説明

液滴吐出装置及びそのメンテナンス方法

【課題】ノズル面にキャップを当接させた状態でのノズル及びノズル面に存在している機能液の乾燥を防ぐことのできる液滴吐出装置及びそのメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】機能液の液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面33を有する液滴吐出ヘッド3と、ノズル面33に当接してノズル面33との間で密閉空間Kを形成するキャップ84とを備える液滴吐出装置であって、密閉空間Kのキャップ84側に保湿液を供給する保湿液供給部86を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドから機能液の液滴を吐出する液滴吐出装置及びそのメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液滴吐出ヘッドのノズル面に設けられたノズルからインクの液滴を吐出し、紙等の記録媒体上に配置して描画を行うインクジェットプリンタが知られている。また、このようなインクジェットプリンタに端を発する液滴吐出装置の吐出性能(最小吐出量等)を向上させ、より微細なパターンを描画できるようになったことから、半導体素子、電子回路基板及びフラットパネル型表示装置(液晶装置等)の製造においても上記液滴吐出装置が用いられている。
例えば、電子回路基板の製造においては、金属微粒子を溶媒中に分散させた機能液の液滴を、液滴吐出ヘッドのノズルから吐出して吐出対象物である基板上に配置することにより、配線パターン等を形成している。
【0003】
ところで、上記液滴吐出装置には、液滴吐出ヘッドのノズル面に当接して該ノズル面との間で密閉空間を形成するキャップが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
ノズル及びノズル面は外気に晒される構成となっていることから、吐出動作を行わない場合は時間の経過と共にノズル内やノズル面に存在している機能液が乾燥する。機能液は乾燥により増粘化又は固化するため、液滴吐出量のバラツキや、液滴の着弾精度の低下を招く虞がある。そのため、吐出動作の停止中にはノズル面にキャップを当接させ、ノズル及びノズル面を外気に触れないようにすることで機能液の乾燥を抑制し、ノズルの良好な吐出特性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−195932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ノズル面とキャップとの間に形成される密閉空間は完全な気密状態に保たれているわけではないため、例えば機能液の溶媒に揮発性の高い液体(水等)が使用されている場合には、ノズル面にキャップを当接させた状態でも機能液の乾燥が進み、ノズルからの正常な吐出動作を妨げてしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ノズル面にキャップを当接させた状態でのノズル及びノズル面に存在している機能液の乾燥を防ぐことのできる液滴吐出装置及びそのメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の液滴吐出装置は、機能液の液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面を有する液滴吐出ヘッドと、ノズル面に当接してノズル面との間で密閉空間を形成するキャップとを備える液滴吐出装置であって、密閉空間のキャップ側に保湿液を供給する保湿液供給部を有するという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、密閉空間に供給された保湿液が蒸発しかつ密閉空間内に滞留することにより、密閉空間における保湿液の蒸気密度が高く維持される。そのため、ノズル内やノズル面に存在している機能液やその溶媒が蒸発し難くなり、機能液の乾燥が防止される。また、保湿液は密閉空間のキャップ側に供給されるため、保湿液は直接ノズルに付着せず、ノズル内における機能液のメニスカス形状(表面張力による機能液の表面形状)を破壊しない。
【0008】
また、本発明の液滴吐出装置は、密閉空間の蒸気密度を計測する蒸気密度計測部と、蒸気密度計測部の計測結果に基づいて保湿液供給部に保湿液を供給させる制御部とを有するという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、蒸気密度計測部が密閉空間の蒸気密度を計測し、密閉空間の蒸気密度に応じて保湿液が適宜供給される。そのため、密閉空間の外部の温度等の影響により密閉空間の蒸気密度が急速に低下した場合でも、制御部が適切な供給制御を行うことで密閉空間の蒸気密度が高く維持される。
【0009】
また、本発明の液滴吐出装置は、制御部が、機能液及び機能液の溶媒における蒸発特性と、密閉空間の蒸気密度との、予め保持されている相関関係に基づいて保湿液供給部に保湿液を供給させるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、複数種の機能液が用いられ、それらの機能液及び機能液の溶媒における揮発性等の性質が異なっている場合でも、予めデータベース等に保持されている上記性質と密閉空間の蒸気密度との相関関係に基づいて、密閉空間に保湿液が適宜供給される。
【0010】
また、本発明の液滴吐出装置は、保湿液が、機能液の溶媒であるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、密閉空間に保湿液として供給された溶媒が蒸発して密閉空間の蒸気密度を高く維持することで、ノズル内やノズル面に存在している機能液やその溶媒が蒸発し難くなり、機能液の乾燥が防止される。
【0011】
また、本発明は、機能液の液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面を有する液滴吐出ヘッドと、ノズル面との間で密閉空間を形成するキャップとを備えた液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法であって、キャップをノズル面に当接させて密閉空間を形成するキャッピング工程と、密閉空間のキャップ側に保湿液を供給する保湿液供給工程とを備えるという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、保湿液供給工程で密閉空間に供給された保湿液が蒸発しかつ密閉空間内に滞留することにより、密閉空間における保湿液の蒸気密度が高く維持される。そのため、ノズル内やノズル面に存在している機能液やその溶媒が蒸発し難くなり、機能液の乾燥が防止される。また、保湿液供給工程では保湿液は密閉空間のキャップ側に供給されるため、保湿液は直接ノズルに付着せず、ノズル内における機能液のメニスカス形状を破壊しない。
【0012】
また、本発明は、キャッピング工程後に密閉空間の蒸気密度を計測する計測工程を備え、保湿液供給工程では、計測工程で計測された蒸気密度に基づいて保湿液を供給するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、計測工程で密閉空間の蒸気密度が計測され、密閉空間の蒸気密度に応じて保湿液供給工程で保湿液が適宜供給される。そのため、密閉空間の外部の温度等の影響により密閉空間の蒸気密度が急速に低下した場合でも、保湿液を適宜供給することで密閉空間の蒸気密度が高く維持される。
【0013】
また、本発明は、保湿液供給工程前に機能液及び機能液の溶媒における蒸発特性と、密閉空間の蒸気密度との、予め保持されている相関関係を導入する導入工程を備え、保湿液供給工程では、相関関係に基づいて保湿液を供給するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、複数種の機能液が用いられ、それらの機能液及びその溶媒における揮発性等の性質が異なっている場合でも、予めデータベース等に保持されている上記性質と密閉空間の蒸気密度との相関関係を導入工程で導入し、上記相関関係に基づいて保湿液供給工程で密閉空間に保湿液が適宜供給される。
【0014】
また、本発明は、保湿液が、機能液の溶媒であるという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、保湿液供給工程で密閉空間に保湿液として供給された溶媒が蒸発して密閉空間の蒸気密度を高く維持することで、ノズル内やノズル面に存在している機能液及びその溶媒が蒸発し難くなり、機能液の乾燥が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】液滴吐出装置IJの全体構成を示す概略図である。
【図2】液滴吐出装置IJの一部を示す斜視図である。
【図3】キャリッジ21における下面側の斜視図である。
【図4】液滴吐出ヘッド3の断面図である。
【図5】キャッピングユニット8の断面図である。
【図6】キャッピングユニット8のキャッピング動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
以下の説明においては図1に示すようなXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各構成要素について説明する。なお、水平面内の所定の方向をX軸方向とし、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向をそれぞれθX、θY及びθZ方向とする。
【0017】
まず、本実施形態における液滴吐出装置IJの構成を、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る液滴吐出装置IJの全体構成を示す概略図である。図2は、液滴吐出装置IJの一部を示す斜視図である。
液滴吐出装置IJは、機能液の液滴D(図4参照)を吐出し基板P(図1参照)上の適切な場所に液滴Dを着弾させて配置することにより配線パターンを形成し、回路基板を製造する装置である。
【0018】
本実施形態で用いられる機能液は、金属微粒子を溶媒である水に分散させたものであり、機能液を基板上に配置した後、溶媒を乾燥させて除去することにより配線パターンが形成される。また、基板Pは、低温同時焼成セラミックス(LTCC:low Temperature Co-Fired Ceramics)回路基板を形成するための矩形の板状基板であり、焼成前のLTCC基板(グリーンシート)である。
【0019】
図1に示すように、液滴吐出装置IJは、チャンバー1と、ヘッド部2と、架台部4と、基板搬送部9と、制御部10とを備えている。また、液滴吐出装置IJは、床面F上に設置されている。
【0020】
チャンバー1は、ヘッド部2、架台部4、基板搬送部9及び制御部10を全て収容するものであり、チャンバー1の内部と外部との間で微小な塵埃(パーティクル)や機能液が蒸発してなる気体等の流動を防止するためのものである。チャンバー1は、ヘッド部2を安定して保持するために必要な剛性を有している。チャンバー1の天井部上面には空調機11が設けられており、空調機11は、チャンバー1内の温度、湿度及びクリーン度等を維持調整する機器である。
【0021】
ヘッド部2は、機能液の液滴Dを吐出する吐出部である。ヘッド部2は、キャリッジ21と、支持部22と、機能液収容部23と、信号発生機24とを有している。
【0022】
キャリッジ21は、略直方体状を呈しており、その下面に後述する液滴吐出ヘッド3を複数有し、支持部22を介してチャンバー1の天井部下面に保持されている。支持部22は、上下方向で延在する部材であり、キャリッジ21を安定して保持するために必要な剛性を有している。また、支持部22は、X軸及びZ軸の2方向に関してキャリッジ21を移動させ、かつ、高い精度で位置決め可能な駆動部(図示せず)を有している。
機能液収容部23は、機能液を貯留して収容する機器部であり、図示しない供給管を介してヘッド部2の液滴吐出ヘッド3に接続されている。信号発生機24は、液滴吐出ヘッド3の圧電素子37(図4参照)に印加される駆動信号を発生する機器である。
【0023】
架台部4は、基板Pを保持するステージや液滴吐出ヘッド3をメンテナンスするための機器が設けられる機器部である。架台部4は、架台41と、ガイド42と、保温カバー43と、基板ステージ5と、着弾精度測定ユニット6と、ワイピングユニット7と、キャッピングユニット8とを有している。
【0024】
架台41は、Y軸方向で延在し、基板Pを安定して保持するために重量があり剛性の高い材料(例えば天然石)で形成された架台であり、複数の脚部を介して床面F上に設置されている。架台41の上面である支持面41Aは、水平面に沿う平面状に形成されている。なお、支持面41Aにおいて、ヘッド部2の下方を吐出位置P1とし、基板搬送部9と隣り合う部分を受渡位置P2とする。
【0025】
ガイド42は、支持面41Aに沿いつつY軸方向で延びる延在部材であり、支持面41Aと所定の間隔を保ち複数の支持柱を介して床面Fに支持されている。ガイド42は、基板ステージ5等をY軸方向で往復移動させる駆動部であるリニアモータの固定子(図示せず)を有している。
保温カバー43は、支持面41Aの吐出位置P1及び受渡位置P2以外の部分で基板ステージ5等の機器を跨いで設けられ(図2参照)、断熱効果のある材料で形成されている。後述するように基板ステージ5には基板Pを加熱するための加熱部が設けられており、保温カバー43は基板Pからの放熱を抑制するためのカバーである。
【0026】
基板ステージ5は、ヘッド部2の吐出動作中に吐出位置P1で基板Pを保持し、かつ、吐出位置P1と受渡位置P2との間で基板Pを搬送するためのステージである。
図2に示すように、基板ステージ5は、上部ステージ51と下部ステージ52とが上下方向で接続された構成となっている。上部ステージ51と下部ステージ52との間には、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY及びθZ方向の計6方向に関して上部ステージ51を移動させ、かつ、高い精度で位置決め可能な駆動部(図示せず)が設けられている。
【0027】
上部ステージ51は、載置領域53と、フラッシングエリア54と、図示しない加熱部とを有している。
載置領域53は、上部ステージ51の上面に水平面に沿う平面状に形成され、基板Pが載置される領域であり、基板Pを保持するための機器(真空吸着等)を有している。フラッシングエリア54は、載置領域53のY軸方向での両側に各々設けられ、ヘッド部2が基板P上で吐出動作を行う前に機能液の液滴Dを予め吐出するための領域であり、スポンジ状の多孔部材を有している。上記加熱部は、上部ステージ51の内部に設置され、載置領域53を介して基板Pを加熱するために用いられる。
【0028】
下部ステージ52と架台41の支持面41Aとの間には図示しないエアベアリングが設けられており、下部ステージ52は支持面41Aに非接触で支持されている。また、下部ステージ52は、その下面にY軸方向で延びる凹部55を有しており、凹部55はガイド42を囲んで設けられている。凹部55におけるガイド42のリニアモータ固定子に対向する部分には、リニアモータの可動子(図示せず)が設けられており、ガイド42の固定子と凹部55の可動子が共に作動することで下部ステージ52はY軸方向で往復移動できる。
【0029】
着弾精度測定ユニット6は、ヘッド部2から吐出される液滴Dの着弾精度を測定するためのユニットである。
着弾精度測定ユニット6は、上部ユニット61と下部ユニット62とが上下方向で接続された構成となっている。上部ユニット61と下部ユニット62との間には、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY及びθZ方向の計6方向に関して上部ユニット61を移動させ、かつ、高い精度で位置決め可能な駆動部(図示せず)が設けられている。
【0030】
上部ユニット61は、ヘッド部2から吐出される液滴Dを着弾させるためのシート(図示せず)を上方側に対向させて設置することができ、上記シートに着弾した液滴Dの着弾位置から液滴吐出装置IJの着弾精度を測定することができる。
下部ユニット62の構成は、基板ステージ5における下部ステージ52と同様であるため、その説明を省略する。
【0031】
ワイピングユニット7は、ヘッド部2における液滴吐出ヘッド3のノズル面33(図3参照)を払拭して清掃するためのユニットである。
ワイピングユニット7は、上部ユニット71と下部ユニット72とが上下方向で接続された構成となっている。上部ユニット71と下部ユニット72との間には、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY及びθZ方向の計6方向に関して上部ユニット61を移動させ、かつ、高い精度で位置決め可能な駆動部(図示せず)が設けられている。
【0032】
上部ユニット71には、ノズル面33を払拭するためのワイプ部材73が上方側に露出した状態で設置されている。ワイプ部材73は、ノズル面33に付着した機能液を溶解して除去するための洗浄液を含んだ不織布等からなる。なお、上記洗浄液は、機能液の溶媒であってもよい。
下部ユニット72の構成は、基板ステージ5における下部ステージ52と同様であるため、その説明を省略する。
【0033】
キャッピングユニット8は、ヘッド部2における液滴吐出ヘッド3のメンテナンスに用いられるユニットである。キャッピングユニット8の詳細は後述する。
【0034】
基板搬送部9は、基板収容部91と基板搬送ロボット92とを有している。
基板収容部91は、支持面41Aにおける受渡位置P2の近傍に設けられ、基板Pを収容するためのカセット等からなる。
基板搬送ロボット92は、受渡位置P2の+X側に隣り合って設けられ、受渡位置P2に位置する基板ステージ5と基板収容部91との間で基板Pを搬送するためのロボットである。
【0035】
制御部10は、液滴吐出装置IJの各構成機器の動作を制御し、また、信号発生機24に対して駆動信号の出力を指示するための制御機器部である。なお、制御部10は、LAN等のネットワークを介して他のコンピュータと接続されていてもよい。
【0036】
次に、キャリッジ21に複数設けられる液滴吐出ヘッド3の構成を、図3及び図4を参照して説明する。図3は、キャリッジ21における下面側の斜視図である。図4は、液滴吐出ヘッド3の断面図である。
【0037】
図3に示すように、キャリッジ21は略直方体状を呈しており、キャリッジ21の下面21A(−Z側の面)には複数の液滴吐出ヘッド3が配設されている。
液滴吐出ヘッド3は、機能液の液滴Dを吐出するための機器である。液滴吐出ヘッド3は、ヘッド本体31と、ノズルプレート32とを有している。
【0038】
ノズルプレート32は、略矩形の板状部材であり、その下面(−Z側の面)であるノズル面33は水平面に沿う平面状に形成されている。なお、ノズル面33は、付着した機能液の除去を容易にするために、撥液性を備えることが好ましい。ノズルプレート32には、厚さ方向で貫通し機能液の液滴Dを吐出するための孔部であるノズル34が複数形成されている。
【0039】
図4に示すように、ヘッド本体31は、液溜り部35と、振動板36と、圧電素子37と、リザーバ38と、供給孔39とを有している。ヘッド本体31の下面には、ノズルプレート32が一体的に接続されている。
【0040】
液溜り部35は、機能液を充填するための空間であり、ノズルプレート32と振動板36との間に形成され、複数のノズル34に対応して各々設けられている。振動板36は、可撓性を有する材料で形成された略板状の部材であり、上下方向で撓んで変位することにより複数の液溜り部35の容積を個別に増減させることができる。
【0041】
圧電素子37は、駆動信号が印加されることで振動するピエゾ素子等の素子であり、複数の液溜り部35に対応して各々設けられ、振動板36の上面に一体的に接続されている。圧電素子37は、信号発生機24と電気的に接続されており、制御部10の指示により信号発生機24から出力される駆動信号を印加することで、上下方向で伸縮して振動する。
リザーバ38は、機能液を貯留するための空間であり、液溜り部35の−Y側にX軸方向で延在して設けられ、機能液収容部23に図示しない供給管を介して接続されている。供給孔39は、リザーバ38から液溜り部35に機能液を供給する孔部であり、複数の液溜り部35とリザーバ38とを各々連通している。
【0042】
次に、本実施形態におけるキャッピングユニット8の構成を、図5を参照して説明する。図5は、キャッピングユニット8の断面図である。
【0043】
キャッピングユニット8は、ヘッド部2における液滴吐出ヘッド3のメンテナンスに用いられるユニットである。
図5に示すように、キャッピングユニット8は、上部ユニット81と下部ユニット82とが上下方向で接続された構成となっている。上部ユニット81と下部ユニット82との間には、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY及びθZ方向の計6方向に関して上部ユニット81を移動させ、かつ、高い精度で位置決め可能な駆動部83が設けられている。
【0044】
上部ユニット81は、キャップ84と、吸引部85と、保湿液供給部86とを有している。
キャップ84は、上部ユニット81から+Z側に開口する凹部であって、液滴吐出ヘッド3のノズル面33に当接してノズル面33との間に密閉空間K(図6参照)を形成するものであり、複数の液滴吐出ヘッド3に各々対応して設けられている。キャップ84の上縁部には、ノズル面33に当接して気密性を高めるためのエラストマー等の弾性体が設けられている。キャップ84は、排出口87と、保湿液供給ノズル88と、湿度計測器(蒸気密度計測部)89とを有している。
【0045】
排出口87は、複数のキャップ84の底部に各々設けられ、キャップ84内の液体を吸引して排出するための孔部である。
保湿液供給ノズル88は、保湿液を密閉空間K内に供給するためのノズルであり、複数のキャップ84の内壁に各々設けられ、その吐出方向がキャップ84の底部に向くように設置されている。
湿度計測器89は、複数のキャップ84の内壁に各々設置され、密閉空間Kの湿度を計測するための機器である。なお、湿度計測器89は、制御部10と電気的に接続されており、湿度の計測結果を制御部10に出力することが可能である。
【0046】
吸引部85は、密閉空間K内を吸引して密閉空間Kを負圧とすると共に、キャップ84内の液体を吸引して排出するための機器部である。吸引部85は、廃液タンク85aと、吸引管85bとを有している。
廃液タンク85aは、キャッピングユニット8の外部に設けられ、キャップ84内から吸引された液体(機能液や保湿液)を廃液として貯留するための収容器であり、密閉空間K内を吸引するための不図示の吸引用機器(ポンプ等)を備えている。廃液タンク85aは、制御部10と電気的に接続されており、制御部10からの指示に基づいて、密閉空間Kを適宜吸引することができる。
吸引管85bは、上記液体を流動させる管であり、複数のキャップ84の排出口87と廃液タンク85aとをそれぞれ接続している。
【0047】
保湿液供給部86は、密閉空間K内に保湿液を供給する機器部である。保湿液供給部86は、保湿液収容部86aと、供給管86bとを有している。
保湿液収容部86aは、密閉空間K内に供給される保湿液を貯留する収容部であり、保湿液を供給するための不図示の供給用機器(ポンプ等)を備えている。保湿液収容部86aは、制御部10と電気的に接続されており、制御部10からの指示に基づいて、保湿液を密閉空間Kに向けて適宜供給することができる。
供給管86bは、保湿液を流動させる管であり、複数のキャップ84の保湿液供給ノズル88と保湿液収容部86aとをそれぞれ接続している。
【0048】
なお、本実施形態における保湿液は、機能液の溶媒である。また、保湿液をワイピングユニット7で使用される洗浄液と共用としてもよく、該洗浄液を貯留する収容部(図示せず)と保湿液収容部86aとを同一のものとしてもよい。この場合は、液滴吐出装置IJに保湿液収容部86aを設置するためのスペースを省くことができる。
【0049】
続いて、液滴吐出装置の動作を説明する。
最初に、液滴吐出装置IJを用いて、基板P上に配線パターンを形成することで回路基板を製造する方法を説明する。
【0050】
まず、液滴Dの吐出対象である基板Pを、基板収容部91から吐出位置P1に搬送する。
基板ステージ5における下部ステージ52の可動子及びガイド42の固定子から構成されるリニアモータの作動により、基板Pを載置していない基板ステージ5が受渡位置P2に移動する。次に、基板搬送ロボット92が、基板収容部91から液滴Dの吐出対象である基板Pを取り出し、受渡位置P2に位置する基板ステージ5の載置領域53に載置する。次に、再び上記リニアモータの作動により、基板Pを載置した基板ステージ5が、吐出位置P1に移動する。
以上で、液滴Dの吐出対象である基板Pが、吐出位置P1に搬送される。
【0051】
次に、吐出対象である基板Pに機能液の液滴Dを吐出して、配線パターンを形成する。
ヘッド部2における支持部22の駆動部を作動させ、液滴吐出ヘッド3のノズル面33と基板Pの配線パターン形成面との間隔が適切な値となるように、キャリッジ21を下降させる。この状態で、基板Pの吐出領域に対する液滴吐出ヘッド3の相対的な往復運動、すなわち走査を実行しつつ、液滴吐出ヘッド3から機能液の液滴Dを吐出して、基板P上に着弾させる。この走査は、基板ステージ5を上記リニアモータの作動によりY軸方向で往復移動させると共に、支持部22の駆動部を作動させキャリッジ21をX軸方向で移動させることにより行う。この走査中に、液滴吐出ヘッド3のノズル34から機能液の液滴Dを吐出し、基板Pの所定の位置に着弾させて配置することで配線パターンを形成する。
【0052】
なお、液滴吐出ヘッド3の吐出動作を行うにあたり、フラッシング動作を実施する。フラッシング動作とは、基板P上に機能液の液滴Dを吐出する前に、予めノズル34内の機能液をフラッシングエリア54に向けて吐出することで乾燥等により増粘化した機能液を排出し、基板P上での吐出時に吐出量のバラツキや吐出方向の曲がり等を防止するための動作である。本実施形態ではフラッシングエリア54は載置領域53のY軸方向での両側に各々設けられており、いずれの側から走査を開始したとしても、フラッシング動作を実施した後に吐出動作を行うことができる。
【0053】
ここで、液滴吐出ヘッド3のノズル34から液滴Dが吐出される動作を、図4を参照して説明する。
制御部10から信号発生機24に対して駆動信号の印加指示が出力される。この指示を受けた信号発生機24は、液滴吐出ヘッド3の圧電素子37に対して適切な駆動信号を出力する。駆動信号は、充電状態の電位(高電位)と放電状態の電位(低電位)とが交互に繰り返される信号となっており、圧電素子37に充電状態の電位が印加されると圧電素子37は収縮し、圧電素子37に放電状態の電位が印加されると上記収縮は解除される。
【0054】
圧電素子37に充電状態の電位が印加され、圧電素子37は収縮する。圧電素子37は、振動板36と一体的に接続されているため、圧電素子37の収縮と共に振動板36は上方側に変位し、液溜り部35の容積は拡大する。液溜り部35の拡大と共に、液溜り部35は負圧となり、リザーバ38から供給孔39を介して機能液が液溜り部35内に流入する。
次に、圧電素子37に放電状態の電位が印加され、圧電素子37は元の長さに復元する。圧電素子37の復元と共に振動板36も復元し、液溜り部35の容積は充電前の容積に戻る。そのため液溜り部35は正圧となり、液溜り部35に充填されている機能液がノズル34を通って外部に液滴Dとして吐出される。
圧電素子37に駆動信号を印加することで圧電素子37は伸縮して振動し、基板Pに対して機能液の液滴Dを連続して吐出することができる。
【0055】
基板P上に吐出して配置された機能液は乾燥される。
上部ステージ51は加熱部を備えており、加熱部は載置領域53を介して基板Pを加熱している。基板Pの表面に着弾した機能液の溶媒は、基板Pが加熱されているために、着弾後から即座に乾燥し始める。溶媒が乾燥して蒸発飛散することで、機能液に分散していた金属微粒子が析出して固化し、固化した金属微粒子により導電性の配線パターンを形成することができる。
以上で、基板P上における配線パターンの形成が終了する。
【0056】
最後に、必要な配線パターンが形成された基板Pは、基板ステージ5により吐出位置P1から受渡位置P2へ搬送される。基板搬送ロボット92は、受渡位置P2に位置する基板ステージ5から、基板Pを基板収容部91に搬送して収容する。
以上で、液滴吐出装置IJを用いた、基板P上に配線パターンを形成することによるLTCC基板の製造が終了する。
【0057】
続いて、着弾精度測定ユニット6、ワイピングユニット7及びキャッピングユニット8による液滴吐出ヘッド3のメンテナンス動作を説明する。
まず、液滴吐出装置IJの操業中に行うメンテナンス動作を説明する。
【0058】
液滴吐出装置IJの操業中に行うメンテナンス動作は、基板ステージ5が受渡位置P2に位置し、基板Pの搬入又は搬出動作が行われているときに実施される。
まず、キャッピングユニット8による吸引動作を、図6を参照して説明する。図6は、キャッピングユニット8のキャッピング動作を示す概略図である。
着弾精度測定ユニット6及びワイピングユニット7が、吐出位置P1と受渡位置P2との間に移動する。この移動は、上記ユニットとガイド42とで構成されるリニアモータの作動により行う。
【0059】
次に、キャッピングユニット8の下部ユニット82とガイド42とで構成されるリニアモータの作動により、キャッピングユニット8が吐出位置P1へ移動する。次に、ヘッド部2における支持部22の作動により、キャリッジ21を下降させ、キャッピングユニット8のキャップ84をノズル面33に当接させる(以下、キャッピングと記載する)。キャッピングにより、キャップ84とノズル面33との間には密閉空間Kが形成される(図6参照)。
【0060】
ここで、制御部10が廃液タンク85aの吸引用機器を作動させ、排出口87を介して密閉空間Kを吸引する。この吸引動作により密閉空間Kは負圧となり、密閉空間Kを形成するノズル面33におけるノズル34内の機能液が吸引されて排出される。なお、ノズル34の吸引は機能液が増粘化している場合でも可能であり、この吸引動作により増粘化した機能液を排出し、ノズル34における良好な吐出特性を回復することができる。
ノズル34から密閉空間Kへ排出された機能液は、キャップ84の底部にある排出口87から吸引されて、廃液タンク85aに貯留される。吸引後、キャッピングは解除され、キャッピングユニット8は受渡位置P2と逆側に移動する。
以上で、キャッピングユニット8による吸引動作が終了する。
【0061】
次に、ワイピングユニット7によるワイピング動作を説明する。
まず、ワイピングユニット7の下部ユニット72とガイド42とで構成されるリニアモータの作動により、ワイピングユニット7が吐出位置P1へ移動する。支持部22における駆動部の作動により、キャリッジ21を下降させ、ワイピングユニット7のワイプ部材73をノズル面33に当接させる。
【0062】
ところで、前述したキャッピングユニット8の吸引動作によって排出された機能液が、ノズル面33に付着している場合がある。この機能液が乾燥し固化することで、ノズル34からの吐出方向の曲がり等の不具合を引き起こす虞があることから、ワイプ部材73により、付着した機能液を払拭して除去する。具体的には、ワイプ部材73は洗浄液を含んでおり、この洗浄液を含んだワイプ部材73がノズル面33を払拭することで、ノズル面33に付着した機能液を溶解して除去することができる。払拭後、ワイプ部材73はノズル面33から離間し、ワイピングユニット7は受渡位置P2と逆側に移動する。
以上で、ワイピングユニット7による払拭動作が完了する。
【0063】
次に、着弾精度測定ユニット6による着弾精度測定動作を説明する。
まず、着弾精度測定ユニット6の下部ユニット62とガイド42とで構成されるリニアモータの作動により、着弾精度測定ユニット6が吐出位置P1へ移動する。支持部22における駆動部の作動により、キャリッジ21を下降させ、着弾精度測定ユニット6の不図示のシートの表面とノズル面33との間を、液滴吐出ヘッド3の吐出動作を行うにあたり適切な距離に設定する。
【0064】
次に、液滴吐出ヘッド3から上記シートの所定の位置に機能液の液滴Dを吐出して着弾させる。上記シートにおける液滴Dが着弾した位置を測定し検証することで、ヘッド部2及び液滴吐出ヘッド3の着弾精度を測定することができる。なお、この着弾精度が一定の精度に到達していない場合には、ヘッド部2及び液滴吐出ヘッド3の調整等が行われる。
以上で、着弾精度測定ユニット6による着弾精度測定動作が完了する。
よって、液滴吐出装置IJの操業中に行うメンテナンス動作が完了する。このメンテナンス終了後、基板Pへの吐出動作が再開される。
【0065】
続いて、液滴吐出装置IJの操業停止中に行うメンテナンス動作を、図6を参照して説明する。
【0066】
一定の期間で基板Pへの吐出動作を行わない場合、すなわち操業停止中においては、ノズル34及びノズル面33が外部に晒された構成となっているため、ノズル34及びノズル面33に存在している機能液は乾燥する。この乾燥を防止するために、キャッピングユニット8によるノズル面33へのキャッピングを実施して密閉空間Kを形成することで、ノズル34及びノズル面33が外気に触れないようにする。
もっとも、本実施形態での機能液の溶媒は乾燥しやすい水であり、また、密閉空間Kも完全な気密状態に保たれているわけではないため、次第にノズル34等の機能液は乾燥する。そのため、以下に説明する保湿液の供給動作を実施する。
【0067】
まず、キャッピングユニット8によるノズル面33へのキャッピングを実施する(キャピング工程)
また、制御部10又はLAN等により構成されたネットワーク上の他のコンピュータが予め保持している、複数の機能液及び該機能液の溶媒における蒸発特性と、保湿液を供給すべき密閉空間Kの湿度(閾値)及び供給量等との、相関関係を並べたテーブルデータの中から、現在使用している機能液に関するデータを制御部10へ導入させる(導入工程)。
【0068】
キャンピング動作中において、キャップ84の湿度計測器89は、制御部10に対して密閉空間Kの湿度の計測結果を随時出力している(計測工程)。前述の通り、密閉空間Kは完全な気密状態に保たれているわけではないため、時間と共に密閉空間Kの湿度は低下する。
制御部10は、湿度計測器89から得た湿度計測結果と、上記導入工程で導入した保湿液を供給すべき密閉空間Kの湿度(閾値)とを比較する。密閉空間Kの湿度が低下し続け、湿度計測器89の湿度計測結果が上記閾値以下になったときに、制御部10は保湿液収容部86aの供給用機器に供給指示を出力し、該供給用機器は保湿液収容部86aに貯留されている保湿液を、保湿液供給ノズル88から密閉空間K内におけるキャップ84の底部側に供給する(保湿液供給工程)。
【0069】
供給された保湿液は密閉空間K内で蒸発気化し、かつ密閉空間K内で滞留することにより、密閉空間Kの湿度は上昇する。密閉空間Kの湿度が高い状態では、ノズル34及びノズル面33に存在している機能液やその溶媒が蒸発し難くなり、機能液の乾燥を防止できる。また、保湿液は密閉空間Kのキャップ84側に向けて供給されるため、保湿液は直接ノズル34に付着せず、ノズル34のメニスカス形状を破壊しない。
【0070】
また、密閉空間Kの外部の湿度や温度等の影響により、密閉空間Kの湿度が急激に低下した場合でも、湿度計測器89及び制御部10の働きにより適切な時期に保湿液を供給するため、密閉空間Kの湿度変動に合わせて柔軟に対応することができる。
【0071】
また、制御部10又はLAN等により構成されたネットワーク上の他のコンピュータは、複数の機能液及び該機能液の溶媒における蒸発特性と、保湿液を供給すべき密閉空間Kの湿度(閾値)及び供給量等との、相関関係をテーブル化したデータを予め保持しているため、各種機能液の蒸発特性に合わせた制御を行うことができる。
【0072】
なお、制御部10は密閉空間Kへの保湿液の供給回数をカウントしており、保湿液の供給回数が所定の回数に到達すると、制御部10は廃液タンク85aの吸引用機器に吸引指示を出力し、吸引用機器に密閉空間K内を吸引させキャップ84内の液体を排出させる。
【0073】
したがって、本実施形態によれば、ノズル面33にキャップ84を当接させたキャッピング状態での、ノズル34及びノズル面33に存在している機能液の乾燥を防ぐことができる。
【0074】
なお、前述した実施形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0075】
例えば、上記実施形態では、機能液の溶媒として水を用いているが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、溶媒として有機溶剤等を用いてもよい。なお、この場合には、保湿液として機能液の溶媒である有機溶剤を用いることができ、上記実施形態における湿度計測器89は密閉空間K内における有機溶剤の蒸気密度を計測する機器となる。
【0076】
また、上記実施形態では、保湿液として機能液の溶媒と同一の液体(水)を用いているが、保湿液に機能液の溶媒と近い性質を有するものを選択し、保湿液が蒸発して密閉空間K内に滞留することで、機能液及びその溶媒の蒸発を抑制できるような液体であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、基板Pとして焼成前のLTCC基板(グリーンシート)が用いられているが、基板Pとしてガラス基板や半導体ウエハ等を用いてもよい。
また、上記実施形態では、機能液には金属微粒子が溶媒中に分散されているが、この金属微粒子の材質は、形成する配線パターンに応じて適宜選択してよい。例えば、金、銀、銅、パラジウム又はニッケル等が用いられる。また、金属微粒子の代わりに、導電性ポリマー等の導電性微粒子を用いてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、液滴吐出装置IJは基板P上に配線パターンを形成して回路基板を製造する装置であるが、フラットパネル型表示装置等を製造することに本発明の液滴吐出装置IJを用いてもよい。製造可能なデバイスとしては、液晶表示装置、EL(Electro Luminescence)表示装置又は上記表示装置に用いられるカラーフィルタ等が挙げられる。なお、上記デバイスを製造する場合の機能液としては、液晶材料、EL材料又はカラーフィルタエレメント等が用いられる。
【0079】
また、上記実施形態では、湿度計測器89及び制御部10により密閉空間Kの湿度に応じた保湿液の供給制御を行っているが、必ずしも湿度計測器89を備える必要はなく、例えば制御部10が備えるタイマ等により一定期間毎に保湿液の供給動作を行ってもよい。
【0080】
また、上記実施形態におけるキャップ84の底部に、保湿液を含むことのできるスポンジ状の多孔部材を備えてもよい。キャップ84内に供給された保湿液が多孔部材に吸収され上記部材内で分散することにより、保湿液の蒸発が促進される。そのため、密閉空間Kの蒸気密度を迅速に向上させることができる。
【符号の説明】
【0081】
3…液滴吐出ヘッド、33…ノズル面、34…ノズル、84…キャップ、86…保湿液供給部、89…湿度計測器(蒸気密度計測部)、10…制御部、K…密閉空間、IJ…液滴吐出装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液の液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面を有する液滴吐出ヘッドと、前記ノズル面に当接して前記ノズル面との間で密閉空間を形成するキャップとを備える液滴吐出装置であって、
前記密閉空間の前記キャップ側に保湿液を供給する保湿液供給部を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記密閉空間の蒸気密度を計測する蒸気密度計測部と、
前記蒸気密度計測部の計測結果に基づいて前記保湿液供給部に前記保湿液を供給させる制御部とを有することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記機能液及び前記機能液の溶媒における蒸発特性と、前記密閉空間の蒸気密度との、予め保持されている相関関係に基づいて前記保湿液供給部に前記保湿液を供給させることを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記保湿液は、前記機能液の溶媒であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
機能液の液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面を有する液滴吐出ヘッドと、前記ノズル面との間で密閉空間を形成するキャップとを備えた液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法であって、
前記キャップを前記ノズル面に当接させて前記密閉空間を形成するキャッピング工程と、
前記密閉空間の前記キャップ側に保湿液を供給する保湿液供給工程とを備えることを特徴とする液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法。
【請求項6】
前記キャッピング工程後に前記密閉空間の蒸気密度を計測する計測工程を備え、
前記保湿液供給工程では、前記計測工程で計測された蒸気密度に基づいて前記保湿液を供給することを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法。
【請求項7】
前記保湿液供給工程前に前記機能液及び前記機能液の溶媒における蒸発特性と、前記密閉空間の蒸気密度との、予め保持されている相関関係を導入する導入工程を備え、
前記保湿液供給工程では、前記相関関係に基づいて前記保湿液を供給することを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法。
【請求項8】
前記保湿液は、前記機能液の溶媒であることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−194514(P2010−194514A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45375(P2009−45375)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】