説明

温度/厚さ測定装置,温度/厚さ測定方法,温度/厚さ測定システム,制御システム,制御方法

【課題】 装置取付けの手間を軽減し,各測定対象物に測定光を通すための孔を形成することなく,複数の測定対象物の温度又は厚さを一度に測定可能とする。
【解決手段】 各測定対象物T〜Tを透過し反射する波長を有する光を照射する光源110と,光源からの光を測定光と参照光とにスプリットするためのスプリッタ120と,スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段(例えば参照ミラー)140と,参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段(例えば参照ミラーを駆動する駆動手段142)と,スプリッタからの参照光を参照光反射手段へ向けて照射する際に参照光反射手段から反射する参照光と,スプリッタからの測定光を複数の測定対象物へ向けて各測定対象物を透過するように照射する際に各測定対象物から反射する各測定光との光の干渉を測定するための受光手段150とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,測定対象物例えば半導体ウエハや液晶基板等の表面,裏面,内部層などの温度又は厚さを正確に測定可能な温度/厚さ測定装置,温度/厚さ測定方法,温度/厚さ測定システム,制御システム,制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば基板処理装置により処理される被処理基板例えば半導体ウエハ(以下,単に「ウエハ」とも称する。)の温度などを正確に測定することは,成膜やエッチングなど種々の処理の結果によりウエハ上に形成される膜やホールなどの形状,物性等を正確にコントロールする点からも極めて重要である。このため,従来より例えば抵抗温度計や,基材裏面の温度を測定する蛍光式温度計等を利用した計測法など様々な方法によってウエハの温度計測がなされている。
【0003】
近年では,上述したような従来の温度計測方法では困難だったウエハの温度を直接計測することができる温度計測方法や装置も研究されている(例えば特許文献1参照)。このような温度測定装置の具体例を図19及び図20を参照しながら説明する。図19は従来の温度測定装置の原理を説明するための図であり,図20は温度測定装置により計測された干渉波形を観念的に示した図である。
【0004】
図19に示す温度測定装置10は,例えばマイケルソン干渉計を基本とした低コヒーレンス干渉計を利用したものである。温度測定装置10は,例えば低コヒーレンス性を持つSLD(Super Luminescent Diode)より構成される光源12と,この光源12の光を参照ミラー20へ照射する参照光及び測定対象物30へ照射する測定光の2つに分けるビームスプリッタ14と,一方向へ駆動可能に設けられ上記参照光の光路長を可変可能な参照ミラー20と,参照ミラー20からの参照光の反射光と測定対象物30からの測定光の反射光とを受光して干渉を計測する受光器16とを備える。
【0005】
このような温度測定装置10においては,光源12からの光がビームスプリッタ14により参照光と測定光との2つに分けられ,測定光は測定対象物へ向けて照射されて各層で反射され,参照光は参照ミラー20へ向けて照射されてミラー表面で反射される。そして,それぞれの反射光が再びビームスプリッタ14に入射し,その際,参照光の光路長によっては重なり合って干渉を起こして,その干渉波が受光器16で検出される。
【0006】
そこで,温度測定を行う際,参照ミラー20を一方向に駆動させて照射光の光路長を変化させる。すると,光源12の低コヒーレンス性により光源12からの光のコヒーレンス長が短いため,通常は,測定光の光路長と参照光の光路長が一致した場所で強く干渉が起こり,それ以外の場所では干渉は実質的に低減する。このように,参照ミラー20を例えば前後方向(図19における矢印方向)に駆動させ,参照光の光路長を変化させることにより,測定対象物の各層(A層,B層)における屈折率差(n,n)による測定光の反射光と参照光の反射光とが干渉し,図20に示すような干渉波形が検出される。その結果,測定対象物の深度方向の温度測定が可能となる。
【0007】
例えば,図20において測定対象物がヒータなどにより温められることで温度が変化すると,測定対象物は膨張する。このとき測定対象物30の各層の屈折率も変化するため,温度変化前と温度変化後では干渉波形の位置がずれて,各ピーク位置間の幅が変化し,しかも干渉波形のピーク位置の変化幅は上記温度変化に対応する。また,干渉波形のピーク位置は,参照ミラー20の移動距離と対応しているため,参照ミラー20の移動距離に基づいて干渉波形のピーク位置の幅を精度良く測定することで温度変化を測定することができる。
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/087744号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで,上述したような温度測定装置では,ウエハの温度のみならず,基板処理装置の処理室内に設けられる上部電極の電極板などの温度についても測定可能である。しかも,この場合,ウエハの温度と電極板などの温度を一度に測定できれば便利である。すなわち,コストを極力抑えながら,簡単に複数の温度対象物の温度を測定することができるとともに,温度測定にかかる手間や時間を極力軽減することができる。
【0010】
しかしながら,例えばウエハと上部電極の電極板などのように,対向して配置された複数の測定対象物の温度を測定する場合には,次のような問題が考えられる。例えば光源からの測定光を光ファイバにより伝送する場合には,ウエハの温度を測定するための光ファイバは処理室の下方から取り回し,上部電極の電極板を測定する光ファイバは処理室の上方から取り回すようにすることが考えられる。ところが,このようにすると,同じ光源からの測定光を処理室の上下から光ファイバを取り回すことになるので,このような光ファイバの取り回しは困難であり,温度測定装置の設置に手間がかかるという問題がある。
【0011】
この点,ウエハの温度を測定するための光ファイバと上部電極の電極板の温度を測定するための光ファイバとを共に処理室の上方から取り回すようにすればよいとも考えられる。ところが,このようにすると,上部電極の電極板の下側に離間してウエハが配置される位置関係にあるため,ウエハ上に測定光を照射するには,測定対象物である上部電極の電極板に,他の測定対象物であるウエハへ測定光を照射する光ファイバを通すための孔を形成しなければならないという問題がある。これでは,測定対象物に余計な孔が必要となるとともに,その孔を形成する手間もかかる。
【0012】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,対向して配置された複数の測定対象物の温度又は厚さを測定する際に,温度/厚さ測定装置の取付けの手間を軽減することができ,測定対象物に他の測定対象物を測定するための測定光を通すための孔を形成することなく,複数の測定対象物の温度又は厚さを一度に測定することができる温度/厚さ測定装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,対向して配置された複数の測定対象物の温度又は厚さを光の干渉に基づいて測定する温度/厚さ測定装置であって,前記各測定対象物を透過し反射する波長を有する光を照射する光源と,前記光源からの光を測定光と参照光とにスプリットするためのスプリッタと,前記スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段と,前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と,前記スプリッタからの参照光を前記参照光反射手段へ向けて照射する参照光照射位置まで伝送する参照光伝送手段と,前記スプリッタからの測定光を前記複数の測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射する測定光照射位置まで伝送する測定光伝送手段と,前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定するための受光手段とを備えたことを特徴とする温度/厚さ測定装置が提供される。
【0014】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,対向して配置された複数の測定対象物の温度又は厚さを光の干渉に基づいて測定する温度/厚さ測定方法であって,前記各測定対象物を透過し反射する波長を有する光を照射する光源からスプリットされた測定光を前記複数の測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射するとともに,参照光を参照光反射手段へ向けて照射する工程と,前記参照光反射手段を一方向へ走査することによって前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させながら,前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定する工程と,前記干渉測定の結果に基づいて前記各測定対象物の温度又は厚さを測定する工程とを有することを特徴とする温度/厚さ測定方法が提供される。
【0015】
このような本発明にかかる上記装置又は方法によれば,光源からスプリットされた測定光が,対向して配置された複数の測定対象物へ向けて照射されると,測定光は最初に(最端に)配置された測定対象物の表面や裏面などで反射するとともに,この最初の測定対象物を透過するため,この透過光を2番目に配置された測定対象物の測定光として利用できる。同様に,測定光は各測定対象物を透過するので,3番目以降に配置された測定対象物についても,それ以前に配置された測定対象物を測定光が透過した光がその測定対象物の測定光となり,各測定対象物の表面や裏面などで反射する。従って,各測定対象物から反射する各測定光と,参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定することにより,各測定対象物の温度又は厚みを一度に求めることができる。
【0016】
このように,ある測定対象物を透過した測定光を次に配置された測定対象物の測定光として利用することにより,光源からスプリットされた測定光を複数の測定対象物へ向けて照射するという簡単な構成で,各測定対象物から反射する各測定光を受光することができる。これにより,測定光を伝送する例えば光ファイバなどの取り回しが容易で測定対象物への孔の形成を不要とすることができるなど温度測定装置の取付けの手間を軽減することができる。また,1つの温度測定装置で複数の測定対象物の温度を一度に測定することができるので,コストの上昇を極力抑えつつ,温度計測時間も極力短くすることができる。
【0017】
また,上記装置又は方法において,測定光の光路の途中に,この測定光の光路に並列して接続した迂回光路を設けることにより,測定光の迂回光路を介さないで伝送される測定光と参照光との光の干渉と,少なくとも一度は測定光の迂回光路を介して伝送される測定光と参照光との光の干渉とを測定することができる。これら光の干渉にはずれが生じ,これら光の干渉のずれ量は測定光の迂回光路の光路長を調整することにより調整可能である。
【0018】
従って,上記測定光の迂回光路の光路長を調整することにより,例えば各測定対象物についての測定光と参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるようにすることができる。このため,少なくとも各測定対象物についての測定光と参照光との干渉波形が測定できる範囲だけ参照光反射手段(例えば参照ミラー)を移動させれば足りる。これにより,参照光反射手段(例えば参照ミラー)の移動距離を短くすることができるので,温度又は厚さ測定にかかる時間も短縮することができる。この場合,各測定対象物についての干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるように,上記測定光の迂回光路の光路長を調整すれば,さらに参照光反射手段(例えば参照ミラー)の移動距離を短くすることができるので,温度又は厚さ測定にかかる時間もさらに短縮することができる。
【0019】
また,上記装置又は方法において,前記スプリッタからの測定光をさらに複数の測定光にスプリットするための測定光用スプリッタを設け,この測定光用スプリッタからの各測定光を前記複数の測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射することにより,前記測定光用スプリッタからの複数の測定光が前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定することができる。これにより,各測定光の光軸を各測定対象物ごとに調整することができるので,各測定対象物の平行度の精度に拘らず,測定光の光軸の調整が容易となる。
【0020】
また,上記装置又は方法において,前記参照光反射手段は,複数の反射面を設け,前記スプリッタからの参照光を前記各反射面で反射させて,光路長の異なる複数の参照光を反射させることにより,前記各反射面から反射する複数の参照光と,前記各測定対象物から反射する各測定光との光の干渉を測定することができる。これら光の干渉にはずれが生じ,これら光の干渉のずれ量は参照光反射手段の複数の反射面の位置を調整することにより調整可能である。
【0021】
従って,参照光反射手段の複数の反射面の位置を調整することにより,例えば各測定対象物についての測定光と参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるようにしたり,各測定対象物についての干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるようにしたりすることができる。このため,少なくとも各測定対象物についての測定光と参照光との干渉波形が測定できる範囲だけ参照光反射手段(例えば参照ミラー)を移動させれば足りる。これにより,参照光反射手段(例えば参照ミラー)の移動距離を短くすることができるので,温度又は厚さ測定にかかる時間も短縮することができる。
【0022】
また,上記装置又は方法において,前記スプリッタからの参照光をさらに複数の参照光にスプリットするための参照光用スプリッタを設け,この参照光用スプリッタからの複数の参照光を前記参照光反射手段へ照射することにより,参照光用スプリッタからの複数の参照光が参照光反射手段から反射する各参照光と,各測定対象物から反射する各測定光との光の干渉を測定することができる。これら光の干渉にはずれが生じ,これら光の干渉のずれ量は参照光用スプリッタからの複数の参照光の光路長を調整することにより調整可能である。
【0023】
従って,参照光用スプリッタからの複数の参照光の光路長を調整することにより,例えば各測定対象物についての測定光と参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるようにしたり,各測定対象物についての干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるようにしたりすることができる。このため,少なくとも各測定対象物についての測定光と参照光との干渉波形が測定できる範囲だけ参照光反射手段(例えば参照ミラー)を移動させれば足りる。これにより,参照光反射手段(例えば参照ミラー)の移動距離を短くすることができるので,温度又は厚さ測定にかかる時間も短縮することができる。
【0024】
また,上記装置又は方法において,参照光の光路の途中に,この参照光の光路に並列して接続した迂回光路を設けることにより,参照光の迂回光路を介さないで伝送される参照光と測定光との光の干渉と,少なくとも一度は参照光の迂回光路を介して伝送される参照光と測定光との光の干渉とを測定することができる。これら光の干渉にはずれが生じ,これら光の干渉のずれ量は参照光の迂回光路の光路長を調整することにより調整可能である。
【0025】
従って,上記参照光の迂回光路の光路長を調整することにより,例えば各測定対象物についての測定光と参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるようにすることができる。このため,少なくとも各測定対象物についての測定光と参照光との干渉波形が測定できる範囲だけ参照光反射手段(例えば参照ミラー)を移動させれば足りる。これにより,参照光反射手段(例えば参照ミラー)の移動距離を短くすることができるので,温度又は厚さ測定にかかる時間も短縮することができる。この場合,各測定対象物についての干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるように,上記参照光の迂回光路の光路長を調整すれば,さらに参照光反射手段(例えば参照ミラー)の移動距離を短くすることができるので,温度又は厚さ測定にかかる時間もさらに短縮することができる。
【0026】
また,上記装置又は方法において,前記各光(光源からの光,測定光,参照光など)はそれぞれ,空中を介して伝送されるようにしてもよい。これによれば,光ファイバやコリメートファイバの用いずに光を伝送させることができる。これにより,光ファイバやコリメートファイバを通らない波長(例えば2.5μm以上の波長)の光であっても,光源として利用することができる。
【0027】
また,上記装置又は方法において,前記各測定対象物は,例えばシリコン又はシリコン酸化膜により形成され,前記光源は,例えば1.0〜2.5μmの波長を有する光を照射可能なもので構成される。このような1.0〜2.5μmの波長を有する光は,シリコン又はシリコン酸化膜を透過し反射することから,ある測定対象物を透過した測定光を次に配置された測定対象物の測定光として利用することが可能となる。
【0028】
また,上記装置又は方法において,前記測定対象物は,例えば基板処理装置(例えばプラズマ処理装置など)内で処理される被処理基板(例えば半導体ウエハ,ガラス基板など)又はこの被処理基板の周囲に配設される周辺リング(例えばフォーカスリング)と,この被処理基板に対向して配設される電極板(例えば上部電極の電極板,下部電極の電極板など)である。このように,本発明によれば上記のような簡単な構成で,基板処理装置内で対向して配置される電極板と被処理基板又は周辺リングの温度又は厚みを一度に測定することができるので,コストを極力抑えながら,温度測定にかかる手間や時間を極力軽減することができる。
【0029】
また,上記方法において,前記測定光と前記参照光との光の干渉の測定中に前記光源の光強度を変えるようにしてもよい。例えば参照光反射手段の移動距離に応じて光源の光強度を徐々に大きくしたり,また各測定対象物ごとに光源の光強度を変えるようにしてもよい。測定対象物ごとに光源の光強度を変える場合は,例えば測定光の各測定対象物からの反射強度に応じて光源の光強度を変えたり,測定光の照射位置から離れた測定対象物ほど光源の光強度を大きくするようにしてもよい。これにより,測定光と参照光との光の干渉の測定中に,測定光が各測定対象物の内部及び各測定対象物間の空間を透過することによる測定光の光強度の低下を防止することにより,その測定光と参照光との干渉波形についてのノイズに対する光強度(S/N比)の低下を防止してその干渉波形がくずれないようにすることができる。これにより,例えば干渉波形のピーク位置の検出精度を向上させて,干渉波形のピーク間幅に基づく温度や厚みの測定精度を向上させることができる。
【0030】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,処理室内に配置された電極板に高周波電力を印加することによって,この電極板に対向して配置される被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置と,この基板処理装置に取付けられる温度/厚さ測定装置と,前記温度/厚さ測定装置を制御する制御装置とを備える温度/厚さ測定システムであって,前記温度/厚さ測定装置は,少なくとも前記電極板と前記被処理基板又はこの被処理基板の周囲に配設される周辺リングを含む各測定対象物を透過し反射する波長を有する光を照射する光源と,前記光源からの光を測定光と参照光とにスプリットするためのスプリッタと,前記スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段と,前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と,前記スプリッタからの参照光を前記参照光反射手段へ向けて照射する参照光照射位置まで伝送する参照光伝送手段と,前記スプリッタからの測定光を前記各測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射する測定光照射位置まで伝送する測定光伝送手段と,前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定するための受光手段とを備え,前記制御装置は,前記受光手段からの干渉測定の結果に基づいて前記各測定対象物の温度又は厚さを求めることを特徴とする温度/厚さ測定システムが提供される。
【0031】
このような本発明にかかる温度/厚さ測定システムによれば,測定光を伝送する例えば光ファイバなどの取り回しが容易で測定対象物への孔の形成を不要とすることができるなど基板処理装置への温度測定装置の取付けの手間を軽減することができる。また,1つの温度測定装置で例えば基板処理装置に対向して配置される被処理基板及び電極板を含む複数の測定対象物の温度を一度に測定することができるので,コストの上昇を極力抑えつつ,温度計測時間も極力短くすることができる。
【0032】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,処理室内に配置された電極板に高周波電力を印加することによって,この電極板に対向して配置される被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置と,この基板処理装置に設置される温度/厚さ測定装置と,前記温度/厚さ測定装置及び前記基板処理装置を制御する制御装置とを備える制御システムであって,前記温度/厚さ測定装置は,少なくとも前記電極板と前記被処理基板又はこの被処理基板の周囲に配設される周辺リングを含む各測定対象物を透過し反射する波長を有する光を照射する光源と,前記光源からの光を測定光と参照光とにスプリットするためのスプリッタと,前記スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段と,前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と,前記スプリッタからの参照光を前記参照光反射手段へ向けて照射する参照光照射位置まで伝送する参照光伝送手段と,前記スプリッタからの測定光を前記各測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射する測定光照射位置まで伝送する測定光伝送手段と,前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定するための受光手段と,前記制御装置は,前記受光手段からの干渉測定の結果に基づいて前記各測定対象物の温度又は厚さを求め,これらの温度又は厚さに基づいて,前記基板処理装置の処理室内にある前記被処理基板の温度制御とプロセス制御のうち少なくとも一方の制御を行うことを特徴とする制御システムが提供される。
【0033】
このような本発明にかかる制御システムによれば,例えば基板処理装置に対向して配置される被処理基板及び電極板を含む複数の測定対象物の温度又は厚みを一度に測定することができ,これらの温度又は厚みに基づいて被処理基板の温度制御やプロセス制御を行うことができるので,被処理基板のプロセス特性を的確に制御することができ,また基板処理装置の安定性を向上させることができる。
【0034】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,処理室内に配置された電極板に高周波電力を印加することによって,この電極板に対向して配置される被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置の制御システムについて制御方法であって,少なくとも前記電極板と前記被処理基板又はこの被処理基板の周囲に配設される周辺リングを含む複数の測定対象物を透過し反射する波長を有する光を照射する光源からスプリットされた測定光を前記複数の測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射するとともに,参照光を参照光反射手段へ向けて照射する工程と,
前記参照光反射手段を一方向へ走査することによって前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させながら,前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定する工程と,前記干渉測定の結果に基づいて前記各測定対象物の温度又は厚さを測定する工程と,測定した前記各測定対象物の温度又は厚さに基づいて,前記基板処理装置における前記被処理基板の温度制御とプロセス制御のうち少なくとも一方の制御を行う工程とを有することを特徴とする制御方法が提供される。
【0035】
このような本発明にかかる制御方法によれば,例えば基板処理装置の処理室内に対向して配置される電極板と被処理基板を含む複数の測定対象物の温度又は厚みを一度に測定することができ,これらの温度又は厚みに基づいて被処理基板の温度制御やプロセス制御を行うことができるので,被処理基板のプロセス特性を的確に制御することができ,また基板処理装置の安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば,対向して配置された複数の測定対象物の温度又は厚さを測定する際に,ある測定対象物を透過した測定光を次に配置された測定対象物の測定光として利用することにより,光源からスプリットされた測定光を複数の測定対象物へ向けて照射するという簡単な構成で,各測定対象物から反射する各測定光を受光することができる。これにより,温度/厚さ測定装置の取付けの手間を軽減することができ,測定対象物に他の測定対象物を測定するための測定光を通すための孔を形成することなく,複数の測定対象物の温度又は厚さを一度に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0038】
(第1実施形態にかかる温度測定装置)
本発明の第1実施形態にかかる温度測定装置について図面を参照しながら説明する。図1は,本発明の第1実施形態にかかる温度測定装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態にかかる温度測定装置100は,上述した図19に示すような原理を基本としつつ,簡単な構成で,例えば図1に示すような対向して配置された複数の測定対象物T〜Tを参照光反射手段(例えば参照ミラー)の一度の走査で温度測定することができるようにしたものである。このような温度測定装置100の具体的な構成は以下の通りである。
【0039】
図1に示すように,温度測定装置100は,光源110と,この光源110からの光を測定光と参照光とにスプリット(分波)するためのスプリッタ120と,このスプリッタ120からの参照光を反射するための参照光反射手段140と,参照光反射手段140から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段とを備える。光路長変化手段は,例えば参照ミラーなどで構成される参照光反射手段140を参照光の入射方向に平行な一方向へ駆動するモータなどの駆動手段142により構成される。このように,参照ミラーを一方向へ駆動させることにより,参照ミラーから反射する参照光の光路長を変化させることができる。
【0040】
また,温度測定装置100は,対向して配置された複数の測定対象物T〜Tに,上記スプリッタ120からの測定光を照射したときに測定対象物T〜Tでそれぞれ反射する第1〜第n測定光と,参照光反射手段140に上記スプリッタ120からの参照光を照射したときに参照光反射手段140から反射する参照光との干渉を測定するための受光手段150とを備える。
【0041】
このような温度測定装置100を構成する光源110としては,各測定対象物T〜Tを透過し反射する光であって,光源110からスプリットされる測定光と参照光との干渉が測定できる光を照射可能なものを使用する。本発明においては,光源110からの測定光が各測定対象物T〜Tを透過し反射する光と参照光との干渉に基づいて温度を測定するからである。具体的には,最初に(最端に)配置された測定対象物Tについては光源110からの測定光を利用し,2番目以降に配置された測定対象物T〜Tについては,それ以前に配置された測定対象物を上記測定光が透過した光を測定光として利用し,これらの測定光が測定対象物T〜Tから反射した光を受光する。これにより,測定対象物に他の測定対象物を測定するための測定光を通すための孔を形成することなく,すべての測定対象物T〜Tの温度を測定することができる。
【0042】
なお,測定対象物として例えばウエハの温度測定を行う場合,光源110としては,少なくともウエハの表面と裏面との間の距離(通常は800〜1500μm程度)からの反射光が干渉を生じない程度の光が好ましい。具体的には例えば低コヒーレンス光を用いることが好ましい。低コヒーレンス光とは,コヒーレンス長の短い光をいう。低コヒーレンス光の中心波長は例えば0.3〜20μmが好ましく,更に0.5〜5μmがより好ましい。また,コヒーレンス長としては,例えば0.1〜100μmが好ましく,更に3μm以下がより好ましい。このような低コヒーレンス光を光源110として使用することにより,余計な干渉による障害を回避でき,ウエハの表面又は内部層からの反射光に基づく参照光との干渉を容易に測定することができる。
【0043】
また,測定対象物としてウエハの他に,上部電極の電極板など処理室内の部品の温度測定を行うには,光源110としてはこれらを透過可能な波長を有する光を使用することが好ましい。複数の測定対象物T〜Tが例えばウエハや上部電極の電極板などのようにシリコン又はシリコン酸化物(例えば石英)などのシリコン材で構成される場合は,シリコン材を透過可能な1.0〜2.5μmの波長を有する低コヒーレンス光を照射可能なものを光源110として使用することが好ましい。
【0044】
上記低コヒーレンス光を使用した光源としては,例えばSLD(Super Luminescent Diode),LED,高輝度ランプ(タングステンランプ,キセノンランプなど),超広帯域波長光源などが挙げられる。これらの低コヒーレンス光源の中でも,高輝度の点に鑑みれば,SLDを光源110として用いることが好ましい。
【0045】
上記スプリッタ120としては,例えば光ファイバカプラを用いる。但し,これに限定されるものではなく,参照光と測定光とにスプリットすることが可能なものであればよい。スプリッタ120としては,例えば光導波路型分波器,半透鏡(ハーフミラー)などを用いてもよい。
【0046】
上記参照光反射手段140は,例えば参照ミラーにより構成される。参照ミラーとしては例えばコーナーキューブプリズム,平面ミラー等などが適用可能である。これらの中でも,反射光の入射光との平行性の点に鑑みれば,コーナーキューブプリズムを用いることが好ましい。但し,参照光を反射できれば,上記のものに限られず,例えばディレーライン(後述するピエゾチューブ型ディレーライン等の光路変化手段と同様)などで構成してもよい。
【0047】
上記参照光反射手段140を駆動する駆動手段142としては,例えば参照光の入射方向と平行な方向(図1における矢印方向)に駆動させるステッピングモータにより構成することが好ましい。ステッピングモータを用いれば,モータの駆動パルスにより参照光反射手段140の移動距離を容易に検出することができる。但し,光路長変化手段としては,参照光反射手段から反射する光の光路長を変化させることができれば,上記モータに限られることはなく,例えばボイスコイルモータを用いたボイスコイルモータ型ディレーラインの他,ピエゾチューブ型ディレーライン,直動ステージ型ディレーライン,積層ピエゾ型ディレーラインなどで光路長変化手段を構成してもよい。
【0048】
上記受光手段150としては,低価格性,コンパクト性を考慮すれば,例えばフォトダイオードを用いて構成することが好ましい。具体的には例えばSiフォトダイオード,InGaAsフォトダイオード,Geフォトダイオードなどを用いたPD(Photo Detector)により構成する。但し,測定対象物Tからの測定光と参照光反射手段140からの参照光との干渉を測定できれば,上記のものに限られず,例えばアバランシェフォトダイオード,光電子増倍管などを用いて受光手段150を構成してもよい。
【0049】
上記スプリッタ120からの参照光は,参照光伝送手段(例えば光ファイバcの先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバF)を介して参照光反射手段140へ照射する参照光照射位置まで伝送されるようになっている。また,上記スプリッタ120からの測定光は測定光伝送手段(例えば光ファイバbの先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバF)を介して測定対象物T〜Tへ向けて照射する測定光照射位置まで伝送されるようになっている。なお,上記参照光伝送手段又は上記測定光伝送手段としては,上記コリメータ付光ファイバに限られず,コリメートファイバであってもよい。
【0050】
上記測定光伝送手段による測定光照射位置については,上記スプリッタ120からの測定光が最も外側に配置される測定対象物T(又はT)の方からすべての測定対象物T〜Tへ向けて各測定対象物T〜Tを透過するように照射される位置とする。これにより,光源110からスプリットされた測定光は,測定対象物T〜Tを透過し反射するので,測定対象物Tの表面や裏面で反射した第1測定光のみならず,測定対象物Tを透過して測定対象物Tの表面や裏面で反射した第2測定光を得ることができ,同様にして第3〜第n測定光についても得ることができる。すなわち,各測定対象物T〜Tのうちの測定対象物T(1≦k≦n)について考えれば,光源110からの測定光が,その測定光が照射される側に配置された測定対象物T〜Tk−1を透過して測定対象物Tへ照射されることにより,測定対象物Tの表面や裏面で反射して第k測定光を得ることができる。
【0051】
このように,ある測定対象物の透過した測定光を他の測定対象物の測定光として利用することにより,すべての測定対象物T〜Tについての第1測定光〜第n測定光をコリメータ付光ファイバFを介して受光することができるので,測定対象物T〜Tの温度を一度に測定することができる。
【0052】
これに対して,測定対象物T〜Tを透過しない光を測定光の光源110として用いて構成した温度測定装置102を比較例として図2に示す。図2に示す温度測定装置102では,上記スプリッタ120からの測定光をさらに光通信用マルチプレクサ(OADM:optical add/drop multiplexer)132を用いて第1〜第n測定光にスプリットし,これら第1〜第n測定光をそれぞれ光ファイバg〜gの先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバF〜Fを介して,各測定対象物T〜Tに照射させる点で図1に示すものと相違する。
【0053】
このような温度測定装置102では,測定対象物T〜Tを透過しない光を測定光の光源110を用いるので,測定対象物に他の測定対象物を測定するための測定光を通す孔を形成しなければならないという問題がある。しかも,測定対象物の数nが多いほどそれに対応して測定対象物に多くの孔を形成しなければならなくなる。これでは,測定対象物に余計な孔が必要となるとともに,その孔を形成する手間もかかる。
【0054】
具体的には例えば測定対象物Tには他の測定対象物T〜Tを測定するための第2〜第n測定光をそれぞれ通すための孔を形成しなければならず,さらに測定対象物Tには他の測定対象物T〜Tを測定するための第3〜第n測定光をそれぞれ通すための孔を形成しなければならない。
【0055】
さらに,温度測定装置102では,第1〜第n測定光を光通信用マルチプレクサ132により切替えながら,測定対象物ごとに測定対象物の数nだけ参照光反射手段140を走査(可動)し,各測定対象物ごとに温度を計測しなければならない。これでは,温度測定に手間と時間がかかってしまうという問題もある。
【0056】
この点,図1に示す温度測定装置100では,測定対象物を透過する光を測定光として用いることができるので,測定対象物T〜Tに孔を形成することなく,光源110からスプリットされた測定光を,最端に配置される測定対象物(T又はT)の方から複数の測定対象物T〜Tへ向けて各測定対象物を透過するように照射するだけで,その測定光が各測定対象物T〜Tで反射した第1測定光〜第n測定光を受光することができる。これにより,参照ミラーなどの参照光反射手段140を一度走査するだけで各第1〜第n測定光と参照光との光の干渉波を一度に検出することができる。このため,温度計測にかかる時間を極力短くすることができる。
【0057】
このように,本実施形態にかかる温度測定装置100によれば,光源110からスプリット(分波)された測定光を複数の測定対象物T〜Tへ向けて照射するという簡単な構成で,各測定対象物T〜Tの温度を一度に検出することができる。これにより,光ファイバの取り回しが容易で測定対象物への孔の形成を不要とすることができるなど温度測定装置の取付けの手間を軽減することができる。また,1つの温度測定装置で複数の測定対象物の温度を一度に測定することができるので,コストの上昇を極力抑えつつ,温度計測時間も極力短くすることができる。
【0058】
なお,上記スプリッタ120によりスプリットされた測定光と参照光との強度比は例えば1:1とする。これにより,測定光と参照光の強度がほぼ同じ強度になるので,例えばピーク間幅などを測定しやすい干渉波形が得られる。各光の強度はこれに限られることはない。
【0059】
また,各測定対象物T〜Tの間に,測定光の透過をオンオフ可能なシャッタ手段(図示しない)を設けるようにしてもよい。例えばシャッタ手段により測定対象物Tと測定対象物Tの間を遮断して測定対象物T〜Tに測定光が照射されないようにして,参照光反射手段(例えば参照ミラー)140を駆動させることにより,第1測定光と参照光の干渉波だけを得ることができる。また,例えばシャッタ手段により測定対象物Tと測定対象物Tの間を遮断して測定対象物T〜Tに測定光が照射されないようにして,参照光反射手段(例えば参照ミラー)140を駆動させれば,第1測定光及び第2測定光と参照光の干渉波だけを得ることができる。この場合に,第1測定光と参照光の干渉波は,シャッタ手段により測定対象物Tと測定対象物Tの間を遮断する上記の方法により特定できるので,第2測定光と参照光の干渉波だけを特定することができる。このように,上記シャッタ手段を設けることにより,測定対象物T〜Tで反射する測定光を特定することができる。
【0060】
(温度測定装置の動作)
このような構成の温度測定装置100においては,図1に示すように,光源110からの光は,例えば光ファイバaを介してスプリッタ120の入力端子(入力ポート)の一方に入射され,スプリッタ120により2つの出力端子(出力ポート)へ2分波される。このうち,一方の出力端子(出力ポート)からの光は測定光として,測定光伝送手段例えば光ファイバbの先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバFを介して測定対象物T〜Tに照射され,各測定対象物T〜Tの各層の表面,境界面や裏面によって反射される。
【0061】
一方,スプリッタ120により2分波された他方の出力端子(出力ポート)からの光は参照光として,参照光伝送手段例えば光ファイバcの先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバFから照射され,参照光反射手段(例えば参照ミラー)140によって反射される。そして,各測定対象物T〜Tで反射した第1〜第n測定光はコリメータ付光ファイバFを介してスプリッタ120へ入射するとともに,参照光反射手段(例えば参照ミラー)140で反射した参照光もコリメータ付光ファイバFを介してスプリッタ120に入射し,これら第1〜第n測定光と参照光とが再び合波されて,例えばSiフォトダイオード,InGaAsフォトダイオード,Geフォトダイオードなどを用いたPDで構成された受光手段150へ例えば光ファイバdを介して入射し,受光手段150で第1〜第n測定光と参照光との干渉波形が検出される。
【0062】
(測定光と参照光との干渉波形の具体例)
ここで,温度測定装置100により得られる測定光と参照光との光の干渉の具体例を図3に示す。図3は,測定対象物T及びTで反射した第1及び第2測定光と,参照光反射手段140で反射した参照光との干渉波形を示したものである。図3(a)は温度変化前の干渉波形を示したものであり,図3(b)は温度変化後の干渉波形を示したものである。図3において縦軸は干渉強度,縦軸は参照ミラーの移動距離をとっている。
【0063】
また,光源110としては,測定対象物Tを透過可能な低コヒーレンス光源を用いる。低コヒーレンス光源によれば,光源110からの光のコヒーレンス長が短いため,通常は測定光の光路長と参照光の光路長とが一致した場所で強く干渉が起こり,それ以外の場所では干渉は実質的に低減するという特質がある。このため,参照光反射手段(例えば参照ミラー)140を例えば参照光の照射方向の前後に駆動させ,参照光の光路長を変化させることにより,測定対象物T及びTの表面及び裏面の他,測定対象物T及びTの内部にさらに層があればその各層についても,これらの屈折率差によって反射した測定光と参照光が干渉する。その結果,測定対象物T及びTの深度方向の温度測定が可能となる。
【0064】
図3(a),(b)によれば,参照光反射手段(例えば参照ミラー)140を一方向へ走査していくと,先ず測定対象物Tの表面と参照光との干渉波が現れ,次いで測定対象物Tの裏面と参照光との干渉波が現れる。参照光反射手段140をさらに走査していくと,測定対象物Tの表面と参照光との干渉波が現れ,次いで測定対象物Tの裏面と参照光との干渉波が現れる。このように,参照光反射手段140を一度走査するだけで測定対象物T,Tの表面及び裏面の干渉波を一度に検出することができる。
【0065】
(干渉波に基づく温度測定方法)
次に,測定光と参照光との光の干渉に基づいて温度を測定する方法について説明する。測定光と参照光の干渉波に基づく温度測定方法としては,例えば温度変化に基づく光路長変化を用いる温度換算方法がある。ここでは,上記干渉波形の位置ズレを利用した温度換算方法について説明する。
【0066】
測定対象物T,Tがヒータ等によって温められると,測定対象物T,Tはそれぞれ膨張して屈折率が変化するため,温度変化前と温度変化後では,干渉波形の位置がずれて,干渉波形のピーク間幅が変化する。このとき,各測定対象物T,Tごとに温度変化があれば,各測定対象物T,Tごとに干渉波形の位置がずれて,干渉波形のピーク間幅が変化する。このような各測定対象物T,Tごとに干渉波形のピーク間幅を測定することにより温度変化を検出することができる。例えば図1に示すような温度測定装置100であれば,干渉波形のピーク間幅は,参照光反射手段(例えば参照ミラー)140の移動距離に対応しているため,干渉波形のピーク間幅における参照ミラーの移動距離を測定することにより,温度変化を検出することができる。
【0067】
以下,上記温度測定方法について,図3で測定した測定対象物T,Tの厚さをそれぞれd,dとし,屈折率をn,nとしてより具体的に説明する。測定対象物T,Tに測定光を照射して,参照ミラーを一方向へ走査していくと,測定対象物Tにおける表面,裏面で反射した第1測定光と参照光の干渉及び測定対象物Tを透過した光が測定対象物Tにおける表面,裏面で反射した第2測定光と参照光の干渉により,図3(a)に示すように各測定対象物T,Tごとに,2つずつ干渉波形が得られる。
【0068】
このとき,測定対象物T,Tを例えばヒータなどより加熱すると,測定対象物T,Tの温度は上昇し,その温度変化により測定対象物T,Tは膨張して屈折率も変化する。これにより,図3(b)に示すように,2つの干渉波形のうち,測定対象物T,Tごとに,それぞれ1つの干渉波形を基準として残り1つの干渉波形についてのピーク位置がずれて,干渉波形のピーク間幅が変化する。例えば図3(b)では,各測定対象物T,Tにおける表面の干渉波形を基準として,裏面の干渉波形の位置が,図3(a)の場合に比してそれぞれt,tだけずれている。これにより,測定ポイントP,Pの干渉波形のピーク間幅は,それぞれ図3(a)に示すW,Wから図3(b)に示すW′,W′へ変化する。
【0069】
このような干渉波形についてのピーク位置のずれは,一般に厚さdについては測定対象物の各層固有の線膨張係数αに依存し,また屈折率nの変化については主として各層固有の屈折率変化の温度係数βに依存する。なお,屈折率変化の温度係数βについては波長にも依存することが知られている。
【0070】
従って,各測定対象物T,Tにおける温度変化後のウエハの厚さd′,d′を数式で表すと下記数式(1−1),(1−2)に示すようになる。なお,下記数式(1−1),(1−2)において,ΔT,ΔTは各測定対象物T,Tの温度変化を示している。α,αはそれぞれ測定対象物T,Tの線膨張率を示しており,β,βはそれぞれ測定対象物T,Tの屈折率変化の温度係数を示している。また,d,nは,それぞれ温度変化前の測定対象物Tの厚さ,屈折率を示し,d,nは,それぞれ温度変化前の測定対象物Tの厚さ,屈折率を示している。
【0071】
′=d・(1+αΔT),n′=n・(1+βΔT) …(1−1)
【0072】
′=d・(1+αΔT),n′=n・(1+βΔT) …(1−2)
【0073】
上記数式(1−1),(1−2)に示すように,温度変化によって測定対象物T,Tを透過して反射する第1,第2測定光の光路長が変化する。光路長は一般に,厚さdと屈折率nとを積で表される。従って,温度変化前の測定対象物T,Tを透過して反射する第1,第2測定光の光路長をL,Lとし,測定対象物T,Tにおける温度がそれぞれΔT,ΔTだけ変化した後の光路長をL′,L′とすると,L,L′はそれぞれ下記の数式(1−3)に示すようになり,L,L′はそれぞれ下記の数式(1−4)に示すようになる。
【0074】
=d・n , L′=d′・n′ …(1−3)
【0075】
=d・n , L′=d′・n′ …(1−4)
【0076】
従って,各測定対象物T,Tにおける第1,第2測定光の光路長の温度変化前後の差(L′−L,L′−L)は,上記数式(1−1),(1−2),(1−3),(1−4)により計算して整理すると,それぞれ下記数式(1−5),(1−6)に示すようになる。なお,下記数式(1−5),(1−6)では,α・β≪α,α・β≪βを考慮して微小項を省略している。なお,ウエハに熱が与えられる前の初期状態には,ウエハの厚さdと屈折率nは,同じウエハ面内であるすべての測定ポイントP,Pについて同一であると仮定できるので,L=d・n=L=Lとすることができる。
【0077】
′−L=d′・n′−d・n=d・n・(α+β)・ΔT
=L・(α+β)・ΔT …(1−5)
【0078】
′−L=d′・n′−d・n=d・n・(α+β)・ΔT
=L・(α+β)・ΔT …(1−6)
【0079】
ここで,各測定対象物における測定光の光路長は,参照光との干渉波形のピーク間幅に相当する。例えば温度変化前における各測定対象物T,Tの第1,第2測定光の光路長L,Lはそれぞれ,図3(a)に示す干渉波形のピーク間幅W,Wに相当し,温度変化後における各測定対象物T,Tの第1,第2測定光の光路長L′,L′はそれぞれ,図3(b)に示す干渉波形のピーク間幅W′,W′に相当する。従って,各測定対象物における参照光との干渉波形のピーク間幅は,図1に示すような温度測定装置100によれば,参照光反射手段(例えば参照ミラー)140の移動距離により測定できる。
【0080】
従って,各測定対象物T,Tの線膨張率α,α及び屈折率変化の温度係数β,βを予め調べておけば,各測定対象物T,Tにおける参照光との干渉波形のピーク間幅を計測することによって,上記数式(1−5),(1−6)を用いて,各測定対象物T,Tの温度に換算することができる。
【0081】
このように,干渉波から温度への換算する場合,上述したように干渉波形のピーク間で表される光路長が線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βによって変るため,これら線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βを予め調べておく必要がある。測定対象物となり得るウエハを含めた物質の線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βは一般に,温度帯によっては,温度に依存する場合もある。例えば線膨張率αについては一般に,物質の温度が0〜100℃くらいの温度範囲ではそれほど変化しないので,一定とみなしても差支えないが,100℃以上の温度範囲では物質によっては温度が高くなるほど変化率が大きくなる場合もあるので,そのような場合には温度依存性が無視できなくなる。屈折率変化の温度係数βについても同様に温度範囲によっては,温度依存性が無視できなくなる場合がある。
【0082】
例えばウエハを構成するシリコン(Si)の場合は,0〜500℃の温度範囲において線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βは例えば二次曲線で近似することができることが知られている。その詳細については,例えばJ.A.McCaulley,V.M.Donnellyらの論文(J.A.McCaulley,V.M.Donnelly,M.Vernon,andI.Taha,
"Temperature dependence of the near-infrared refractive index of
silicon,gallium arsenide,and indium phosphide"Phy.Rev.B49,7408,1994)などにも記載されている。
【0083】
このように,線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βは温度に依存するので,例えば温度に応じた線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βを実験などによって予め調べて,温度換算用基準データとして予めメモリ(例えば後述する制御装置400のメモリ440等)に記憶しておき,温度換算用基準データを利用して温度換算すれば,より正確な温度に換算することができる。
【0084】
なお,測定光と参照光との干渉波に基づいて温度を測定する方法としては,上記の方法に限られず,各測定対象物T〜Tについての光路長と温度との関係を実験などにより予め求めて,温度換算用基準データとして予めメモリ(例えば後述する制御装置400のメモリ440等)に記憶しておき,この温度換算用基準データを利用して,各測定対象物T〜Tについての測定光と参照光との干渉波に基づいて測定された光路長(干渉波のピーク幅)を直接温度に換算するようにしてもよい。これによれば,線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βがわからなくても,測定光と参照光との干渉波の測定結果を容易に温度に換算することができる。
【0085】
具体的には例えばある測定対象物Tについて,既知の温度tでの光路長をLとし,ある温度tでの光路長をLとし,線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βとすると,線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βの温度依存を無視できる温度帯であれば,ある温度tは,下記(2−1)式で表すことができる。下記(2−1)式は上記(1−5)式におけるL1′=L,L1=L,ΔT1=t−t,α=α,β=βとした場合と同様である。そして,下記(2−1)を整理すると,ある温度tは下記(2−2)式で表すことができる。下記(2−2)式において,線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βの温度依存を無視できる場合は,α+βは一定と考えられるので,定数の係数をA,Bで置換えると下記(2−3)式に示すような一次式で表すことができる。
【0086】
−L=L・(α+β)・(t−t) …(2−1)
【0087】
t=(1/(α+β))・(L/L)−(1/(α+β)+t) …(2−2)
【0088】
t=A・(L/L)+B …(2−3)
【0089】
また,線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βの温度依存を無視できない場合は,下記(2−4)式に示すような2次式で表すようにしてもよい。この場合の係数をA,B,Cとする。
【0090】
t=A・(L/L+B・(L/L)+C …(2−4)
【0091】
上記(2−3)式における係数A,B,上記(2−4)式における係数A,B,Cはそれぞれ,実験によりいくつかの温度で実際に光路長を測定することにより求める。例えば温度と光路長との関係について図4に示すような実験結果が得られたとすれば,上記既知の温度tを40℃としそのときの光路長をL=L40として,上記(2−4)式における係数はそれぞれ,A=−1.2496×10,B=−2.6302×10,C=−1.3802×10となる。
【0092】
こうして実験により得られた(2−4)式を温度換算用基準データとして予めメモリ(例えば後述する制御装置400のメモリ440等)に記憶しておき,測定光と参照光との干渉波に基づいて測定された光路長LからL/L40を求めて,(2−4)式のL/Lに当てはめることにより,光路長Lを温度tに換算することができる。
【0093】
なお,測定光と参照光との干渉波に基づく温度測定方法としては上述したような方法に限られることはなく,例えば温度変化に基づく吸収強度変化を用いる方法であってもよく,上記温度変化に基づく光路長変化と温度変化に基づく吸収強度変化とを組み合わせた方法であってもよい。
【0094】
(第2実施形態にかかる温度測定システム)
次に,第2実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムについて図面を参照しながら説明する。第2実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムは,第1実施形態にかかる温度測定装置を基板処理装置に適用した場合の具体例である。図5は,第2実施形態にかかる温度測定システムの概略構成を示す図である。ここでは,例えばプラズマエッチング装置などの基板処理装置において対向して配置される2つの温度対象物T(例えば上部電極の電極板Tu)及びT(例えばウエハTw)の温度測定に適用する場合を例に挙げて説明する。
【0095】
図5に示す温度測定システムは,大別すると,温度測定装置200,基板処理装置300,制御装置400から構成される。図5に示す温度測定装置200は,図1に示す光源110を低コヒーレンス光源例えば低コヒーレンス性を有する光を照射するSLD210により構成し,光源110からの光を測定光と参照光にスプリットするスプリッタ120を例えば2×2の光ファイバカプラ220により構成し,受光手段150を例えばGeフォトダイオードなどを用いたPD250により構成し,参照光反射手段140は例えば参照ミラー240により構成し,駆動手段142は例えば参照ミラー240を駆動するステッピングモータ242により構成したものである。
【0096】
測定光の元になるSLD210などの光源110としては,少なくとも上部電極350の電極板Tuを透過可能な光を照射可能なものを使用する。これにより,測定光が上部電極350の電極板Tuを透過してウエハTwにも照射されるので,この透過光をウエハTwの温度測定のための測定光として利用できる。上部電極350の電極板Tuは例えばシリコンやシリコン酸化膜(例えば石英)などのシリコン材により形成されるので,このような場合は,シリコン材を透過可能な1.0〜2.5μmの波長を有する光を照射可能なものを光源110として使用することが好ましい。
【0097】
基板処理装置300は,図5に示すように,例えばウエハTwに対してエッチング処理や成膜処理などの所定の処理を施す処理室310を備える。処理室310の内部には,上部電極350と,この上部電極350に対向する下部電極340とが配設されている。下部電極340は,ウエハTwを載置する載置台を兼ねている。ウエハTwは例えば処理室310の側面に設けられたゲートバルブ(図示しない)から処理室310内に搬入される。これら下部電極340,上部電極350にはそれぞれ所定の高周波電力を印加する高周波電源320,330が接続されている。
【0098】
上部電極350は,その最下部に位置する測定対象物Tとしての電極板Tuを電極支持体351で支持するように構成されている。電極板Tuは例えばシリコン材(シリコン,シリコン酸化物など)で形成され,電極支持体351は例えばアルミ材で形成される。
【0099】
上部電極350の上部には,所定の処理ガスが導入される導入管(図示しない)が設けられている。この導入管から導入された処理ガスが下部電極340に載置されたウエハTwに向けて均一に吐出するように,電極板Tuには多数の吐出孔(図示しない)が穿設されている。
【0100】
上部電極350は,冷却手段が設けられている。この冷却手段は,例えば上部電極350の電極支持体351内に形成される冷媒流路が形成され、この冷媒流路に冷媒を循環させることにより,上部電極350の温度を制御するものである。冷媒流路は略環状に形成されており,例えば上部電極350の面内のうち外側を冷却するための外側冷媒流路352と,内側を冷却するための内側冷媒流路354の2系統に分けて形成される。これら外側冷媒流路352及び内側冷媒流路354はそれぞれ,図5に示す矢印で示すように冷媒が供給管から供給され,各冷媒流路352,354を流通して排出管から排出されて,外部の冷凍機(図示せず)へと戻り、循環するように構成されている。これら2系統の冷媒流路には同じ冷媒を循環させてもよく,また異なる冷媒を循環させてもよい。なお,上部電極350の冷却手段としては,図5に示す2系統の冷媒流路を備えるものに限られず,例えば1系統のみの冷媒流路を備えるものであってもよく,また1系統で2分岐する冷媒流路を備えるものであってもよい。
【0101】
電極支持体351は,外側冷媒流路352が設けられる外側部位と,内側冷媒流路354が設けられる内側部位との間に,低熱伝達層356が設けられている。これにより,電極支持体351の外側部位と内側部位との間は低熱伝達層356の作用により熱が伝わり難いため,外側冷媒流路352と内側冷媒流路354との冷媒制御によって,外側部位と内側部位とが異なる温度になるように制御することも可能である。こうして,上部電極350の面内温度を効率よく的確に制御することが可能となる。
【0102】
このような基板処理装置300では,ウエハTwは,例えば搬送アームなどによりゲートバルブを介して搬入される。処理室310に搬入されたウエハTwは,下部電極340上に載置され,上部電極350と下部電極340には高周波電力が印加されるとともに,上部電極350から処理室310内へ所定の処理ガスが導入される。これにより,上部電極350から導入された処理ガスはプラズマ化され,ウエハTwの表面に例えばエッチング処理などが施される。
【0103】
上記温度測定装置200における光ファイバカプラ220からの参照光は,参照光伝送手段例えばコリメータ付光ファイバFを介して参照ミラー240へ照射する参照光照射位置まで伝送されるようになっている。また上記光ファイバカプラ220からの測定光は測定光伝送手段例えばコリメータ付光ファイバFを介して,上部電極350の電極板Tuの上方から測定対象物である電極板Tu及びウエハTwへ向けて照射する測定光照射位置まで伝送されるようになっている。具体的には,コリメータ付光ファイバFは上部電極350の電極支持体351の例えば中央部に形成された貫通孔358を介して,測定光が電極板Tu及びウエハTwへ向けて照射されるように配設される。
【0104】
なお,測定光を照射する面内方向の位置,すなわち電極板Tu及びウエハTwの面内方向の位置を中央部とした場合について説明したが,これに限られることはなく,測定光が電極板Tuへ照射され,さらに電極板Tuを透過してウエハTwへ照射される位置であればよい。
【0105】
上記制御装置400は,温度測定装置200及び基板処理装置300の各部を制御するものである。制御装置400は,その本体を構成するCPU(中央処理装置)410,参照ミラー240を駆動するステッピングモータ242をモータドライバ420を介して制御するモータコントローラ430,CPU410が各部を制御するためのプログラムデータ等を記憶したROM(リード・オンリ・メモリ)やCPU410が行う各種データ処理のために使用されるメモリエリア等を設けたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)等を構成するメモリ440,バッファ450を介して入力されるPD250からの出力信号(測定光を照射して得られた干渉波の測定結果)やモータコントローラ430から出力される制御信号(例えば駆動パルス)をアナログデジタル変換して入力するA/D変換器460,基板処理装置300の各部を制御する各種コントローラ470を備える。制御装置400は,モータコントローラ430から出力するステッピングモータ242の制御信号(例えば駆動パルス)に基づいて,参照ミラー240の移動位置や移動距離を測定してもよく,モータ242にリニアエンコーダを取付けて,このリニアエンコーダからの出力信号に基づいて参照ミラー240の移動位置や移動距離を測定してもよい。また,モータ242としてはステッピングモータに限られず,ボイスコイルモータなどを用いてもよい。
【0106】
このような構成の温度測定システムによれば,測定光が上部電極350の電極板Tu及びウエハTwで反射した第1及び第2測定光と参照光との干渉波を参照ミラー240の一度の走査により検出することができるので,上部電極350の電極板TuとウエハTwのように異なる測定対象物の温度測定を一度に行うことができる。
【0107】
ここで,図5に示す温度測定システムにより得られる測定光と参照光との光の干渉の具体例を図6に示す。図6は,上部電極350の電極板Tu及びウエハTwで反射した第1及び第2測定光と,参照光反射手段140で反射した参照光との干渉波形を示したものである。図6において縦軸は干渉強度,縦軸は参照ミラーの移動距離をとっている。
【0108】
図6によれば,参照ミラー240を一方向へ走査していくと,先ず上部電極350の電極板Tuの表面と参照光との干渉波が現れ,次いで上部電極350の電極板Tuの裏面と参照光との干渉波が現れる。参照ミラー240をさらに走査していくと,ウエハTwの表面と参照光との干渉波が現れ,次いでウエハTwの裏面と参照光との干渉波が現れる。このように,参照ミラー240を一度走査するだけで上部電極350の電極板TuとウエハTwの表面及び裏面の干渉波を一度に検出することができる。
【0109】
そして,上部電極350の電極板Tuについての表面と裏面の干渉波形のピーク間幅Luは,上部電極350の電極板Tuについての表面から裏面までの測定光の光路長に相当する。また,ウエハTwについての表面と裏面の干渉波形のピーク間幅Lwは,ウエハTwについての表面から裏面までの測定光の光路長に相当する。なお,上部電極350の電極板Tuの裏面とウエハTwの表面の干渉波形のピーク間幅Lgは,上部電極350の電極板TuとウエハTwとの間のギャップ(離間距離)における測定光の光路長に相当する。
【0110】
制御装置400は,こうして得られる上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光の光路長の測定結果から,上述したような温度換算方法に従って上部電極350の電極板TuとウエハTwの温度を求める。具体的には例えば予めメモリ440に記憶された上述の温度換算用基準データなどに基づいて上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光の光路長を温度に換算する。
【0111】
このように,図5に示す温度測定システムによれば,上部電極350の電極板Tuを透過した測定光を,ウエハTwの測定光として利用することにより,上部電極350の電極板Tuのみならず,ウエハTwについても,一度の参照ミラー240の走査によって測定光と参照光との干渉波を得ることができる。従って,SLD210からスプリット(分波)された測定光を上部電極350の電極板Tu及びウエハTwへ向けて照射するという簡単な構成で,異なる測定対象物である上部電極350の電極板TuとウエハTwの温度を一度に検出することができる。
【0112】
これにより,例えば光ファイバなどの取り回しが容易で上部電極350の電極板への孔の形成を不要とすることができるなど温度測定装置200の取付けの手間を軽減することができる。また,1つの温度測定装置200で上部電極350の電極板Tu及びウエハTwの温度を一度に測定することができるので,コストの上昇を極力抑えつつ,温度計測時間も極力短くすることができる。
【0113】
(第3実施形態にかかる温度測定システム)
次に,第3実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムについて図面を参照しながら説明する。第3実施形態にかかる温度測定システムは,第2実施形態にかかる温度測定システムを改良し,参照ミラーの移動距離をより短くできるように構成したものである。
【0114】
すなわち,上記第2実施形態にかかる温度測定システムにおける測定対象物TとTに相当する上部電極350の電極板TuとウエハTwはこれらのギャップの分だけ離間しているので,図6に示すように,上部電極350の電極板Tuについての測定光と参照光の干渉波と,ウエハTwについての測定光と参照光の干渉波も上記ギャップ(離間距離)の光路長Lgの分だけ離間して測定される。従って,これら上部電極350の電極板TuとウエハTwの温度測定を参照ミラー240の一度の走査で行うには,上部電極350の電極板TuとウエハTwのギャップ(離間距離)の分だけ参照ミラー240の移動距離も長くする必要がある。ところが,このギャップ(離間距離)の部分Lgは,上部電極350の電極板TuとウエハTwの温度測定には必要ない部分であるため,なるべく短くした方が温度測定にかかる時間も短くすることができる。
【0115】
第3実施形態にかかる温度測定システムは,この点を踏まえて改良したものである。改良点としては,例えば測定光伝送手段を構成する測定光の光路の途中に,この測定光の光路に並列して接続した迂回光路を設けることにより,この迂回光路を通る測定光と通らない測定光の両方が測定対象物へ向けて照射されるため,測定光と参照光との光の干渉のパターンが増え,迂回光路の光路長を調整してそれぞれの光の干渉のずれ量を調整することにより,測定に必要な干渉波形だけが近傍に現れるようにすることができる。これにより,参照ミラーの移動距離をより短くすることができる。
【0116】
以下,このような第3実施形態にかかる温度測定システムの具体的な構成例を図7に示す。図7に示す温度測定システムにおける測定光伝送手段は,光ファイバカプラ220からの測定光の光路の途中に,迂回光路を構成する光ファイバeを並列接続するための迂回光路接続用スプリッタ例えば2×2の光ファイバカプラ230を備える。なお,光ファイバカプラ230は光ファイバカプラ220と同様の構成である。
【0117】
光ファイバカプラ230の一方の入力端子(入力ポート)には,光ファイバカプラ220からの一方の出力端子(出力ポート)が光ファイバbを介して接続されている。光ファイバカプラ230の一方の出力端子(出力ポート)には,光ファイバbの先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバFが接続されている。また,光ファイバカプラ230の他方の入力端子(入力ポート)と他方の出力端子(出力ポート)とは迂回光路を構成する光ファイバeを接続してループを形成する。
【0118】
図7に示すような構成の測定光伝送手段によれば,光ファイバカプラ220からの一方の出力端子(出力ポート)から出射した測定光は,光ファイバカプラ230によって2つの出力端子(出力ポート)へ2分波される。このうち一方の出力端子(出力ポート)からの測定光は光ファイバbを通ってコリメータ付光ファイバFの先端から上部電極350の電極板TuとウエハTwへ向けて照射される。
【0119】
また,光ファイバカプラ230の他方の出力端子(出力ポート)からの測定光は光ファイバeを介して光ファイバカプラ230の他方の入力端子(入力ポート)へ戻され,さらに光ファイバカプラ230によって2つの出力端子(出力ポート)へ2分波される。このうち一方の出力端子(出力ポート)からの測定光は光ファイバbを通ってコリメータ付光ファイバFの先端から上部電極350の電極板TuとウエハTwへ向けて照射される。
【0120】
このように,測定光伝送手段を構成する測定光の光路の途中に,並列して接続した迂回光路を設けることにより,SLD210からスプリットされた測定光は,コリメータ付光ファイバFから上部電極350の電極板TuとウエハTwへ向けて照射される往路のみならず,上部電極350の電極板TuとウエハTwから反射した測定光がコリメータ付光ファイバFを介して受光される復路についても,光ファイバカプラ230内の光路Uを介する経路を通ったり,光ファイバeによる迂回光路Uを介する経路を通ったりするので,測定光の光路が増える。
【0121】
ここで,このような測定光の光路について図面を参照しながら説明する。図8は,測定光の光路の種類(パターン)とそのときの測定光の経路との関係を示したものである。測定光の経路としては,光ファイバカプラ220から出力され上部電極350の電極板TuとウエハTwへ照射されるまでの往路と,上部電極350の電極板TuとウエハTwから反射して測定光が光ファイバカプラ220へ入力されるまでの復路がある。
【0122】
図7に示すような迂回光路を形成した場合における測定光の光路の種類(パターン)は,上記往路と復路との組合せで,図8に示すような光路A〜光路Dまでの4通りがある。光路Aは,測定光が往路と復路ともに光路Uを介する経路を通った場合であり,光路長が最も短くなる光路である。光路Bは,測定光が往路は光路Uを介する経路を通り,復路は迂回光路Uを介する経路を通った場合である。光路Cは,測定光が往路は迂回光路Uを介する経路を通り,復路は光路Uを介する経路を通った場合であり,光路長としては光路Bと同じ長さになる。光路Dは,測定光が往路と復路ともに迂回光路Uを介する経路を通った場合であり,光路長が最も長くなる光路である。
【0123】
ここで,各光路A〜Dを通った測定光と参照光との光の干渉を図9に示す。図9は,参照ミラーを一方向へ一度だけ走査した場合に得られる干渉波形を示したものである。横軸には参照ミラーの移動距離をとり,縦軸には干渉強度をとっている。なお,図9では光路A〜Dによる光の干渉が区別し易いようにそれぞれを上下にずらしているが,実際にはこれら光路A〜Dによる光の干渉の波形がすべて合成された波形が測定される。
【0124】
図9に示すように,上記光路A〜Dによる光の干渉はともに図6に示す場合と同様に上部電極350の電極板Tuの表面と裏面の干渉波とウエハTwの表面と裏面の干渉波が同じピーク間幅Lu,Lg,Lwで現れる。従って,光路A〜Dのうちのどの光路を通った測定光による光の干渉でも同様の測定結果が得られる。このため,例えば光路Aによる光の干渉でウエハTwについての干渉波のピーク間幅Lwを求め,光路Bによる光の干渉で上部電極350の電極板Tuについての干渉波のピーク間幅Luを求めることも可能である。
【0125】
さらに,光路A〜Dは光路長が異なるので,光路A〜Dによる光の干渉はそれぞれ,最初の上部電極350の電極板Tuの表面についての干渉波が現れるまでに,光路A〜Dの光路長に応じたずれが生じる。例えば光路Aによる光の干渉についての最初の干渉波(上部電極350の電極板Tuの表面についての干渉波)のピークが現れてから参照ミラー240が距離Mだけ移動したところで,光路B及び光路Cによる光の干渉についての最初の干渉波のピークが現れる。また光路Aによる光の干渉についての最初の干渉波のピークが現れてから参照ミラー240が距離Mだけ移動したところで光路Dについての最初の干渉波のピークが現れる。これは光路Aの光路長は最も短いので,光路Aによる光の干渉についての最初の干渉波が現れるのが最も早いのに対して,光路B,C,Dの光路長は光路Aよりも長いので,これらの光の干渉はその光路長の長さの違いの分だけずれて最初の干渉波が現れるからである。なお,光路Bと光路Cの光路長は同じなので,これらの光の干渉についての最初の干渉波は同時に現れる。
【0126】
しかも,このような光路A〜Dによる光の干渉のずれ量は,測定光の迂回光路の光路長(例えば光ファイバeの長さなど)を調整して光路A〜Dの光路長を調整することにより,調整可能である。従って,測定光の迂回光路の光路長(例えば光ファイバeの長さなど)を調整することにより,各測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるようにすることができる。このため,少なくともこれら測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形が測定できる範囲だけ参照ミラー240を移動させれば足りる。これにより,参照ミラーの移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間も短縮することができる。
【0127】
この場合,各測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるように,測定光の迂回光路の光路長を調整すれば,さらに参照ミラー240の移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間もさらに短縮することができる。
【0128】
このように,図7に示す温度測定システムによれば,参照ミラー240をステッピングモータ242により一方向へ走査すると,光路A〜Dの光路長に応じてずれた光の干渉波が得られる。測定光の迂回光路の光路長を調整することにより,例えば図9に示すようにウエハTwについての干渉波形のピーク幅Lwの全部が,上部電極350の電極板Tuについての干渉波形のピーク幅に重なるようにすることもできる。こうすることにより,少なくとも上部電極350の電極板Tuについての干渉波形のピーク間幅Luが測定できる範囲だけ(例えば図9に示す範囲Nだけ)参照ミラー240を移動させれば,上部電極350の電極板Tuについての干渉波形のピーク間幅Luのみならず,ウエハTwについての干渉波形のピーク幅Lwも測定することができる。これにより,参照ミラー240の移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間も短縮することができる。
【0129】
上記第3実施形態では,上部電極350の電極板TuとウエハTwのように2つの測定対象物T,Tの温度を測定する場合を例に挙げたが,必ずしもこれに限定されるものではなく,3つ以上の測定対象物の温度測定についても適用できる。特に各測定対象物T〜Tのギャップ(離間距離)が大きいほど,参照ミラー240の移動距離も長くなるので,このような場合に各測定対象物T〜Tの温度測定のために必要な干渉波のピーク間幅が重なるように,測定光の迂回光路の光路長を調整すれば,参照ミラー240の移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間も大幅に短縮することができる。この場合,迂回光路は測定対象物T〜Tの数nに応じて増やしてもよい。
【0130】
また,各測定対象物T〜Tの温度測定のために必要な干渉波のピーク間幅は全部重なる必要はなく,一部が重なるようにしてもよい。また,各測定対象物T〜Tの温度測定のために必要な干渉波のピーク間幅は必ずしも重なる必要はなく,各干渉波のピーク間幅が重ならないで近傍に並列するようにしてもよい。
【0131】
(第3実施形態にかかる温度測定システムの変形例)
次に,第3実施形態にかかる温度測定システムの変形例について図面を参照しながら説明する。図10は,第3実施形態にかかる温度測定システムの変形例についての概略構成を示すブロック図である。図10に示す温度測定システムは,図7に示すものとほぼ同様であるが,図7に示すものは1つの光ファイバカプラ230により,迂回光路を構成する光ファイバeを測定光の光路に並列に接続してループを形成するのに対して,図10に示すものは迂回光路接続用スプリッタとして2つのスプリッタ(例えば1×2の光ファイバカプラ232と2×1の光ファイバカプラ234)により,測定光の光路を構成する光ファイバeと迂回光路を構成する光ファイバeとを並列に接続してループを形成する。これにより,図10に示す温度測定システムについても,図7に示すものと同様に測定光伝送手段を構成する測定光の光路の途中に並列して接続した迂回光路を設けることができる。
【0132】
より具体的に説明すると,図10に示す1×2の光ファイバカプラ232の入力端子(入力ポート)には,光ファイバカプラ220からの一方の出力端子(出力ポート)が光ファイバbを介して接続されている。1×2の光ファイバカプラ232の2つの出力端子(出力ポート)にはそれぞれ,経路Uを形成する短い光ファイバeの一端とこの光ファイバeよりも長い迂回光路の経路Uを形成する光ファイバeの一端とが接続されている。これら光ファイバeの他端と光ファイバeの他端とはそれぞれ,2×1の光ファイバカプラ234の2つの入力端子(入力ポート)に接続されている。2×1の光ファイバカプラ234の出力端子(出力ポート)には光ファイバbの先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバFが接続されている。
【0133】
図10に示すような構成の測定光伝送手段によれば,光ファイバカプラ220からの一方の出力端子(出力ポート)から出射した測定光は,光ファイバカプラ232によって2つの出力端子(出力ポート)へ2分波される。このうち一方の出力端子(出力ポート)からの測定光は短い光ファイバeを通って光ファイバカプラ234の入力端子(入力ポート)に入射する。一方,光ファイバカプラ232の他方の出力端子(出力ポート)からの測定光は迂回光路を構成する光ファイバeを通って,光ファイバカプラ234の入力端子(入力ポート)に入射する。光ファイバカプラ234では,光ファイバe及び光ファイバeからの測定光が合波されて,コリメータ付光ファイバFの先端から上部電極350の電極板TuとウエハTwへ向けて照射される。
【0134】
なお,図10に示すような構成の測定光伝送手段による測定光の光路の種類(光路A〜D)とそのときの測定光の経路との関係は図8に示すものと同様であり,測定光が各光路A〜Dを通る場合の測定光と参照光との光の干渉は図9に示すものと同様である。すなわち,図10に示す構成の温度測定システムについても,各光路A〜Dを通る場合の測定光と参照光との光の干渉のずれ量は,測定光の迂回光路の光路長(例えば光ファイバeや光ファイバeの長さなど)を調整して光路A〜Dの光路長を調整することにより,調整可能である。
【0135】
従って,測定光の迂回光路の光路長(例えば光ファイバeや光ファイバeの長さなど)を調整することにより,各測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるようにしたり,これら干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるようにしたりすることができる。このため,少なくともこれら測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形が測定できる範囲だけ参照ミラー240を移動させれば足りる。これにより,参照ミラーの移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間も短縮することができる。
【0136】
また,先に説明した図7に示す迂回光路を構成する光ファイバeは,1つの光ファイバカプラ230の他方の入力端子(入力ポート)と他方の出力端子(出力ポート)を接続してループを形成するので,光ファイバeを曲げて配設する必要があるため,光ファイバの長さや太さによっては適さない場合もある。例えば光ファイバが短い場合や太い場合は曲げにくく,配設し難い。これに対して,図10に示す迂回光路を構成する光ファイバeは,2つの光ファイバカプラ232及び234との途中に接続するので,極端に曲げる必要がないため,光ファイバの長さや太さに拘らず配設が容易となる。
【0137】
しかも,図7に示すものでは,迂回光路を構成する光ファイバeの長さを調整することにより,測定光の光路長を調整するのに対して,図10に示すものでは,迂回光路を構成する光ファイバeの長さのみならず,測定光の光路自体の長さも光ファイバeの長さにより調整することができるので,測定光の光路A〜Dの光路長の微調整も容易に行うことができる。
【0138】
(第4実施形態にかかる測定システム)
次に,第4実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムについて図面を参照しながら説明する。第4実施形態にかかる温度測定システムは,第2実施形態にかかる温度測定システムを改良し,さらに各測定対象物の平行度の精度によらずに,各測定対象物に対する測定光の光軸を容易に調整できるように構成したものである。
【0139】
すなわち,第2実施形態にかかる温度測定システムでは1つのコリメータ付光ファイバFによって,SLD110からスプリットされた測定光を照射し,上部電極350の電極板TuとウエハTwで反射した測定光を受光するため,上部電極350の電極板TuとウエハTwの平行度の精度によっては,測定光の光軸の調整に手間がかかる。
【0140】
第4実施形態にかかる温度測定システムは,この点を踏まえて改良したものである。改良点としては,光源からスプリットされた測定光をさらに測定対象物の数だけスプリットし,これらの測定光を測定対象物へ向けて照射するようにしたことである。これにより,各測定光の光軸を各測定対象物ごとに調整することができるので,各測定対象物の平行度の精度に拘らず,測定光の光軸の調整が容易となる。
【0141】
このような第4実施形態にかかる温度測定システムの具体的な構成例を図11に示す。図11に示す温度測定システムにおいては,例えばSLD210から光源側スプリッタ例えば2×2の光ファイバカプラ220によりスプリットされた測定光を,測定光用スプリッタ例えば1×2の光ファイバカプラ236によって第1測定光と第2測定光に2分波し,第1測定光を上部電極350の電極板Tuの温度測定に利用するとともに,第2測定光をウエハTwの温度測定に利用する。
【0142】
以下,より具体的に説明する。上記光ファイバカプラ236の一方の入力端子(入力ポート)には,光ファイバカプラ220からの一方の出力端子(出力ポート)が光ファイバbを介して接続されている。光ファイバカプラ236の2つの出力端子(出力ポート)にはそれぞれ,光ファイバbF1の先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバFと,光ファイバbF2の先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバFとが接続されている。
【0143】
コリメータ付光ファイバFは,上部電極350の電極支持体351の中央部に形成された貫通孔358を介して電極板Tuへ向けて第1測定光が照射されるように配設される。また,コリメータ付光ファイバFは,上部電極350の電極支持体351の端部に形成された貫通孔359を介して電極板Tuへ向けて照射されて,その電極板Tuを透過した第2測定光がウエハTwに照射されるように配設される。
【0144】
このように,SLD210からスプリットされた測定光を上部電極350の電極板Tuの温度を測定する第1測定光とウエハTwの温度を測定する第2測定光に分波して,それぞれコリメータ付光ファイバF,Fの先端から照射させることにより,コリメータ付光ファイバFの光軸とコリメータ付光ファイバFの光軸とを別々に調整することができるので,上部電極350の電極板TuとウエハTwとの平行度の精度によらずに,それぞれの測定光の光軸を容易に調整できる。これにより,コリメータ付光ファイバの設置が容易となるので,温度測定装置200の取付けの手間を軽減することができる。
【0145】
また,SLD210からスプリットされた測定光をコリメータ付光ファイバFを介する光路Eを通る第1測定光と,コリメータ付光ファイバFを介する光路Fを通る第2測定光に分波するので,2通りの測定光と参照光との光の干渉を測定できる。
【0146】
ここで,各光路E,Fを通った測定光と参照光との光の干渉を図12に示す。図12は,参照ミラーを一方向へ一度だけ走査した場合に得られる干渉波形を示したものである。横軸には参照ミラーの移動距離をとり,縦軸には干渉強度をとっている。なお,図12では光路E,Fによる光の干渉が区別し易いようにそれぞれを上下にずらしているが,実際にはこれら光路E,Fによる光の干渉の波形がすべて合成された波形が測定される。
【0147】
各光路E,Fによる光の干渉のずれ量は,例えばコリメータ付光ファイバF,Fの光ファイバbF1,bF2の長さを調整して第1,第2測定光の光路E,Fの光路長を調整することにより,調整可能である。このように,第1,第2測定光の光路E,Fの光路長を調整することにより,各測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるようにすることができる。このため,少なくともこれら測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形が測定できる範囲だけ参照ミラー240を移動させれば足りる。これにより,参照ミラーの移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間も短縮することができる。
【0148】
例えば第1,第2測定光の光路E,Fの光路長を調整することにより,図12に示すようにウエハTwについての干渉波形のピーク幅Lwの全部が,上部電極350の電極板Tuについての干渉波形のピーク幅に重なるようにすることもできる。こうすることにより,少なくとも上部電極350の電極板Tuについての干渉波形のピーク間幅Luが測定できる範囲だけ(例えば図12に示す範囲Nだけ)参照ミラー240を移動させれば,上部電極350の電極板Tuについての干渉波形のピーク間幅Luのみならず,ウエハTwについての干渉波形のピーク幅Lwも測定することができる。これにより,参照ミラー240の移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間もさらに短縮することができる。
【0149】
なお,第1,第2測定光の光路E,Fの光路長を同じにすれば,光ファイバカプラ236から上部電極350の電極板Tuまでの第1,第2測定光の光路長が等しくなるので,これらの測定光と参照光との光の干渉は図6に示すものと同様になる。この場合には,図6に示す場合と同様に測定光と参照光との干渉波形を測定し,温度を求めることができる。
【0150】
また,第1,第2測定光の光路長を調整するには,上述したようにコリメータ付光ファイバF,Fの光ファイバbF1,bF2の長さを変える代りに,コリメータ付光ファイバF,Fのコリメータの先端位置をずらすことによって調整してもよい。
【0151】
上記第4実施形態では,上部電極350の電極板TuとウエハTwのように2つの測定対象物T,Tの温度を測定する場合を例に挙げたが,必ずしもこれに限定されるものではなく,3つ以上の測定対象物の温度測定についても適用できる。この場合には例えば測定対象物T〜Tの数nだけ,SLD210からスプリットされた測定光をさらにスプリッタ(例えば1×nの光ファイバカプラ)により第1〜第n測定光にスプリットして,これら第1〜第n測定光を最端に配置される測定対象物(T又はT)から各測定対象物T〜Tへ向けて各測定対象物T〜Tを透過するように照射してもよい。これにより,測定対象物T〜Tの平行度の精度に拘らず,各第1〜第n測定光の光軸の調整が容易となる。
【0152】
また,各測定対象物T〜Tのギャップ(離間距離)が大きいほど,参照ミラー240の移動距離も長くなるので,このような場合に第1〜第n測定光の光路長を調整して,各測定対象物T〜Tの温度測定のために必要な干渉波のピーク間幅が重なるようにすれば,参照ミラー240の移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間も大幅に短縮することができる。
【0153】
この場合,各測定対象物T〜Tの温度測定のために必要な干渉波のピーク間幅は全部重なる必要はなく,一部が重なるようにしてもよい。また,各測定対象物T〜Tの温度測定のために必要な干渉波のピーク間幅は必ずしも重なる必要はなく,各干渉波のピーク間幅が重ならないで近傍に並列するようにしてもよい。
【0154】
(第5実施形態にかかる温度測定システム)
次に,第5実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムについて図面を参照しながら説明する。第5実施形態にかかる温度測定システムは,第2実施形態にかかる温度測定システムを改良し,参照ミラーの移動距離をより短くできるように構成したものである。上述した第3及び第4実施形態では測定光の光路長を調整するのに対して,第5実施形態では参照光の光路長を調整するものである。
【0155】
このような第5実施形態にかかる温度測定システムの構成例を図13に示す。図13に示す温度測定システムでは,参照ミラー240を反射面の位置が異なる第1参照ミラー244及び第2参照ミラー246により構成するものである。参照光伝送手段例えばコリメータ付光ファイバFからの参照光が第1及び第2参照ミラー244,246の両方へ照射される参照光照射位置にコリメータ付光ファイバFを配置して,各参照ミラー244,246から反射した参照光を同じコリメータ付光ファイバFで受光する。
【0156】
このような構成の温度測定システムによれば,第1及び第2参照ミラー244,246をステッピングモータ242により一緒に移動することによって,SLD210からスプリットされてコリメータ付光ファイバFから照射される参照光が参照ミラー240により反射される際に,第1参照ミラー244から反射される光路Gを通る第1参照光と,第1参照ミラー246から反射される光路Hを通る第2参照光とに分けられるので,2通りの測定光と参照光との光の干渉を測定できる。
【0157】
ここで,各光路G,Hを通った測定光と参照光との光の干渉を図14に示す。図14は,参照ミラー240を第1及び第2参照ミラー244,246ごと一方向へ一度だけ走査した場合に得られる干渉波形を示したものである。横軸には参照ミラーの移動距離をとり,縦軸には干渉強度をとっている。なお,図14では光路G,Hによる光の干渉が区別し易いようにそれぞれを上下にずらしているが,実際にはこれら光路G,Hによる光の干渉の波形がすべて合成された波形が測定される。
【0158】
図14に示すように,光路G,Hによる光の干渉はともに図6に示す場合と同様に上部電極350の電極板Tuの表面と裏面の干渉波とウエハTwの表面と裏面の干渉波が同じピーク間幅Lu,Lg,Lwで現れる。従って,光路G,Hのうちのどの光の干渉でも同様の測定結果が得られる。
【0159】
しかも,各光路G,Hによる光の干渉のずれ量Mは,例えば各参照ミラー244,246の反射面のずれ量を調整して第1,第2参照波の光路G,Hの光路長を調整することにより,調整可能である。このように,第1,第2参照光の光路G,Hの光路長を調整することにより,各測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるようにすることができる。このため,少なくともこれら測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形が測定できる範囲だけ参照ミラー240を移動させれば足りる。これにより,参照ミラーの移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間も短縮することができる。
【0160】
例えば第1,第2参照光の光路G,Hの光路長を調整することにより,図14に示すようにウエハTwについての干渉波形のピーク幅Lwの全部が,上部電極350の電極板Tuについての干渉波形のピーク幅に重なるようにすることもできる。こうすることにより,少なくとも上部電極350の電極板Tuについての干渉波形のピーク間幅Luが測定できる範囲だけ(例えば図14に示す範囲Nだけ)参照ミラー240を移動させれば,上部電極350の電極板Tuについての干渉波形のピーク間幅Luのみならず,ウエハTwについての干渉波形のピーク幅Lwも測定することができる。これにより,参照ミラー240の移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間もさらに短縮することができる。
【0161】
上記第5実施形態では,上部電極350の電極板TuとウエハTwのように2つの測定対象物T,Tの温度を測定する場合を例に挙げたが,必ずしもこれに限定されるものではなく,3つ以上の測定対象物の温度測定についても適用できる。この場合には例えば測定対象物T〜Tの数nだけ,参照ミラー240を反射面の位置が異なる第1〜第n参照ミラーで構成して,参照光をこれら第1〜第n参照ミラーのすべてに照射して,各第1〜第n参照ミラーで反射した第1〜第n参照光を得るようにしてもよい。
【0162】
また,各測定対象物T〜Tのギャップ(離間距離)が大きいほど,参照ミラー240の移動距離も長くなるので,このような場合に各測定対象物T〜Tの温度測定のために必要な干渉波のピーク間幅が重なるように,第1〜第n参照光の光路長を調整すれば,参照ミラー240の移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間も大幅に短縮することができる。
【0163】
この場合,各測定対象物T〜Tの温度測定のために必要な干渉波のピーク間幅は全部重なる必要はなく,一部が重なるようにしてもよい。また,各測定対象物T〜Tの温度測定のために必要な干渉波のピーク間幅は必ずしも重なる必要はなく,各干渉波のピーク間幅が重ならないで近傍に並列するようにしてもよい。
【0164】
(第5実施形態にかかる温度測定システムの変形例)
次に,第5実施形態にかかる温度測定システムの変形例について図面を参照しながら説明する。図15は,第5実施形態にかかる温度測定システムの変形例についての概略構成を示すブロック図である。図15に示す温度測定システムは,図13に示すものとほぼ同様であるが,図13に示すものは参照ミラーの反射面をずらすことにより,第1,第2参照光の光路長を調整するのに対して,図15に示すものは例えばSLD210から光源側スプリッタ例えば2×2の光ファイバカプラ220によりスプリットされた参照光を,参照光用スプリッタ例えば1×2の光ファイバカプラ222によって第1参照光と第2参照光に2分波し,第1,第2参照光を参照ミラー240に照射させてその反射光を受光するように構成して,第1,第2参照光の光路長を調整する。
【0165】
より具体的に説明すると,図15に示す1×2の光ファイバカプラ222の入力端子(入力ポート)には,光ファイバカプラ220からの他方の出力端子(出力ポート)が光ファイバcを介して接続されている。1×2の光ファイバカプラ222の2つの出力端子(出力ポート)にはそれぞれ,光ファイバcZ1の先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバFZ1と,光ファイバcZ2の先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバFZ2とが接続されている。
【0166】
図15に示すような構成の参照光伝送手段によれば,光ファイバカプラ220からの他方の出力端子(出力ポート)から出射した測定光は,光ファイバカプラ222によって2つの出力端子(出力ポート)へ2分波される。このうち一方の出力端子(出力ポート)からの第1参照光はコリメータ付光ファイバFZ1を介する光路Gにより参照ミラー240に向けて照射され,他方の出力端子(出力ポート)からの第2参照光はコリメータ付光ファイバFZ2を介する光路Hにより参照ミラー240に向けて照射される。
【0167】
なお,図15に示すような構成の参照光伝送手段による参照光と測定光の光の干渉は図14に示すものと同様である。すなわち,図15に示す構成の温度測定システムについても,各光路G,Hによる光の干渉のずれ量Mは,例えばコリメータ付光ファイバFZ1,FZ2の光ファイバcZ1,cZ2の長さを調整して第1,第2参照波の光路G,Hの光路長を調整することにより,調整可能である。
【0168】
従って,第1,第2参照光の光路長(例えば光ファイバcZ1,cZ2の長さなど)を調整することにより,各測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるようにしたり,これら干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるようにしたりすることができる。このため,少なくともこれら測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形が測定できる範囲だけ参照ミラー240を移動させれば足りる。これにより,参照ミラーの移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間も短縮することができる。
(第5実施形態にかかる温度測定システムの他の変形例)
【0169】
次に,第5実施形態にかかる温度測定システムの他の変形例について図面を参照しながら説明する。上述した第3実施形態では測定光伝送手段を構成する測定光の光路の途中に,この測定光の光路に並列して接続した迂回光路を設けるようにしたのに対して,第5実施形態の他の変形例では参照光伝送手段を構成する参照光の光路の途中に並列して接続した迂回光路を設けるようにしたものである。
【0170】
このように構成しても,上記迂回光路を通る参照光と通らない参照光の両方が参照ミラー240へ向けて照射されるため,第3実施形態の場合と同様に測定光と参照光との光の干渉のパターンが増え,迂回光路の光路長を調整してそれぞれの光の干渉のずれ量を調整することにより,測定に必要な干渉波形だけが近傍に現れるようにすることができる。これにより,参照ミラーの移動距離をより短くすることができる。
【0171】
以下,このような第5実施形態の他の変形例にかかる温度測定システムの具体的な構成を図16又は図17に示す。図16に示す温度測定システムは,図7に示す場合と同様に迂回光路を接続する例である。すなわち,図16に示す温度測定システムにおける参照光伝送手段は,光ファイバカプラ220からの参照光の光路の途中に,迂回光路を構成する光ファイバeを並列接続するための迂回光路接続用スプリッタ例えば2×2の光ファイバカプラ230を備える。
【0172】
具体的には,光ファイバカプラ230の一方の入力端子(入力ポート)には,光ファイバカプラ220からの他方の出力端子(出力ポート)が光ファイバcを介して接続されている。光ファイバカプラ230の一方の出力端子(出力ポート)には,光ファイバcの先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバFが接続されている。また,光ファイバカプラ230の他方の入力端子(入力ポート)と他方の出力端子(出力ポート)とは迂回光路を構成する光ファイバeを接続してループを形成する。
【0173】
図16に示すような構成の参照光伝送手段によれば,光ファイバカプラ220からの他方の出力端子(出力ポート)から出射した参照光は,光ファイバカプラ230によって2つの出力端子(出力ポート)へ2分波される。このうち一方の出力端子(出力ポート)からの参照光は光ファイバcを通ってコリメータ付光ファイバFの先端から参照ミラー240へ向けて照射される。また,光ファイバカプラ230の他方の出力端子(出力ポート)からの参照光は光ファイバeを介して光ファイバカプラ230の他方の入力端子(入力ポート)へ戻され,さらに光ファイバカプラ230によって2つの出力端子(出力ポート)へ2分波される。このうち一方の出力端子(出力ポート)からの参照光は光ファイバcを通ってコリメータ付光ファイバFの先端から参照ミラー240へ向けて照射される。
【0174】
一方,図17に示す温度測定システムは,図10に示す場合と同様に迂回光路を接続する例である。すなわち,迂回光路接続用スプリッタとして2つのスプリッタ(例えば1×2の光ファイバカプラ232と2×1の光ファイバカプラ234)により,参照光の光路を構成する光ファイバeと迂回光路を構成する光ファイバeとを並列に接続してループを形成する。これにより,図17に示す温度測定システムについても,図16に示すものと同様に参照光伝送手段を構成する参照光の光路の途中に並列して接続した迂回光路を設けることができる。
【0175】
より具体的に説明すると,図17に示す1×2の光ファイバカプラ232の入力端子(入力ポート)には,光ファイバカプラ220からの他方の出力端子(出力ポート)が光ファイバcを介して接続されている。1×2の光ファイバカプラ232の2つの出力端子(出力ポート)にはそれぞれ,経路Uを形成する短い光ファイバeの一端とこの光ファイバeよりも長い迂回光路の経路Uを形成する光ファイバeの一端とが接続されている。これら光ファイバeの他端と光ファイバeの他端とはそれぞれ,2×1の光ファイバカプラ234の2つの入力端子(入力ポート)に接続されている。2×1の光ファイバカプラ234の出力端子(出力ポート)には光ファイバcの先端にコリメータを取付けたコリメータ付光ファイバFが接続されている。
【0176】
図17に示すような構成の参照光伝送手段によれば,光ファイバカプラ220からの他方の出力端子(出力ポート)から出射した参照光は,光ファイバカプラ232によって2つの出力端子(出力ポート)へ2分波される。このうち一方の出力端子(出力ポート)からの参照光は短い光ファイバeを通って光ファイバカプラ234の入力端子(入力ポート)に入射する。一方,光ファイバカプラ232の他方の出力端子(出力ポート)からの参照光は迂回光路を構成する光ファイバeを通って,光ファイバカプラ234の入力端子(入力ポート)に入射する。光ファイバカプラ234では,光ファイバe及び光ファイバeからの参照光が合波されて,コリメータ付光ファイバFの先端から参照ミラー240へ向けて照射される。
【0177】
上述したような図16又は図17に示す構成の参照光伝送手段による参照光の光路の種類を光路A〜Dとすれば,これら光路A〜Dとそのときの参照光の経路との関係は図8に示すものと同様であり,参照光が各光路A〜Dを通る場合の測定光と参照光との光の干渉は図9に示すものと同様である。すなわち,図16又は図17に示す構成の温度測定システムについても,各光路A〜Dを通る場合の測定光と参照光との光の干渉のずれ量は,参照光の迂回光路の光路長(例えば光ファイバe又は光ファイバe,eの長さなど)を調整して光路A〜Dの光路長を調整することにより,調整可能である。
【0178】
従って,参照光の迂回光路の光路長(例えば光ファイバe又は光ファイバe,eの長さなど)を調整することにより,各測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるようにしたり,これら干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるようにしたりすることができる。このため,少なくともこれら測定対象物例えば上部電極350の電極板TuとウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形が測定できる範囲だけ参照ミラー240を移動させれば足りる。これにより,参照ミラーの移動距離を短くすることができるので,温度測定にかかる時間も短縮することができる。
【0179】
(光ファイバなどを使用しない温度測定システム)
なお,上述した第3〜第5実施形態に示す温度測定システムは,測定光伝送手段及び参照光伝送手段として光ファイバを利用し,温度測定で使用する測定光や参照光などの光を光ファイバにより伝送するものについて説明したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,温度測定で使用する測定光や参照光などの光を光ファイバやコリメートファイバを用いずに,図18に示すような原理に基づいて空中を伝送させるようにしてもよい。
【0180】
図18は,光ファイバやコリメートファイバの用いずに空中を利用して光を伝送させる温度測定装置500の原理を示す。このような温度測定装置500においては,光源(例えばSLD)110からの光が空中を伝送してスプリッタ(例えばハーフミラー)510へ照射され,スプリッタ510により参照光と測定光との2つに分けられる。測定光は空中を伝送して対向配置された測定対象物T,Tへ向けて照射されて各測定対象物T,Tの表面や裏面で反射される。一方,参照光は空中を伝送して参照光反射手段(例えば参照ミラー)140へ向けて照射され,参照光反射手段のミラー表面で反射される。そして,それぞれ反射された測定光と参照光が空中を伝送して再びスプリッタ510に入射して受光手段150に受光される。その際,参照光の光路長によっては重なり合って干渉を起こして,その干渉波が受光手段150で検出される。このような原理を用いることにより,光ファイバやコリメートファイバを用いずに光を伝送させることができる。これにより,光ファイバやコリメートファイバを通らない波長(例えば2.5μm以上の波長)の光であっても,測定光や参照光の光源110として利用することができる。
【0181】
(基板処理装置の制御システム)
また,上述した第3〜第5実施形態に示す温度測定システムは,各種コントローラ470として例えば上部電極350の電極板TuやウエハTwの温度を制御するコントローラを設けることにより,上部電極350の電極板TuやウエハTwについて,温度測定装置200により温度測定を行いながら,その測定結果に応じて各種コントローラ470により温度を制御する基板処理装置の制御システムとして構成することもできる。
【0182】
この場合,各種コントローラ470は,上部電極350の電極板Tuの温度を制御するものとして,例えば内側冷媒コントローラ,外側冷媒コントローラを備えるようにしてもよい。内側冷媒コントローラは,内側冷媒流路354へ循環させる冷媒の温度や流量を制御することにより,上部電極350の内側部位の温度を制御するものである。外側冷媒コントローラは,外側冷媒流路352へ循環させる冷媒の温度や流量を制御することにより,上部電極350の外側部位の温度を制御するものである。
【0183】
さらに,各種コントローラ470は,ウエハTwの温度を制御するものとして,例えばESC(electrostatic
chuck:静電チャック)系コントローラ,FR(フォーカスリング)系コントローラを備えるようにしてもよい。ESC系コントローラは,下部電極340にウエハを静電吸着させるための図示しない静電チャック(ESC)へ印加する電圧,静電チャックを介してウエハTwへ供給されるバックサイドガスのガス流量やガス圧力,下部電極340内に形成される冷媒流路に循環させる冷媒の温度などを制御するものである。また,FR系コントローラは,ウエハの周囲を囲むように設けられた図示しない周辺リング例えばフォーカスリングへ印加する電圧,フォーカスリングを介してウエハTwへ供給されるバックサイドガスのガス流量やガス圧力などを制御するものである。
【0184】
このように,第3〜第5実施形態に示す温度測定システムを基板処理装置の制御システムとして構成することにより,上部電極350の温度を制御したり,ウエハTwの温度を制御したりできるので,ウエハTwのプロセス特性を的確に制御することができ,また基板処理装置の安定性を向上させることができる。
【0185】
(厚み測定装置及び厚み測定システム)
また,上記第1〜第5実施形態では,測定対象物の温度の測定を行う場合について説明したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,測定対象物の厚さの測定を行う場合について適用してもよい。すなわち,上記第1〜第5実施形態では,例えば測定対象物の表面と裏面で反射した測定光と参照光との干渉波形のピーク間幅がその測定対象物の光路長に相当することを利用して,干渉波形のピーク間幅を参照光反射手段(例えば参照ミラー)の移動距離として測定して測定対象物の光路長を求め,この光路長を測定対象物の温度に換算する場合について説明した。
【0186】
ところが,この光路長Lは厚みd×屈折率nで表され,屈折率nは温度に依存するため,光路長Lを測定したときの温度での屈折率nがわかれば,測定した光路長Lを屈折率nで割り算することにより,測定対象物の厚みdを求めることができる。従って,例えば測定対象物の温度と屈折率nの関係を予め厚さ用基準換算データとして制御装置400のメモリ440などに記憶しておき,測定対象物の光路長Lを測定したときの温度を別の温度測定手段(例えば抵抗温度計や蛍光式温度計等)により測定して厚さ用基準換算データによりその温度のときの屈折率nを求め,この屈折率nで上記光路長Lを割り算することにより,測定対象物の厚みdを求めることができる。
【0187】
このように,測定光と参照光との干渉波形を利用して測定対象物の厚みを求めることができるので,この原理を利用することにより,上記第1〜第5実施形態における温度測定装置,基板処理装置の温度測定システムはそれぞれ,厚さ測定装置,基板処理装置の厚さ測定システムとして構成することもできる。このような厚さ測定装置,基板処理装置の厚さ測定システムにより,例えば基板処理装置300の上部電極350の電極板Tuなどの消耗部品の厚さを定期的に測定することにより,電極板Tuなどの消耗部品の消耗量を測定することができる。これにより,電極板Tuの交換時期などを予測することもできる。
【0188】
なお,厚さの測定は,基板処理装置300の電源投入時やメンテナンス後などのように同じ温度状態のときに行うことにより,その温度での屈折率nを,制御装置400のメモリ440などに記憶しておけば,厚みを測定する度にそのときの測定対象物の温度を測定しなくても済むので,別の温度測定手段を不要とすることができ,厚み測定にかかる手間や時間も極力軽減することができる。なお,制御装置400を厚さ算出手段又は制御手段として機能させることにより,制御装置400により測定光と参照光との光の干渉測定の結果に基づいて各測定対象物の厚さを求めることができる。
【0189】
また,本発明により温度又は厚さを測定する対象となる複数の測定対象物は,少なくとも対向して配置されていれば,離間していてもよく,また接触していてもよい。また,複数の測定対象物の全体が対向してもよく,一部が対向していてもよい。一部が対向する場合には,少なくともその対向する部位へ向けて測定光を照射することにより,各測定対象物の温度又は厚みを測定することができる。
【0190】
(光源の光強度)
また,上記実施形態により説明したように本発明では,対向して配置された複数の測定対象物へ測定光を照射したときに,測定対象物を透過する光を次の測定対象物の測定光として利用する。従って,このような測定光の光強度は,各測定対象物T〜Tの内部や各測定対象物T〜T間の空間を透過することにより減少するため,そのような測定光と参照光の干渉強度も低下し,ノイズに対する光強度(S/N比)も減少する。しかも,測定光が透過する測定対象物の数nが多いほど,また測定光照射位置から離れた測定対象物ほど測定光の光強度が減少する傾向にある。例えば対向して配置された最初の測定対象物のうち最初の測定対象物から反射する測定光の光強度が最も大きく,2番目以降の測定対象物から反射する測定光の光強度は徐々に低下していく。
【0191】
このように,測定光が各測定対象物の内部や各測定対象物間の空間を透過するに連れて測定光の光強度が減少するので,それに伴って測定光と参照光との干渉波形についてのノイズに対する光強度(S/N比)が減少してその干渉波形もくずれ(例えば干渉波形の形状がガウス分布から離れ),例えばピーク位置の検出精度が低下する。このため,干渉波形のピーク間幅に基づいて測定される温度の測定精度も低下する。なお,ここでいうノイズとは,例えば電子回路から発生するノイズや上部電極350に高周波電力を印加する際の周囲の電磁波環境によるノイズなどが考えられる。
【0192】
そこで,温度測定装置100又は200は,例えばSLD210などの光源110の光強度を調整できる光強度調整手段を設け,制御装置400により例えば各種コントローラに設けた光強度コントローラを介して光強度調整手段を制御して,測定光と参照光との光の干渉の測定中に光源110の光強度を変えるようにしてもよい。
【0193】
こうすることにより,測定光と参照光との光の干渉の測定中に,測定光が各測定対象物T〜Tの内部及び各測定対象物T〜T間の空間を透過することによる測定光の光強度の低下を防止することにより,その測定光と参照光との干渉波形についてのS/N比の低下を防止してその干渉波形がくずれないようにすることができる。これにより,例えば干渉波形のピーク位置の検出精度を向上させることができるので,干渉波形のピーク間幅に基づく温度や厚みの測定精度を向上させることができる。
【0194】
より具体的な光源の光強度調整方法としては,例えば測定光と参照光との光の干渉の測定中に,参照光反射手段(例えば参照ミラー)140の移動距離に応じて光源の光強度を徐々に大きくすることが挙げられる。これによれば,測定光照射位置から離れた測定対象物ほど光強度を大きくすることができるので,そのような測定光と参照光との干渉波形のS/N比の低下を防止することができる。
【0195】
また,測定光と参照光との光の干渉の測定中に,各測定対象物T〜Tごとに光源の光強度を変えるようにしてもよい。測定光の光強度は各測定対象物T〜Tごとに変るので,各測定対象物T〜Tごとに光源の光強度を変えることにより,測定光の光強度の低下を的確に防止することができる。
【0196】
例えば測定光の各測定対象物からの反射強度を予め測定しておき,各測定対象物の測定光と参照光との光の干渉の測定する際に,予め測定した測定光の反射強度(例えば測定光と参照光との干渉波形の干渉強度)に応じて光源の光強度を変えることにより,その測定光の反射強度が小さいほど光源の光強度を大きくすることができるので,測定光と参照光との干渉波形のS/N比の低下を的確に防止することができる。
【0197】
また,測定光と参照光との光の干渉の測定中に,各測定対象物T〜Tごとに測定光の照射位置から離れた測定対象物ほど光源の光強度を大きくするようにしてもよい。これにより,測定光が透過する測定対象物の数,すなわち測定しようとする測定対象物の配置位置と測定光照射位置との間の測定対象物の数が多く,測定光の光強度の低下が大きいほど光源の光強度を大きくすることができるので,測定光と参照光との干渉波形のS/N比の低下を的確に防止することができる。例えば上述したように上部電極350の電極板TuとウエハTwを測定対象物として一度に測定する場合には,上部電極350の電極板Tuについての測定光と参照光との干渉波形を測定する際よりも,ウエハTwについての測定光と参照光との干渉波を測定する際の方が光源の光強度を大きくする。これにより,ウエハTwを測定する測定光の光強度も大きくなるので,ウエハTwについての測定光と参照光との干渉波形のS/N比の低下を防止することができる。
【0198】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0199】
例えば,上記実施形態では測定対象物となる被処理基板として,基板処理装置300の処理室310内で処理されるウエハTwを例に挙げて説明したが,これに限られるものではなく,測定対象物とする被処理基板としては例えばガラス基板などの液晶基板であってもよい。
【0200】
また,上記実施形態では測定対象物となる電極板として,基板処理装置300の処理室310内に配置される上部電極350の電極板Tuを例に挙げて説明したが,測定対象物とする電極板としては下部電極340の電極板であってもよい。下部電極340の電極板は,被処理基板例えばウエハTwのみならず,上部電極350の電極板Tuにも対向して配置されているため,上記実施形態の構成で,上部電極350の電極板Tu,ウエハTw,下部電極340の電極板の温度又は厚みを一度に計測することもできる。
【0201】
さらに,上記測定対象物としては,基板処理装置内に配置されるウエハや電極板に限られず,対向して配置されたものであれば,基板処理装置内の様々な構成部品や構成部分を測定対象物として温度又は厚みを一度に測定することができる。例えばウエハの周囲に配設される周辺リング(例えばフォーカスリングなど)についても,上記電極板に対向して配置されるので,この周辺リングと電極板とを測定対象物として温度又は厚みを一度に測定することができる。
【0202】
また,上記実施形態では,基板処理装置として例えばプラズマ処理装置に適用した場合について説明したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,プラズマを使用しない成膜装置や熱処理装置のような膜改質装置など様々な基板処理装置に適用することができ,さらに本発明にかかる温度/厚さ測定装置は,基板処理装置に限られず,その他の様々な処理装置に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明は,例えば半導体ウエハ,液晶基板などの温度を測定する温度/厚さ測定装置,温度測定方法,温度/厚さ測定システムに適用可能であり,また基板処理装置を制御する制御システム,制御方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる温度測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】比較例にかかる温度測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態にかかる温度測定装置により得られる測定光と参照光との光の干渉波の具体例を示す図であり,同図(a)は各温度測定対象物の温度が変化する前の光の干渉波の1例を示し,同図(b)は各温度測定対象物の温度が変化した後の光の干渉波の1例を示す。
【図4】測定対象物の温度と光路長との関係の具体例を示す実験結果である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムの具体例についての概略構成を示すブロック図である。
【図6】同実施形態にかかる温度測定装置により得られる測定光と参照光との光の干渉波の具体例を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムの具体例についての概略構成を示すブロック図である。
【図8】同実施形態にかかる温度測定装置による測定光の光路の種類を示す図である。
【図9】同実施形態にかかる温度測定装置により得られる測定光と参照光との光の干渉波の具体例を示す図である。
【図10】同実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムの変形例についての概略構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムの具体例についての概略構成を示すブロック図である。
【図12】同実施形態にかかる温度測定装置により得られる測定光と参照光との光の干渉波の具体例を示す図である。
【図13】本発明の第5実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムの具体例についての概略構成を示すブロック図である。
【図14】同実施形態にかかる温度測定装置により得られる測定光と参照光との光の干渉波の具体例を示す図である。
【図15】同実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムの変形例についての概略構成を示すブロック図である。
【図16】同実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムの他の変形例についての概略構成を示すブロック図である。
【図17】同実施形態にかかる基板処理装置の温度測定システムの他の変形例についての概略構成を示すブロック図である。
【図18】測定光や参照光などの光を空中を利用して伝送する温度測定装置の原理を説明するための図である。
【図19】従来の温度測定装置の原理を説明するための図である。
【図20】図19に示す温度測定装置により計測された干渉波形を観念的に示した図である。
【符号の説明】
【0205】
100 温度測定装置
102 温度測定装置
110 光源
120 スプリッタ
132 光通信用マルチプレクサ
140 参照光反射手段
142 駆動手段
150 受光手段
200 温度測定装置
210 SLD
220 光ファイバカプラ(スプリッタ)
222 光ファイバカプラ(参照光用スプリッタ)
230 光ファイバカプラ(迂回光路接続用スプリッタ)
232 光ファイバカプラ(迂回光路接続用スプリッタ)
234 光ファイバカプラ(迂回光路接続用スプリッタ)
236 光ファイバカプラ(測定光用スプリッタ)
240 参照ミラー
242 モータ
244 第1参照ミラー
246 第2参照ミラー
250 PD
300 基板処理装置
310 処理室
320 高周波電源
330 高周波電源
340 下部電極
350 上部電極
351 電極支持体
352 外側冷媒流路
354 内側冷媒流路
356 低熱伝達層
358 貫通孔
359 貫通孔
400 制御装置
410 CPU
420 モータドライバ
430 モータコントローラ
440 メモリ
470 各種コントローラ
500 温度測定装置
510 スプリッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された複数の測定対象物の温度又は厚さを光の干渉に基づいて測定する温度/厚さ測定装置であって,
前記各測定対象物を透過し反射する波長を有する光を照射する光源と,
前記光源からの光を測定光と参照光とにスプリットするためのスプリッタと,
前記スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段と,
前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と,
前記スプリッタからの参照光を前記参照光反射手段へ向けて照射する参照光照射位置まで伝送する参照光伝送手段と,
前記スプリッタからの測定光を前記複数の測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射する測定光照射位置まで伝送する測定光伝送手段と,
前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定するための受光手段と,
を備えたことを特徴とする温度/厚さ測定装置。
【請求項2】
前記測定光伝送手段は,測定光の光路の途中に,この測定光の光路に並列して接続した迂回光路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項3】
前記各測定対象物についての前記測定光と前記参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるように,前記測定光の迂回光路の光路長を調整したことを特徴とする請求項2に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項4】
前記各測定対象物についての前記測定光と前記参照光との干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるように,前記測定光の迂回光路の光路長を調整したことを特徴とする請求項3に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項5】
前記スプリッタからの測定光をさらに複数の測定光にスプリットするための測定光用スプリッタを設け,この測定光用スプリッタからの各測定光を前記複数の測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射することを特徴とする請求項1に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項6】
前記参照光反射手段は,複数の反射面を設け,前記スプリッタからの参照光を前記各反射面で反射させることにより,光路長の異なる複数の参照光を反射可能としたことを特徴とする請求項1に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項7】
前記各測定対象物についての前記測定光と前記参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるように,前記参照光反射手段の複数の反射面の位置を調整したことを特徴とする請求項6に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項8】
前記各測定対象物についての前記測定光と前記参照光との干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるように,前記参照光反射手段の複数の反射面の位置を調整したしたことを特徴とする請求項7に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項9】
前記スプリッタからの参照光をさらに複数の参照光にスプリットするための参照光用スプリッタを設け,この参照光用スプリッタからの複数の参照光を前記参照光反射手段へ照射することを特徴とする請求項1に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項10】
前記各測定対象物についての前記測定光と前記参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるように,前記参照光用スプリッタからの複数の参照光の光路長を調整したことを特徴とする請求項9に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項11】
前記各測定対象物についての前記測定光と前記参照光との干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるように,前記参照光用スプリッタからの複数の参照光の光路長を調整したことを特徴とする請求項10に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項12】
前記参照光伝送手段は,参照光の光路の途中に,この参照光の光路に並列して接続した迂回光路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項13】
前記各測定対象物についての前記測定光と前記参照光との干渉波形がそれぞれ近傍で測定されるように,前記参照光の迂回光路の光路長を調整したことを特徴とする請求項12に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項14】
前記各測定対象物についての前記測定光と前記参照光との干渉波形のピーク幅の全部又は一部が重なって測定されるように,前記参照光の迂回光路の光路長を調整したことを特徴とする請求項13に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項15】
前記各光はそれぞれ,空中を介して伝送されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項16】
前記各測定対象物は,シリコン又はシリコン酸化膜により形成され,
前記光源は,1.0〜2.5μmの波長を有する光を照射可能なものであることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項17】
前記測定対象物は,基板処理装置内で処理される被処理基板及びこの被処理基板に対向して配設される電極板であることを特徴とする請求項16に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項18】
前記測定対象物は,基板処理装置内で処理される被処理基板の周囲に配設される周辺リング及びこの周辺リングに対向して配設される電極板であることを特徴とする請求項16に記載の温度/厚さ測定装置。
【請求項19】
対向して配置された複数の測定対象物の温度又は厚さを光の干渉に基づいて測定する温度/厚さ測定方法であって,
前記各測定対象物を透過し反射する波長を有する光を照射する光源からスプリットされた測定光を前記複数の測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射するとともに,参照光を参照光反射手段へ向けて照射する工程と,
前記参照光反射手段を一方向へ走査することによって前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させながら,前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定する工程と,
前記干渉測定の結果に基づいて前記各測定対象物の温度又は厚さを測定する工程と,
を有することを特徴とする温度/厚さ測定方法。
【請求項20】
前記測定光の光路の途中に,この測定光の光路に並列して接続した迂回光路を設け,
前記干渉を測定する工程は,前記測定光の迂回光路を介さないで伝送される測定光と前記参照光との光の干渉と,少なくとも一度は前記測定光の迂回光路を介して伝送される測定光と前記参照光との光の干渉とを測定することを特徴とする請求項19に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項21】
前記光源からスプリットされた測定光をさらに複数の測定光にスプリットするための測定光用スプリッタを設け,
前記干渉を測定する工程は,前記測定光用スプリッタからの複数の測定光が前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定することを特徴とする請求項19に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項22】
前記参照光反射手段は,複数の反射面を設け,
前記干渉を測定する工程は,前記光源からスプリットされた参照光が前記各反射面から反射する複数の参照光と,前記各測定対象物から反射する各測定光との光の干渉を測定することを特徴とする請求項19に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項23】
前記スプリッタからの参照光をさらに複数の参照光にスプリットするための参照光用スプリッタを設け,
前記干渉を測定する工程は,前記参照光用スプリッタからの複数の参照光が前記参照光反射手段から反射する各参照光と,前記各測定対象物から反射する各測定光との光の干渉を測定することを特徴とする請求項19に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項24】
前記参照光の光路の途中に,この参照光の光路に並列して接続した迂回光路を設け,
前記干渉を測定する工程は,前記参照光の迂回光路を介さないで伝送される参照光と前記測定光との光の干渉と,少なくとも一度は前記参照光の迂回光路を介して伝送される参照光と前記測定光との光の干渉とを測定することを特徴とする請求項19に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項25】
前記各光はそれぞれ,空中を介して伝送されることを特徴とする請求項19〜24のいずれかに記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項26】
前記各測定対象物は,シリコン又はシリコン酸化膜により形成され,
前記光源は,1.0〜2.5μmの波長を有する光を照射可能なものであることを特徴とする請求項19〜25のいずれかに記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項27】
前記各測定対象物は,基板処理装置内で処理される被処理基板及びこの被処理基板に対向して配設される電極板であることを特徴とする請求項26に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項28】
前記測定対象物は,基板処理装置内で処理される被処理基板の周囲に配設される周辺リング及びこの周辺リングに対向して配設される電極板であることを特徴とする請求項26に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項29】
前記測定光と前記参照光との光の干渉の測定中に前記光源の光強度を変えることを特徴とする請求項19〜28のいずれかに記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項30】
前記参照光反射手段の移動距離に応じて前記光源の光強度を徐々に大きくすることを特徴とする請求項29に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項31】
前記各測定対象物ごとに前記光源の光強度を変えることを特徴とする請求項29に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項32】
前記測定光の前記各測定対象物からの反射強度に応じて前記光源の光強度を変えることを特徴とする請求項31に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項33】
前記測定光の照射位置から離れた測定対象物ほど前記光源の光強度を大きくすることを特徴とする請求項31に記載の温度/厚さ測定方法。
【請求項34】
処理室内に配置された電極板に高周波電力を印加することによって,この電極板に対向して配置される被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置と,この基板処理装置に取付けられる温度/厚さ測定装置と,前記温度/厚さ測定装置を制御する制御装置とを備える温度/厚さ測定システムであって,
前記温度/厚さ測定装置は,少なくとも前記電極板と前記被処理基板又はこの被処理基板の周囲に配設される周辺リングを含む各測定対象物を透過し反射する波長を有する光を照射する光源と,前記光源からの光を測定光と参照光とにスプリットするためのスプリッタと,前記スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段と,前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と,前記スプリッタからの参照光を前記参照光反射手段へ向けて照射する参照光照射位置まで伝送する参照光伝送手段と,前記スプリッタからの測定光を前記各測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射する測定光照射位置まで伝送する測定光伝送手段と,前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定するための受光手段とを備え,
前記制御装置は,前記受光手段からの干渉測定の結果に基づいて前記各測定対象物の温度又は厚さを求めることを特徴とする温度/厚さ測定システム。
【請求項35】
処理室内に配置された電極板に高周波電力を印加することによって,この電極板に対向して配置される被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置と,この基板処理装置に設置される温度/厚さ測定装置と,前記温度/厚さ測定装置及び前記基板処理装置を制御する制御装置とを備える制御システムであって,
前記温度/厚さ測定装置は,少なくとも前記電極板と前記被処理基板又はこの被処理基板の周囲に配設される周辺リングを含む各測定対象物を透過し反射する波長を有する光を照射する光源と,前記光源からの光を測定光と参照光とにスプリットするためのスプリッタと,前記スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段と,前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と,前記スプリッタからの参照光を前記参照光反射手段へ向けて照射する参照光照射位置まで伝送する参照光伝送手段と,前記スプリッタからの測定光を前記各測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射する測定光照射位置まで伝送する測定光伝送手段と,前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定するための受光手段と,
前記制御装置は,前記受光手段からの干渉測定の結果に基づいて前記各測定対象物の温度又は厚さを求め,これらの温度又は厚さに基づいて,前記基板処理装置の処理室内にある前記被処理基板の温度制御とプロセス制御のうち少なくとも一方の制御を行うことを特徴とする制御システム。
【請求項36】
処理室内に配置された電極板に高周波電力を印加することによって,この電極板に対向して配置される被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置の制御システムについて制御方法であって,
少なくとも前記電極板と前記被処理基板又はこの被処理基板の周囲に配設される周辺リングを含む複数の測定対象物を透過し反射する波長を有する光を照射する光源からスプリットされた測定光を前記複数の測定対象物へ向けて前記各測定対象物を透過するように照射するとともに,参照光を参照光反射手段へ向けて照射する工程と,
前記参照光反射手段を一方向へ走査することによって前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させながら,前記各測定対象物から反射する各測定光と,前記参照光反射手段から反射する参照光との光の干渉を測定する工程と,
前記干渉測定の結果に基づいて前記各測定対象物の温度又は厚さを測定する工程と,
測定した前記各測定対象物の温度又は厚さに基づいて,前記基板処理装置における前記被処理基板の温度制御とプロセス制御のうち少なくとも一方の制御を行う工程と,
を有することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−194679(P2006−194679A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5309(P2005−5309)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】