説明

測位システム及び制御方法

【課題】移動局のビーコン送信機12の測位において、各地点の電界強度を事前に実測すること及びビーコン受信機11−ビーコン送信機12間の距離を計算することを省略し、かつビーコン受信機11の配備数を少なくする。
【解決手段】ビーコン送信機12は、ID情報付きビーコンを周囲へ発射する。複数のビーコン受信機11は、測位空間19内にほぼ等密度で分布して配備され、受信したビーコンの電界強度を測定する。基地局15では、各ビーコン受信機11からのビーコン情報を受信し(S51)、ビーコン受信位置情報テーブルを参照して、ビーコン情報送信元のビーコン受信機11の位置を求める(S52)。さらに、ビーコン受信機11の各位置と同一IDのビーコンについての各ビーコン受信機11における電界強度の比とに基づきビーコン送信機12の現在位置を算出する(S53)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ等の移動体の現在位置を検出する測位システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位置検出技術として最も普及しているのはGPS(Global Positioning System)を用いた方式であり、カーナビのみならず携帯電話などでも利用されている。しかしながら、屋内や地下などでは、GPSの電波が届かないので、GPSに代わる測位技術が必要になる。
【0003】
特許文献1は、赤外線ビーコンを屋内天井に格子状に配備し、各赤外線ビーコンからビーコンIDを下方へ照射し、携帯端末が、従業員に携帯されて移動し、受信した赤外線ビーコンからビーコンIDを抽出して、該ビーコンIDに基づき自機の現在位置を検出することを開示する(特許文献1の段落0059 0060)。各赤外線ビーコンは、床における照射面が半径8cmほどとなる広がりのものであり(特許文献1の段落0069)、各携帯端末を16cmの誤差で測位することができることになる。
【0004】
特許文献2は、移動端末と基地局との間でブルートゥースなどの近距離無線通信を実施し、移動端末は、送信電力を段階的に増大させながら、ブルートゥース接続要求を表すIDパケットを基地局へ送信するようにし、基地局が移動端末からのIDパケットを受信できた時の送信電力に対応する距離を移動端末と基地局との間の距離にすることを開示する(特許文献2の0055)。特許文献2は、また、移動端末から送信電力情報付き電波を送信し、これを3つの基地局で受信して、その伝播損失に基づき該3つの基地局から該移動端末までの距離を測定し、三点測量法により移動端末の絶対位置を算出することも開示する(特許文献2の段落0066、0069及び0070)。
【0005】
特許文献3は、複数の基地局をサービスエリア(移動局の移動範囲)内に分布して配置するとともに(特許文献3の図1)、該サービスエリア内の各測定地点について各基地局からの受信電界強度をあらかじめ複数回、測定し、測定データを記憶することを開示する(特許文献3の段落0028及び図2の電界強度データ記憶部)。そして、位置情報センターは、移動局が各基地局からの受信信号の内、電界強度が高い方から8つまでの受信信号に対応する基地局を選択して、それら基地局からの電界強度のデータを取得し、取得した電界強度データと記憶している各測定地点との電界強度データとを対比して、取得した電界強度データに最も近い電界強度データとなっている測定地点を該移動局の現在位置であると推定するようになっている(特許文献3の段落0028及び0031)。
【0006】
特許文献4は、位置検出対象としてのRFIDタグに対して、その移動範囲に複数のタグリーダを分布して配置し(特許文献4の図5)、RFIDタグからの電波を近辺の3つのタグリーダにおいて受信し、該3つのタグリーダにおける受信電界強度を測定し、各受信電界強度から該RFIDタグと該3つのタグリーダまでの距離を算出し、算出した3つの距離から該RFIDタグの位置を特定する(特許文献4の段落0011)ことを開示する。
【0007】
特許文献5は、小売店舗内に複数のアクセスポイントと複数のタグライタとを配備し(特許文献5の図1)、これらアクセスポイント及びタグライタからの無線を顧客の買い物カゴの無線タグへ送信する(特許文献5の図2)ことを開示する。該無線タグは、アクセスポイントからの無線の信号強度を測定するとともに、タグライタからの特定情報を受信し、位置特定装置は、アクセスポイント経由で各無線タグからの信号強度や特定情報を受信する(特許文献5の段落0074〜0076)。該位置特定装置は、各無線タグから受信した信号強度を、各地点であらかじめ実測しておいた信号強度と照合し、照合に基づき各無線タグの位置を確率的に推定する(特許文献5の段落0079)。該位置特定装置は、さらに、無線タグから受信したタグライタIDに基づき、該無線タグが該タグライタIDのタグライタの位置近辺に存在することを把握する(特許文献5の段落0087)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−309908号公報
【特許文献2】特開2005−086579号公報
【特許文献3】特開2001−128222公報
【特許文献4】特許第3587448号公報
【特許文献5】特許第4160107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1における携帯端末の測位では、測位の精度は高いものの、各赤外線ビーコンの照射範囲が半径8cmであり、携帯端末の全移動範囲を網羅して該携帯端末を測位する場合には、赤外線ビーコンをほぼ天井一面に配備する必要があり、赤外線ビーコンの総数が膨大になってしまう。
【0010】
特許文献2における移動端末の測位では、移動端末が送信電力を段階的に切り替えつつ、送信を行う必要があり、処理が煩雑になるとともに、複数の送信電力による送信を全部、終了するまでに時間がかかる。
【0011】
特許文献3における移動端末の測位では、サービスエリア内の各測定について各基地局からの受信電界強度をあらかじめ複数回、測定しておく必要があり、手間がかかる。
【0012】
特許文献4における移動端末の測位では、3つのタグリーダにおけるRFIDタグからの受信電界強度を測定するものの、それら受信電界強度からRFIDタグ−各タグリーダ間の距離を一旦、算出してから、RFIDタグの現在位置を算出する必要があり、処理が煩雑になる。
【0013】
特許文献5における移動端末の測位では、無線タグが各地点にあった場合の各アクセスポイントにおける受信信号強度を各各地点についてあらかじめ実測しておく必要があり、特許文献3の測位と同様に、手間がかかる。特許文献5におけるタグライタIDに基づく無線タグの測位では、小売店内のどの地点でも漏れのない測位を実現するためには、タグライタIDの配備数が膨大になってしまう。
【0014】
本発明の目的は、固定局までの距離の計算や、測位空間内の各地点の電界強度の事前の実測を省略することができるとともに、測位空間内に分布して配備する固定局の数を低減することができる測位システム及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、ユーザ等の移動体に装備されたビーコン送信機は、測位空間内を移動しつつ、自機のID情報を含むビーコンを発信する。固定局のビーコン受信機は、測位空間内に分布して配備され、ビーコンを受信し、その強度を測定する。同一送信機IDのビーコンについて、各ビーコン受信機における受信強度の比に基づき該IDに対応付けられたビーコン送信機の現在位置が算出される。
【0016】
本発明の測位システムは次のものを備える。
測位空間に分布して配備され固定局の複数のビーコン受信機、
自機のID情報を含むビーコンを発信する移動局のビーコン送信機、及び
前記ビーコン送信機の現在位置を管理する管理装置。
【0017】
前記ビーコン受信機は次のものを備える。
受信したビーコンの強度を測定する強度測定手段、
受信したビーコンからその送信元のビーコン送信機のIDを抽出するID抽出手段、及び
ビーコン送信機IDとそれが抽出されたビーコンの受信強度と自機IDとを対応付けたビーコン情報を前記管理装置へ送信するビーコン情報送信手段。
【0018】
前記管理装置は次のものを備える。
各ビーコン受信機から前記ビーコン情報を受信するビーコン情報受信手段、
前記ビーコン情報から同一ビーコン送信機IDのビーコンについてビーコン受信機別の受信強度を抽出するビーコン受信機別受信強度抽出手段、及び
同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度の比に基づき該ビーコン送信機IDに対応付けられたビーコン送信機の現在位置を測位する現在位置測位手段。
【0019】
本発明の測位システム制御方法が適用される測位システムは、測位空間における各固定場所に分布して配備された複数のビーコン受信機、ユーザに携帯されビーコンを発信する1以上のビーコン送信機、及び前記ビーコン送信機の現在位置を管理する管理装置を備える。本発明の測位システムの制御方法発揮のステップを備える。
各ビーコン受信機において受信したビーコンの強度を測定する強度測定ステップ、
各ビーコン受信機において受信したビーコンからその送信元のビーコン送信機のIDを抽出するID抽出ステップ、
ビーコン送信機IDとそれが抽出されたビーコンの受信強度と自機IDとを対応付けたビーコン情報を前記管理装置へ送信するビーコン情報送信ステップ、
前記管理装置において各ビーコン受信機から前記ビーコン情報を受信するビーコン情報受信ステップ、
前記管理装置において前記ビーコン情報から同一ビーコン送信機IDのビーコンについてビーコン受信機別の受信強度を抽出するビーコン受信機別受信強度抽出手段、及び
前記管理装置において同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度の比に基づき該ビーコン送信機IDに対応付けられたビーコン送信機の現在位置を測位する現在位置測位ステップ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、測位空間に分布して配備される固定局のビーコン受信機が、移動局のビーコン送信機からそのID情報を含むビーコンを受信して、受信強度を測定し、同一ビーコンIDのビーコンについてのビーコン受信機別の受信強度の比に基づき該ビーコンIDに対応付けられたビーコン送信機の現在位置が算出されるので、固定局までの距離の計算や、測位空間内の各地点の電界強度の事前の実測を省略することができる。また、測位空間内に分布して配備する固定局の数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ビーコンを利用した屋内用測位システムの構成図である。
【図2】各ビーコン受信機と配置場所との関係を示す図である。
【図3】ビーコン送信機がビーコンとして発信するパケットのデータ構造図である。
【図4】4つのビーコン送信機が1つのビーコン受信機の配備点を中心とする同一の円周上に周方向へ等角度間隔で位置している場合の該ビーコン受信機が該4つのビーコン送信機からビーコンを受信する状況を示す図である。
【図5】ビーコン受信機が自機の記憶装置内に格納するビーコン情報テーブルを示す図である。
【図6】各ビーコン受信機におけるビーコン情報格納方法のフローチャートである。
【図7】各ビーコン受信機が基地局へ送信するビーコン情報のパケットのデータ構造図である。
【図8】基地局が各ビーコン受信機より収集したビーコン情報である。
【図9】パソコンにおいて実施する二次元測位方法のフローチャートである。
【図10】ビーコン送信機を三次元測位する場合のビーコン受信機の配置図である。
【図11】ビーコン受信機が複数の階に分布して配備される場合にパソコンの記憶装置に記憶されるビーコン受信位置情報テーブルを示す図である。
【図12】図11におけるビーコン受信機の配備に対してパソコンにおいて実施する三次元測位方法のフローチャートである。
【図13】屋内用測位システム全体におけるシーケンス図である。
【図14】ビーコン送信機のビーコン送信範囲を小さく限定して現在位置を測位する説明図である。
【図15】ビーコン受信機が多数分布している場合にビーコン送信機の測位を効率化する説明図である。
【図16】測位システムの機能ブロック図である。
【図17】測位システム制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1はビーコンを利用した屋内用測位システム10の構成図である。屋内用測位システム10は、複数のビーコン受信機11と、測位対象としてのビーコン送信機12と、基地局15とを備える。屋内用測位システム10は、例えば、屋内や地下街など、GPS電波を使用できない測位空間19におけるビーコン送信機12の測位を行う。ビーコン送信機12は、ユーザ、ロボット、屋内小型自動搬送車等の移動体に装備されて、測位空間19内を移動する。
【0023】
なお、該測位システム10は、GPS受信機を装備しなくても、現在位置を測位できるものとして、屋外のシステムとしても利用可能である。例えば、屋外のテーマパークなどで子供にカードサイズのビーコン送信機12を入口で渡し、迷子になったときに位置を確認することに適用される。
【0024】
ビーコン送信機12は、図1では、簡略化上、2つしか記載されていないが、現実の屋内用測位システム10では、それより多く、存在する。各ビーコン受信機11は、無線機に内蔵されており、該無線機を介して基地局15とデータやコマンドを送受自在になっている。各ビーコン送信機12は周囲へビーコンを発信し、該ビーコンはビーコン送信機12の近傍のビーコン受信機11に限定して、受信される。基地局15は、データを相互に授受自在にケーブル接続されている基地局無線機16及びパソコン17を備え、基地局無線機16は、無線通信を介して各ビーコン受信機11とデータやコマンドを授受するとともに、無線通信を介して各ビーコン送信機12からデータを受信する。
【0025】
測位空間19が高さを問題にしない二次元の水平空間であると想定する場合、複数のビーコン受信機11は、測位空間19において水平方向へほぼ等密度の分布となるように、各場所に固定的に配備される。各ビーコン受信機11は、例えば、天井、壁及び床、さらには、既設の敷設物を利用して、取り付けられる。
【0026】
図1では、ビーコン受信機11は、測位空間19において縦横3×3の等間隔配列で、配備されており、A〜IのIDを付与されている。図2は各ビーコン受信機11と配置場所との関係を示す。ビーコン受信機11の配置場所は、緯度及び経度で表され、ビーコン受信機11のIDに対応付けられて、パソコン17の記憶装置にあらかじめ登録されている。
【0027】
ビーコン受信機11は、ビーコン送信機12が接近して、該ビーコン送信機12からのビーコン受信圏に入った時、該ビーコン送信機12からのビーコンを受信する。各ビーコン送信機12からのビーコンは、測位空間19の任意の場所により1以上のビーコン受信機11に受信されるように、ビーコンの送信出力が設定されている。図3はビーコン送信機12がビーコンとして発信するパケットのデータ構造図である。パケットの先頭から順番に、ヘッダ、ID、チェックサム及びフッタが配置される。パケットのIDは、パケットの送信元のビーコン送信機12のIDを表す。
【0028】
該屋内用測位システム10では、各ビーコン送信機12は、相互に等しい送信出力でかつ相互に等しい周波数でビーコンを相互に非同期で、自機のIDを含むパケット(図3)を発信する。したがって、各ビーコン送信機12からのビーコンの到達距離は等しくなる。図4は4つのビーコン送信機12が1つのビーコン受信機11の配備点を中心とする同一の円周上に周方向へ等角度間隔で位置している場合の該ビーコン受信機11が該4つのビーコン送信機12からビーコンを受信する状況を示している。各ビーコン送信機12のビーコンの到達圏は、半径が例えば約15mの等しい円形領域となっており、各ビーコン送信機12のビーコンの到達距離Rは、ビーコン受信機11の格子状配列における升目に相当する正方形の対角線の長さZに対し、Z/2<R<Zとされる。
【0029】
測位空間19内の各地点は、ビーコン送信機12が該地点に位置するときに、少なくとも1つのビーコン受信機11が該ビーコン送信機12からのビーコンを受信することができ、最大、4つのビーコン受信機11が同一のビーコン送信機12からのビーコンを受信するようになっている。
【0030】
各ビーコン送信機12からのビーコンは、相互に非同期発信でかつ等周波数のビーコンの発信であるために、時間軸上、重複すると、相互に干渉して、ビーコン受信機11がビーコンを受信できなくなる。各ビーコン送信機12からのビーコン送信間隔(ビーコン送信間隔とは、ビーコン送信開始から次のビーコン送信開始までの時間を意味し、後述のTiに対応する。)を同一に設定すると、個々の時間基準(クロック発振子)の精度誤差によりいずれ送信タイミングが重複することになる。この場合、一度送信重複が生じると、相互の時間ずれがわずかであるため、長期にわたり送信重複が発生し続ける事態が生じる。このような送信重複の確率を低減するために、隣接するビーコン送信機12の送信間隔をビーコンの送信時間以上ずらした間隔に設定する。
【0031】
ビーコンの送信時間をTtx、或るビーコン送信機12におけるビーコンの送信間隔をTiにした場合、該ビーコン送信機12に隣接するビーコン送信機12の送信間隔をTi+Ttx、Ti−Ttxのように設定する。この場合、両者の送信信号で重複が発生する確率は、Ttx/Tiとなる。
【0032】
図4のようにビーコン受信機11が4つのビーコン送信機12のビーコンカバー範囲に同時に属する場合、4つのビーコン送信機12のビーコン送信間隔TA〜TDは、TA=Ti、TB=Ti+Ttx、T3=Ti− Ttx、TD=TA+2・Ttxのように設定する必要がある。
【0033】
この場合、隣接するビーコン送信機aとbとの間で送信重複Tabが発生する確率は、Ti >>Ttxとして、T12≒Ttx/Ti、T13≒Ttx/Ti、T14≒2・Ttx/Ti、T23≒2・Ttx/Ti、T24≒Ttx/Ti、T34≒3・Ttx/Tiとなる。何らかの重複が発生する確率Pはこれらの総和となるから、P=10・Ttx/Tiとなる。
【0034】
txは、送信パケット構成によって定まり、送信ビットレートを4800bpsとして図3のパケットを送信する場合約20msecとなる。Tiは、移動局がカバー範囲に入ってからそのIDを認識するまでの最大レスポンス時間に影響するためできるだけ短いことが望ましい。
【0035】
送信重複を3%以下の確率とするためには上式より、P=10・Ttx/Ti、Ti=10・Ttx/P=10×20/0.03≒6667[msec]となり、約7秒以上の間隔とする必要がある。ただし、2回分の送信で衝突を回避する場合、そのどちらもが衝突する確率は、P=(10・Ttx/Ti2となる。これを3%以下にするには、Ti=10・Ttx/sqrt(P)=10×20/0.173≒1155[msec]となり2秒程度以上の送信間隔とすればよい。
【0036】
ビーコン受信機11は、ビーコンを受信すると、該ビーコンの電界強度を測定し、ビーコンの送信元のビーコン送信機12のIDと共に受信したビーコンの情報(受信電界強度RSSI:Receiving Signal Strength Indicator)を自機の記憶装置内の図5のビーコン情報テーブルに格納する。この時、同じIDに対応付けられたビーコン送信機12からビーコンを受信した場合は、ビーコン情報テーブルにおける該IDの行のRSSIを最新の情報に置き換える。またテーブルにおける行数が、ビーコンを受信したビーコン送信機12の個数を超えた場合は、一番古い情報のビーコン送信機12についてその行の情報を削除してから、該行に最後のビーコン受信機11からのビーコン情報を追加する。
【0037】
図6は各ビーコン受信機11におけるビーコン情報格納方法30のフローチャートである。ビーコン情報格納方法30は、ビーコン受信機11がビーコンを受信するのに伴い実行される(S31)。S32では、受信したビーコンの電界強度を測定する。
【0038】
S33では、受信したビーコンのパケット(図3)から該ビーコンの送信元のビーコン送信機12のIDを抽出し、ビーコン受信テーブル(図5)に該IDがすでに存在するか否かを判定する。そして、判定が正であれば、S34へ進み、否であれば、S35へ進む。
【0039】
S34では、S33で存在を確認されたIDの行に今回のビーコン情報、すなわち今回受信したビーコンのID及び電界強度を上書きする。S34の後は、ビーコン情報格納方法30を終了する。
【0040】
S35では、ビーコン受信テーブル(図5)上に空き行があるか否かを判定し、判定が正であれば、S37へ進み、否であれば、S36へ進む。
【0041】
S36では、ビーコン受信テーブルから最古のビーコン情報の行を削除し、ビーコン受信テーブルに空き行を作る。S37では、ビーコン受信テーブルの空き行に今回のビーコン情報(今回受信のビーコンのID及び電界強度)を書き込む。
【0042】
図7は各ビーコン受信機11が基地局15へ送信するビーコン情報のパケットのデータ構造図である。各ビーコン受信機11は、定期的に又は基地局15からビーコン情報の送信要求があった時、図7のパケットを基地局15へ送信する。各ビーコン受信機11から基地局15へのパケットの送信は、ビーコンとは別の周波数で行われ、ビーコンとの干渉を回避する。なお、各ビーコン受信機11と基地局15とをケーブルで相互に接続し、一部又は全部のビーコン受信機11から基地局15へのパケットの送信を無線ではなく有線で行ってもよい。
【0043】
図7のパケットでは、先頭から順番にヘッダ、データ数、データ1、データ2、・・・、チェックサム及びフッタが配置される。データ1、データ2、・・・は、図5のテーブルの各行のビーコン情報に対応し、図7におけるパケットの各データは、図5のビーコン受信テーブルにおける各行のIDと電界強度とをコピーしたものである。図7のパケットのヘッダには、該パケットを送信するビーコン受信機11のIDの情報が含まれる。
【0044】
図8は基地局15が各ビーコン受信機11より収集したビーコン情報である。図8において、ID001,0002,・・・は各ユーザのビーコン送信機12のIDを意味し、受信機A〜Eはビーコン受信機11のIDを意味し、表内の値は電界強度RSSIを示している。各ビーコン送信機12に対し、該ビーコン送信機12からのビーコンがどのビーコン受信機11にどのような電界強度で受信されたかが分かる。
【0045】
図9はパソコン17において実施する二次元測位方法50のフローチャートである。二次元測位方法50は、パソコン17が基地局無線機16から全てのビーコン受信機のビーコン情報を受信する毎に実施される。ビーコン受信機11は位置を固定されているので、基地局15は、各ビーコン受信機11とケーブルにより接続されて、各ビーコン受信機11から無線を介する基地局無線機16へ受信ではなく、ケーブルを介しての各ビーコン受信機11から受信により図8のビーコン情報を収集してもよい。
【0046】
基地局無線機16が、ビーコン受信機11から無線によりビーコン情報を受信すると、位置情報管理システムが稼動しているパソコン17に該ビーコン情報を直ちに送信する。二次元測位方法50は該位置情報管理システムの具体的処理手順である。
【0047】
各ビーコン受信機11は、一定周期毎又は基地局15からの問合せがあった時に、自機の記憶装置のビーコン受信テーブル(図5)に格納してあるビーコン受信情報を図7の形式のパケットを用いて基地局15へ送信する。該パケットのヘッダには、ビーコン受信機11のIDが含まれる。
【0048】
各ビーコン受信機11が一定周期毎にビーコン受信情報を送信する場合は、各ビーコン受信機11から共通の基地局15へのビーコン受信情報の送信が重複しないようにするために、すなわち相互に干渉しないようにするために、各ビーコン受信機11は、基地局15へのパケット送信間隔を、(1回の送受信処理時間)×(ビーコン受信機11の台数)以上、空ける必要がある。各ビーコン受信機11は各々がこの送信間隔を保ちつつ、他のビーコン受信機11との送信重複を起こさないように、例えば、基地局無線機16からビーコン受信機11に対し、時間の補正コマンドを定期的に送るなどの方法で、送信タイミングの同期を取る必要がある。各ビーコン受信機11は、また、基地局15へビーコン受信情報を送信する毎に、図5のビーコン受信テーブルをクリアする。
【0049】
ビーコン受信情報送信側のビーコン受信機11と基地局無線機16との1回の送受信処理時間は、ビーコン受信機11のリトライ回数(初期値例:2回)及びリトライ間隔(初期値例:2秒)の設定と、基地局無線機16のACK返信時間(初期値例:0.5秒)によって決まる。初期値の例で考えると1回の送受信処理時間は最大 (2+0.5)×2=5(秒)となる。これに実際のデータ転送時間が少し加わるので、1回の送受信処理時間は、余裕を見て6秒くらいとなる。
【0050】
ビーコン受信機11が、前回、ビーコン受信情報を基地局15へ送信してから一度もビーコン受信機11からのビーコンを受信していない場合は、受信テーブルは空のままとなっている。ビーコン受信機11は、テーブルが空の状態である時に、ビーコン受信情報を送信する場合には、図7のパケットの”データ数”のフィールドに"0"を記入することで、テーブルが空であるという情報を基地局15へ送信する。
【0051】
二次元測位方法50において、S51では、パソコン17はビーコン情報を該ビーコン情報の送信元のビーコン受信機11のID(図1のA,B,C,・・・)と共に基地局無線機16から受信する。S52では、ビーコン受信機11のID、ビーコン送信機12のID(図1の001,002)及び電界強度に対し、同一ビーコン(ビーコン送信機12のIDを同じくするビーコン)を受信したビーコン受信位置(ビーコン受信機11の位置)を、ビーコン受信位置情報テーブル(図2)を参照して取得する。S53では、ビーコン受信位置とそこでの電界強度とに基づきビーコンの送信元のビーコン送信機12の位置を算出する。具体的な算出の仕方は次のとおりである。
【0052】
ID:A、ID:B、ID:D及びID:Eのビーコン受信機11の設置位置の座標をそれぞれ(xA,yA)、(xB,yB)、(xD,yD)、(xE,yE)とし、ビーコン受信機で測定したそれぞれのビーコンの電界強度をEA、EB、ED、EEとすると、ビーコン送信機12の位置座標(x,y)は次のように求めることができる。
【0053】
x=(xA×EA+xB×EB+xD×ED+xE×EE)/(EA+EB+ED+EE)・・・(1)
【0054】
y=(yA×EA+yB×EB+yD×ED+yE×EE)/(EA+EB+ED+EE)・・・(2)
【0055】
(1)及び(2)式では、同一のビーコン送信機12の発信ビーコンが4つのビーコン受信機11により受信されているので、4つの電界強度EA、EB、ED、EEからビーコン送信機12の現在位置(x,y)が計算されているが、同一のビーコン送信機12からのビーコンを受信できたビーコン受信機11の個数が3つ以下である場合には、3つ以下の電界強度からビーコン送信機12の現在位置(x,y)が計算される。同一のビーコン送信機12からのビーコンを受信できたビーコン受信機11の個数が1であり、それが例えばビーコン受信機Aである場合は、電界強度EAに関係なく、ビーコン送信機12の現在位置(x,y)は(xA,yA)となる。
【0056】
図9の二次元測位方法50に戻って、S54では、ビーコン送信元のビーコン送信機12に対し、その現在位置を、(1)及び(2)式で求めた位置(x,y)にして、パソコン17のディスプレイの地図上に表示する。二次元測位方法50は、各ビーコン、すなわちその送信元のビーコン送信機12に対して実施されるので、測位空間19の全部のビーコン送信機12についてその現在位置がパソコン17のディスプレイの地図上に表示されることになる。
【0057】
図10はビーコン送信機12を三次元測位する場合のビーコン受信機11の配置図である。ビーコン受信機11は、複数の階に分布して、測位空間19内に配備される。図10では、ID:E,D.Fのビーコン受信機11は1階に配備され、ID:A,B,Cのビーコン受信機11は2階に配備されている。ビーコンはある程度の透過性があるので、階毎にビーコン受信機11をずらして設置することにより、ビーコン受信機11の設置数を抑えることができる。
【0058】
図11はビーコン受信機11が複数の階に分布して配備される場合にパソコン17の記憶装置に記憶されるビーコン受信位置情報テーブルを示す。図11のビーコン受信位置情報テーブルでは、前述の図2のビーコン受信位置情報テーブルに対して設置階が追加されている。
【0059】
図12は図11におけるビーコン受信機11の配備に対してパソコン17において実施する三次元測位方法60のフローチャートである。三次元測位方法60において、図9の二次元測位方法50のステップと同一のステップは、二次元測位方法50の対応ステップと同一ステップ番号を付けて、説明は省略する。三次元測位方法60では、二次元測位方法50のS53がS61,S62に置き換えられている。
【0060】
S61では、各ビーコン受信機11からのビーコン情報から抽出した電界強度であって、同一のビーコンID(同一のビーコン送信元のビーコン送信機12のID)についての電界強度の内の最大であるビーコンを受信したビーコン受信機11の配備階を該ビーコンID(ビーコン送信元のビーコン送信機12)の存在階とする。ビーコン送信機12の存在階を決定する別の仕方としては、(a)水平方向へ相互にほぼ同一位置にある2つのビーコン受信機11が同一IDのビーコン(送信元のビーコン送信機12が同一であるビーコン)を受信している場合に、電界強度が大きい方のビーコンを受信したビーコン受信機11の配備階をビーコン送信機12の存在階とすること、及び(b)同一IDのビーコンを、n+1階とn−1階に配備された2つのビーコン受信機11において受信している場合に、n階をビーコン送信機12の存在階とすることがある。
【0061】
S62では、ビーコン情報の送信元のビーコン受信機11に対し、その位置としてのビーコン受信位置とビーコンの電界強度とに基づき、該ビーコン送信機12の水平方向位置を算出する。この場合、ビーコン受信機11の配備階が異なるために、ビーコン送信機12の存在階に配備されるビーコン受信機11における電界強度と、存在階以外に配備されているビーコン受信機11における電界強度とは、水平方向への各ビーコン受信機11からビーコン送信機12までの距離が等しくても差が生じるので、算出式は前述の(1)及び(2)式を補正する必要がある。具体的な算出の仕方は次のとおりである。
【0062】
ID:A、ID:Bのビーコン受信機11は1階に配備され、ID:E、ID:Fのビーコン受信機11は2階に配備されている。また、ビーコン送信機12は、S61の処理の結果、1階に存在すると仮定する。ID:A、ID:B、ID:D、ID:Eのビーコン受信機11の設置位置の座標をそれぞれ(xA,yA)、(xB,yB)、(xD,yD)、(xE,yE)とし、ビーコン受信機で測定したそれぞれのビーコンの電界強度をEA、EB、ED、EEとすると、ビーコン送信機12の位置座標(x,y)は次のように求めることができる。ただし、α>1である。
【0063】
x=(xA×EA+xB×EB+xD×α・ED+xE×α・EE)/(EA+EB+α・ED+α・EE)・・・(3)
【0064】
y=(yA×EA+yB×EB+yD×α・ED+yE×α・EE)/(EA+EB+α・ED+α・EE)・・・(4)
【0065】
ビーコン送信機12の存在階に対し、隣りの階に配備されているビーコン受信機11へのビーコン送信機12からのビーコンの電界強度は、同一階に配備されているビーコン受信機11へのビーコン送信機12からのビーコンの電界強度より弱まるので、上記(3)及び(4)式では、αを掛けて、増大させてある。
【0066】
図13は屋内用測位システム10全体におけるシーケンス図である。該シーケンス図はビーコン情報格納方法30及び二次元測位方法50の処理を含んでいる。なお、図13の設置無線機とは、ビーコン受信機11を内蔵する無線機(図示せず)である。ビーコン受信機11のビーコン情報は、該ビーコン受信機11を内蔵する設置無線機から無線により基地局15の基地局無線機16へ送信される。
【0067】
ビーコンIDは所定の周期(TimeOut)でビーコンによりビーコン送信機12からビーコン受信機11へ送信され、ビーコン受信機11では、該ビーコンの電界強度が測定され(ビーコン情報格納方法30のS32)、該電界強度がビーコンIDと共にビーコン受信機11の記憶装置のビーコン情報テーブル(図5)に格納される(ビーコン情報格納方法30のS34,S37)。
【0068】
ビーコン受信情報要求は、パソコン17の位置情報管理システムから基地局無線機16及び設置無線機を経てビーコン受信機11へ到達する。ビーコン受信機11は、該ビーコン受信情報要求に応動して、又はビーコンIDの送信周期とは別の所定の周期でビーコン受信情報(図8のテーブルの情報)を、設置無線機を介して基地局無線機16へ送信し、該ビーコン受信情報は基地局無線機16からパソコン17の位置情報管理システムへ送信される(二次元測位方法50のS51)。位置情報管理システムは、該ビーコン受信情報に基づきビーコン送信機12の現在位置を算出する(二次元測位方法50のS53)。
【0069】
図14はビーコン送信機12のビーコン送信範囲を小さく限定して現在位置を測位する説明図である。図14のビーコンの到達距離Rは、図4のビーコンの到達距離Rより短くされている。図4では、Z/2<R<Zであったが、図14では、ビーコン受信機11の格子状配列における升目に相当する正方形の辺の長さをWとすると、R<W/2とされる。結果、ビーコン送信機12からのビーコンを受信するビーコン受信機11の個数は1又は0となる。こうして、1である場合には、ビーコン送信機12の現在位置は、該ビーコン送信機12からのビーコンを受信した唯一のビーコン受信機11の位置に特定される。0である場合も、ビーコン送信機12は、静止時間はわずかであり、ユーザに携帯されて絶えず移動するので、多少の時間が経てば、いずれかのビーコン受信機11によりビーコンが受信され、これにより、ビーコン送信機12からのビーコンがどのビーコン受信機11にも受信されないブランクの期間は最小限に抑えることができる。
【0070】
図14のビーコン送信範囲の極小化した適用例では、フードコートなどで各テーブルにビーコン受信機11付き無線機(以下、「設置無線機」という。)を設置する。注文を済ませたお客にビーコン送信機12を渡す。ビーコン送信機12の送信出力は1つのテーブルをカバーする程度としておくと、お客がそのビーコン送信機12をテーブル上に置いたときに、そのテーブルに設置されている設置無線機からビーコン送信機12のIDが送信され、従業員はお客のいるテーブルを特定することができる。
【0071】
この場合、位置情報管理システムは、1つの設置無線機からのビーコン情報を受信するだけでお客のビーコン送信機12の位置を表示することが可能となる。
【0072】
設置無線機が多い場合、全ての設置無線機からビーコン情報を受信してからビーコン送信機12の位置を算出すると、該ビーコン送信機12の位置情報を更新するまでに長時間を要してしまう。これを改善するには、設置無線機からビーコン情報を受信したときに、その設置無線機と隣接する設置無線機の情報も揃えば、その段階でビーコン送信機12の位置を算出してしまう仕組みを用いる。
【0073】
図15はビーコン受信機11が多数分布している場合にビーコン送信機12の測位を効率化する説明図である。ビーコン受信機Fの設置無線機からビーコン情報を受信したとする。ビーコン受信機Fに隣接するビーコン受信機は、図15からビーコン受信機A〜C,E,G,I〜Kであることが分かる。ビーコン受信機Fの設置無線機からのビーコン情報にID:001とID:002のビーコン送信機12の情報が含まれていた場合、図8のテーブルからビーコン受信機Fと隣接するビーコン受信機A〜C,E,G,I〜Kの設置無線機から受信したID:001とID:002の電界強度を抽出する。その電界強度を基にID:001とID:002のビーコン送信機12の位置を算出する。これにより、他の全部の設置無線機からのビーコン情報の受信を待たずに、ID:001とID:002のビーコン送信機12の位置を算出することができる。
【0074】
図16は測位システム70の機能ブロック図である。測位システム70の一例は屋内用測位システム10である。測位システム70は、屋内や地下街等、GPS電波の利用できない測位空間における現在位置測位に限定されない。GPS電波が利用できる測位空間であっても、GPS受信機を装備することなく、使用することができる。図16では、ビーコン受信機71は2つしか図示していないが、これはあくまで図示の便宜上のためであり、ビーコン受信機71を2つに限定することを意味しない。
【0075】
測位システム70は、固定局の複数のビーコン受信機71、移動局のビーコン送信機72及び管理装置73を備える。複数のビーコン受信機71は、測位空間に分布して配備される。ビーコン送信機72は、自機のID情報を含むビーコンを発信する。管理装置73は、ビーコン送信機72の現在位置を管理する。
【0076】
各ビーコン受信機71は、ビーコン受信手段77、強度測定手段78、ID抽出手段79及びビーコン情報送信手段80を備える。ビーコン受信手段77はビーコンを受信する。強度測定手段78は、受信したビーコンの強度を測定する。ID抽出手段79は、受信したビーコンからその送信元のビーコン送信機72のIDを抽出する。ビーコン情報送信手段80は、ビーコン送信機IDとそれが抽出されたビーコンの受信強度と自機IDとを対応付けたビーコン情報を管理装置73へ送信する。
【0077】
管理装置73は、ビーコン情報受信手段84、ビーコン受信機別受信強度抽出手段85及び現在位置測位手段86を備える。ビーコン情報受信手段84は、各ビーコン受信機71からビーコン情報を受信する。ビーコン受信機別受信強度抽出手段85は、ビーコン情報から同一ビーコン送信機IDのビーコンについてビーコン受信機別の受信強度を抽出する。現在位置測位手段86は、同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度の比に基づき該ビーコン送信機IDに対応付けられたビーコン送信機を測位する。
【0078】
ビーコン受信機71、ビーコン送信機72及び管理装置73の具体例はそれぞれビーコン受信機11、ビーコン送信機12及び基地局である。ビーコン送信機72は、人に携帯されることに限定されない。無人車やロボット等の他の移動体に装備されてもよい。強度測定手段78が測定するビーコンの受信強度とは、ビーコンの受信信号の強度に対応するすべての強度を意味し、屋内用測位システム10におけるビーコンの電界強度RSSIに対応する。
【0079】
現在位置測位手段86が各ビーコン送信機72におけるビーコン別受信強度の比に基づき該ビーコン送信機72の現在位置を測位する具体的な仕方は、前述の計算式(1)〜(4)に基づくものである。
【0080】
測位システム70によれば、各地点の電界強度をあらかじめ実測する手間を排除しつつ、ビーコン受信機71の配備数を少なくすることができる。さらに、ビーコン受信機71−ビーコン送信機72間の距離を算出することなく、ビーコン送信機72の現在位置を直接、測位することができるので、測位計算を簡単化することができる。
【0081】
典型的には、各ビーコン送信機72は、相互に非同期でビーコンを等時間Tだけ間欠発信し、ビーコンの電波圏が重複するビーコン送信機72同士は、ビーコンの間欠発信の周期をT以上ずらされている。典型的には、各ビーコン受信機71が発信するビーコンの周波数は相互に等しい。
【0082】
Tの具体例はビーコン受信機11におけるTtxである。ビーコン送信機72は、ビーコンの送信に関して相互に同期を取ることなく、ビーコンを送信することができるとともに、各ビーコン送信機72からのビーコン同士の干渉を十分に抑制することができる。
【0083】
典型的には、各ビーコン送信機72は、相互に等周波数でかつ等出力でビーコンを発信する。この結果、前述の計算式(1)〜(4)のように、測定した電界強度EA、EB、ED、EEに対し出力比に基づく係数を掛けて補正する手間を省略することができる。
【0084】
ビーコン送信機72の存在階を測位する場合には、例えば、複数のビーコン受信機71は屋内の各階に分布して配備され、管理装置73の現在位置測位手段86は、同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度の比に基づき該ビーコン送信機72の存在階を測位する。
【0085】
ビーコン送信機72が存在する階とは別の階に配備されたビーコン受信機71へ届くビーコンの電界強度は、床や天井等のために、ビーコン送信機72の存在階と同一階に配備されたビーコン受信機71へ届くビーコンの電界強度より著しく低下するので、典型的には、管理装置73の現在位置測位手段86は、同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度の中で最大値であるビーコンを受信したビーコン受信機71の配備階を該ビーコン送信機72の存在階とする。
【0086】
典型的には、管理装置73の現在位置測位手段86は、同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度を、同一ビーコン送信機IDに対応付けられたビーコン送信機72の存在階に基づき補正し、補正後の受信強度の比に基づき各ビーコン送信機72の水平方向の現在位置を測位する。補正後の受信強度の具体例は、前述の(3)及び(4)式におけるα・ED及びα・EEである。
【0087】
好ましくは、管理装置73の現在位置測位手段86は、或るビーコン受信機からのビーコン情報に或るビーコン送信機のビーコン情報が含まれているとき、該ビーコン送信機の現在位置を、該或るビーコン受信機とそれに隣接する全ビーコン受信機とからのビーコン情報のみに基づき測位する。この具体例は、図15を参照して説明したとおりである。
【0088】
図17は測位システム制御方法100のフローチャートである。測位システム制御方法100は測位システム70に適用される。S101〜S103はビーコン送信機72において実行される。S101,S102の順番は、逆にすることができる。すなわち、S102をS101の前に実行してもよい。
【0089】
S101では、各ビーコン受信機71において受信したビーコンの強度を測定する。S102では、各ビーコン受信機71において受信したビーコンからその送信元のビーコン送信機72のIDを抽出する。S103では、ビーコン送信機IDとそれが抽出されたビーコンの受信強度と自機IDとを対応付けたビーコン情報を管理装置73へ送信する。
【0090】
S104〜S106は管理装置73において実行される。S104では、ビーコン情報から同一ビーコン送信機IDのビーコンについてビーコン受信機別の受信強度を抽出する。S105では、ビーコン情報から同一ビーコン送信機IDのビーコンについてビーコン受信機別の受信強度を抽出する。S106では、同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度の比に基づき該ビーコン送信機IDに対応付けられたビーコン送信機の現在位置を測位する。
【0091】
S101〜S103の処理は、ビーコン受信機71の強度測定手段78〜ビーコン情報送信手段80の機能にそれぞれ対応している。また、S104〜S106の処理は、管理装置73のビーコン情報受信手段84〜現在位置測位手段86の機能にそれぞれ対応している。したがって、S101〜S106の処理についての具体的態様として、それらに対応する手段の機能について述べた具体的態様を適用可能である。
【0092】
本明細書は様々な範囲及びレベルの発明を開示している。それら発明は、本明細書で説明した様々な技術的範囲及び具体的レベルの各装置及び各方法だけでなく、拡張ないし一般化の範囲で、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を拡張ないし一般化の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【符号の説明】
【0093】
70:測位システム、71:ビーコン受信機、72:ビーコン送信機、73:管理装置、78:強度測定手段、79:ID抽出手段、80:ビーコン情報送信手段、84:ビーコン情報受信手段、85:ビーコン受信機別受信強度抽出手段、86:現在位置測位手段、100:測位システム制御方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位空間に分布して配備される固定局の複数のビーコン受信機、
自機のID情報を含むビーコンを発信する移動局のビーコン送信機、及び
前記ビーコン送信機の現在位置を管理する管理装置、
を備え、
各ビーコン受信機は、
受信したビーコンの強度を測定する強度測定手段、
受信したビーコンからその送信元のビーコン送信機のIDを抽出するID抽出手段、及び
ビーコン送信機IDとそれが抽出されたビーコンの受信強度と自機IDとを対応付けたビーコン情報を前記管理装置へ送信するビーコン情報送信手段、
を備え、
前記管理装置は、
各ビーコン受信機から前記ビーコン情報を受信するビーコン情報受信手段、
前記ビーコン情報から同一ビーコン送信機IDのビーコンについてビーコン受信機別の受信強度を抽出するビーコン受信機別受信強度抽出手段、及び
同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度の比に基づき該ビーコン送信機IDに対応付けられたビーコン送信機の現在位置を測位する現在位置測位手段、
を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項2】
各ビーコン送信機は、相互に非同期でビーコンを等時間Tだけ間欠発信し、
ビーコンの電波圏が重複するビーコン送信機同士は、ビーコンの間欠発信の周期をT以上ずらされていることを特徴とする請求項1記載の測位システム。
【請求項3】
各ビーコン送信機は、相互に等周波数でかつ等出力でビーコンを発信することを特徴とする請求項1又は2記載の測位システム。
【請求項4】
前記複数のビーコン受信機は屋内の各階に分布して配備され、
前記管理装置の前記現在位置測位手段は、同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度の比に基づき該ビーコン送信機の存在階を測位することを特徴とする請求項1〜3のいずか1項に記載の測位システム。
【請求項5】
前記管理装置の前記現在位置測位手段は、同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度の中で最大値であるビーコンを受信したビーコン受信機の配備階を該ビーコン送信機の存在階とすることを特徴とする請求項4記載の測位システム。
【請求項6】
前記管理装置の前記現在位置測位手段は、同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度を、該ビーコン送信機IDに対応付けられたビーコン送信機の存在階に基づき補正し、補正後の受信強度の比に基づき各ビーコン送信機の水平方向の現在位置を測位することを特徴とする請求項4又は5記載の測位システム。
【請求項7】
前記管理装置の前記現在位置測位手段は、或るビーコン受信機からのビーコン情報に或るビーコン送信機のビーコン情報が含まれているとき、該ビーコン送信機の現在位置を、該ビーコン受信機とそれに隣接する全ビーコン受信機とからのビーコン情報のみに基づき測位することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の測位システム。
【請求項8】
測位空間における各固定場所に分布して配備された複数のビーコン受信機、
ユーザに携帯されビーコンを発信する1以上のビーコン送信機、及び
前記ビーコン送信機の現在位置を管理する管理装置、
を備える測位システムの制御方法であって、
各ビーコン受信機において受信したビーコンの強度を測定する強度測定ステップ、
各ビーコン受信機において受信したビーコンからその送信元のビーコン送信機のIDを抽出するID抽出ステップ、
ビーコン送信機IDとそれが抽出されたビーコンの受信強度と自機IDとを対応付けたビーコン情報を前記管理装置へ送信するビーコン情報送信ステップ、
前記管理装置において各ビーコン受信機から前記ビーコン情報を受信するビーコン情報受信ステップ、
前記管理装置において前記ビーコン情報から同一ビーコン送信機IDのビーコンについてビーコン受信機別の受信強度を抽出するビーコン受信機別受信強度抽出手段、及び
前記管理装置において同一ビーコン送信機IDのビーコンについてのビーコン受信機別受信強度の比に基づき該ビーコン送信機IDに対応付けられたビーコン送信機の現在位置を測位する現在位置測位ステップ、
を備えることを特徴とする測位システム制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−17685(P2011−17685A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164277(P2009−164277)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】