説明

液晶ポリエステルフィルムの製造方法

【課題】 優れた寸法安定性を有し、フレキシブルプリント配線基板用ベースフィルムに適した液晶ポリエステルフィルムの製造方法を提供すること、および該製造方法で得られるフィルムの用途を提供すること。
【解決手段】 芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含む液晶ポリエステルならびに非プロトン性溶媒を含有する液晶ポリエステル液状組成物を支持体上に塗布し、溶媒を除去した後に、350℃以上400℃以下で1時間以上熱処理する液晶ポリエステルフィルムの製造方法。該製造方法により得られるフィルムを使用してなるフレキシブルプリント配線基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルフィルムの製造方法に関し、特に寸法安定性に優れ、フレキシブルプリント配線基板用ベースフィルムに適した液晶ポリエステルフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクスの技術分野においては、益々高密度実装の要求が高くなり、それに伴いフレキシブルプリント配線基板(以下、FPCという)を用いる技術分野においても、高密度実装の要求が高くなってきている。FPCの製造工程において、寸法変化が大きい工程はエッチング前後であり、この工程の前後においてFPCの寸法変化が小さいことが、高密度実装をするために最近強く要求されている。
【0003】
特に近年では、ICチップをフレキシブルプリント配線基板に直接搭載したCOF(Chip on Film)が実用化されたり、CSP(Chip Scale Packaging)、MCM(Multi Chip Module)のインターポーザーとしてフレキシブルプリント配線基板が採用されるなど、半導体パッケージ構成材料としてのフレキシブルプリント配線基板は耐熱性、寸法安定性の更なる向上を求められている(非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】日本ポリイミド研究会編 最新ポリイミド−基礎と応用−、第549項(2002).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来より、フレキシブルプリント配線基板用ベースフィルムとしてポリイミドが用いられているが、吸水率が高いために寸法安定性の点において劣るという問題がある。
他方、液晶ポリエステルフィルムは、優れた高周波数特性と低吸水性であることから、エレクトロニクス基板材料として注目されるが、ポリイミドに比べ、熱による変形が大きいために寸法安定性の点において劣るという問題があった。
本発明の目的は、優れた寸法安定性を有し、フレキシブルプリント配線基板用ベースフィルムに適した液晶ポリエステルフィルムの製造方法を提供すること、および該製造方法で得られるフィルムの用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含む液晶ポリエステルならびに非プロトン性溶媒を含有する液晶ポリエステル液状組成物を支持体上に塗布し、溶媒を除去した後に、350℃以上400℃以下で1時間以上熱処理する液晶ポリエステルフィルムの製造方法にかかるものであり、また本発明は、該製造方法により得られるフィルムを使用してなるフレキシブルプリント配線基板にかかるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いられる液晶ポリエステル液状組成物は、芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含む液晶ポリエステルならびに非プロトン性溶媒からなる。
【0008】
液晶ポリエステルは、溶融時に光学異方性を示し、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものであり、構造単位として以下の式(1)、(2)、(3)で示される構造単位を含み、式(1)で示される構造単位が30〜80モル%、式(2)で示される構造単位が35〜10モル%、式(3)で示される構造単位が35〜10モル%であることが好ましい。
(1) −O−Ar1−CO−
(2) −CO−Ar2−CO−
(3) ―X−Ar3−Y−
ここで、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4’−ビフェニレンを表わす。Ar2は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレンまたは2,6−ナフチレンを表わす。Ar3は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表わす。XはNHを表し、YはOまたはNHを表わす。
【0009】
構造単位(1)は、芳香族ヒドロキシ酸由来の構造単位、構造単位(2)は、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位、構造単位(3)は、芳香族ジアミンまたはフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位であるが、これらの代わりに、それらのエステルもしくはアミド形成性誘導体を用いてもよい。
【0010】
カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、カルボキシル基が、ポリエステルを生成する反応を促進するような、酸塩化物、酸無水物などの反応活性が高い誘導体となっているもの、カルボキシル基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているものなどが挙げられる。
フェノール性水酸基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
アミノ基のアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とアミドを形成しているものなどが挙げられる。
【0011】
本発明に使用される液晶ポリエステルの繰り返し構造単位としては、下記のものを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
式(1)で示される構造単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルカルボン酸由来の構造単位などが挙げられ、2種以上の前記構造単位が、全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。
全構造単位に対して、構造単位(1)は30〜80モル%であることが好ましく、40〜70モル%であることがより好ましく、45〜65モル%であることがさらに好ましい。構造単位(1)が多いと溶媒への溶解性が著しく低下する傾向があり、少なすぎると液晶性を示さなくなる傾向がある。
【0013】
式(2)で示される構造単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位などが挙げられ、2種以上の前記構造単位が、全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、溶媒への溶解性の観点から、イソフタル酸由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。
全構造単位に対して、構造単位(2)は35〜10モル%であることが好ましく、30〜15モル%であることがより好ましく、27.5〜17.5モル%であることがさらに好ましい。構造単位(2)が多すぎると、液晶性が低下する傾向があり、少ないと溶媒への溶解性が低下する傾向がある。
【0014】
式(3)で示される構造単位としては、例えば、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの構造単位などが挙げられ、2種以上の前記構造単位が、全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、反応性の観点から4−アミノフェノール由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。
全構造単位に対して、構造単位(3)は、35〜10モル%であることが好ましく、30〜15モル%であることがより好ましく、27.5〜17.5モル%であることがさらに好ましい。構造単位(3)が多すぎると、液晶性が低下する傾向があり、少ないと溶媒への溶解性が低下する傾向がある。
構造単位(3)は構造単位(2)と実質的に等量用いられることが好ましいが、構造単位(3)を構造単位(2)に対して、−10モル%〜+10モル%とすることにより、液晶ポリエステルの重合度を制御することもできる。
【0015】
本発明で使用される液晶ポリエステルの製造方法は、特に限定されないが、例えば、構造単位(1)に対応する芳香族ヒドロキシ酸、構成単位(3)に対応するフェノール性水酸基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミンのフェノール性水酸基やアミノ基を過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得、得られたアシル化物と、構造単位(2)に対応する芳香族ジカルボン酸とをエステル交換・アミド交換(重縮合)して溶融重合する方法などが挙げられる。
【0016】
アシル化反応においては、脂肪酸無水物の添加量は、フェノール性水酸基とアミノ基の合計に対して、1.0〜1.2倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.1倍当量である。脂肪酸無水物の添加量が少なすぎると、エステル交換・アミド交換(重縮合)時にアシル化物や原料モノマーなどが昇華し、反応系が閉塞し易い傾向があり、また、多すぎると、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
【0017】
アシル化反応は、130〜180℃で5分間〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分間〜3時間反応させることがより好ましい。
【0018】
アシル化反応に使用される脂肪酸無水物は,特に限定されないが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸などが挙げられ、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、または無水イソ酪酸が好ましく、より好ましくは、無水酢酸である。
【0019】
エステル交換・アミド交換(重縮合)においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
【0020】
エステル交換・アミド交換(重縮合)は、400℃まで0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行なうことが好ましく、350℃まで0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行なうことがより好ましい。
【0021】
アシル化物とカルボン酸とをエステル交換・アミド交換(重縮合)させる際、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させるなどして系外へ留去することが好ましい。
【0022】
なお、アシル化反応、エステル交換・アミド交換(重縮合)は、触媒の存在下に行なってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。
これらの触媒の中で、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003号公報参照)。
該触媒は、通常、モノマー類の投入時に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合にはそのままエステル交換を行なうことができる。
【0023】
エステル交換・アミド交換による重縮合は、通常、溶融重合により行なわれるが、溶融重合と固相重合とを併用してもよい。固相重合は、溶融重合工程からポリマーを抜き出し、その後、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にした後、公知の固相重合方法により行うことが好ましい。具体的には、例えば、窒素などの不活性雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で熱処理する方法などが挙げられる。固相重合は、攪拌しながらでも、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお適当な攪拌機構を備えることにより溶融重合槽と固相重合槽とを同一の反応槽とすることもできる。固相重合後、得られた液晶性ポリエステルは、公知の方法によりペレット化し、成形してもよい。
液晶ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
【0024】
本発明で用いられる非プロトン性溶媒の使用量は、特に限定されるものでなく、用途に応じて適宜選択することができるが、非プロトン性溶媒100重量部に対する液晶ポリエステルの量が0.01〜100重量部となるよう使用することが好ましい。液晶ポリエステルの濃度が低すぎると溶液粘度が低すぎて均一に塗工できなくなり、逆に高すぎると、高粘度化する傾向がある。作業性や経済性の観点から、非プロトン性溶媒100重量部に対して、液晶ポリエステルがより好ましくは1〜50重量部となるよう、さらに好ましくは2〜40重量部となるよう使用する。
【0025】
非プロトン性溶媒としては、例えば、1−クロロブタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、γ―ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系溶媒、アセトニトリル、サクシノニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルフィド系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸などのリン酸系溶媒などが挙げられる。
これらの中で、ハロゲン原子を含まない溶媒が環境への影響面から好ましく使用され、双極子モーメントが3以上5以下の溶媒が溶解性の観点から好ましく使用される。具体的には、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、またはγ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒がより好ましく使用され、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、またはN−メチルピロリドンがさらに好ましく使用される。
【0026】
本発明においては、このようにして得られた液晶ポリエステル液状組成物は必要に応じて、フィルターなどによってろ過し、液状組成物中に含まれる微細な異物を除去した後、支持体上に、例えば、ローラーコート法、ディップコーター法、スプレイコーター法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段により塗布する。該支持体としては、ガラスや金属板が用いられる。該金属板としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどの板が挙げられ。該支持体として好ましくは、銅箔などの金属板が用いられる。
【0027】
本発明においては、上記のように液晶ポリエステル液状組成物を支持体上に塗布した後に、非プロトン性溶媒を除去する。
非プロトン性溶媒の除去方法は、特に限定されないが、非プロトン性溶媒の蒸発により行うことが好ましい。該溶媒を蒸発させる方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられるが、中でも生産効率、取り扱い性の観点から加熱して蒸発させることが好ましく、通風しつつ加熱して蒸発せしめることがより好ましい。このときの条件としては蒸発させる該溶媒の沸点以上で行うことが好ましい。
【0028】
本発明においては、上記のように非プロトン性溶媒を除去した後に、350℃以上400℃以下の温度で1時間以上熱処理を行って、本発明の液晶ポリエステルフィルムを得る。該熱処理の温度は好ましくは350℃以上390℃以下である。該熱処理の時間は、長すぎるとフィルムの劣化により機械特性を大きく損なうため、好ましくは10時間以下である。
【0029】
このようにして得られる液晶ポリエステルフィルムの用途としては、該フィルムを使用してなるフレキシブルプリント配線基板が挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明が実施例により限定されるものでないことは言うまでもない。
【0031】
製造例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 941g(5.0モル)、4−アミノフェノール 273g(2.5モル)、イソフタル酸 415.3g(2.5モル)及び無水酢酸 1123g(11モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、固相で重合反応を進めた。得られた粉末は350℃で偏光顕微鏡により液晶相に特有のシュリーレン模様が観察された。
【0032】
製造例2
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 941g(5.0モル)、4−アミノフェノール 136.5g(1.25モル)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 250.3(1.25モル)、イソフタル酸 415.3g(2.5モル)及び無水酢酸 1123g(11モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、固相で重合反応を進めた。得られた粉末は350℃で偏光顕微鏡により液晶相に特有のシュリーレン模様が観察された。
【0033】
実施例1
製造例1で得られた液晶ポリエステル粉末 8gをN−メチル−2−ピロリドン 92gに加え、160℃に加熱し完全に溶解し褐色透明な溶液が得られた。この溶液を攪拌及び脱泡し、液晶ポリエステル溶液を得た。ここで得られた液晶ポリエステル溶液をガラス板上にフィルムアプリケーターを用いてキャストし、ホットプレート上で80℃、1時間乾燥した。窒素雰囲気下熱風オーブン中で昇温速度5℃/分で30℃からはじめて390℃まで加熱し、その温度で1時間保持する熱処理を行った。室温に戻したのち、ガラス板より剥離し、褐色のフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
表1から分かるように、実施例1の液晶ポリエステルフィルムは、線膨張率が小さく、熱分解温度が高くバランスのとれた性能であった。
【0034】
実施例2
熱処理の温度を350℃に変更し、その温度で保持する時間を2時間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。
表1から分かるように、実施例2の液晶ポリエステルフィルムは、線膨張率が小さく、熱分解温度が高くバランスのとれた性能であった。
【0035】
実施例3
熱処理の温度を350℃に変更し、その温度で保持する時間を5時間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。
表1から分かるように、実施例3の液晶ポリエステルフィルムは、線膨張率が小さく、熱分解温度が高くバランスのとれた性能であった。
【0036】
実施例4
製造例2で得られた液晶ポリエステル粉末 8gをN−メチル−2−ピロリドン 92gに加え、160℃に加熱し完全に溶解し褐色透明な溶液が得られた。この溶液を攪拌及び脱泡し、液晶ポリエステル溶液を得た。ここで得られた液晶ポリエステル溶液をガラス板上にフィルムアプリケーターを用いてキャストし、ホットプレート上で80℃、1時間乾燥した。窒素雰囲気下熱風オーブン中で昇温速度5℃/分で30℃からはじめて350℃まで加熱し、その温度で5時間保持する熱処理を行った。室温に戻したのち、ガラス板より剥離し、褐色のフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
表1から分かるように、実施例4の液晶ポリエステルフィルムは、線膨張率が小さく、熱分解温度が高くバランスのとれた性能であった。
【0037】
比較例1
熱処理の温度を250℃に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。
表1から分かるように、比較例1の液晶ポリエステルフィルムは、熱膨張が大きく、熱分解温度が低かった。
【0038】
比較例2
熱処理の温度を250℃に変更し、その温度で保持する時間を5時間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。
表1から分かるように、比較例2の液晶ポリエステルフィルムは、熱膨張が大きく、熱分解温度が低かった。
【0039】
比較例3
熱処理の温度を320℃に変更し、その温度で保持する時間を2時間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。
表1から分かるように、比較例3の液晶ポリエステルフィルムは、熱膨張が大きく、熱分解温度が低かった。
【0040】
比較例4
熱処理の温度を320℃に変更し、その温度で保持する時間を5時間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。
表1から分かるように、比較例4の液晶ポリエステルフィルムは、熱膨張が大きく、熱分解温度が低かった。
【0041】
比較例5
熱処理の温度を340℃に変更し、その温度で保持する時間を2時間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。
表1から分かるように、比較例5の液晶ポリエステルフィルムは、熱膨張が大きかった。
【0042】
比較例6
市販のポリイミドであるカプトン(東レ・デュポン社株式会社製)の評価結果を表1に示す。
表1から分かるように、比較例6のポリイミドは、熱分解温度が高い性能を示していたが、高温での線膨張が大きいことがわかった。
【0043】
得られたフィルムの測定は、次に記述した方法により測定した。
(1)線膨張率
理学電機株式会社製TMAを用いて、窒素気流下、5℃/分で昇温し、50℃を基準とし、低温度領域50〜100℃及び高温度領域50〜300℃における線膨張率を測定した。
(2)熱分解温度
JIS K7120に準拠し、窒素雰囲気下、5℃/分で昇温し、5%重量減少温度を熱分解温度として表記した。
【0044】
【表1】

注意:測定不可とは熱による膨張が大きすぎて測定限界(500μm)を超えてしまったことを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位を全構造単位に対して10〜35モル%含む液晶ポリエステルならびに非プロトン性溶媒を含有する液晶ポリエステル液状組成物を支持体上に塗布し、溶媒を除去した後に、350℃以上400℃以下で1時間以上熱処理する液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
液晶ポリエステルが、以下の式(1)、(2)、(3)で示される構造単位を含み、全構造に対して、式(1)で示される構造単位が30〜80モル%、式(2)で示される構造単位が35〜10モル%、式(3)で示される構造単位が35〜10モル%である液晶ポリエステルである請求項1記載のフィルムの製造方法。
(1) −O−Ar1−CO−
(2) −CO−Ar2−CO−
(3) −X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4’−ビフェニレンを表し、Ar2は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレンまたは、2,6−ナフチレンを表し、Ar3は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表し、XはNHを表し、YはOまたはNHを表す。)
【請求項3】
液晶ポリエステル液状組成物が、非プロトン性溶媒100重量部に対する液晶ポリエステルの量が0.01〜100重量部である請求項1または2記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られるフィルムを使用してなるフレキシブルプリント配線基板。

【公開番号】特開2006−88426(P2006−88426A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274827(P2004−274827)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】