説明

液状体配置方法、デバイスの製造方法、液状体吐出装置

【課題】安定した吐出量を維持することができる液状体吐出装置および液状体配置方法、当該吐出方法を用いたデバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】液状体吐出装置は、駆動手段に電気信号を供給することによりノズルから液状体を吐出するヘッドと、所定条件に係る前記電気信号を供給して前記液状体を吐出し、その吐出量の計測を行う吐出量計測手段と、前記吐出量の計測時において、前記ヘッドの周囲の第1温度を計測する第1温度計測手段と、前記ノズルからの前記液状体の吐出により、吐出対象物への前記液状体の配置を行うための配置制御手段と、前記液状体の配置に際して、前記ヘッドの周囲の第2温度を計測する第2温度計測手段と、前記吐出量、前記第1温度、前記第2温度に基づいて、前記液状体の配置に際に供給する前記電気信号の条件を制御する電気信号制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体吐出装置およびその液状体配置方法、当該方法を用いたデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能性材料を含む液状体を微小ノズルから基板に対して吐出し、基板上に配置された液状体を固化して薄膜を形成する方法が提案されている。その薄膜としての代表的な例は、カラーフィルタや発光層、金属配線などが挙げられる。
【0003】
このような方法では、良質な薄膜の形成のために、吐出される液状体の量(以下、吐出量)を安定的に維持することが求められる。吐出量は、吐出履歴によるハードウェア要素の劣化や、液状体の製造ばらつき等により変動することがあるためである。このため、吐出量の計測手段を備え、その計測結果に基づいて吐出に係る駆動条件を適正化するようにした液状体吐出装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−209429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吐出量の安定化のためには、吐出に係る液状体の温度も重要な影響因子となる。液状体の粘度は温度によって変動し、その結果、吐出量にも影響するからである。そして、吐出量を計測する際と実際の描画を行う際とでは、装置内における熱源との位置関係に起因して液状体の温度にわずかながらも差が生じるため、この影響により駆動条件の適正化を高精度に行うことが困難となっていた。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、安定した吐出量を維持することができる液状体吐出装置および液状体配置方法、当該吐出方法を用いたデバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、駆動手段に電気信号を供給することによりノズルから液状体を吐出するヘッドを用いて、吐出対象物に当該液状体の配置を行う液状体配置方法であって、所定条件に係る前記電気信号を供給して吐出量を計測するAステップと、前記吐出量の計測の際における前記ヘッドの周囲の第1の温度を計測するBステップと、前記液状体の配置に際して、前記ヘッドの周囲の第2の温度を計測するCステップと、前記吐出量、前記第1温度、前記第2温度に基づいて決定される条件で前記電気信号を生成し、生成された当該電気信号を供給して前記液状体の配置を行うDステップと、を有する。
【0008】
この発明の液状体配置方法では、液状体の配置に係る電気信号の条件を事前に計測した吐出量に基づいて適正化を行う。この際、吐出量の計測時の第1温度と液状体の配置時の第2温度が参照されるので、吐出量を計測する際と液状体の配置を行う際におけるヘッド周りの温度差の影響を好適に排除して、好適に電気信号の条件を適正化できる。
【0009】
また好ましくは、前記液状体配置方法において、前記電気信号の条件は、電圧成分であることを特徴とする。
【0010】
また好ましくは、前記液状体配置方法において、前記第1温度および前記第2温度の計測を、前記ヘッドにおける前記ノズルの形成面の周囲、または前記液状体の導入部の周囲、もしくは前記ヘッドにおける前記ノズルの形成面の周囲および前記液状体の導入部の周囲の両方において行うことを特徴とする。
【0011】
また好ましくは、前記液状体配置方法において、前記Cステップおよび前記Dステップを、一の前記吐出対象物について少なくとも1回以上行うことを特徴とする。
【0012】
また好ましくは、前記液状体配置方法において、複数の前記ヘッドを用いる請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液状体配置方法であって、前記第1温度および前記第2温度の計測を、前記複数のヘッドの一部、またはそれぞれについて行うことを特徴とする。
【0013】
本発明は、駆動手段に電気信号を供給することによりノズルから液状体を吐出するヘッドを用いて、吐出対象物に当該液状体の配置を行う液状体配置方法であって、所定条件に係る前記電気信号を供給して、前記液状体の配置を行うための第1エリアにおいて第1予備吐出量を、前記第1エリアから離間する第2エリアにおいて第2予備吐出量を計測するGステップと、前記液状体の配置に際して、第2エリアにおいて、所定条件に係る前記電気信号を供給して吐出量を計測するHステップと、前記第1予備吐出量、前記第2予備吐出量、前記Hステップで計測された吐出量に基づいて決定される条件で前記電気信号を生成し、生成された当該電気信号を供給して前記液状体の配置を行うIステップと、を有する。
【0014】
本発明のデバイスの製造方法は、前記液状体配置方法を用いて基板に前記液状体を配置し、配置された当該液状体を固化して膜を形成するステップを有し、当該膜を構成要素として備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の液状体吐出装置は、駆動手段に電気信号を供給することによりノズルから液状体を吐出するヘッドと、所定条件に係る前記電気信号を供給して前記液状体を吐出し、その吐出量の計測を行う吐出量計測手段と、前記吐出量の計測時において、前記ヘッドの周囲の第1温度を計測する第1温度計測手段と、前記ノズルからの前記液状体の吐出により、吐出対象物への前記液状体の配置を行うための配置制御手段と、前記液状体の配置に際して、前記ヘッドの周囲の第2温度を計測する第2温度計測手段と、前記吐出量、前記第1温度、前記第2温度に基づいて、前記液状体の配置に際に供給する前記電気信号の条件を制御する電気信号制御手段と、を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、以下の説明で参照する図では、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0017】
(液状体吐出装置の機械的構成)
次に、図1、図2を参照して、本発明の液状体配置方法に用いる液状体吐出装置の機械的構成について説明する。
図1は、液状体吐出装置の要部構成を示す斜視図である。図2は、ヘッドユニットにおけるヘッドの配置構成を示す平面図である。
【0018】
図1に示す液状体吐出装置200は、直線的に設けられた1対のガイドレール201と、ガイドレール201の内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示せず)により主走査方向に移動する主走査移動台203を備えている。また、ガイドレール201の上方においてガイドレール201に直交するように直線的に設けられた1対のガイドレール202と、ガイドレール202の内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示せず)により副走査方向に沿って移動する副走査移動台204を備えている。
【0019】
主走査移動台203上には、吐出対象物となる基板Pを載置するためのステージ205が設けられている。ステージ205は基板Pを吸着固定できる構成となっており、また、図示しない回転機構によって基板P内の基準軸を主走査方向、副走査方向に正確に位置合わせできるようになっている。
【0020】
副走査移動台204は、吊り下げ式に取り付けられたキャリッジ209を備えている。また、キャリッジ209は、複数のヘッド30(図2参照)が配設されたヘッドユニット10と、ヘッド30に液状体を供給するための液状体供給機構(図示せず)と、ヘッド30に供給する電気信号(以下、駆動信号とする)を生成するための駆動回路基板221(図3参照)とを備えている。
【0021】
図2に示すように、ヘッド30は、吐出アセンブリ32と、電気ケーブルとのコネクタ33を有する回路基板34と、液状体の導入部35を有するケースアセンブリ36とを備えている。吐出アセンブリ32の一面は、複数のノズル31が配設されたノズル形成面37となっており、ノズル形成面37と垂直な面をなす側面部38にはサーミスタ39が取り付けられている。サーミスタ39は、ノズル形成面37の周囲の温度を計測する本発明の第1温度計測手段、第2温度計測手段を構成するものである。尚、サーミスタ39の取り付け位置は適宜変更が可能であり、例えば導入部35の近傍に取り付けるようにしてもよい。
【0022】
ノズル形成面37において、ノズル31は2組のノズル群41A,41Bを構成しており、各ノズル群41A,41Bのノズル31は、それぞれ所定の方向に沿って一定のピッチで並んだライン配列をなしている。ノズル群41Aとノズル群41Bに係る配列の方向は互いに一致しており、また本実施形態では、ノズル群41Aとノズル群41Bとは、互いにピッチを補完して並列するいわゆる千鳥配列をなしている。
【0023】
吐出アセンブリ32内に形成されているノズル31と連通する液室(キャビティ)は、その可動壁に接続された圧電素子42(図3参照)の駆動によって容量が可変するように構成されている。そして、圧電素子42に駆動信号を供給してキャビティ内の液圧を制御することにより、ノズル31から液状体(液滴)を吐出させることが可能となっている。すなわち、圧電素子42は、本発明における駆動手段を構成するものである。尚、駆動手段としては、圧電素子のほか、加熱素子などを採用することもできる。
【0024】
再び図1に戻って、キャリッジ209を基板Pの直上の位置である描画エリア210に移動させた状態で、ヘッドユニット10と基板Pとの相対移動(走査)、およびノズル31毎の吐出のON/OFFの制御を行うことにより、基板P上に液状体が配置(描画)される。すなわち、上述したガイドレール201,202、主走査移動台203、副走査移動台204、ステージ205、キャリッジ209は、本発明における配置制御手段を構成するものである。また、描画エリア210は、本発明における第1エリアに対応している。
【0025】
主走査移動台203の移動領域から副走査方向に数メートル程度離間した位置には、ノズル31(図2参照)に対してキャッピング(封止)、強制吸引(回復)動作、ワイピング(払拭)などの各種メンテナンス動作を行うためのメンテナンスユニット207が設けられている。また、メンテナンスユニット207は、液状体の受容容器と受容容器を載置する電子天秤を備えた重量計測装置208を備えており、キャリッジ209をメンテナンスユニット207の直上の位置である重量計測エリア211まで移動させた状態で液状体の吐出を行うことにより、その吐出に係る液状体の重量(吐出量)を計測することができる。すなわち、重量計測装置208は、本発明における吐出量計測手段を構成するものである。また、重量計測エリア211は、本発明における第2エリアに対応している。
【0026】
(液状体吐出装置の電気的構成)
次に、図3、図4を参照して、本発明の液状体配置方法に用いる液状体吐出装置の電気的構成について説明する。
図3は、液状体吐出装置の電気的構成を示すブロック図である。図4は、駆動信号の一例を示す図である。
【0027】
図3において、液状体吐出装置200は、CPUやメモリにより構成される制御部220と、キャリッジ209(図1参照)等を移動(走査)させるための走査機構部219と、駆動信号生成回路222を有する駆動回路基板221と、ヘッド30と、重量計測装置208とを備えている。制御部220は、ユーザインターフェースとしての役割を果たすPC(パーソナルコンピュータ)230からの各種命令を受けて、走査機構部219の駆動制御、ヘッド30の駆動制御(以下、吐出制御とする)、重量計測装置208の計測に係る演算処理等を行う。また、制御部220は、サーミスタ39で計測された温度情報を取得して、内部のメモリに格納するようになっている。
【0028】
ヘッド30の吐出制御は、駆動信号生成回路222において生成する駆動信号を圧電素子42に供給することで行われる。駆動信号は、図4に示すように、充放電パルスを含むパルス群PSが周期的に接続された構成となっている。本実施形態においては、パルス群PSにおける充電パルスによりキャビティが減圧、放電パルスによりキャビティが加圧されるようになっており、一のパルス群が供給されることで一の液状体(液滴)が吐出される。すなわち、各パルス群PSの発生タイミングが、各吐出制御のタイミングに対応するようになっている。
【0029】
パルス群PSにおける最低電位と最高電位との差の電圧を駆動電圧と呼んでおり、この駆動電圧は、後述する吐出量の制御のためのパラメータとなる。すなわち、駆動電圧に応じて圧電素子の変位量が変化し、吐出量は駆動電圧に対してほぼ線形の相関関係を示すという性質がある。尚、充放電パルスの時間成分や、充放電パルス間の接続時間成分によっても、吐出量の制御を行うことは可能であるが、駆動電圧による制御が扱いやすさの点で優れているため、本実施形態ではこの方法を用いることにしている。
【0030】
(液状体配置方法)
次に、図1、図3を参照して、図5のフローチャートに沿って、液状体配置方法(描画方法)について説明する。
図5は、液状体配置の処理フローを示すフローチャートである。
【0031】
この方法では、まず、走査機構部219を駆動してヘッドユニット10を重量計測エリア211に移動させる(ステップS1)。次に、ヘッドユニット10に取り付けられた各ヘッド30について、駆動電圧の仮設定を行う(ステップS2)。この仮設定は、各ヘッド30のノズル群41A,41B(図2参照)単位で行われ、例えば、ヘッド30の出荷前検査時に設定されたID情報に基づいて行われる。
【0032】
次のステップS3では、仮設定された駆動電圧の下で重量計測装置208に対して液状体(液滴)を吐出し、吐出量qを計測する(本発明におけるAステップに対応)。また、このときにおける第1温度T1をサーミスタ39により計測する(本発明におけるBステップに対応)。
【0033】
吐出量qの測定では、各ヘッド30のノズル群41A、41B(図2参照)ごとに複数(例えば、1ノズルあたり数万ドット)の液滴が重量計測装置208に対して吐出され、その総重量が計測される。そして、制御部220において、この総重量のデータを吐出駆動の総数で除算することにより、1液滴あたりの吐出量qが取得され、制御部220内のメモリに格納される。
【0034】
また、第1温度T1の計測はヘッド30ごとに行われる。ステップS3における液状体の吐出は複数回分まとめて行われるため、ある程度の期間(数秒程度)を要することになるが、第1温度T1は、例えば当該期間における計測値の平均、あるいは、期間内における所定タイミングの計測値として取得される。そして取得された第1温度T1は、制御部220内のメモリに格納される。
【0035】
上述したステップS1〜S3は、描画動作に係る駆動電圧を設定する(後述するステップS6)ための予備工程としての役割を果たしている。このため、ステップS1〜S3は、長期間にわたって実行される描画動作(後述するステップS4〜S7)の途中に割り込む形式で、定期的に、あるいは作業者の指示によって適宜実行されるものである。
【0036】
描画動作は、次に説明するステップS4〜S7で構成されている。すなわち、ヘッドユニット10を描画エリア210に移動させ(ステップS4)、さらに第2温度T2の計測を行って(本発明のCステップに対応するステップS5)、計測された第2温度T2を制御部220内のメモリに格納する。制御部220は、メモリ内に格納されている吐出量q、第1温度T1、第2温度T2をパラメータとして、式1を用いて駆動電圧Vの本設定を行い(ステップS6)、本設定された駆動電圧V生成された駆動信号を圧電素子42に供給して、液状体の配置(描画)を行う(本発明のDステップに対応するステップS6)。
【0037】
V=V0+α(q−q0)+β(T2−T1) ・・・(式1)
【0038】
式1において、V0は仮設定された(ステップS2)駆動電圧であり、q0は吐出量の仕様値である。また、αは単位吐出量あたりの吐出量補正に必要な駆動電圧の変化量を、βは単位温度あたりの吐出量補正に必要な駆動電圧の変化量を表す補正係数であり、それぞれ、あらかじめ実験により得られた定数である。
【0039】
式1における第2項:α(q−q0)は、重量計測装置208を用いて計測された吐出量qと仕様値q0との差を補償するために、V0に対して付加すべき電圧補正量を表している。すなわち、吐出履歴によるハードウェア要素の劣化や、液状体の製造ばらつき等による吐出量変動の要因を補償して、描画動作時における吐出量を仕様値q0に近づけるための電圧補正量を表すものである。
【0040】
しかしながら、重量測定時における環境温度である第1温度T1と、描画動作時における環境温度である第2温度T2とに温度差がある場合には(装置構成における熱源との位置関係により実際にある程度の温度差が存在する)、この温度差が原因となって第2項による補正を行っても精細な補正ができないことになる。例えば、第1温度T1が第2温度T2に比べて低温である場合、第2項による補正だけでは仕様値q0以上の液状体が吐出されることになってしまう。式1における第3項:β(T2−T1)は、このような課題に鑑みて、重量測定時と描画動作時における温度差の影響を解消するために導入された補正項であり、かくしてこの実施形態では、高精度に適正化された電気信号により描画を行うことが可能となっている。
【0041】
ステップS5における駆動電圧の設定は、各ヘッド30のノズル群41A、41B(図2参照)単位で行われ、この際、仮設定時の駆動電圧V0、吐出量qについては、それぞれのノズル群41A、41Bに対応したものが参照される。また、第1温度T1、第2温度T2については、各ヘッド30に対応したものが参照される。また、補正係数α、βは、液状体の種類に応じた固有の値が適用されるようになっている。
【0042】
ステップS5〜S7の連続した工程は、連続する描画動作内において、定期的に、例えば、基板Pの入れ替えのタイミングや、各主走査のタイミング、あるいは各吐出制御のタイミングにおいて行うようにすることが好ましい。このようにすることで、描画動作中における環境温度(第2温度)の変化に迅速に対応することができ、吐出量の一層の安定化を図ることが可能である。
【0043】
(液状体配置方法の第2実施形態)
次に、図6を参照して、第2実施形態に係る液状体配置方法の説明を行う。
図6は、第2実施形態に係る液状体配置の処理フローを示すフローチャートである。
【0044】
この方法では、まず、主走査移動台203に重量計測装置(メンテナンスユニット207に搭載されているものと同様の構成のもの)を仮置きする(ステップS11)。そして、ヘッドユニット10を描画エリア210に移動させて(ステップS12)、駆動電圧の仮設定を行い(ステップS13)、ステップS11で仮置きした重量計測装置に対して液状体を吐出し、その吐出量である第1予備吐出量qd1を計測する(ステップS14)。尚、ステップS13における駆動電圧の仮設定、ステップS14における第1予備吐出量qd1の計測は、それぞれ第1実施形態におけるステップS2、ステップS3と同様の方法で行われる。計測された第1予備吐出量qd1は、制御部220内のメモリに格納される。
【0045】
次に、ヘッドユニット10を重量計測エリア211に移動させて(ステップS15)、重量計測装置208に対して液状体を吐出し、その吐出量である第2予備吐出量qd2を計測する(ステップS16)。尚、ステップS16における第2予備吐出量qd2の計測は、第1予備吐出量qd1の計測の際と同じ駆動電圧、同じロットの液状体を用いて行われる。計測された第1予備吐出量qd1は、制御部220内のメモリに格納される。そして、仮置した重量計測装置を除去する(ステップS17)。
【0046】
上述したステップS11〜S17は、描画エリア210と重量計測エリア211との間における位置的な環境(主として温度)の差による吐出量変化を調べるための工程であり、描画動作に係る駆動電圧を設定する(後述するステップS20)ための予備工程としての役割を果たしている。すなわち、ステップS11〜S17は、本発明におけるGステップに対応する工程である。このステップS11〜S17は、液状体吐出装置200の始動時のほか、装置の設置環境や構成が変更された場合などにおいて行われる。
【0047】
次のステップS18〜S20は、吐出履歴によるハードウェア要素の劣化や、液状体の製造ばらつき等による吐出量変動の要因を補償するための条件出しを行う目的で、長期間にわたって実行される描画動作(後述するステップS21)の途中に割り込む形式で、定期的に、あるいは作業者の指示によって適宜実行される。
【0048】
すなわち、ステップS18において駆動電圧の仮設定を行い(ステップS18)、ステップS19において重量計測装置208に対して液状体を吐出し、その吐出量qを計測する(本発明におけるHステップとしてのステップS19)。計測された吐出量qは、制御部220内のメモリに格納される。そして、ステップS20(本発明におけるIステップに相当する)において、制御部220は、メモリ内に格納されている吐出量q、第1予備吐出量qd1、第2予備吐出量qd2をパラメータとして、式2を用いて駆動電圧Vの本設定を行う。
【0049】
V=V0+α{q+(qd1−qd2)−q0} ・・・(式2)
【0050】
式2において、V0は仮設定された(ステップS18)駆動電圧であり、q0は吐出量の仕様値である。また、αは単位吐出量あたりの吐出量補正に必要な駆動電圧の変化量を表す補正係数であり、あらかじめ実験により得られた定数である。
【0051】
式2における(qd1−qd2)の項は、描画エリア210と重量計測エリア211との間における位置的な環境差に起因する固有の吐出量の計測誤差を表している。この補正項は、エリア間の環境差による吐出量変動の影響を解消するために導入されたものであり、かくしてこの実施形態では、高精度に適正化された電気信号により描画を行うことが可能となっている。
【0052】
(液晶表示装置の製造方法)
次に、図7を参照して、本発明に係るデバイスとしての液晶表示装置の製造方法について説明する。
図7は、液晶表示装置の概略構造を示す分解斜視図である。
【0053】
図7に示すように、液晶表示装置500は、TFT(Thin Film Transistor)透過型の液晶表示パネル520と、液晶表示パネル520を照明する照明装置516とを備えている。液晶表示パネル520は、着色層としてのカラーフィルタ505を有する対向基板501と、画素電極510に3端子のうちの1つが接続されたTFT素子511を有する素子基板508と、両基板501,508によって挟持された液晶(図示省略)とを備えている。また、液晶表示パネル520の外面側となる両基板501,508の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板514と下偏光板515とが配設される。
【0054】
対向基板501は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に隔壁部504によってマトリクス状に区画された複数の着色領域に複数種の着色層としてRGB3色のカラーフィルタ505R,505G,505Bがストライプ状に形成されている。隔壁部504は、Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる下層バンク502と、下層バンク502の上(図面では下向き)に形成された有機化合物からなる上層バンク503とにより構成されている。また対向基板501は、隔壁部504と隔壁部504によって区画されたカラーフィルタ505R,505G,505Bとを覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)506と、OC層506を覆うように形成されたITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる対向電極507とを備えている。カラーフィルタ505R,505G,505Bは後述するカラーフィルタの製造方法を用いて製造されている。
【0055】
素子基板508は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜509を介してマトリクス状に形成された画素電極510と、画素電極510に対応して形成された複数のTFT素子511とを有している。TFT素子511の3端子のうち、画素電極510に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極510を囲むように格子状に配設された走査線512とデータ線513とに接続されている。
【0056】
照明装置516は、光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これらの光源からの光を液晶表示パネル520に向かって出射することができる導光板や拡散板、反射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
【0057】
なお、液晶を挟む対向基板501と素子基板508の表面には、液晶の分子を所定の方向に配列させるための配向膜がそれぞれ形成されているが、図示省略した。また、上下偏光板514,515は、視角依存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わされたものでもよい。液晶表示パネル520は、アクティブ素子としてTFT素子に限らずTFD(Thin Film Diode)素子を有したものでもよく、さらには、少なくとも一方の基板にカラーフィルタを備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配置されるパッシブ型の液晶表示装置でもよい。
【0058】
ここで、カラーフィルタ505R,505G,505B、オーバーコート層506、対向電極507、画素電極510、配向膜、TFT素子511を構成するシリコン層、走査線512、データ線513は、上述した液状体配置方法を用いて形成することができる。すなわち、対応する機能性材料を含む液状体を基板上にパターン化して配置し、配置された液状体を固化して形成することができる。
【0059】
例えば、カラーフィルタ505R,505G,505Bの場合、上層バンク503により区画された画素の対応領域内に、R,G,Bの各色に対応する顔料を含む液状体を配置し、液状体を乾燥させて形成することができる。また、対向電極507、画素電極510等の金属膜の場合は、金属微微粒子の分散液を配置、焼成させて形成することができる。また、配向膜の場合は、ポリイミドの溶液を配置、乾燥させて形成することができる。
【0060】
このような方法によれば、液状体の吐出量が高精度に適正化された状態の下で各種機能性膜を形成することができるため、膜厚やプロファイルの均一性に関して良質のものを得ることができる。
【0061】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
例えば、ヘッド周囲における温度の検出位置の変形例として、ノズル形成面やヘッド内における流路内、ヘッドに対して液状体を供給する液状体供給機構などを挙げることができる。
また、ヘッド周囲における温度の検出方法の変形例として、温度分析装置を備えた赤外線カメラなどを挙げることができる。
また、上述した液状体配置方法を用いた別の例として、例えば、プラズマディスプレイ装置における蛍光膜の形成などが挙げられる。
また、実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略したり、図示しない他の構成と組み合わせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】液状体吐出装置の要部構成を示す斜視図。
【図2】ヘッドユニットにおけるヘッドの配置構成を示す平面図。
【図3】液状体吐出装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】駆動信号の一例を示す図。
【図5】液状体配置の処理フローを示すフローチャート。
【図6】第2実施形態に係る液状体配置の処理フローを示すフローチャート。
【図7】液晶表示装置の概略構造を示す分解斜視図。
【符号の説明】
【0063】
10…ヘッドユニット、30…ヘッド、31…ノズル、39…サーミスタ、42…圧電素子、200…液状体吐出装置、207…メンテナンスユニット、208…重量計測装置、209…キャリッジ、210…描画エリア、211…重量計測エリア、219…走査機構部、220…制御部、221…駆動回路基板、222…駆動信号生成回路、500…液晶表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段に電気信号を供給することによりノズルから液状体を吐出するヘッドを用いて、吐出対象物に当該液状体の配置を行う液状体配置方法であって、
所定条件に係る前記電気信号を供給して吐出量を計測するAステップと、
前記吐出量の計測の際における前記ヘッドの周囲の第1の温度を計測するBステップと、
前記液状体の配置に際して、前記ヘッドの周囲の第2の温度を計測するCステップと、
前記吐出量、前記第1温度、前記第2温度に基づいて決定される条件で前記電気信号を生成し、生成された当該電気信号を供給して前記液状体の配置を行うDステップと、を有する液状体配置方法。
【請求項2】
前記電気信号の条件は、電圧成分であることを特徴とする請求項1に記載の液状体配置方法。
【請求項3】
前記第1温度および前記第2温度の計測を、前記ヘッドにおける前記ノズルの形成面の周囲、または前記液状体の導入部の周囲、もしくは前記ヘッドにおける前記ノズルの形成面の周囲および前記液状体の導入部の周囲の両方において行うことを特徴とする請求項1または2に記載の液状体配置方法。
【請求項4】
前記Cステップおよび前記Dステップを、一の前記吐出対象物について少なくとも1回以上行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液状体配置方法。
【請求項5】
複数の前記ヘッドを用いる請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液状体配置方法であって、
前記第1温度および前記第2温度の計測を、前記複数のヘッドの一部、またはそれぞれについて行うことを特徴とする液状体配置方法。
【請求項6】
駆動手段に電気信号を供給することによりノズルから液状体を吐出するヘッドを用いて、吐出対象物に当該液状体の配置を行う液状体配置方法であって、
所定条件に係る前記電気信号を供給して、前記液状体の配置を行うための第1エリアにおいて第1予備吐出量を、前記第1エリアから離間する第2エリアにおいて第2予備吐出量を計測するGステップと、
前記液状体の配置に際して、第2エリアにおいて、所定条件に係る前記電気信号を供給して吐出量を計測するHステップと、
前記第1予備吐出量、前記第2予備吐出量、前記Hステップで計測された吐出量に基づいて決定される条件で前記電気信号を生成し、生成された当該電気信号を供給して前記液状体の配置を行うIステップと、を有する液状体配置方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液状体配置方法を用いて基板に前記液状体を配置し、配置された当該液状体を固化して膜を形成するステップを有する、当該膜を構成要素として備えるデバイスの製造方法。
【請求項8】
駆動手段に電気信号を供給することによりノズルから液状体を吐出するヘッドと、
所定条件に係る前記電気信号を供給して前記液状体を吐出し、その吐出量の計測を行う吐出量計測手段と、
前記吐出量の計測時において、前記ヘッドの周囲の第1温度を計測する第1温度計測手段と、
前記ノズルからの前記液状体の吐出により、吐出対象物への前記液状体の配置を行うための配置制御手段と、
前記液状体の配置に際して、前記ヘッドの周囲の第2温度を計測する第2温度計測手段と、
前記吐出量、前記第1温度、前記第2温度に基づいて、前記液状体の配置に際に供給する前記電気信号の条件を制御する電気信号制御手段と、を備える液状体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−126175(P2008−126175A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316012(P2006−316012)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】