説明

液晶装置、液晶装置の製造方法、電子機器

【課題】 新規な構成で確実に液晶分子を配向規制することができ、しかも信頼性の高い配向膜を備えた液晶装置を提供する。
【解決手段】 本発明の液晶装置は、一対の基板10,20間に液晶層50を挟持してなる液晶装置であって、前記基板10の液晶層50側に配設された酸化物層9と、該酸化物層9の液晶層50側に配設された配向層11とを備え、前記配向層11が、前記酸化物層9と化学的に結合されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、液晶装置の製造方法、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタ等の投射型表示装置における光変調装置として、液晶装置が用いられている。液晶装置は、対向配置された一対の基板に液晶層が挟持されて構成されている。この一対の基板の内側には、液晶層に電圧を印加するための電極が形成されている。また、この電極の内側には、電圧無印加時において液晶分子の配列を制御する配向膜が形成されている。この配向膜として、ポリイミド膜の表面にラビング処理を施したものが用いられている。そして、電圧無印加時と電圧印加時との液晶分子の配列変化に基づいて、液晶装置に画像表示が行われる構成となっている。
【0003】
しかしながら、このようなラビング処理をしたポリイミド配向膜を備えた液晶装置を液晶プロジェクタの光変調装置に採用した場合には、光源から照射される強い光や熱によってポリイミド配向膜が次第に分解されることがあった。そして長期間の使用後には、電圧無印加時に液晶分子を所望のプレチルト角に配列することができなくなるなど液晶分子の配向制御機能が低下して、液晶プロジェクタの表示品質が悪化することがあった。
【0004】
そこで、ラビング処理をしたポリイミド配向膜に代えて、電極上に斜方蒸着により無機材料を形成し、該斜方蒸着膜により液晶分子の配向制御を行う技術が、特許文献1に開示されている。該特許文献1には、斜方蒸着膜を長鎖の高級アルコールに晒すことで、配向性能を高める構成が記載されている。
【特許文献1】特開平11−160711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような斜方蒸着法は手間が掛かり、当該液晶装置の製造コストの面で好ましいものではない。そこで、本発明は、新規な構成で確実に液晶分子を配向規制することができ、信頼性の高い配向膜を備えた液晶装置と、該液晶装置を簡便に製造することが可能な方法を提供することを目的としており、併せて該液晶装置を備えた電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の液晶装置は、一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶装置であって、前記基板の液晶層側に配設された酸化物層と、該酸化物層の液晶層側に配設された配向層とを備え、前記配向層が、前記酸化物層と化学的に結合されてなることを特徴とする。このような液晶装置によると、配向層が酸化物層に化学的に結合されてなるため、剥がれ等が生じ難く非常に安定なものとなり、当該液晶装置の信頼性を高めることが可能となる。
【0007】
具体的には、前記配向層と前記酸化物層とが酸素原子を介して結合されてなるものを例示することができる。さらに具体的には、前記配向層が炭素数5〜20の長鎖アルキル化合物からなり、そのアルキル基と前記酸化物層を構成する酸化物の酸素原子とが化学的に結合してなるものを例示することができる。この場合、長鎖アルキル基により液晶分子を配向規制することが可能となる一方、該長鎖アルキル基と酸化物層とを酸素原子を介して化学的に結合しているため、該配向層は安定で信頼性の高いものとなる。また、アルキル化合物により配向層を構成すれば、高強度の光が照射された場合にもポリイミド膜に比して当該配向層が劣化する等の不具合も生じ難いものとなる。
【0008】
なお、前記酸化物層を例えばITO(インジウム錫酸化物)等の電極にて構成すれば、該電極と配向層との剥がれを防止ないし抑制することが可能となる。また、液晶を駆動する電極とは別に、該電極の液晶層側に酸化物層を設け、その酸化物層と配向層とを化学的に結合させる構成としても良い。この場合、電極の構成によらず、新規な配向層を提供でき、例えば金属単体からなる電極を有した液晶装置においても本発明の構成を採用でき、具体的には透明電極(例えばインジウム錫酸化物)を用いた透過型の液晶装置に限らず、反射電極(例えばアルミニウム)を用いた反射型若しくは半透過型の液晶装置にも本発明を適用することが可能となる。
【0009】
次に、上記目的を達成するために、本発明の液晶装置の製造方法は、一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶装置の製造方法であって、基板上に酸化物層を形成する工程と、該酸化物層上に有機物を塗布する工程と、前記酸化物層上に有機物が塗布された状態で、これに光照射することにより前記酸化物層と前記有機物とを化学的に結合させる工程とを含み、前記有機物として、液晶分子を配向規制可能で、且つ前記光照射により前記酸化物層から生成する活性基に対して反応可能な官能基を有するものを用いることを特徴とする。
【0010】
このような製造方法により、上述した本発明の液晶装置を好適に製造することが可能となる。そして、配向層と酸化物層との化学的結合を生じさせる工程が、酸化物層の光触媒反応を利用したものであるため、温和な条件で簡便に当該結合を生じさせることが可能となる。したがって、製造コストを大幅に削減することが可能となる。
【0011】
具体的な態様として、基板上に電極を形成し、該電極上に前記酸化物層を形成することができる。この場合、電極の構成によらず、酸化物層と配向層とを光照射により化学結合させることが可能となる。また、その他の態様として電極を酸化物にて構成し、当該電極と配向層とを光照射により化学結合させることも可能である。
【0012】
なお、前記有機物としては、一般式R−A若しくはR−B−A(但し、Rはアルキル基(但し、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていても良い)、Aは臭素、塩素、ヒドロキシル基のいずれか、Bはフェニレン−1,4−ジイル基、ビフェニレン−1,4’−ジイル基、シクロヘキサンベンゼン−1,4’−ジイル基(但し、これらの基のうち水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていても良い))にて表される化合物からなるものを用いることができる。この場合、Aで表される基が、光触媒反応によって活性化された酸化物層の酸素原子と結合することとなる。また、形成される配向層はアルキル基を有したものとなり、該アルキル基が配向性を付与することとなる。
【0013】
次に、本発明の電子機器は、上述した液晶装置を備えたことを特徴とする。この構成によれば、信頼性の高い電子機器を提供することができる。具体的には、プロジェクタ等の投射型表示装置の光変調装置として上述の液晶装置を用いることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
[液晶装置]
まず、本発明の液晶装置の実施形態につき、図1ないし図3を用いて説明する。
本実施形態では、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTという)素子を用いたアクティブマトリクス方式の透過型液晶装置を例にして説明する。図1は、当該液晶装置の画像表示領域を構成すべくマトリクス状に配置された複数の画素の等価回路図である。また、図2はTFTアレイ基板に形成された複数の画素の平面図であり、図3は液晶装置の断面構成を模式的に示す図である。
【0016】
図1に示すように、透過型液晶装置の表示領域を構成すべくマトリクス状に配置された複数の画素には、導電体である画素電極9が形成されている。また、その画素電極9の側方には、当該画素電極9への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子30が形成されている。このTFT素子30のソースには、データ線6aが電気的に接続されている。各データ線6aには画像信号S1、S2、…、Snが供給される。なお、画像信号S1、S2、…、Snは、各データ線6aに対してこの順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給してもよい。
【0017】
また、TFT素子30のゲートには、走査線3aが電気的に接続されている。走査線3aには、所定のタイミングでパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmが供給される。なお走査信号G1、G2、…、Gmは、各走査線3aに対してこの順に線順次で印加する。また、TFT素子30のドレインには、画素電極9が電気的に接続されている。そして、走査線3aから供給された走査信号G1、G2、…、Gmにより、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオン状態にすると、データ線6aから供給された画素信号S1、S2、…、Snが、各画素の液晶に所定のタイミングで書き込まれる。
【0018】
液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極9と後述する共通電極との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防止するため、画素電極9と容量線3bとの間に蓄積容量70が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶に入射した光が変調されて階調表示が可能となる。
【0019】
次に、図2を用いて、実施形態の液晶装置の平面構造について説明する。実施形態の液晶装置では、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITOという)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極9(破線9aによりその輪郭を示す)が、マトリクス状に配列形成されている。また、画素電極9の縦横の境界に沿って、データ線6a、走査線3aおよび容量線3bが設けられている。実施形態では、各画素電極9の形成された領域が画素であり、マトリクス状に配置された各画素毎に表示を行うことが可能な構造になっている。
【0020】
容量線3bは、走査線3aに沿って略直線状に伸びる本線部(すなわち平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aとの交点からデータ線6aに沿って前段側(図中上向き)に突出した突出部(すなわち平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とによって構成されている。また、図2中に右上がりの斜線で示した領域には、第1遮光膜11aが形成されている。そして、容量線3bの突出部と第1遮光膜11aとがコンタクトホール13を介して電気的に接続され、後述する蓄積容量が形成されている。
【0021】
次に、図3を用いて、本実施形態の液晶装置の断面構造について説明する。
本実施形態の液晶装置は、ガラスやプラスチック等の透明基板で構成される2枚の基板(素子基板10,対向基板20)を含んで構成され、該一対の基板10,20間に液晶層50が挟持されている。素子基板10の液晶層側にはITO等で構成された透明電極9がマトリクス状に形成されており、透明電極9の更に液晶層側には、液晶分子の配向規制を行う配向膜11が基板全面に形成されている。
【0022】
一方、対向基板20の液晶層側には、基板全面にベタ状の透明電極23が形成されており、透明電極23の更に液晶層側には、液晶分子の配向規制を行う配向膜21が基板全面にベタ状に形成されている。
【0023】
図3の構成においては、一対の基板10,20が、シール材(図示略)を介して貼り合わせられ、その内部に液晶が封入されている。この場合、液晶層50の液晶モードとしてVANモード(Vertical Alignment Nematic)が採用されているが、VANモードの他に、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード等を採用することができる。
【0024】
以下、液晶装置を構成する各部材について詳細に説明する。
まず、素子基板10は、ガラスや石英等の透光性の基板であって、画素電極9に対する電圧印加をスイッチング駆動するTFT素子30(図1参照)を備えている。画素電極9はITO(インジウム錫酸化物)等の透光性且つ導電性の酸化物材料にて構成されており、膜厚が50nm〜100nm程度(例えば85nm)とされている。
【0025】
また、配向膜11は炭素数が5〜20のアルキル基を有する有機材料から構成されており、該長鎖アルキル基により液晶分子を配向規制するものとしている。なお、配向膜11の膜厚は1nm〜10nm程度(例えば5nm)とされている。ここで、配向膜11は、画素電極9の酸化物の酸素原子と化学的に結合されてなり(図4(c)参照)、該画素電極9に対して強固に固着されている。
【0026】
一方、対向基板20は、素子基板10と同様、ガラスや石英等の透光性の基板から構成されており、その液晶層側にITO(インジウム錫酸化物)等の透光性且つ導電性の酸化物材料にて構成された共通電極23が、膜厚50nm〜150nm程度(例えば140nm)に形成されている。また、共通電極23の更に液晶層側には、炭素数が5〜20のアルキル基を有する有機材料から構成される配向膜21が形成されており、その膜厚は1nm〜10nm程度(例えば5nm)とされている。なお、配向膜21及び共通電極23は、対向基板20の全面にベタ状に形成されている。
【0027】
以上のような構成の液晶装置によると、配向膜11,21が長鎖アルキル化合物よりなるため、ポリイミド膜に比して耐光性が高いものとなる。また、配向膜11,21のアルキル基が画素電極9に化学的に結合されてなるため、該配向膜11,21が画素電極9から剥がれる等の不具合も生じ難く、また画素電極9の活性基がアルキル基と結合されることにより、当該画素電極9の安定性も高いものとなる。
【0028】
[液晶装置の製造方法]
次に、上記液晶装置の製造方法について図4を参照して説明する。なお、図4は配向膜11,21の形成工程を説明するための図である。
まず、基板10上にTFT素子30を公知の方法により形成し、その後、これとコンタクトホールを介して接続されるITOをスパッタ法等により基板10上に形成する。そして、形成したITOをフォトリソグラフィ法によりパターニングして画素電極9を得る。
【0029】
その後、該画素電極9上に配向膜11を形成する。具体的には以下のような方法により形成することができる。
まず、直鎖アルコールとしてデカノール(図4中、R−Xで示す(R:アルキル基、X:OH基))を画素電極9上に塗布し、その後、350nmの光(10mW/cm)をデカノールが塗布された画素電極9に対して、水蒸気存在下、20分間照射する(図4(a),(b))。該光照射によりITO中の酸素原子が活性化される(O)。
その後、活性化された酸素原子が求核反応によりアルキル基と反応し、脱水(HX(X:OH基))を伴ってアルキル基とITOとが化学的に結合する。
さらに、基板全体を洗浄することで残存デカノールを除去する、
以上のような光触媒反応により、画素電極9上に配向膜11が化学的に結合された状態で形成されることとなる。
【0030】
一方、対向基板20側については、基板20を用意し、該基板20上にITOをスパッタ法等により形成することで、共通電極23を形成する。そして、該共通電極23上に、配向膜11と同様の光触媒反応を利用して配向膜21を形成する。
【0031】
以上のような工程により配向膜等を形成した各基板10,20を、シール剤を介して貼り合わせる。そして、その後、公知の方法により液晶(ネガ型液晶)を注入し、注入口を封止して上記実施形態の液晶装置を得るものとしている。
【0032】
なお、本実施形態では配向膜11を形成するための有機材料としてデカノールを用いたが、その他にも炭素数がそれぞれ5〜20である直鎖アルコール、アルキルブロマイド(図4中Xが臭素となる)、アルキルクロライド(図4中Xが塩素となる)、p−アルキルフェノール、p−アルキルフェニルブロマイド、p−アルキルフェニルクロライド等を用いることもできる。これら化合物は、一般式R−A若しくはR−B−A(但し、Rはアルキル基(但し、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていても良い)、Aは臭素、塩素、ヒドロキシル基のいずれか、Bはフェニレン−1,4−ジイル基、ビフェニレン−1,4’−ジイル基、シクロヘキサンベンゼン−1,4’−ジイル基(但し、これらの基のうち水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていても良い))にて表されるものである。なお、水素原子をフッ素で置換したものは、配向膜への水分の吸着が生じ難く、当該液晶装置の信頼性を一層高めることができるようになる。
【0033】
また、画素電極9を形成するための材料としてITOを用いたが、その他の透光性且つ導電性酸化物材料、例えばZnOやSnO等を用いても良い。さらに、光触媒反応を生じさせる照射光の波長は、有機物の分解が生じないように350nm〜450nm程度とするのが良い。
【0034】
[液晶装置の変形例]
以下、液晶装置の変形例について図5及び図6を参照しつつ説明する。
図5は、第1の変形例に係る液晶装置の断面模式図であって、上記実施形態の液晶装置の図3に対応する図である。なお、図3の構成とは、素子基板10側の構成が異なるのみであるので、その他の構成については図3と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0035】
図5の液晶装置では、素子基板10の液晶層側にマトリクス状の画素電極9と、該画素電極9を覆う全面ベタ状の絶縁層15と、該絶縁層15上の更に液晶層側に配設された配向膜11とを有している。なお、画素電極9は図3と同様にITOから構成されるものである。ここで、絶縁層15は酸化物(本実施形態ではSiO)からなるものであり、約20nm程度の膜厚にて形成されている。そして、配向膜11は炭素数が5〜20のアルキル基を有する有機材料からなるものであり、該長鎖アルキル基により液晶分子を配向規制するものとしている。また、配向膜11は、膜厚1nm〜10nm程度(例えば5nm)にて形成され、該配向膜11のアルキル基が絶縁層15を構成する酸化物の酸素原子と化学的に結合されて、該画素電極9に対して強固に固着されている。
【0036】
以上のような構成の液晶装置によると、配向膜11が長鎖アルキル化合物よりなるため、ポリイミド膜に比して耐光性が高いものとなる。そして、絶縁層15を別途形成することで、画素電極9の構成によらず、長鎖アルキル基を含む配向膜11を好適に形成することができる。具体的には、画素電極9が酸化物にて構成されていない場合(つまり光触媒反応性を示さない場合)にも、上記配向膜11を好適に形成することができるものとなる。
【0037】
このような配向膜11についても光触媒反応を利用して形成することができる。具体的には、基板上に画素電極9をマトリクス状に形成した後、該画素電極9を含むSiO膜(絶縁層15)を蒸着又はスパッタ法により形成し、そして絶縁層15上に配向膜11を上述した光触媒反応を利用して形成することができる。なお、図3に示したITO上に配向膜11を形成する場合に比して、SiOは光触媒反応性が高いため、一層製造効率が良く、該配向膜11の安定性を高めることができるようになる。
【0038】
なお、絶縁層15を形成するための材料としてSiOを用いたが、その他の透光性酸化物材料、例えばTiOやSiO、MgO、Al、ZrO等を用いることもでき、特にTiOが好ましい。
【0039】
一方、図6は、第2の変形例に係る液晶装置の断面模式図であって、図5とは異なり、画素電極として反射性の電極を用いている。つまり、図6の液晶装置は反射型液晶装置である。具体的には、画素電極91がアルミニウムにて構成されており、対向基板20側から入射した外光が、当該画素電極91で反射されて表示に供されることとなる。したがって、当該液晶装置は直視型の表示装置として用いられる。このように画素電極を光触媒反応を示し難い材料にて構成した場合には、該画素電極上に酸化物からなる絶縁層15を形成することで、この絶縁層15との間で有機物を光触媒反応させ、配向膜11を形成することができる。
【0040】
[投射型表示装置]
次に、本発明の電子機器の具体例である投射型表示装置につき、図7を用いて説明する。図7は、投射型表示装置の要部を示す概略構成図である。この投射型表示装置は、上記液晶装置を光変調装置として備えたものである。
【0041】
図7において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は本実施形態の液晶装置からなる光変調装置、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投射レンズ、831、832、833は入射側の偏光板、834、835、836は出射側の偏光板である(なお、上記実施形態では液晶装置に偏光板14,24が組み込まれている)。光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。
【0042】
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、赤色光用液晶光変調装置822に入射される。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、緑色光用液晶光変調装置823に入射される。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が青色光用液晶光変調装置824に入射される。
【0043】
各光変調装置により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0044】
このように、投射型表示装置の液晶光変調装置822,823,824として、本実施形態の液晶装置を使用すれば、光源810から照射される強い光や熱により配向膜が分解されることはない。また、駆動電圧が低く、長期間の使用後にも焼き付き等が生じることもなく、投射型表示装置の表示品質を低下させることがない。
【0045】
なお、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、上記実施形態ではスイッチング素子としてTFTを備えた液晶装置を例にして説明したが、スイッチング素子として薄膜ダイオード(Thin Film Diode)等の二端子型素子を採用してもよい。また、上記実施形態では透過型液晶装置又は反射型液晶装置を例にして説明したが、本発明の液晶装置を半透過反射型の液晶装置に適用することも可能である。さらに、電子機器として3板式の投射型表示装置を例にして説明したが、本発明の液晶装置を単板式の投射型表示装置や直視型表示装置に適用することも可能である。
【0046】
また、本発明の電子機器の他の具体例として、携帯電話を挙げることができる。この携帯電話は、上記実施形態の液晶装置を表示部に備えたものである。また、その他の電子機器としては、例えばICカード、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態の液晶装置における複数の画素の等価回路図。
【図2】TFTアレイ基板に形成された複数の画素の平面図。
【図3】本実施形態の液晶装置の断面構成を示す断面模式図。
【図4】配向膜の形成プロセスを模式的に示す説明図。
【図5】第1の変形例の液晶装置が備える配向膜の構成を模式的に示す断面図。
【図6】第2の変形例の液晶装置が備える配向膜の構成を模式的に示す斜視図。
【図7】投射型表示装置の要部を示す構成図。
【符号の説明】
【0048】
9…画素電極(電極、酸化物層)、10,20…基板、11,21…配向膜(配向層)、15…絶縁層、23…共通電極(電極、酸化物層)、50…液晶層、91…画素電極(電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶装置であって、
前記基板の液晶層側に配設された酸化物層と、
該酸化物層の液晶層側に配設された配向層とを備え、
前記配向層が、前記酸化物層と化学的に結合されてなることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記配向層が、前記酸化物層と酸素原子を介して結合されてなることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記酸化物層が、前記液晶層を駆動する電極であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記基板と前記酸化物層との間に、前記液晶層を駆動する電極が配設されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記配向層が、炭素数5〜20の長鎖アルキル化合物からなり、そのアルキル基と前記酸化物層を構成する酸化物の酸素とが化学的に結合していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項6】
一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶装置の製造方法であって、
基板上に酸化物層を形成する工程と、
該酸化物層上に有機物を塗布する工程と、
前記酸化物層上に有機物が塗布された状態で、これに光照射することにより前記酸化物層と前記有機物とを化学的に結合させる工程とを含み、
前記有機物として、液晶分子を配向規制可能で、且つ前記光照射により前記酸化物層から生成する活性基に対して反応可能な官能基を有するものを用いることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項7】
前記基板上に電極を形成し、該電極上に前記酸化物層を形成することを特徴とする請求項6に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項8】
前記有機物として、一般式R−A若しくはR−B−A(但し、Rはアルキル基(但し、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていても良い)、Aは臭素、塩素、ヒドロキシル基のいずれか、Bはフェニレン−1,4−ジイル基、ビフェニレン−1,4’−ジイル基、シクロヘキサンベンゼン−1,4’−ジイル基(但し、これらの基のうち水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていても良い))にて表される化合物を用いることを特徴とする請求項6又は7に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液晶装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−38903(P2006−38903A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214007(P2004−214007)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】