説明

液状体配置方法、液滴吐出装置、及びカラーフィルタの製造方法

【課題】液状体の配置ムラを目立たなくする液状体配置方法、液滴吐出装置、及びこれら方法又は装置を用いたカラーフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】複数のノズルを有するヘッドと基板とを少なくとも主走査方向に相対的に移動させながら、ノズルから液状体を吐出することにより、基板上に設定された複数の所定領域に対して液状体をそれぞれ配置する液状体配置方法である。ノズルが主走査方向と直交する副走査方向に所定間隔をおいて配列されており、所定領域が主走査方向に沿って複数配列されてなる場合に、ノズルから対応する所定領域の主走査方向に沿う列に対し、二つ以上の異なる駆動周波数を用いてノズルから吐出を行わせ、液状体を各所定領域に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出法を用いた液状体配置方法と、液滴吐出装置、及びカラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液滴吐出法を用いた成膜技術が注目されている。例えば、特許文献1には、液滴吐出法を用いた液晶表示装置のカラーフィルタの製造方法が開示されている。この製造方法では、基板に対して走査する複数のノズルから色材を含む液状体(液滴)を吐出させて液状体を配置(描画)し、さらに配置された液状体を乾燥等により固化させて画素に対応した着色膜を形成するようにしている。
【特許文献1】特開2003−159787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記したカラーフィルタの製造方法には以下の改善すべき課題がある。
前記したカラーフィルタの製造に用いられる液状体の吐出装置(液滴吐出装置)では、液状体の吐出特性(吐出量)について、僅かながらもノズル間でバラツキが存在する。そのため、このバラツキに起因して主走査方向(スキャン方向)と直交する方向に液状体の配置量(吐出量)のバラツキが生じ、得られるカラーフィルタにスジ状の濃淡ムラが発生してしまうことがある。このようなスジ状の濃淡ムラは視認されやすく、カラーフィルタを介して表示される画像の画質を低下させてしまう。
【0004】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、液状体の配置ムラを目立たなくすることができる液状体配置方法、この液状体配置方法を実施することのできる液滴吐出装置、及びこれら方法又は装置を用いたカラーフィルタの製造方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するため、ヘッドのノズルの吐出動作と、この吐出動作を行わせるために駆動素子に印加する駆動信号の周波数(駆動周波数)との関係について調べたところ、駆動周波数が変化することにより、ノズルから吐出される液状体の1ドットあたりの重量、すなわち単位吐出量が、不規則に変動するとの知見を得た。そして、このような知見のもとに鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明の液状体配置方法は、複数のノズルを有するヘッドと基板とを少なくとも主走査方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから液状体を吐出することにより、前記基板上に設定された複数の所定領域に対して前記液状体をそれぞれ配置する液状体配置方法であって、
前記ノズルが前記主走査方向と直交する副走査方向に所定間隔をおいて配列されており、前記所定領域が前記主走査方向に沿って複数配列されてなる場合に、
前記ノズルから対応する所定領域の主走査方向に沿う列に対し、二つ以上の異なる駆動周波数を用いて前記ノズルから吐出を行わせ、液状体を各所定領域に配置することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の液滴吐出装置は、複数のノズルを有するヘッドを備え、該ヘッドを基板に対して少なくとも主走査方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから液状体を吐出することにより、前記基板上に設定された複数の所定領域に対して前記液状体をそれぞれ配置する液滴吐出装置であって、
前記ヘッドにおける各ノズルからの液状体の吐出を制御する制御部を有し、
前記ノズルが前記主走査方向と直交する副走査方向に所定間隔をおいて配列されており、前記所定領域が前記主走査方向に沿って複数配列されてなる場合に、
前記制御部は、前記ノズルから対応する所定領域の主走査方向に沿う列に対し、二つ以上の異なる駆動周波数を用いて前記ノズルから吐出を行わせ、液状体を各所定領域に配置するように、前記ヘッドにおける各ノズルからの液状体の吐出を制御することを特徴としている。
【0008】
前述したように駆動周波数が変化し、すなわち駆動周波数が異なると、ノズルから吐出される液状体の単位吐出量の重量が変動する。したがって、ノズルから対応する所定領域の主走査方向に沿う列に対し、二つ以上の異なる駆動周波数を用いて前記ノズルから吐出を行わせると、この所定領域の主走査方向に沿う列では、異なる駆動周波数で液状体が吐出配置された所定領域間において、配置量のバラツキが生じる。ところが、前述したようにノズル間での吐出量のバラツキに起因して、主走査方向と直交する方向(副走査方向)にも液状体の配置量(吐出量)のバラツキが生じる。
したがって、前記液状体配置方法、及び前記液滴吐出装置によれば、特に液状体によって形成される薄膜がカラーフィルタなどの表示を目的とするものである場合に、従来では副走査方向のみに発生し、したがって視認され易かったスジ状の濃淡ムラが、主走査方向にも濃淡ムラが発生することにより、全体として誤差分散効果によって濃淡ムラが視認されにくくなり、目立たなくなる。よって、本発明によれば、表示用の薄膜となる液状体を、視認性が良好となるように吐出し配置することができる。
【0009】
また、前記の液状体配置方法や液滴吐出装置においては、単一の所定領域に対して単一のノズルから複数回の吐出を行わせる場合に、前記複数回の吐出を、互いに吐出量の過不足が打ち消される組み合わせの複数の駆動周波数を用いて行わせるのが好ましい。
このようにすれば、全ての所定領域が、複数回の吐出によって吐出量の過不足が打ち消され、ほぼ均一な量の液状体が配置されるようになるので、所定領域間で均一な薄膜を形成することができる。したがって、例えば濃淡ムラなどがない、良好な視認性の薄膜を形成することが可能になる。
なお、吐出量の過不足が打ち消される組み合わせの複数の駆動周波数については、予め種々の駆動周波数で各ノズルからそれぞれ吐出を行わせ、各ノズル毎に単位吐出量を測定しておくことで、各ノズル毎に吐出量の過不足が打ち消される関係にある複数の駆動周波数を求めておく。
【0010】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、前記の液状体配置方法を用い、又は、前記の液滴吐出装置を用いることを特徴としている。
この製造方法によれば、前述したように視認性が良好となるように液状体を吐出し配置することができる液状体配置方法、又は液滴吐出装置を用いているので、優れた表示性を有する高品質のカラーフィルタを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、以下の説明においては、本発明の液状体配置方法をカラーフィルタの製造方法に適用した場合の例について説明する。また、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
まず、図1及び図2を参照して、カラーフィルタの構成について説明する。図1は、本実施形態におけるカラーフィルタ1の平面構造を示す模式図であり、図2は、図1のA−A線矢視断面図である。
なお、以下の説明及び図1、図2中におけるR、G、Bの各文字は、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)を示すものとする。
【0013】
カラーフィルタ1は、カラー用表示パネルに用いられるもので、後述する基板上に形成されたものであり、図1に示すように、R、G、Bの各色に対応して着色された画素部(所定領域)2と、画素部2の間に形成された隔壁(バンク)3とを有して構成されたものである。
また、カラーフィルタ1は、矩形の画素部2がマトリクス状に整列されて形成されたものである。このマトリクスの配列は、図1中の縦列が同色の画素部2によって形成され、横列が、R、G、Bの順に画素部2が並ぶ、いわゆるストライプ型の画素配列となっている。
なお、本発明においては、カラーフィルタ1は周知のモザイク型やデルタ型等の画素配列であっても、また、例えば、R、G、B以外の色要素を含むものであってもよい。
【0014】
隔壁3は、図2に示すように例えばガラス製で透光性の基板4上に設けられて、平面視矩形の画素部2を区画形成するもので、光を遮光する遮光部(ブラックマトリクス)6と、遮光部6上に設けらたバンク7とからなっている。
遮光部6は、例えばクロム等の遮光材料によって基板4上にパターニングされたもので、バンク7は、この遮光部6上に形成された樹脂製のものである。
画素部2は、バンク7によって区画された領域、すなわち本発明における所定領域8上に形成されたもので、該所定領域8上にR、G、Bの各色のカラフィルタ材料、すなわち液状体5(5R、5G、5B)が配置され、加熱処理されたことにより、図1に示したR、G、Bからなるカラーフィルタ1を構成するものである。
【0015】
ここで、液状体5は、バンク7で区画された所定領域8に対応する画素部2に対して配置されるが、液状体5が所定領域8上の画素部2内に正確に配置されるように、予め所定領域8を形成する基板4の露出面に親液化処理を施し、バンク7の表面に撥液化処理を施しておくことが好ましい。このような処理は、例えば、酸素やフッ化炭素のプラズマ処理によって行うことができる。
【0016】
なお、バンク7の形成は、液状体5の配置(パターニング)を高精度に行うために好ましいものの、本発明においては、画素部2を形成するためにこのような物理的な区画を必須としてはない。例えば、液状体に対して親液性になる領域(画素部2の形状)と、撥液性になる領域(隔壁3の形状)とをプラズマ処理等によってパターン形成し、親液性領域を前記所定領域8として、ここに液状体5を塗布し、着色層を形成するようにしてもよい。
さらに、カラーフィルタ1には、その表面側に保護層(図示せず)が設けられている。そして、このような構成のもとにカラーフィルタ1は、R、G、Bに着色された画素部2の一つ又は複数に光が選択的に通過させられることにより、フルカラー表示をなすようになっている。
【0017】
次に、本発明の液状体配置方法を実施するのに用いられる液滴吐出装置について説明する。
図3は液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。この液滴吐出装置10は、液状体5を基板4上の所定領域8上(画素部2内)に吐出するヘッドユニット20と、ヘッドユニット20を図3中のY方向に直線的に移動させるガイド機構30と、基板4をX方向及びY方向にそれぞれ移動させるガイド機構40とを有する構成となっている。なお、図3においては、ガイド機構40についてその構成の一部を省略して、基板4をX方向に移動させる構成のみ記載しているが、実際には、このX方向に移動させる機構と同様の機構でY方向に移動させる構成を有し、これらを組み合わせることにより、X方向及びY方向に基板4を移動できるようにしている。
【0018】
ここで、以下の説明においては、前記X方向を基板4の主走査方向(スキャン方向)と規定し、前記Y方向を基板4の副走査方向(フィード方向)と規定する。そして、X方向とY方向とは水平面内において互いに直交するものとする。さらに、X方向とY方向とからなるX−Y平面に対して垂直方向、すなわち液滴吐出装置10の高さ方向を、Z方向と規定している。
【0019】
ガイド機構30は、基台11上に設けられたZ方向に延びる2本の柱部材によって所定の高さに略水平に架設され、Y方向に直線的に設けられた一対のガイドレール31と、ガイドレール31に沿ってY方向に移動可能に設けられてヘッドユニット20を有する移動台32と、を備えて構成されたものである。
このガイド機構30は、ガイドレール31が内部にエアスライダ(図示せず)とリニアモータ(図示せず)とを備えており、ガイドレール31に接続された移動台32を、Y方向に自在に移動させることができるようになっている。
【0020】
ガイド機構40は、ガイド機構30の下方であって、X方向に直線的に設けられた一対のガイドレール41と、ガイドレール41に沿ってX方向に移動可能に設けられた基板移動台42とを備え、さらに、図示しないものの、例えばこれらガイドレール41及び基板移動台42をそのままY方向に移動させる機構を、備えて構成されたものである。
また、このガイド機構40も、内部にエアスライダ(図示せず)とリニアモータ(図示せず)とを備えており、これによって基板移動台42を、X方向、Y方向に自在に移動させることができるようになっている。
【0021】
また、移動台42は、吐出対象となる基板4を載置するための回転ステージ50を有しており、回転ステージ50は、基板4を載置するステージ51と、ステージ51をZ方向に延びる軸線回りに回転させる回転機構52とを有している。
ステージ51上には、基板4を位置決めする位置決めピン51aが複数設けられており、例えば、位置決めピン51aによる空気吸引等の手段によって、基板4をステージ51上に固定させる構成となっている。
回転機構52は、ステージ51の略中央部を下方から支持する形で移動台42上に設けられたもので、モータ等(図示せず)の回転駆動源を有したものである。そして、この回転駆動源を作動させることにより、基板4をZ方向に延びる軸線回りにθ度傾け、該基板4の基準軸を副走査方向及び主走査方向に正確に合わせられるようになっている。
【0022】
ヘッドユニット20は、移動台32に搭載されたもので、液状体5を吐出するヘッド21と、ヘッド21をZ方向に延びる軸線回りに回転させることで向きを変えるモータ22とを備えたものである。
ヘッド21は、ヘッドユニット20の下部に設けられたもので、図4に示すようにその下面に、液状体5を吐出するノズル23をY方向(副走査方向)に沿って整列配置させ、例えば180個のノズル23からなるノズル列24を形成したものである。なお、本実施形態では、ノズル23が1列に配列されているものとしているが、例えば千鳥状に2列配列されたものであってもよく、3列以上配列されたものであってもよい。また、ノズル列24を構成するノズル23の数についても、何個であってもよい。
【0023】
各ノズル23は、ヘッド21の内部に形成された各液室(キャビティ)に連通している。これら各液室には、それぞれに圧電素子25(図8参照)が設けられており、これら圧電素子25は、それぞれ電気信号(駆動信号)によって駆動させられるようになっている。このような構成によってヘッド21は、圧電素子25を駆動させて液室の容量を変化させ、液室に満たされた液状体5の液圧を制御することにより、ノズル23から液状体5を選択的に吐出させるようになっている。
なお、図示しないものの、ヘッドユニット20には、R、G、B各色に対応した複数のヘッド21が設けられている。また、ヘッド21の駆動方式としては、圧電素子によるものでなく、液室(キャビティ)に加熱素子を備えた、いわゆるサーマル方式などを採用することもできる。
【0024】
ここで、各ノズル23から吐出される液状体の1ドットあたりの重量、すなわち単位吐出量は、ノズル23を吐出動作させる圧電素子25等の駆動素子(加熱素子等も含む)によって決定される。つまり、駆動素子に印加される駆動信号の波形(駆動波形)によって主に決定される。ところが、全てのノズル23についてそれぞれの駆動素子に同一の駆動波形を印加しても、各ノズル23間では僅かながら単位吐出量にバラツキが生じている。
【0025】
また、このようなバラツキとは別に、駆動波形は基本的に同じにしてその周波数、すなわち駆動周波数を変化させると、ノズル23の単位吐出量は不規則に変動することが分かった。図5は、駆動波形を基本的に一定にして駆動周波数を変化させた際の、単位吐出量の変化を示すグラフである。このグラフにおいて駆動周波数とは、単位時間(例えば1分)あたりの吐出動作の回数を示しており、図5のグラフでは、横軸の右側に行くほど駆動周波数が大きくなり、したがって単位時間あたりの吐出動作の回数が増えることを示している。また、インク重量とは、各ノズルの単位吐出量の、全ノズル間での平均値を示しており、図5のグラフでは、縦軸の上側に行くほど、単位吐出量(平均値)が大きくなることを示している。なお、各ノズル23の単位吐出量は、全て実測値に基づいている。
図5に示したように、駆動波形が基本的に同じであっても、駆動周波数が変化すると、ノズル23の単位吐出量は不規則に変動する。
【0026】
また、前記したようにノズル23間では、それぞれの駆動素子に同一の駆動波形を印加しても、単位吐出量にバラツキが生じている。したがって、ある駆動周波数のもとで全てのノズル23に吐出動作させると、各ノズル23間での単位吐出量のバラツキは、例えば図6に示すようになる。図6において横軸のノズル番号は、同一のヘッドにおける180個のノズル23の配置順(位置)を示している。また、縦軸のインク重量とは、対応するノズル23の単位吐出量を示し、縦軸の上側に行くほど単位吐出量が大きくなることを示している。なお、ここでの各ノズル23の単位吐出量も、全て実測値に基づいている。
【0027】
そして、図6中において実線で示す線Aは、駆動周波数がAkHzのときの、ノズル番号と単位吐出量との関係を示し、破線で示す線Bは、駆動周波数がBkHzのときの、ノズル番号と単位吐出量との関係を示している。さらに、一点鎖線で示す線(A+B)は、ノズル番号と、駆動周波数がAHzのときの単位吐出量と駆動周波数がBHzのときの単位吐出量との平均値との関係を示している。ここで、これら駆動周波数AkHzとBkHzとは、ほぼ全てのノズル23が、互いに吐出量の過不足を打ち消すような組み合わせとなっている。
【0028】
すなわち、線(A+B)で示すように、AHzのときの単位吐出量とBHzのときの単位吐出量との平均値は、ほぼ全てのノズル23において一定になっている。なお、このように互いに吐出量の過不足を打ち消すような組み合わせについては、予め種々の駆動周波数で各ノズルからそれぞれ吐出を行わせ、各ノズル毎に単位吐出量を測定しておくことで、求めておくことができる。
【0029】
図3に示すように前記モータ22は、ヘッド21に接続されたもので、ヘッド21の基準軸をZ方向に延びる軸線回りにα度傾け、ノズル列24A、24Bを主走査方向に正確に合わせることができるようにしたものである。
なお、モータ22は、図7(a)に示すようにノズル23からなるノズル列24がY方向に一致している状態から、ヘッド21の角度を変えて図7(b)に示すようにノズル列24をY方向から傾けることにより、図7(a)に示したようにY方向における広い吐出ピッチP1を、図7(b)に示したようにY方向における狭い吐出ピッチP2に変化させることもできる。
【0030】
次に、液滴吐出装置10における液状体5の吐出制御方法を、液滴吐出装置10の電気的構成を示す図8を参照して説明する。
図8に示すように液滴吐出装置10は、装置全体の統括制御を行う制御コンピュータ(制御部)60と、制御コンピュータ60に接続されてヘッド21の電気的な駆動制御を行うための制御回路基板70とを備えている。
【0031】
制御コンピュータ60は、CPU(Central Processing Unit)、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の内部メモリ、並びにヘッドユニット20、ガイド機構30、ガイド機構40との間でデータ授受を行う各種入出力インターフェース回路等から構成されている。
制御回路基板70は、フレキシブルケーブル71を介してヘッド21に設けられた圧電素子25と電気的に接続されている。なお、ヘッド21には、ノズル23毎に設けられた圧電素子25に対応して、シフトレジスタ(SL)72、ラッチ回路(LAT)73、レベルシフタ(LS)74、スイッチ(SW)75がそれぞれ備えられている。
【0032】
液滴吐出装置10の吐出制御は、次のようにして行われる。
まず、制御コンピュータ60には、基板4上の各画素部2(所定領域8)に対する液状体5の配置パターンをデータ化したドットパターンデータが、予め記憶される。そして、このドットパターンデータは制御回路基板70に伝送される。制御回路基板70は、ドットパターンデータをデコードしてノズル23毎のON/OFF(吐出/非吐出)情報であるノズルデータを生成する。ノズルデータは、シリアル信号(SI)化されてクロック信号(CK)に同期して各シフトレジスタ72に伝送される。
【0033】
シフトレジスタ72に伝送されたノズルデータは、ラッチ信号(LAT)がラッチ回路73に入力されるタイミングでラッチされ、さらにレベルシフタ74でスイッチ75用のゲート信号に変換される。すなわち、ノズルデータがONの場合には、スイッチ75が開いて圧電素子25に液状体5の吐出量に応じた駆動波形を含む駆動信号(COM)が供給され、ノズルデータがOFFの場合には、スイッチ75が閉じられて圧電素子25に駆動信号(COM)は供給されないことになる。そして、ONに対応するノズル23からは、供給された駆動波形で圧電素子25が駆動されることにより、液状体5が液滴化されて吐出され、吐出された液状体が、基板4上に設けられた所定領域8上(画素部2内)に配置される。
【0034】
また、制御コンピュータ(制御部)60は、本発明では前記圧電素子25(駆動素子)に印加する駆動信号として、二つ以上の異なる駆動周波数のものを予め用意し、記憶しておく。例えば、図6に示したAkHzとBkHzの駆動周波数のものや、さらにこれらと異なるCkHzのものなどを用意し、記憶しておく。
【0035】
また、本発明では、このように駆動周波数が異なる複数の駆動信号を記憶したら、各ノズル23に対してどのタイミングでいずれの駆動周波数のものを印加するか、決定し記憶する。すなわち、各画素部2(所定領域8)に対する液状体5の配置パターンをデータ化したドットパターンデータを記憶した際、主走査方向での所定領域8の位置と、圧電素子25に印加する駆動信号(駆動周波数)との関係も記憶しておく。なお、このようにして使用される駆動周波数の駆動信号は、ヘッド21の全てのノズル23に対して共通に印加されるようなっており、したがって各ノズル23では、図6中のAkHzのものやBkHzのもののように、その単位吐出量に僅かながらバラツキが生じる。
【0036】
駆動周波数が異なる複数の駆動信号を、各ノズル23に対して印加するタイミングとして具体的には、例えば、主走査方向に沿う所定領域8毎に、駆動周波数(駆動信号)を変更する手法や、所定領域8には関係なく、主走査方向に沿って吐出動作させる際、ランダムに駆動周波数(駆動信号)を変更する手法などが考えられる。
また、特に単一の所定領域8に対して単一のノズル23から複数回の吐出を行わせる場合には、複数回の吐出を、図6中のAkHzのものとBkHzのもののように、互いに吐出量の過不足が打ち消される組み合わせの、複数の駆動周波数(駆動信号)を用いて行わせてもよい。
【0037】
このようにして制御コンピュータ(制御部)60には、主走査方向に沿う各所定領域8毎に、予め設定され記憶された駆動周波数(駆動信号)のうちの、対応する駆動周波数(駆動信号)が記憶され、さらに、この駆動周波数(駆動信号)での吐出回数なども合わせて記憶される。
【0038】
次に、前記構成の液滴吐出装置10を用いたカラーフィルタ1の製造方法について説明する。
このカラーフィルタ1の製造方法では、画素部2(図1及び図2参照)のR、G、B各色に対応する色材を含む液状体5(5R、5G、5B)を用意し、前記液滴吐出装置10(図3参照)を用いて液状体5R、5G、5Bを基板4上の所定領域8上(画素部2内)に配置し、カラーフィルタ1を形成する。
【0039】
図9に示すように本実施形態では、液状体5を配置するための基板4に、それぞれカラーフィルタ1の個体に対応した領域である4つの個体領域を設定しておき、該個体領域毎に隔壁3のバンク7(図2参照)によって画素部2の群を形成する。本実施形態では、画素部2の短辺方向を主走査方向(X方向)、長辺方向を副走査方向(Y方向)として、基板4をステージ51上に配置する(図3参照)。
【0040】
液滴吐出装置10では、主走査ガイド機構40で基板4をヘッドユニット20に対してX方向、Y方向に相対的に移動(走査)させながら、ヘッド21に形成された複数のノズル23から液状体5を吐出させ、基板4上に設けられた画素部2に液状体5を配置する(図2参照)。
このとき、従来であれば、ヘッド21から吐出される液状体5の量は、吐出特性の違いによってノズル23間で吐出量が異なり、したがってノズル組毎にバラツキが生じている。このため、画素部2内(所定領域8上)に配置された液状体5はその量にバラツキが生じてしまい、得られる膜はその厚さの薄い部分と厚い部分とが主走査方向にそれぞれ線状に並んでしまう。すると、図10(a)に示すように主走査方向(X方向)に沿って視認される一次元的なスジが、副走査方向(Y方向)にムラとなって生じてしまい、結果として副走査方向に濃淡ムラが生じることになる。
【0041】
そこで、本実施形態では、基板4をヘッドユニット20に対して主走査方向(X方向)に移動(走査)させつつ、ノズル23に吐出動作を行わせる際、各ノズル23の圧電素子25に印加する駆動周波数(駆動信号)として、制御コンピュータ(制御部)60に記憶した複数の異なる駆動周波数を用いる。
【0042】
これら複数の駆動信号を各ノズル23に対して印加するタイミングとして、前記したように特に主走査方向に沿う所定領域8毎に、駆動周波数(駆動信号)を変更すると、得られる各膜は、図10(a)に示した副走査方向(Y方向)の濃淡ムラが無いものとして見た場合、駆動周波数(駆動信号)の変更に対応して、図10(b)に示すように副走査方向(Y方向)に沿って視認される一次元的なスジが、主査方向(X方向)にムラとなって生じてしまい、結果として主走査方向に濃淡ムラが生じることになる。
【0043】
ところが、実際には、前記したように副走査方向に濃淡ムラが生じているので、このような副走査方向の濃淡ムラと主走査方向の濃淡ムラとが重ねられ、図10(c)に示したように濃淡ムラが二次元的にランダムに発生することになる。したがって、得られるカラーフィルタ1全体としては、誤差分散効果によって濃淡ムラが視認されにくくなり、このような濃淡ムラが目立たなくなる。よって、このようにして液状体を配置すれば、カラーフィルタ1を構成する薄膜となる液状体を、視認性が良好となるように吐出し配置することができる。
【0044】
また、複数の駆動信号を各ノズル23に対して印加するタイミングとして、前記したように、特に所定領域8には関係なく、主走査方向に沿って吐出動作させる際、ランダムに駆動周波数(駆動信号)を変更してもよい。その場合には、図10(b)に示したようなスジムラ(濃淡ムラ)が、主査方向(X方向)に規則的なムラとなって生じることなく、不規則(ランダム)な濃淡ムラとなる。したがって、このような主走査方向と濃淡ムラと図10(a)に示した副走査方向の濃淡ムラとが重ねられることにより、得られるカラーフィルタ1は、全体としては誤差分散性が高くなり、濃淡ムラが視認されにくく、目立たなくなる。よって、このようにして液状体を配置しても、カラーフィルタ1を構成する薄膜となる液状体を、視認性が良好となるように吐出し配置することができる。
【0045】
なお、前記した、各ノズル23に対して複数の駆動周波数(駆動信号)を所定領域8毎に変更させる場合や、所定領域8には関係なくランダムに変更させる場合の、いずれの場合においても、単一の所定領域8に対する単一のノズル23からの吐出回数については、1回であっても複数回であってもよい。複数回であれば、各ノズル23の単位吐出量のバラツキが積算され、ノズル23間での吐出量のバラツキが大きくなるものの、所定領域8間では、1回の吐出の場合に生じるムラと同じ傾向のムラが生じることになり、したがって、前記した誤差分散効果も同様に得られるからである。
【0046】
また、複数の駆動信号を各ノズル23に対して印加するタイミングとして、前記したように、特に単一の所定領域8に対して単一のノズル23から複数回の吐出を行わせる場合には、複数回の吐出を、図6中のAkHzのものとBkHzのもののように、互いに吐出量の過不足が打ち消される組み合わせの、複数の駆動周波数(駆動信号)を用いて行わせるのが好ましい。
【0047】
すなわち、例えばAkHzの駆動信号による吐出回数と、BkHzの駆動信号による吐出回数とを同じにして、単一の所定領域8上に液状体を吐出配置すれば、この単一の所定領域8上には、見掛け上、図6中の線(A+B)で示す駆動周波数の駆動信号で、全てのノズル23から吐出が行われることになる。すると、このように吐出が行われることにより、図6に示したようにほぼ全てのノズル23において、見掛け上の単位吐出量が一定になる。よって、全ての所定領域8は、複数回の吐出によって吐出量の過不足が打ち消され、ほぼ均一な量の液状体が配置されるようになる。したがって、このようにして液状体を配置すれば、カラーフィルタ1を構成する薄膜となる液状体を、所定領域8間で均一に配置することができ、これにより、濃淡ムラのない良好な視認性のカラーフィルタ1を形成することができる。
【0048】
よって、本実施形態のカラーフィルタ1の製造方法、及びこの方法に用いられる前記液滴吐出装置10によれば、誤差分散効果によって濃淡ムラを目立たなくさせ、あるいは、濃淡ムラそのものをなくすことができ、これにより、優れた表示性を有する高品質のカラーフィルタを製造することができる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、前記実施形態では二つ以上(複数)の異なる駆動周波数として、図6に示したAkHzおよびBkHzの二つの駆動周波数を用いるようにしたが、三つ以上の異なる駆動周波数の駆動信号を用い、各ノズル23に吐出動作を行わせるようにしてもよい。
また、特に単一の所定領域に対して単一のノズルから複数回の吐出を行わせる場合にも、前記複数回の吐出を、全体として吐出量の過不足が打ち消されるように三つ以上の異なる駆動周波数の駆動信号を組み合わせ、用いて行ってもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、本発明の液状体配置方法、及びこれを実施するのに好適な液滴吐出装置を、カラーフィルタの製造方法に適用したが、本発明はこれに限定されることなく、液状体の配置を必要とする種々のものに適用することが可能である。具体的には、有機EL装置における有機機能材料、すなわち発光材料や正孔注入輸送材料等を所定領域に配置する際に、本発明の液状体配置方法や液滴吐出装置を適用することができる。さらに、液晶表示装置において、その配向膜を液滴吐出法で形成する場合にも、本発明の液状体配置方法や液滴吐出装置を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態におけるカラーフィルタの平面構造を示す模式図である。
【図2】図1におけるカラーフィルタのA−A断面図である。
【図3】液滴吐出装置の要部構成を示す斜視図である。
【図4】ヘッドユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】駆動周波数とインク重量(吐出量)との関係を示すグラフである。
【図6】駆動周波数毎の、ノズルとインク重量との関係を示すグラフである。
【図7】(a)、(b)はヘッドの構成を示す模式図である。
【図8】液滴吐出装置の電気的構成を示す図である。
【図9】画素部内における液状体の配置パターンを示す模式図である。
【図10】(a)〜(c)は所定領域に配置された液状体の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1…カラーフィルタ、2…画素部、4…基板、5、5R、5G、5B…液状体、7…バンク、8…所定領域、10…液滴吐出装置、21…ヘッド、23…ノズル、24…ノズル列、X(方向)…主走査方向、Y(方向)…副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有するヘッドと基板とを少なくとも主走査方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから液状体を吐出することにより、前記基板上に設定された複数の所定領域に対して前記液状体をそれぞれ配置する液状体配置方法であって、
前記ノズルが前記主走査方向と直交する副走査方向に所定間隔をおいて配列されており、前記所定領域が前記主走査方向に沿って複数配列されてなる場合に、
前記ノズルから対応する所定領域の主走査方向に沿う列に対し、二つ以上の異なる駆動周波数を用いて前記ノズルから吐出を行わせ、液状体を各所定領域に配置することを特徴とする液状体配置方法。
【請求項2】
単一の所定領域に対して単一のノズルから複数回の吐出を行わせる場合に、前記複数回の吐出を、互いに吐出量の過不足が打ち消される組み合わせの複数の駆動周波数を用いて行わせることを特徴とする請求項1記載の液状体配置方法。
【請求項3】
複数のノズルを有するヘッドを備え、該ヘッドを基板に対して少なくとも主走査方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから液状体を吐出することにより、前記基板上に設定された複数の所定領域に対して前記液状体をそれぞれ配置する液滴吐出装置であって、
前記ヘッドにおける各ノズルからの液状体の吐出を制御する制御部を有し、
前記ノズルが前記主走査方向と直交する副走査方向に所定間隔をおいて配列されており、前記所定領域が前記主走査方向に沿って複数配列されてなる場合に、
前記制御部は、前記ノズルから対応する所定領域の主走査方向に沿う列に対し、二つ以上の異なる駆動周波数を用いて前記ノズルから吐出を行わせ、液状体を各所定領域に配置するように、前記ヘッドにおける各ノズルからの液状体の吐出を制御することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
単一の所定領域に対して単一のノズルから複数回の吐出を行わせる場合に、前記複数回の吐出を、互いに吐出量の過不足が打ち消される組み合わせの複数の駆動周波数を用いて行わせることを特徴とする請求項3記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の液状体配置方法を用い、あるいは、請求項3又は4に記載の液滴吐出装置を用いることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−136721(P2009−136721A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313312(P2007−313312)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】