説明

液晶表示装置

【課題】透過率を向上させる液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】画素電極Pxと共通電極CTとを絶縁層を介して積層し、該画素電極Pxあるいは該共通電極CTのいずれか一方にスリットSLを形成し、該画素電極Pxおよび該共通電極CTによって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置100において、前記絶縁層は、前記スリットSLの長手方向の端部13a,13b近傍から該端部13a,13bに向かって厚みを増して形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層を介して積層した2つの電極によって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置は、縦電界方式あるいは横電界方式があり、横電界方式の液晶表示装置は縦電界方式のものに比べて広視野角特性が得られるようになっている。この横電界方式のうちでも、画素電極と共通電極とを絶縁層を介して積層し、一方の電極はスリットを形成し、他方の電極は隙間のない一様の平面形状にしたものは、高透過率を要求される場合に用いられる。これは、異なる層にある画素電極と共通電極とを結ぶようにアーチ状の電気力線が、スリットが形成された電極の中央近傍まで分布するためである。
【0003】
ところで、スリットが形成された電極としては、スリットの両端部のうち一端が閉じ、他端が開いている櫛歯状の電極、あるいはスリットの両端部が閉じている電極がある。また、マルチドメイン方式の液晶表示装置にあっては、このような電極のスリットを屈曲させるようにしている。スリットを形成された電極と、隙間のない一様の平面形状の電極とによって電界を発生させた場合、スリットの長手方向の端部近傍あるいはスリットの屈曲部近傍の電界が液晶分子を配向制御するのに困難な分布となる。このため、スリットの長手方向の端部近傍あるいはスリットの屈曲部近傍で液晶分子を配向制御ができない領域(以下、ドメインという。)が発生してしまう。このドメインは、液晶表示装置における透過率を低下させる原因となっている。そこで、ドメインを低減させる液晶表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−276172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された液晶表示装置は、スリットが複数個分の画素にわたって連続することによってスリットの端部の数を減らすように構成している。すなわち、この液晶表示装置は、ドメインの発生原因となるスリットの端部の数を減らすことによってドメインを低減している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の液晶表示装置は、スリットの端部を完全に無くすものではないので、スリットの端部近傍で発生したドメインが透過率を低下させるという問題は解消されていなかった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、透過率を向上させる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる液晶表示装置は、画素電極と共通電極とを絶縁層を介して積層し、該画素電極あるいは該共通電極のいずれか一方にスリットを形成し、該画素電極および該共通電極によって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置において、前記絶縁層は、前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって厚みを増して形成されたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって増す厚みは、漸次増すように形成されたものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記絶縁層は、前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって厚みを増すように予め傾斜加工されたものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記スリットの長手方向の端部近傍は、ドメインの発生領域であることを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる液晶表示装置は、画素電極と共通電極とを絶縁層を介して積層し、該画素電極あるいは該共通電極のいずれか一方にスリットを形成し、該画素電極および該共通電極によって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置において、前記スリットは、屈曲して形成されたものであり、前記絶縁層は、前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって厚みを増して形成されたものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって増す厚みは、漸次増すように形成されたものであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記絶縁層は、前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって厚みを増すように予め傾斜加工されたものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記屈曲部分近傍は、ドメインの発生領域であることを特徴とする。
【0016】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる液晶表示装置は、画素電極と共通電極とを絶縁層を介して積層し、該画素電極あるいは該共通電極のいずれか一方にスリットを形成し、該画素電極および該共通電極によって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置において、前記スリットは、屈曲して形成されたものであり、前記絶縁層は、前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって厚みを増して形成され、且つ前記前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって厚みを増して形成されたものであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって増す厚み、および前記前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって増す厚みは、漸次増すように形成されたものであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記絶縁層は、前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって厚みを増すように、且つ前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって厚みを増すように予め傾斜加工されたものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記スリットの長手方向の端部近傍および前記屈曲部分近傍は、ドメインの発生領域であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記スリットを形成された電極は、櫛歯状の電極であり、前記スリットの長手方向の端部のうち一方は開き、他方は閉じていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、本発明にかかる液晶表示装置は、前記スリットの長手方向の端部は閉じていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる液晶表示装置は、画素電極と共通電極とを絶縁層を介して積層し、該画素電極あるいは該共通電極のいずれか一方にスリットを形成し、該画素電極および該共通電極によって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置において、前記絶縁層は、前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって厚みを増して形成されたものであるので、スリットの長手方向の端部近傍の電界強度が弱くなることによってスリットの長手方向の端部周辺で正常に配向される液晶分子がスリットの長手方向の端部近傍の電界によって発生したドメインの拡大を抑制する。このため、ドメインが縮小し、結果的に透過率を向上させることができる。
【0023】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、画素電極と共通電極とを絶縁層を介して積層し、該画素電極あるいは該共通電極のいずれか一方にスリットを形成し、該画素電極および該共通電極によって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置において、前記スリットは、屈曲して形成されたものであり、前記絶縁層は、前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって厚みを増して形成されたものであるので、スリットの屈曲部分近傍の電界強度が弱くなることによってスリットの屈曲部分周辺で正常に配向される液晶分子がスリットの屈曲部分近傍の電界によって発生したドメインの拡大を抑制する。このため、ドメインが縮小し、結果的に透過率を向上させることができる。
【0024】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、画素電極と共通電極とを絶縁層を介して積層し、該画素電極あるいは該共通電極のいずれか一方にスリットを形成し、該画素電極および該共通電極によって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置において、前記スリットは、屈曲して形成されたものであり、前記絶縁層は、前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって厚みを増して形成され、且つ前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって厚みを増して形成されたものであるので、スリットの長手方向の端部近傍および屈曲部分近傍の電界強度が弱くなることによってスリットの長手方向の端部周辺および屈曲部分周辺で正常に配向される液晶分子がスリットの長手方向の端部近傍および屈曲部分近傍の電界によって発生したドメインの拡大を抑制する。このため、ドメインが縮小し、結果的に透過率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる液晶表示装置の構成を示した模式図である。
【図2】図2は、図1に示した液晶表示パネルの構成を詳細に説明するための図である。
【図3】図3は、図2に示した液晶表示パネルのA1−A2線における断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2にかかる液晶表示装置の液晶表示パネルの構成を詳細に説明するための図である。
【図5】図5は、図4に示した液晶表示パネルのB1−B2−B3線における断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態3にかかる液晶表示装置の液晶表示パネルの構成を詳細に説明するための図である。
【図7】図7は、図6に示した液晶表示パネルのC1−C2−C3線における断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態4にかかる液晶表示装置の液晶表示パネルの構成を詳細に説明するための図である。
【図9】図9は、図8に示した液晶表示パネルのD1−D2−D3線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明にかかる液晶表示装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる液晶表示装置100の構成を示した模式図である。図2は、図1に示した液晶表示パネル10の構成を詳細に説明するための図である。図3は、図2に示した液晶表示パネル10のA1−A2線における断面図である。液晶表示装置100は、横電界方式であり、液晶表示パネル10と、データドライバ2と、走査ドライバ3と、バックライト4と、制御部5とを有する。
【0028】
液晶表示パネル10は、図1に示すように、Y方向に延びる複数本の映像信号線DL(DL1,…,DLn:ただしnは自然数)と、X方向に延びる複数本の走査信号線GL(GL1,…,GLm:ただしmは自然数)とを有する。また、液晶表示パネル10は、複数の走査信号線GLが互いに平行に並んで形成され、複数の映像信号線DLの各映像信号線DLは、走査信号線GLに交差して形成されている。これら映像信号線DLと走査信号線GLとによって囲まれる領域に画素Dが形成されている。
【0029】
液晶表示パネル10は、図3に示すように、TFT基板20と対向基板30との間に液晶分子を含む液晶材料40を封入している。TFT基板20は、ガラス基板などの絶縁基板の上に走査信号線GL、映像信号線DL、薄膜トランジスタTFT、共通電極CT、画素電極Pxが設けられた基板である。より具体的には、TFT基板20は、ガラス基板等の絶縁基板SUB1上に走査信号線GLが設けられている。走査信号線GLは、例えば、アルミなどの導体膜をエッチングして形成する。
【0030】
走査信号線GLの上には、第1の絶縁層PAS1を介して、映像信号線DL(ソース電極SD1)、薄膜トランジスタTFTのドレイン電極SD2が設けられている。
【0031】
映像信号線DL等の上には、第2の絶縁層PAS2を介して共通電極CTが設けられている。共通電極CTは、ITOなどの光透過率が高い導体膜をエッチングして形成し、平面視で画素電極Pxと重なる領域に隙間のない一様の平面形状に形成されている。共通電極CTの上には、第3の絶縁層PAS3を介して画素電極Pxが設けられている。
【0032】
画素電極Pxは、ITOなどの光透過率が高い導体膜をエッチングして形成する。画素電極Pxは、スルーホールTHによってドレイン電極SD2に接続される。画素電極Pxは、平面視で共通電極CTと重なる領域で、映像信号線DLの延在方向を長手とする複数のスリットSLが形成されている。画素電極Pxは、櫛歯状の電極であり、スリットSLの端部のうち一方は開き、他方は閉じている。
【0033】
画素電極Pxは、図2に示すように帯状に形成された複数の帯状部11と、複数の帯状部11の一端を連結する連結部12とを有する。連結部12は、ドレイン電極SD2に接続される。画素電極Pxは、帯状部11と連結部12とによって、スリットSLを形成している。
【0034】
スリットSLは、閉塞端13aおよび開口端13bを有する。閉塞端13aは、スリットSLの長手方向の端部のうち連結部12によって閉じられた端部である。閉塞部13a近傍では、帯状部11だけでなく連結部12の影響を受けた電界分布となっている。すなわち、閉塞部13a近傍はドメインの発生領域となっている。開口端13bは、スリットSLの長手方向の端部のうち開いた端部である。開口端13b近傍では、帯状部11の先端部分の影響を受けた電界分布となっている。すなわち、開口端13b近傍ではドメインの発生領域となっている。
【0035】
対向基板30は、図3に示すようにガラス基板等の絶縁基板SUB2の表面にブラックマトリクスと呼ばれる遮光膜BMおよびカラーフィルタCFが設けられる。遮光膜BMは、例えば、光透過率がほぼゼロの導体膜または絶縁膜をエッチングして、各画素Dを分離するような格子状のパターンを形成する。カラーフィルタCFは、例えば、絶縁膜をエッチングまたは露光、現像して形成し、遮光膜の開口領域に、R(赤色)の表示を担うフィルタ、G(緑色)の表示を担うフィルタ、B(青色)の表示を担うフィルタが周期配列するように形成する。また、遮光膜BMおよびカラーフィルタCFの上には、例えば、オーバーコート層OCを介して、配光膜ORI2が設けられている。
【0036】
データドライバ2は、複数本の映像信号線DLのそれぞれに入力する映像信号(階調電圧)を生成するものである。
【0037】
走査ドライバ3は、複数本の走査信号線GLに走査信号を順次入力する。データドライバ2および走査ドライバ3は、液晶表示パネル10の外周部に接続された図示しないフレキシブル基板等を介して、液晶表示パネル10と電気的に接続されている。
【0038】
バックライト4は、発光ダイオード等によって実現され、液晶表示パネル10の背面側から光を照射するものである。
【0039】
制御部5は、CPU等によって実現され、データドライバ2、走査ドライバ3およびバックライト4を含む液晶表示装置100の各部と電気的に接続され、液晶表示装置100全体の動作を制御するものである。また、制御部5は、外部システムから入力された映像データを一時的に保持する図示しないメモリ等を有するものである。
【0040】
ここで、第3の絶縁層PAS3について具体的に説明する。第3の絶縁層PAS3は、図3に示すように、第1傾斜層PAS31および第2傾斜層PAS32を有する。
【0041】
第1傾斜層PAS31は、共通電極CTの上に形成された絶縁層である。第1傾斜層PAS31は、傾斜加工部TPを有する。傾斜加工部TPは、第1傾斜層PAS31に傾斜面を形成するように加工を施した部分である。第1傾斜層PAS31は、傾斜加工部TPの下端TPbで傾斜が始まり、上端TPtで傾斜が終了している。傾斜加工部TPは、第2傾斜層PAS32を積層する前に予め加工される。
【0042】
傾斜加工部TPは、共通電極CTの表面に対して一定の傾斜角度で傾斜させる。例えば、傾斜加工部TPは、共通電極CTの表面に対して傾斜角度10度で傾斜させる。なお、傾斜加工部TPの傾斜角度は、10度に限定されない。すなわち、ドメインの発生領域に応じて適宜設定すればよい。第1傾斜層PAS31は、閉塞端13a近傍から閉塞端13aに向かって漸次厚みを増して傾斜加工され、開口端13b近傍から開口端13bに向かって漸次厚みを増して傾斜加工されている。
【0043】
第2傾斜層PAS32は、第1傾斜層PAS31に上述した傾斜加工を施した後に第1傾斜層PAS31の上に形成された絶縁層である。
【0044】
第3の絶縁層PAS3は、傾斜加工を施された第1傾斜層PAS31および第1傾斜層PAS31の上に積層された第2傾斜層PAS32によって、閉塞端13a近傍から閉塞端13aに向かって漸次厚みを増して形成され、開口端13b近傍から開口端13bに向かって漸次厚みを増して形成されている。このため、閉塞端13a近傍および開口端13b近傍、すなわちドメインの発生領域では、画素電極Pxおよび共通電極CTによって発生させた電界の電界強度が弱くなる。また、電界強度が、閉塞端13a、開口端13bのそれぞれに向かって除々に弱くなるように変化しているので、液晶分子の配向制御に悪影響を与えないようになっている。
【0045】
なお、第3の絶縁層PAS3は、漸次厚みを増すようにすることが好ましいが、液晶分子の配向制御に悪影響を与えないようにすることができればよい。例えば、閉塞端13a、開口端13bそれぞれの近傍からそれぞれに向かって厚みを増して形成されていればよい。
【0046】
本発明の実施の形態1では、絶縁層PAS3は、閉塞端13a近傍から閉塞端13aに向かって漸次厚みを増して形成され、開口端13b近傍から開口端13bに向かって漸次厚みを増して形成されているので、閉塞端13a近傍および開口端13b近傍の電界強度が弱くなることによって閉塞端13aおよび開口端13b周辺で正常に配向される液晶分子が閉塞端13a近傍および開口端13b近傍の電界によって発生したドメインの拡大を抑制する。このため、ドメインが縮小し、結果的に透過率を向上させることができる。
【0047】
また、本発明の実施の形態1では、閉塞端13aおよび開口端13bの電界強度が弱くなることによって閉塞端13aおよび開口端13b周辺で正常に配向される液晶分子が閉塞端13a近傍および開口端13b近傍の電界によって発生したドメインの拡大を抑制するので、液晶表示パネル10の画面を押した際にもドメインが拡大することを抑えることができるとともに、画面がもとの状態に戻る時間を短縮することができる。
【0048】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について図4および図5を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態2にかかる液晶表示装置200の液晶表示パネル60の構成を詳細に説明するための図である。図5は、図4に示した液晶表示パネル60のB1−B2−B3線における断面図である。本発明の実施の形態1では、スリットSLが直線形状であったが、この実施の形態2では、スリットSLが、屈曲部13cを有する。第3の絶縁層PAS3は、屈曲部13c近傍から屈曲部13cに向かって漸次厚みを増して形成されている。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0049】
画素電極Pxは、図4に示すように、帯状に形成された複数の帯状部11と、複数の帯状部11の一端を連結する連結部12とを有する。帯状部11は、くの字状に屈曲して形成されている。画素電極Pxは、帯状部11と連結部12とによって、くの字状に屈曲したスリットSLを形成している。
【0050】
屈曲部13cは、画素電極Pxの屈曲形状に対応した部分である。このようなくの字状のスリットSLは、マルチドメイン方式の液晶表示装置に広く採用されている。屈曲部13c近傍では、屈曲形状の影響を受けた電界分布となる。すなわち、屈曲部13cではドメインの発生領域となっている。画素電極Pxの上には、図5に示すように、配向膜ORI1が設けられている。なお、スリットSLは、マルチドメイン方式に対応した屈曲部分を有していればよく、くの字状に屈曲することに限定しない。
【0051】
ここで、第3の絶縁層PAS3について具体的に説明する。第3の絶縁層PAS3は、図5に示すように、第1傾斜層PAS33および第2傾斜層PAS34を有する。
【0052】
第1傾斜層PAS33は、共通電極CTの上に形成された絶縁層である。第1傾斜層PAS33は、スリットSLの屈曲部13c近傍から屈曲部13cに向かって漸次厚みを増して傾斜加工されている。
【0053】
第2傾斜層PAS34は、第1傾斜層PAS31に上述した傾斜加工を施した後に第1傾斜層PAS33の上に形成された絶縁層である。
【0054】
第3の絶縁層PAS3は、傾斜加工を施された第1傾斜層PAS33および第1傾斜層PAS33の上に積層された第2傾斜層PAS34によって、スリットSLの屈曲部13c近傍から屈曲部13cに向かって漸次厚みを増して形成されている。このため、屈曲部13c近傍、すなわちドメインの発生領域では、画素電極Pxおよび共通電極CTによって発生させた電界の電界強度が弱くなる。また、電界強度が、屈曲部13cに向かって除々に弱くなるように変化しているので、液晶分子の配向制御に悪影響を与えないようになっている。
【0055】
本発明の実施の形態2では、絶縁層PAS3が屈曲部13c近傍から屈曲部13cに向かって漸次厚みを増して形成されているので、屈曲部13c近傍の電界強度が弱くなることによって屈曲部13c周辺で正常に配向される液晶分子が屈曲部13c近傍の電界によって発生したドメインの拡大を抑制する。このため、ドメインが縮小し、結果的に透過率を向上させることができる。
【0056】
また、本発明の実施の形態2では、画素電極Pxが屈曲しているので、視野角の指向性を軽減することができる。
【0057】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3について図6および図7を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態3にかかる液晶表示装置300の液晶表示パネル70の構成を詳細に説明するための図である。図7は、図6に示した液晶表示パネル70のC1−C2−C3線における断面図である。本発明の実施の形態2では、第3の絶縁層PAS3は、屈曲部13c近傍から屈曲部13cに向かって漸次厚みを増して形成されていたが、この実施の形態3では、さらに閉塞端13a近傍から閉塞端13aに向かって漸次厚みを増して形成され、開口端13b近傍から開口端13bに向かって漸次厚みを増して形成されるようにしている。その他の構成は実施の形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0058】
ここで、第3の絶縁層PAS3について具体的に説明する。第3の絶縁層PAS3は、図7に示すように、第1傾斜層PAS35および第2傾斜層PAS36を有する。
【0059】
第1傾斜層PAS35は、閉塞端13a近傍から閉塞端13aに向かって漸次厚みを増して傾斜加工され、開口端13b近傍から開口端13bに向かって漸次厚みを増して傾斜加工されている。また、第1傾斜層PAS35は、屈曲部13c近傍から屈曲部13cに向かって漸次厚みを増して傾斜加工されている。
【0060】
第2傾斜層PAS36は、第1傾斜層PAS35に上述した傾斜加工を施した後に第1傾斜層PAS35の上に形成された絶縁層である。
【0061】
第3の絶縁層PAS3は、傾斜加工を施された第1傾斜層PAS35および第1傾斜層PAS35の上に積層された第2傾斜層PAS36によって、閉塞端13a近傍から閉塞端13aに向かって漸次厚みを増して形成され、開口端13b近傍から開口端13bに向かって漸次厚みを増して形成されている。また、第3の絶縁層PAS3は、屈曲部13c近傍から屈曲部13cに向かって漸次厚みを増して形成されている。このため、閉塞端13a近傍、開口端13b近傍、屈曲部13c近傍、すなわちドメインの発生領域では、画素電極Pxおよび共通電極CTによって発生させた電界の電界強度が弱くなる。また、電界強度が、閉塞端13a、開口端13bおよび屈曲部13cに向かって除々に弱くなるように変化しているので、液晶分子の配向制御に悪影響を与えないようになっている。
【0062】
本発明の実施の形態3では、絶縁層PAS3は、屈曲部13c近傍から屈曲部13cに向かって漸次厚みを増して形成されているので、実施の形態2と同様の効果を奏するとともに、閉塞端13a近傍から閉塞端13aに向かって漸次厚みを増して形成され、開口端13b近傍から開口端13bに向かって漸次厚みを増して形成されているので、閉塞端13a近傍、開口端13b近傍の電界強度が弱くなることによって閉塞端13aおよび開口端13b周辺で正常に配向される液晶分子が閉塞端13a近傍、開口端13b近傍の電界によって発生したドメインの拡大を抑制する。このため、ドメインが縮小し、結果的に透過率を向上させることができる。
【0063】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4について図8および図9を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態4にかかる液晶表示装置400の液晶表示パネル80の構成を詳細に説明するための図である。図9は、図8に示した液晶表示パネル80のD1−D2−D3線における断面図である。実施の形態3では、液晶パネル70の画素電極PxがスリットSLの長手方向の両端部のうち一端が開放されている櫛歯状の電極であるが、この実施の形態4では、液晶パネル80の画素電極Pxは、スリットSLの長手方向の両端部が閉じた電極である。
【0064】
画素電極Pxは、図8に示すように、帯状に形成された複数の帯状部14と、複数の帯状部14の端部を片側端部ごとに連結する連結部15とを有する。画素電極Pxは、帯状部14と連結部15とによって、スリットSLを形成している。
【0065】
スリットSLは、閉塞端70a,70bおよび屈曲部70cを有する。閉塞端70a,70bは、連結部15によって閉じられた端部である。閉塞部70a,70b近傍では、帯状部14だけでなく連結部15の影響を受けた電界分布となっている。すなわち、閉塞部70a,70b近傍ではドメインの発生領域となっている。屈曲部70cは、画素電極Pxの屈曲形状に対応した部分であり、屈曲形状の影響を受けた電界分布となっている。すなわち、屈曲部70c近傍ではドメインの発生領域となっている。また、第3の絶縁層PAS3は、図9に示すように第1傾斜層PAS37および第2傾斜層PAS38を有する。その他の構成は実施の形態3と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0066】
第1傾斜層PAS37は、図9に示すように、閉塞端70a近傍から閉塞端70aに向かって漸次厚みを増して傾斜加工され、閉塞端70b近傍から閉塞端70bに向かって漸次厚みを増して傾斜加工されている。また、第3の絶縁層PAS3は、屈曲部70c近傍から屈曲部70cに向かって漸次厚みを増して傾斜加工されている。第2傾斜層PAS38は、第1傾斜層PAS37に上述した傾斜加工を施した後に第1傾斜層PAS37の上に形成された絶縁層である。
【0067】
第3の絶縁層PAS3は、傾斜加工を施された第1傾斜層PAS37および第1傾斜層PAS37の上に積層された第2傾斜層PAS38によって、閉塞端70a近傍から閉塞端70aに向かって漸次厚みを増して形成され、閉塞端70b近傍から閉塞端70bに向かって漸次厚みを増して形成されている。また、第3の絶縁層PAS3は、屈曲部70c近傍から屈曲部70cに向かって漸次厚みを増して形成されている。
【0068】
本発明の実施の形態4では、絶縁層PAS3は、閉塞端70a近傍から閉塞端70aに向かって漸次厚みを増して形成され、閉塞端70b近傍から閉塞端70bに向かって漸次厚みを増して形成され、さらに屈曲部70c近傍から屈曲部70cに向かって漸次厚みを増して形成されているので、閉塞端70a,70b近傍および屈曲部70c近傍の電界強度が弱くなることによって閉塞端70a,70bおよび屈曲部70c周辺で正常に配向される液晶分子が閉塞端70a,70b近傍および屈曲部70c近傍の電界によって発生したドメインの拡大を抑制する。このため、画素電極Pxが、スリットSLの両端部が閉じている画素電極Pxであっても、透過率を向上させることができる。
【0069】
なお、本発明の実施の形態1〜4では、スリットSLが映像信号線DLの延在方向を長手とするものを例示したが、これに限らない。例えば、スリットSLが走査信号線GLの延在方向を長手としてもよい。
【0070】
また、本発明の実施の形態1〜4では、画素電極Pxを共通電極CTの上側に設けるものを例示したが、これに限らない。例えば、配置を上下逆にして画素電極Pxを共通電極CTの下側に設けるようにしてもよい。
【0071】
また、本発明の実施の形態1〜4では、画素電極PxがスリットSLを形成され、共通電極CTが隙間のない一様の平面形状であるものを例示したが、これに限らない。例えば、画素電極Pxを隙間のない一様の平面形状とし、共通電極CTにスリットSLを形成するようにしてもよい。
【0072】
また、本発明の実施の形態1〜4では、第1傾斜層PAS31,PAS33,PAS35,PAS37に予め傾斜加工を施すことによって、第3の絶縁層PAS3が漸次厚みを増すようにしたものを例示したが、これに限らず、第3の絶縁層PAS3がスリットSLの端部近傍からスリットSLの端部に向かって、あるいはスリットSLの屈曲部近傍から屈曲部に向かって漸次厚みを増すようにすることができればよい。例えば、第3の絶縁層PAS3が単一層の層構成であり、この単一層の第3の絶縁層PAS3に対して予め傾斜加工を施すようにしてもよい。
【0073】
また、本発明の実施の形態1,2,4では、第3の絶縁層PAS3がスリットSLの両端部に向かって漸次厚みを増すようにしているが、これに限らない。例えば、スリットSLの片側の端部のみに向かって漸次厚みを増すようにしてもよい。
【0074】
また、本発明の実施の形態4では、スリットSLが屈曲するものを例示したが、これに限らず、直線状であってもよい。
【0075】
なお、本発明の実施の形態1〜4によってこの発明が限定されるものではない。
【符号の説明】
【0076】
100,200,300,400 液晶表示装置
2 データドライバ
3 走査ドライバ
4 バックライト
5 制御部
10,60,70,80 液晶表示パネル
11,14 帯状部
12,15 連結部
13a,70a,70b 閉塞端
13b 開口端
13c,70c 屈曲部
20 TFT基板
30, 対向基板
40 液晶材料
DL 映像信号線
GL 走査信号線
D 画素
Px 画素電極
SUB1,SUB2 絶縁基板
PAS1 第1の絶縁層
SC 半導体層
SD1 ドレイン電極
SD2 ソース電極
PAS2 第2の絶縁層
PAS3 第3の絶縁層
PAS31,PAS33,PAS35,PAS37 第1傾斜層
PAS32,PAS34,PAS36,PAS38 第2傾斜層
ORI1,ORI2 配向膜
OC オーバーコート層
CT 対向電極
BM 遮光膜
CF カラーフィルタ
TFT 薄膜トランジスタ
TP 傾斜加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極と共通電極とを絶縁層を介して積層し、該画素電極あるいは該共通電極のいずれか一方にスリットを形成し、該画素電極および該共通電極によって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置において、
前記絶縁層は、前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって厚みを増して形成されたものであることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって増す厚みは、
漸次増すように形成されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記絶縁層は、
前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって厚みを増すように予め傾斜加工されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記スリットの長手方向の端部近傍は、ドメインの発生領域であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
画素電極と共通電極とを絶縁層を介して積層し、該画素電極あるいは該共通電極のいずれか一方にスリットを形成し、該画素電極および該共通電極によって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置において、
前記スリットは、屈曲して形成されたものであり、
前記絶縁層は、前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって厚みを増して形成されたものであることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって増す厚みは、
漸次増すように形成されたものである
ことを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記絶縁層は、
前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって厚みを増すように予め傾斜加工されたものであることを特徴とする請求項5または6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記屈曲部分近傍は、ドメインの発生領域であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項9】
画素電極と共通電極とを絶縁層を介して積層し、該画素電極あるいは該共通電極のいずれか一方にスリットを形成し、該画素電極および該共通電極によって発生させた電界によって液晶分子を配向させる液晶表示装置において、
前記スリットは、屈曲して形成されたものであり、
前記絶縁層は、前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって厚みを増して形成され、且つ前記前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって厚みを増して形成されたものであることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって増す厚み、および前記前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって増す厚みは、
漸次増すように形成されたものである
ことを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記絶縁層は、
前記スリットの長手方向の端部近傍から該端部に向かって厚みを増すように、且つ前記スリットの屈曲部分近傍から該屈曲部分に向かって厚みを増すように予め傾斜加工されたものであることを特徴とする請求項9または10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記長手方向の端部近傍および前記屈曲部分近傍は、ドメインの発生領域であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記スリットを形成された電極は、櫛歯状の電極であり、
前記スリットの長手方向の端部のうち一方は開き、他方は閉じていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記スリットの長手方向の端部は閉じていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−88582(P2012−88582A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236077(P2010−236077)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】