説明

液晶光スイッチング素子及び液晶光スイッチング素子の製造方法及び画像表示装置

【課題】光の利用効率を向上する事が可能で、反射光の方向を容易にコントロールできる液晶光スイッチング素子及び製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】全反射により光を伝えているガラス板等の導光体101に、液晶107を接触させ、電圧を印加する事により液晶分子の方向をコントロールする事により、実効的な屈折率を変化させ、全反射条件を満たさないようにし、光をスイッチングし、かつ斜面を有する反射膜により光の方向を変えて導光体101からほぼ垂直方向に取り出す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信、光演算、光記憶装置、光プリンター、画像表示装置等に使用される液晶光スイッチング素子及び液晶光スイッチング素子の製造方法及び画像表示装置に関するものであり、特に投射型の画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の液晶光スイッチング素子は偏光板を二枚用いたものが知られている。
【0003】図6にその概略構成を示す。偏光板601、608、ガラス板602、603、透明電極604、605、液晶分子606、607より構成され、透明電極間に電圧を印加することにより液晶分子の方向を変えて偏光面を回転させ光スイッチングを行うものであった。従来の液晶光スイッチング素子の製造方法は平面構造の電極が作成可能なものであり、透過型では透明電極、反射型ではアルミ電極をスパッタ等の真空プロセスにより製造するものであった。
【0004】従来の画像表示装置は、偏光を液晶パネルに透過あるいは反射するよう照射し、不要なOFFの時の光は偏光板が吸収するようにしたものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の液晶光スイッチング素子は偏光板を二枚使用する必要があるため透過率が悪く、光の利用効率を向上する事が難しかった。
【0006】また従来の液晶光スイッチング素子の製造方法では平面構造の電極しか造る事ができず、反射光の方向をコントロールする事ができなかった。
【0007】また従来の画像表示装置は、不要なOFFの時の光を偏光板に吸収させるため偏光板の温度が上昇し耐久性に課題があった。また常に光が液晶に照射されるため、液晶の耐久性にも課題があった。またコントラストをさらに向上させたいと言う課題があった。
【0008】そこで本発明は、偏光板は一枚で良くしたがって光の利用効率を向上する事が可能な液晶光スイッチング素子を提供することを目的としている。
【0009】また本発明は、立体的な構造の電極を容易につくる事ができ、反射光の方向をコントロールする事が可能な液晶パネルが制作できる液晶光スイッチング素子の製造方法を提供することを目的としている。
【0010】また本発明は、不要なOFFの時の光を偏光板に吸収させる事なく、またOFFの時には液晶に光が照射されず、信頼性の高い画像表示装置を提供することを目的としている。さらにコントラストの向上も目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の液晶光スイッチング素子は、全反射により光を伝える導光体と、導光体表面に設けた透明電極と、導光体に相対して設置する回路基板と、回路基板表面に作成した斜面を有する凹凸構造と、凹凸構造の表面に設けた反射膜及びアドレス電極とを有し、前記透明電極とアドレス電極の間に液晶を封止し、前記透明電極とアドレス電極間に電圧を印加する事により液晶の実効的な屈折率を異常光に対する値と常光に対する値の間で変化させる事により、全反射状態と、透過状態とを切替え、透過光を前記反射膜により方向を変えて取り出すことを特徴とする。
【0012】請求項2に記載の液晶光スイッチング素子の製造方法は、回路基板上に樹脂の転写技術を用いて斜面を有する凹凸構造を作成する第一の工程と、その後凹凸構造を保持させたまま樹脂を僅かエッチングする事により回路基板上の電極端子を露出させる第二の工程と、その後反射膜及びアドレス電極となる金属膜を作成する第三の工程とを含む事を特徴とする。
【0013】請求項3に記載の画像表示装置は、請求項1に記載の光スイッチング素子を二次元状に並べた画像表示素子と、偏光を導光体表面に設けた透明電極で全反射する角度で照射する照明手段と、投射レンズとを用いて画像を表示することを特徴とする。
【0014】また請求項4に記載の液晶光スイッチング素子は、前記回路基板表面に作成した斜面を有する凹凸構造における斜面の角度は水平より約20度から約40度であり、好ましくは30度である事を特徴とする。
【0015】また請求項5に記載の液晶光スイッチング素子は、前記透明電極と反射膜の間の最も近接している個所の光路長は使用する波長の1/2波長より長く、好ましくは1波長より長くした事を特徴とする。
【0016】また請求項6に記載の液晶光スイッチング素子の製造方法は、前記樹脂は紫外線硬化樹脂、あるいは熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂である事を特徴とする。
【0017】また請求項7に記載の画像表示装置は、請求項1に記載の光スイッチング素子を二次元状に並べた画像表示素子と、偏光を導光体表面に設けた透明電極で全反射する角度で照射する偏光変換光学系を含む照明手段と、投射レンズとを用いて画像を表示することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0019】(実施例1)本発明の原理は、全反射により光を伝えているガラス板等の導光体に、液晶を接触させ、電圧を印加する事により液晶分子の方向をコントロールする事により、実効的な屈折率を変化させ、全反射条件を満たさないようにし、光をスイッチングし、かつ斜面を有する反射膜により光の方向を変えて導光体からほぼ垂直方向に取り出すところにある。
【0020】図1に、本発明による液晶光スイッチング素子の概略構成を示す。
【0021】ガラス製あるいは透明プラスチック製の導光体101には表面に透明電極102が設けてある。導光体101に相対して設置したシリコン製の液晶駆動用IC基板103の表面に、紫外線硬化樹脂を型転写する事により作成した断面形状が山形の凹凸構造104が設けてある。斜面の角度は水平から約20度から約40度で好ましくは30度近くが良い。本実施例ではシリコン110面の異方性エッチングにより約35度の斜面の多数の溝を有する母型を造り、それを元にして紫外線を透過する材料で型を作成し、これにより約35度の斜面を有する凹凸構造を作成した。他の角度を使用したい場合は、母型をダイヤモンド工具を使用した超精密切削加工により作成する事が可能である。
【0022】凹凸構造104の表面には、反射膜及びアドレス電極の機能を有するアルミニュウム薄膜105を設けてある。アルミニュウム薄膜105は電極端子112により液晶駆動用ICに接続されている。透明電極102とアルミニュウム薄膜105の間に液晶を封止する。透明電極102とアルミニュウム薄膜105間の電圧を変化させる事により液晶分子の向きを107、108のように変化させ、実効的な屈折率を異常光に対する値と常光に対する値の間で変化させる事により、全反射状態と、透過状態とを切替える。直線偏光109を所定の角度で入射させ、液晶の実効的な屈折率を導光体あるいは透明電極の屈折率より低くした場合、光は界面で全反射し不要光110となる。直線偏光を同じように所定の角度で入射させ、液晶の実効的な屈折率を導光体あるいは透明の屈折率とほぼ等しいか高くした場合、光は界面を透過し、アルミニュウム薄膜105にまで至りそこで反射し方向を変えて出力光111となる。
【0023】説明では液晶配向膜や、保護膜は省略したが、もちろん必要により使用する事が可能である。
【0024】また上記の例とは逆に不要光110を利用する構成とする事ももちろん可能である。
【0025】また液晶分子の向きは図1に限らず例えば逆の関係も、液晶材料特性の正負の選択により可能である。
【0026】また、透明電極102とアルミニュウム薄膜105の間の最も近接している所の光路長は使用する波長の1/2波長より長く、好ましくは1波長より長くする。このようにすれば、全反射時のエバネッセント波がアルミニュウム薄膜105にほとんど届かないため、高コントラストが得られる。
【0027】(実施例2)図2に本発明の液晶光スイッチング素子の製造方法の例を示す。
【0028】図2(a)において、電極端子204を有し、表面をCMP技術により平坦化処理した液晶駆動用IC基板201上に、紫外線硬化樹脂202を塗布する。そこにガラス等の紫外線を透過する物質で作成した型203を押し付け、紫外線を照射する。型をはがすと図2(b)のごとく凹凸構造205が転写により作成される。その後図2(c)のごとく凹凸形状を保持させたまま樹脂を僅かにエッチングし、電極端子204を露出させる。、その後反射膜及びアドレス電極となるアルミニューム薄膜206を蒸着により作成する。さらにアルミニューム薄膜206を部分的にエッチングし、各画素ごとにアドレス電極を分離するための分離帯207を碁盤目状に作成する。
【0029】(実施例3)図3に本発明の液晶光スイッチング素子の製造方法の他の例を示す。
【0030】図3(a)において、電極端子204を有し、表面をCMP技術により平坦化処理した液晶駆動用IC基板201上に、熱硬化性樹脂302を塗布する。そこに金型301を押し付け加熱する。型をはがすと図3R>3(b)のごとく凹凸構造303が転写により作成される。その後図3(c)のごとく凹凸形状を保持させたまま樹脂を部分的に僅かにエッチングし、電極端子204を露出させる。、その後反射膜及びアドレス電極となるアルミニューム膜304を蒸着により作成する。さらにアルミニューム膜304を部分的にエッチングし、各画素ごとにアドレス電極を分離するための分離帯305を碁盤目状に作成する。
【0031】ここでは耐熱特性を重視して熱硬化性樹脂を用いたが、特に高温で使用しない用途であれば熱過疎性樹脂を利用する事も可能である。
【0032】(実施例4)図4に、本発明の液晶光スイッチング素子の製造方法の他の例を示す。
【0033】この例は、画素ごとに反射面の傾きを所定の角度に変化させ、マイクロレンズ401から入射した光を再びもとのマイクロレンズに戻すために使用する凹凸構造を作成するものである。
【0034】図4において、402、403、404は電極端子で表面をCMP技術により表面を平坦化する。凹凸構造405は紫外線硬化樹脂に型転写により作成する。凹凸構造405を僅かにエッチングし、電極端子を露出させる。、その後反射膜及びアドレス電極となるアルミニューム薄膜406、407、408を蒸着により作成する。さらにアルミニューム薄膜を部分的にエッチングし、各画素ごとにアドレス電極を分離するための分離帯を作成する。
【0035】アルミニューム薄膜とマイクロレンズ401との間に透明電極を介して液晶を封止して使用する。
【0036】上記の応用以外にも例えば、携帯用反射液晶パネルの視角特性改善用の四角錘状の凹凸構造を作成する事も本発明の液晶光スイッチング素子の製造方法を用いる事により可能である。
【0037】(実施例5)図5に、本発明の画像表示装置に使用する他の光学系を示す。メタルハライドランプのアーク501より発した光は放物面鏡502によりほぼ平行光とされ、偏光変換光学系503によりほぼ直線偏光となる。コンデンサーレンズ504により回転カラーフィルタ505近傍へ集光され、角柱のロッドレンズ506により光量むらを低減し、再びコリメータレンズ507によりほぼ平行光あるいは若干の収束光として偏光板508により完全な直線偏光となり、台形プリズム509に入射し、本発明の実施例1に示した液晶光スイッチング素子510にいたる。液晶光スイッチング素子がONしている場合、光は投射レンズ511によりスクリーン512に結像する。OFFの場合は全反射し、スクリーン512に至らない。OFFの場合の光は例えば台形プリズム509の工夫により再び光源に戻す事により再利用可能である。
【0038】偏光変換光学系503の位置は上記の例以外に例えばコリメータレンズ507を透過した後の位置でも良い。またロッドレンズ506の位置は上記の例以外に例えば回転カラーフィルタ505に入射する前の位置でも良い。
【0039】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の請求項1の構成によれば、全反射状態と、透過状態とを切替えるため、理論的にほぼ無限大に近い高コントラストが得られ、しかも回路基板表面に作成した斜面によって方向を変えて導光体の上部より光を取り出すことができるため駆動回路の上部に反射液晶光スイッチング素子が構成でき、開口率を90%以上とする事が可能である。
【0040】またOFFの時には液晶に光が照射されず、液晶や配向膜等の信頼性を高める事ができる。
【0041】また本発明の請求項2の方法によれば、回路基板上に任意の立体構造が簡単に作成可能となるため、特に反射タイプの液晶の反射光の方向制御が自在にできるようになる。
【0042】また本発明の請求項3の構成によれば、偏光板を一枚だけ使用して、高コントラストな明るい画像が表示可能な画像表示装置を実現できる。偏光板一枚の削減により約30%のエネルギーが節約できる。また不要なOFFの時の光を偏光板に吸収させる事がないため偏光板の劣化を少なくする事ができる。
【0043】また本発明の請求項4の構成によれば、斜面を水平より約30度程度とする事により、斜めより液晶光スイッチング素子に入射した光をほほ導光体に対して垂直方向に反射させる事が可能となり、その時斜面に影ができにくくする事が可能となる。
【0044】また本発明の請求項5の構成によれば、全反射時のエバネッセント波が反射膜にほとんど届かないため、OFFの時の投射レンズに入る光量を減らす事ができ、高コントラストが得られる。
【0045】また本発明の請求項6の方法によれば、紫外線硬化あるいは熱硬化等による容易な型転写を行う事が可能となる。
【0046】また本発明の請求項7の構成によれば、通常の透過型の液晶プロジャクターで使用されている偏光変換光学系と同様に、利用できない偏光方向の光を利用可能とする事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態、実施例1に係る液晶光スイッチング素子の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態、実施例2に係る液晶光スイッチング素子の製造方法を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態、実施例3に係る液晶光スイッチング素子の製造方法を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態、実施例4に係る液晶光スイッチング素子の製造方法を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態、実施例5に係る画像表示装置の概略構成を示す図である。
【図6】従来の液晶を用いた光スイッチング素子を示す図である。
【符号の説明】
101・・導光体
102・・透明電極
103、201・・液晶駆動用IC基板
104、205、405・・凹凸構造
105、206、304、406、407、408・・アルミニュウム薄膜
107、108・・液晶分子
109・・直線偏光
110・・不要光
111・・出力光
112、204、402、403、404・・電極端子
202・・紫外線硬化樹脂
203、301・・型
207、305・・分離帯
302・・熱硬化性樹脂
401・・マイクロレンズ
501・・アーク
502・・放物面鏡
503・・偏光変換光学系
504・・コンデンサーレンズ
505・・回転カラーフィルタ
506・・ロッドレンズ
507・・コリメータレンズ
508・・偏光板
509・・台形プリズム
510・・液晶光スイッチング素子
511・・投射レンズ
512・・スクリーン
601、608・・偏光板
602、603・・ガラス板
604、605・・透明電極
606、607・・液晶分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】全反射により光を伝える導光体と、該導光体表面に設けた透明電極と、前記導光体に相対して設置する回路基板と、該回路基板表面に作成した斜面を有する凹凸構造と、該凹凸構造の表面に設けた反射膜及びアドレス電極とを有し、前記透明電極と前記アドレス電極の間に液晶を封止し、前記透明電極と前記アドレス電極間に電圧を印加する事により前記液晶の実効的な屈折率を異常光に対する値と常光に対する値の間で変化させる事により、全反射状態と透過状態とを切替え、透過光を前記反射膜により方向を変えて取り出すことを特徴とする液晶光スイッチング素子。
【請求項2】回路基板上に樹脂の転写技術を用いて斜面を有する凹凸構造を作成する第一の工程と、その後前記凹凸構造を保持させたまま樹脂を僅かエッチングする事により前記回路基板上の電極端子を露出させる第二の工程と、その後反射膜及びアドレス電極となる金属膜を作成する第三の工程とを含む事を特徴とする液晶光スイッチング素子の製造方法。
【請求項3】請求項1に記載の光スイッチング素子を二次元状に並べた画像表示素子と、偏光を前記導光体表面に設けた前記透明電極で全反射する角度で照射する照明手段と、投射レンズとを用いて画像を表示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】前記回路基板表面に作成した斜面を有する凹凸構造における斜面の角度は水平より約20度から約40度であり、好ましくは30度である事を特徴とする請求項1に記載の液晶光スイッチング素子。
【請求項5】前記透明電極と前記反射膜の間の最も近接している個所の光路長は使用する波長の1/2波長より長く、好ましくは1波長より長くした事を特徴とする請求項1に記載の液晶光スイッチング素子。
【請求項6】前記樹脂は紫外線硬化樹脂、あるいは熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂である事を特徴とする請求項2に記載の液晶光スイッチング素子の製造方法。
【請求項7】請求項1に記載の光スイッチング素子を二次元状に並べた画像表示素子と、偏光を前記導光体表面に設けた前記透明電極で全反射する角度で照射する偏光変換光学系を含む照明手段と、投射レンズとを用いて画像を表示することを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−171813(P2000−171813A)
【公開日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−344255
【出願日】平成10年12月3日(1998.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】