説明

液状被処理物の粉末乾燥方法とその装置

【課題】低温で微粉化する乾燥方法を提供する。
【解決手段】
水分を多量に含む液状被処理物を霧状で熱エネルギーを付与して微粉末状に乾燥する方法において、筒状の乾燥塔1の内部を減圧状態に保持し、乾燥塔1の上部よりスプレーノズル2より被処理物を霧滴状mで供給し、この霧滴mが乾燥塔1内を降下する間に乾燥塔1の外面に形成したセラミックス複合層を経由した加熱で、内面より遠赤外線を照射して加熱し、乾燥して微粉末を形成する液状被処理物を乾燥する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、醤油あるいは醤油を絞る前のモロミなどを乾燥することによって取扱性を向上させ、更にうまみ成分を増加させた微粉末状の乾燥醤油などの乾燥調味料を製造するための乾燥方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国における消費量が大きい代表的な調味料としては醤油がある。この醤油には、こいくち醤油、うすくち醤油、たまり醤油、白醤油、さいしこみ醤油、生醤油、減塩醤油など各種の醤油が製造され、販売されている。
【0003】
当然のことながら、醤油は通常は液状であり、これをガラスビンやペットボトルなどの容器に収容して貯蔵や移送、そして販売され、小口に分けて使用される。しかし、液体で貯蔵や輸送することは容積が大きく、また、保存すると短期間に変質する傾向があり、その保存条件がかなり厳しく、特に高温にさらすことが最も嫌われ、低温保存が推奨されるが、それでも賞味期限は一年ないし一年半程度の短期化に過ぎず、しかも保存期間中でも次第に味が変化することから、倉出し直後の新鮮なものが賞用される。また、保存と共に味が変化する傾向がある。
【0004】
粉ミルクやインスタントラーメンなどの汁は、当然、粉体として乾燥によって減容して取扱性や保存性を改善する方法が実施されている。しかし、醤油の乾燥は、味が大きく変化することや粉末状に乾燥したとしても「潮解性」があり、空気中の水分を吸収して品質や味が変化し易いなどの問題があり、それほど多くは製造されていない。
【0005】
粉ミルクやインスタントラーメンの汁などの粉末状調味料や薬品などには乾燥する方法が多用されているが、これらの乾燥方法としては、噴霧乾燥装置(スプレードライヤ)が多く使用されている。この乾燥装置における重要な要素の一つは液状原料の微粒化であるが、この微粒化は、液状原料と空気とのせん断によって生じるものであるが、それにはさまさまな装置が提案されている(非特許文献:乾燥食品の基礎と応用)。
【0006】
また、醤油を粉末化する方法は、減圧ドラム乾燥法、真空凍結乾燥法、噴霧乾燥法であるが、噴霧乾燥法が好ましい。この噴霧乾燥法に用いられる装置としては、例えば、加圧ノズル式噴霧乾燥機、二流体ノズル式噴霧乾燥機、デスクアトマイザー式噴霧乾燥機、噴霧乾燥・造粒兼用乾燥機などが使用される(特許文献1、2)。
【非特許文献1】株式会社 幸書房 1997.9.1発行 「乾燥食品の基礎と応用」第92〜94頁
【特許文献1】特開2004−105066号公報
【特許文献2】特開平7−213249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液状被処理物を効率良く乾燥するためにはこの液状被処理物を効率的に微粉化することが必要である。これの第1の手段として回転円板方式が多く使用されている。この装置は、高速で回転する円板の中心部より液状原料を供給し、液状原料が円板の外周より離れる際、空気とのせん断力によって微粒化させるものであり、この装置は円板の回転によって液滴の直径を制御できる特徴がある。また、第2の手段として噴霧ノズル方式があるが、これには各種の形状の噴口より、液体そのものを噴霧するものと、気体と共に液体を混合状態で噴霧する方式のものとがある。
【0008】
これらの何れの方式も、液体の中に固形物が余り含まれていない原料を霧化するものであり、したがって例えば醤油のモロミなど、原料である固形物を含むものについてはあまり適していない方法である。
【0009】
また、従来の粉末乾燥方法(ノズルよりの噴霧、あるいは回転円板による微細化による乾燥方法)には、噴霧の液滴に対する熱エネルギーの付与に問題がある。この乾燥方式においては液状原料を微細化した直後に大きな相対速度で「高温の熱風」と接触させることにより、速い熱伝達速度で高温熱風と接触させることにより、濃縮・乾燥が進み、ごく短時間で表面が乾いた状態となり、その後は一般に減率乾燥に入り、ゆっくりとした乾燥が行なわれるものである。
【0010】
この乾燥方法における熱風温度は、通常は120〜200℃の高温の熱風が採用されており、噴霧粒径は100〜400μmであり、更に、製品直径は一般に60〜200μmである。
【0011】
しかし、前記したように高温の熱風に接触させて乾燥させた粉末醤油は、予想外に強い潮解性を持っており、従って、この粉末醤油は短期間に吸湿する傾向がある(潮解性を有している)。そしてこの乾燥醤油が吸湿すると、時間経過と共に味やうまみ成分が変化し、遂には製造直後のものとは比較できない程度に味が劣化し、特に漬物やサシミのように醤油の味を直接に感ずる用途には全く適さないものとなる。乾燥醤油にはこのような問題があるために家庭用などに使用するにも問題がある。また、保存中に乾燥粉末全体が、あたかも石の塊のように一体的に集合し、固化する性質があり、これを使用することが実質的に困難な場合も生ずる。
【0012】
また、従来の乾燥方法においては、綺麗な噴霧ないしは液滴を形成させる必要があることから、乾燥に際して液状原料に固形物を含まないことが要件であり、僅かでも固形分を含むものについては乾燥できないことがある。
【0013】
例えば、醤油の場合、その中間材料であるモロミをそのまま、あるいは熟成モロミとしたものを、従来技術のように高温の熱風に接触させて乾燥させる方法を採用すると、乾燥粉末の品質が変化するなどの問題がある。
【0014】
このような従来技術の欠点を解消するために、前記温度の熱風より遙かに低温で乾燥することができれば、乾燥した微粉末の生産量が増加する上に、生醤油となる以前の工程の状態(火入れ、澱引きなどの工程を経過しない)である熟成モロミの味をそのまま保存することができるという従来の製品にはないメリットも期待できる。
【0015】
本発明は、液状被処理物の加熱手段として遠赤外線による間接的な加熱を採用し、乾燥塔の内部の雰囲気温度を、霧滴が実質的に沸騰しない温度、即ち、100℃以下、更に好ましくは90℃〜80℃の温度範囲に保持することが必要である。そして乾燥塔の内部を減圧状態に保持することの要件を満たすことによって、特に粉末醤油の場合は、熟成したモロミの状態でも乾燥できる方法とその装置を提供することができる。
【0016】
また、乾燥を助長するために乾燥塔内を減圧状態とすることによって、遠赤外線とこの減圧の相乗効果により、従来技術に比較してかなり低温であるにも係わらず、良好な乾燥を行うことができるように構成している。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するための本発明に係る液状被処理物の乾燥方法は、次のように構成されている。
【0018】
1)水分を多量に含む液状被処理物を微細な霧状に形成し、熱エネルギーを付与して微粉末状に乾燥する方法において、筒状の乾燥塔の内部を減圧状態に保持した状態で、該乾燥塔の上部より前記液状被処理物を霧状で供給し、この霧状の被処理物が乾燥塔内をゆっくりと降下する間に、実質的に高温の熱風加熱による乾燥を避けて前記乾燥塔の内面より照射される遠赤外線により加熱(間接加熱)して水分を蒸発させて乾燥した微粉末を形成することを特徴としている。
【0019】
2)前記乾燥塔の外周面を加熱し、該乾燥塔の内面より遠赤外線を照射して前記乾燥塔の内面の雰囲気の温度を水分が沸騰する温度以下(具体的には100℃以下)、好ましくは90℃以下に保持し、しかも内部を減圧状態に保持することを特徴としている。
【0020】
3)液状被処理物は、醤油や醤油の原料であるモロミ、あるいはジュース類や深層水など、霧状での乾燥により微粉末を生成する物質であることを特徴としている。
【0021】
4)液状被処理物が醤油もしくはモロミあるいはこれを主体とする液状被処理物であり、該液状被処理物を95℃〜80℃の範囲に保持して前処理した後に、前記乾燥塔の上部より霧状で供給することを特徴としている。
【0022】
5)液状被処理物が醤油もしくはモロミあるいはこれを主体とする液状被処理物であり、該液状被処理物に含有される油分などを分離除去した後に、前記乾燥塔の上部より霧滴状で供給することを特徴としている。
【0023】
本発明に係る液状被処理物の乾燥装置は、次のように構成されている。
6)堅型の円筒状の乾燥塔と、この乾燥塔の上部に配置された液状被処理物の微粉化装置と、前記乾燥塔の下部に連結されたサイクロン型の分離装置と、この乾燥塔内を減圧に保持するための圧力調整機構からなり、前記乾燥塔の外側の表面にセラミックス層を形成すると共に、このセラミックス層の外側に電熱加熱体を積層配置し、微粉化装置を介して液状被処理物を霧状で供給し、減圧下において前記乾燥塔内面から照射される遠赤外線によって加熱するように構成したことを特徴としている。
【0024】
7)前記セラミックス層は少なくとも二層で形成され、これらのセラミックス層の放射率を比較し、この放射率の高い材料を熱源側に、放射率の低い材料を乾燥塔の表面側に配置したことを特徴としている。
【0025】
8)前記微粉化装置は、回転円板型、加圧ノズル型、二流体ノズル型あるいはこれらの変形したものを使用することを特徴としている。
【0026】
9)前記微粉化装置は、液状被処理物を収容する供給室と、この液状被処理物を細分化する分流部と、混合室とが一連に配列されており、前記分流部は液状被処理物を細い線条に分離するためのノズルを有し、前記混合室は、周囲に複数本の圧縮気体の噴射ノズルが設けられ、前記分流部のノズルより吐出された線条の液状被処理物を案内し、前記噴射ノズルより噴射する高圧気体を前記線条の液体被処理物に衝突、攪乱させて微粉化するように構成したことを特徴としている。
【0027】
10)液状被処理物の微粉化装置は、噴射孔を持つ外管と、この外管の内部に可動的に挿入されたノズル体を有し、前記外管とノズル体の間に加圧された液状被処理物が供給されており、前記ノズル体を瞬時に後退・前進運動させて液状被処理物をパルス的に噴射して微粉化することを特徴としている。
【0028】
11)前記圧力調整機構は、乾燥塔内を490〜2940Pa(50〜300mmAq)の範囲で減圧する排気能力を持っていることを特徴としている。
【0029】
A)遠赤外線の使用
縦長の円筒状の乾燥塔の内面より発生した遠赤外線による加熱は、霧状の被処理物を熱風により直接的な加熱をさけるものであって、乾燥塔の内部の雰囲気の温度を、霧状の被処理物が沸騰しない温度に保持する。例えば、雰囲気の温度が液滴の沸騰する温度以下である98℃であっても、乾燥塔自体の温度は、この温度よりかなり高温(100℃以上)に加熱されることになる。その理由は、間接加熱を採用しているからである。
【0030】
また、乾燥塔を外面から加熱する手段としては、ニクロム線を使用したバンドヒータやシーズヒータを使用することができる。
【0031】
乾燥塔内面より遠赤外線を効率的に照射するために、内面を光沢があるように仕上げ、また、付着物の付着を防止するようにしている。
【0032】
乾燥塔内の雰囲気の温度は、95℃以下ないし80℃程度であるが、この温度は一種の間接加熱でありながら、霧滴の水分の蒸発を可能な限り早めるためで、遠赤外線の放射により霧滴に対して効率的に熱エネルギーを打ち込むことができるものである。
【0033】
効果的に遠赤外線を乾燥塔の内面より放射するためには、ヒーターの発生する熱エネルギーを乾燥塔内側に移動させることが重要である。そのために、乾燥塔の外面に二重のセラミックス層をプラズマ溶射によって形成している。セラミックス層自体は薄いものであるが、実際には熱エネルギーを案内する効果においては格段に優れている。
【0034】
B)乾燥塔内の減圧
乾燥塔内を減圧することにより液滴の水分の蒸発を促進することができるが、その減圧は、490〜2940Pa(50〜300mmAq)で良く、この程度でも充分な乾燥効果を発揮することができる。この減圧により蒸気圧を低下させて霧滴からの水分の蒸発を促進することができる。
【0035】
C)前処理による潮解性成分の除去
モロミの状態ないしこのモロミを絞るなどの所定の加工工程を経由した醤油の場合は、そのまま乾燥しても粉末醤油を得ることが可能である。
【0036】
ところで、この乾燥粉末を保存していると次第に全体が一体の塊となる現象がある。本発明者のこの現象に関する研究によると、この醤油やモロミには乾燥粉末を保存している間に吸湿する性分として、原料の大豆が含んでいた油分や揮発性成分があり、これが潮解性成分を形成していることを確認している。
【0037】
従って、乾燥処理の前に、潮解性成分を減少させる「前処理」を行ない、その後に、乾燥処理することによって吸湿性を低下させ、その結果、粉末の長期保存でも吸湿性を実質的に低下、あるいは消滅させ、粉末の集合体が全体として大きな塊が形成されることを防止できる。
【0038】
この前処理は、98℃あるいはその前後の温度で、なるべく沸騰しない温度において2〜3時間、数日間程度、加熱することによって、潮解性成分の元となる低沸点成分を蒸発除去し、更に沈殿する成分を積極的に析出させ、これを分離する操作が最も適している。
【0039】
また、同温度に保持した液状被処理物を緩慢な攪拌処理によって揮発性成分の除去を促進し、沈殿物質の沈殿を早めることをできる。この初留分を形成する潮解性成分の量は、被処理物全体の約3〜5%程度であり、また、液中に分離する残留分は5〜7%程度である。これらを除去した後に乾燥して粉末化したものは、潮解成分が除去されており、長期にわたって安定して保存できる。
【0040】
前処理の温度は前記のように沸騰温度より遙に低温ではあるが、減圧作用を併用することによって水分の蒸発を促進してかなりの部分を除去することが可能である。液状被処理物の中から大量の水分を除去することは、乾燥塔に被処理物を供給する前に半乾き状態とすることになり、乾燥工程における水分の蒸発を、著しく早めることができ、極めて効率よく粉末乾燥することができる。前処理の段階で蒸発させる水分の割合は、前記の如く噴霧蒸発工程の長短に影響するものであるが、具体的には原液の40〜45%が好ましく、それ以上蒸発をさせると噴霧工程で霧滴の大きさの均一性を欠くことになるから、注意が必要である。
【発明の効果】
【0041】
本発明は、上下に長い、堅型の円筒状の乾燥塔と、この乾燥塔の上部に配置された液状被処理物の微粉化装置(噴霧装置など)と、前記乾燥塔の下部に連結されたサイクロン型の分離装置と、この乾燥塔内を圧力調整機構(排気ブロア)により減圧状態に保持し、更に、乾燥塔の外面を二重セラミックス層(このセラミックス層は、異なる放射率を持ち、放射率の高い材料を熱源側に、放射率の低い材料を伝熱側にそれぞれ配置して熱移動を容易にしている。)を介して加熱することにより、乾燥塔の内面より遠赤外線を放射することができるのである。
【0042】
そして乾燥塔の内部の雰囲気の温度は、従来の装置より低温(熱風に直接に接触させない条件とする。)である。具体的には水の沸騰点より高温(霧滴が瞬時に蒸発する温度)に、直接的に加熱することを避けながら、比較的低温で、しかも遠赤外線の照射によって霧滴を加熱して水分を蒸発分離させることを主体としている。
【0043】
水分を多量に含む液状被処理物は常圧において100℃で煮えることから、煮えない温度である100℃未満、好ましくは90〜85℃の低温に雰囲気温度を保持しながら、原料の噴霧ないし微細な霧状で乾燥塔内を浮遊させながら、乾燥塔の壁面よりの遠赤外線の照射を利用して加熱する。その結果、従来の装置では考えられないような低温において効率的に乾燥するものである。
【0044】
従って、液状被処理物(処理原料)の霧滴を沸騰させるような条件を極力避けながら、この霧滴に高温による熱的な影響を与えることを防ぎ、減圧の作用を併用して乾燥させ、原料本来の味や、うまみ成分を損なうことなく、これらをそのまま保持できる。従って、実質的に原料の元の味を保存した、あるいは更に改善した粉末状乾燥物を製造することができる。
【0045】
また、従来技術のように、150〜200℃の高温の熱風を全く採用しないことから、微細な噴霧を瞬間的な加熱による味の劣化を防ぐことができ、例え、醤油のモロミのように固形分を含む液状被処理物でも効率的に乾燥することができるものである。
【0046】
また、この発明において特に開発した特殊な微粉化装置(高圧空気噴射ノズル)を使用することにより、固形分を含む被処理液でも、高度に微細な霧滴を形成して乾燥効率をあげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1)・・基本的装置
図1は、液状原料(特に粉砕した、醤油完成直前の中間原料であるモロミ、このモロミを絞って所定の前処理工程で処理した醤油、更にインスタントラーメンなどの調味料等、粘度が比較的高い各種の調味料は勿論、粘度の低いジュースなどの原料)を簡単に粉末状に、しかも味を損なうこともなく乾燥できる乾燥装置Aの概略図である。
【0048】
この乾燥装置Aは、従来の噴霧乾燥装置のように、高温(例えば120℃〜200℃)の上昇する熱風中に直接噴霧してその霧滴を直接高温に加熱して乾燥させることを避け、乾燥塔1の内部から放射される遠赤外線を利用して、間接的な熱エネルギーの付与によって乾燥するものである。従って、乾燥の機構が従来の熱風を使用した乾燥装置とは全く異なるものである。
【0049】
次に、乾燥装置Aの構成をその動作と共に説明すると、乾燥装置Aの主要部である乾燥塔本体1の上部に、液状原料rを噴霧状態で供給する微粉化装置2(スプレーノズル)が設けられ、このノズル2に原料タンク4内の原料rをポンプ3で加圧して配管5を経由して所定量づつ供給して本体1内に微細な噴霧m(微細な霧滴)を形成するようになっている。
【0050】
乾燥塔本体1は、通常の乾燥装置のように背丈の低いものではなく、比較的長尺で堅型の円筒状に形成されており(例えば、直径が2.5m、高さが12〜18m)、そのために霧滴が塔内の降下時間を長く保持できるように構成している。
【0051】
前記ノズル2より発生した噴霧mは、本体1の中をゆるやかな速度で自然に降下する間に、壁面からの遠赤外線の照射を受けて水分が蒸発させ、乾燥物dとなり、本体1の下部に到達するのである。
【0052】
この本体1の下部は縮小されており、この縮小された下部とダクト6を経由してサイクロン型の分離器7が接続されているが、この分離器7の排気管は強力な吸引力を持つブロア8と、排気処理装置9を結ぶダクト6aに接続されている。この排気処理装置9は、乾燥工程で発生した蒸気を液化してドレンDとしたり、排気中に含まれている固形分を分離除去する機能を有するものである。前記サイクロン8で分離された乾燥物dは、バルブを介して接続されているタンク7a内に収容されるようになっている。
【0053】
本発明に係る乾燥装置Aで処理する原料rとしては、粘度の低い牛乳やジュース類は勿論であるが、例えば、醤油、この醤油の中間原料であるモロミでも前処理(ペースト状に微粉砕、油分などの始留分の除去などの処理)したものであると乾燥させることが可能である。
【0054】
即ち、モロミを高速攪拌式粉砕機あるいは摩砕式粉砕機などで粥状ないしペースト状あるいは豆乳状に微粉砕された固形分を含む流動状物(緩いペースト状物)でも噴霧の状態によっては乾燥することができるものである。
【0055】
(特殊構造を持つ微粉化装置:スプレーノズル)
この実施例においてはスプレーノズル2として図2及び図3に示す如く高速気流攪拌型の装置を使用している。
【0056】
このノズル2は、本体10の上部に原料rの供給口11を、下部に霧滴mを案内する釣り鐘型あるいは放物線型(ベル型)に形成された排出口12をそれぞれ設け、その中間部に細分化ノズル13を配置している。また、前記本体10の周囲であって、前記ノズル13より下方に圧空噴射パイプ14を枝状に設けている。
【0057】
図3に前記ノズル13より噴出する線条に形成された原料流群fと前記パイプ14との関係を示しており、排出口12内に細径のソーメン状に噴出される線条原料流群f(集合体)の周囲の複数のカ所から、高速で圧空流aを噴射して衝突させ、原料流群fを粉砕・分離し、攪拌させるように構成されている。
【0058】
図2及び図4にはノズル2の長さが短縮されて描かれているが、実際の装置は排出口12は長く、この排出口12に沿って多数本の圧空噴射パイプ14を線条原料流群fに衝突と攪拌・空気攪乱させて細分化し、霧滴状態となるように配置されている。
【0059】
図5,図6は、線条原料流群fが圧空噴射パイプ14より高速で噴射される圧空流aによって粉砕霧化される様子を示しており、図5は線条原料流群fが噴射される圧空aによって粉砕され、霧状になり、旋回力を伴い攪乱されながら排出される様子を示している。なお、複数の圧空流aは排出口12に沿って長手方向に位置をズラし、あるいは図6に示すように略同一の場所において圧空流aを集中的に衝突させるように配置することもできるのであるが、何れにしても複数本の線条の原料流群fに対して、高圧の圧空流aを直撃させて粉砕・細分化し、空気流中に微細な霧滴として分散させる機能を持つものであれば良い。細分化ノズル13に開孔する線条原料流群fを形成するための細孔は、ノズル孔が固形分で詰まらない範囲で、できるだけ細孔であることが好ましい。
【0060】
また、この線条原料流群fは排出口12内に設けられた衝突板(不図示)に衝突させて霧化させた後に圧空流aによって衝突・分離・攪拌されて霧化することもできる。
【0061】
(遠赤外線による加熱)
繰り返しになるが、本発明における乾燥塔本体1の加熱方式は、従来のように高温の熱風を利用した直接加熱方式ではなく、遠赤外線の放射熱エネルギーを照射する「間接加熱方式」を採用しており、遠赤外線の透過効果と加熱効果を利用して霧滴の内部まで瞬時に加熱するものである。
【0062】
遠赤外線の放射熱エネルギーを発生する装置の構造としては、図7〜図9に示すように乾燥塔本体1の外表面(吸熱面)にセラミックス層16を形成し、このセラミックス層16の外表面に熱源である電熱加熱式発熱体17が設けられている。このセラミックス層16は、第1セラミックス層C1 と、第2セラミックス層C2 の二重の積層セラミックス層で構成されている。そしてこのセラミックス層16を全面的に加熱するための電熱式発熱体17と耐熱性断熱層18が設けられている。
【0063】
図9は、乾燥塔本体1の外面に形成されたセラミックス層16を拡大して示しており、この実施例においては第1セラミックス層C1 (放熱面側の層)は酸化アルミ(Al2 O3 )であり、その上側の第2のセラミックス層C2 (吸熱面側の層)として酸化チタン(Ti02 )を使用している。
【0064】
発熱体17(ニクロムヒーター、シーズヒーターなど)に対面してこれより熱エネルギーを受ける吸熱面側に酸化チタンの層を、乾燥塔本体1の表面側である受熱した熱エネルギーを乾燥塔本体1に放熱する側に酸化アルミの層をそれぞれ形成した理由は、多数の実験結果より熱伝達速度の大小に一定の法則ないし傾向があるからである。
【0065】
つまり、高温側(吸熱面側)の第2のセラミックス層C2 の材料として“放射率の高いもの”を使用し、低温側(放熱面側)の第1のセラミックス層C1 は、“前記放射率より低い放射率”を持つセラミックス層を、少なくとも二層の構造で使用することが前提である。この複合構造のセラミックス層16は、塔本体1の外表面側に設けられた発熱体17の熱エネルギーを、遠赤外線の状態で塔本体1内面から放射するためのものである。
【0066】
図10は、各温度における「黒体」の分光放射エネルギー分布図であって、縦軸に分光放射エネルギー密度(W/cm・μm)を、横軸に対応する温度におする波長(μm)をそれぞれとって描いたエネルギー密度の分布図を参考に示すグラフである(プランクの放射式参照)。
【0067】
この黒体の分光放射エネルギー密度の分布図における曲線と、現実の材料からなる分光エネルギー密度の分布とは必ずしも一致しないものであるが、同じ傾向を持っていることは間違いなく、放射率の高いものが高温において遠赤外線を放射するものである。
【0068】
この点を考慮すると、所定の温度における酸化チタンの曲線は、波長の短い位置にエネルギー分布図の山の頂点(X)が位置し、そして同様な温度において酸化アルミの曲線は波長の長い位置にエネルギー分布図の山の頂点(Y)がそれぞれ位置している。当然のことであるが、両者の間には材料の差によって分光放射エネルギー密度にズレ(X〜Y)があることを示している。
【0069】
前記二種類のセラミックス層C1 (酸化アルミ)、C2 (酸化チタン)に関する積層の順序と、加熱効果については、本発明者は下記との実験を行なって確認した結果である。
【0070】
その実験は、A.アルミ製の容器の表面をそのままにしたもの(ブランク)、B.表面(吸熱面側)に酸化アルミの単層をプラズマ溶着したもの.C.表面に酸化チタンの単層をプラズマ溶着したもの、D.容器の表面に酸化チタン/酸化アルミの順序で二層に溶着したもの、E.容器の表面に酸化アルミ/酸化チタンの順序で二層に溶着したものを準備した。
【0071】
そして前記A〜Eの容器に約300ccの水を収容し、一定の状態で燃焼するように調節されたガスバーナの上の、所定の位置に設けた鉄板(トレー)の上に載せた状態で、容器内の水の蒸発時間(蒸発の速さ)を測定した。その結果は、A、B、Cは実質的に蒸発時間に大差が認められなかった。
【0072】
しかし、二層構造のセラミックス層C1,C2 を積層したD(酸化チタン/酸化アルミ)は、前記A〜Cより蒸発時間が約5〜8%程度は短縮されていることが判明した。また、二層構造のセラミックス層を設けたE(酸化アルミ/酸化チタン)の蒸発時間は前記A〜Cより約10〜20%は早く蒸発することが分かった。
【0073】
つまり、吸熱面側に特定の材料の順序で形成される二層構造のセラミックス層を設けることで、容器の内部(放熱面側)に熱伝達が良好に行なわれることが分かったのである。
【0074】
(観察結果)
この容器の受熱状態の傾向をまとめて見ると、セラミックス層の持つ放射率を比較し、放射率が大きい方のものを吸熱面あるいは受熱面側に配置し、放射率がそれより小さい方のものを放熱面側に配置することによって、水の蒸発速度を促進する特性を持つことが分かったのである。
【0075】
従って、酸化チタンと酸化アルミからなる異なる材料を使用したセラミックス層の場合は、乾燥塔本体の表面に酸化アルミ層を配置し、その酸化アルミ層の上面(吸熱面)に酸化チタンのセラミックス層を配置することによって、優れた伝熱効果を示している。従って、乾燥塔本体1の外表面に二層構造のセラミックス層(C1 /C2 )を形成することによって、この乾燥塔本体1の内面より、遠赤外線を効率的に放射し、これによってスプレーノズル2より噴霧される霧滴mを「間接的に」加熱し、水分を急速に蒸発させ、残留物あるいは固形分を含むものでも粉末状の製品とすることができるものである。
【0076】
図1に示すように、乾燥塔本体1の下部よりブロア8を介して吸引しているが、このブロア8の吸引により乾燥塔本体1の内部は水柱で50〜300mm(490〜2940Pa)、あるいは最大で500mm(4900Pa)程度の高い減圧に保持することができるのである。
【0077】
周知のように、減圧の程度が高くなるとそれに応じて蒸発温度が低下する。蒸気線図より見ると、蒸発温度と減圧の程度は、水柱で0〜6000mmまで大きな変化がない。しかし、モテル装置によって水の蒸発速度を比較すると、前記より遙に減圧が少ない50〜300mm、特に100〜300においてかなり大きな差が発生することが確認されている。
【0078】
従って、本発明を実施する際は、乾燥塔本体1の内部を減圧することが条件であり、この減圧効果と内面より照射される遠赤外線の加熱効果の相乗効果により、比較的低温でも効率的に蒸発ができるのである。
【0079】
減圧が水柱で50mm以下であると蒸発速度に対する寄与が小さく、また、300mmを越えると大気圧の影響が大きくなって装置を強化する必要を生じ、装置の建設コストが高いなる上に、排気動力が増大して乾燥粉末の生産コストが高くなるという問題がある。
【0080】
本発明は、特に、醤油あるいはモロミを、粉末乾燥することを目的として開発したものであるが、従来の乾燥方法のように、120〜200℃の高温の熱風を使用しない点に特徴がある。つまり、100℃以下、また、90℃以下の、従来の乾燥装置では適用されていない低温の雰囲気中に噴霧mして乾燥するものである。
【0081】
当然のことながら、この低温で蒸発性能が低下するが、この点を改善するために、乾燥塔の周壁面を加熱して乾燥塔を遠赤外線の放射体とすると共に、雰囲気を減圧とすることで、(減圧×と遠赤外線)の相乗効果を発生させ、従来の熱風乾燥とは全く異なった蒸発効果により乾燥させるものである。
【0082】
これは、換言すれば、気圧の低い高原において洗濯物を乾燥する状態に相当するもので、冷たい雰囲気中に選択物を吊るし、これに太陽光線を浴びせながら乾燥させる状態を発生させているものである。
【0083】
前記相乗効果により、例えば、生に近いか、あるいは生の状態にある醤油でも、生に近い性質や味のまま乾燥させることができるのである。また、原料である醤油を高温の加熱空気と接触させない理由は、自然乾燥に近い状態で乾燥させることの実現を意味しており、従来の乾燥物では問題となっていた乾燥微粉末の「潮解性」までも改善することができるのである。
【0084】
(潮解性の改善について)
従来の乾燥方法によって乾燥した微粉末(特に醤油の粉末)が、短時間でも空気に触れると吸湿してベタベタとした感じとなり、外観は勿論、味も悪化する欠点がある。それが原因して保存性が悪くなり、品質が劣化するので、その取扱いには充分な注意が必要であった。従って、この潮解性を改善することができれば、保存性を向上させ、品質の劣化も著しく改善できるのである。
【0085】
本発明はこの問題も併せて改善することができるのである。本発明者らの研究によると、特に醤油の粉末乾燥を行う場合は、乾燥前の原料である醤油の前処理が重要であることを多数の実験より確認している。
【0086】
(原料の前処理)
醤油の場合の前処理は、初留分や澱(オリ)の除去である。乾燥した微粉末をベタベタの状態にする潮解性成分は、主に蒸発性のオイル分や澱であり、これは原料全体の3〜5%程度である。この潮解性成分(初留分)を除去する方法は、醤油の場合は、原料である醤油を約85℃〜95℃において2〜3時間加熱することである。
【0087】
この加熱に伴なって潮解性成分が原料である醤油の中に徐々に析出してくる。この潮解成分は前記温度により水分と共に蒸発する成分と、醤油の中に析出して残留する成分とがあり、残留成分はフイルターで濾過して除去するか、沈殿などにより分離させ、その部分を避けて上層を乾燥する原料として使用する。
【0088】
そしてこのように前処理した原料を本発明の装置と方法で粉末乾燥することによって、保存性に優れ、味やうまみも劣化しない製品を生産することができるのである。
【0089】
前記の如く「初留分」の除去は大切であるが、品質の良好な乾燥微粉末を得るためには、更に「後留分」(バッチ処理の場合は原料の残りの分)の除去もかなり有効である。この除去すべき「後留分」の量としては、原料の10%程度である。つまり、原料となる液状被処理物は、不良品を発生する被処理物の送り初めと終わりの部分を積極的にカットし、中間部分を製品として使用することによって品質(醤油本来の味)に優れた製品を製造することができる。
【0090】
(実施例2)・・乾燥塔内の付着物の除去
次に、乾燥塔本体1の内部に噴霧された原料が付着して乾燥し、これが一種の断熱層を形成したり、乾燥物の降下を阻害するという問題がある。
【0091】
従来技術においては、高さがあまり高くない、ズングリとした円筒型の乾燥塔を使用しているが、この装置の場合、乾燥塔の外部からハンマーで打撃して大きな衝撃を与え、内部に付着した付着物を剥離させ、除去する方法が実施されている。しかし、この方法は余りにも直接的で原始的な方法であり、場合によっては装置を破損するなどの問題がある。また、別の機構としては乾燥塔本体の内部に沿わせた長尺の清掃用気体の噴射ノズルを設け、これを本体の内部でゆっくりと回転させる方法が採用されているが、この方法は大型の装置では採用が困難であり、また、効率も劣るものである。
【0092】
図11は、乾燥塔本体1Aを末広がりの断面四角形に形成し、内面に原料ないし半乾燥物が付着するのを防止する構造の装置を示している。塔本体1Aは実質的に平坦な複数の面で形成されているが、稼働中に内部に前記のように減圧を作用させているが、これがある範囲を超えて強くなると、内側に、断面凹形に次第に変形する。従って、この変形動作単独、あるいは変形動作と復元動作の両方を利用して塔本体1Aの内部に付着した乾燥物などの付着物を脱落させることが可能である。
【0093】
塔本体1Aの内部に作用する減圧を有効に使用するために、図12に示すように、塔本体1Aを構成する平板部20に凸部21を形成しておく。この凸部21の範囲と、基準面から膨出する高さhは、平板部20の剛性や塔本体1Aの内部に作用する圧力に関係して実験的に決定する必要がある。
【0094】
前記膨出高さhは、内部の減圧が水柱で100〜300mmで作動している場合は、減圧が前記最高値より10%程度高くなった時に、外面に形成されている凸部21が突然、「ボコン、ペコン」と大きな音を立てて内側に凹み、その際に平板部20が大きく振動して内面の付着物を剥離除去することができ、熱伝達性を改善することができる。
【0095】
図13は、凸部21の変形を補助するための装置を示しており、塔本体1Aにブラケット22を取付けて駆動装置23を設置する。この駆動装置23は電動式の押圧装置や油圧シリンダ、あるいは電磁式ジャッキ装置などを使用し、塔本体1Aの内圧に関係なく凸部21に逆変形を与え、前記のように塔本体1A内の付着物を除去して塔本体1Aの熱伝達性を改善することができる。
【0096】
(実施例3)・・乾燥塔内の付着物の除去
図14は第3の実施例を示すもので、角形の乾燥塔本体1Bに表面の所定の位置にハンマー装置24を複数個設けた装置を示している。この実施例においては、図12に示すように凸部21を形成しても良いし、形成しなくても良く、ハンマー装置24によって所定の打撃力を与えることによって付着物を剥離除去することができる。
【0097】
(実施例4)・・乾燥塔内への付着防止
この実施例は、図1に示した実施例1における円筒形の乾燥塔本体1を、図15に示すように断面において下方が拡開するテーパー形の乾燥塔本体1Cに形成することによって噴霧状態の原料や半乾燥の原料などが付着するのを防止するものである。この乾燥塔本体1Cに形成するテーパー角αは、3°〜10°程度で良いが、実際には原料rの状態や塔本体1C内における噴霧(霧滴)mの降下状態などによって決定するのが良い。
【0098】
また、乾燥塔本体1Cの内面に付着物の付着防止用の樹脂、例えばフッ素樹脂などのコーティングを施しても良い。また、外表面には図7〜図9に示すような二重セラミックス層が形成され、発熱体17からの熱エネルギーを塔本体1C内に効率的に導入して内部に遠赤外線を放射するように構成されている。
【0099】
(実施例5)・・噴霧の浮遊状態の調整
この実施例は、図16に示すように乾燥塔1Dの下部の周囲にガスの供給室30を形成すると共に上部のガスの排出室31を一対として形成し、更にこれらの供給室30は排出室31との間をフアン32を有するダクト26で連結し、このフアン32の送風量によって乾燥塔1D内に逆流を発生させて噴霧mの降下速度を調整するものである。
【0100】
乾燥塔1Dの上方のノズル2より噴霧状態で原料rが噴霧mとして供給されると、この噴霧mは塔内部に発生している気流に乗ってゆっくりと下降する。しかし、噴霧mの大きさや重量によって降下速度が必要以上に早くて充分な乾燥効果が得られないことが発生するが、このような場合に、前記フアン32を操作して上昇流を発生させることで噴霧mが降下する時間を調整して目的とする乾燥処理を行うことができるのである。
【0101】
(実施例6)・・前処理と乾燥工程の一連化
この実施例は、図1の乾燥装置に、特殊な性状の液状被処理物を前処理するための装置を連設した装置である。
【0102】
例えば、モロミのように原料内に固形物が含まれている場合は、図1に示す装置では乾燥させることができない。そこで、図17に示すように乾燥塔1の頂部にスプレーノズル2を配置し、このスプレーノズル2にコンプレッサ35と圧空タンク36からなる圧空ライン37を接続すると共に、原料供給ライン38を接続している。また、乾燥塔1の下部にはダクト6とバタフライバルブなどの排気量調整バルブ39を介してサイクロン型の分離器7X、7Yとブロア8Aに接続している。
【0103】
前記原料供給ライン38には、前処理行程の一部を行う調整槽40と被処理物の加圧ポンプ41とが連結されている。図示されていないが、この調整槽40に供給される原料の前段階において、モロミなどの原料の中に固形物が含まれている場合は、高速粉砕(高速混練など)あるいは圧砕してペースト状とする粉砕装置と、必要に応じてこのペースト状態の原料の温度や粘度(含有する水分を併せて)を調整する調整槽を経由して供給管43より供給されるようになっている。
【0104】
この調整槽40は、攪拌器44と温度調整器45と排気ブロア46が接続され、この中で所定の温度(初留分を蒸発させる温度)で加熱されながら、ゆっくりと攪拌され、減圧作用を受けて揮発性成分を速やかに蒸発し、これがが排出される。また、この調整槽40の底部には製品の品質に悪影響を及ぼす沈殿物を溜めて排出できるようにもなっている。
【0105】
前記のようにしてモロミなどの固形分は微粉砕され、醤油の液体部分中に分散された状態となり、これが所定の温度に調節される。そして加圧ポンプ41を経由してスプレーノズル2より乾燥塔1内に噴霧mされ、霧滴として浮遊しながら乾燥される。乾燥塔1の下部に接続された2基の分離既7A、7Bを経由して乾燥した微粉末は収容箱7m、7n内に排出されるようになっている。
【0106】
前記のように分離器7A、7Bを二段に連結した理由は、乾燥塔1内を所定の範囲に減圧する必要があることから高排気性能を持つ1台のブロア8Aを使用している関係で、乾燥微粉末の分離を無駄なく、確実に行うためのものである。
【0107】
乾燥塔1に供給する液状被処理物を前処理するメリットとしては、A)潮解性成分を除去すること、B)前持って原料を加熱することによって乾燥塔1内における受熱量を逓減させ、短時間内に乾燥を確実に行うことができることにある。
【0108】
また、C)原料にモロミのような固体分が含まれている場合でも、調整槽40に供給する原料を、前もってペースト状になるまで破砕し、必要に応じて水分を蒸発させて液体の濃度を高めることにより、従来では乾燥できなかった原料でも、簡単に微粉末として乾燥させることができるのである。
【0109】
(実施例7)・・脈動型の原料供給
スプレーノズルに高圧噴射型のもので、これのスピンドルを瞬間に開閉して液体を噴射できる構造のもの(例えば、エンジンの燃料噴射ポンプに設計変更を加えた構造のもの)を使用し、原料を2.940MPa〜4.9MPa(30〜50Kg/cm2 )に加圧し、ノズルをバルス的に開閉することによって乾燥塔1内に霧滴を波状的に形成しながら、効率的に粉末乾燥を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】第1の実施例の乾燥装置の全体図である。
【図2】微粉化装置(スプレーノズル)の断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2に示した微粉化装置の作用図である。
【図5】図4に示した微粉化装置の作用図説明図である。
【図6】図4に示した微粉化装置の作用図説明図である。
【図7】乾燥塔の一部を切断した横断面図である。
【図8】乾燥塔の一部を切断した縦断面図である。
【図9】乾燥塔の表面のセラミックス層の拡大図である。
【図10】セラミックス層の分光エネルギー密度と波長との関係の説明図である。
【図11】第2の実施例の乾燥塔の斜視図である。
【図12】図11の乾燥塔本体の変形部分の説明図である。
【図13】乾燥塔本体を変形させる装置の説明図である。
【図14】第3の実施例の乾燥塔の斜視図である。
【図15】第4の実施例のテーパー型乾燥塔を使用した装置の説明図である。
【図16】第5の実施例の循環流発生型の乾燥塔を使用した装置の説明図である。
【図17】第6の実施例の装置の全体構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0111】
1 乾燥塔本体 2 微粉化装置(スプレーノズル)
3 ポンプ 4 原料タンク 6 ダクト 7 分離器
8 排気ブロア 9 排気処理装置 10 本体
11 原料供給口 12 排出口 13 細分化ノズル
14 圧空噴射パイプ 16 セラミックス層(C1 第1セラミックス層、C2 第2セラミックス層)
17 電熱加熱式発熱体 18 断熱層 20 平板部
21 凸部 30 ガスの供給室 31 ガスの排出室
32 フアン 35 コンプレッサ 36 圧空タンク
37 圧空ラインン 38 原料供給ライン
39 排気量調整バルブ 40 調整板 42 加圧炉
44 攪拌機 45 温度調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を多量に含む液状被処理物を霧状で熱エネルギーを付与して微粉末状に乾燥する方法において、
筒状の乾燥塔の内部を減圧状態に保持した状態で、該乾燥塔の上部より前記液状被処理物を霧状で供給し、この霧状の被処理物が乾燥塔内を降下する間に、実質的に高温の熱風加熱による乾燥を避けて、前記乾燥塔の内面より照射される遠赤外線により加熱して水分を蒸発させて乾燥した微粉末を形成することを特徴とする液状被処理物を乾燥する方法。
【請求項2】
前記乾燥塔の外周面を加熱し、該乾燥塔の内面より遠赤外線を照射して前記乾燥塔の内面の雰囲気の温度を液状被処理物が沸騰する温度以下に保持し、更に内部を減圧状態に保持することを特徴とする請求項1記載の液状被処理物を乾燥する方法。
【請求項3】
液状被処理物は、醤油や醤油の原料であるモロミ、あるいはジュース類や深層水など、霧状での乾燥により微粉末を生成する物質であることを特徴とする請求項1記載の液状被処理物を乾燥する方法。
【請求項4】
液状被処理物が醤油もしくはモロミあるいはこれを主体とする液状被処理物であり、該液状被処理物を雰囲気温度が95℃以下ないし80℃以上の範囲に保存調整した後に、前記乾燥塔の上部より霧状で供給することを特徴とする請求項1記載の液状被処理物を乾燥する方法。
【請求項5】
液状被処理物が醤油もしくはモロミあるいはこれを主体とする液状被処理物であり、該液状被処理物を含有されていた油分など、被処理物が乾燥状態において潮解成分となる物質を分離除去した後に、前記乾燥塔の上部より霧状で供給することを特徴とする請求項1記載の液状被処理物を乾燥する方法。
【請求項6】
堅型円筒状の乾燥塔と、この乾燥塔の上部に配置された液状被処理物の微粉化装置と、前記乾燥塔の下部に連結されたサイクロン型の分離装置と、この乾燥塔内を減圧に保持するための圧力調整機構からなり、
前記乾燥塔の外側の表面にセラミックス層を形成すると共に、このセラミックス層の外側に電熱加熱体を積層配置し、微粉化装置を介して液状被処理物を霧状で供給し、減圧下において前記乾燥塔内面から照射される遠赤外線によって加熱するように構成したことを特徴とする液状被処理物の乾燥装置。
【請求項7】
前記セラミックス層は少なくとも二層で形成され、これらのセラミックス層の放射率を比較し、この放射率の高い材料を熱源側に、放射率の低い材料を乾燥塔の表面側に配置したことを特徴とする請求項6に記載の液状被処理物の乾燥装置。
【請求項8】
前記微粉化装置は、回転円板型、加圧ノズル型、二流体ノズル型あるいはこれらの変形したものを使用することを特徴とする請求項6に記載の液状被処理物の乾燥装置。
【請求項9】
前記微粉化装置は、液状被処理物を収容する供給室と、この液状被処理物を細分化する分流部と、混合室とが一連に配列されており、前記分流部は液状被処理物を細い線条に分離するためのノズルを有し、前記混合室は、周囲に複数本の圧縮気体の噴射ノズルが設けられ、前記分流部のノズルより吐出された線条の液状被処理物を案内し、前記噴射ノズルより噴射する高圧気体を前記線条の液体被処理物に衝突、攪乱させて微粉化するように構成したことを特徴とする請求項6に記載の液状被処理物の乾燥装置。
【請求項10】
液状被処理物の微粉化装置は、噴射孔を持つ外管と、この外管の内部に可動的に挿入されたノズル体を有し、前記外管とノズル体の間に加圧された液状被処理物が供給されており、前記ノズル体を瞬時に後退・前進運動させて液状被処理物をパルス的に噴射して微粉化することを特徴とする請求項6に記載の液状被処理物の乾燥装置。
【請求項11】
前記圧力調整機構は、乾燥塔内を490〜2940Paの範囲で減圧する排気能力を持っていることを特徴とする請求項6に記載の液状被処理物の乾燥装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2007−330146(P2007−330146A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165266(P2006−165266)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000114064)ミサト株式会社 (15)
【Fターム(参考)】