液晶表示装置
【課題】マルチプレックス駆動され、セグメント表示部を有する液晶表示装置であって、表示パターンとその背景との透過率のばらつきを抑制することができ、新規な構成を有する液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示素子において、表示パターンを表示させる表示セグメント電極及び表示コモン電極の外側に、それぞれ、背景セグメント電極及び背景コモン電極を配置する。表示コモン電極及び背景コモン電極を順次走査しながら、表示セグメント電極及び背景セグメント電極のそれぞれにオン電圧またはオフ電圧を印加して、液晶表示素子をマルチプレックス駆動する。表示コモン電極が選択されたときに、背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加するとともに、背景コモン電極が選択されたときに、表示及び背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加して、表示パターンの背景全体をオフ表示にする。
【解決手段】液晶表示素子において、表示パターンを表示させる表示セグメント電極及び表示コモン電極の外側に、それぞれ、背景セグメント電極及び背景コモン電極を配置する。表示コモン電極及び背景コモン電極を順次走査しながら、表示セグメント電極及び背景セグメント電極のそれぞれにオン電圧またはオフ電圧を印加して、液晶表示素子をマルチプレックス駆動する。表示コモン電極が選択されたときに、背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加するとともに、背景コモン電極が選択されたときに、表示及び背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加して、表示パターンの背景全体をオフ表示にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、マルチプレックス駆動によりセグメント表示またはセグメント表示及びドットマトリクス表示の混在表示を行う液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の情報表示装置として、外観上の高級感を狙った、背景表示部や暗表示部の表示輝度が非常に低いノーマリーブラック型液晶表示装置の搭載が増加してきている。特に、マルチプレックス駆動により動作するセグメント表示、または、セグメント表示及びドットマトリクス表示が可能な液晶表示装置の性能向上が著しく、市場流通量が上昇している。
【0003】
スタティック駆動及び1/2デューティ〜1/8デューティ駆動に対応する、いわゆるツイステッドネマチック(TN)モードの液晶表示素子では、2枚のガラス基板間に配置される液晶層内で、液晶分子は、基板に対して略水平に配向する水平配向状態で、その層内で略70°〜略130°捩れている。2枚のガラス基板の上下に配置される2枚の偏光板の吸収軸が略平行で、どちらか一方の偏光板吸収軸を、近傍の液晶層表面の液晶配向方位に対して略平行、または略直交、またはそれらに近い状態にして配置することにより、ノーマリーブラック表示を実現できる。
【0004】
その中でも、液晶層内の捩れ角が略90°で、液晶材料の複屈折率をΔn、液晶層厚をdとしたときのリターデーションΔndが比較的大きく1.5μm〜3μmであるときは、電圧無印加時における透過率を非常に低く設定することが可能である。
【0005】
また、捩れ角を略90°〜略120°に設定し、バックライトに無機発光ダイオード(LED)などの単色光源を用いることにより、特定波長の透過率の低さを外観表示に反映させた液晶表示装置も開発され市販されている。
【0006】
一方、1/8デューティよりも高い(分母が大きい)デューティ数の駆動を実現するために、液晶層内の捩れ角を略180°〜略250°にし、液晶層内のリターデーションを略700nm〜略1200nmに設定したスーパーツイステッドネマチック(STN)モードの液晶表示素子が用いられている。STNモードにおいて良好なノーマリーブラック表示を実現する方法としては、いくつかの方法がある。
【0007】
1番目の方法として、表示パターンを表示させるための「駆動セル」と、液晶層内において駆動セルとは反対の捩れ方位を有し、液晶層中央部の液晶分子配向方位が駆動セルのそれと直交関係にある「補償セル」とを上下に重ね、その上下に偏光板をクロスニコル配置することにより、良好な暗表示を実現する「二層STN」がある。最近は、液晶性高分子によって構成された光学フィルムにより補償セルを代替した液晶表示素子も広く用いられている。
【0008】
2番目の方法として、駆動セルの上下に偏光板を配置し、偏光板と近接するガラス基板との間の少なくとも一方に、1枚以上の正の一軸光学異方性または正の二軸光学異方性を有する位相差板を挿入し、電圧無印加時における透過率を低下させる方法も広く用いられている。
【0009】
さらに、3番目の方法として、上記TNモード液晶表示素子についても示したが、バックライトの光源として単色の無機LEDなどを用い、液晶層と偏光板との組み合わせに対する特定波長の低透過率を外観表示に反映させた液晶表示装置の開発も行われ市販されている。
【0010】
バックライトの発光波長に依存せず良好なノーマリーブラック表示を実現する液晶表示素子として、2枚のガラス基板間に配置される液晶層内の液晶分子配向方位が基板に対して垂直または略垂直となる「垂直配向(VA)モード」の液晶セルを、クロスニコル配置の偏光板間に配置する液晶表示素子がある。ガラス基板法線方位から観察したとき、その光学特性は、クロスニコル偏光板のそれとほぼ同等になり、透過率が非常に低くなるので、高いコントラストを比較的簡単に実現することができる。
【0011】
さらに、特許文献1に示されるように、上下偏光板と上下ガラス基板との間の一方または両方に、負の一軸光学異方性または負の二軸光学異方性を有する視角補償板を挿入することにより、液晶表示装置を斜めから観察した場合においても透過率の上昇が小さく、コントラストが比較的低下しにくい良好な表示状態を実現することが可能である。この視角補償方法に関しては、負の二軸光学異方性を有する視角補償板(二軸フィルム)の面内位相差や面内遅相軸配置に関して、特に有効な手法が特許文献2に開示されている。
【0012】
また、二軸光学異方性を有する略1/2波長板と、負の一軸光学異方性を有する視角補償板(Cプレート)を組み合わせることにより良好な視角特性を実現する方法が、特許文献3に開示されている。しかし、この手法は、略1/2波長板自体がどの方向から観察しても1/2波長の位相差を実現する必要があるため、実際は正の二軸光学異方性が必要であり、その実現は非常に難しい。
【0013】
比較的製造しやすいと考えられる二軸フィルムとCプレートとを組み合わせる方法が、特許文献4に開示されている。ただし、特許文献4の開示する方法では、二軸フィルムの面内位相差が190nm以下で、適用される液晶セルの液晶層内のリターデーションΔndが200nm〜500nmに限定されている。
【0014】
電圧印加時においても良好な視角特性を獲得するために、液晶の配向方向が1つの画素内で複数の方向に向くことを意図した「マルチドメイン配向」が有効である。これをVAモード液晶表示素子で実現する方法としては、例えば特許文献5に記載されている、電極形状の工夫により液晶層内で斜め方向に電界を発生させ、その方向に配向制御する「斜め電界配向制御法」や、例えば特許文献6に記載されている、基板表面形状を工夫することにより、配向制御を行う方法がある。
【0015】
液晶表示装置の左右方位の視角特性だけを重視する場合は、マルチドメイン配向でなく、液晶表示素子全面で均一な配向状態、すなわちモノドメイン配向であってもよい。モノドメイン配向は、例えば特許文献7に記載のいわゆる垂直配向膜に対する光配向処理方法や、特許文献8に開示されたある特定の表面自由エネルギーを有する垂直配向膜に対するラビング処理方法により実現される。
【0016】
なお、ノーマリーブラック型液晶表示装置において、電圧無印加での正面観察時や斜め観察時に、表示と背景との透明電極の厚みの違いに起因して、表示と背景とで透過率が異なっているように観察される場合がある。
【0017】
また、ノーマリーブラック型液晶表示装置において、オフ電圧が印加されている暗表示部分の透過率と、電圧無印加の背景の暗表示部分の透過率とが、特に斜め観察時に異なって見える場合がある。
【0018】
さて、特許文献9に、液晶層にツイスト構造を有し電圧制御複屈折(ECB)効果により動作する水平配向液晶セルを、リターデーションフィルムと組み合わせてカラー表示を行う液晶表示素子が開示されている。この液晶表示素子は、セグメント表示部を含む。
【0019】
特許文献9の液晶表示素子は、低温度または高温度時に、セグメント表示部と背景部との色差が顕著になり、オフ電圧を印加していてもセグメント部がくっきりと浮き出る課題(同文献段落[0008])を解決するために、セグメント表示部の周囲の背景部にダミー電極を設け、ダミー電極にオフ電圧を印加している(同文献段落[0011])。特許文献9の液晶表示素子で、オフ電圧とは、カラー液晶表示装置においてカラー表示を行うために印加される階調電圧のうちで最低の電圧である(同文献段落[0010])。
【0020】
例えば、同文献段落[0022]に、「このカラー液晶表示装置をPWM方式を用い、1/4デューティにて駆動した。セグメント部を表示させる場合には、裏側基板の電極(コモン電極)13に同期して、表側基板の各電極(セグメント電極)にそれぞれの色に応じた電圧を印加し、ダミー電極にはオフ電圧を印加した。」と記載されている。
【0021】
これより、ダミー電極には、セグメント部を表示させるマルチプレックス駆動とは独立して、一定のオフ電圧が印加されていると考えられる。ダミー電極をマルチプレックス駆動で制御する技術について、特許文献9に開示されていない。
【0022】
【特許文献1】特許2047880号明細書
【特許文献2】特許3330574号公報
【特許文献3】特許3299190号公報
【特許文献4】特許3863446号公報
【特許文献5】特許3834304号公報
【特許文献6】特許2947350号公報
【特許文献7】特許2872628号公報
【特許文献8】特開2005−234254号公報
【特許文献9】特開2000−98411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の一目的は、マルチプレックス駆動され、セグメント表示部を有する液晶表示装置であって、表示パターンとその背景との透過率のばらつきを抑制することができ、新規な構成を有する液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一観点によれば、液晶セルと該液晶セルを挟む上下偏光板とを含み、該液晶セルは、複数本の電極を含む表示セグメント電極と、表示面内で前記表示セグメント電極の外側に配置された1本または複数本の電極を含む背景セグメント電極と、複数本の電極を含む表示コモン電極と、該表示面内で該表示コモン電極の外側に配置された1本または複数本の電極を含む背景コモン電極と、該表示セグメント電極及び背景セグメント電極と該表示コモン電極及び背景コモン電極との間に挟まれた液晶層とを含み、表示パターンが、該表示セグメント電極と表示コモン電極との該表示面内での重なり部分で画定され、該表示面内で該表示パターンの外側が背景を画定し、マルチプレックス駆動される液晶表示素子と、前記液晶表示素子に光を入射させるバックライトと、前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動する制御装置とを有し、前記制御装置は、前記表示コモン電極及び前記背景コモン電極を順次走査しながら、前記表示セグメント電極及び前記背景セグメント電極の各電極それぞれにオン電圧またはオフ電圧を印加して、前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動し、前記背景のうち前記表示コモン電極を含む領域を、前記表示コモン電極が選択されたときに、前記背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にするとともに、前記背景のうち前記背景コモン電極を含む領域を、前記背景コモン電極が選択されたときに、前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にすることにより、該背景の全体をオフ表示にする制御を行うか、または、前記背景のうち前記表示コモン電極を含む領域を、前記表示コモン電極が選択されたときに、前記背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にするとともに、前記背景のうち前記背景コモン電極を含む領域を、前記背景コモン電極が選択されたときに、前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にすることにより、該背景の全体をオン表示にする制御を行う液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0025】
背景セグメント電極及び背景コモン電極を配置することにより、表示パターンの背景での電極配置領域が広くなり、電極の有無に起因する、表示パターンと背景との透過率差を抑制することが可能である。
【0026】
表示コモン電極及び背景コモン電極を順次走査しながらマルチプレックス駆動を行うことにより、例えば、背景にマルチプレックス駆動のオフ電圧を印加できるようになり、これにより、背景と、マルチプレックス駆動のオフ電圧が印加された表示パターンとの透過率差を抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
まず、図22のブロック図を参照して、液晶表示装置の概略構成について説明する。バックライト100が発光光源を有する。バックライト100から放出された光が、液晶表示素子101に入射する。液晶表示素子101で光の透過状態を制御することにより、情報表示が行われる。制御装置102が、バックライト100及び液晶表示素子101の動作を制御する駆動回路及び制御回路を含む。
【0028】
次に、マルチプレックス駆動によりセグメント表示を行う、比較例及び実施例の液晶表示素子について説明する。まず、比較例として、従来の液晶表示素子について説明する。
【0029】
図23(A)は、比較例の液晶表示素子の概略断面図である。下側偏光板1の上方に、下側ガラス基板3が配置されている。下側偏光板1と下側ガラス基板3との間には、液晶層6の配向状態に応じて、1枚または複数枚の、位相差板または視角補償板2(以下単に下側視角補償板2と呼ぶこととする)が配置される場合がある。なお、下側視角補償板2として、位相差板または視角補償板の代わりに、補償セルを用いることもできる。
【0030】
下側ガラス基板3の上に、セグメント電極4が形成されており、セグメント電極4を覆って、下側配向膜5が形成されている。セグメント電極4が形成された下側ガラス基板3を、セグメント基板3とも呼ぶこととする。
【0031】
なお、図23(B)に示すように、必要に応じて、セグメント電極4と下側配向膜5との間に、例えばSiO2からなる絶縁膜15を形成してもよい。
【0032】
下側配向膜5の上方に、液晶層6を挟んで、下側ガラス基板3に対向する上側ガラス基板9が配置されている。上側ガラス基板9の液晶層6側内面に、コモン電極8が形成され、コモン電極8を覆って、上側配向膜7が形成されている。なお、下側ガラス基板3側と同様に、必要に応じて、コモン電極8と上側配向膜7との間に絶縁膜を形成してもよい。コモン電極8が形成された上側ガラス基板9を、コモン基板9とも呼ぶこととする。
【0033】
上側ガラス基板9の上方に、上側偏光板11が配置されている。上側ガラス基板9と上側偏光板11との間に、液晶層6の配向状態に応じて、1枚または複数枚の、位相差板または視角補償板10(以下単に上側視角補償板10と呼ぶこととする)が配置される場合がある。なお、上側視角補償板10として、位相差板または視角補償板の代わりに、補償セルを用いることもできる。
【0034】
スペーサー12が、上下ガラス基板9、3間に挟まれ、液晶層厚を定める。スペーサー12は、例えば、球状、矩形状、台形状等の形状を有する。シール部13が、液晶層6をシールする。シール部13の一部、または別の部分に、下側ガラス基板3側から上側ガラス基板9上のコモン電極8に電気導通を図るためのトランスファー部14が設けられている。なお、上側ガラス基板側にセグメント電極を配置し、下側ガラス基板側にコモン電極を配置することもできる。
【0035】
下側ガラス基板3、セグメント電極4、下側配向膜5、液晶層6、上側配向膜7、コモン電極8、上側ガラス基板9、スペーサー12、シール部13、トランスファー部14を含んで、液晶セル16が構成される。
【0036】
図24に、液晶表示素子の表示パターンの例を示す。なお、この表示パターンの例は、比較例及び後述の実施例で共通である。液晶表示素子の表示部として外部に露出する有効表示エリア23の内部に、1セグメントとして扱われる「TEMP」という文字表示部21と、2桁の7セグメント表示部22とから構成される表示パターン20が画定されている。表示パターン20内を斜線で示す。この表示パターン20は、例えば自動車内の温度を表示するような表示装置に用いられるセグメント表示である。有効表示エリア23内で、表示パターン20の外側の領域が、背景24である。
【0037】
図25は、図24に示した表示パターンを実現する、比較例のセグメント電極パターンである。上述の表示部21及び22に対応するように、10本のセグメント電極が形成されている。
【0038】
有効表示エリア23の外に、10本のセグメント電極それぞれに接続するセグメント電極端子S1〜S10が配置されている。セグメント電極端子S1〜S10を介して、セグメント電極が、外部回路に接続される。
【0039】
セグメント電極端子S1〜S10と並んで、セグメント基板側に、コモン電極を接続するコモン電極端子C1及びC2も配置されている。コモン電極端子C1及びC2が、トランスファー部を介して、コモン基板側に形成されたコモン電極に接続される。なお、電極と、対応する電極端子とは、共通の参照番号で示すこととする。
【0040】
図26は、図24に示した表示パターンを実現する、比較例のコモン電極パターンである。上述の表示部21及び22に対応するように、2本のコモン電極C1及びC2が形成されており、それぞれ、トランスファー端子T1、T2を介して、セグメント基板側のコモン電極端子C1、C2に接続される。2本のコモン電極C1及びC2が走査されて表示を行う。比較例の液晶表示素子は、1/2デューティ、1/2バイアスのマルチプレックス駆動で駆動されることを想定している。
【0041】
表示面内で、セグメント電極4とコモン電極8との重なり部分が、表示パターン20を画定する。セグメント電極4及びコモン電極8のうち、表示パターン20の明暗表示をスイッチングする部分以外である、背景に含まれる部分を、引き回し線部と呼ぶこととする。
【0042】
表示パターン20内では、セグメント電極とコモン電極とが対向する。すなわち、セグメント基板及びコモン基板の双方に、透明電極層が形成されている。一方、表示パターン20の外である背景24には、セグメント基板及びコモン基板の一方しか透明電極層が形成されていない領域と、セグメント基板及びコモン基板の双方に透明電極層が形成されていない領域とが含まれる。このように、比較例の液晶表示素子では、有効表示エリア23内に、透明電極層の厚みが違う領域、すなわち液晶層の厚みが違う領域が混在する。
【0043】
例えば、透明電極のシート抵抗を100Ω□以下とする場合、その厚さは、成膜条件にも依存するが、略30nm±略10nmとなる。シート抵抗を10Ω□以下に低くしようとすると、厚さは、100Ω□程度でよい場合の8〜10倍の略250nm±略50nmまで厚くなる。
【0044】
表示パターンが精細なセグメント表示、または、セグメント表示及びドットマトリクス表示を行う表示装置では、表示均一性を維持するために、透明電極のシート抵抗が低い条件を使う場合が多い。透明電極のシート抵抗が低いほど、有効表示エリア内で液晶層の厚みのばらつきが大きくなり、つまりリターデーションの差が大きくなり、正面または/及び斜め観察時において、電極の有無に起因する透過率の差が観察されやすくなる。特に、人間の目の認識度合いが良好な低輝度時における透過率差は観察されやすい。
【0045】
次に、本発明の第1の実施例による液晶表示素子について説明する。第1の実施例の液晶表示素子では、以下に説明するように、表示パターンの背景にも透明電極を設けることにより、透明電極の有無に起因する液晶層の厚みのばらつきが抑制されている。
【0046】
図1は、第1の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。比較例との違いについて説明する。なお、第1の実施例の表示パターンも、比較例と同様に、図24に示すようなものである。
【0047】
第1の実施例の液晶表示素子では、セグメント基板3上に、セグメント電極4が形成されていない領域を埋めるよう、セグメント電極4の外側に、電極4Aが形成されている。セグメント電極4が、表示パターンの表示に用いられるので、セグメント電極4を、表示セグメント電極4と呼ぶこととする。セグメント基板3上に新たに追加された電極4Aは、背景に配置されるので、背景セグメント電極4Aと呼ぶこととする。
【0048】
第1の実施例の液晶表示素子では、さらに、コモン基板8上に、コモン電極8が形成されていない領域を埋めるよう、コモン電極8の外側に、電極8Aが形成されている。コモン電極8が、表示パターンの表示に用いられるので、コモン電極8を、表示コモン電極8と呼ぶこととする。コモン基板8上に新たに追加された電極8Aは、背景に配置されるので、背景コモン電極8Aと呼ぶこととする。
【0049】
以下、表示セグメント電極4と背景セグメント電極4Aとを合わせて(あるいは、表示セグメント電極4と背景セグメント電極4Aとを区別せずに説明する場合は)単にセグメント電極と呼ぶこともある。また、表示コモン電極8と背景コモン電極8Aとを合わせて(あるいは、表示コモン電極8と背景コモン電極8Aとを区別せずに説明する場合は)単にコモン電極と呼ぶこともある。
【0050】
表示セグメント電極4と表示コモン電極8とを区別せずに説明する場合は、単に表示電極と呼び、背景セグメント電極4A及び背景コモン電極8Aとを区別せずに説明する場合は、単に背景電極と呼ぶこともある。
【0051】
背景セグメント電極4A及び背景コモン電極8Aにも、表示セグメント電極4及び表示コモン電極8と同様に、マルチプレックス駆動の駆動信号が印加される。
【0052】
図2は、図24に示した表示パターンを実現する、第1の実施例のセグメント電極パターンである。比較例と同様に、10本のセグメント電極S1〜S10からなる表示セグメント電極4が配置されている。
【0053】
有効表示エリア23内の、表示セグメント電極4が配置されていない領域を埋めるように、1本の背景セグメント電極4Aが配置されている。背景セグメント電極4Aは、セグメント電極端子B1に接続されている。第1の実施例ではさらに、コモン電極端子C3が追加されている。背景セグメント電極4Aを、右上りの斜線で示す。
【0054】
表示セグメント電極4と、背景セグメント電極4Aとの間には、両者が短絡しないように隙間を設ける必要があるが、この隙間の距離は、50μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。ただし、電極間距離は、10μm以上確保することが好ましい。
【0055】
また、有効表示エリア23の左下隅に囲みで示すA領域内のように、引き回し線部同士の間隔も、極力狭くされている。引き回し線部の間隔も、50μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。ただし、電極間距離は、10μm以上確保することが好ましい。
【0056】
なお、有効表示エリア23の中央付近の上部に囲みで示すB領域内のように、「P」という文字の閉ループ状の部分の内部(浮島)は、閉ループに切り込みを入れることにより、背景セグメント電極4Aに繋げている。なお、切り込みの幅(切り込み部分の背景セグメント電極4Aの幅)は、最小線間幅の2倍以上が好ましく、より好ましくは3倍以上とする。
【0057】
このように、第1の実施例のセグメント基板上には、有効表示エリア内の、電極間の隙間(線間)を除くほぼ全面に、透明電極が形成されている。背景セグメント電極が、有効表示エリアの周に接する形状で配置される。
【0058】
なお、この実施例では、背景セグメント電極を1本に配線したが、必要ならば複数本の背景セグメント電極を設けてもよい。ただし、背景セグメント電極の本数が少ない方が、それを取り出す端子数も少なくできるので、駆動回路の規模を小さくできる。なお、少なくとも1つの背景セグメント電極が、有効表示エリアの周に接する形状で配置される。
【0059】
図3は、図24に示した表示パターンを実現する、第1の実施例のコモン電極パターンである。比較例と同様に、2本のコモン電極C1、C2からなる表示コモン電極8が配置されている。
【0060】
有効表示エリア23内の、表示コモン電極8が配置されていない領域を埋めるように、1本の背景コモン電極8Aが配置されている。背景コモン電極8Aは、トランスファー端子T3を介して、セグメント基板側のコモン電極端子C3に接続される。背景コモン電極8Aを、左上りの斜線で示す。
【0061】
表示コモン電極8と背景コモン電極8Aとを合わせて、3本のコモン電極C1〜C3が配置されており、1/3デューティ、1/3バイアスのマルチプレックス駆動が想定されている。
【0062】
表示コモン電極8と、背景コモン電極8Aとの間には、両者が短絡しないように隙間を設ける必要があるが、この隙間の距離は、50μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。ただし、電極間距離は、10μm以上確保することが好ましい。
【0063】
このように、第1の実施例のコモン基板上には、有効表示エリア内の、電極間の隙間を除くほぼ全面に、透明電極が形成されている。背景コモン電極は、有効表示エリアの周に接する形状で配置される。背景コモン電極は、マルチプレックス駆動の観点からは、デューティ数増加を抑えるように、少ない本数にできれば好ましい。
【0064】
なお、液晶表示素子を駆動させる駆動回路には、セグメント及びコモン出力共に、出力電流容量に制限があるため、駆動可能な表示面積に制限がある場合が多い。能力以上の出力電流を要する広い表示領域を駆動すると、オン表示時に印加電圧の降下を生じ、表示輝度低下、さらには表示ムラを生じさせる懸念がある。
【0065】
背景は広い面積になりうる。背景セグメント電極あるいは背景コモン電極を、1本のみ設けると印加電圧の観点で面積が広くなりすぎる場合は、複数本の電極に分割して、各電極の面積を狭くすることも有効であろう。
【0066】
図4に、背景コモン電極を2つの背景コモン電極C3a、C3bに分割する例を示す。背景コモン電極C3a、C3bそれぞれに、トランスファー端子T3、T4が用意されている。複数の背景コモン電極C3a、C3bは、共通のコモン電極端子に接続して、マルチプレックス駆動において同じ走査線として走査するようにしてもよい。また、背景コモン電極C3a、C3bは、それぞれ別のコモン接続端子に接続して、別の走査線として走査するようにしてもよい。なお、複数本の背景コモン電極を設けた場合、少なくとも1つの背景コモン電極は、有効表示エリアの周に接する形状で配置される。なお、以下では、図3に示したように、1本の背景コモン電極とした場合を例に説明を続ける。
【0067】
以上説明したように、第1の実施例では、セグメント基板及びコモン基板の、有効表示エリア内のほぼ全面に、透明電極が形成されている。これにより、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきが抑制される。
【0068】
次に、第1の実施例におけるセグメント電極とコモン電極との重なり構造について説明するとともに、表示パターン及び背景のオン・オフを制御するための駆動方法について説明する。
【0069】
図5は、図2に示したA領域の拡大図であり、図6は、図2に示したB領域の拡大図である。セグメント電極とコモン電極とが重なった状態を示している。
【0070】
表示セグメント電極と表示コモン電極とが重なっている領域R11が、表示パターンとなり、それ以外が背景となる。上述のように、表示セグメント電極及び表示コモン電極の、表示パターン部以外が、それぞれの引き回し線部である。
【0071】
背景は、線間以外、表示セグメント電極の引き回し線部と背景コモン電極とが重なっている領域R12と、背景セグメント電極と表示コモン電極の引き回し線部とが重なっている領域R21と、背景セグメント電極と背景コモン電極とが重なっている領域R22とに分割される。領域R12、R21で、表示電極(表示セグメント電極、表示コモン電極)の引き回し線部は、対向側の背景電極(背景コモン電極、背景セグメント電極)と対向する。
【0072】
図5及び図6において、表示セグメント電極と表示コモン電極とが重なっている領域R11及び表示セグメント電極と背景コモン電極とが重なっている領域R12を、左上りの斜線で示している。背景セグメント電極と表示コモン電極とが重なっている領域R21及び背景セグメント電極と背景コモン電極とが重なっている領域R22を、クロスハッチで示している。
【0073】
なお、上述のように、図6に示す「P」という文字の閉ループ状の部分の内部25は、閉ループに切り込みを入れることにより、背景セグメント電極に繋がっている。
【0074】
図7に、有効表示エリア23全体でのセグメント電極とコモン電極との重なりを示す。図7を参照して、表示パターン及び背景のオン・オフをマルチプレックス駆動で制御する方法について説明する。
【0075】
表示パターンは、表示セグメント電極S1〜S10(表示セグメント電極4)と、表示コモン電極C1、C2(表示コモン電極8)との重なり部分で画定される。表示パターンのオン・オフを制御する場合は、表示コモン電極C1またはC2が選択される期間に、表示セグメント電極S1〜S10の各々にオンまたはオフの駆動信号を印加する。
【0076】
背景は、線間以外、背景セグメント電極4Aと表示コモン電極8の引き回し線部との重なり(領域R21)、表示セグメント電極4の引き回し線部と背景コモン電極8Aとの重なり(領域R12)、及び、背景セグメント電極4Aと背景コモン電極8Aとの重なり(領域R22)で画定される。領域R11〜R22のうちのいくつかを図に例示する。
【0077】
まず、背景全体をオフにする制御について説明する。背景セグメント電極4Aには、コモン電極C1〜C3が選択される期間でいずれもオフの駆動信号を印加する。これにより、背景セグメント電極4Aと表示コモン電極8の引き回し線部との重なり(領域R21)は、表示コモン電極C1、C2が選択される期間にオフに保たれる。
【0078】
さらに、背景コモン電極C3が選択される期間は、すべての表示セグメント電極S1〜S10にオフの駆動信号を印加する。これにより、表示セグメント電極4の引き回し線部と背景コモン電極8Aとの重なり(領域R12)、及び、背景セグメント電極4Aと背景コモン電極8Aとの重なり(領域R22)も、オフとなる。
【0079】
つまり、背景のうち表示コモン電極を含む領域は、表示コモン電極が選択されたときに、背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にするとともに、背景のうち背景コモン電極を含む領域は、背景コモン電極が選択されたときに、表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にすることにより、背景の全体をオフ表示にする。
【0080】
背景の全体をオンにする制御は、この逆となる。すなわち、背景セグメント電極4Aには、コモン電極C1〜C3が選択される期間でいずれもオンの駆動信号を印加する。これにより、背景セグメント電極4Aと表示コモン電極8の引き回し線部との重なり(領域R21)は、表示コモン電極C1、C2が選択される期間にオンに保たれる。
【0081】
さらに、背景コモン電極C3が選択される期間は、すべての表示セグメント電極S1〜S10にオンの駆動信号を印加する。これにより、表示セグメント電極4の引き回し線部と背景コモン電極8Aとの重なり(領域R12)、及び、背景セグメント電極4Aと背景コモン電極8Aとの重なり(領域R22)も、オンとなる。
【0082】
つまり、背景のうち表示コモン電極を含む領域は、表示コモン電極が選択されたときに、背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にするとともに、背景のうち背景コモン電極を含む領域は、背景コモン電極が選択されたときに、表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にすることにより、背景の全体をオン表示にする。
【0083】
以上説明したように、第1の実施例では、表示パターン及び背景双方のオン・オフを、表示コモン電極及び背景コモン電極を順次選択していくマルチプレックス駆動で制御することができる。
【0084】
例えば、ノーマリーブラック表示の液晶表示素子で、表示パターンがオフ(暗表示)のとき、すなわちオフ電圧が印加されているとき、背景にもマルチプレックス駆動のオフ電圧を印加して、表示パターンと背景の透過率を揃えることにより、オフ電圧印加の表示パターンと電圧無印加の背景とで見え方が異なるクロストークを防止することができる。
【0085】
また例えば、ノーマリーブラック表示の液晶表示素子で、背景をオン(明表示)とすることにより、ノーマリーホワイト型の液晶表示素子のような表示を行うこともできる。
【0086】
次に、第2の実施例の液晶表示素子について説明する。ノーマリーブラック表示を行う垂直配向(VA)モードの液晶表示素子では、暗表示時であっても、オフ電圧印加に伴う斜め電界に起因して、電極エッジ近傍で光抜けが生じやすい。第2の実施例の技術は、そのような電極エッジ近傍の光抜け抑制に有効である。
【0087】
図8は、第2の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。以下、第1の実施例との違いについて説明する。第2の実施例の液晶表示素子では、セグメント基板3と、表示セグメント電極4及び背景セグメント電極4Aとの間に、ブラックマスク30が形成されており、コモン基板8と、表示コモン電極8及び背景コモン電極8Aとの間に、ブラックマスク31が形成されている。
【0088】
ブラックマスク30は、表示面内で、表示セグメント電極4と背景セグメント電極4Aとの隙間を覆うように帯状に形成され、表示セグメント電極4の縁からその内側にある程度オーバーラップし、また、背景セグメント電極4Aの縁からその内側にある程度オーバーラップするように形成されている。
【0089】
ブラックマスク31は、表示面内で、表示コモン電極8と背景コモン電極8Aとの隙間を覆うように帯状に形成され、表示コモン電極8の縁からその内側にある程度オーバーラップし、また、背景コモン電極8Aの縁からその内側にある程度オーバーラップするように形成されている。
【0090】
電極の縁から内側にオーバーラップするようにブラックマスクが配置されていることにより、電極エッジ近傍の光抜けが良好に抑制される。電極の縁からその電極の内側にオーバーラップする距離は、5μm以上20μm以下が好ましい。
【0091】
ブラックマスク30及び31は、例えば顔料、カーボンなどの粒子、または染料を分散させた樹脂や、クロムなどの金属等を用いて構成される。なお、ブラックマスクに金属等導電材料を用いる場合は、透明電極との間に絶縁層を配置する。なお、ブラックマスクは、透明電極と配向膜との間に配置することもでき、また、図23(B)を参照して説明した絶縁膜と配向膜との間に配置することもできる。
【0092】
次に、第3及び第4の実施例の液晶表示素子について説明する。第1の実施例において、背景に新たな電極を追加し、ノーマリーブラック表示の液晶表示素子でも、表示パターン及び背景を合わせた全面をオン(明表示)にできるようにした。
【0093】
しかし、引き回し線部同士の線間や背景電極と表示電極との線間は、電極が配置されていないので、全面がオンとなっても暗状態のままである。例えば全面がオン時に、このような線間の暗状態により、表示に違和感が生じる場合がある。特に、線間の距離が比較的広い(例えば20μm〜50μm程度)場合で、線間が不規則なパターンで配置されているような場合に、このような違和感が生じやすい。
【0094】
第3の実施例では、セグメント電極及びコモン電極上の双方に開口を分布させることにより、線間以外の領域にも、オン時に暗状態のままの部分を分布させて、表示の違和感を低減させる。ただし、電極上に開口を形成すると、開口の縁が新たな電極エッジとなる。オフ(暗表示)時において、このような電極エッジに起因する開口の縁近傍での光抜けは抑制したい。
【0095】
図9は、第3の実施例の液晶表示素子の開口の配置を示す概略平面図である。セグメント電極上に、複数の開口OPs(セグメント開口OPsと呼ぶこととする)が形成され、各セグメント開口OPsに対向する位置のコモン電極上に、開口OPc(コモン開口OPcと呼ぶこととする)が形成されている。つまり、各セグメント開口OPsに対し、対応する1つのコモン開口OPcが配置されている。セグメント開口OPs及びコモン開口OPcは、それぞれ、複数列に並んで配置されている。両開口OPs、OPcは相似形状(合同も含むとする)である。
【0096】
相互に対応するセグメント開口OPsとコモン開口OPcとは、重心GPが一致し、セグメント開口OPsの大きさはコモン開口OPcに対して等しいか小さく、セグメント開口OPsは、コモン開口OPcと一致するか、コモン開口OPc内に含まれる。なお、理想的には、表示面内でセグメント開口OPsの縁とコモン開口OPcの縁とが一致すれば、斜め電界抑制に最も好ましい。
【0097】
図9には、セグメント開口OPs及びコモン開口OPcの、左右方向に伸びた列を、上下2列分示している。セグメント開口OPs及びコモン開口OPcは、矩形形状(正方形も含むとする)であり、辺同士が平行に配置されている。開口の矩形の辺は、左右方向または上下方向に平行である。
【0098】
セグメント開口OPsは、列方向の長さ(横辺長さ)がWsで、幅(縦辺長さ)がHsであり、列方向に間隔Gsを隔てて規則的に並んでいる。コモン開口OPcは、列方向の長さ(横辺長さ)がWcで、幅(縦辺長さ)がHcであり、列方向に間隔Gcを隔てて規則的に並んでいる。コモン開口OPcの列同士は、間隔Pを隔てて並んでいる。上下方向に並ぶ開口列の開口の重心GPが、左右方向に関して揃っている。
【0099】
セグメント開口OPsの列方向の長さWs、幅Hs、列方向の間隔Gs、及び、コモン開口OPcの列方向の長さWc、幅Hc、列方向の間隔Gcは、以下のような関係を満たす。
【0100】
セグメント開口OPsの列方向の長さWsは、5μmより長いことが好ましく、5μm<Ws≦Wcとなる。また、セグメント開口OPsの幅Hsも、5μmより長いことが好ましく、5μm<Hs≦Hcとなる。さらに、コモン開口OPcの列方向の間隔Gcも、5μmより長いことが好ましく、5μm<Gc≦Gsとなる。
【0101】
また、コモン開口OPcの幅Hcが、列方向の間隔Gc以上であることが好ましく、Hc≧Gcであり、セグメント開口OPsの幅Hsが、列方向の間隔Gs以上であることが好ましく、Hs≧Gsである。
【0102】
コモン開口OPcの幅Hcは、セグメント電極とコモン電極との間隔に略等しくすることが好ましく、コモン開口OPcの列方向の長さWcは、セグメント電極及びコモン電極の、引き回し線部及び背景電極の最小線幅に合わせることが好ましい。コモン開口OPcの列同士の間隔Pは、コモン開口OPcの列方向の間隔Gc以上にすることが有効である。
【0103】
開口は、背景内のみに設けても、さらに表示パターン内に設けてもよい。なお、開口を持つ電極パターンの作製のために、例えば以下のようにフォトマスクを作製すればよいであろう。ポジ型のフォトマスクの作製においては、元のセグメント、コモン電極パターンのマスクデータと、開口のみを配列したマスクデータの論理積を取ったマスクデータをそれぞれ作成し、このマスクデータをもとにフォトマスクを作製することで、遮光部に開口を有するマスクパターンとすることが有効である。なお、引き回し線部や背景電極の線幅が狭い部分に開口を設けると、断線する可能性があるので、断線しないようにする配慮が必要である。線幅100μm以下の電極部分、特に線幅50μm以下の電極部分には、開口を設けないようにするのがよい。
【0104】
セグメント電極とコモン電極との間隔が例えば30μmである場合、例えば、コモン開口OPcの列方向の長さWcが30μm、セグメント開口OPsの列方向の長さWsが20μm、コモン開口OPcの幅Hcが30μm、セグメント開口OPsの幅Hsが20μm、コモン開口OPcの列方向の間隔Gcが10μm、セグメント開口OPsの列方向の間隔Gsが20μm、コモン開口OPcの列同士の間隔Pが100μmである。
【0105】
なお、セグメント側とコモン側の条件を入れ替えても構わない。例えば、コモン電極側の開口を、セグメント電極側の開口より小さくするようにしてもよい。
【0106】
なお、図10に示すように、上下方向に並ぶ開口列の開口の重心GPが、左右方向に関して揃っていなくてもよい。例えば、上下方向に並ぶ開口列の重心を、左右方向に半ピッチずらして、重心GPを市松状に配置してもよい。
【0107】
さらに、図11に示すように、それぞれの開口は、表示面内で、左右方向(あるいは上下方向)から所定角度θだけ傾いていてもよい。列内で隣り合う開口同士の重心の間隔がLpであり、隣り合う列同士の開口の重心の間隔がVpである。
【0108】
なお、開口形状は矩形に限らない。例えば、円形や楕円形、十字形などとすることも可能である。各開口が、それに対応する対向側の開口と相似形状であり、両開口が重心を共通とし、両開口の大きさを等しいか、一方が他方を含む大きさとすれば有効である。一方が他方を含む大きさである場合、重心がややずれても、一方が他方を含む位置関係が保たれやすい。ただし両開口の大きさは近いことが斜め電界抑制に好ましく、一方を他方に対して80%〜120%程度の大きさ(面積)とすることが好ましい。
【0109】
次に、第4の実施例の液晶表示素子について説明する。第3の実施例で、電極上に開口を形成した。第4の実施例では、開口を覆うように、第2の実施例で導入したようなブラックマスクを形成することにより、開口近傍の光抜けをさらに抑制する。
【0110】
図12は、セグメント開口OPs、コモン開口OPc、及びブラックマスクBMの配置関係を示す概略断面図である。コモン基板Sc側に、ブラックマスクBMが形成されている。なお、セグメント基板Ss側、あるいは両基板側にブラックマスクを形成することもできる。
【0111】
この例では、セグメント開口OPsよりもコモン開口OPcの方が大きい。表示面内で、ブラックマスクBMが、相対的に大きいコモン開口OPcを覆い、コモン開口OPcの縁からコモン電極Ecの内側にある程度オーバーラップするように形成されている。これにより、良好に遮光が行われる。オーバーラップの距離は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。
【0112】
次に、第5の実施例の液晶表示素子について説明する。第1の実施例で、背景セグメント電極及び背景コモン電極を導入し、それぞれ、セグメント電極端子及びコモン電極端子に接続して、背景のオン・オフ制御を、表示パターンのオン・オフを制御するマルチプレックス駆動に組み込んだ。
【0113】
しかし、背景のオン・オフ制御のためのセグメント電極端子及びコモン電極端子を増加させることができない場合もあろう。第5の実施例でも、第1の実施例と同様に、セグメント基板の表示セグメント電極の配置されない領域を埋めるように、背景セグメントダミー電極を配置し、コモン基板の表示コモン電極の配置されない領域を埋めるように、背景コモンダミー電極を配置する。しかし、両ダミー電極は、それぞれセグメント電極端子及びコモン電極端子に接続せず、マルチプレックス駆動で制御することは行わないダミー電極である。
【0114】
第5の実施例でも、セグメント基板及びコモン基板の、線間を除くほぼ全面に透明電極が形成されている。これにより、第1の実施例と同様に、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきが抑制される。
【0115】
ただし、単純に背景セグメントダミー電極及び背景コモンダミー電極を配置しただけでは、静電気等の帯電により、背景の点灯等の誤動作を起こす懸念がある。このため、第5の実施例では、背景セグメントダミー電極と背景コモンダミー電極とを導通させ同電位とする。
【0116】
図13は、第5の実施例のセグメント電極パターンである。表示セグメント電極4が配置されていない領域を埋めるように、背景セグメントダミー電極4Bが配置されているが、背景セグメントダミー電極4Bは、セグメント電極端子には接続されない。
【0117】
背景セグメントダミー電極4Bは、背景コモンダミー電極と導通させるために、有効表示エリア23の外に新たに設けられたダミー電極間トランスファー端子TSCに接続される。なお、ダミー電極間トランスファー端子を、複数個設けてもよい。また、第5の実施例では、コモン電極端子C1及びC2に並んで、ダミー電極端子Dが配置されている。
【0118】
図14は、第5の実施例のコモン電極パターンである。表示コモン電極8が配置されていない領域を埋めるように、背景コモンダミー電極8Bが配置されているが、背景コモンダミー電極8Bは、コモン電極端子には接続されない。
【0119】
背景コモンダミー電極8Bは、トランスファー端子TDを介して、セグメント基板側に形成されたダミー電極Dに接続され、外部に取り出される。また、背景コモンダミー電極8Bは、ダミー電極間トランスファー端子TSCを介して、背景セグメントダミー電極4Bに接続される。
【0120】
このように、背景セグメントダミー電極4Bと背景コモンダミー電極8Bとを導通させて、同電位とする。これらダミー電極4B、8Bに、ダミー電極端子Dから所定電位が印加される。ダミー電極端子Dには、好ましくは0Vが印加される。なお、第2の実施例と同様に、表示面内で線間を覆うようにブラックマスクを形成してもよい。
【0121】
次に、第6及び第7の実施例による液晶表示素子について説明する。第1〜第5の実施例では、セグメント基板あるいはコモン基板の同一面上に、表示電極と背景電極とを形成した。よって、表示電極と背景電極との短絡を防ぐために、表示電極と背景電極との間に電極のない線間が残る。このような線間をなくすことが可能な構造について説明する。
【0122】
図15は、第6の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。第6の実施例では、背景セグメント電極4Cを、表示セグメント電極4とは異なる層に形成する。セグメント基板3上に、背景セグメント電極4Cが形成され、その上に、絶縁膜17が形成され、絶縁膜17上に、表示セグメント電極4が形成されている。
【0123】
図16は、第7の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。第7の実施例では、セグメント基板側に加え、さらにコモン基板側でも、表示電極と異なる層に背景電極を形成する。コモン基板8の下に、背景コモン電極8Cが形成され、その下に、絶縁膜18が形成され、絶縁膜18の下に、表示コモン電極8が形成されている。
【0124】
このように、背景電極と表示電極とを異なる層に形成することにより、表示面内で両電極間に隙間を設けなくてもよくなる(背景電極と表示電極の端を揃えてよい)。線間が無くなれば、背景のオン時に線間が暗状態になるような状況をなくすことができる。
【0125】
次に、上記実施例の構造を採用した液晶表示装置を作製して、その外観状態を観察した結果について説明する。ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、及び、垂直配向(VA)モードの3種類の液晶表示装置を作製した。
【0126】
まず、TNモードの液晶表示装置の場合について説明する。比較例、第1の実施例、及び第3の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を作製した。上下ガラス基板の内面に配置される配向膜には、日産化学工業製の水平配向膜SE410を用いた。液晶層内の液晶分子配向は、左捩れで略90°とし、液晶層中央分子の配向方向が略6時方位となるように、配向膜面にラビング処理を施した。本検討では、液晶層厚dが略6μmと略9μmの2種類の液晶表示素子を作製した。
【0127】
液晶材料には、正の誘電率異方性を有する複屈折率Δnが略0.09と略0.25であるものを用いた。液晶層厚dが略6μmの場合には、Δnが略0.09の液晶材料を用い、液晶層厚dが略9μmの場合には、Δnが略0.25の液晶材料を用いたので、それぞれの液晶層におけるリターデーションΔndは、略540nm及び略2.25μmとなる。
【0128】
上下ガラス基板の外側に配置される上下の偏光板は、パラレルニコル配置とした。上下偏光板の吸収軸は、上下ガラス基板のいずれか一方のラビング方位(液晶配向方位)に対して略平行となるように配置した。偏光板として、ポラテクノ製SHC13Uを用いた。この液晶表示素子は、オフ電圧印加時に暗状態が得られるノーマリーブラック型となる。
【0129】
さらに、実際に作製したサンプルを観察する前に、ほぼ同じ条件におけるシミュレーション解析を行った。シミュレータとして、シンテック製のLCDMASTER6を用いた。
【0130】
図17(A)及び図17(B)に、駆動電圧を最適化した1/3デューティ、1/3バイアスのマルチプレックス駆動条件でのオフ電圧印加時、及び電圧無印加時における9時−3時方位(左右方位)の視角特性のシミュレーション結果を示す。シミュレーションは、透明電極が形成されている部分のオフ電圧印加時及び電圧無印加時の視角特性を示す。
【0131】
図17(A)が、Δndが低い略540nmの場合、図17(B)が、Δndが高い略2.25μmの場合の結果である。横軸が9時−3時方位(左右方位)の観察角度を度単位で示し、縦軸が透過率を示す。なお、Δndが低い略540nmの場合に対しては、単波長バックライトの場合を想定して、波長630nmの透過率を示している。
【0132】
液晶層のΔndが低い場合も高い場合も、電圧無印加時の透過率及びオフ電圧印加時の透過率の双方は、観察角度が深くなるにつれて大きくなり、特に右方位で透過率が大きくなる傾向がある。また、電圧無印加時の透過率よりも、オフ電圧印加時の透過率の方が大きく、両透過率の差は、観察角度が深くなるほど大きくなる傾向がある。液晶層のΔndが低い方が、深い観察角度での透過率が大きい。オフ電圧印加部分と電圧無印加部分との見え方が異なるクロストークが、特に低いΔndの方の液晶表示素子において、深い観察角度になるほど生じやすいことが示唆される。
【0133】
比較例の液晶表示素子では、表示パターンが暗表示にされるとき、表示パターンにオフ電圧が印加されている。一方、背景は電圧無印加である。比較例では背景電極を形成していないが、背景電極の無い部分の電圧無印加の視角特性は、シミュレーション結果に示した電極形成部分の電圧無印加の視角特性とほぼ同様と考えられる。従って、比較例の液晶表示素子において、深い観察角度でクロストークが生じることが予想される。実際に比較例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を観察したところ、深い観察角度でクロストークが観察された。
【0134】
一方、第1及び第3の実施例の液晶表示素子では、表示パターンにオフ電圧を印加して暗表示とするとき、背景にもオフ電圧を印加することができるので、クロストークが抑制される。なお、背景の線間部分は電圧無印加となるが、幅が狭いので目立たない。第1及び第3の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を観察したところ、クロストークは認識されなかった。
【0135】
なお、第1及び第3の実施例の液晶表示素子は、背景をオン(明表示)とすることにより、ノーマリーホワイト型の表示を行うことも可能である。表示パターン及び背景にオン電圧が印加されているとき、表示パターンと背景とでオン電圧印加部分の見え方が異なることはない。
【0136】
ただし、背景をオンにしたとき、線間は暗状態であり、第1の実施例の液晶表示素子では、これに起因して表示に違和感を生じ得る。電極に開口を形成した第3の実施例は、このような違和感の低減に有効である。第3の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置により、背景のオン時の表示が大幅に改善されることを確認した。
【0137】
なお、上記検討において、液晶層内における液晶分子の捩れ角を略90°としたが、捩れ角はこれに限定されない。捩れ角は概ね70°〜130°の範囲であれば、上記と同様な効果が得られる。
【0138】
TNモードでノーマリーブラック型の液晶表示素子としては、例えば、液晶セルが、液晶層内における液晶分子の捩れ角が略90°で、液晶層のリターデーションΔndが2μm〜4μmであるものが好ましく、また例えば、液晶セルが、液晶層内における液晶分子の捩れ角が略70°〜略130°で、液晶層のリターデーションΔndが400nm〜700nmであるものが好ましい。上下偏光板は、平行ニコル配置である。
【0139】
次に、STNモードの液晶表示装置の場合について説明する。比較例、第1の実施例、第3の実施例、及び第5の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を作製した。さらに、TNモードの場合と同様に、シミュレーション解析を行った。
【0140】
上下ガラス基板の内面に配置される配向膜には、日産化学工業製の水平配向膜SE2811を用いた。液晶層内の液晶分子配向は、左捩れで略180°とし、液晶層中央分子の配向方向を略6時方位となるように、配向膜面にラビング処理を施した。本検討では、液晶層厚dが略6μmの液晶表示素子を作製した。液晶材料には、正の誘電率異方性を有する複屈折率Δnが略0.15であるものを用いたので、リターデーションΔndは略900nmとなる。
【0141】
このような左捩れのセル(表示パターンを表示する「駆動セル」)の上側または下側に、「色補償セル」を積層した。色補償セルは、液晶層内の液晶分子配向を右捩れで略180°とし、液晶層中央分子の配向方向が略3時方位となるように配向膜面にラビング処理を施し、有効表示エリア内に全面電極を配置したこと以外は、駆動セルと同様なものである。
【0142】
積層した2枚のセルの外側に配置される上下の偏光板は、クロスニコル配置とした。上下偏光板の吸収軸は、偏光板として、ポラテクノ製SHC13Uを用いた。この液晶表示素子は、オフ電圧印加時に暗状態が得られるノーマリーブラック型となる。なお、色補償セルは、同様な光学特性を有する液晶性ポリマー等で形成された光学フィルム、例えばポラテクノ製Twistarフィルムに代替してもよい。
【0143】
図18に、駆動電圧を最適化した1/64デューティ、1/9バイアスのマルチプレックス駆動条件でのオフ電圧印加時、及び電圧無印加時における9時−3時方位(左右方位)の視角特性のシミュレーション結果を示す。横軸が9時−3時方位(左右方位)の観察角度を度単位で示し、縦軸が透過率を示す。
【0144】
電圧無印加及びオフ電圧印加の双方共に、観察角度が深くなるに従って、透過率が大きくなり、特に右方位で透過率が大きくなる傾向がある。右方位ではオフ電圧印加時の方が電圧無印加時よりも透過率が高く、左方位では電圧無印加時の方がオフ電圧印加時よりも透過率が高い傾向がある。
【0145】
電圧無印加時の透過率とオフ電圧印加時の透過率には差があるが、観察角度変化に伴う変化の仕方は両者で似ており、観察角度が変化しても、両者の透過率の差はある程度以下(例えば0.3%程度以下)に留まる。
【0146】
TNモードの場合(図17(A)及び図17(B)参照)には、深い観察角度ほど電圧無印加とオフ電圧印加との透過率差が大きくなり、その差も数%程度(図17(B)の高いΔndの場合)あるいは10%程度(図17(A)の低いΔndの場合)に達している。従って、TNモードの場合に比べると、STNモードの場合には、クロストークが目立たないといえる。
【0147】
ただし、比較例の液晶表示素子では、色補償セルは全面電極としているものの、駆動セルにおいて、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきがある。STNモードの液晶表示素子は、TNモードの液晶表示素子に比べて、高いデューティでの駆動を行っており、透明電極のシート抵抗を低く設定する。このため、透明電極が厚くなり、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきが大きくなる。これに起因して、STNモードの比較例では、電圧印加、無印加に関わらず、左右観察時はもとより、正面観察時でも、透過率のばらついた領域が観察されやすい。
【0148】
実際に比較例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を、電圧無印加状態で観察したところ、深い観察角度だけでなく、正面観察時においても、表示パターンと背景との透過率差が観察された。表示パターンにオフ電圧が加わると、深い観察角度での背景との透過率差は、さらに顕著に観察されることを確認した。
【0149】
一方、第1及び第3の実施例の液晶表示素子では、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきが抑制され、正面観察時の透過率差が抑制されている。さらに、TNモードの場合について説明したのと同様に、表示パターンとともに背景にもオフ電圧を印加することができるので、オフ電圧印加部分と電圧無印加部分との透過率差に起因するクロストークも抑制できる。
【0150】
第5の実施例の液晶表示素子でも、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきが抑制される。第5の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置について、液晶層厚のばらつきに伴う正面観察時の透過率差が抑制されていることを確認した。
【0151】
なお、TNモードの場合についても説明したように、第1及び第3の実施例の液晶表示素子は、背景をオン(明表示)とすることにより、ノーマリーホワイト型の表示を行うことも可能である。ただし、背景をオンにしたとき、線間は暗状態であり、第1の実施例の液晶表示素子では、これに起因して表示に違和感を生じ得る。STNモードの場合でも、電極に開口を形成した第3の実施例は、このような違和感の低減に有効である。
【0152】
なお、上記検討において、液晶層内における液晶分子の捩れ角を略180°としたが、捩れ角はこれに限定されない。捩れ角が略180°〜略260°の範囲において、オフ電圧印加時に暗状態が得られるノーマリーブラック型液晶表示素子構造であれば、上記と同様な効果が得られる。
【0153】
STNモードでノーマリーブラック型の液晶表示素子としては、例えば、駆動セルが、液晶層内における液晶分子の捩れ角が略180°〜略260°で、液晶層のリターデーションΔndが700nm〜1200nmであるものが好ましい。駆動セルに、補償セルまたは補償用の光学フィルムを重ねる。上下偏光板は、クロスニコル配置である。
【0154】
次に、VAモードの液晶表示装置の場合について説明する。比較例、第1〜第5の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を作製した。また、液晶層のリターデーションが大きい場合についての視角補償方法についても検討した。
【0155】
上下ガラス基板の内面に配置される配向膜には、特開2005−234254号公報の「発明を実施するための最良の形態」の欄に開示される、水とジヨードメタンを試液に用いた場合に表面自由エネルギーが35mN/m〜39mN/mを示すチッソ石油化学製の垂直配向膜を用いた。
【0156】
液晶層内は、上下配向膜面で反平行になるように、特開2005−234254号公報の「発明を実施するための最良の形態」の欄に開示されるラビング処理方法により配向処理を施し、液晶層中央分子配向方向を12時方位とした。
【0157】
本検討で液晶層厚は略4μmとし、誘電率異方性が負でΔnが略0.09〜略0.225を示すメルク製液晶材料を用いた。以下では、液晶層のリターデーションΔndが略360nm、略600nm、及び略900nmの3種類の場合を取り上げて検討している。プレティルト角は略89.5°とした。
【0158】
上下ガラス基板の外側には、一方、または両方に、負の一軸光学異方性または負の二軸光学異方性を有する視角補償板を配置し、さらにその外側に、互いの吸収軸が略85°〜略95°をなるように、上下偏光板を配置する。この液晶表示素子は、オフ電圧印加時に暗状態が得られるノーマリーブラック型である。
【0159】
ここで、液晶層のリターデーションに応じた好適な視角補償板の配置方法について検討する。現在、視角補償板として市場に流通している光学フィルムは、特許3330574号公報に開示される光学パラメータを実現するように延伸加工を施したトリアセチルセルロース(TAC)系フィルムまたはノルボルネン系環状オレフィンフィルムがほとんど
である。
【0160】
これらの材料を用いることにより、フィルム面内位相差が略30nm〜略70nmで厚さ方向(厚さ断面内)位相差が略300nm以下の負の二軸光学異方性光学フィルムが実現され市販されている。なお、以下では、負の二軸光学異方性光学フィルムを、二軸フィルムと呼ぶ。
【0161】
一方、負の一軸光学異方性光学フィルム(以下、Cプレートと呼ぶ)は、無延伸加工のTACフィルムで実現可能であるが、光学フィルムを均一性よく大量生産するに当たっては、面内位相差を完全にゼロにすることは困難である。実際、偏光板の保護フィルムとして用いられているTACフィルムでは、面内位相差が略3nm〜略5nm存在する。
【0162】
ノルボルネン系環状オレフィンフィルムを二軸延伸加工することによっても、Cプレートの作製は原理的には可能であるが、実際には7nm程度までの面内位相差を有するものが市販されている。
【0163】
ただし、面内位相差が略7nm以下であれば、Cプレートに近い特性が得られると考えられる。以下では、面内位相差が略7nm以下と小さい二軸光学異方性フィルムを、略Cプレートと呼ぶこととする。
【0164】
液晶層のΔndが略360nm以下である場合は、特許3330574号公報に示される光学フィルムのパラメータ範囲に含まれる面内位相差が略40nm〜略55nmで、厚さ方向の位相差が略120nmである二軸フィルムを、上下ガラス基板と上下偏光板との間の双方に、面内遅相軸が近接する偏光板の透過軸と略平行になるように、1枚ずつ配置する。または、面内位相差が略45nm〜略60nmで、厚さ方向の位相差が略220nmである二軸フィルムを、上下ガラス基板と上下偏光板との間のいずれか一方に、面内遅相軸が近接する偏光板の透過軸と略平行になるように配置する。これにより。良好な視角特性を得ることができる。
【0165】
しかし、液晶層のΔndが、略600nmや略900nmのように大きい場合は、特許3330574号公報に示された方法では良好な視角特性が得られない。本願発明者は、特に、液晶層のΔndが略570nmより大きい場合において視角特性を有効に改善できる視角補償方法を見出した。
【0166】
第1の視角補償方法は、図19(A)に示すように、上下ガラス基板US、LSと上下偏光板UP、LPとの間の一方に、1枚の二軸フィルム50aと、単数または複数のCプレートまたは略Cプレート(視角補償部材51a)とを配置する方法である。
【0167】
偏光板に最近接する視角補償板は必ず二軸フィルム50aとし、その面内遅相軸は近接する偏光板の透過軸に略平行とする。視角補償部材51aに略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、二軸フィルム50aの面内遅相軸方位と略平行とする。
【0168】
第2の視角補償方法は、図19(B)に示すように、上下ガラス基板US、LSと上下偏光板UP、LPとの間の一方に、二軸フィルム50bを配置し、他方に、単数または複数のCプレートまたは略Cプレート(視角補償部材51b)を配置する方法である。
【0169】
二軸フィルム50bは、その面内遅相軸を、近接する偏光板の透過軸に略平行とする。他方側の視角補償部材51bに略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、略Cプレートが近接する偏光板の透過軸と略平行とする。
【0170】
なお、二軸フィルム50bと近接するガラス基板との間に、単数または複数のCプレートまたは略Cプレート(視角補償部材52b)を追加することもできる。視角補償部材52bに略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、二軸フィルム50bの面内遅相軸方位と略平行とする。
【0171】
第3の視角補償方法は、図19(C)に示すように、上下ガラス基板US、LSと上下偏光板UP、LPとの間の一方に、2枚の二軸フィルム50c及び51cを配置する方法である。偏光板に近接する二軸フィルム50cの面内遅相軸は、近接する偏光板の吸収軸に略平行とし、ガラス基板側の二軸フィルム51cの面内遅相軸は、二軸フィルム50cの近接する偏光板の透過軸に略平行とする。
【0172】
なお、2枚の二軸フィルム50c及び51cとガラス基板との間に、単数または複数のCプレートまたは略Cプレート(視角補償部材52c)を追加することもできる。視角補償部材52cに略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、二軸フィルム50cが近接する偏光板の透過軸と略平行とする。
【0173】
また、2枚の二軸フィルム50c及び51cを配置したのと反対側の、ガラス基板と偏光板との間に、単数または複数のCプレートまたは略Cプレート(視角補償部材53c)を追加することもできる。視角補償部材52cに略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、略Cプレートが近接する偏光板の透過軸と略平行とする。
【0174】
第1〜第3の視角補償方法で用いる二軸フィルムは、面内位相差が30nm〜65nmであり、厚さ方向位相差が略100nm〜略300nm、より好ましくは略200nm〜略300nmである。
【0175】
一方、略Cプレートは、面内位相差が0nmより大きく7nm以下、より好ましくは0nmより大きく5nm以下であり、厚さ方向位相差が略50nm〜略300nm、より好ましくは略200nm〜略300nmである。また、Cプレートは、厚さ方向位相差が略50nm〜略800nm、より好ましくは略200nm〜略800nmである。
【0176】
次に、液晶層のΔndが略600nm及び略900nmの場合について、上記第1〜第3の視角補償方法で視角補償を行ったシミュレーションの結果について説明する。
【0177】
まず、Δndが略600nmの場合について説明する。なお、シミュレーションにおいて、偏光板はポラテクノ製SHC13Uとし、上側偏光板の吸収軸は12時方位から反時計回りに45°回転した方位に配置し、下側偏光板の吸収軸は、上側偏光板の吸収軸に直交するように配置した。視角補償板の材質としてはノルボルネン系環状オレフィンとした。なお、これは作製した液晶表示素子についても同様である。
【0178】
第1〜第3の視角補償方法に加えて、比較として従来方法についてもシミュレーションを行った。従来方法は、上下ガラス基板と上下偏光板との間の両方に、二軸フィルムを1枚ずつ配置する方法である。従来方法として、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmの二軸フィルムを、上下ガラス基板と上下偏光板との間の両方に、それぞれ、面内遅相軸を近接する偏光板の透過軸と平行にして配置した。
【0179】
第1の視角補償方法の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、1枚の二軸フィルムと1枚の略Cプレートとを配置した。二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。二軸フィルムと下側ガラス基板との間に、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmである略Cプレートを配置した。略Cプレートの面内遅相軸は、二軸フィルムの面内遅相軸と平行である。
【0180】
第2の視角補償方法の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、1枚の二軸フィルムを配置し、上側ガラス基板と上側偏光板との間に、1枚の略Cプレートを配置した。二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。略Cプレートは、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を上側偏光板の透過軸と平行に配置した。
【0181】
第3の視角補償方法の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、2枚の二軸フィルムを配置した。各二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、下側偏光板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の吸収軸と平行に配置し、下側ガラス基板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。
【0182】
図20(A)に、従来方法及び第1〜第3の視角補償方法のシミュレーション結果を示す。電圧無印加時の9時−3時方位視角特性(輝度曲線)を示す。従来方法に比べて、第1〜第3の視角補償方法(グラフでは第1〜第3の方法と表記)では、観察角度が深い場合(例えば左右50°)において透過率が低くなっている。すなわち、従来方法に比べて、電圧無印加時に深い観察角度から見た表示の暗さが良好に保たれる。
【0183】
このように、液晶層のΔndが例えば略600nmの場合、第1及び第2の視角補償方法では、面内位相差が略50nmで厚さ方向位相差が略220nmである二軸フィルムと、面内位相差が略4nm以下で厚さ方向位相差が略220nmである略Cプレートとを1枚ずつ用いることにより、良好に視角補償できることがわかった。また、第3の視角補償方法では、面内位相差が略50nmで厚さ方向位相差が略220nmである二軸フィルムを2枚積層して用いることにより、良好に視角補償できることがわかった。
【0184】
次に、Δndが略900nmの場合について説明する。従来方法として、面内位相差50nmで厚さ方向位相差330nmの二軸フィルムを、上下ガラス基板と上下偏光板との間の両方に、それぞれ、面内遅相軸を近接する偏光板の透過軸と平行にして配置した。
【0185】
第1の視角補償方法の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、1枚の二軸フィルムと2枚の略Cプレートとを配置した。二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。二軸フィルムと下側ガラス基板との間に、各々面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmである略Cプレートを2枚積層して配置した。略Cプレートの面内遅相軸は、ともに、二軸フィルムの面内遅相軸と平行である。
【0186】
第2の視角補償方法の1つ目の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、1枚の二軸フィルムを配置し、上側ガラス基板と上側偏光板との間に、2枚の略Cプレートを配置した。
【0187】
二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。略Cプレートの各々は、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmであり、ともに、面内遅相軸を上側偏光板の透過軸と平行に配置した。
【0188】
第2の視角補償方法の2つ目の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、1枚の二軸フィルムを配置と1枚の略Cプレートを配置し、上側ガラス基板と上側偏光板との間に、1枚の略Cプレートを配置した。
【0189】
二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。二軸フィルムと下側ガラス基板との間に、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmである略Cプレートを配置した。この下側の略Cプレートの面内遅相軸は、二軸フィルムの面内遅相軸と平行である。
【0190】
上側ガラス基板と上側偏光板との間の略Cプレートも、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmであり、この上側の略Cプレートの面内遅相軸は、上側偏光板の透過軸と平行である。
【0191】
第3の視角補償方法の1つ目の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、2枚の二軸フィルムを配置し、2枚の二軸フィルムと下側ガラス基板との間に、さらに、1枚の略Cプレートを配置した。
【0192】
各二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、下側偏光板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の吸収軸と平行に配置し、下側ガラス基板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。略Cプレートは、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmであり、その面内遅相軸は、近接する(ガラス基板側の)二軸フィルムの面内遅相軸と平行とした。
【0193】
第3の視角補償方法の2つ目の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、2枚の二軸フィルムを配置し、上側ガラス基板と上側偏光板との間に、1枚の略Cプレートを配置した。
【0194】
各二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、下側偏光板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の吸収軸と平行に配置し、下側ガラス基板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。略Cプレートは、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmであり、その面内遅相軸は、上側偏光板の透過軸と平行とした。
【0195】
図20(B)に、従来方法及び第1〜第3の視角補償方法のシミュレーション結果を示す。電圧無印加時の9時−3時方位視角特性(輝度曲線)を示す。従来方法に比べて、第1〜第3の視角補償方法(グラフでは第1〜第3の方法と表記)では、観察角度が深い場合(例えば左右50°)において透過率が低くなっている。すなわち、従来方法に比べて、電圧無印加時に深い観察角度から見た表示の暗さが良好に保たれる。
【0196】
このように、液晶層のΔndが例えば略900nmの場合、第1及び第2の視角補償方法では、面内位相差が略50nmで厚さ方向位相差が略220nmである二軸フィルムを1枚と、面内位相差が略4nm以下で厚さ方向位相差が略220nmである略Cプレートを2枚用いることにより、良好に視角補償できることがわかった。なお、このような2枚重ねて厚さ方向位相差が440nmとなるような略Cプレート2枚の代わりに、厚さ方向位相差が440nmの1枚のCプレートを用いることもできる。
【0197】
また、第3の視角補償方法では、面内位相差が略50nmで厚さ方向位相差が略220nmである二軸フィルムを2枚積層したものと、面内位相差が略4nm以下で厚さ方向位相差が略220nmである略Cプレートを1枚用いることにより、良好に視角補償できることがわかった。
【0198】
なお、液晶層のリターデーションΔndが大きい場合について、Δndが略600nm及び略900nmの場合を例に説明したが、第1〜第3の視角補償方法は、Δndが570nm〜1500nm程度の範囲で有効であろうと考えられる。
【0199】
なお、従来方法では、液晶層のΔndが略600nmの場合、二軸フィルムの面内位相差を30nm〜40nmに設定できれば、左右観察角度50°における透過率を第1〜第3の視角補償方法と同程度に下げることが可能という知見も得られている。
【0200】
また、従来方法では、液晶層のΔndが略900nmの場合、二軸フィルムの面内位相差を20nm〜30nmに設定できれば、左右観察角度50°における透過率を第1〜第3の視角補償方法と同程度に下げることが可能という知見も得られている。このように、従来方法では、液晶層のΔndによって、二軸フィルムの面内位相差の最適値が変化してしまう傾向がある。
【0201】
一方、第1〜第3の視角補償方法では、液晶層のΔnd変化に伴う面内位相差の最適値の変動が小さいことがわかっており、様々なΔndを持つ液晶表示素子に対して、面内位相差の同じ二軸フィルムを用いて、良好に視角補償ができるという利点がある。
【0202】
次に、液晶層のΔndが略600nmで、第1の視角補償方法を採用した液晶表示装置について、電圧無印加時及びマルチプレックス駆動のオフ電圧印加時の視角特性を調べたシミュレーションについて説明する。
【0203】
第1の視角補償方法の条件は、図20(A)を参照して説明したΔndが略600nmの場合のシミュレーションと同様である。液晶層における中央分子配向方位を12時方位とした時、上側偏光板の吸収軸は12時方位から反時計回りに略45°回転した方位に配置し、下側偏光板の吸収軸は12時方位から45°回転させた方位に配置し、上下偏光板の吸収軸間の角度は90°とした。マルチプレックス駆動の条件は、1/9デューティ、1/4バイアスとした。
【0204】
図21に、電圧無印加時及びオフ電圧印加時の9時−3時方位視角特性を示す。電圧無印加時の透過率及びオフ電圧印加時の透過率の双方は、観察角度が深くなるにつれて大きくなる傾向がある。また、電圧無印加時の透過率よりも、オフ電圧印加時の透過率の方が大きく、両透過率の差は、観察角度が深くなるほど(特に左右20°程度以上で)大きくなる傾向がある。従って、TNモードの場合に説明したのと同様に、オフ電圧印加部分と電圧無印加部分との見え方が異なるクロストークが、深い観察角度になるほど生じやすいことが示唆される。
【0205】
ただし、電圧無印加時の透過率とオフ電圧印加時の透過率の差は、最大でも0.2%程度に留まっているので、TNモードの場合に比べれば、VAモードの場合には、クロストークが目立たないといえる。
【0206】
TNモードの場合について説明したように、比較例の液晶表示素子では、表示パターンが暗表示にされるとき、表示パターンにオフ電圧が印加されており、背景は電圧無印加である。従って、比較例の液晶表示素子において、深い観察角度でクロストークが生じることが予想される。実際に比較例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を観察したところ、深い観察角度でクロストークが観察された。
【0207】
一方、第1〜第4の実施例の液晶表示素子では、表示パターンにオフ電圧を印加して暗表示とするとき、背景にもオフ電圧を印加することができるので、クロストークが抑制される。このことは、実際の液晶表示装置でも確認できた。
【0208】
なお、第1の視角補償方法に限らず、第2及び第3の視角補償方法を用いた場合でも、オフ電圧印加部分と電圧無印加部分との見え方が異なるクロストークが生じうる。従って、第1〜第4の実施例の液晶表示素子を用いることにより、クロストークが抑制される。
【0209】
なお、実際に動作させた液晶表示装置をさまざまな方向から観察してみると、第1及び第3の実施例の液晶表示素子を用いた場合は、電極エッジ付近の光抜けにより、電極パターンの配線状態が外観からも判別されるような、好ましくない状態が生じる場合があった。ブラックマスクを配置した第2及び第4の実施例の液晶表示素子では、このような光抜けが効果的に抑制でき、非常に良好な表示状態が得られることがわかった。
【0210】
比較例の液晶表示素子では、深い観察角度で観察したときに、透明電極の有無に起因して、透過率のばらついた領域が観察されやすい。なお、VAモードの液晶表示素子では、液晶層のリターデーションΔndや駆動電圧を適切に設定することにより、このような透過率のばらつきが、正面観察時には観察されにくい。ただし、液晶層のリターデーションΔndが550nm以上または液晶層厚3μm未満であるとき、斜め観察時に、このような透過率のばらつきが顕著になる傾向がある。
【0211】
第5の実施例の液晶表示素子も、第1〜第4の実施例と同様に、背景電極を設けているので、このような透過率のばらつきが抑制される。第5の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置でも、深い観察角度でのこのような透過率のばらつきが観察されない効果が得られていることを確認した。
【0212】
なお、第1〜第4の実施例の液晶表示素子は、背景をオン(明表示)とすることにより、ノーマリーホワイト型の表示を行うことも可能である。ただし、背景をオンにしたとき、線間は暗状態であり、第1及び第2の実施例の液晶表示素子では、これに起因して表示に違和感を生じ得る。電極に開口を形成した第3及び第4の実施例は、このような違和感の低減に有効である。第3及び第4の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置により、背景のオン時の表示が大幅に改善されることを確認した。
【0213】
液晶層のΔndが略600nmの場合を取り上げて、第1〜第5の液晶表示素子を用いた液晶表示装置の外観観察結果について説明したが、液晶層のΔndが略360nmや略900nm等他の値の液晶表示素子についても、同様な効果を得ることができる。
【0214】
なお、上記検討では、プレティルト角を90°未満に設定したが、例えば特許3834304号公報の「発明を実施するための最良の形態」の欄に開示されているような、プレティルト角は90°として上下電極構造の工夫により斜め電界を発生させて、電圧印加時の配向状態を制御する構造であっても、上記と同様な効果が得られる。
【0215】
VAモードでノーマリーブラック型の液晶表示素子としては、例えば、液晶層のリターデーションΔndが300nm〜1500nmであるものが好ましい。上下偏光板は、クロスニコル配置であり、上下偏光板の吸収軸配置角度は、略85°〜略95°である。
【0216】
なお、セグメント表示に加えてドットマトリクス表示を有する液晶表示装置に対しても、背景電極を設ける方法は有効である。
【0217】
なお、背景電極を設けた液晶表示素子は、例えば、カーオーディオ等の車載機器の表示部に適用でき、さらに、例えばコピー機などの事務機器の操作パネル部や、その他の情報表示パネル等に適用できる。
【0218】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】図1は、第1の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図2】図2は、第1の実施例の液晶表示素子のセグメント電極パターンを示す概略平面図である。
【図3】図3は、第1の実施例の液晶表示素子のコモン電極パターンを示す概略平面図である。
【図4】図4は、第1の実施例の変形例の液晶表示素子のコモン電極パターンを示す概略平面図である。
【図5】図5は、図2に示したA領域の拡大図である。
【図6】図6は、図2に示したB領域の拡大図である。
【図7】図7は、有効表示エリア全体でのセグメント電極とコモン電極との重なりを示す概略平面図である。
【図8】図8は、第2の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図9】図9は、第3の実施例の液晶表示素子の開口の配置を示す概略平面図である。
【図10】図10は、第3の実施例の一変形例の液晶表示素子の開口の配置を示す概略平面図である。
【図11】図11は、第3の実施例の他の変形例の液晶表示素子の開口の配置を示す概略平面図である。
【図12】図12は、第4の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図13】図13は、第5の実施例の液晶表示素子のセグメント電極パターンを示す概略平面図である。
【図14】図14は、第5の実施例の液晶表示素子のコモン電極パターンを示す概略平面図である。
【図15】図15は、第6の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図16】図16は、第7の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図17】図17(A)及び図17(B)は、TNモードの液晶表示装置の、マルチプレックス駆動条件でのオフ電圧印加時及び電圧無印加時の視角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図18】図18は、STNモードの液晶表示装置の、マルチプレックス駆動条件でのオフ電圧印加時及び電圧無印加時の視角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図19】図19(A)〜図19(C)は、第1〜第3の視角補償方法を説明するための液晶表示素子の概略断面図である。
【図20】図20(A)及び図20(B)は、それぞれ、VAモードの液晶表示装置の、Δndが略600nmの場合及びΔndが略900nmの場合の、電圧無印加時の視角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図21】図21は、VAモードの液晶表示装置の、Δndが略600nmの場合の、マルチプレックス駆動条件でのオフ電圧印加時及び電圧無印加時の視角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図22】図22は、液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図23】図23(A)及び図23(B)は、比較例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図24】図24は、液晶表示素子の表示パターンの例を示す概略平面図である。
【図25】図25は、比較例の液晶表示素子のセグメント電極パターンを示す概略平面図である。
【図26】図26は、比較例の液晶表示素子のコモン電極パターンを示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0220】
1 下側偏光板
2 下側視角補償板
3 下側ガラス基板(セグメント基板)
4 表示セグメント電極
4A 背景セグメント電極
5 下側配向膜
6 液晶層
7 上側配向膜
8 表示コモン電極
8A 背景コモン電極
9 上側ガラス基板(コモン基板)
10 上側視角補償板
11 上側偏光板
20 表示パターン
23 有効表示エリア
24 背景
30、31 ブラックマスク
OPs (セグメント電極上の)開口
OPc (コモン電極上の)開口
4B 背景セグメントダミー電極
8B 背景コモンダミー電極
TSC ダミー電極間トランスファー端子
100 バックライト
101 液晶表示素子
102 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、マルチプレックス駆動によりセグメント表示またはセグメント表示及びドットマトリクス表示の混在表示を行う液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の情報表示装置として、外観上の高級感を狙った、背景表示部や暗表示部の表示輝度が非常に低いノーマリーブラック型液晶表示装置の搭載が増加してきている。特に、マルチプレックス駆動により動作するセグメント表示、または、セグメント表示及びドットマトリクス表示が可能な液晶表示装置の性能向上が著しく、市場流通量が上昇している。
【0003】
スタティック駆動及び1/2デューティ〜1/8デューティ駆動に対応する、いわゆるツイステッドネマチック(TN)モードの液晶表示素子では、2枚のガラス基板間に配置される液晶層内で、液晶分子は、基板に対して略水平に配向する水平配向状態で、その層内で略70°〜略130°捩れている。2枚のガラス基板の上下に配置される2枚の偏光板の吸収軸が略平行で、どちらか一方の偏光板吸収軸を、近傍の液晶層表面の液晶配向方位に対して略平行、または略直交、またはそれらに近い状態にして配置することにより、ノーマリーブラック表示を実現できる。
【0004】
その中でも、液晶層内の捩れ角が略90°で、液晶材料の複屈折率をΔn、液晶層厚をdとしたときのリターデーションΔndが比較的大きく1.5μm〜3μmであるときは、電圧無印加時における透過率を非常に低く設定することが可能である。
【0005】
また、捩れ角を略90°〜略120°に設定し、バックライトに無機発光ダイオード(LED)などの単色光源を用いることにより、特定波長の透過率の低さを外観表示に反映させた液晶表示装置も開発され市販されている。
【0006】
一方、1/8デューティよりも高い(分母が大きい)デューティ数の駆動を実現するために、液晶層内の捩れ角を略180°〜略250°にし、液晶層内のリターデーションを略700nm〜略1200nmに設定したスーパーツイステッドネマチック(STN)モードの液晶表示素子が用いられている。STNモードにおいて良好なノーマリーブラック表示を実現する方法としては、いくつかの方法がある。
【0007】
1番目の方法として、表示パターンを表示させるための「駆動セル」と、液晶層内において駆動セルとは反対の捩れ方位を有し、液晶層中央部の液晶分子配向方位が駆動セルのそれと直交関係にある「補償セル」とを上下に重ね、その上下に偏光板をクロスニコル配置することにより、良好な暗表示を実現する「二層STN」がある。最近は、液晶性高分子によって構成された光学フィルムにより補償セルを代替した液晶表示素子も広く用いられている。
【0008】
2番目の方法として、駆動セルの上下に偏光板を配置し、偏光板と近接するガラス基板との間の少なくとも一方に、1枚以上の正の一軸光学異方性または正の二軸光学異方性を有する位相差板を挿入し、電圧無印加時における透過率を低下させる方法も広く用いられている。
【0009】
さらに、3番目の方法として、上記TNモード液晶表示素子についても示したが、バックライトの光源として単色の無機LEDなどを用い、液晶層と偏光板との組み合わせに対する特定波長の低透過率を外観表示に反映させた液晶表示装置の開発も行われ市販されている。
【0010】
バックライトの発光波長に依存せず良好なノーマリーブラック表示を実現する液晶表示素子として、2枚のガラス基板間に配置される液晶層内の液晶分子配向方位が基板に対して垂直または略垂直となる「垂直配向(VA)モード」の液晶セルを、クロスニコル配置の偏光板間に配置する液晶表示素子がある。ガラス基板法線方位から観察したとき、その光学特性は、クロスニコル偏光板のそれとほぼ同等になり、透過率が非常に低くなるので、高いコントラストを比較的簡単に実現することができる。
【0011】
さらに、特許文献1に示されるように、上下偏光板と上下ガラス基板との間の一方または両方に、負の一軸光学異方性または負の二軸光学異方性を有する視角補償板を挿入することにより、液晶表示装置を斜めから観察した場合においても透過率の上昇が小さく、コントラストが比較的低下しにくい良好な表示状態を実現することが可能である。この視角補償方法に関しては、負の二軸光学異方性を有する視角補償板(二軸フィルム)の面内位相差や面内遅相軸配置に関して、特に有効な手法が特許文献2に開示されている。
【0012】
また、二軸光学異方性を有する略1/2波長板と、負の一軸光学異方性を有する視角補償板(Cプレート)を組み合わせることにより良好な視角特性を実現する方法が、特許文献3に開示されている。しかし、この手法は、略1/2波長板自体がどの方向から観察しても1/2波長の位相差を実現する必要があるため、実際は正の二軸光学異方性が必要であり、その実現は非常に難しい。
【0013】
比較的製造しやすいと考えられる二軸フィルムとCプレートとを組み合わせる方法が、特許文献4に開示されている。ただし、特許文献4の開示する方法では、二軸フィルムの面内位相差が190nm以下で、適用される液晶セルの液晶層内のリターデーションΔndが200nm〜500nmに限定されている。
【0014】
電圧印加時においても良好な視角特性を獲得するために、液晶の配向方向が1つの画素内で複数の方向に向くことを意図した「マルチドメイン配向」が有効である。これをVAモード液晶表示素子で実現する方法としては、例えば特許文献5に記載されている、電極形状の工夫により液晶層内で斜め方向に電界を発生させ、その方向に配向制御する「斜め電界配向制御法」や、例えば特許文献6に記載されている、基板表面形状を工夫することにより、配向制御を行う方法がある。
【0015】
液晶表示装置の左右方位の視角特性だけを重視する場合は、マルチドメイン配向でなく、液晶表示素子全面で均一な配向状態、すなわちモノドメイン配向であってもよい。モノドメイン配向は、例えば特許文献7に記載のいわゆる垂直配向膜に対する光配向処理方法や、特許文献8に開示されたある特定の表面自由エネルギーを有する垂直配向膜に対するラビング処理方法により実現される。
【0016】
なお、ノーマリーブラック型液晶表示装置において、電圧無印加での正面観察時や斜め観察時に、表示と背景との透明電極の厚みの違いに起因して、表示と背景とで透過率が異なっているように観察される場合がある。
【0017】
また、ノーマリーブラック型液晶表示装置において、オフ電圧が印加されている暗表示部分の透過率と、電圧無印加の背景の暗表示部分の透過率とが、特に斜め観察時に異なって見える場合がある。
【0018】
さて、特許文献9に、液晶層にツイスト構造を有し電圧制御複屈折(ECB)効果により動作する水平配向液晶セルを、リターデーションフィルムと組み合わせてカラー表示を行う液晶表示素子が開示されている。この液晶表示素子は、セグメント表示部を含む。
【0019】
特許文献9の液晶表示素子は、低温度または高温度時に、セグメント表示部と背景部との色差が顕著になり、オフ電圧を印加していてもセグメント部がくっきりと浮き出る課題(同文献段落[0008])を解決するために、セグメント表示部の周囲の背景部にダミー電極を設け、ダミー電極にオフ電圧を印加している(同文献段落[0011])。特許文献9の液晶表示素子で、オフ電圧とは、カラー液晶表示装置においてカラー表示を行うために印加される階調電圧のうちで最低の電圧である(同文献段落[0010])。
【0020】
例えば、同文献段落[0022]に、「このカラー液晶表示装置をPWM方式を用い、1/4デューティにて駆動した。セグメント部を表示させる場合には、裏側基板の電極(コモン電極)13に同期して、表側基板の各電極(セグメント電極)にそれぞれの色に応じた電圧を印加し、ダミー電極にはオフ電圧を印加した。」と記載されている。
【0021】
これより、ダミー電極には、セグメント部を表示させるマルチプレックス駆動とは独立して、一定のオフ電圧が印加されていると考えられる。ダミー電極をマルチプレックス駆動で制御する技術について、特許文献9に開示されていない。
【0022】
【特許文献1】特許2047880号明細書
【特許文献2】特許3330574号公報
【特許文献3】特許3299190号公報
【特許文献4】特許3863446号公報
【特許文献5】特許3834304号公報
【特許文献6】特許2947350号公報
【特許文献7】特許2872628号公報
【特許文献8】特開2005−234254号公報
【特許文献9】特開2000−98411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の一目的は、マルチプレックス駆動され、セグメント表示部を有する液晶表示装置であって、表示パターンとその背景との透過率のばらつきを抑制することができ、新規な構成を有する液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一観点によれば、液晶セルと該液晶セルを挟む上下偏光板とを含み、該液晶セルは、複数本の電極を含む表示セグメント電極と、表示面内で前記表示セグメント電極の外側に配置された1本または複数本の電極を含む背景セグメント電極と、複数本の電極を含む表示コモン電極と、該表示面内で該表示コモン電極の外側に配置された1本または複数本の電極を含む背景コモン電極と、該表示セグメント電極及び背景セグメント電極と該表示コモン電極及び背景コモン電極との間に挟まれた液晶層とを含み、表示パターンが、該表示セグメント電極と表示コモン電極との該表示面内での重なり部分で画定され、該表示面内で該表示パターンの外側が背景を画定し、マルチプレックス駆動される液晶表示素子と、前記液晶表示素子に光を入射させるバックライトと、前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動する制御装置とを有し、前記制御装置は、前記表示コモン電極及び前記背景コモン電極を順次走査しながら、前記表示セグメント電極及び前記背景セグメント電極の各電極それぞれにオン電圧またはオフ電圧を印加して、前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動し、前記背景のうち前記表示コモン電極を含む領域を、前記表示コモン電極が選択されたときに、前記背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にするとともに、前記背景のうち前記背景コモン電極を含む領域を、前記背景コモン電極が選択されたときに、前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にすることにより、該背景の全体をオフ表示にする制御を行うか、または、前記背景のうち前記表示コモン電極を含む領域を、前記表示コモン電極が選択されたときに、前記背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にするとともに、前記背景のうち前記背景コモン電極を含む領域を、前記背景コモン電極が選択されたときに、前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にすることにより、該背景の全体をオン表示にする制御を行う液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0025】
背景セグメント電極及び背景コモン電極を配置することにより、表示パターンの背景での電極配置領域が広くなり、電極の有無に起因する、表示パターンと背景との透過率差を抑制することが可能である。
【0026】
表示コモン電極及び背景コモン電極を順次走査しながらマルチプレックス駆動を行うことにより、例えば、背景にマルチプレックス駆動のオフ電圧を印加できるようになり、これにより、背景と、マルチプレックス駆動のオフ電圧が印加された表示パターンとの透過率差を抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
まず、図22のブロック図を参照して、液晶表示装置の概略構成について説明する。バックライト100が発光光源を有する。バックライト100から放出された光が、液晶表示素子101に入射する。液晶表示素子101で光の透過状態を制御することにより、情報表示が行われる。制御装置102が、バックライト100及び液晶表示素子101の動作を制御する駆動回路及び制御回路を含む。
【0028】
次に、マルチプレックス駆動によりセグメント表示を行う、比較例及び実施例の液晶表示素子について説明する。まず、比較例として、従来の液晶表示素子について説明する。
【0029】
図23(A)は、比較例の液晶表示素子の概略断面図である。下側偏光板1の上方に、下側ガラス基板3が配置されている。下側偏光板1と下側ガラス基板3との間には、液晶層6の配向状態に応じて、1枚または複数枚の、位相差板または視角補償板2(以下単に下側視角補償板2と呼ぶこととする)が配置される場合がある。なお、下側視角補償板2として、位相差板または視角補償板の代わりに、補償セルを用いることもできる。
【0030】
下側ガラス基板3の上に、セグメント電極4が形成されており、セグメント電極4を覆って、下側配向膜5が形成されている。セグメント電極4が形成された下側ガラス基板3を、セグメント基板3とも呼ぶこととする。
【0031】
なお、図23(B)に示すように、必要に応じて、セグメント電極4と下側配向膜5との間に、例えばSiO2からなる絶縁膜15を形成してもよい。
【0032】
下側配向膜5の上方に、液晶層6を挟んで、下側ガラス基板3に対向する上側ガラス基板9が配置されている。上側ガラス基板9の液晶層6側内面に、コモン電極8が形成され、コモン電極8を覆って、上側配向膜7が形成されている。なお、下側ガラス基板3側と同様に、必要に応じて、コモン電極8と上側配向膜7との間に絶縁膜を形成してもよい。コモン電極8が形成された上側ガラス基板9を、コモン基板9とも呼ぶこととする。
【0033】
上側ガラス基板9の上方に、上側偏光板11が配置されている。上側ガラス基板9と上側偏光板11との間に、液晶層6の配向状態に応じて、1枚または複数枚の、位相差板または視角補償板10(以下単に上側視角補償板10と呼ぶこととする)が配置される場合がある。なお、上側視角補償板10として、位相差板または視角補償板の代わりに、補償セルを用いることもできる。
【0034】
スペーサー12が、上下ガラス基板9、3間に挟まれ、液晶層厚を定める。スペーサー12は、例えば、球状、矩形状、台形状等の形状を有する。シール部13が、液晶層6をシールする。シール部13の一部、または別の部分に、下側ガラス基板3側から上側ガラス基板9上のコモン電極8に電気導通を図るためのトランスファー部14が設けられている。なお、上側ガラス基板側にセグメント電極を配置し、下側ガラス基板側にコモン電極を配置することもできる。
【0035】
下側ガラス基板3、セグメント電極4、下側配向膜5、液晶層6、上側配向膜7、コモン電極8、上側ガラス基板9、スペーサー12、シール部13、トランスファー部14を含んで、液晶セル16が構成される。
【0036】
図24に、液晶表示素子の表示パターンの例を示す。なお、この表示パターンの例は、比較例及び後述の実施例で共通である。液晶表示素子の表示部として外部に露出する有効表示エリア23の内部に、1セグメントとして扱われる「TEMP」という文字表示部21と、2桁の7セグメント表示部22とから構成される表示パターン20が画定されている。表示パターン20内を斜線で示す。この表示パターン20は、例えば自動車内の温度を表示するような表示装置に用いられるセグメント表示である。有効表示エリア23内で、表示パターン20の外側の領域が、背景24である。
【0037】
図25は、図24に示した表示パターンを実現する、比較例のセグメント電極パターンである。上述の表示部21及び22に対応するように、10本のセグメント電極が形成されている。
【0038】
有効表示エリア23の外に、10本のセグメント電極それぞれに接続するセグメント電極端子S1〜S10が配置されている。セグメント電極端子S1〜S10を介して、セグメント電極が、外部回路に接続される。
【0039】
セグメント電極端子S1〜S10と並んで、セグメント基板側に、コモン電極を接続するコモン電極端子C1及びC2も配置されている。コモン電極端子C1及びC2が、トランスファー部を介して、コモン基板側に形成されたコモン電極に接続される。なお、電極と、対応する電極端子とは、共通の参照番号で示すこととする。
【0040】
図26は、図24に示した表示パターンを実現する、比較例のコモン電極パターンである。上述の表示部21及び22に対応するように、2本のコモン電極C1及びC2が形成されており、それぞれ、トランスファー端子T1、T2を介して、セグメント基板側のコモン電極端子C1、C2に接続される。2本のコモン電極C1及びC2が走査されて表示を行う。比較例の液晶表示素子は、1/2デューティ、1/2バイアスのマルチプレックス駆動で駆動されることを想定している。
【0041】
表示面内で、セグメント電極4とコモン電極8との重なり部分が、表示パターン20を画定する。セグメント電極4及びコモン電極8のうち、表示パターン20の明暗表示をスイッチングする部分以外である、背景に含まれる部分を、引き回し線部と呼ぶこととする。
【0042】
表示パターン20内では、セグメント電極とコモン電極とが対向する。すなわち、セグメント基板及びコモン基板の双方に、透明電極層が形成されている。一方、表示パターン20の外である背景24には、セグメント基板及びコモン基板の一方しか透明電極層が形成されていない領域と、セグメント基板及びコモン基板の双方に透明電極層が形成されていない領域とが含まれる。このように、比較例の液晶表示素子では、有効表示エリア23内に、透明電極層の厚みが違う領域、すなわち液晶層の厚みが違う領域が混在する。
【0043】
例えば、透明電極のシート抵抗を100Ω□以下とする場合、その厚さは、成膜条件にも依存するが、略30nm±略10nmとなる。シート抵抗を10Ω□以下に低くしようとすると、厚さは、100Ω□程度でよい場合の8〜10倍の略250nm±略50nmまで厚くなる。
【0044】
表示パターンが精細なセグメント表示、または、セグメント表示及びドットマトリクス表示を行う表示装置では、表示均一性を維持するために、透明電極のシート抵抗が低い条件を使う場合が多い。透明電極のシート抵抗が低いほど、有効表示エリア内で液晶層の厚みのばらつきが大きくなり、つまりリターデーションの差が大きくなり、正面または/及び斜め観察時において、電極の有無に起因する透過率の差が観察されやすくなる。特に、人間の目の認識度合いが良好な低輝度時における透過率差は観察されやすい。
【0045】
次に、本発明の第1の実施例による液晶表示素子について説明する。第1の実施例の液晶表示素子では、以下に説明するように、表示パターンの背景にも透明電極を設けることにより、透明電極の有無に起因する液晶層の厚みのばらつきが抑制されている。
【0046】
図1は、第1の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。比較例との違いについて説明する。なお、第1の実施例の表示パターンも、比較例と同様に、図24に示すようなものである。
【0047】
第1の実施例の液晶表示素子では、セグメント基板3上に、セグメント電極4が形成されていない領域を埋めるよう、セグメント電極4の外側に、電極4Aが形成されている。セグメント電極4が、表示パターンの表示に用いられるので、セグメント電極4を、表示セグメント電極4と呼ぶこととする。セグメント基板3上に新たに追加された電極4Aは、背景に配置されるので、背景セグメント電極4Aと呼ぶこととする。
【0048】
第1の実施例の液晶表示素子では、さらに、コモン基板8上に、コモン電極8が形成されていない領域を埋めるよう、コモン電極8の外側に、電極8Aが形成されている。コモン電極8が、表示パターンの表示に用いられるので、コモン電極8を、表示コモン電極8と呼ぶこととする。コモン基板8上に新たに追加された電極8Aは、背景に配置されるので、背景コモン電極8Aと呼ぶこととする。
【0049】
以下、表示セグメント電極4と背景セグメント電極4Aとを合わせて(あるいは、表示セグメント電極4と背景セグメント電極4Aとを区別せずに説明する場合は)単にセグメント電極と呼ぶこともある。また、表示コモン電極8と背景コモン電極8Aとを合わせて(あるいは、表示コモン電極8と背景コモン電極8Aとを区別せずに説明する場合は)単にコモン電極と呼ぶこともある。
【0050】
表示セグメント電極4と表示コモン電極8とを区別せずに説明する場合は、単に表示電極と呼び、背景セグメント電極4A及び背景コモン電極8Aとを区別せずに説明する場合は、単に背景電極と呼ぶこともある。
【0051】
背景セグメント電極4A及び背景コモン電極8Aにも、表示セグメント電極4及び表示コモン電極8と同様に、マルチプレックス駆動の駆動信号が印加される。
【0052】
図2は、図24に示した表示パターンを実現する、第1の実施例のセグメント電極パターンである。比較例と同様に、10本のセグメント電極S1〜S10からなる表示セグメント電極4が配置されている。
【0053】
有効表示エリア23内の、表示セグメント電極4が配置されていない領域を埋めるように、1本の背景セグメント電極4Aが配置されている。背景セグメント電極4Aは、セグメント電極端子B1に接続されている。第1の実施例ではさらに、コモン電極端子C3が追加されている。背景セグメント電極4Aを、右上りの斜線で示す。
【0054】
表示セグメント電極4と、背景セグメント電極4Aとの間には、両者が短絡しないように隙間を設ける必要があるが、この隙間の距離は、50μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。ただし、電極間距離は、10μm以上確保することが好ましい。
【0055】
また、有効表示エリア23の左下隅に囲みで示すA領域内のように、引き回し線部同士の間隔も、極力狭くされている。引き回し線部の間隔も、50μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。ただし、電極間距離は、10μm以上確保することが好ましい。
【0056】
なお、有効表示エリア23の中央付近の上部に囲みで示すB領域内のように、「P」という文字の閉ループ状の部分の内部(浮島)は、閉ループに切り込みを入れることにより、背景セグメント電極4Aに繋げている。なお、切り込みの幅(切り込み部分の背景セグメント電極4Aの幅)は、最小線間幅の2倍以上が好ましく、より好ましくは3倍以上とする。
【0057】
このように、第1の実施例のセグメント基板上には、有効表示エリア内の、電極間の隙間(線間)を除くほぼ全面に、透明電極が形成されている。背景セグメント電極が、有効表示エリアの周に接する形状で配置される。
【0058】
なお、この実施例では、背景セグメント電極を1本に配線したが、必要ならば複数本の背景セグメント電極を設けてもよい。ただし、背景セグメント電極の本数が少ない方が、それを取り出す端子数も少なくできるので、駆動回路の規模を小さくできる。なお、少なくとも1つの背景セグメント電極が、有効表示エリアの周に接する形状で配置される。
【0059】
図3は、図24に示した表示パターンを実現する、第1の実施例のコモン電極パターンである。比較例と同様に、2本のコモン電極C1、C2からなる表示コモン電極8が配置されている。
【0060】
有効表示エリア23内の、表示コモン電極8が配置されていない領域を埋めるように、1本の背景コモン電極8Aが配置されている。背景コモン電極8Aは、トランスファー端子T3を介して、セグメント基板側のコモン電極端子C3に接続される。背景コモン電極8Aを、左上りの斜線で示す。
【0061】
表示コモン電極8と背景コモン電極8Aとを合わせて、3本のコモン電極C1〜C3が配置されており、1/3デューティ、1/3バイアスのマルチプレックス駆動が想定されている。
【0062】
表示コモン電極8と、背景コモン電極8Aとの間には、両者が短絡しないように隙間を設ける必要があるが、この隙間の距離は、50μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。ただし、電極間距離は、10μm以上確保することが好ましい。
【0063】
このように、第1の実施例のコモン基板上には、有効表示エリア内の、電極間の隙間を除くほぼ全面に、透明電極が形成されている。背景コモン電極は、有効表示エリアの周に接する形状で配置される。背景コモン電極は、マルチプレックス駆動の観点からは、デューティ数増加を抑えるように、少ない本数にできれば好ましい。
【0064】
なお、液晶表示素子を駆動させる駆動回路には、セグメント及びコモン出力共に、出力電流容量に制限があるため、駆動可能な表示面積に制限がある場合が多い。能力以上の出力電流を要する広い表示領域を駆動すると、オン表示時に印加電圧の降下を生じ、表示輝度低下、さらには表示ムラを生じさせる懸念がある。
【0065】
背景は広い面積になりうる。背景セグメント電極あるいは背景コモン電極を、1本のみ設けると印加電圧の観点で面積が広くなりすぎる場合は、複数本の電極に分割して、各電極の面積を狭くすることも有効であろう。
【0066】
図4に、背景コモン電極を2つの背景コモン電極C3a、C3bに分割する例を示す。背景コモン電極C3a、C3bそれぞれに、トランスファー端子T3、T4が用意されている。複数の背景コモン電極C3a、C3bは、共通のコモン電極端子に接続して、マルチプレックス駆動において同じ走査線として走査するようにしてもよい。また、背景コモン電極C3a、C3bは、それぞれ別のコモン接続端子に接続して、別の走査線として走査するようにしてもよい。なお、複数本の背景コモン電極を設けた場合、少なくとも1つの背景コモン電極は、有効表示エリアの周に接する形状で配置される。なお、以下では、図3に示したように、1本の背景コモン電極とした場合を例に説明を続ける。
【0067】
以上説明したように、第1の実施例では、セグメント基板及びコモン基板の、有効表示エリア内のほぼ全面に、透明電極が形成されている。これにより、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきが抑制される。
【0068】
次に、第1の実施例におけるセグメント電極とコモン電極との重なり構造について説明するとともに、表示パターン及び背景のオン・オフを制御するための駆動方法について説明する。
【0069】
図5は、図2に示したA領域の拡大図であり、図6は、図2に示したB領域の拡大図である。セグメント電極とコモン電極とが重なった状態を示している。
【0070】
表示セグメント電極と表示コモン電極とが重なっている領域R11が、表示パターンとなり、それ以外が背景となる。上述のように、表示セグメント電極及び表示コモン電極の、表示パターン部以外が、それぞれの引き回し線部である。
【0071】
背景は、線間以外、表示セグメント電極の引き回し線部と背景コモン電極とが重なっている領域R12と、背景セグメント電極と表示コモン電極の引き回し線部とが重なっている領域R21と、背景セグメント電極と背景コモン電極とが重なっている領域R22とに分割される。領域R12、R21で、表示電極(表示セグメント電極、表示コモン電極)の引き回し線部は、対向側の背景電極(背景コモン電極、背景セグメント電極)と対向する。
【0072】
図5及び図6において、表示セグメント電極と表示コモン電極とが重なっている領域R11及び表示セグメント電極と背景コモン電極とが重なっている領域R12を、左上りの斜線で示している。背景セグメント電極と表示コモン電極とが重なっている領域R21及び背景セグメント電極と背景コモン電極とが重なっている領域R22を、クロスハッチで示している。
【0073】
なお、上述のように、図6に示す「P」という文字の閉ループ状の部分の内部25は、閉ループに切り込みを入れることにより、背景セグメント電極に繋がっている。
【0074】
図7に、有効表示エリア23全体でのセグメント電極とコモン電極との重なりを示す。図7を参照して、表示パターン及び背景のオン・オフをマルチプレックス駆動で制御する方法について説明する。
【0075】
表示パターンは、表示セグメント電極S1〜S10(表示セグメント電極4)と、表示コモン電極C1、C2(表示コモン電極8)との重なり部分で画定される。表示パターンのオン・オフを制御する場合は、表示コモン電極C1またはC2が選択される期間に、表示セグメント電極S1〜S10の各々にオンまたはオフの駆動信号を印加する。
【0076】
背景は、線間以外、背景セグメント電極4Aと表示コモン電極8の引き回し線部との重なり(領域R21)、表示セグメント電極4の引き回し線部と背景コモン電極8Aとの重なり(領域R12)、及び、背景セグメント電極4Aと背景コモン電極8Aとの重なり(領域R22)で画定される。領域R11〜R22のうちのいくつかを図に例示する。
【0077】
まず、背景全体をオフにする制御について説明する。背景セグメント電極4Aには、コモン電極C1〜C3が選択される期間でいずれもオフの駆動信号を印加する。これにより、背景セグメント電極4Aと表示コモン電極8の引き回し線部との重なり(領域R21)は、表示コモン電極C1、C2が選択される期間にオフに保たれる。
【0078】
さらに、背景コモン電極C3が選択される期間は、すべての表示セグメント電極S1〜S10にオフの駆動信号を印加する。これにより、表示セグメント電極4の引き回し線部と背景コモン電極8Aとの重なり(領域R12)、及び、背景セグメント電極4Aと背景コモン電極8Aとの重なり(領域R22)も、オフとなる。
【0079】
つまり、背景のうち表示コモン電極を含む領域は、表示コモン電極が選択されたときに、背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にするとともに、背景のうち背景コモン電極を含む領域は、背景コモン電極が選択されたときに、表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にすることにより、背景の全体をオフ表示にする。
【0080】
背景の全体をオンにする制御は、この逆となる。すなわち、背景セグメント電極4Aには、コモン電極C1〜C3が選択される期間でいずれもオンの駆動信号を印加する。これにより、背景セグメント電極4Aと表示コモン電極8の引き回し線部との重なり(領域R21)は、表示コモン電極C1、C2が選択される期間にオンに保たれる。
【0081】
さらに、背景コモン電極C3が選択される期間は、すべての表示セグメント電極S1〜S10にオンの駆動信号を印加する。これにより、表示セグメント電極4の引き回し線部と背景コモン電極8Aとの重なり(領域R12)、及び、背景セグメント電極4Aと背景コモン電極8Aとの重なり(領域R22)も、オンとなる。
【0082】
つまり、背景のうち表示コモン電極を含む領域は、表示コモン電極が選択されたときに、背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にするとともに、背景のうち背景コモン電極を含む領域は、背景コモン電極が選択されたときに、表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にすることにより、背景の全体をオン表示にする。
【0083】
以上説明したように、第1の実施例では、表示パターン及び背景双方のオン・オフを、表示コモン電極及び背景コモン電極を順次選択していくマルチプレックス駆動で制御することができる。
【0084】
例えば、ノーマリーブラック表示の液晶表示素子で、表示パターンがオフ(暗表示)のとき、すなわちオフ電圧が印加されているとき、背景にもマルチプレックス駆動のオフ電圧を印加して、表示パターンと背景の透過率を揃えることにより、オフ電圧印加の表示パターンと電圧無印加の背景とで見え方が異なるクロストークを防止することができる。
【0085】
また例えば、ノーマリーブラック表示の液晶表示素子で、背景をオン(明表示)とすることにより、ノーマリーホワイト型の液晶表示素子のような表示を行うこともできる。
【0086】
次に、第2の実施例の液晶表示素子について説明する。ノーマリーブラック表示を行う垂直配向(VA)モードの液晶表示素子では、暗表示時であっても、オフ電圧印加に伴う斜め電界に起因して、電極エッジ近傍で光抜けが生じやすい。第2の実施例の技術は、そのような電極エッジ近傍の光抜け抑制に有効である。
【0087】
図8は、第2の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。以下、第1の実施例との違いについて説明する。第2の実施例の液晶表示素子では、セグメント基板3と、表示セグメント電極4及び背景セグメント電極4Aとの間に、ブラックマスク30が形成されており、コモン基板8と、表示コモン電極8及び背景コモン電極8Aとの間に、ブラックマスク31が形成されている。
【0088】
ブラックマスク30は、表示面内で、表示セグメント電極4と背景セグメント電極4Aとの隙間を覆うように帯状に形成され、表示セグメント電極4の縁からその内側にある程度オーバーラップし、また、背景セグメント電極4Aの縁からその内側にある程度オーバーラップするように形成されている。
【0089】
ブラックマスク31は、表示面内で、表示コモン電極8と背景コモン電極8Aとの隙間を覆うように帯状に形成され、表示コモン電極8の縁からその内側にある程度オーバーラップし、また、背景コモン電極8Aの縁からその内側にある程度オーバーラップするように形成されている。
【0090】
電極の縁から内側にオーバーラップするようにブラックマスクが配置されていることにより、電極エッジ近傍の光抜けが良好に抑制される。電極の縁からその電極の内側にオーバーラップする距離は、5μm以上20μm以下が好ましい。
【0091】
ブラックマスク30及び31は、例えば顔料、カーボンなどの粒子、または染料を分散させた樹脂や、クロムなどの金属等を用いて構成される。なお、ブラックマスクに金属等導電材料を用いる場合は、透明電極との間に絶縁層を配置する。なお、ブラックマスクは、透明電極と配向膜との間に配置することもでき、また、図23(B)を参照して説明した絶縁膜と配向膜との間に配置することもできる。
【0092】
次に、第3及び第4の実施例の液晶表示素子について説明する。第1の実施例において、背景に新たな電極を追加し、ノーマリーブラック表示の液晶表示素子でも、表示パターン及び背景を合わせた全面をオン(明表示)にできるようにした。
【0093】
しかし、引き回し線部同士の線間や背景電極と表示電極との線間は、電極が配置されていないので、全面がオンとなっても暗状態のままである。例えば全面がオン時に、このような線間の暗状態により、表示に違和感が生じる場合がある。特に、線間の距離が比較的広い(例えば20μm〜50μm程度)場合で、線間が不規則なパターンで配置されているような場合に、このような違和感が生じやすい。
【0094】
第3の実施例では、セグメント電極及びコモン電極上の双方に開口を分布させることにより、線間以外の領域にも、オン時に暗状態のままの部分を分布させて、表示の違和感を低減させる。ただし、電極上に開口を形成すると、開口の縁が新たな電極エッジとなる。オフ(暗表示)時において、このような電極エッジに起因する開口の縁近傍での光抜けは抑制したい。
【0095】
図9は、第3の実施例の液晶表示素子の開口の配置を示す概略平面図である。セグメント電極上に、複数の開口OPs(セグメント開口OPsと呼ぶこととする)が形成され、各セグメント開口OPsに対向する位置のコモン電極上に、開口OPc(コモン開口OPcと呼ぶこととする)が形成されている。つまり、各セグメント開口OPsに対し、対応する1つのコモン開口OPcが配置されている。セグメント開口OPs及びコモン開口OPcは、それぞれ、複数列に並んで配置されている。両開口OPs、OPcは相似形状(合同も含むとする)である。
【0096】
相互に対応するセグメント開口OPsとコモン開口OPcとは、重心GPが一致し、セグメント開口OPsの大きさはコモン開口OPcに対して等しいか小さく、セグメント開口OPsは、コモン開口OPcと一致するか、コモン開口OPc内に含まれる。なお、理想的には、表示面内でセグメント開口OPsの縁とコモン開口OPcの縁とが一致すれば、斜め電界抑制に最も好ましい。
【0097】
図9には、セグメント開口OPs及びコモン開口OPcの、左右方向に伸びた列を、上下2列分示している。セグメント開口OPs及びコモン開口OPcは、矩形形状(正方形も含むとする)であり、辺同士が平行に配置されている。開口の矩形の辺は、左右方向または上下方向に平行である。
【0098】
セグメント開口OPsは、列方向の長さ(横辺長さ)がWsで、幅(縦辺長さ)がHsであり、列方向に間隔Gsを隔てて規則的に並んでいる。コモン開口OPcは、列方向の長さ(横辺長さ)がWcで、幅(縦辺長さ)がHcであり、列方向に間隔Gcを隔てて規則的に並んでいる。コモン開口OPcの列同士は、間隔Pを隔てて並んでいる。上下方向に並ぶ開口列の開口の重心GPが、左右方向に関して揃っている。
【0099】
セグメント開口OPsの列方向の長さWs、幅Hs、列方向の間隔Gs、及び、コモン開口OPcの列方向の長さWc、幅Hc、列方向の間隔Gcは、以下のような関係を満たす。
【0100】
セグメント開口OPsの列方向の長さWsは、5μmより長いことが好ましく、5μm<Ws≦Wcとなる。また、セグメント開口OPsの幅Hsも、5μmより長いことが好ましく、5μm<Hs≦Hcとなる。さらに、コモン開口OPcの列方向の間隔Gcも、5μmより長いことが好ましく、5μm<Gc≦Gsとなる。
【0101】
また、コモン開口OPcの幅Hcが、列方向の間隔Gc以上であることが好ましく、Hc≧Gcであり、セグメント開口OPsの幅Hsが、列方向の間隔Gs以上であることが好ましく、Hs≧Gsである。
【0102】
コモン開口OPcの幅Hcは、セグメント電極とコモン電極との間隔に略等しくすることが好ましく、コモン開口OPcの列方向の長さWcは、セグメント電極及びコモン電極の、引き回し線部及び背景電極の最小線幅に合わせることが好ましい。コモン開口OPcの列同士の間隔Pは、コモン開口OPcの列方向の間隔Gc以上にすることが有効である。
【0103】
開口は、背景内のみに設けても、さらに表示パターン内に設けてもよい。なお、開口を持つ電極パターンの作製のために、例えば以下のようにフォトマスクを作製すればよいであろう。ポジ型のフォトマスクの作製においては、元のセグメント、コモン電極パターンのマスクデータと、開口のみを配列したマスクデータの論理積を取ったマスクデータをそれぞれ作成し、このマスクデータをもとにフォトマスクを作製することで、遮光部に開口を有するマスクパターンとすることが有効である。なお、引き回し線部や背景電極の線幅が狭い部分に開口を設けると、断線する可能性があるので、断線しないようにする配慮が必要である。線幅100μm以下の電極部分、特に線幅50μm以下の電極部分には、開口を設けないようにするのがよい。
【0104】
セグメント電極とコモン電極との間隔が例えば30μmである場合、例えば、コモン開口OPcの列方向の長さWcが30μm、セグメント開口OPsの列方向の長さWsが20μm、コモン開口OPcの幅Hcが30μm、セグメント開口OPsの幅Hsが20μm、コモン開口OPcの列方向の間隔Gcが10μm、セグメント開口OPsの列方向の間隔Gsが20μm、コモン開口OPcの列同士の間隔Pが100μmである。
【0105】
なお、セグメント側とコモン側の条件を入れ替えても構わない。例えば、コモン電極側の開口を、セグメント電極側の開口より小さくするようにしてもよい。
【0106】
なお、図10に示すように、上下方向に並ぶ開口列の開口の重心GPが、左右方向に関して揃っていなくてもよい。例えば、上下方向に並ぶ開口列の重心を、左右方向に半ピッチずらして、重心GPを市松状に配置してもよい。
【0107】
さらに、図11に示すように、それぞれの開口は、表示面内で、左右方向(あるいは上下方向)から所定角度θだけ傾いていてもよい。列内で隣り合う開口同士の重心の間隔がLpであり、隣り合う列同士の開口の重心の間隔がVpである。
【0108】
なお、開口形状は矩形に限らない。例えば、円形や楕円形、十字形などとすることも可能である。各開口が、それに対応する対向側の開口と相似形状であり、両開口が重心を共通とし、両開口の大きさを等しいか、一方が他方を含む大きさとすれば有効である。一方が他方を含む大きさである場合、重心がややずれても、一方が他方を含む位置関係が保たれやすい。ただし両開口の大きさは近いことが斜め電界抑制に好ましく、一方を他方に対して80%〜120%程度の大きさ(面積)とすることが好ましい。
【0109】
次に、第4の実施例の液晶表示素子について説明する。第3の実施例で、電極上に開口を形成した。第4の実施例では、開口を覆うように、第2の実施例で導入したようなブラックマスクを形成することにより、開口近傍の光抜けをさらに抑制する。
【0110】
図12は、セグメント開口OPs、コモン開口OPc、及びブラックマスクBMの配置関係を示す概略断面図である。コモン基板Sc側に、ブラックマスクBMが形成されている。なお、セグメント基板Ss側、あるいは両基板側にブラックマスクを形成することもできる。
【0111】
この例では、セグメント開口OPsよりもコモン開口OPcの方が大きい。表示面内で、ブラックマスクBMが、相対的に大きいコモン開口OPcを覆い、コモン開口OPcの縁からコモン電極Ecの内側にある程度オーバーラップするように形成されている。これにより、良好に遮光が行われる。オーバーラップの距離は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。
【0112】
次に、第5の実施例の液晶表示素子について説明する。第1の実施例で、背景セグメント電極及び背景コモン電極を導入し、それぞれ、セグメント電極端子及びコモン電極端子に接続して、背景のオン・オフ制御を、表示パターンのオン・オフを制御するマルチプレックス駆動に組み込んだ。
【0113】
しかし、背景のオン・オフ制御のためのセグメント電極端子及びコモン電極端子を増加させることができない場合もあろう。第5の実施例でも、第1の実施例と同様に、セグメント基板の表示セグメント電極の配置されない領域を埋めるように、背景セグメントダミー電極を配置し、コモン基板の表示コモン電極の配置されない領域を埋めるように、背景コモンダミー電極を配置する。しかし、両ダミー電極は、それぞれセグメント電極端子及びコモン電極端子に接続せず、マルチプレックス駆動で制御することは行わないダミー電極である。
【0114】
第5の実施例でも、セグメント基板及びコモン基板の、線間を除くほぼ全面に透明電極が形成されている。これにより、第1の実施例と同様に、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきが抑制される。
【0115】
ただし、単純に背景セグメントダミー電極及び背景コモンダミー電極を配置しただけでは、静電気等の帯電により、背景の点灯等の誤動作を起こす懸念がある。このため、第5の実施例では、背景セグメントダミー電極と背景コモンダミー電極とを導通させ同電位とする。
【0116】
図13は、第5の実施例のセグメント電極パターンである。表示セグメント電極4が配置されていない領域を埋めるように、背景セグメントダミー電極4Bが配置されているが、背景セグメントダミー電極4Bは、セグメント電極端子には接続されない。
【0117】
背景セグメントダミー電極4Bは、背景コモンダミー電極と導通させるために、有効表示エリア23の外に新たに設けられたダミー電極間トランスファー端子TSCに接続される。なお、ダミー電極間トランスファー端子を、複数個設けてもよい。また、第5の実施例では、コモン電極端子C1及びC2に並んで、ダミー電極端子Dが配置されている。
【0118】
図14は、第5の実施例のコモン電極パターンである。表示コモン電極8が配置されていない領域を埋めるように、背景コモンダミー電極8Bが配置されているが、背景コモンダミー電極8Bは、コモン電極端子には接続されない。
【0119】
背景コモンダミー電極8Bは、トランスファー端子TDを介して、セグメント基板側に形成されたダミー電極Dに接続され、外部に取り出される。また、背景コモンダミー電極8Bは、ダミー電極間トランスファー端子TSCを介して、背景セグメントダミー電極4Bに接続される。
【0120】
このように、背景セグメントダミー電極4Bと背景コモンダミー電極8Bとを導通させて、同電位とする。これらダミー電極4B、8Bに、ダミー電極端子Dから所定電位が印加される。ダミー電極端子Dには、好ましくは0Vが印加される。なお、第2の実施例と同様に、表示面内で線間を覆うようにブラックマスクを形成してもよい。
【0121】
次に、第6及び第7の実施例による液晶表示素子について説明する。第1〜第5の実施例では、セグメント基板あるいはコモン基板の同一面上に、表示電極と背景電極とを形成した。よって、表示電極と背景電極との短絡を防ぐために、表示電極と背景電極との間に電極のない線間が残る。このような線間をなくすことが可能な構造について説明する。
【0122】
図15は、第6の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。第6の実施例では、背景セグメント電極4Cを、表示セグメント電極4とは異なる層に形成する。セグメント基板3上に、背景セグメント電極4Cが形成され、その上に、絶縁膜17が形成され、絶縁膜17上に、表示セグメント電極4が形成されている。
【0123】
図16は、第7の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。第7の実施例では、セグメント基板側に加え、さらにコモン基板側でも、表示電極と異なる層に背景電極を形成する。コモン基板8の下に、背景コモン電極8Cが形成され、その下に、絶縁膜18が形成され、絶縁膜18の下に、表示コモン電極8が形成されている。
【0124】
このように、背景電極と表示電極とを異なる層に形成することにより、表示面内で両電極間に隙間を設けなくてもよくなる(背景電極と表示電極の端を揃えてよい)。線間が無くなれば、背景のオン時に線間が暗状態になるような状況をなくすことができる。
【0125】
次に、上記実施例の構造を採用した液晶表示装置を作製して、その外観状態を観察した結果について説明する。ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、及び、垂直配向(VA)モードの3種類の液晶表示装置を作製した。
【0126】
まず、TNモードの液晶表示装置の場合について説明する。比較例、第1の実施例、及び第3の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を作製した。上下ガラス基板の内面に配置される配向膜には、日産化学工業製の水平配向膜SE410を用いた。液晶層内の液晶分子配向は、左捩れで略90°とし、液晶層中央分子の配向方向が略6時方位となるように、配向膜面にラビング処理を施した。本検討では、液晶層厚dが略6μmと略9μmの2種類の液晶表示素子を作製した。
【0127】
液晶材料には、正の誘電率異方性を有する複屈折率Δnが略0.09と略0.25であるものを用いた。液晶層厚dが略6μmの場合には、Δnが略0.09の液晶材料を用い、液晶層厚dが略9μmの場合には、Δnが略0.25の液晶材料を用いたので、それぞれの液晶層におけるリターデーションΔndは、略540nm及び略2.25μmとなる。
【0128】
上下ガラス基板の外側に配置される上下の偏光板は、パラレルニコル配置とした。上下偏光板の吸収軸は、上下ガラス基板のいずれか一方のラビング方位(液晶配向方位)に対して略平行となるように配置した。偏光板として、ポラテクノ製SHC13Uを用いた。この液晶表示素子は、オフ電圧印加時に暗状態が得られるノーマリーブラック型となる。
【0129】
さらに、実際に作製したサンプルを観察する前に、ほぼ同じ条件におけるシミュレーション解析を行った。シミュレータとして、シンテック製のLCDMASTER6を用いた。
【0130】
図17(A)及び図17(B)に、駆動電圧を最適化した1/3デューティ、1/3バイアスのマルチプレックス駆動条件でのオフ電圧印加時、及び電圧無印加時における9時−3時方位(左右方位)の視角特性のシミュレーション結果を示す。シミュレーションは、透明電極が形成されている部分のオフ電圧印加時及び電圧無印加時の視角特性を示す。
【0131】
図17(A)が、Δndが低い略540nmの場合、図17(B)が、Δndが高い略2.25μmの場合の結果である。横軸が9時−3時方位(左右方位)の観察角度を度単位で示し、縦軸が透過率を示す。なお、Δndが低い略540nmの場合に対しては、単波長バックライトの場合を想定して、波長630nmの透過率を示している。
【0132】
液晶層のΔndが低い場合も高い場合も、電圧無印加時の透過率及びオフ電圧印加時の透過率の双方は、観察角度が深くなるにつれて大きくなり、特に右方位で透過率が大きくなる傾向がある。また、電圧無印加時の透過率よりも、オフ電圧印加時の透過率の方が大きく、両透過率の差は、観察角度が深くなるほど大きくなる傾向がある。液晶層のΔndが低い方が、深い観察角度での透過率が大きい。オフ電圧印加部分と電圧無印加部分との見え方が異なるクロストークが、特に低いΔndの方の液晶表示素子において、深い観察角度になるほど生じやすいことが示唆される。
【0133】
比較例の液晶表示素子では、表示パターンが暗表示にされるとき、表示パターンにオフ電圧が印加されている。一方、背景は電圧無印加である。比較例では背景電極を形成していないが、背景電極の無い部分の電圧無印加の視角特性は、シミュレーション結果に示した電極形成部分の電圧無印加の視角特性とほぼ同様と考えられる。従って、比較例の液晶表示素子において、深い観察角度でクロストークが生じることが予想される。実際に比較例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を観察したところ、深い観察角度でクロストークが観察された。
【0134】
一方、第1及び第3の実施例の液晶表示素子では、表示パターンにオフ電圧を印加して暗表示とするとき、背景にもオフ電圧を印加することができるので、クロストークが抑制される。なお、背景の線間部分は電圧無印加となるが、幅が狭いので目立たない。第1及び第3の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を観察したところ、クロストークは認識されなかった。
【0135】
なお、第1及び第3の実施例の液晶表示素子は、背景をオン(明表示)とすることにより、ノーマリーホワイト型の表示を行うことも可能である。表示パターン及び背景にオン電圧が印加されているとき、表示パターンと背景とでオン電圧印加部分の見え方が異なることはない。
【0136】
ただし、背景をオンにしたとき、線間は暗状態であり、第1の実施例の液晶表示素子では、これに起因して表示に違和感を生じ得る。電極に開口を形成した第3の実施例は、このような違和感の低減に有効である。第3の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置により、背景のオン時の表示が大幅に改善されることを確認した。
【0137】
なお、上記検討において、液晶層内における液晶分子の捩れ角を略90°としたが、捩れ角はこれに限定されない。捩れ角は概ね70°〜130°の範囲であれば、上記と同様な効果が得られる。
【0138】
TNモードでノーマリーブラック型の液晶表示素子としては、例えば、液晶セルが、液晶層内における液晶分子の捩れ角が略90°で、液晶層のリターデーションΔndが2μm〜4μmであるものが好ましく、また例えば、液晶セルが、液晶層内における液晶分子の捩れ角が略70°〜略130°で、液晶層のリターデーションΔndが400nm〜700nmであるものが好ましい。上下偏光板は、平行ニコル配置である。
【0139】
次に、STNモードの液晶表示装置の場合について説明する。比較例、第1の実施例、第3の実施例、及び第5の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を作製した。さらに、TNモードの場合と同様に、シミュレーション解析を行った。
【0140】
上下ガラス基板の内面に配置される配向膜には、日産化学工業製の水平配向膜SE2811を用いた。液晶層内の液晶分子配向は、左捩れで略180°とし、液晶層中央分子の配向方向を略6時方位となるように、配向膜面にラビング処理を施した。本検討では、液晶層厚dが略6μmの液晶表示素子を作製した。液晶材料には、正の誘電率異方性を有する複屈折率Δnが略0.15であるものを用いたので、リターデーションΔndは略900nmとなる。
【0141】
このような左捩れのセル(表示パターンを表示する「駆動セル」)の上側または下側に、「色補償セル」を積層した。色補償セルは、液晶層内の液晶分子配向を右捩れで略180°とし、液晶層中央分子の配向方向が略3時方位となるように配向膜面にラビング処理を施し、有効表示エリア内に全面電極を配置したこと以外は、駆動セルと同様なものである。
【0142】
積層した2枚のセルの外側に配置される上下の偏光板は、クロスニコル配置とした。上下偏光板の吸収軸は、偏光板として、ポラテクノ製SHC13Uを用いた。この液晶表示素子は、オフ電圧印加時に暗状態が得られるノーマリーブラック型となる。なお、色補償セルは、同様な光学特性を有する液晶性ポリマー等で形成された光学フィルム、例えばポラテクノ製Twistarフィルムに代替してもよい。
【0143】
図18に、駆動電圧を最適化した1/64デューティ、1/9バイアスのマルチプレックス駆動条件でのオフ電圧印加時、及び電圧無印加時における9時−3時方位(左右方位)の視角特性のシミュレーション結果を示す。横軸が9時−3時方位(左右方位)の観察角度を度単位で示し、縦軸が透過率を示す。
【0144】
電圧無印加及びオフ電圧印加の双方共に、観察角度が深くなるに従って、透過率が大きくなり、特に右方位で透過率が大きくなる傾向がある。右方位ではオフ電圧印加時の方が電圧無印加時よりも透過率が高く、左方位では電圧無印加時の方がオフ電圧印加時よりも透過率が高い傾向がある。
【0145】
電圧無印加時の透過率とオフ電圧印加時の透過率には差があるが、観察角度変化に伴う変化の仕方は両者で似ており、観察角度が変化しても、両者の透過率の差はある程度以下(例えば0.3%程度以下)に留まる。
【0146】
TNモードの場合(図17(A)及び図17(B)参照)には、深い観察角度ほど電圧無印加とオフ電圧印加との透過率差が大きくなり、その差も数%程度(図17(B)の高いΔndの場合)あるいは10%程度(図17(A)の低いΔndの場合)に達している。従って、TNモードの場合に比べると、STNモードの場合には、クロストークが目立たないといえる。
【0147】
ただし、比較例の液晶表示素子では、色補償セルは全面電極としているものの、駆動セルにおいて、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきがある。STNモードの液晶表示素子は、TNモードの液晶表示素子に比べて、高いデューティでの駆動を行っており、透明電極のシート抵抗を低く設定する。このため、透明電極が厚くなり、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきが大きくなる。これに起因して、STNモードの比較例では、電圧印加、無印加に関わらず、左右観察時はもとより、正面観察時でも、透過率のばらついた領域が観察されやすい。
【0148】
実際に比較例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を、電圧無印加状態で観察したところ、深い観察角度だけでなく、正面観察時においても、表示パターンと背景との透過率差が観察された。表示パターンにオフ電圧が加わると、深い観察角度での背景との透過率差は、さらに顕著に観察されることを確認した。
【0149】
一方、第1及び第3の実施例の液晶表示素子では、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきが抑制され、正面観察時の透過率差が抑制されている。さらに、TNモードの場合について説明したのと同様に、表示パターンとともに背景にもオフ電圧を印加することができるので、オフ電圧印加部分と電圧無印加部分との透過率差に起因するクロストークも抑制できる。
【0150】
第5の実施例の液晶表示素子でも、透明電極の有無に起因する液晶層厚のばらつきが抑制される。第5の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置について、液晶層厚のばらつきに伴う正面観察時の透過率差が抑制されていることを確認した。
【0151】
なお、TNモードの場合についても説明したように、第1及び第3の実施例の液晶表示素子は、背景をオン(明表示)とすることにより、ノーマリーホワイト型の表示を行うことも可能である。ただし、背景をオンにしたとき、線間は暗状態であり、第1の実施例の液晶表示素子では、これに起因して表示に違和感を生じ得る。STNモードの場合でも、電極に開口を形成した第3の実施例は、このような違和感の低減に有効である。
【0152】
なお、上記検討において、液晶層内における液晶分子の捩れ角を略180°としたが、捩れ角はこれに限定されない。捩れ角が略180°〜略260°の範囲において、オフ電圧印加時に暗状態が得られるノーマリーブラック型液晶表示素子構造であれば、上記と同様な効果が得られる。
【0153】
STNモードでノーマリーブラック型の液晶表示素子としては、例えば、駆動セルが、液晶層内における液晶分子の捩れ角が略180°〜略260°で、液晶層のリターデーションΔndが700nm〜1200nmであるものが好ましい。駆動セルに、補償セルまたは補償用の光学フィルムを重ねる。上下偏光板は、クロスニコル配置である。
【0154】
次に、VAモードの液晶表示装置の場合について説明する。比較例、第1〜第5の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を作製した。また、液晶層のリターデーションが大きい場合についての視角補償方法についても検討した。
【0155】
上下ガラス基板の内面に配置される配向膜には、特開2005−234254号公報の「発明を実施するための最良の形態」の欄に開示される、水とジヨードメタンを試液に用いた場合に表面自由エネルギーが35mN/m〜39mN/mを示すチッソ石油化学製の垂直配向膜を用いた。
【0156】
液晶層内は、上下配向膜面で反平行になるように、特開2005−234254号公報の「発明を実施するための最良の形態」の欄に開示されるラビング処理方法により配向処理を施し、液晶層中央分子配向方向を12時方位とした。
【0157】
本検討で液晶層厚は略4μmとし、誘電率異方性が負でΔnが略0.09〜略0.225を示すメルク製液晶材料を用いた。以下では、液晶層のリターデーションΔndが略360nm、略600nm、及び略900nmの3種類の場合を取り上げて検討している。プレティルト角は略89.5°とした。
【0158】
上下ガラス基板の外側には、一方、または両方に、負の一軸光学異方性または負の二軸光学異方性を有する視角補償板を配置し、さらにその外側に、互いの吸収軸が略85°〜略95°をなるように、上下偏光板を配置する。この液晶表示素子は、オフ電圧印加時に暗状態が得られるノーマリーブラック型である。
【0159】
ここで、液晶層のリターデーションに応じた好適な視角補償板の配置方法について検討する。現在、視角補償板として市場に流通している光学フィルムは、特許3330574号公報に開示される光学パラメータを実現するように延伸加工を施したトリアセチルセルロース(TAC)系フィルムまたはノルボルネン系環状オレフィンフィルムがほとんど
である。
【0160】
これらの材料を用いることにより、フィルム面内位相差が略30nm〜略70nmで厚さ方向(厚さ断面内)位相差が略300nm以下の負の二軸光学異方性光学フィルムが実現され市販されている。なお、以下では、負の二軸光学異方性光学フィルムを、二軸フィルムと呼ぶ。
【0161】
一方、負の一軸光学異方性光学フィルム(以下、Cプレートと呼ぶ)は、無延伸加工のTACフィルムで実現可能であるが、光学フィルムを均一性よく大量生産するに当たっては、面内位相差を完全にゼロにすることは困難である。実際、偏光板の保護フィルムとして用いられているTACフィルムでは、面内位相差が略3nm〜略5nm存在する。
【0162】
ノルボルネン系環状オレフィンフィルムを二軸延伸加工することによっても、Cプレートの作製は原理的には可能であるが、実際には7nm程度までの面内位相差を有するものが市販されている。
【0163】
ただし、面内位相差が略7nm以下であれば、Cプレートに近い特性が得られると考えられる。以下では、面内位相差が略7nm以下と小さい二軸光学異方性フィルムを、略Cプレートと呼ぶこととする。
【0164】
液晶層のΔndが略360nm以下である場合は、特許3330574号公報に示される光学フィルムのパラメータ範囲に含まれる面内位相差が略40nm〜略55nmで、厚さ方向の位相差が略120nmである二軸フィルムを、上下ガラス基板と上下偏光板との間の双方に、面内遅相軸が近接する偏光板の透過軸と略平行になるように、1枚ずつ配置する。または、面内位相差が略45nm〜略60nmで、厚さ方向の位相差が略220nmである二軸フィルムを、上下ガラス基板と上下偏光板との間のいずれか一方に、面内遅相軸が近接する偏光板の透過軸と略平行になるように配置する。これにより。良好な視角特性を得ることができる。
【0165】
しかし、液晶層のΔndが、略600nmや略900nmのように大きい場合は、特許3330574号公報に示された方法では良好な視角特性が得られない。本願発明者は、特に、液晶層のΔndが略570nmより大きい場合において視角特性を有効に改善できる視角補償方法を見出した。
【0166】
第1の視角補償方法は、図19(A)に示すように、上下ガラス基板US、LSと上下偏光板UP、LPとの間の一方に、1枚の二軸フィルム50aと、単数または複数のCプレートまたは略Cプレート(視角補償部材51a)とを配置する方法である。
【0167】
偏光板に最近接する視角補償板は必ず二軸フィルム50aとし、その面内遅相軸は近接する偏光板の透過軸に略平行とする。視角補償部材51aに略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、二軸フィルム50aの面内遅相軸方位と略平行とする。
【0168】
第2の視角補償方法は、図19(B)に示すように、上下ガラス基板US、LSと上下偏光板UP、LPとの間の一方に、二軸フィルム50bを配置し、他方に、単数または複数のCプレートまたは略Cプレート(視角補償部材51b)を配置する方法である。
【0169】
二軸フィルム50bは、その面内遅相軸を、近接する偏光板の透過軸に略平行とする。他方側の視角補償部材51bに略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、略Cプレートが近接する偏光板の透過軸と略平行とする。
【0170】
なお、二軸フィルム50bと近接するガラス基板との間に、単数または複数のCプレートまたは略Cプレート(視角補償部材52b)を追加することもできる。視角補償部材52bに略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、二軸フィルム50bの面内遅相軸方位と略平行とする。
【0171】
第3の視角補償方法は、図19(C)に示すように、上下ガラス基板US、LSと上下偏光板UP、LPとの間の一方に、2枚の二軸フィルム50c及び51cを配置する方法である。偏光板に近接する二軸フィルム50cの面内遅相軸は、近接する偏光板の吸収軸に略平行とし、ガラス基板側の二軸フィルム51cの面内遅相軸は、二軸フィルム50cの近接する偏光板の透過軸に略平行とする。
【0172】
なお、2枚の二軸フィルム50c及び51cとガラス基板との間に、単数または複数のCプレートまたは略Cプレート(視角補償部材52c)を追加することもできる。視角補償部材52cに略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、二軸フィルム50cが近接する偏光板の透過軸と略平行とする。
【0173】
また、2枚の二軸フィルム50c及び51cを配置したのと反対側の、ガラス基板と偏光板との間に、単数または複数のCプレートまたは略Cプレート(視角補償部材53c)を追加することもできる。視角補償部材52cに略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、略Cプレートが近接する偏光板の透過軸と略平行とする。
【0174】
第1〜第3の視角補償方法で用いる二軸フィルムは、面内位相差が30nm〜65nmであり、厚さ方向位相差が略100nm〜略300nm、より好ましくは略200nm〜略300nmである。
【0175】
一方、略Cプレートは、面内位相差が0nmより大きく7nm以下、より好ましくは0nmより大きく5nm以下であり、厚さ方向位相差が略50nm〜略300nm、より好ましくは略200nm〜略300nmである。また、Cプレートは、厚さ方向位相差が略50nm〜略800nm、より好ましくは略200nm〜略800nmである。
【0176】
次に、液晶層のΔndが略600nm及び略900nmの場合について、上記第1〜第3の視角補償方法で視角補償を行ったシミュレーションの結果について説明する。
【0177】
まず、Δndが略600nmの場合について説明する。なお、シミュレーションにおいて、偏光板はポラテクノ製SHC13Uとし、上側偏光板の吸収軸は12時方位から反時計回りに45°回転した方位に配置し、下側偏光板の吸収軸は、上側偏光板の吸収軸に直交するように配置した。視角補償板の材質としてはノルボルネン系環状オレフィンとした。なお、これは作製した液晶表示素子についても同様である。
【0178】
第1〜第3の視角補償方法に加えて、比較として従来方法についてもシミュレーションを行った。従来方法は、上下ガラス基板と上下偏光板との間の両方に、二軸フィルムを1枚ずつ配置する方法である。従来方法として、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmの二軸フィルムを、上下ガラス基板と上下偏光板との間の両方に、それぞれ、面内遅相軸を近接する偏光板の透過軸と平行にして配置した。
【0179】
第1の視角補償方法の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、1枚の二軸フィルムと1枚の略Cプレートとを配置した。二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。二軸フィルムと下側ガラス基板との間に、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmである略Cプレートを配置した。略Cプレートの面内遅相軸は、二軸フィルムの面内遅相軸と平行である。
【0180】
第2の視角補償方法の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、1枚の二軸フィルムを配置し、上側ガラス基板と上側偏光板との間に、1枚の略Cプレートを配置した。二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。略Cプレートは、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を上側偏光板の透過軸と平行に配置した。
【0181】
第3の視角補償方法の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、2枚の二軸フィルムを配置した。各二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、下側偏光板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の吸収軸と平行に配置し、下側ガラス基板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。
【0182】
図20(A)に、従来方法及び第1〜第3の視角補償方法のシミュレーション結果を示す。電圧無印加時の9時−3時方位視角特性(輝度曲線)を示す。従来方法に比べて、第1〜第3の視角補償方法(グラフでは第1〜第3の方法と表記)では、観察角度が深い場合(例えば左右50°)において透過率が低くなっている。すなわち、従来方法に比べて、電圧無印加時に深い観察角度から見た表示の暗さが良好に保たれる。
【0183】
このように、液晶層のΔndが例えば略600nmの場合、第1及び第2の視角補償方法では、面内位相差が略50nmで厚さ方向位相差が略220nmである二軸フィルムと、面内位相差が略4nm以下で厚さ方向位相差が略220nmである略Cプレートとを1枚ずつ用いることにより、良好に視角補償できることがわかった。また、第3の視角補償方法では、面内位相差が略50nmで厚さ方向位相差が略220nmである二軸フィルムを2枚積層して用いることにより、良好に視角補償できることがわかった。
【0184】
次に、Δndが略900nmの場合について説明する。従来方法として、面内位相差50nmで厚さ方向位相差330nmの二軸フィルムを、上下ガラス基板と上下偏光板との間の両方に、それぞれ、面内遅相軸を近接する偏光板の透過軸と平行にして配置した。
【0185】
第1の視角補償方法の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、1枚の二軸フィルムと2枚の略Cプレートとを配置した。二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。二軸フィルムと下側ガラス基板との間に、各々面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmである略Cプレートを2枚積層して配置した。略Cプレートの面内遅相軸は、ともに、二軸フィルムの面内遅相軸と平行である。
【0186】
第2の視角補償方法の1つ目の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、1枚の二軸フィルムを配置し、上側ガラス基板と上側偏光板との間に、2枚の略Cプレートを配置した。
【0187】
二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。略Cプレートの各々は、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmであり、ともに、面内遅相軸を上側偏光板の透過軸と平行に配置した。
【0188】
第2の視角補償方法の2つ目の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、1枚の二軸フィルムを配置と1枚の略Cプレートを配置し、上側ガラス基板と上側偏光板との間に、1枚の略Cプレートを配置した。
【0189】
二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。二軸フィルムと下側ガラス基板との間に、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmである略Cプレートを配置した。この下側の略Cプレートの面内遅相軸は、二軸フィルムの面内遅相軸と平行である。
【0190】
上側ガラス基板と上側偏光板との間の略Cプレートも、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmであり、この上側の略Cプレートの面内遅相軸は、上側偏光板の透過軸と平行である。
【0191】
第3の視角補償方法の1つ目の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、2枚の二軸フィルムを配置し、2枚の二軸フィルムと下側ガラス基板との間に、さらに、1枚の略Cプレートを配置した。
【0192】
各二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、下側偏光板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の吸収軸と平行に配置し、下側ガラス基板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。略Cプレートは、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmであり、その面内遅相軸は、近接する(ガラス基板側の)二軸フィルムの面内遅相軸と平行とした。
【0193】
第3の視角補償方法の2つ目の例として、下側ガラス基板と下側偏光板との間に、2枚の二軸フィルムを配置し、上側ガラス基板と上側偏光板との間に、1枚の略Cプレートを配置した。
【0194】
各二軸フィルムは、面内位相差50nmで厚さ方向位相差220nmであり、下側偏光板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の吸収軸と平行に配置し、下側ガラス基板側の二軸フィルムは、面内遅相軸を下側偏光板の透過軸と平行に配置した。略Cプレートは、面内位相差4nmで厚さ方向位相差220nmであり、その面内遅相軸は、上側偏光板の透過軸と平行とした。
【0195】
図20(B)に、従来方法及び第1〜第3の視角補償方法のシミュレーション結果を示す。電圧無印加時の9時−3時方位視角特性(輝度曲線)を示す。従来方法に比べて、第1〜第3の視角補償方法(グラフでは第1〜第3の方法と表記)では、観察角度が深い場合(例えば左右50°)において透過率が低くなっている。すなわち、従来方法に比べて、電圧無印加時に深い観察角度から見た表示の暗さが良好に保たれる。
【0196】
このように、液晶層のΔndが例えば略900nmの場合、第1及び第2の視角補償方法では、面内位相差が略50nmで厚さ方向位相差が略220nmである二軸フィルムを1枚と、面内位相差が略4nm以下で厚さ方向位相差が略220nmである略Cプレートを2枚用いることにより、良好に視角補償できることがわかった。なお、このような2枚重ねて厚さ方向位相差が440nmとなるような略Cプレート2枚の代わりに、厚さ方向位相差が440nmの1枚のCプレートを用いることもできる。
【0197】
また、第3の視角補償方法では、面内位相差が略50nmで厚さ方向位相差が略220nmである二軸フィルムを2枚積層したものと、面内位相差が略4nm以下で厚さ方向位相差が略220nmである略Cプレートを1枚用いることにより、良好に視角補償できることがわかった。
【0198】
なお、液晶層のリターデーションΔndが大きい場合について、Δndが略600nm及び略900nmの場合を例に説明したが、第1〜第3の視角補償方法は、Δndが570nm〜1500nm程度の範囲で有効であろうと考えられる。
【0199】
なお、従来方法では、液晶層のΔndが略600nmの場合、二軸フィルムの面内位相差を30nm〜40nmに設定できれば、左右観察角度50°における透過率を第1〜第3の視角補償方法と同程度に下げることが可能という知見も得られている。
【0200】
また、従来方法では、液晶層のΔndが略900nmの場合、二軸フィルムの面内位相差を20nm〜30nmに設定できれば、左右観察角度50°における透過率を第1〜第3の視角補償方法と同程度に下げることが可能という知見も得られている。このように、従来方法では、液晶層のΔndによって、二軸フィルムの面内位相差の最適値が変化してしまう傾向がある。
【0201】
一方、第1〜第3の視角補償方法では、液晶層のΔnd変化に伴う面内位相差の最適値の変動が小さいことがわかっており、様々なΔndを持つ液晶表示素子に対して、面内位相差の同じ二軸フィルムを用いて、良好に視角補償ができるという利点がある。
【0202】
次に、液晶層のΔndが略600nmで、第1の視角補償方法を採用した液晶表示装置について、電圧無印加時及びマルチプレックス駆動のオフ電圧印加時の視角特性を調べたシミュレーションについて説明する。
【0203】
第1の視角補償方法の条件は、図20(A)を参照して説明したΔndが略600nmの場合のシミュレーションと同様である。液晶層における中央分子配向方位を12時方位とした時、上側偏光板の吸収軸は12時方位から反時計回りに略45°回転した方位に配置し、下側偏光板の吸収軸は12時方位から45°回転させた方位に配置し、上下偏光板の吸収軸間の角度は90°とした。マルチプレックス駆動の条件は、1/9デューティ、1/4バイアスとした。
【0204】
図21に、電圧無印加時及びオフ電圧印加時の9時−3時方位視角特性を示す。電圧無印加時の透過率及びオフ電圧印加時の透過率の双方は、観察角度が深くなるにつれて大きくなる傾向がある。また、電圧無印加時の透過率よりも、オフ電圧印加時の透過率の方が大きく、両透過率の差は、観察角度が深くなるほど(特に左右20°程度以上で)大きくなる傾向がある。従って、TNモードの場合に説明したのと同様に、オフ電圧印加部分と電圧無印加部分との見え方が異なるクロストークが、深い観察角度になるほど生じやすいことが示唆される。
【0205】
ただし、電圧無印加時の透過率とオフ電圧印加時の透過率の差は、最大でも0.2%程度に留まっているので、TNモードの場合に比べれば、VAモードの場合には、クロストークが目立たないといえる。
【0206】
TNモードの場合について説明したように、比較例の液晶表示素子では、表示パターンが暗表示にされるとき、表示パターンにオフ電圧が印加されており、背景は電圧無印加である。従って、比較例の液晶表示素子において、深い観察角度でクロストークが生じることが予想される。実際に比較例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置を観察したところ、深い観察角度でクロストークが観察された。
【0207】
一方、第1〜第4の実施例の液晶表示素子では、表示パターンにオフ電圧を印加して暗表示とするとき、背景にもオフ電圧を印加することができるので、クロストークが抑制される。このことは、実際の液晶表示装置でも確認できた。
【0208】
なお、第1の視角補償方法に限らず、第2及び第3の視角補償方法を用いた場合でも、オフ電圧印加部分と電圧無印加部分との見え方が異なるクロストークが生じうる。従って、第1〜第4の実施例の液晶表示素子を用いることにより、クロストークが抑制される。
【0209】
なお、実際に動作させた液晶表示装置をさまざまな方向から観察してみると、第1及び第3の実施例の液晶表示素子を用いた場合は、電極エッジ付近の光抜けにより、電極パターンの配線状態が外観からも判別されるような、好ましくない状態が生じる場合があった。ブラックマスクを配置した第2及び第4の実施例の液晶表示素子では、このような光抜けが効果的に抑制でき、非常に良好な表示状態が得られることがわかった。
【0210】
比較例の液晶表示素子では、深い観察角度で観察したときに、透明電極の有無に起因して、透過率のばらついた領域が観察されやすい。なお、VAモードの液晶表示素子では、液晶層のリターデーションΔndや駆動電圧を適切に設定することにより、このような透過率のばらつきが、正面観察時には観察されにくい。ただし、液晶層のリターデーションΔndが550nm以上または液晶層厚3μm未満であるとき、斜め観察時に、このような透過率のばらつきが顕著になる傾向がある。
【0211】
第5の実施例の液晶表示素子も、第1〜第4の実施例と同様に、背景電極を設けているので、このような透過率のばらつきが抑制される。第5の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置でも、深い観察角度でのこのような透過率のばらつきが観察されない効果が得られていることを確認した。
【0212】
なお、第1〜第4の実施例の液晶表示素子は、背景をオン(明表示)とすることにより、ノーマリーホワイト型の表示を行うことも可能である。ただし、背景をオンにしたとき、線間は暗状態であり、第1及び第2の実施例の液晶表示素子では、これに起因して表示に違和感を生じ得る。電極に開口を形成した第3及び第4の実施例は、このような違和感の低減に有効である。第3及び第4の実施例の液晶表示素子を用いた液晶表示装置により、背景のオン時の表示が大幅に改善されることを確認した。
【0213】
液晶層のΔndが略600nmの場合を取り上げて、第1〜第5の液晶表示素子を用いた液晶表示装置の外観観察結果について説明したが、液晶層のΔndが略360nmや略900nm等他の値の液晶表示素子についても、同様な効果を得ることができる。
【0214】
なお、上記検討では、プレティルト角を90°未満に設定したが、例えば特許3834304号公報の「発明を実施するための最良の形態」の欄に開示されているような、プレティルト角は90°として上下電極構造の工夫により斜め電界を発生させて、電圧印加時の配向状態を制御する構造であっても、上記と同様な効果が得られる。
【0215】
VAモードでノーマリーブラック型の液晶表示素子としては、例えば、液晶層のリターデーションΔndが300nm〜1500nmであるものが好ましい。上下偏光板は、クロスニコル配置であり、上下偏光板の吸収軸配置角度は、略85°〜略95°である。
【0216】
なお、セグメント表示に加えてドットマトリクス表示を有する液晶表示装置に対しても、背景電極を設ける方法は有効である。
【0217】
なお、背景電極を設けた液晶表示素子は、例えば、カーオーディオ等の車載機器の表示部に適用でき、さらに、例えばコピー機などの事務機器の操作パネル部や、その他の情報表示パネル等に適用できる。
【0218】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】図1は、第1の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図2】図2は、第1の実施例の液晶表示素子のセグメント電極パターンを示す概略平面図である。
【図3】図3は、第1の実施例の液晶表示素子のコモン電極パターンを示す概略平面図である。
【図4】図4は、第1の実施例の変形例の液晶表示素子のコモン電極パターンを示す概略平面図である。
【図5】図5は、図2に示したA領域の拡大図である。
【図6】図6は、図2に示したB領域の拡大図である。
【図7】図7は、有効表示エリア全体でのセグメント電極とコモン電極との重なりを示す概略平面図である。
【図8】図8は、第2の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図9】図9は、第3の実施例の液晶表示素子の開口の配置を示す概略平面図である。
【図10】図10は、第3の実施例の一変形例の液晶表示素子の開口の配置を示す概略平面図である。
【図11】図11は、第3の実施例の他の変形例の液晶表示素子の開口の配置を示す概略平面図である。
【図12】図12は、第4の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図13】図13は、第5の実施例の液晶表示素子のセグメント電極パターンを示す概略平面図である。
【図14】図14は、第5の実施例の液晶表示素子のコモン電極パターンを示す概略平面図である。
【図15】図15は、第6の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図16】図16は、第7の実施例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図17】図17(A)及び図17(B)は、TNモードの液晶表示装置の、マルチプレックス駆動条件でのオフ電圧印加時及び電圧無印加時の視角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図18】図18は、STNモードの液晶表示装置の、マルチプレックス駆動条件でのオフ電圧印加時及び電圧無印加時の視角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図19】図19(A)〜図19(C)は、第1〜第3の視角補償方法を説明するための液晶表示素子の概略断面図である。
【図20】図20(A)及び図20(B)は、それぞれ、VAモードの液晶表示装置の、Δndが略600nmの場合及びΔndが略900nmの場合の、電圧無印加時の視角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図21】図21は、VAモードの液晶表示装置の、Δndが略600nmの場合の、マルチプレックス駆動条件でのオフ電圧印加時及び電圧無印加時の視角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図22】図22は、液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図23】図23(A)及び図23(B)は、比較例の液晶表示素子の概略断面図である。
【図24】図24は、液晶表示素子の表示パターンの例を示す概略平面図である。
【図25】図25は、比較例の液晶表示素子のセグメント電極パターンを示す概略平面図である。
【図26】図26は、比較例の液晶表示素子のコモン電極パターンを示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0220】
1 下側偏光板
2 下側視角補償板
3 下側ガラス基板(セグメント基板)
4 表示セグメント電極
4A 背景セグメント電極
5 下側配向膜
6 液晶層
7 上側配向膜
8 表示コモン電極
8A 背景コモン電極
9 上側ガラス基板(コモン基板)
10 上側視角補償板
11 上側偏光板
20 表示パターン
23 有効表示エリア
24 背景
30、31 ブラックマスク
OPs (セグメント電極上の)開口
OPc (コモン電極上の)開口
4B 背景セグメントダミー電極
8B 背景コモンダミー電極
TSC ダミー電極間トランスファー端子
100 バックライト
101 液晶表示素子
102 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶セルと該液晶セルを挟む上下偏光板とを含み、該液晶セルは、複数本の電極を含む表示セグメント電極と、表示面内で前記表示セグメント電極の外側に配置された1本または複数本の電極を含む背景セグメント電極と、複数本の電極を含む表示コモン電極と、該表示面内で該表示コモン電極の外側に配置された1本または複数本の電極を含む背景コモン電極と、該表示セグメント電極及び背景セグメント電極と該表示コモン電極及び背景コモン電極との間に挟まれた液晶層とを含み、表示パターンが、該表示セグメント電極と表示コモン電極との該表示面内での重なり部分で画定され、該表示面内で該表示パターンの外側が背景を画定し、マルチプレックス駆動される液晶表示素子と、
前記液晶表示素子に光を入射させるバックライトと、
前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、前記表示コモン電極及び前記背景コモン電極を順次走査しながら、前記表示セグメント電極及び前記背景セグメント電極の各電極それぞれにオン電圧またはオフ電圧を印加して、前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動し、前記背景のうち前記表示コモン電極を含む領域を、前記表示コモン電極が選択されたときに、前記背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にするとともに、前記背景のうち前記背景コモン電極を含む領域を、前記背景コモン電極が選択されたときに、前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にすることにより、該背景の全体をオフ表示にする制御を行うか、または、前記背景のうち前記表示コモン電極を含む領域を、前記表示コモン電極が選択されたときに、前記背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にするとともに、前記背景のうち前記背景コモン電極を含む領域を、前記背景コモン電極が選択されたときに、前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にすることにより、該背景の全体をオン表示にする制御を行う液晶表示装置。
【請求項2】
前記背景コモン電極が1本である請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記背景コモン電極が複数本であり、複数本の背景コモン電極のすべてが同時に選択されるようにマルチプレックス駆動の走査が行われる請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極が、共通の第1の面上に相互に間隙を隔てて形成されており、前記表示コモン電極及び背景コモン電極が、共通の第2の面上に相互に間隙を隔てて形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記表示セグメント電極と背景セグメント電極との間隙、及び、前記表示コモン電極と背景コモン電極との間隙の距離は、10μm〜50μmの範囲である請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記表示面内で、前記表示セグメント電極と背景セグメント電極との間隙、及び、前記表示コモン電極と背景コモン電極との間隙の少なくとも一部を覆うように、遮光膜が形成されている請求項4または5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極の少なくとも一方に、複数の開口が形成されており、該複数の開口の各々に対向する位置の前記表示コモン電極または背景コモン電極にも、開口が形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記開口を覆う遮光膜が形成されている請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極が、相互に異なる層に形成されており、前記表示面内で、該表示セグメント電極と背景セグメント電極との間に隙間のない領域が存在するか、または、前記表示コモン電極及び背景コモン電極が、相互に異なる層に形成されており、前記表示面内で、該表示コモン電極と背景コモン電極との間に隙間のない領域が存在する請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
液晶セルと該液晶セルを挟む上下偏光板とを含み、該液晶セルは、複数本の電極を含む表示セグメント電極と、表示面内で前記表示セグメント電極の外側に配置された背景セグメント電極と、複数本の電極を含む表示コモン電極と、該表示面内で該表示コモン電極の外側に配置された背景コモン電極と、該表示セグメント電極及び背景セグメント電極と該表示コモン電極及び背景コモン電極との間に挟まれた液晶層とを含み、表示パターンが、該表示セグメント電極と表示コモン電極との該表示面内での重なり部分で画定され、該表示面内で該表示パターンの外側が背景を画定し、該背景セグメント電極と該背景コモン電極とは導通されて同電位であり、マルチプレックス駆動される液晶表示素子と、
前記液晶表示素子に光を入射させるバックライトと、
前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、前記表示コモン電極を順次走査しながら、前記表示セグメント電極の各電極それぞれにオン電圧またはオフ電圧を印加して、前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動するとともに、前記背景セグメント電極と背景コモン電極とに所定電位を印加する液晶表示装置。
【請求項11】
前記液晶表示素子は、TNモードであり、前記液晶層内における液晶分子の捩れ角が70°〜130°であり、前記上下偏光板は、平行ニコル配置である請求項1〜10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記液晶表示素子は、STNモードであり、前記液晶セルの液晶層内における液晶分子の捩れ角が180°〜260°であり、さらに、該液晶セルに対する補償セルまたは補償用の光学フィルムを有し、前記上下偏光板は、クロスニコル配置である請求項1〜10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記液晶表示素子は、VAモードであり、前記上下偏光板の吸収軸配置角度は、85°〜95°である請求項1〜10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記液晶表示素子は、前記液晶層の厚さ断面内のリターデーションが570nm〜1500nmであり、さらに、前記上下偏光板と前記液晶セルとの間の一方に、1枚の二軸フィルム、及び、単数または複数のCプレートまたは略Cプレートを含む視角補償部材を有し、該二軸フィルムが偏光板側に配置され、該二軸フィルムの面内遅相軸は、近接する偏光板の透過軸に平行であり、該視角補償部材に略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、該二軸フィルムの面内遅相軸方位と平行である請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記液晶表示素子は、前記液晶層の厚さ断面内のリターデーションが570nm〜1500nmであり、さらに、前記上下偏光板と前記液晶セルとの間の一方に、1枚の二軸フィルムを有し、他方に、単数または複数のCプレートまたは略Cプレートを含む視角補償部材を有し、該二軸フィルムの面内遅相軸は、近接する偏光板の透過軸に平行であり、該視角補償部材に略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、それが近接する偏光板の透過軸に平行である請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記液晶表示素子は、前記液晶層の厚さ断面内のリターデーションが570nm〜1500nmであり、さらに、前記上下偏光板と前記液晶セルとの間の一方に、2枚の二軸フィルムを有し、偏光板側の二軸フィルムの面内遅相軸は、その近接する偏光板の吸収軸に平行であり、液晶セル側の二軸フィルムの面内遅相軸は、偏光板側の二軸フィルムの近接する偏光板の透過軸に平行である請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項1】
液晶セルと該液晶セルを挟む上下偏光板とを含み、該液晶セルは、複数本の電極を含む表示セグメント電極と、表示面内で前記表示セグメント電極の外側に配置された1本または複数本の電極を含む背景セグメント電極と、複数本の電極を含む表示コモン電極と、該表示面内で該表示コモン電極の外側に配置された1本または複数本の電極を含む背景コモン電極と、該表示セグメント電極及び背景セグメント電極と該表示コモン電極及び背景コモン電極との間に挟まれた液晶層とを含み、表示パターンが、該表示セグメント電極と表示コモン電極との該表示面内での重なり部分で画定され、該表示面内で該表示パターンの外側が背景を画定し、マルチプレックス駆動される液晶表示素子と、
前記液晶表示素子に光を入射させるバックライトと、
前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、前記表示コモン電極及び前記背景コモン電極を順次走査しながら、前記表示セグメント電極及び前記背景セグメント電極の各電極それぞれにオン電圧またはオフ電圧を印加して、前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動し、前記背景のうち前記表示コモン電極を含む領域を、前記表示コモン電極が選択されたときに、前記背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にするとともに、前記背景のうち前記背景コモン電極を含む領域を、前記背景コモン電極が選択されたときに、前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオフの駆動信号を印加してオフ表示にすることにより、該背景の全体をオフ表示にする制御を行うか、または、前記背景のうち前記表示コモン電極を含む領域を、前記表示コモン電極が選択されたときに、前記背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にするとともに、前記背景のうち前記背景コモン電極を含む領域を、前記背景コモン電極が選択されたときに、前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極にオンの駆動信号を印加してオン表示にすることにより、該背景の全体をオン表示にする制御を行う液晶表示装置。
【請求項2】
前記背景コモン電極が1本である請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記背景コモン電極が複数本であり、複数本の背景コモン電極のすべてが同時に選択されるようにマルチプレックス駆動の走査が行われる請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極が、共通の第1の面上に相互に間隙を隔てて形成されており、前記表示コモン電極及び背景コモン電極が、共通の第2の面上に相互に間隙を隔てて形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記表示セグメント電極と背景セグメント電極との間隙、及び、前記表示コモン電極と背景コモン電極との間隙の距離は、10μm〜50μmの範囲である請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記表示面内で、前記表示セグメント電極と背景セグメント電極との間隙、及び、前記表示コモン電極と背景コモン電極との間隙の少なくとも一部を覆うように、遮光膜が形成されている請求項4または5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極の少なくとも一方に、複数の開口が形成されており、該複数の開口の各々に対向する位置の前記表示コモン電極または背景コモン電極にも、開口が形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記開口を覆う遮光膜が形成されている請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記表示セグメント電極及び背景セグメント電極が、相互に異なる層に形成されており、前記表示面内で、該表示セグメント電極と背景セグメント電極との間に隙間のない領域が存在するか、または、前記表示コモン電極及び背景コモン電極が、相互に異なる層に形成されており、前記表示面内で、該表示コモン電極と背景コモン電極との間に隙間のない領域が存在する請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
液晶セルと該液晶セルを挟む上下偏光板とを含み、該液晶セルは、複数本の電極を含む表示セグメント電極と、表示面内で前記表示セグメント電極の外側に配置された背景セグメント電極と、複数本の電極を含む表示コモン電極と、該表示面内で該表示コモン電極の外側に配置された背景コモン電極と、該表示セグメント電極及び背景セグメント電極と該表示コモン電極及び背景コモン電極との間に挟まれた液晶層とを含み、表示パターンが、該表示セグメント電極と表示コモン電極との該表示面内での重なり部分で画定され、該表示面内で該表示パターンの外側が背景を画定し、該背景セグメント電極と該背景コモン電極とは導通されて同電位であり、マルチプレックス駆動される液晶表示素子と、
前記液晶表示素子に光を入射させるバックライトと、
前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、前記表示コモン電極を順次走査しながら、前記表示セグメント電極の各電極それぞれにオン電圧またはオフ電圧を印加して、前記液晶表示素子をマルチプレックス駆動するとともに、前記背景セグメント電極と背景コモン電極とに所定電位を印加する液晶表示装置。
【請求項11】
前記液晶表示素子は、TNモードであり、前記液晶層内における液晶分子の捩れ角が70°〜130°であり、前記上下偏光板は、平行ニコル配置である請求項1〜10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記液晶表示素子は、STNモードであり、前記液晶セルの液晶層内における液晶分子の捩れ角が180°〜260°であり、さらに、該液晶セルに対する補償セルまたは補償用の光学フィルムを有し、前記上下偏光板は、クロスニコル配置である請求項1〜10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記液晶表示素子は、VAモードであり、前記上下偏光板の吸収軸配置角度は、85°〜95°である請求項1〜10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記液晶表示素子は、前記液晶層の厚さ断面内のリターデーションが570nm〜1500nmであり、さらに、前記上下偏光板と前記液晶セルとの間の一方に、1枚の二軸フィルム、及び、単数または複数のCプレートまたは略Cプレートを含む視角補償部材を有し、該二軸フィルムが偏光板側に配置され、該二軸フィルムの面内遅相軸は、近接する偏光板の透過軸に平行であり、該視角補償部材に略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、該二軸フィルムの面内遅相軸方位と平行である請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記液晶表示素子は、前記液晶層の厚さ断面内のリターデーションが570nm〜1500nmであり、さらに、前記上下偏光板と前記液晶セルとの間の一方に、1枚の二軸フィルムを有し、他方に、単数または複数のCプレートまたは略Cプレートを含む視角補償部材を有し、該二軸フィルムの面内遅相軸は、近接する偏光板の透過軸に平行であり、該視角補償部材に略Cプレートを用いる場合、略Cプレートの面内遅相軸は、それが近接する偏光板の透過軸に平行である請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記液晶表示素子は、前記液晶層の厚さ断面内のリターデーションが570nm〜1500nmであり、さらに、前記上下偏光板と前記液晶セルとの間の一方に、2枚の二軸フィルムを有し、偏光板側の二軸フィルムの面内遅相軸は、その近接する偏光板の吸収軸に平行であり、液晶セル側の二軸フィルムの面内遅相軸は、偏光板側の二軸フィルムの近接する偏光板の透過軸に平行である請求項13に記載の液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2009−133910(P2009−133910A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307844(P2007−307844)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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