説明

液滴吐出特性測定方法、液滴吐出特性測定装置、液滴吐出装置、および電気光学装置の製造方法

【課題】 液滴の飛行状態の良否や液滴重量の精度を容易に、かつ同時に判定することのできる液滴吐出特性測定方法、液滴吐出特性測定装置、液滴吐出装置、およびこの液滴吐出装置を用いた電気光学装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】 液滴吐出特性測定装置80において、液滴吐出ヘッド22とゲート部材81とを対向させた状態で、ノズル27から液滴M0を吐出する。その際、液滴M0は、その飛行特性が正常であれば液滴通過穴82を通過して、液滴捕集部材85に到達する。これに対して、液滴M0の飛行特性に不具合があれば、液滴M0の一部あるいは全部が液滴通過穴82から外れるので、ゲート部材81の表面811に着弾してしまう。それ故、液滴通過穴82を通過した液滴M0の重量を求めれば、液滴M0の重量が正常か否かを判定できるとともに、液滴M0の飛行特性(着弾位置)が正常や否かを判定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドのノズルから吐出された液滴の吐出特性を測定する液滴吐出特性測定方法、液滴吐出特性測定装置、液滴吐出装置、および電気光学装置の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、液滴吐出特性の測定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出ヘッドのノズルから液滴を吐出してワーク上に定着させる液滴吐出装置としては、インクを吐出して紙などの媒体上に画像や文字等の記録を行うものの他、液状組成物を液滴吐出ヘッドのノズルから液晶装置用基板に吐出して液晶装置のカラーフィルタを形成するものが案出されている。かかる液滴吐出装置では、基板に対する液滴の着弾位置、および液滴量に高い精度が求められていることから、レーザを利用して液滴の飛行特性を計測するとともに、液滴重量を計測して吐出特性を測定することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−94629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で吐出特性を測定するには、高価な光学系が必要であるため、コストが嵩むという問題点がある。また、一組のレーザ光源部とレーザ受光部では、液滴の平面的な飛行状態しか観測できないため、液滴の飛行状態を正確に観測するためには、複数組のレーザ光源部とレーザ受光部が必要であり、この点でも、コストが嵩むという問題点がある。
【0004】
以上の問題を鑑みて、本発明の課題は、コストが嵩む光学系を用いることなく、液滴の飛行状態の良否や液滴重量の精度を容易に、かつ同時に判定することのできる液滴吐出特性測定方法、液滴吐出特性測定装置、液滴吐出装置、およびこの液滴吐出装置を用いた電気光学装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明では、液滴吐出ヘッドのノズルの液滴吐出特性を測定する液滴吐出特性測定方法において、前記液滴の着弾位置許容範囲を規定する液滴通過穴を備えたゲート部材を前記ノズルに対向する位置に配置した状態で、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出し、前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めることにより、液滴吐出特性の良否を判定することを特徴とする。
【0006】
ノズルから吐出された液滴は、その飛行特性が正常であれば、予め規定されている着弾位置許容範囲内に着弾し、その飛行特性に不具合があれば、液滴の一部あるいは全部が着弾位置許容範囲から外れた位置に着弾する。従って、着弾位置許容範囲を規定する液滴通過穴を備えたゲート部材に向けてノズルから液滴を吐出し、液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めれば、液滴の重量が正常か否かを判定できる。また、その重量が適正か否かを判定すれば、液滴の飛行特性(着弾位置)が正常や否かを判定できる。それ故、コストが嵩む光学系を用いることなく、液滴の飛行状態の良否や液滴重量の精度を容易に、かつ同時に判定することができる。
【0007】
本発明において、前記液滴吐出ヘッドには前記ノズルが複数、所定のピッチで形成されている場合が多く、この場合、前記ゲート部材には、前記ノズルに対応する位置に前記液滴通過穴が複数、形成されていることが好ましい。
【0008】
本発明において、前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めるにあたっては、前記ノズルから前記ゲート部材に対して複数回、液滴を吐出することが好ましい。ノズルから吐出される液滴の重量は、一般に数ng〜数10ng程度であるので、液滴吐出特性の測定を行う際、ノズルから液滴を複数回、吐出させ、複数回分の液滴の総重量から1滴当たりの重量を算出すれば、測定誤差を小さくすることができる。
【0009】
本発明において、前記ゲート部材に対して前記ノズル側とは反対側に、前記液滴通過穴を通過してきた液滴を捕集する液滴捕集部材を配置した状態で前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出することが好ましい。
【0010】
本発明において、前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めるにあたっては、例えば、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出する前の前記ゲート部材と前記液滴捕集部材の総重量を求めておき、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出した後、前記ゲート部材の表面に付着した液滴を除去し、しかる後に、前記ゲート部材と前記液滴捕集部材の総重量を求め、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出する前後の前記総重量の増加量を求めることにより、前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求める。
【0011】
この場合、前記ゲート部材として、少なくとも前記表面が前記液滴に対して撥液性を備えているものを用いることが好ましい。このように構成すると、前記ゲート部材の表面に付着した液滴を容易に、かつ確実に除去することができる。
【0012】
また、前記ゲート部材の表面を自動的に払拭可能な払拭装置を設け、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出した後、前記払拭装置によって、前記ゲート部材の表面に付着した液滴を除去することが好ましい。
【0013】
本発明において、前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めるにあたっては、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出する前の前記液滴捕集部材の重量を求めておき、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出した後、前記液滴捕集部材の重量を求め、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出する前後の前記液滴捕集部材の重量増加量を求めることにより、前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めることが好ましい。このように構成すると、ゲート部材の表面に付着した液滴を除去しなくても、前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めることができる。ここで、ノズルからゲート部材に向けて液滴を吐出する際、ゲート部材を液滴捕集部材に重ねて配置してもよいが、ゲート部材を液滴捕集部材から離れた位置に配置すれば、液滴通過穴を通過して液滴捕集部材に到達した液滴がゲート部材に付着して測定精度が低下することを防止することができる。
【0014】
本発明において、前記ゲート部材として、板状のものを用いることが好ましい。ゲート部材が板状であれば、ゲート部材の液滴通過穴の内部に液滴が付着しにくい。従って、ゲート部材の液滴通過穴の内部に付着した液滴について、その飛行状態が正常であったと見なすか不具合があったと見なすかに起因する測定精度の低下を抑えることができる。
【0015】
本発明に係る液滴吐出特性測定方法を行うための液滴吐出特性測定装置では、前記ノズルから液滴を吐出する際に前記ノズルに対向する位置に配置され、前記液滴の着弾位置許容範囲を規定する液滴通過穴を備えたゲート部材と、該ゲート部材に対して前記ノズル側とは反対側に配置され、前記液滴通過穴を通過してきた液滴を捕集する液滴捕集部材と有している。
【0016】
さらに、液滴吐出特性測定装置が、前記ゲート部材と前記液滴捕集部材の総重量、あるいは前記液滴捕集部材の重量を形成するための秤量装置を備えていることが好ましい。このように構成すると、秤量装置を別途、準備する必要がない。
【0017】
このような液滴吐出特性測定装置を備えた液滴吐出装置は、例えば、電気光学装置用基板上に前記液滴を吐出して、当該電気光学装置用基板上に画素構成要素を形成する電気光学装置の製造方法に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した液滴吐出装置の一例を説明する。
【0019】
(液滴吐出装置の全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の全体構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す電気光学素子製造装置の液滴吐出装置の要部を示す部分斜視図である。なお、液滴吐出装置によってカラー印刷やカラーの表示装置を製造する場合、通常、R、G、Bの3色の絵素を形成する必要がある。従って、液滴吐出装置については、1台で各色に対応する液滴を吐出可能に構成するか、所定の色に対応するものを複数台、準備することになるが、以下の説明では、後者において複数、準備した液滴吐出装置のうちの1台を説明する。
【0020】
図1および図2において、液滴吐出装置10は、各種の液状物を基板などのワーク上の所望位置に液滴として吐出するものであり、液状物を各種ワーク上に液滴として吐出するノズルを備える複数の液滴吐出ヘッド22と、これらの液滴吐出ヘッド22を保持する共通のキャリッジ26とを有している。また、液滴吐出装置10は、液滴吐出ヘッド22の位置を制御するヘッド位置制御装置17と、ワークとしての基板12の位置を制御する基板位置制御装置18と、液滴吐出ヘッド22を基板12に対して主走査移動させる主走査駆動手段としての主走査駆動装置19と、液滴吐出ヘッド22を基板12に対して副走査移動させる副走査駆動手段としての副走査駆動装置21と、基板12を液滴吐出装置10内の所定の作業位置へ供給する基板供給装置23と、液滴吐出装置10の全般の制御を司るコントロール装置24とを有しており、ヘッド位置制御装置17、基板位置制御装置18、主走査駆動装置19、および副走査駆動装置21によって、液滴吐出ヘッド22(キャリッジ26)と基板12とを相対移動させる移動手段が構成されている。ヘッド位置制御装置17、基板位置制御装置18、主走査駆動装置19、および副走査駆動装置21はベース9の上に設置され、それらの各装置は必要に応じてカバー14によって覆われる。
【0021】
図2に示すように、ヘッド位置制御装置17は、液滴吐出ヘッド22を面内回転させるαモータ44と、液滴吐出ヘッド22を副走査方向Yと平行な軸線回りに揺動回転させるβモータ46と、液滴吐出ヘッド22を主走査方向と平行な軸線回りに揺動回転させるγモータ47と、そして液滴吐出ヘッド22を上下方向へ平行移動させるZモータ48とを備えている。基板位置制御装置18は、基板12を載せるテーブル49と、そのテーブル49を矢印θのように面内回転させるθモータ51とを備えている。主走査駆動装置19は、主走査方向Xへ延びるXガイドレール52と、パルス駆動されるリニアモータを内蔵したXスライダ53とを備えている。Xスライダ53は、内蔵するリニアモータが作動するときにXガイドレール52に沿って主走査方向へ平行移動する。副走査駆動装置21は、副走査方向Yへ延びるYガイドレール54と、パルス駆動されるリニアモータを内蔵したYスライダ56とを備えている。Yスライダ56は、内蔵するリニアモータが作動するときにYガイドレール54に沿って副走査方向Yへ平行移動する。
【0022】
Xスライダ53およびYスライダ56内においてパルス駆動されるリニアモータは、該モータに供給するパルス信号によって出力軸の回転角度制御を精細に行うことができ、従って、Xスライダ53に支持された液滴吐出ヘッド22の主走査方向X上の位置やテーブル49の副走査方向Y上の位置などを高精細に制御できる。なお、液滴吐出ヘッド22やテーブル49の位置制御は、パルスモータを用いた位置制御に限られず、サーボモータを用いたフィードバック制御や、その他任意の制御方法によって実現することもできる。
【0023】
再び図1において、基板供給装置23は、基板12を収容する基板収容部57と、基板12を搬送するロボット58とを備えている。ロボット58は、床、地面などといった設置面に置かれる基台59と、基台59に対して昇降移動する昇降軸61と、昇降軸61を中心として回転する第1アーム62と、第1アーム62に対して回転する第2アーム63と、第2アーム63の先端下面に設けられた吸着パッド64とを備えており、吸着パッド64は、空気吸引などによって基板12を吸着できる。
【0024】
また、液滴吐出ヘッド22の近傍には、その液滴吐出ヘッド22と一体に移動するヘッド用カメラ79が配置されている。なお、ベース9上に設けた支持装置(図示せず)には基板用カメラ(図示せず)が配置され、基板用カメラは、基板12を撮影可能である。
【0025】
ここで、主走査駆動装置19によって駆動されて主走査移動する液滴吐出ヘッド22の軌跡下であって副走査駆動装置21の一方の脇位置には、キャッピング機構76およびクリーニング機構77が配置され、他方の脇位置には、後述する液滴吐出特性測定装置80が配置されている。キャッピング機構76は、液滴吐出ヘッド22が待機状態にあるときにノズルの乾燥を防止するための機構である。クリーニング機構77は、液滴吐出ヘッド22を洗浄するための機構である。
【0026】
(液滴吐出ヘッドの構成)
図3は、液滴吐出ヘッド22の構成を示す説明図である。図4(A)、(B)はそれぞれ、液滴吐出ヘッド22の内部構造を模式的に示す説明図である。なお、液滴吐出ヘッド22は、共通のキャリッジ26に複数、保持されているが、それらは基本的に同一構成であるので、その1つを例に挙げて説明する。
【0027】
図3に示すように、液滴吐出ヘッド22は、多数のノズル27を列状に並べることによって形成されたノズル列28を備えている。ノズル27の数は、例えば180個であり、ノズル27の穴径は例えば28μmであり、ノズル27間のノズルピッチは例えば141μmである。なお、液滴吐出ヘッド22の基板12に対する主走査方向Xおよびそれに直交する副走査方向Yは図示の通りである。すなわち、液滴吐出ヘッド22は、そのノズル列28が主走査方向Xと交差する方向へ延びるように位置設定され、この主走査方向Xへ平行移動する間に、液状物を複数のノズル27から選択的に吐出することにより、基板12内の所定位置に液滴を着弾させる。また、液滴吐出ヘッド22は副走査方向Yへ所定距離だけ平行移動することにより、液滴吐出ヘッド22による主走査位置を所定の間隔でずらせることができる。
【0028】
図4(A)、(B)に示すように、液滴吐出ヘッド22は、例えば、ステンレス製のノズルプレート29と、それに対向する振動板31と、それらを互いに接合する複数の仕切部材32とを有している。ノズルプレート29と振動板31との間には、仕切部材32によって複数の圧力発生室33と、液溜り34とが形成されている。複数の圧力発生室33と液溜り34とは通路38を介して互いに連通している。振動板31の適所には液状物供給穴36が形成され、この液状物供給穴36に液状物供給装置37が接続される。この液状物供給装置37は吐出されることとなる液状物Mを液状物供給穴36へ供給する。供給された液状物Mは液溜り34に充満し、さらに通路38を通って圧力発生室33に充満する。
【0029】
ノズルプレート29には、圧力発生室33から液状物Mをジェット状(液滴M0)に噴射するためのノズル27が設けられており、そのノズル27が開口しているノズル形成面271は平坦面とされている。振動板31の圧力発生室33を形成する面の裏面には、この圧力発生室33に対応させて圧力発生素子39が取り付けられている。この圧力発生素子39は、図5(B)に示すように、圧電素子41ならびにこれを挟持する一対の電極42aおよび42bを備えている。圧電素子41は電極42aおよび42bへの通電によって矢印Cで示す外側へ突出するように撓み変形し、これにより圧力発生室33の容積が増大する。すると、増大した容積分に相当する液状物Mが液溜り34から通路38を通って圧力発生室33へ流入する。
【0030】
次に、圧電素子41への通電を解除すると、この圧電素子41と振動板31とは共に元の形状へ戻る。これにより、圧力発生室33も元の容積に戻るため、圧力発生室33の内部にある液状物Mの圧力が上昇し、ノズル27から基板12へ向けて液状物Mが液滴M0となって噴出する。なお、ノズル27の周辺部には、液滴M0の飛行曲がりやノズル27の穴詰まりなどを防止するために、例えばNi−テトラフルオロエチレン共析メッキ層からなる撥液状物層43が設けられる。
【0031】
(液滴吐出特性測定機構の構成)
図5は、図1に示す液滴吐出装置が備える液滴吐出特性測定装置80の構成を示す説明図である。図6(A)、(B)はそれぞれ、液滴吐出特性測定装置80によりノズル27から吐出される液滴の吐出特性を測定する方法を示す説明図である。
【0032】
図1、図2、および図5において、本形態の液滴吐出特性測定装置80は、着弾位置許容範囲に着弾した液滴M0の重量を求めることにより、液滴吐出ヘッド22の液滴吐出特性の良否を判定するものであり、液滴M0の着弾位置許容範囲を規定する液滴通過穴82を備えた板状のゲート部材81と、このゲート部材81に対してノズル27側とは反対側に配置される液滴捕集部材85と、ゲート部材81と液滴捕集部材85の総重量、あるいは液滴捕集部材85の重量を形成するための電子天秤86(秤量装置)とを有している。
【0033】
ゲート部材81は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の板であり、その全体が撥液性を備えている。また、ゲート部材81において、液滴通過穴82は列状に形成され、その数は、図3および図4を参照して説明したノズル27と同一の180個である。また、液滴通過穴82のピッチは、ノズル27のピッチと等しく、141μmである。従って、液滴吐出ヘッド22を主走査方向Xに移動させて液滴吐出特性測定装置80の真上位置まで移動させると、液滴吐出ヘッド22のノズル形成面271とゲート部材81が対向し、この状態で、ノズル27の中心位置と液滴通過穴82の中心位置とが平面的に一致することになる。ここで、ゲート部材81に形成した液滴通過穴82の穴径は、基板12に対する液滴M0の着弾位置の許容範囲に相当する大きさに設定されている。
【0034】
液滴捕集部材85は、ゲート部材81の液滴通過穴82を通過してきた液滴M0を捕集するためのものであり、液滴保持層83と、この液滴保持層83を裏側で支持する支持板84とからなる。液滴保持層83は、ポリエチレンテレフタラート(PET)製のワイプ布などから構成され、液滴通過穴82を通過してきた液滴M0を受けた後、液滴M0を保持する。液滴保持層83は、支持板84は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などから構成されている。
【0035】
(液滴吐出特性の測定方法1)
このように構成した液滴吐出特性測定装置80を用いてノズル27の液滴吐出特性を測定する方法を以下に説明する。ここで、ノズル27から吐出される液滴M0は、1滴当たりの重量が数ng〜数10ng程度であり、1滴当たりの重量を電子天秤86で直接、測定することは精度上、困難である。そこで、以下に説明する方法では、全てのノズル27から液滴M0を複数回、吐出させ、その液滴総重量から、1滴当たりの重量を算出する方法を採用している。
【0036】
本形態では、まず、図6(A)に示すように、液滴吐出ヘッド22のノズル形成面271とゲート部材81とを所定の距離を介して対向させ、かつ、ノズル27の中心位置と液滴通過穴82の中心位置とを平面的に一致させる。その際、ゲート部材81の表面811については、予め異物を拭き取っておく。
【0037】
次に、各ノズル27から液滴M0を複数回、吐出する。その際、液滴M0は、その飛行特性が正常であれば、予め規定されている着弾位置許容範囲内に着弾するのに対して、飛行特性に不具合があれば、液滴M0の一部あるいは全部が着弾位置許容範囲から外れた位置に着弾する。従って、ゲート部材81に向けてノズル27から液滴M0を吐出した際、液滴M0は、その飛行特性が正常であれば液滴通過穴82を通過して、液滴捕集部材85の液滴保持層83に到達する。これに対して、液滴M0の飛行特性に不具合があれば、図6(B)に示すように、液滴M0の一部あるいは全部が液滴通過穴82から外れるので、ゲート部材81の表面811に着弾し、液滴通過穴82を通過しない。それ故、ゲート部材81に向けてノズル27から液滴M0を吐出した後、液滴通過穴82を通過した液滴M0の重量を求めれば、液滴M0の重量が正常か否かを判定できるとともに、その重量が適正か否かを判定すれば、ノズル27からの吐出重量、および液滴M0の飛行特性(着弾位置)が正常や否かを判定できる。
【0038】
そこで、本形態では、ノズル27からゲート部材81に向けて液滴M0を吐出する前のゲート部材91と液滴捕集部材85の総重量W11を電子天秤86によって求めておき、ノズル27からゲート部材81に向けて液滴M0を吐出した後、ゲート部材81の表面811に付着した液滴M0を拭き取り、しかる後に、ゲート部材81と液滴捕集部材85の総重量W12を電子天秤86によって求める。
【0039】
次に、ノズル27からゲート部材91に向けて液滴を吐出する前後の総重量W11、W12の増加量Wt(W12−W11)を求めることにより、液滴通過穴82を通過した液滴M0の総重量Wtを求める。
【0040】
次に、液滴通過穴82を通過した液滴M0の総重量Wtをノズル27の数、および各ノズル27からの吐出回数で割れば、液滴通過穴82を通過して液滴捕集部材85に到達した液滴M0、1つ当たりの重量W1を算出することができる。従って、この重量W1が所定範囲内であれば、ノズル27からの液滴吐出量、およびその飛行状態が正常であると判定することができる。
【0041】
例えば、本願発明者等が行った実験において、液滴吐出ヘッド22の各ノズル27から正常な条件で液滴M0を10万発ずつ吐出した場合と、不具合のある条件で液滴M0を10万発ずつ吐出した場合とを比較したところ、正常な条件ではゲート部材81の表面811が濡れることがないのに対して、不具合のあるな条件ではゲート部材81の表面811が濡れてしまうという結果が得られた。また、液滴通過穴82を通過して液滴捕集部材85に到達した液滴M0、1つ当たりの重量W1は、正常な条件では13ngであったのに対して、不具合のある条件では9ngであった。
【0042】
このように本形態によれば、コストが嵩む光学系を用いることなく、液滴M0の飛行状態の良否(着弾位置の精度)や液滴重量の精度を容易に、かつ同時に判定することができる。
【0043】
また、本形態では、ゲート部材91として表面が撥液性のものを用いているため、ノズル27からゲート部材81に向けて液滴M0を吐出した後、ゲート部材81の表面811に付着した液滴M0を除去するのが容易である。
【0044】
さらに、本形態では、ゲート部材91が板状で薄く、かつ、その全体が撥液性であるため、液滴通過穴82の内面に液滴M0が付着しにくいので、液滴通過穴82の内面に付着した液滴M0の重量に起因する測定誤差が発生しにくい。但し、このような誤差が発生しないようにするには、ゲート部材91において、液滴通過穴82の表面側の開口位置で着弾位置許容範囲を規定すればよく、さらに、液滴通過穴82については、表面側で開口径が小さく、裏面側で開口径が大きなテーパ穴とすればよい。
【0045】
なお、上記形態では、ゲート部材81も含めて重量を計測するため、液滴M0の吐出前後でゲート部材81の表面811を拭き取る必要がある。従って、多孔質部材などといった払拭部材をアームなどに保持してゲート部材81の表面811を自動的に払拭する自動払拭装置を液滴吐出特性測定装置80に付加し、この自動払拭装置によって、表面811に付着した異物や液滴M0を自動的に除去してもよい。
【0046】
(液滴吐出特性の測定方法2)
本形態の液滴吐出特性測定装置80を用いてノズル27の液滴吐出特性を測定する別の方法を以下に説明する。本形態でも、ノズル27から吐出される液滴M0は、1滴当たりの重量が数ng〜数10ng程度であり、1滴当たりの重量を直接、測定することは精度上、困難であるので、以下に説明する方法では、全てのノズル27から液滴M0を複数回、吐出させ、その液滴総重量から、1滴当たりの重量を算出する方法を採用している。
【0047】
本形態では、まず、図6(A)に示すように、液滴吐出ヘッド22のノズル形成面271とゲート部材81とを所定の距離を介して対向させ、ノズル27の中心位置と液滴通過穴82の中心位置とを平面的に一致させる。
【0048】
次に、各ノズル27から液滴M0を複数回、吐出する。その際、液滴M0は、飛行特性が正常であれば、予め規定されている着弾位置許容範囲内に着弾し、その飛行特性に不具合があれば、液滴の一部あるいは全部が着弾位置許容範囲から外れた位置に着弾する。従って、ゲート部材81に向けてノズル27から液滴M0を吐出した際、液滴M0は、飛行特性が正常であれば液滴通過穴82を通過して液滴捕集部材85の液滴保持層83に到達する。これに対して、液滴M0の飛行特性に不具合があれば、図6(B)に示すように、液滴M0の一部あるいは全部が液滴通過穴82から外れるので、ゲート部材81の表面811に着弾し、液滴通過穴82を通過しない。それ故、ゲート部材81に向けてノズル27から液滴を吐出した後、液滴通過穴82を通過した液滴M0の重量を求めれば、液滴M0の重量が正常か否かを判定できるとともに、その重量が適正か否かを判定すれば、液滴M0の飛行特性が正常や否かを判定できる。
【0049】
そこで、本形態では、ノズル27からゲート部材81に向けて液滴M0を吐出する前の液滴捕集部材85の総重量W21を電子天秤86によって求めておき、ノズル27からゲート部材81に向けて液滴M0を吐出した後、ゲート部材81を取り除き、液滴捕集部材85の重量W22を電子天秤86によって求める。
【0050】
次に、ノズル27からゲート部材91に向けて液滴M0を吐出する前後の液滴捕集部材85の重量W21、W22の増加量Wt(W22−W21)を求めることにより、液滴通過穴82を通過した液滴M0の総重量Wtを求める。
【0051】
次に、液滴通過穴82を通過した液滴M0の総重量Wtをノズル27の数、および各ノズル27からの吐出回数で割れば、液滴通過穴82を通過して液滴捕集部材85に到達した液滴M0、1つ当たりの重量W1を算出することができる。従って、この重量W1が所定範囲内であれば、ノズル27からの液滴吐出量、およびその飛行状態が正常であると判定することができる。よって、コストが嵩む光学系を用いることなく、液滴M0の飛行状態の良否(着弾位置の精度)や液滴重量の精度を容易に、かつ同時に判定することができる。
【0052】
また、本形態では、ゲート部材91が板状で薄く、かつ、その全体が撥液性であるため、液滴通過穴82の内面に液滴M0が付着しにくいので、液滴通過穴82の内面に付着した液滴M0の重量に起因する測定誤差が発生しにくい。但し、このような誤差が発生しないようにするには、ゲート部材91において、液滴通過穴82の裏面側の開口位置で着弾位置許容範囲を規定すればよく、さらに、液滴通過穴82については、表面側で開口径が広く、裏面側で開口径が小さなテーパ穴とすればよい。
【0053】
なお、上記形態では、ゲート部材81を液滴捕集部材85の上に重ねてノズル27からゲート部材81に向けて液滴M0を吐出したが、図7に示すように、ゲート部材81を液滴捕集部材85から浮かせ、所定の間隔をあけて対向配置させることが好ましい。このように構成すると、図6に示す方法と違って、液滴通過穴82を通過して液滴捕集部材85に到達した液滴M0の一部がゲート部材81に付着してしまうことを防止できるので、測定精度を高めることができる。
【0054】
[電気光学装置の構成、および製造方法の例]
電気光学装置の一例として、有機EL表示装置の構成およびその製造工程を説明する。図8は、電気光学物質として電荷注入型の有機薄膜を用いたEL素子を備えた有機EL表示装置のブロック図である。図9〜図11は、有機EL表示装置の製造工程の手順を示す製造工程断面図であり、有機EL表示装置の1画素分の断面に相当する。
【0055】
図8において、有機EL表示装置500pは、有機半導体膜に駆動電流が流れることによって発光するEL素子をTFTで駆動制御する表示装置であり、このタイプの表示装置に用いられる発光素子はいずれも自己発光するため、バックライトを必要とせず、また、視野角依存性が少ないなどの利点がある。ここに示す電気光学装置500pでは、複数の走査線563pと、この走査線563pの延設方向に対して交差する方向に延設された複数のデータ線564と、これらのデータ線564に並列する複数の共通給電線505と、データ線564と走査線563pとの交差点に対応する画素515pとが構成され、画素515pは、画像表示領域100にマトリクス状に配置されている。データ線564に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ線駆動回路551pが構成されている。走査線563pに対しては、シフトレジスタおよびレベルシフタを備える走査線駆動回路554pが構成されている。また、画素515pの各々には、走査線563pを介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング薄膜トランジスタ509と、このスイッチング薄膜トランジスタ509を介してデータ線564から供給される画像信号を保持する保持容量533pと、この保持容量533pによって保持された画像信号がゲート電極に供給されるカレント薄膜トランジスタ510と、カレント薄膜トランジスタ510を介して共通給電線505に電気的に接続したときに共通給電線505から駆動電流が流れ込む発光素子513とが構成されている。発光素子513は、画素電極の上層側には、正孔注入層、有機EL材料層としての有機半導体膜、リチウム含有アルミニウム、カルシウムなどの金属膜からなる対向電極が積層された構成になっており、対向電極は、データ線564などを跨いで複数の画素515pにわたって形成されている。
【0056】
このような構成の有機EL表示装置500pを製造するには、基板を用意する。ここで、有機EL表示装置500pでは、後述する発光層による発光光を基板側から取り出すことも可能であり、また基板と反対側から取り出す構成とすることも可能である。発光光を基板側から取り出す構成とする場合、基板材料としてはガラスや石英、樹脂等の透明ないし半透明なものが用いられるが、特にガラスが好適に用いられる。また、基板に色フィルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を配置して、発光色を制御するようにしてもよい。なお、基板と反対側から発光光を取り出す構成の場合、基板は不透明であってもよく、その場合、アルミナ等のセラミックス、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0057】
本例では、図9(A)に示すように、基板としてガラスからなる透明基板502を用意し、透明基板502に対して、必要に応じてTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護膜(図示せず)を形成する。
【0058】
次に、透明基板502の温度を約350℃に設定して、下地保護膜の表面にプラズマCVD法により厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜からなる半導体膜520aを形成する。次に、半導体膜520aに対してレーザアニールまたは固相成長法などの結晶化工程を行い、半導体膜520aをポリシリコン膜に結晶化する。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は、例えば200mJ/cmとする。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0059】
次に、図9(B)に示すように、半導体膜(ポリシリコン膜)520aをパターニングして島状の半導体膜520bとし、その表面に対して、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜からなるゲート絶縁膜521aを形成する。なお、半導体膜520bは、図8に示したカレント薄膜トランジスタ510のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においてはスイッチング薄膜トランジスタ509のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となる半導体膜も形成されている。つまり、図9〜図11に示す製造工程では二種類のトランジスタ509、510が同時に作られるのであるが、同じ手順で作られるため、以下の説明ではトランジスタに関しては、カレント薄膜トランジスタ510についてのみ説明し、スイッチング薄膜トランジスタ509についてはその説明を省略する。
【0060】
次に、図9(C)に示すように、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属膜からなる導電膜をスパッタ法により形成した後、これをパターニングし、ゲート電極510gを形成する。次に、この状態で高濃度のリンイオンを打ち込み、半導体膜520bに、ゲート電極510gに対して自己整合的にソース・ドレイン領域510a、510bを形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域510cとなる。
【0061】
次に、図9(D)に示すように、層間絶縁膜522を形成した後、コンタクトホール523、524を形成し、これらコンタクトホール523、524内に中継電極526、527を埋め込む。次に、層間絶縁膜522上に信号線、共通給電線及び走査線(図示せず)を形成する。ここで、中継電極527と各配線とは、同一工程で形成してもよく、その場合、中継電極526は、後述するITO膜で形成されることになる。
【0062】
次に、図9(E)に示すように、各配線の上面を覆うように層間絶縁膜530を形成した後、層間絶縁膜530に対して中継電極526に対応する位置にコンタクトホール532を形成する。次に、コンタクトホール532を埋めるようにITO膜を形成し、さらにそのITO膜をパターニングして、信号線、共通給電線及び走査線に囲まれた所定位置に、ソース・ドレイン領域510aに電気的に接続する画素電極511を形成する。ここで、信号線及び共通給電線、さらには走査線に挟まれた部分が、後述する正孔注入層や発光層の形成場所となる。
【0063】
次に、図10(A)に示すように、正孔注入層や発光層の形成場所を囲むように隔壁505を形成する。この隔壁505は、仕切り部材として機能するものであり、例えばポリイミド等の絶縁性有機材料で形成するのが好ましい。隔壁505の膜厚については、例えば1〜2μmの高さとなるように形成する。また、隔壁505は、上述した液滴吐出ヘッド22から吐出される液状物に対して撥液性を示すものが好ましい。隔壁505に撥液性を発現させるためには、例えば隔壁505の表面をフッ素系化合物などで表面処理するといった方法が採用される。フッ素化合物としては、例えばCF4、SF5、CHF3などがあり、表面処理としては、例えばプラズマ処理、UV照射処理などが挙げられる。このようにして、正孔注入層や発光層の形成場所、すなわち、これらの形成材料の塗布位置とその周囲の隔壁505との間には、十分な高さの段差535が形成される。
【0064】
次に、図10(B)に示すように、透明基板502の上面を上に向けた状態で、正孔注入層の形成材料540aを、上述した液滴吐出装置10の液滴吐出ヘッド22より、前記隔壁505に囲まれた塗布位置、すなわち隔壁505内に選択的に塗布する。その際、形成材料540aは、流動性が高いため水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んで隔壁505が形成されているので、形成材料540aは隔壁505を越えてその外側に広がることがない。ここで、正孔注入層の形成材料540aとしては、ポリオレフィン誘導体である3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)を正孔注入材料として用い、これを有機溶剤を主溶媒として分散させてなる分散液が好適に用いられる。但し、正孔注入材料としては、前記のものに限定されることなく、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N、N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等を用いることもできる。
【0065】
このようにして形成材料540aを液滴吐出ヘッド34から吐出して所定位置に配置した後、液状の形成材料540aに対して乾燥処理を行い、形成材料540a中の分散媒を蒸発させる。その結果、図10(C)に示すように、画素電極511上に固形の正孔注入層513a(画素構成要素)が形成される。
【0066】
次に、図11(A)に示すように、透明基板502の上面を上に向けた状態で、上述した液滴吐出装置10の液滴吐出ヘッド22より液状物として発光層の形成材料540bを、前記隔壁505内の正孔注入層513a上に選択的に塗布する。発光材料としては、例えば分子量が1000以上の高分子材料が用いられる。具体的には、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープしたものが用いられる。なお、このような高分子材料としては、二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化しているπ共役系高分子材料が、導電性高分子でもあることから発光性能に優れるため、好適に用いられる。特に、その分子内にフルオレン骨格を有する化合物、すなわちポリフルオレン系化合物がより好適に用いられる。また、このような材料以外にも、例えば特開平11−40358号公報に示される有機EL素子用組成物、すなわち共役系高分子有機化合物の前駆体と、発光特性を変化させるための少なくとも1種の蛍光色素とを含んでなる有機EL素子用組成物も、発光層形成材料として使用可能である。このような発光材料を溶解あるいは分散する有機溶媒としては、非極性溶媒が好適とされ、特に発光層が正孔注入層513aの上に形成されることから、この正孔注入層513aに対して不溶なものが用いられる。具体的には、キシレン、シクロへキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等が好適に用いられる。なお、形成材料540bの吐出による発光層の形成は、赤色の発色光を発光する発光層の形成材料、緑色の発色光を発光する発光層の形成材料、青色の発色光を発光する発光層の形成材料を、それぞれ対応する画素に吐出し塗布することによって行う。また、各色に対応する画素は、これらが規則的な配置となるように予め決められている。
【0067】
このようにして各色の発光層形成材料540bを吐出した後、液状の発光層形成材料540bに対して乾燥処理を行い、発光層形成材料540b中の分散媒を蒸発させる。その結果、図11(B)に示すように、正孔層注入層513a上に固形の発光層513b(画素構成要素)が形成される。これにより、正孔層注入層513aと発光層513bとからなる発光素子513を得る。
【0068】
なお、形成材料540bの乾燥処理については、形成材料540bのガラス転移点未満の温度、例えば100°未満の温度で加熱することにより、乾燥するのが好ましい。このような温度で乾燥することにより、形成材料540b中の溶剤の蒸発速度を比較的低く抑えることができるとともに、形成材料540bの液状化による流動も抑えることができ、その結果、得られる発光層513bについても十分に平坦化することができる。また、発光層形成の際の乾燥処理によって生じる熱的ダメージが、発光層513bだけでなく正孔注入層513aに対しても小さくなり、初期輝度の低下などによる表示性能の低下が抑制される。
【0069】
次に、図11(C)に示すように透明基板502の表面全体に、あるいはストライプ状に、LiF/Al(LiFとAlとの積層膜)やMgAg、あるいはLiF/Ca/Al(LiFとCaとAlとの積層膜)を蒸着法等によって成膜し、対向電極512を形成する。その後、封止を行った後、さらに配線等の各種要素を形成することにより、有機EL素子を備えた有機EL表示装置500p(電気光学装置)を製造する。
【0070】
(その他の適用例)
なお、上記形態では、本発明を有機EL表示装置の製造工程に用いた例であったが、液晶表示装置のカラーフィルタ(画素構成要素)の形成などに本発明を適用してもよい。また、インクジェットプリンタと称せられる液滴吐出装置に本発明を適用してもよい。
【0071】
また、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、実施形態で挙げた具体的な材料や構成などは一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す液滴吐出装置の要部を示す部分斜視図である。
【図3】図1に示す液滴吐出装置に用いた液滴吐出ヘッドの構成を示す説明図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ、図3に示す液滴吐出ヘッドの内部構造を模式的に示す説明図である。
【図5】図1に示す液滴吐出装置に構成した液滴吐出特性測定装置の説明図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ、図5に示す液滴吐出特性測定装置によりノズルの液滴吐出特性を測定する方法を示す説明図である。
【図7】図5に示す液滴吐出特性測定装置によりノズルの液滴吐出特性を測定する別の方法を示す説明図である。
【図8】有機EL表示装置のブロック図である。
【図9】有機EL表示装置の製造工程の手順を示す断面図である。
【図10】有機EL表示装置の製造工程の手順を示す断面図である。
【図11】有機EL表示装置の製造工程の手順を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
10 液滴吐出装置、12 基板、22 液滴吐出ヘッド、27 ノズル、271 ノズル形成面、80 液滴吐出特性測定装置、81 ゲート部材、82 液滴通過穴、83 液滴保持層、84 支持板、85 液滴捕集部材、86 電子天秤(秤量装置)、M 液状物、M0 液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ヘッドのノズルの液滴吐出特性を測定する液滴吐出特性測定方法において、
前記液滴の着弾位置許容範囲を規定する液滴通過穴を備えたゲート部材を前記ノズルに対向する位置に配置した状態で、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出し、
前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めることにより、液滴吐出特性の良否を判定することを特徴とする液滴吐出特性測定方法。
【請求項2】
請求項1において、前記液滴吐出ヘッドには前記ノズルが複数、所定のピッチで形成され、
前記ゲート部材には、前記複数のノズルに対応する位置に前記液滴通過穴が複数、形成されていることを特徴とする液滴吐出特性測定方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めるにあたっては、前記ノズルから前記ゲート部材に対して複数回、液滴を吐出することを特徴とする液滴吐出特性測定方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ゲート部材に対して前記ノズル側とは反対側に、前記液滴通過穴を通過してきた液滴を捕集する液滴捕集部材を配置した状態で前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出することを特徴とする液滴吐出特性測定方法。
【請求項5】
請求項4において、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出する前の前記ゲート部材と前記液滴捕集部材の総重量を求めておき、
前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出した後、前記ゲート部材の表面に付着した液滴を除去し、
しかる後に、前記ゲート部材と前記液滴捕集部材の総重量を求め、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出する前後の前記総重量の増加量を求めることにより、前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めることを特徴とする液滴吐出特性測定方法。
【請求項6】
請求項5において、前記ゲート部材として、少なくとも前記表面が前記液滴に対して撥液性を備えているものを用いることを特徴とする液滴吐出特性測定方法。
【請求項7】
請求項5または6において、前記ゲート部材の表面を自動的に払拭可能な払拭装置を設け、
前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出した後、前記払拭装置によって、前記ゲート部材の表面に付着した液滴を除去することを特徴とする液滴吐出特性測定方法。
【請求項8】
請求項4において、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出する前の前記液滴捕集部材の重量を求めておき、
前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出した後、
前記液滴捕集部材の重量を求め、前記ノズルから前記ゲート部材に向けて液滴を吐出する前後の前記液滴捕集部材の重量増加量を求めることにより、前記液滴通過穴を通過した液滴の重量を求めることを特徴とする液滴吐出特性測定方法。
【請求項9】
請求項8において、前記ゲート部材を前記液滴捕集部材から離れた位置に配置することを特徴とする液滴吐出特性測定方法。
【請求項10】
請求項4ないし9のいずれかにおいて、前記ゲート部材として、板状のものを用いることを特徴とする液滴吐出特性測定方法。
【請求項11】
液滴吐出ヘッドのノズルから吐出される液滴の吐出特性を測定する液滴吐出特性測定装置であって、
前記ノズルから液滴を吐出する際に前記ノズルに対向する位置に配置され、前記液滴の着弾位置許容範囲を規定する液滴通過穴が形成されたゲート部材と、
該ゲート部材に対して前記ノズル側とは反対側に配置され、前記液滴通過穴を通過してきた液滴を捕集する液滴捕集部材と、
を有することを特徴とする液滴吐出特性測定装置。
【請求項12】
請求項11において、さらに、前記ゲート部材と前記液滴捕集部材の総重量、あるいは前記液滴捕集部材の重量を形成するための秤量装置を備えていることを特徴とする液滴吐出特性測定装置。
【請求項13】
請求項11または12に規定する液滴吐出特性測定装置を備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項14】
請求項13に規定する液滴吐出装置を用いて電気光学装置用基板上に前記液滴を吐出して、当該電気光学装置用基板上に画素構成要素を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−15693(P2006−15693A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198031(P2004−198031)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】