説明

液晶装置

液晶セル(10)を有する基板(30)を含み、前記液晶セル(10)は、異方性粒子(25)を含む液晶材料(20)と、前記基板上に設けられた少なくともひとつの伝導性部材(36)、および液晶セルの反対側に設けられた少なくとも一つの導電性部材(34)と、前記異方性粒子(25)のアライメントに影響を与える手段と、を有しており、これにより前記導電性部材間の誘電率が変化する、電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野及び背景技術】
【0001】
本発明は、電子部品、平面型導波路、アンテナ、ビームシェーパー、および電気的に調整可能な誘電体などに関する。本発明のある実施の形態は、テラヘルツ周波数やミリ波領域において用いることに適しており、別の実施形態は、VHF領域、UHF領域及びマイクロ波の領域において用いることに適している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
ある側面において、本発明は、液晶(LC)セルを有する基板を含み、前記液晶セルは、異方性粒子を含む液晶材料と、その基板上に設けられた少なくともひとつの伝導性部材、および液晶セルの反対側に設けられた少なくとも一つの導電性部材と、前記異方性粒子のアライメントに影響を与える手段と、を有しており、これにより前記導電性部材間の誘電率が変化する、電子部品を提供する。
【0003】
前記部品は、周波数アジャイル型のアンテナ、アテアラブルアンテナ、チューナブルフィルタ、偏波面可変アンテナ、電圧制御オシレータ、可変遅延線、自動インピーダンス(automatic impedance)マッチング回路、及びマイクロ波回路のための動的温度補償に用いることができる。
【0004】
別の側面において、本発明は、液晶(LC)セルを有する基板を含み、前記液晶セルは、異方性粒子を含む液晶材料と、その基板上に設けられた少なくともひとつの伝導性部材、および液晶セルの反対側に設けられた少なくとも一つの導電性部材と、前記異方性粒子のアライメントに影響を与える手段と、を有しており、これにより前記導電性部材間の誘電率が変化する、平面型導波路を提供する。
【0005】
さらに別の側面において、本発明は、液晶(LC)セルを有する基板を含み、前記液晶セルは、異方性粒子を含む液晶材料と、その基板上に設けられた少なくともひとつの伝導性部材、および液晶セルの反対側に設けられた少なくとも一つの導電性部材と、前記異方性粒子のアライメントに影響を与える手段と、を有しており、これにより前記導電性部材間の誘電率が変化する、アンテナを提供する。
【0006】
さらにまた別の側面において、本発明は、液晶(LC)セルを有する基板を含み、前記液晶セルは、異方性粒子を含む液晶材料と、その基板上に設けられた少なくともひとつの伝導性部材、および液晶セルの反対側に設けられた少なくとも一つの導電性部材と、前記異方性粒子のアライメントに影響を与える手段と、を有しており、これにより前記導電性部材間の誘電率が変化する、テラヘルツ周波数並みの自由空間伝搬(フリースペース伝搬)のためのビームシェーパーを提供する。
【0007】
前記異方性粒子のアライメントに影響を与える手段は、前記導電性部材を含むものであってもよい。
【0008】
さらにまた別の側面において、本発明は、液晶(LC)セルを含み、前記液晶セルは、異方性粒子を含む液晶材料と、前記異方性粒子のアライメントに影響を与えるための制御電極と、を有する電気的に調整可能な誘電体を提供する。
【0009】
前記液晶セルは、高分子分散型液晶(PDLC)材料を含むものであってもよい。
【0010】
前記異方性粒子は、カーボンナノチューブ(CNT)を含むものであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1a及び図1bを参照すると、液晶セル10は、液晶材料の層20を有しており、この層は層内に拡散された異方性粒子25を有している。この実施態様では、その粒子は、CNTである。他の実施態様では、染料のドーパントを用いてもよい。また、さらに他の実施態様では、前記液晶材料は、CNTを含まないPDLCであってもよい。その液晶材料20は、対向する、概ね平らであり、お互いに並行な位置に位置し、酸化インジウム薄膜(ITO)電極34、36、を有しているガラス基板30、32と結合され、前記基板はスペーサー33、35により距離を設けられている。前記電極は、導電性部材37、38を介して、接続可能である。
【0012】
前記基板の間の距離sは、基板の長さeよりもかなり小さい。
【0013】
図1aにおいて、前記異方性粒子25は、液晶材料20により前記基板に対して概ね並行となるように配置されている。
【0014】
図1bにおいて、液状材料20の分子が傾くように、そしてそれにより、粒子25が平均すると35度基板面に対して傾くけるような回転可能な状態となるように、ITO電極34、36間にフィールドが印加される。35度は、この装置の重要な特徴ではない。異方性粒子のアライメントにより、ITO電極間の誘電率に変化をもたらす。
【0015】
ミリ波領域における市販されている液晶の複屈折率はK C リムらの[Liq Crystal 14(1993) P327−337]により示されるとおり、可視領域の46〜67%であることが知られている。さらに、誘電異方性を強め(Δε=l)、ミリ波領域においてtanδロスがFR4と同等の液晶が合成されている(ワイルら[Electronic Letters 39(24) 1732−4. (2003)]を参照)。
【0016】
本発明による試験的な装置を製造するに当たり、ネマチックホストとカーボンナノチューブ材料を基にして、液層層を作成するためにさまざまな材料系が用いられた。適切な材料を、カーボンナノチューブと液晶とを混合することにより得た。混合物を超音波処理することでカーボンナノチューブを液晶内に分散した。
【0017】
図2を参照すると、従来のテストセルより厚い(1mmまで)テストセル400が、支持基板の上方表面を覆うように横断する銅のグランドプレート410を支持する支持基板401を有している。液晶材料層420は、そのグランドプレートの上に配置されており、カバー層430がスペーサー435により支持されており、これによって液晶セルが形成されている。他のセルではガラスに変えてポリマーが用いられている。頂電極440は、銅のものであり、たとえばマイクロストリップ銅トラックである。頂電極の幅をwとし、液晶セルの厚みをhとすると、マイクロストリップの伝送線(前記頂電極がその一部をなす)のインピーダンスZは、以下のように定義される。
はおよそh/[(w+2h)εε1/2]でありそして、λ=c/[fε1/2]であるとき、電極長さβLはおよそ2pL/λである。
【0018】
液晶を電気的にスイッチ切替し、デバイスを調整するために、以下のような液晶を用いることが示唆される。
すなわち、電気的に制御される複屈折性、及び
2つの周波数ネマチック、である。
【0019】
ある実施態様では、液晶ホスト中に分散された異方性材料のマイクロチューブが、30GHzにおいて液晶の複屈折を50%以上上昇させたという先行研究があるため(AM ラクナーら[Liq. Crystal. 14 (1993) 351−359]を参照)、チューニング領域を拡張するために、液晶ホストにカーボンナノチューブ(CNT)を添加した。
【0020】
所望の性質を有する有機材料中のCNTを得ることは、液晶やポリマーや反応性モノマーを有するCNTコンポジットの、導電性ポリマーやホログラフィーのための光学的非線形材料など、他の用途によい手も重要である。
【0021】
最も高い誘電異方性を得るためには、良質で安定なCNTのアライメントを得ることが必要である。有機メディア(たとえば、液晶や反応性モノマーを含む)におけるCNTの機能化技術、化学修飾(共有結合による(コバレント)機能化技術)、ポリマーによるラッピング(非共有結合による機能化技術)、及び有機メディア用の界面活性剤が用いられた。その他に、吸光や誘電特性のスペクトル様式の詳細がわかりにくいという問題がある。
【0022】
そのような材料から作成された電気−光学デバイスは、たとえば、医療用画像、マイクロ波領域におけるアンテナへの応用、ラジオ、衛星や携帯電話などのレーダーへの応用、といったさまざまな用い方をすることができると考えられる。
【0023】
実施の態様は、(CNTが添加されたものも添加されないものも含めて)ポリマー分散型液晶を用いることにより、マイクロストリップ、ストリップライン、スロットラインおよび他の平面型導波路技術、に適し、既に存在するPTFEやファイバーグラス基板に類似し、マイクロ波回路を搭載できるような“硬い”基板を実現できることを示すものと考えられる。このバージョンによれば、狭いチューニング領域を犠牲にするものの、提案された液晶“セル”型の構造のものと比較して、マイクロ波回路を簡単に製造できることとなる。いくつかのケースでは、たとえばオシレーターの詳細なチューニングのように、チューニング領域が狭い方が望ましいこともありうる。
【0024】
無線LAN及び/又は携帯電話における応用の例は、たとえば、あるエリアにおいてユーザ密度が高くすることができるような、ステラブルアンテナである。電話の場合、ステラブルアンテナを用いることで、ユーザが電磁波にさらされる事態を軽減できる。他の、これに限定されない、本発明の応用例は、マイクロストリップ及びストリップライン回路、位相変調器、マッチング回路、チューナブルパッチアンテナ、ステラブルパッチアンテナ、フィルタ、及び計算機である。
【0025】
図3及び図4を参照すると、パッチアンテナ100は、銅電極114をその上面に有する誘電性物質110を有する。液晶セル120は、基板110の上面側に銅電極114上に配置される。それは、フェライト粒子を含む糊状密閉部材(glue seal)を含むスペーサー124によりその四面が結合されている。液晶材料128は、活動的な材質(アクティブマテリアル)を形成し、この実施形態ではメルク社のBL037であるが、CNTを含む。
【0026】
液晶セルの上面には銅電極122が配置され、これはパッチを形成する。電極122は、許容できるQ−ファクタを達成するために、動作周波数にわたって導電ロスを最小限にするために適切な厚みとされる。
【0027】
接続コンダクタ140により、パッチ122からエネルギーを印加でき、又は抽出できる。
【0028】
フェライト粒子を用いることで、磁場境界を形成でき、これはクロストークを軽減する機能を有する。たとえば、ギガヘルツなどの高周波がパッチ122に印加され、低周波(たとえば、DC)バイアスがCNT添加液晶128の誘電率を制御するために印加される。バイアスは、本当にDCでもよく、液晶材料の応答時間はミリ秒であることを考慮した上でポテンシャルを変える低周波であってもよい。
【0029】
次に図5について、第1の導波路又は伝播線220が、アース板214をその上面に有する誘電基板210上に形成され、銅コンダクタ226がアース板を形成している。CNT添加液晶材料228は、スペーサ224により境界分けされ、さらに銅の線電極222をその下面に有する上方基板218と接する、セルを形成する。
【0030】
この態様のものの操作は、第一の実施態様のものの操作と類似している。
【0031】
図6は、第2の伝播線に関する実施態様を示す。この実施態様では、線電極222が、液晶材料により、その上表面と下表面とにおいて結合され、2つのアース板220、224の間にある。他の導波路や類似した構造を有するものも考えられる。
【0032】
次に図7について、ビームシェーパー300は、背面基板301上に、平面状に配置された、およそ正方形のパッチアンテナ電極310からなる。いくつかの実施態様では、たとえば、4つ又は5つといった、少しの数だけのアンテナエレメントが必要とされる。
【0033】
図8において、2つの周波数材料を用いる場合に関連する図1の態様の代替となる構成例を示す。その図は、低周波と高周波(液晶材料のレスポンス時間よりもずっと早いもの)のみが印加された状態を示す。
【0034】
図8aでは、異方性粒子25は、互いに平行なガラス基板30、32に対して垂直となっている。この状態は、ITO電極34,36間に印加された低周波電気場によって惹き起こされたものである。垂直に近いアライメントの様子がまさに描画されている。
【0035】
図8bでは、異方性粒子25は、お互いに平行なガラス基板30、32とほぼ並行するようになっている。この状態は、ITO電極34,36間に印加された高い周波数の電気場によって惹き起こされたものである。
【0036】
ある実施態様では、それぞれのパッチ電極310は、その下に独自の液晶セルを有し、その他のそれほど好ましくないバージョンでは、単一の液晶セルを有する。コンダクタ304a−dは、それぞれのパッチ電極に信号とバイアスの両方が印加される。バイアスにより、信号の分散を変化させ、放射線を知られたように向けるために、それぞれのパッチの誘電率の値がセットされる。本発明の実施の態様が説明された。本発明はしかしながら、上記実施の態様に限定されるものではない。
【0037】
本発明は、本明細書に添付する図面によってより明確に理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1a】図1aは、“フィールドなし”の場合の異方性粒子を示す液晶セルの概略図である。
【図1b】図1bは、“フィールドあり”の場合の異方性粒子を示す液晶セルの概略図である。
【図2】図2は、テストセルの断面図である。
【図3】図3は、本発明のパッチアンテナに関する実施態様を示す斜視図である。
【図4】図4は、図2のIII−III’に沿った断面図である。
【図5】図5は、本発明のストリップライン導波路に関する実施態様を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明のビームシェーパーに関する実施態様を示す断面図である。
【図7】ビームシェーパー
【図8a】2つの周波数材料を用いる場合に関連する図1の態様の代替となる構成例
【図8b】2つの周波数材料を用いる場合に関連する図1の態様の代替となる構成例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶セルを有する基板を含み、前記液晶セルは、異方性粒子を含む液晶材料と、前記基板上に設けられた少なくともひとつの伝導性部材、および液晶セルの反対側に設けられた少なくとも一つの導電性部材と、前記異方性粒子のアライメントに影響を与える手段と、を有しており、
これにより前記導電性部材間の誘電率が変化する、
電子部品
【請求項2】
液晶セルを有する基板を含み、前記液晶セルは、異方性粒子を含む液晶材料と、前記基板上に設けられた少なくともひとつの伝導性部材、および液晶セルの反対側に設けられた少なくとも一つの導電性部材と、前記異方性粒子のアライメントに影響を与える手段と、を有しており、
これにより前記導電性部材間の誘電率が変化する、
平面型導波路。
【請求項3】
液晶セルを有する基板を含み、前記液晶セルは、異方性粒子を含む液晶材料と、前記基板上に設けられた少なくともひとつの伝導性部材、および液晶セルの反対側に設けられた少なくとも一つの導電性部材と、前記異方性粒子のアライメントに影響を与える手段と、を有しており、
これにより前記導電性部材間の誘電率が変化する、
アンテナ。
【請求項4】
液晶セルを有する基板を含み、前記液晶セルは、異方性粒子を含む液晶材料と、前記基板上に設けられた少なくともひとつの伝導性部材、および液晶セルの反対側に設けられた少なくとも一つの導電性部材と、前記異方性粒子のアライメントに影響を与える手段と、を有しており、
これにより前記導電性部材間の誘電率が変化する、
テラヘルツ周波数波の自由空間伝搬のためのビームシェーパー。
【請求項5】
液晶セルを含み、前記液晶セルは、異方性粒子を含む液晶材料と、前記異方性粒子のアライメントに影響を与えるための制御電極と、を有する電気的に調整可能な誘電体。
【請求項6】
前記異方性粒子のアライメントに影響を与える手段は、前記導電性部材を含む、請求項1に記載の電子部品、請求項2に記載の平面型導波路、請求項3に記載のアンテナ、又は請求項4に記載のビームシェーパー。
【請求項7】
前記液晶セルは、PDLC材料を含む、請求項1に記載の電子部品、請求項2に記載の平面型導波路、請求項3に記載のアンテナ、請求項4に記載のビームシェーパー又は請求項5に記載の電気的に調整可能な誘電体。
【請求項8】
前記異方性粒子は、CNTを含む、請求項1に記載の電子部品、請求項2に記載の平面型導波路、請求項3に記載のアンテナ、請求項4に記載のビームシェーパー又は請求項5に記載の電気的に調整可能な誘電体。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【公表番号】特表2009−534974(P2009−534974A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507146(P2009−507146)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001488
【国際公開番号】WO2007/122409
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(501484851)ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
【Fターム(参考)】