説明

減速機構付モータ

【課題】樹脂製の二段ギヤの成型精度を向上させて、減速機構付モータの振動や異音の発生を抑制することにある。
【解決手段】ウォームと噛み合うウォームホイール34、および被駆動部材と噛み合う出力ギヤ36を備える樹脂製の二段ギヤ37を有する減速機構付モータにおいて、ウォームホイール34のボス部34aとギヤ部34bとを連結する薄肉円板状の連結部34cの軸方向両端面に、それぞれ複数のリブ群46をウォームホイール34の回転方向に相互に間隔をあけて放射状に設ける。各リブ群46は、ボス部34aとギヤ部34bとの間で相互に隣接して平行に延びる2つのリブ47により形成されている。このリブ群46の相互の間隔L1は、各リブ群46を形成する2つのリブ47の相互の間隔L2よりも大きく形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の二段ギヤを有する減速機構付モータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載されるパワーウィンド装置やサンルーフ装置など駆動源には、電動モータと減速機構とを1つのユニットとした減速機構付モータが用いられる。減速機構付モータは、電動モータのモータシャフトに設けられたウォームと、当該ウォームと噛み合うウォームホイールとからなる減速機構を有している。そして、モータシャフトの回転が減速機構により減速されて出力ギヤに伝達され、出力ギヤにより被駆動部材であるパワーウィンド装置のレギュレータ等を駆動するようにしている。このような減速機構付モータにおいて、ウォームホイールと出力ギヤを一体に形成するようにした二段ギヤを有する減速機構付モータが、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
この減速機構付モータは、電動モータが取り付けられるギヤケースを有しており、ギヤケースに設けられた支軸の外周面に二段ギヤの内周面を摺接させて、支軸により二段ギヤを回転自在に支持している。二段ギヤは、ウォームと噛み合う大径のウォームホイールと、被駆動部材と噛み合う小径の出力ギヤとが樹脂材料により一体に形成されており、二段ギヤを樹脂材料により形成することで二段ギヤが軽量化されている。また、ウォームホイールの軸方向両端面には、それぞれ内径部と外径部との間で放射状に延びる複数のリブが設けられており、剛性の小さい樹脂製の二段ギヤの強度の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−130980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ウォームホイールと出力ギヤを一体に形成した樹脂製の二段ギヤにおいては、ウォームホイールと出力ギヤのいずれか一方に外力が働くと他方にモーメントが作用することとなるため、二段ギヤの強度を十分に確保する必要がある。そこで、二段ギヤの強度を十分に確保するために、ウォームホイールの軸方向両端面にそれぞれ放射状に設けられた複数のリブを肉厚に形成することが考えられる。しかしながら、その場合には、樹脂成形時におけるリブの熱収縮により樹脂製の二段ギヤにヒケや反りが発生して、二段ギヤの成型精度を悪化させるおそれがある。つまり、ウォームに噛み合う歯面が形成されたギヤ部や、支軸に回転自在に支持されるボス部の真円度を悪化させることとなる。このような二段ギヤの成型精度の悪化は、ウォームとウォームホイールとの噛み合いや、二段ギヤの内周面と支軸の外周面との摺接などに不具合を生じさせ、減速機構付モータの振動や異音の発生の原因となる。
【0006】
本発明は、樹脂製の二段ギヤの成型精度を向上させて、減速機構付モータの振動や異音の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の減速機構付モータは、モータシャフトの軸方向基端部を回転自在に支持するモータヨークと、前記モータヨークが取り付けられ、前記モータシャフトの軸方向先端側に設けられるウォームを収容するギヤケースと、前記ギヤケース内に回転自在に収容されて前記ウォームと噛み合うウォームホイール、および前記ウォームホイールと一体に回転して被駆動部材と噛み合う出力ギヤを備える樹脂製の二段ギヤとを有する減速機構付モータであって、前記ウォームホイールは、前記ギヤケースに設けられた支軸に回転自在に支持される円筒状のボス部と、外周面に前記ウォームと噛み合う歯面が形成された円筒状のギヤ部と、前記ボス部と前記ギヤ部とを連結する薄肉円板状の連結部と、前記連結部の軸方向両端面にそれぞれ前記ウォームホイールの回転方向に相互に間隔をあけて放射状に設けられ、それぞれ前記ボス部と前記ギヤ部との間で延びる少なくとも2つのリブを相互に隣接させて平行に形成してなる複数のリブ群とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の減速機構付モータは、前記複数のリブ群の相互の間隔は、前記リブ群を形成する前記少なくとも2つのリブの相互の間隔よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の減速機構付モータは、前記複数のリブ群は前記連結部の軸方向一端側の端面と軸方向他端側の端面とでそれぞれ同一箇所に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の減速機構付モータは、前記ギヤ部の軸方向端面には凹状の第1の肉盗み部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の減速機構付モータは、前記出力ギヤは、外周面に前記被駆動部材と噛み合う歯面が形成されるとともに前記支軸に回転自在に支持される円筒状に形成され、前記出力軸の軸方向端面には凹状の第2の肉盗み部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、相互に隣接して平行に延びる少なくとも2つのリブにより各リブ群を形成するようにしたので、樹脂製の二段ギヤの強度を十分確保するためにそれぞれのリブの厚さを肉厚に形成するようにした場合に比べて、リブの周方向の厚みを小さく形成することが可能となる。これによって、二段ギヤの樹脂成形時におけるリブの熱収縮量が小さくなるため、ヒケや反りの発生が抑制され、ウォームホイールの成型精度を向上させることができる。したがって、ウォームとウォームホイールとの噛み合いなどが良好となり、減速機構付モータの振動や異音の発生を抑制することが可能となる。
【0013】
本発明によれば、ウォームホイールのギヤ部の軸方向端面や出力ギヤの軸方向端面に肉盗み部を形成するようにしたので、二段ギヤの当該部位の径方向の厚みを小さく形成することができる。これによって、二段ギヤの樹脂成形時における当該部位の熱収縮量が小さくなるため、ヒケや反りの発生が抑制され、二段ギヤの成型精度を向上させることができる。したがって、ウォームとウォームホイールとの噛み合いや、出力ギヤと被駆動部材との噛み合いなどが良好となり、パワーウィンドモータの振動や異音の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態であるパワーウィンドモータを示す一部切り欠き平面図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿う断面図である。
【図3】二段ギヤの斜視図である。
【図4】図3に示す二段ギヤを底面側から示す斜視図である。
【図5】二段ギヤの平面図である。
【図6】二段ギヤの底面図である。
【図7】図5におけるB−B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。このパワーウィンドモータ10は、自動車等の車両のドア内部に搭載されたパワーウィンド装置に設けられ、ウィンドガラスを開閉する図示しないウィンドレギュレータ(昇降装置)を駆動するために用いられる。パワーウィンドモータ10は、モータ本体(電動モータ)11とモータ本体11の回転を減速させてウィンドレギュレータに伝達する減速機構とを1つのユニットとした減速機構付モータであり、駆動源であるモータ本体11と減速機構を備えるギヤ部12とを有している。
【0016】
モータ本体11にはブラシ付直流モータが用いられており、モータ本体11に設けられるモータシャフト13が正方向または逆方向に回転可能となっている。モータ本体11は、薄板鋼板等を有底の段付筒状に形成することにより形成されるヨーク(モータヨーク)14を有している。ヨーク14の内周面には、径方向内側に向けてN極、S極に着磁された一対の永久磁石15が相互に対向して固着されており、一対の永久磁石15によりヨーク14の内部に磁界が形成されている。
【0017】
ヨーク14の内部には、微小隙間(エアギャップ)を介して各永久磁石15に対向するアーマチュア16が回転自在に収容されている。アーマチュア16はモータシャフト13の回転方向に複数のスロットを備えるアーマチュアコア16aを有しており、アーマチュアコア16aの各スロットには導線が重ね巻きされて複数のアーマチュアコイル16bが装着されている。また、アーマチュア16の軸心にはモータシャフト13が貫通して固定されており、このモータシャフト13の軸方向基端部は、ヨーク14の底壁に固定された軸受17によって回転自在に支持されている。
【0018】
モータシャフト13には、アーマチュア16の軸方向先端側に隣接させて、当該アーマチュア16と一体に回転するコンミテータ18が固定されている。コンミテータ18は、互いに絶縁された状態でモータシャフト13の回転方向に等間隔に並べて配置される複数のセグメント片を備えており、各セグメント片には対応するアーマチュアコイル16bのコイル端が電気的に接続されている。
【0019】
このモータ本体11は、ヨーク14の開口側においてギヤ部12のギヤケース20に取り付けられている。樹脂製のギヤケース20は、モータシャフト13の軸方向に延びるとともにヨーク14側に開口するウォーム収容部21を備えており、ヨーク14の開口側の端面をウォーム収容部21の開口側の端面に突き当てた状態で、複数の締結ネジによりヨーク14がギヤケース20に固定されている。また、モータシャフト13の軸方向先端側はウォーム収容部21の内部に突出されており、ウォーム収容部21の内部に固定された軸受22,23によってモータシャフト13の軸方向先端側が回転自在に支持されている。このモータシャフト13の軸方向先端側には、軸受22,23の間に位置して、その外周面にウォーム13aが一体に設けられている。
【0020】
ウォーム収容部21の開口部内には、コンミテータ18の周りに位置して、樹脂製のブラシホルダ25が装着されている。モータ本体11に設けられたブラシホルダ25は、ばね部材26によりモータシャフト13の径方向内側に付勢された一対のブラシ27を備えており、一対のブラシ27がコンミテータ18の外周面にそれぞれ摺接されている。また、ウォーム収容部21には、一対のブラシ27およびコンミテータ18を介してアーマチュアコイル16bに給電するためのコネクタユニット28が装着されている。コネクタユニット28は、車両側の給電コネクタに接続されるとともに、ブラシホルダ25に設けられたリード板に電気的に接続されている。このコネクタユニット28を介してアーマチュアコイル16bに電流が供給されると、ヨーク14の内部に形成される磁界とによりアーマチュア16の回転方向に電磁力トルクが生じ、モータシャフト13が回転駆動されるようになっている。
【0021】
図2に示すように、ギヤケース20は、ウォーム収容部21と一体に形成されたウォームホイール収容部30を備えている。ウォームホイール収容部30は、ウォーム収容部21の開口方向と直交する方向に開口する有底円筒形状をしており、その開口部が円板形状のボトムカバー31により閉塞されている。ウォームホイール収容部30の軸心には、ウォームホイール収容部30の底壁部から開口側に延びる段付き円柱形状の支軸32がギヤケース20と一体に設けられており、支軸32の軸方向先端側は、ボトムカバー31に形成された貫通孔31aから突出されている。この支軸32は、支軸32の軸方向基端側に形成されてウォームホイール収容部30の内部に配置される大径部32aと、支軸32の軸方向先端側に形成されてボトムカバー31からウォームホイール収容部30の外部へ突出する小径部32bとを備えている。
【0022】
ウォームホイール収容部30の内部には、ウォーム13aと噛み合うウォームホイール34が収容されている。ウォームホイール34は、その軸心に挿通される支軸32の大径部32aにより回転自在に支持されており、ウォーム収容部21の内部とウォームホイール収容部30の内部とを連通する連通孔35を介して、ウォーム13aとウォームホイール34とが噛み合っている。これらウォーム13aおよびウォームホイール34からなる減速機構により、モータシャフト13の回転が減速されてウォームホイール34に伝達されるようになっている。
【0023】
ウォームホイール34には、当該ウォームホイール34と一体に回転する出力ギヤ36が樹脂材料により一体に形成されている。つまり、このパワーウィンドモータ10は、ウォームホイール34と当該ウォームホイール34よりも小径に形成された出力ギヤ36とを備える樹脂製の二段ギヤ37を有している。出力ギヤ36は、ウォームホイール34の軸方向一端側(ウォームホイール収容部30の開口側)に一体に形成されており、その軸心に挿通される支軸32の小径部32bにより回転自在に支持されている。この出力ギヤ36は、ボトムカバー31からウォームホイール収容部30の外部へ突出され、被駆動部材としてのウィンドレギュレータと噛み合っており、出力ギヤ36によりウィンドレギュレータが駆動されるようになっている。
【0024】
なお、ボトムカバー31の内面にはシール材38が装着されており、シール材38の内周面は二段ギヤ37の外周面に摺接されるとともに、ボトムカバー31とギヤケース20とが組み付けられる箇所を覆っている。このシール材38によりウォームホイール収容部30の内部がシールされて、ウォームホイール収容部30の内部へ雨水等が侵入することが防止されている。また、ギヤケース20に設けられた支軸32には、凹状の複数の肉盗み部39が形成されている。この肉盗み部39により、ギヤケース20が軽量化されるとともに、支軸32の径方向の厚みが小さくなるように形成されている。これによって、ギヤケース20の樹脂成型時における支軸32の熱収縮量が小さくなるため、ヒケや反りの発生が抑制され、支軸32の成型精度の向上が図られている。
【0025】
次に、二段ギヤ37の形状について詳細に説明する。図3は二段ギヤの斜視図であり、図4は図3に示す二段ギヤを底面側から示す斜視図である。図5は二段ギヤの平面図であり、図6は二段ギヤの底面図であり、図7は図5におけるB−B線に沿う断面図である。
【0026】
この二段ギヤ37は、炭素繊維等の強化繊維を含有する樹脂材料により形成されており、ウォーム13aと噛み合うウォームホイール34、およびウィンドレギュレータと噛み合う出力ギヤ37を備えている。ウォームホイール34は出力ギヤ36よりも大径に形成されており、大径ギヤとしてのウォームホイール34と小径ギヤとしての出力ギヤ36とが樹脂材料により一体に形成されて、これらウォームホイール34と出力ギヤ36とが一体に回転するようになっている。
【0027】
ウォームホイール34は、支軸32の大径部32aに回転自在に支持される円筒状のボス部34aと、外周面にウォーム13aと噛み合う歯面42が形成されたギヤ部34bと、ボス部34aとギヤ部34bとを連結する薄肉円板状の連結部34cとを有する略円盤形状をしている。ボス部34aの軸心には、支軸32の大径部32aが挿通される軸孔43が形成されており、軸孔43に支軸32の大径部32aが挿通されて、ボス部34aの内周面が支軸32の大径部32aの外周面に摺接されている。
【0028】
ギヤ部34bは、ボス部34aよりも径方向外側にボス部34aと同軸状に設けられており、ギヤ部34bの内周面とボス部34aの外周面とが所定の間隔を介して径方向に対向するように配置されている。ギヤ部34bの外周面には、ウォーム13aに噛み合う歯面42が形成されており、ウォーム13aの歯面とウォームホイール34の歯面42との噛み合いによって、モータシャフト13の回転がウォームホイール34(二段ギヤ37)に減速して伝達されるようになっている。このギヤ部34bの軸方向両端面には、歯面42と後述する複数のリブ群46との間に位置させて、ボス部34aと同軸状に形成された円形溝状(凹状)の第1の肉盗み部44がそれぞれ形成されている。肉盗み部44は、ギヤ部34bの軸方向一端側の端面と軸方向他端側の端面とでそれぞれ同一箇所に形成されており、それぞれギヤ部34bの軸方向両端面に対称的に形成されている。
【0029】
連結部34cは、ボス部34aの軸方向中央部とギヤ部34bの軸方向中央部とを径方向に連結する薄肉円板状をしており、ボス部34aの外周面とギヤ部34bの内周面との間で径方向に延びている。この連結部34cの軸方向両端面には、ウォームホイール34の回転方向に相互に間隔をあけて6つのリブ群46が等間隔(60°間隔)に放射状にそれぞれ設けられており、各リブ群46を設けることでウォームホイール34の強度の向上が図られている。各リブ群46は、連結部34cの軸方向一端側の端面と軸方向他端側の端面とでそれぞれ同一箇所に形成されており、それぞれ連結部34cの軸方向両端面に対称的に設けられている。
【0030】
このリブ群46は、ボス部34aの外周面からギヤ部34bの内周面にかけて径方向に延びる2つのリブ47を備えており、2つのリブ47は相互にウォームホイール34の回転方向に隣接させて平行に形成されている。図7に示すように、連結部34cの軸方向両端面にそれぞれ設けられるリブ47は、その軸方向端面がギヤ部34bの軸方向端面とほぼ同一平面上となるような軸方向高さに形成されている。また、図5に示すように、ウォームホイール34の回転方向における各リブ群46の相互の間隔L1は、ウォームホイール34の回転方向における各リブ群46を形成する2つのリブ47の相互の間隔L2よりも大きく形成されている。すなわち、同一のリブ群46を形成するリブ47同士は相互にウォームホイール34の回転方向に隣接して配置されており、互いに異なるリブ群46を形成するリブ47同士は相互にウォームホイール34の回転方向に離間して配置されている。
【0031】
二段ギヤ37には、ウォームホイール34のボス部34aから軸方向一端側に延びる円筒部50が一体に設けられており、円筒部50の軸方向一端側に出力ギヤ36が設けられている。つまり、出力ギヤ36は、円筒部50を介してウォームホイール34の軸方向一端側に一体に形成されており、ウォームホイール34よりも小径に形成された円筒部50と略同径に形成されている。円筒部50の軸心には、支軸32の小径部32bの軸方向基端部が挿通される軸孔51が形成されており、軸孔51に支軸32の小径部32bが挿通されて、円筒部50の内周面が支軸32の小径部32bの外周面に摺接されている。また、円筒部50の外周面にはシール材38の内周面が摺接され、二段ギヤ37とボトムカバー31との間の隙間を介して雨水等がウォームホイール収容部30の内部へ侵入することが防止されるようになっている。この円筒部50の軸方向他端側の端面には、図6に示すように、軸孔51と外周面との間に位置させて、ウォームホイール34の回転方向に等間隔に複数の長孔形状(凹状)の肉盗み部52が形成されている。肉盗み部52は、円筒部50の軸方向他端側の端面から出力ギヤ52に近接する位置まで軸方向に延びて形成されている。
【0032】
出力ギヤ36は、外周面にウィンドレギュレータと噛み合う歯面(セレーション)54が形成されるとともに、その軸心において支軸32の小径部32bに回転自在に支持される円筒形状をしている。出力ギヤ36の軸心には、支軸32の小径部32bの軸方向中央部が挿通される軸孔55が形成されており、軸孔55に支軸32の小径部32bが挿通されて、出力ギヤ36の内周面が支軸32の小径部32bの外周面に摺接されている。また、出力ギヤ36の外周面には、ウィンドレギュレータと噛み合う歯面54が形成されており、出力ギヤ36の歯面54とウィンドレギュレータの歯面との噛み合いによって、出力ギヤ36(二段ギヤ37)の回転がウィンドレギュレータに伝達されるようになっている。この出力ギヤ37の軸方向一端側の端面には、図5に示すように、軸孔55と歯面54との間に位置させて、出力ギヤ36の回転方向に等間隔に複数の長孔形状(凹状)の第2の肉盗み部56が形成されている。肉盗み部56は、出力ギヤ37の軸方向一端側の端面から円筒部50に近接する位置まで軸方向に延びて形成されている。
【0033】
このように、相互に隣接して平行に延びる2つのリブ47により各リブ群46を形成するようにしたので、樹脂製の二段ギヤの強度を十分に確保するためにそれぞれのリブの厚さを肉厚に形成するようにした場合に比べて、リブ47の周方向(ウォームホイール34の回転方向)の厚みDを小さく形成することが可能となる。すなわち、リブ47の周方向の厚みDを小さく形成すると強度が低下することとなるが、平行に延びる2つのリブ47を相互に隣接させてリブ群46を形成することで強度を向上させることができる。このため、樹脂製の二段ギヤ37の強度を十分確保した状態で、リブ47の周方向の厚みDを小さく形成することができるようになっている。これにより、二段ギヤ37の樹脂成型時におけるリブ47の熱収縮量が小さくなるため、ヒケや反りの発生が抑制され、ウォームホイール34の成型精度を向上させることができる。したがって、二段ギヤ37のウォームホイール36の真円度が向上することとため、ウォーム13aとウォームホイール34との噛み合いや、ウォームホイール34のボス部34aと支軸32の大径部32aとの摺接などが良好となり、パワーウィンドモータ10の振動や異音の発生を抑制することが可能となる。
【0034】
また、相互に隣接して平行に延びる2つのリブ47により各リブ群46を形成するようにしたので、樹脂製の二段ギヤの強度を十分に確保するためにそれぞれ肉厚に形成するようにした場合のリブと比べて、それぞれのリブ群46がほぼ同じ力を受けることが可能となる。すなわち、薄肉に形成されたリブを放射状に増やした場合には、二段ギヤの強度を確保するためにリブを肉厚に形成するようにした場合と比べて、それぞれのリブの強度が低下することとなる。一方、本発明のように薄肉に形成された2つのリブ47を相互に隣接して平行に形成して各リブ群46を形成した場合には、二段ギヤの強度を確保するために肉厚に形成するようにしたリブと比べて、それぞれのリブ群46がほぼ同様の力を受けることができるようになっている。したがって、それぞれのリブ群46が十分な強度を有することとなるため、ウォームホイール34に大きな負荷が掛かることによってウォームホイール34に歪みが生じることが防止され、パワーウィンドモータ10の振動や異音の発生を抑制することが可能となる。
【0035】
さらに、二段ギヤ37の各部位に肉盗み部44,52,56をそれぞれ形成するようにしたので、二段ギヤ37の各部位の径方向の厚みを小さく形成することができる。これによって、二段ギヤ37の樹脂成形時における各部位の熱収縮量が小さくなるため、ヒケや反りの発生が抑制され、二段ギヤ37の成型精度を向上させることができる。したがって、二段ギヤ37の真円度が向上するため、ウォーム13aとウォームホイール34との噛み合い、出力ギヤ37とウィンドレギュレータとの噛み合い、および二段ギヤ37と支軸32との摺接などが良好となり、パワーウィンドモータ10の振動や異音の発生を抑制することが可能となる。
【0036】
なお、前記実施の形態においては、各リブ群46を2つのリブ47により形成するようにしたが、各リブ群46を形成するリブ47の数は少なくとも2つであれば良く、その数は任意に変更可能である。また、二段ギヤ37の各部位にそれぞれ形成される肉盗み部44,52,56の形状は任意に変更可能であることはもちろんである。例えば、ウォームホイール34のギヤ部34bに形成される肉盗み部44を、出力ギヤ36に形成される肉盗み部56と同様に、ウォームホイール34の回転方向に等間隔に形成された複数の長孔形状としても良い。さらに、出力ギヤ36に形成される肉盗み部56を、ウォームホイール34のギヤ部34bに形成される肉盗み部44と同様に、出力ギヤ36と同軸状に形成された円形溝状としても良い。さらに、前記実施の形態においては、ウォームホイール34と出力ギヤ36との間に円筒部50を一体に形成するようにしたが、円筒部50を有さない二段ギヤ37であっても良い。
【0037】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては、本発明の減速機構付モータをパワーウィンドモータ10に適用したが、他の減速機構付モータに適用するようにしても良い。また、前記実施の形態においては、モータ本体11(電動モータ)としてブラシ付き直流モータを用いたが、例えばブラシレス直流モータなどの他の電動モータを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 パワーウィンドモータ(減速機構付モータ)
11 モータ本体
12 ギヤ部
13 モータシャフト
13a ウォーム
14 ヨーク(モータヨーク)
15 永久磁石
16 アーマチュア
16a アーマチュアコア
16b アーマチュアコイル
17 軸受
18 コンミテータ
20 ギヤケース
21 ウォーム収容部
22,23 軸受
25 ブラシホルダ
26 ばね部材
27 ブラシ
28 コネクタユニット
30 ウォームホイール収容部
31 ボトムカバー
31a 貫通孔
32 支軸
32a 大径部
32b 小径部
34 ウォームホイール
34a ボス部
34b ギヤ部
34c 連結部
35 連通孔
36 出力ギヤ
37 二段ギヤ
38 シール材
39 肉盗み部
42 歯面
43 軸孔
44 (第1の)肉盗み部
46 リブ群
47 リブ
50 円筒部
51 軸孔
52 肉盗み部
54 歯面
55 軸孔
56 (第2の)肉盗み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータシャフトの軸方向基端部を回転自在に支持するモータヨークと、
前記モータヨークが取り付けられ、前記モータシャフトの軸方向先端側に設けられるウォームを収容するギヤケースと、
前記ギヤケース内に回転自在に収容されて前記ウォームと噛み合うウォームホイール、および前記ウォームホイールと一体に回転して被駆動部材と噛み合う出力ギヤを備える樹脂製の二段ギヤとを有する減速機構付モータであって、
前記ウォームホイールは、
前記ギヤケースに設けられた支軸に回転自在に支持される円筒状のボス部と、
外周面に前記ウォームと噛み合う歯面が形成された円筒状のギヤ部と、
前記ボス部と前記ギヤ部とを連結する薄肉円板状の連結部と、
前記連結部の軸方向両端面にそれぞれ前記ウォームホイールの回転方向に相互に間隔をあけて放射状に設けられ、それぞれ前記ボス部と前記ギヤ部との間で延びる少なくとも2つのリブを相互に隣接させて平行に形成してなる複数のリブ群とを有することを特徴とする減速機構付モータ。
【請求項2】
請求項1記載の減速機構付モータにおいて、前記複数のリブ群の相互の間隔は、前記リブ群を形成する前記少なくとも2つのリブの相互の間隔よりも大きく形成されていることを特徴とする減速機構付モータ。
【請求項3】
請求項1または2記載の減速機構付モータにおいて、前記複数のリブ群は前記連結部の軸方向一端側の端面と軸方向他端側の端面とでそれぞれ同一箇所に設けられていることを特徴とする減速機構付モータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の減速機構付モータにおいて、前記ギヤ部の軸方向端面には凹状の第1の肉盗み部が形成されていることを特徴とする減速機構付モータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の減速機構付モータにおいて、前記出力ギヤは、外周面に前記被駆動部材と噛み合う歯面が形成されるとともに前記支軸に回転自在に支持される円筒状に形成され、前記出力軸の軸方向端面には凹状の第2の肉盗み部が形成されていることを特徴とする減速機構付モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−236973(P2011−236973A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109098(P2010−109098)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】