム。
【0029】
本項に記載の態様は、平たく言えば、バイパス減圧手段を備えた態様である。バイパス液通路によるホイールシリンダ液圧の減圧を可能とすれば、その減圧中にポンプ装置を作動させても負圧となる箇所にブレーキ液を還流させることがないため、減圧弁における気泡発生現象を抑制することが可能となる。このバイパス減圧手段は、先に説明した減圧時ポンプ停止手段に代えて採用することも可能であり、減圧時ポンプ停止手段とともに採用することも可能である。両者をともに採用する場合は、例えば、両者を選択して実行するような態様とすることが可能である。
【0030】
(11)当該液圧ブレーキシステムが、前記リザーバと接続されるとともに前記ホイールシリンダに接続されて前記ブレーキ操作部材の操作によって作動するマスタシリンダと、そのマスタシリンダと前記ホイールシリンダとを連通する液通路に設けられてその液通路の連通の有無を切り換えるマスタ遮断弁とを含んで構成されたものであり、
前記リザーバと前記マスタシリンダとを連通する液通路と、前記マスタシリンダと、前記マスタシリンダとホイールシリンダとを連通する液通路とを含んで前記バイパス液通路が構成され、かつ、前記マスタ遮断弁が前記切換弁とされた(10)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0031】
本項に記載の態様は、バイパス液通路の具体的な構成が限定された態様である。一般の液圧ブレーキシステムでは、上記マスタシリンダを備え、また、制御弁によるホイールシリンダ液圧の制御を実行する際にマスタシリンダとホイールシリンダとの連通を遮断する上記マスタ遮断弁を備える構造とされている。このマスタシリンダおよび切換弁を含む液圧通路をバイパス液通路とする態様が、本項に記載の態様である。本項に記載の態様によれば、別途構成部品を追加してバイパス液通路を形成する必要がなく、簡便にバイパス利用液圧制御を実行することが可能である。
【0032】
(12)前記ポンプ装置制御部が、前記減圧弁による減圧が行われる場合に前記ポンプ装置の作動を停止させる減圧時ポンプ停止制御を行う減圧時ポンプ停止制御部と、設定された禁止条件を充足する場合に前記減圧時ポンプ停止制御を禁止するポンプ停止制御禁止部を備え、
前記バイパス利用減圧制御部が、前記ポンプ停止制御禁止部により前記減圧時ポンプ停止制御が禁止されている場合に、前記バイパス利用減圧制御を行うものである(10)項または(11)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0033】
本項に記載の態様は、上述の減圧時ポンプ停止手段とバイパス減圧手段との両者を備えた態様における一態様である。本項の態様のように、減圧時ポンプ停止制御が実行されない場合にバイパス利用減圧制御を実行すれば、ポンプ装置の作動が禁止される頻度を相当に抑えることが可能であり、より効果的に液圧源装置の液圧源圧を高く維持することが可能となる。なお、本項の態様では、減圧時ポンプ停止手段が禁止されているときには常にバイパス利用減圧制御を行うような態様とすることもでき、また、減圧時ポンプ停止手段が禁止されているときの一部の期間においてのみバイパス利用減圧制御を行うような態様とすることもできる。
【0034】
(13)前記減圧弁が、制御によって開度調節可能な構造の弁である(1)項ないし(12)項のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム。
【0035】
本項にいう開度調節可能な構造の弁には、例えば、いわゆるリニア弁といった制御弁が含まれる。リニア弁は、平たく言えば、供給電力によって弁座と弁子との開度、つまり、流路断面積を変化させることが可能な構造の弁である。いわゆる開閉弁を利用し、開弁時間と閉弁時間との比を制御することでホイールシリンダ液圧の変化勾配を制御することが可能であるが、リニア弁を用いる場合は、より円滑な液圧制御が可能となる。ところが、リニア弁等の開度調節可能な構造の弁では、開度を小さく絞ることが可能であるため、小さく絞った場合には、オリフィスとして機能する箇所の前後の液圧差が大きくなり、気泡が発生し易くなる。このようなことに鑑みれば、開度調節可能な弁を採用する場合には、気泡発生現象に対する配慮がより重要となる。つまり、裏を返せば、減圧時ポンプ停止手段,バイパス減圧手段は、リニア弁等の開度調節可能な構造の弁を採用する液圧ブレーキシステムにおいて、特に有効な手段となるのである。
【0036】
(14)当該液圧ブレーキシステムが、前記液圧源装置と前記制御弁装置とが1つのハウジング内に組み込まれ、そのハウジングから延びる管路を有してその管路が前記ポンプリザーバ間液通路の一部とされ、かつ、その液通路と前記減圧液通路との接続部が前記ハウジング内に存在する構造のものとされた(1)項ないし(13)項のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム。
【0037】
本項に記載の態様は、例えば、液圧源装置と制御弁装置が一体化されたブレーキ制御デバイスを有する態様である。そのようなデバイスは、コンパクトに構成することができ、システム自体のコンパクト化に貢献するものとなる。そのようなデバイスは、ブレーキ操作部材,マスタシリンダ等からある程度離れた位置に装備されることになる。一方で、マスタシリンダを有するシステムでは、リザーバは、マスタシリンダに付設されることが多く、その場合は、本項に記載の態様のように、リザーバと上記デバイスとが管路によって接続されるとともに、減圧弁からの液通路はポンプ装置に吸入ポートに近い位置に接続されることになる。したがって、そのような構造のシステムでは、減圧弁の前後における液圧差が比較的大きなものとなる。本項に記載の態様は、そのような構造のシステムに気泡発生抑制手段を採用する態様であり、本項の態様によれば、気泡発生抑制手段を採用する効果が大きいものとなる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0039】
本発明の一実施例である液圧ブレーキシステムの全体構成を、図1に、液圧回路図として示す。この液圧ブレーキシステム10は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12と、2つの加圧室を有するマスタシリンダ14と、マスタシリンダ14に付設されて極めて短い液通路で接続されたリザーバ15と、ポンプ装置16を有する液圧源装置17と、それぞれが左右前後に位置する4つの車輪の各々に対応して設けられた4つのホイールシリンダ18等を含んで構成されている。4つのホイールシリンダ18の各々がその各々に対応する4つの増圧液通路20の各々を介して液圧源装置17に接続され、液圧源装置17からのブレーキ液が各増圧液通路20を経て各ホイールシリンダ18に供給される。また、本システム10は、各ホイールシリンダ18の液圧が各ホイールシリンダ18に対応して設けられた4つのホイールシリンダ圧センサ22の各々によって検出されるように構成されている。
【0040】
液圧源装置17が有するポンプ装置16は、ポンプ24と、ポンプ24を駆動するモータ26とを含んで構成されている。液圧源装置17は、ポンプ24から吐出された高圧のブレーキ液を蓄えるアキュムレータ28を備えており、そのアキュムレータ28に蓄えられたブレーキ液の液圧、つまり、当該液圧源装置17が供給するブレーキ液の液圧である液圧源圧は、アキュムレータ圧センサ30によって検出されるようにされている。また、液圧源装置17は、リリーフ弁32を備えており、そのリリーフ弁32の機能によって、液圧源圧が過大になることを回避可能な構造となっている。
【0041】
前記マスタシリンダ14の2つの加圧室には、運転者によるブレーキペダル12の操作によって、操作力に応じた液圧が発生させられる。2つの加圧室の各々には、2つのマスタ通路34の各々を介して、左右前輪のブレーキのホイールシリンダ18の各々が接続されている。2つのマスタ通路34の各々途中には、それぞれ、マスタ遮断弁36が設けられている。マスタ遮断弁36は、供給電気エネルギのON/OFF制御によって作動させられるものであり、電気エネルギが供給されない間は閉状態とされるが、電気エネルギが供給されると開状態に切り換えられる。なお、2つのマスタ通路34の各々の途中には、2つの加圧室の各々の液圧を検出するマスタ圧センサ37が設けられている。
【0042】
一方のマスタ通路34には、ストロークシミュレータ38とストロークシミュレータ用遮断弁39とを含んで構成されたストロークシミュレータ装置が設けられている。このストロークシミュレータ装置は、ストロークシミュレータ用遮断弁39への供給電気エネルギのON/OFF制御によりストロークシミュレータ38がマスタシリンダ14に連通させられる連通状態と、遮断される遮断状態とに切り換えられるような構造となっている。
【0043】
前述の4つの増圧液通路20の各々には、増圧弁40が設けられており、4つのホイールシリンダ18の各々とリザーバ15とを連通させる4つの減圧液通路42の各々には、減圧弁44が設けられている。それら増圧弁40,減圧弁44は、ともに、制御によって開度調整可能なリニア弁とされている。本システム10では、それら4つの増圧弁40および4つの減圧弁44と、上述の2つのマスタ遮断弁36とを含んで制御弁装置46が構成され、その制御弁装置46とポンプ装置16とを含んで、ブレーキアクチュエータ50が構成されているのである。なお、詳しく言えば、上記4つの減圧液通路42は、リザーバ15に向かう側で1つの通路とされ、その1つとされた通路が、リザーバ15とポンプ装置16とを連通する液通路であるポンプリザーバ間液通路48に接続されている。
【0044】
図2にブレーキアクチュエータ50(以下単に「アクチュエータ50」と称する場合がある)の斜視図を示す。アクチュエータ50は、ハウジングとしてのアクチュエータブロック52(以下単に「ブロック52」と称する場合がある)、ブロック52の外部に固定して設けられたモータ26およびアキュムレータ28、リザーバ15からのインレット54等を含んで構成されている。図示は省略するが、インレット54からリザーバ15に延びる管路が設けられ、その管路が上述のリザーバポンプ間液通路48の一部を構成している。ブロック52は、内部にポンプ24、制御弁装置46などが組み込まれ、また、それらをつなぐ状態でブレーキ液の液通路が形成された構造のものとなっている。また、ブロック52には、それぞれがマスタシリンダ14の2つの加圧室の各々に繋がる2つのマスタ側ポート56、それぞれが4つのホイールシリンダ18の各々に繋がる4つのホイール側ポート58が設けられている。ブロック52には、さらに、ブレーキ液の液温を検出するための温度センサ60がブロック52の外壁に取り付けられている。
【0045】
図3にブレーキアクチュエータ50のポンプ24が組み込まれた部分の断面図を示す。図から解るように、ポンプ24は、アクチュエータブロック52内に、1対のシリンダ装置72とカム軸74とが組み込まれて構成されている。1対のシリンダ装置72はカム軸74を挟んで設けられている。それぞれのシリンダ装置72は、シリンダ76と、シリンダ76内に嵌挿されて往復運動可能に設けられたピストン78とを含んで構成されている。ピストン78が往復運動させられることによって、ブレーキ液は加圧されつつ、シリンダ76の後方の空間に吐出される。この空間は前述の増圧弁40に通じる液通路に繋がっている。カム軸74は、3段の段付形状をなしており、それの大径部が小径部およびそれと大径部との間に存在する中径部に対して偏心する構造のものとされている。また、カム軸74は、モータ26側に延び出す方の端部において、モータ26に連結されている。モータ26が回転させられることにより、カム軸74は、自身の軸線周りに回転する。モータ26の回転によってカム軸74が回転させられれば、ピストン78が往復運動させられる。それによってブレーキ液が加圧されることになる。
【0046】
図4に一対の増圧弁40および減圧弁44を示す。4つの増圧弁40、4つの減圧弁44は、ともに、互いに同じ構成のものとされているため、ここでは、一対の増圧弁40および減圧弁44について代表して説明し、他のものについては説明を省略する。増圧弁40は、大まかに言えば、先端部が弁子として機能する弁子ロッド80および弁座81が形成された弁基体82を含んで構成されたシーティング弁部86と、2つのコイル88,弁子ロッド80と一体的に形成された可動体90および可動体90を付勢するスプリング91を含んで構成されたソレノイド部92とを備えた構造のものとされている。減圧弁44も、同様の構造であるため、説明は省略する。なお、本実施例においては、増圧弁40,減圧弁44の両者とも、電流が供給されない場合に閉状態となる常閉弁である。また、増圧弁40には、概ね、液圧源装置17の液圧源圧とホイールシリンダ18の液圧との差圧に応じた差圧作用力が作用し、減圧弁44には、概ね、ホイールシリンダ18の液圧とリザーバ15の液圧との差圧に応じた差圧作用力が作用する。
【0047】
コイル88に電流が供給されない場合には、シーティング弁部86においてスプリング91の付勢力が弁子ロッド80の先端部を弁座81に着座させる方向に作用するとともに、それらの接触箇所である着座箇所の前後の液圧差(以下、「弁液圧差」あるいは「弁差圧」という場合がある)に応じた差圧作用力が弁子ロッド80の先端部を弁座81から離間させる方向に作用する。各増圧弁40および減圧弁44は、スプリング91の付勢力が差圧作用力より大きい間は閉状態に保たれるが、コイル88に電流が供給されるとそれに応じて電磁駆動力が可動体90に作用し、差圧作用力と電磁駆動力との和がスプリング91の付勢力よりの方が大きくなる場合に、弁子ロッド80の先端部が弁座81から離間する開状態にされる。弁子ロッド80の先端部と弁座81との離間距離である弁の開度は、供給される電流の大きさによって調整可能とされている。本実施例においては、通常の制動を行う場合、運転者の要求制動力に基づいてホイールシリンダ液圧の目標液圧が決定され、その目標液圧と実際のホイールシリンダ液圧との偏差に応じて、コイル88への供給電流が決定される。
【0048】
先に説明したように、この減圧弁44においては、気泡発生現象が生じ易い。具体的に言えば、着座箇所の後方(着座箇所を挟んでリザーバ15側に位置する弁基体82内の空間)に気泡が発生しやすい。この気泡の発生のし易さは弁差圧に依存し、弁差圧が大きい場合に、小さい場合に比較して、気泡が発生し易くなる。本実施例においては、減圧液通路42がポンプリザーバ間液通路48に接続されているので、ポンプ装置16の作動時に減圧弁44のリザーバ15側の液通路が負圧状態となる。したがって、その状態において減圧弁44が開状態とされた場合に、弁差圧が大きくなり、気泡発生現象が生じ易くなるのである。
【0049】
また、気泡の発生のし易さは、弁開度にも依存する。つまり、弁のオリフィス効果から、弁開度が小さい場合には、弁開度が大きい場合に比較して、弁差圧が大きくなる傾向にあり、そのため、弁開度が小さい場合に気泡が発生し易くなるのである。また、気泡の発生のし易さは、ブレーキシリンダ液圧の減圧勾配にも依存する。減圧勾配が大きい場合は、ブレーキ液の流量が多いため、着座箇所の後方の液圧が速やかに上昇するが、減圧勾配が小さい場合は、ブレーキ液の流量が小さいため、弁差圧が大きい状態で維持されやすい。そのために、気泡が発生し易くなるのである。なお、本実施例の場合は、後に説明するように、減圧勾配が小さい場合は弁開度が小さくされるため、その点においても、減圧勾配が小さい場合に気泡が発生し易くなる。さらに、気泡の発生のし易さは、先に説明したように、ブレーキ液の液温,ブレーキ液の劣化度にも依存し、液温が高い場合,劣化が進んでいる場合に、気泡は発生し易くなる。
【0050】
本液圧ブレーキシステム10は、制御装置100によって制御される。制御装置100は、コンピュータ102を主体として構成され、機能に関して言えば、図5に機能ブロックを示すように、ポンプ装置16の駆動と停止とを制御するポンプ装置制御部104と、制御弁装置46を制御する制御弁装置制御部106とを含んで構成されている。詳しく言えば、ポンプ装置制御部104は、ホイールシリンダ18を減圧する場合にポンプ装置16の駆動を停止する減圧時ポンプ停止制御部108と、ポンプ装置16の停止を禁止するポンプ停止制御禁止部110を有しており、制御弁装置制御部106は、ホイールシリンダ18を減圧する場合に減圧弁44をバイパスして(本実施例においてはマスタ通路34を利用して)ブレーキ液をリザーバ15に還流させるバイパス利用減圧制御部112を有している。コンピュータ102は、さらに、入出力インタフェース114を備え、その入出力インタフェース114において、駆動回路116を介して制御弁装置46およびポンプ装置16に接続されている。
【0051】
また、入出力インタフェース114には、車両の状態を検出する各種センサが接続されている。具体的には、先に説明したホイールシリンダ圧センサ22,アキュムレータ圧センサ30,マスタ圧センサ37,温度センサ60が接続され、さらに、各車輪の車輪速を検出する車輪速センサ120,車両の走行距離を計測する走行距離メータ122,運転者によるブレーキペダル12の操作量を検出するストロークセンサ124が接続されている。
【0052】
以上のように構成される液圧ブレーキシステム10の制御は、制御装置100が、図6にフローチャートを示すブレーキシステム制御プログラムを実行することによって行われる。以下、このプログラムのフローにしたがって具体的に説明する。ブレーキシステム制御プログラムにおいては、ステップS1(以下単に「S1」と称する。他のステップについても同様とする。)において、制御弁装置46を制御するための制御弁装置制御ルーチンが実行され、次にS2においてポンプ装置16を制御するためのポンプ装置制御ルーチンが実行される。本プログラムはイグニッションがON状態である間は極短い時間間隔(例えば、数m秒間隔)で繰り返し実行される。なお、車両のイグニッションがOFF状態からON状態に切り換えられるごとに、本プログラムにおいて用いられる各フラグが初期値0に戻されるが、その後は前回のプログラムの実行時に立てられたフラグの値が利用される。
【0053】
図7にフローチャートで示す制御弁装置制御ルーチンについて説明する。制御弁装置46の制御である弁制御は、簡単に説明すると、ストロークセンサ124,マスタ圧センサ37の検出値に基づいて運転者によるブレーキ要求量を算出し、その要求量に基づいて各ブレーキシリンダ18の増減圧を実行する要求量依拠弁制御とともに、トラクションコントロール(以下、「TRC制御」いう場合がある)やアンチロック制御(以下、「ABS制御」という場合がある)における弁制御が必要に応じて実行される。要求量依拠弁制御においてブレーキシリンダ18を減圧させるには、通常は減圧液通路42と減圧弁44とを経由してブレーキ液をブレーキシリンダ18からリザーバ15に還流させる減圧制御(以下、「通常減圧制御」という場合がある)が実行される。本実施例では、その通常減圧制御を実行する代わりに、左右前輪のブレーキシリンダ18については、バイパス液通路を経由して還流させる減圧制御であるバイパス利用減圧制御が実行される場合がある。バイパス液通路は、マスタ通路34,マスタ遮断弁36,マスタシリンダ14,マスタシリンダ14とリザーバ15との間の短い液通路であるマスタ−リザーバ間の液通路を含んで構成されている。本実施例においては、ブレーキシリンダ18を減圧させることとポンプ装置16を駆動させることとの両方が要求された場合であって、ポンプ装置16が停止させられない場合に、そのバイパス液通路を利用したバイパス利用減圧制御が実行される。
【0054】
以下、フローチャートにしたがって順に説明すれば、まず、S11において、車両の走行状態がTRC制御を実行すべき状態であるか否かが判断される。簡単に説明すると、車輪速センサ120によって検出された各車輪の車輪速度が取得され、それらの平均速度が車体速度として算出される。その車体速度に比較して各車輪の車輪速度がそれぞれ設定値以上大きいか否かが判断され、いずれかの車輪の車輪速度が車体速度より設定値以上大きい場合には、TRC制御を実行すべきであると判断され、S11の判定がYESとなる。YESと判定された場合には、次にS12およびS13に進んで、TRC制御フラグFTRCが1とされ、TRC制御における弁制御が実行される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。ちなみに、TRC制御における弁制御は、既によく知られた制御であるため、ここでの説明は省略する。
【0055】
それに対して、車両がTRC制御を実行すべき状態にない場合には、S11の判定がNOとなり、S14に進む。S14において、TRC制御フラグFTRCが0とされる。次にS15において、ストロークセンサ124によって検出されたルストロークが取得され、また、マスタ圧センサ37によって検出されたマスタシリンダ液圧が取得される。S16に進んで、それらペダルストローク,マスタシリンダ液圧に基づいて、ブレーキ要求量としての各ホイールシリンダ18の目標液圧が決定される。この目標液圧の決定のプロセスは既によく知られたものであるため、ここでの説明は省略する。次にS17においてホイールシリンダ圧センサ22の検出値に基づいて各ホイールシリンダ18の現在の液圧が取得される。
【0056】
次にS18において、走行状態がABS制御を実行すべき状態であるか否かが判断される。具体的には、車体速度に比較して、少なくとも1の車輪の車輪速度が設定値以上小さい場合にABS制御を実行すべきであると判断される。走行状態がABS制御を実行すべき状態である場合には、S18の判定がYESとなり、S19およびS20に進んで、ABS制御フラグFABSが1とされるとともに、ABS制御における弁制御が実行される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。なお、ABS制御における弁制御は、既によく知られた制御であるため、ここでの説明は省略する。
【0057】
それに対して、ABS制御を実行すべき状態ではない場合には、S18の判定がNOとなり、S21に進んで、ABS制御フラグFABSが0とされる。次にS22において目標液圧と現在の液圧との差に基づいて、各ホイールシリンダ18について増減圧させるための目標勾配が決定される。次にS23に進んで、4つのホイールシリンダ18のいずれかについて減圧要求があるか否かが判断される。全てのホイールシリンダ18について減圧要求がない場合には、S23の判定がNOとなり、S24に進んで減圧要求フラグF減が0とされる。それに対して、少なくとも1つのホイールシリンダ18について減圧要求がある場合には、S23の判定がYESとなり、S25に進んで減圧要求フラグF減が1とされる。次にS26に進んで、先に決定された目標勾配のうち減圧勾配について設定値より小さいか否かが判断される。減圧要求があるすべてのホイールシリンダ18について、減圧勾配が設定値より大きい場合には、S26の判定がNOとなりS27に進んで減圧勾配フラグF勾が0とされる。それに対して、少なくとも1つのホイールシリンダ18について、減圧勾配が設定値より小さい場合には、S26の判定がYESとなり、S28に進んで減圧勾配フラグF勾が1とされる。
【0058】
S27およびS28のいずれに進んで場合であっても、次にS29に進んでポンプ停止フラグFホ゜ンフ゜停が1であるか否かが判断される。ポンプ停止フラグFホ゜ンフ゜停は、後で詳細に説明するが、ホイールシリンダ18を減圧することとポンプ装置16を駆動させることとの両方が要求された場合に、ポンプ装置16を停止させることを許容するか否かを示すフラグであり、ポンプ装置の制御においては、そのフラグ値が1の場合にポンプ装置16を停止させることを許容し、0の場合ポンプ装置16を停止させることを禁止するようにされている。今回のプログラムの実行において、ポンプ停止フラグFホ゜ンフ゜停が1であると仮定すると、S29の判定がYESとなり、S30に進んでバイパス利用減圧制御を行わない弁制御が実行される。バイパス利用減圧制御を行わない弁制御は通常の要求量依拠弁制御であって、ポンプ装置16が駆動状態であるか停止状態であるかにかかわらず、前述の通常減圧制御が実行される。この場合においては、後で詳細に説明するように、次回のポンプ装置制御ルーチンにおいてホイールシリンダ18の減圧時にポンプ装置16を停止する制御が実行されて気泡が発生することが抑制されるので、バイパス利用減圧制御を実行しないで済む。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。
【0059】
それに対して、ポンプ停止フラグFホ゜ンフ゜停が0である場合は、S31に進んで、バイパス利用減圧制御を行う弁制御が実行される。この弁制御では、基本的には前述の通常減圧制御が実行されるが、左右前輪のいずれかのホイールシリンダ18について減圧要求があった場合であってポンプ装置16が現に駆動させられている場合に、前述のバイパス利用減圧制御が実行されてホイールシリンダ圧が減圧させられる。ポンプ装置16が駆動状態であるためにポンプリザーバ間液通路48が負圧となるが、そのポンプリザーバ間液通路48に接続された減圧液通路42および減圧弁44を利用しないことにより、減圧弁44において気泡が発生することを抑制することができる。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。
【0060】
なお、上記実施例においては、左右前輪のいずれかのホイールシリンダ18について減圧要求があって、かつポンプ装置16が現に駆動させられている場合に、必ずバイパス利用減圧制御が実行されるが、そのような場合であっても制御条件を変えることにより、通常減圧制御とバイパス利用減圧制御とのいずれかが選択的に実行されるようにしてもよい。例えば、ポンプ装置16が駆動させられている間は、基本的にはバイパス利用減圧制御が実行されるが、左右前輪の両方のホイールシリンダ18について減圧勾配が設定値以上である場合など、気泡が発生する可能性が低いかまたは発生しても影響が小さいと判断される場合には、通常減圧制御が実行されようにしてもよい。
【0061】
次にポンプ装置制御ルーチンについて説明する。ポンプ装置制御ルーチンは、簡単に説明すると、アキュムレータ圧が予め設定された設定液圧範囲内に維持されるようにポンプ装置16の駆動・停止を制御する。通常のポンプ装置制御である通常ポンプ制御においては、アキュムレータ圧が設定液圧範囲の下限値を下回った場合にはポンプ装置16が駆動させられて、設定液圧範囲の上限値に到達するまで駆動状態に維持される。さらに、アキュムレータ圧が上限値に到達すればポンプ装置が停止させられて、次にアキュムレータ圧が下限値を下回るまでポンプ装置16は停止状態に維持される。本実施例においては、弁制御において減圧制御が実行される際に、上記通常ポンプ制御に代えて、ポンプ装置16を停止させる減圧時ポンプ停止制御が実行される場合がある。減圧時ポンプ停止制御は、弁制御において前述の通常減圧制御が実行されている場合に、通常ポンプ制御であればポンプ装置16が駆動されるときであっても、ポンプ装置16を停止させる制御である。
【0062】
ただし、弁制御において特定の制御が実行されている場合等、予め設定された禁止条件が満たされている場合には、弁制御において減圧制御が実行されているか否かにかかわらず通常ポンプ制御が実行される。そのような場合には、減圧時ポンプ停止制御を実行することが禁止されるのである。以下、図8に示すフローチャートに基づいて順に説明する。
【0063】
まず、S111において、現在のアキュムレータ圧Pがアキュムレータ圧センサ30の検出値に基づいて取得される。次にS112において、そのアキュムレータ圧Pが設定液圧範囲の下限値PLより低いか否かが判断される。アキュムレータ圧Pが下限値PLより低い場合には、S112の判定がYESとなり、S113に進んでポンプ停止フラグFホ゜ンフ゜停が0とされて、S114において通常ポンプ制御が実行される。上述のように、弁制御において減圧制御が実行されていることに対応するポンプ装置16の停止が禁止され、アキュムレータ圧が設定液圧範囲内に維持されるように制御が実行される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。
【0064】
それに対して、アキュムレータ圧Pが下限値PL以上である場合には、S112の判定がNOとなり、S115に進んでABS制御フラグFABSが1であるか否かが判断される。ABS制御フラグFABSが1である場合には、S115の判定がYESとなりS113およびS114に進んで通常ポンプ制御が実行される。一方、ABS制御フラグFABSが0である場合には、S115の判定がNOとなり、S116に進んでTRC制御フラグFTRCが1であるか否かが判断される。TRC制御フラグFTRCが1である場合には、S116の判定がYESとなりS113およびS114に進んで通常ポンプ制御が実行される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。本実施例においては、ABS制御またはTRC制御が実行中であることと、アキュムレータ圧Pが下限値PL未満であることが減圧時ポンプ停止制御を禁止する禁止条件とされている。
【0065】
それに対してTRC制御フラグFTRCが0である場合には、S116の判定がNOとなり、S117に進んで走行距離メータ122により車両の走行距離が取得される。本実施例においては、最後にブレーキ液を交換した際の総走行距離である交換時走行距離が記憶されており、現在の総走行距離と交換時走行距離との差が求められる。その差たる走行距離が、ブレーキ液を交換した後の走行距離であり、その走行距離が、ブレーキ液の劣化度を示すパラメータとして取得される。次にS118において、S117において取得された走行距離が予め設定された値より大きいか否かが問われる。走行距離が小さい場合には、S118の判定がNOとなり、S113およびS114に進んで通常ポンプ制御が実行される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。ブレーキ液の劣化が進んでいる場合には、気泡が発生しやすいので、さらに後のステップに進んで減圧時ポンプ停止制御を実行すべきか否かの判定が行われるが、劣化が進んでいない場合には、気泡が発生し難いものとして、減圧時ポンプ停止制御は実行されない。
【0066】
それに対して、S117において取得された走行距離が設定値より大きい場合にはS118の判定がYESとなりS119に進む。S119において、温度センサ60の検出値に基づいて、ブレーキ液の液温が取得される。次にS120においてそのブレーキ液の液温が設定値より高いか否かが判断される。液温が設定値より低い場合にはS120の判定がNOとなり、S113およびS114に進んで通常ポンプ制御が実行される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。本実施例においては、ブレーキ液の劣化が進んでいても、液温が比較的低い場合には、減圧時ポンプ停止制御を実行しないこととされている。
【0067】
それに対して、ブレーキ液の液温が高い場合にはS120の判定がYESとなりS121に進んで減圧要求フラグF減が1であるか否かが判断される。減圧要求フラグF減が0である場合には、S121の判定がNOとなりS113およびS114に進んで通常ポンプ制御が実行される。全てのホイールシリンダ18について減圧要求がない場合には、気泡発生を抑制する必要がないので通常ポンプ制御が実行される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。
【0068】
少なくとも1つのホイールシリンダ18について減圧要求がある場合には、S121の判定がYESとなりS122に進んで減圧勾配フラグF勾が1であるか否かが判断される。減圧勾配フラグF勾が0である場合には、S122の判定がNOとなりS113およびS114に進んで通常ポンプ制御が実行される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。全てのホイールシリンダ18について減圧勾配が大きい場合には、気泡が発生しやすい状態が速やかに解消されるので、減圧時ポンプ停止制御は実行されない。
【0069】
それに対して、いずれかのホイールシリンダ18について減圧勾配が小さい場合には、S122の判定がYESとなり、S123に進んでポンプ停止フラグFホ゜ンフ゜停が1とされ、S124において減圧時ポンプ停止制御が実行される。S121において判定されたように、いずれかのホイールシリンダ18において減圧要求があり、現に弁制御において通常減圧制御が実行されているので、ポンプ装置16が駆動状態である場合には停止させられ、停止状態である場合にはその状態が維持される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。
【0070】
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、コンピュータ102のブレーキシステム制御プログラムを実行する部分のうちポンプ装置制御ルーチンを実行する部分がポンプ装置制御部104を構成し、制御弁装置制御ルーチンを実行する部分が制御弁装置制御部106を構成している。さらに、制御弁装置制御ルーチンのうちS29を実行する部分がバイパス利用減圧制御部112を構成し、ポンプ装置制御ルーチンのうちS112,S115およびS116を実行する部分がポンプ停止制御禁止部110を構成し、S120ないしS122およびS124を実行する部分が減圧時ポンプ停止制御部108を構成している。前述のバイパス液通路とバイパス利用減圧制御部112とが共同してバイパス減圧手段を構成し、ポンプ装置16と減圧時ポンプ停止制御部108が減圧時ポンプ停止制御手段を構成し、その減圧時ポンプ停止制御手段とバイパス減圧手段がそれぞれ気泡発生抑制手段を構成している。
【0071】
上記実施例においては、減圧時ポンプ停止制御を禁止する禁止条件のひとつとして、アキュムレータ圧Pが設定液圧範囲の下限値PL未満となった場合が設定されているが、それ以外の条件であってもよく、例えば、下限値PLより大きく上限値より小さい別の値が設定され、アキュムレータ圧Pがその設定値を下回った場合に減圧時ポンプ停止制御を禁止するようにしてもよい。
【0072】
上述の実施例においては、マスタ通路34が左右前輪に接続され、左右後輪についてはバイパス利用減圧制御が行われないようにされているが、図9に示すように、マスタ通路34が右前輪と右後輪とに接続され、左右前輪と左右後輪とが互いに左右連通弁150により連通されることにより、4つのブレーキシリンダ18すべてについてバイパス利用減圧制御を実行することが可能となる。なお、この態様によれば、左前輪または左後輪についてバイパス利用減圧制御を実行する場合には、それに対応する右前輪または右後輪についても必ず減圧されることとなるが、基本的には減圧要求は左右でほとんど等しいと考えられるので、不都合は生じないといえる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施例である液圧ブレーキシステムの構成を示す図である。
【図2】図1に示すブレーキアクチュエータを示す斜視図である。
【図3】図1に示すポンプを示す正面断面図である。
【図4】図1に示す増圧弁および減圧弁を示す正面断面図である。
【図5】本液圧ブレーキシステムの制御装置の機能を便宜的に示す機能ブロック図である。
【図6】上記制御装置において実行される液圧ブレーキシステム制御プログラムを示すフローチャートである。
【図7】図6に示すブレーキシステム制御プログラムを構成する制御弁装置制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】上記ブレーキシステム制御プログラムを構成するポンプ装置制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】上記液圧ブレーキシステムの別の態様を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
10:液圧ブレーキシステム 12:ブレーキペダル(ブレーキ操作部材) 14:マスタシリンダ 16:ポンプ装置 17:液圧源装置 18:ホイールシリンダ 20:増圧液通路 34:マスタ通路 36:マスタ遮断弁(切換弁) 40:増圧弁 42:減圧液通路 44:減圧弁 46:制御弁装置 48:ポンプリザーバ間液通路 100:制御装置 102:コンピュータ 104:ポンプ装置制御部 106:制御弁装置制御部 108:減圧時ポンプ停止制御部 110:ポンプ停止制御禁止部 112:バイパス利用減圧制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ液の液圧によってブレーキを作動させるホイールシリンダと、
ブレーキ液を貯留するリザーバと、
ポンプリザーバ間液通路によって前記リザーバと連通しそのリザーバからブレーキ液を汲み出してそのブレーキ液を加圧するポンプ装置を備えた液圧源装置と、
その液圧源装置と前記ホイールシリンダとを連通する増圧液通路に設けられた増圧弁と、前記ポンプリザーバ間液通路と前記ホイールシリンダとを連通する減圧液通路に設けられた減圧弁とを備えた制御弁装置と、
前記液圧源装置から供給されるブレーキ液の液圧である液圧源圧が設定された範囲である設定液圧範囲となるように前記ポンプ装置の作動を制御するポンプ装置制御部と、前記ホイールシリンダの液圧が運転者によって操作されるブレーキ操作部材の操作に応じた液圧となるように前記制御弁装置を制御する制御弁装置制御部とを備えた制御装置と
を含んで構成された液圧ブレーキシステムであって、
(A)前記ポンプ装置制御部において設けられるところの、前記減圧弁による減圧が行われる場合に前記ポンプ装置の作動を停止させる減圧時ポンプ停止制御を行う減圧時ポンプ停止制御部と、
(B)前記ポンプリザーバ間液通路および前記減圧弁をバイパスして前記ホイールシリンダのブレーキ液を前記リザーバに還流させるバイパス液通路と、そのバイパス液通路に設けられてその液通路の連通の有無を切り換える切換弁と、前記制御弁装置制御部において設けられるところの、前記ポンプ装置の作動と前記ホイールシリンダの減圧との両者が要求される場合に前記切換弁を制御することによって前記パイパス液通路を利用してホイールシリンダの液圧を減圧させるバイパス利用減圧制御を行うバイパス利用減圧制御部とを含んで構成されるバイパス減圧手段と
の少なくとも一方を備えたことを特徴とする液圧ブレーキシステム。
【請求項2】
当該液圧ブレーキシステムが、少なくとも前記減圧時ポンプ停止制御部を備えるものであり、
その減圧時ポンプ停止制御部が、前記ホイールシリンダの液圧の減圧勾配が設定された値を下回る場合に前記減圧時ポンプ停止制御を行うものである請求項1に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項3】
当該液圧ブレーキシステムが、少なくとも前記減圧時ポンプ停止制御部を備えるものであり、
その減圧時ポンプ停止制御部が、前記ブレーキ液の液温が設定された値を上回る場合に前記減圧時ポンプ停止制御を行うものである請求項1または請求項2に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項4】
当該液圧ブレーキシステムが、少なくとも前記減圧時ポンプ停止制御部を備えるものであり、
その減圧時ポンプ停止制御部が、前記ブレーキ液の劣化の程度を直接的あるいは間接的に示すパラメータが設定された値を上回る場合に前記減圧時ポンプ停止制御を行うものである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項5】
当該液圧ブレーキシステムが、少なくとも前記減圧時ポンプ停止制御部を備えるものであり、
前記ポンプ装置制御部が、設定された禁止条件を充足する場合に前記減圧時ポンプ停止制御を禁止するポンプ停止制御禁止部を備えた請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項6】
前記ポンプ停止制御禁止部が、前記液圧源圧が設定された値を下回っていることを前記禁止条件として前記減圧時ポンプ停止制御を禁止するものである請求項5に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項7】
前記ポンプ停止制御禁止部が、前記制御装置において特定の制御が行われることを前記禁止条件として前記減圧時ポンプ停止制御を禁止するものである請求項5または請求項6に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項8】
当該液圧ブレーキシステムが、前記リザーバと接続されるとともに前記ホイールシリンダに接続されて前記ブレーキ操作部材の操作によって作動するマスタシリンダと、そのマスタシリンダと前記ホイールシリンダとを連通する液通路に設けられてその液通路の連通の有無を切り換えるマスタ遮断弁とを含んで構成され、かつ、少なくとも前記バイパス減圧手段を備えたものであり、
前記リザーバと前記マスタシリンダとを連通する液通路と、前記マスタシリンダと、前記マスタシリンダとホイールシリンダとを連通する液通路とを含んで前記バイパス液通路が構成され、かつ、前記マスタ遮断弁が前記切換弁とされた請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項9】
当該液圧ブレーキシステムが、前記減圧時ポンプ停止制御部と前記バイパス減圧手段との両者を備え、かつ、前記ポンプ装置制御部が、前記減圧弁による減圧が行われる場合に前記ポンプ装置の作動を停止させる減圧時ポンプ停止制御を行う減圧時ポンプ停止制御部と、設定された禁止条件を充足する場合に前記減圧時ポンプ停止制御を禁止するポンプ停止制御禁止部を備えたものであり、
前記バイパス利用減圧制御部が、前記ポンプ停止制御禁止部により前記減圧時ポンプ停止制御が禁止されている場合に、前記バイパス利用減圧制御を行うものである請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の液圧ブレーキシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−96078(P2006−96078A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281715(P2004−281715)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】