説明

測位装置及び測位情報受信方法

【課題】衛星からの測位情報を継続して受信することができない状況下でも、短時間での位置計測を可能とする。
【解決手段】測位装置を、常時動作する時計部1と、位置計測時にだけ動作するGPS部2とにより構成する。測位情報の受信タイミングを生成する高精度の第1のカウンター8をGPS部2に設け、GPS部2の動作の有無に関係なく連続して動作する高精度の第2のカウンター14を時計部1に設ける。位置計測の終了時に、第2のカウンター14を第1のカウンター8に同期させておき、所定時間内における再計測時には、第1のカウンター8を第2のカウンター14に同期させる。再計測を開始した時点における測位情報の受信タイミングと送信タイミングとのズレが少なく、再計測時における測位衛星の捕捉作業が短時間に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS衛星等の測位衛星から送信される電波を受信し自己位置を検出する測位装置及び測位情報受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPSによる位置計測に用いる測位装置では、複数のGPS衛星から送られるエフェメリス、アルマナック等の航法信号すなわち測位情報を受信することにより、自己位置が計測可能となる。なお、エフェメリスは送信元の衛星自身の軌道情報や時計の補正情報などのデータであり、アルマナックは全ての衛星の概略軌道に関するデータである。ここで、各測位衛星からの送信データを受信するためには、受信時に、各衛星からのデータの送信タイミングに受信タイミングを同期させる、つまり衛星を捕捉する必要があるが、前記送信タイミングは、GPS衛星や測位装置が常に移動していることから常に変化している。これに対し、例えばGPSを用いたカーナビゲーション装置では毎秒位置を更新しているため、前記タイミングの変化にある程度までは追随して同期できるようになっている。つまり車速のMAXと考えられる数100Km/h程度の速度での移動までは、一旦送信タイミングに同期することにより、次回はお互いの移動による最大のズレ分を補正することによって常に同期がとれるようになっている。言い換えると、一旦位置計測を開始したら継続して計測動作を行うようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、カーナビゲーション装置のように、毎秒位置を更新している、つまり毎秒衛星を捕捉することができる測位装置と異なり、携帯性を持たせた例えば腕時計型の測位装置を考えると、使用時には地形、障害物等の影響を受けやすく、測位情報を受信することができない状況下にある場合が多い。したがって、そのような測位装置では、位置計測を行う毎に航法信号の送信タイミングに受信タイミングを同期させ航法信号を受信する(衛星を捕捉する)必要が生じ、位置計測に時間がかかるという問題がある。また、位置計測には、比較的大きな電力を要するため、電源となる電池の寿命が短くなる原因ともなる。
【0004】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、測位情報を継続して受信することができない状況下でも、短時間での位置計測が可能となる測位装置及び測位情報受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために請求項1の測位装置にあっては、複数の測位衛星から送られてくる測位情報を受信する受信手段と、この受信手段により受信された複数の測位情報に基づき自己位置を計測する計測手段と、時刻をカウントするとともに、前記受信手段の受信動作終了時の前記測位情報の受信タイミングとの同期を確保するタイミング保持カウンターと、前記計測手段により前回自己位置が計測された時点から所定時間内における、前記受信手段の受信動作開始時の前記測位情報の受信タイミングを、前記タイミング保持カウンターのタイミングに同期させる制御手段とを備えたものとした。
【0006】
かかる構成においては、計測手段による自己位置の計測が一度行われると、それ以後の所定時間内における再計測時には、タイミング保持カウンターに保持されていた前回の自己位置の計測時における受信タイミングを起点として複数の測位衛星から送られてくる測位情報の受信動作が行われる。したがって、再計測を開始した時点における測位情報の受信タイミングと送信タイミングとのズレが少ないため、再計測時における測位衛星の捕捉作業が短時間に行える。
【0007】
また、請求項2の測位装置にあっては、前記タイミング保持カウンターが、前記受信部の動作の有無に関係なく連続して動作する一方、前記受信部が前記受信タイミングを生成する受信用カウンターを有し、前記制御手段は、前記受信部の動作終了時には前記タイミング保持カウンターを前記受信用カウンターと同期させ、かつ前記受信部の動作開始時には前記受信用カウンターを前記タイミング保持カウンターと同期させるものとした。かかる構成においては、自己位置を計測しない間には、受信部の動作を停止させておくことができ、受信部の動作時間を必要最小限とすることができる。
【0008】
また、請求項3の測位装置にあっては、前記受信手段により前記複数の測位情報の受信が行えなかった時間が決められた時間以上となることに伴い、前記受信部の動作を停止させるとともに、それ以後所定の時間間隔で前記受信部を動作させる制御手段を備えたものとした。かかる構成においても、受信部の動作時間を必要最小限とすることができる。
【0009】
また、請求項4の測位装置にあっては、前記受信手段により受信された測位情報を記憶する記憶手段を備え、前記計測手段は、前記受信手段により受信された測位情報の数が、自己位置の計測に必要な数に一定数以下足りないとき、前記記憶手段に記憶されている他の測位衛星の測位情報を加えた複数の測位情報に基づき自己位置を計測する計測手段とを備えたものとした。かかる構成においては、測位情報の受信環境が悪い条件下における位置計測の確率が上がる。
【0010】
また、請求項5の測位装置にあっては、前記計測手段による計測動作に伴い前記受信手段が前記測位情報の受信を試行するとき、その試行回数が所定回数となる毎に前記測位情報の受信タイミングを補正する補正手段を備えたものとした。かかる構成において、再計測時には、その時々の受信状態により適した測位情報の効率的な受信試行が行える。
【0011】
また、請求項6の測位装置にあっては、前記計測手段による計測動作に伴い前記受信手段が前記測位情報の受信を試行するとき、前記測位情報の受信タイミングを補正する補正手段と、この補正手段により補正される各試行時の受信タイミングの補正量を前回の計測動作終了時からの経過時間の長さに応じて設定する設定手段とを備えたものとした。かかる構成においても、再計測時には、その時々の受信状態により適した測位情報の効率的な受信試行が行える。
【0012】
また、請求項7の測位装置にあっては、前記計測手段による計測動作に伴い前記受信手段が前記測位情報の受信を試行するとき、前記測位情報の受信タイミングを補正する補正手段と、この補正手段により補正される受信タイミングの補正幅を前回の計測動作終了時からの経過時間の長さに応じて設定する設定手段とを備えたものとした。かかる構成においても、再計測時には、その時々の受信状態により適した測位情報の効率的な受信試行が行える。
【0013】
また、請求項8の測位装置にあっては、前記計測手段による計測動作に伴い前記受信手段が前記測位情報の受信を試行するとき、その試行回数を、前回の計測動作終了時からの経過時間の長さに応じて制御する試行回数制御手段を備えたものとした。かかる構成においても、再計測時には、その時々の受信状態により適した測位情報の効率的な受信試行が行える。
【0014】
また、請求項9の方法にあっては、複数の測位衛星から送られてくる測位情報に基づき自己位置を計測する測位装置における前記測位情報の受信方法において、前記測位情報の受信動作を終了した時点で前記測位情報の受信タイミングを保存しておき、それ以後の時点から所定時間内における次回の受信動作時には、保存しておいた受信タイミングを用いた受信動作を行うようにした。かかる方法においても、自己位置の計測が一度行われた以後の所定時間内における再計測を開始した時点では、測位情報の受信タイミングと送信タイミングとのズレが少ないため、再計測時における測位衛星の捕捉作業が短時間に行える。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明においては、自己位置の計測が一度行われた後の所定時間内における再計測時には、測位衛星の捕捉作業が短時間に行えるようにした。よって、測位情報を継続して受信することができない状況下でも、短時間での位置計測が可能となる。同時に、測位衛星の捕捉作業が短時間に行えることにより、装置の省電力化及び小型化を図ることが可能となる。
【0016】
また、本発明の測位装置においては、受信部の動作時間を必要最小限とすることができるようにしたことから、より一層の装置の省電力化及び小型化を図ることができる。また、測位情報の受信環境が悪い条件下における位置計測の確率が上がるようにしたことから、使い勝手が向上する。また、再計測時には、その時々の受信状態により適した測位情報の効率的な受信試行が行えるようにしたことから、測位衛星の捕捉作業がさらに短縮され、より短時間での位置計測が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の一実施の形態を図にしたがって説明する。図1は、本発明かかる測位装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態において測位装置は、電池を電源として作動するとともに携帯性が確保された腕時計型のものを想定している。
【0018】
すなわち、この測位装置は、時計部1とGPS部2とから構成されている。GPS部2は、本発明の受信手段を構成する部分であって、GPS衛星からのL1帯の電波を受信するGPSアンテナやRF、A/D等で構成された受信部3と、CPU4、そのプログラムが格納されたROM5、主として受信した衛星データ等を保存するRAM6、及び受信電波の解読を行うデコーダー等からなる信号処理部7とを有している。また、信号処理部7には、衛星データの受信時の受信タイミングを生成するとともに、原子時計並の精度で時刻のカウントが可能な発信器を有するバイナリーカウンターである第1のカウンター8、及びその値を記憶する第1のタイミングレジスタ9が接続されている。なお、第1のカウンター8は、そのカウント値が1秒周期でオール”0”となるものであり、また、第1のタイミングレジスタ9には、位置計測時に一度に捕捉するGPS衛星の数に応じて、8つのカウント値が記憶できるようになっている。
【0019】
一方、前記時計部1は、測位装置全体を制御するCPU10、その制御プログラムが格納されたROM11、主としてCPU10のワーキグメモリとして用いられるRAM12からなる制御部13を備えている。なお、RAM12には、前回位置計測動作が終了された時点の時刻等が記憶される。また、制御部13には、第2のカウンター14、第2のタイミングレジスタ15、測位装置の操作を行うための複数のスイッチが接続されたスイッチ入力部16、小型のLCD等からなるとともに、位置計測時の計測結果や電波の受信状況を表示する表示部17が接続されている。第2のカウンター14、第2のタイミングレジスタ15は、前記GPS部2の第1のカウンター8、第1のタイミングレジスタ9と対をなしており、それらにより本発明のタイミング保持カウンターが構成されている。また、第2のタイミングレジスタ15には、前述した8つのカウント値の他にも、通常の時刻を示すカウント値が記憶されるようになっている。そして、前記時計部1には使用者の操作と関係なく常に所定の電力が供給されるとともに、前記GPS部2は、位置計測動作が行われる時を除いて電源が切断される構成となっている。
【0020】
次に、以上の構成からなる測位装置の動作を図2及び図3に示すフローチャートにより説明する。すなわち、測位装置は、スイッチ入力部16からの計測要求信号により位置計測動作を開始し、先ず、時計部1の制御部13がGPS部2を起動する(ステップSA1)。引き続き、前回位置計測動作が終了された時点からその時点までの経過時間(中断時間)が、所定の許容時間(本実施の形態では30分〜1時間程度を想定している。)よりも長いか否かを判断し(ステップSA2)、それより長い場合には、GPS部2の第1のカウンター8をリセットした後(ステップSA3)、新規計測処理を開始する(ステップSA4)。これに伴い、GPS部2においては、受信部3がGPS衛星からの電波を受信、復調しデジタル信号に変換するとともに、その信号を信号処理部7へ送り、信号処理部7が、送られた信号から各GPS衛星の信号の分類と、絶対時刻(GPS時刻)等のデータを取得するためのデータの先頭位置の検出を行うといった、通常の各GPS衛星毎のデータ解析作業つまり衛星の捕捉を行う。そして、衛星の捕捉ができたら前記データの先頭位置と、そのデータの送信元の衛星と、その衛星の絶対位置とに基づき自己位置を計算する位置計測を行う。
【0021】
ここで、衛星の捕捉を全くできず、又は位置計測に必要な数、例えば3以上の衛星数が捕捉できず、位置計測に失敗したときには(ステップSA5でNO)、失敗回数すなわち試行回数が所定回数Nとなるまでは(ステップSA6でYES)、GPS部2の第1のカウンター8のカウント値(第1のタイミングレジスタ9の値)を補正した後、計測を試行する(ステップSA7)。つまり受信タイミングを補正しつつ受信動作を繰り返し行う。そして、この間に位置計測の失敗回数が所定回数Nとなった場合には(ステップSA6でNO)、時計部1の表示部17に計測不能を示すメッセージを表示する等のエラー処理を行い(ステップSA8)、GPS部2への電源を切断した後(ステップSA12)、計測を終了する。
【0022】
また、上記の計測試行中に位置計測ができると(ステップSA5でYES)、その時点における前記第1のカウンター8のカウントタイミングに、時計部1の第2のカウンター14のカウントタイミングを同期させる受信タイミングの保存処理を行う(ステップSA9〜SA11)。具体的には、第1のカウンター8のカウントが全て”0”となったタイミングで、GPS部2が信号処理部7の端子Aから”H”を出力する。時計部1側では、制御部13の端子Aの入力が”L”から”H”に変わったことに応じて第2のカウンター14のカウントUPを開始する。そして、かかる受信タイミングの保存処理が終わると、計測結果を表示部17に表示するとともにGPS部2への電源を切断し(ステップSA12)、計測を終了する。
【0023】
一方、以上の処理が行われた後に再び位置計測動作を開始してGPS部2を起動したとき(ステップSA1)、前回位置計測動作が終了した時点からの経過時間が所定の許容時間以内であった場合には(ステップSA2でNO)、GPS部2における第1のカウンター8のカウントタイミングを、その時点における時計部1の第2のカウンター14のカウントタイミングに同期させる受信タイミングの呼び出し処理を行う(ステップSA13〜SA15)。具体的には、時計部1の制御部13が、第2のタイミングレジスタ15のカウントデータを送信する旨のコマンドを端子TDからGPS部2の信号処理部7へ出力した後、カウントデータを信号処理部7へ転送する。これに応じてGPS部2では、信号処理部7が、送られたカウントデータを第1のタイミングレジスタ9に書き込む。次に、カウントを続けている第2のカウンター14のカウントが全て”0”となった瞬間に、制御部13が端子Bの出力を”L”から”H”にする。すると信号処理部7は、端子Bの入力が”L”から”H”に変わったことに応じて即座に第1のカウンター8を全て”0”にリセットする。これに伴い、第1のカウンター8が全て”0”の状態からカウントUPを再開する。これによって、GPS部2においてはGPS衛星の捕捉作業に要する受信タイミングが、前回位置計測を終了した時点と同様となる。
【0024】
しかる後、制御部13が、位置計測を開始する旨のコマンドを端子TDからGPS部2の信号処理部7へ出力することにより、再計測処理を開始し(ステップSA16)、これ以後は、前述したステップSA5〜SA12の処理を行う。すなわち、GPS部2においては、前回位置計測を終了した時点と同様の受信タイミングを起点として、衛星の捕捉作業が試行されることとなる。しかも、このとき前回位置計測を終了した時点からの経過時間は前述した許容時間内であるため、自己の移動距離も短く、実際のGPS衛星におけるデータの送信タイミングと、GPS部2における受信タイミングとのズレ幅は小さいことが予想され、かつ電波の受信環境の変化も少ない場合が多いことが予想される。したがって、ほとんど場合、再計測処理における衛星の捕捉作業を、前述した前回の新規計測処理に比べ短時間で行うことができる。
【0025】
つまり、本実施の形態においては、前回の位置計測時からの経過時間が、所定の許容時間内であれば、位置計測を短時間で行うことが可能となる。しかも、位置計測時に主として衛星の捕捉作業に要する電力を節約することができることから、電池の寿命を延ばすと同時に電池つまりは装置の小型化が可能となる。なお、以上の説明においては、使用者の操作に応じて位置計測を行う場合を想定したが、例えば、前述した許容時間よりも短いある時間毎に自動的に位置計測を行う場合においても、上記と同様の理由により同様の効果を得ることができる。
【0026】
(第2の実施の形態)
次に、本発明にかかる第2の実施の形態について説明する。この実施の形態は、図1に示した測位装置が、前記GPS部2のRAM6に記憶される受信した衛星データが、次回の位置計測時まで保存されるか、又はそれと同一のデータが時計部1のRAM12にも記憶される構成を有するとともに、前述した計測処理中に、図3に示した動作に代えて図4に示した動作を行わせるものである。
【0027】
すなわち、前述した再計測処理において受信動作を繰り返し行う間に、位置計測の失敗回数が所定回数Nとなったら(ステップSA6でNO)、引き続き、その時点で2つ以上の衛星が捕捉できているか否かを判断する(ステップSA21)。ここで、2つ以上の衛星が捕捉できていなければ、第1の実施の形態と同様にステップSA8へ進みエラー処理を行う。また、2つ以上の衛星が捕捉できていた場合には(ステップSA21でYES)、引き続き、前回計測時からの経過時間が短いか否かを、事前に決めておいた所定の判断基準(但し、前述した再計測処理を行う許容時間よりも短い時間である。)に従い判断し(ステップSA22)、それが長ければステップSA8へ進みエラー処理を行う。一方、前回計測時からの経過時間が短ければ、前回の位置計測時に捕捉できるとともに、RAM6(又はRAM12)に記憶されている衛星の受信データを、実際に捕捉できた衛星の受信データに加えることにより、必要な衛星数の捕捉ができたと仮定し、擬似的な位置計測処理を行う(ステップSA23)。しかる後、前述したステップSA9〜SA12の処理を行い、位置計測処理を終了する。
【0028】
つまり、本実施の形態において、測位装置が専ら使用者が歩行している場合に使用されるものとすれば、山や林のように障害物が存在する状況下で位置計測が行われることが多いと予想され、また短時間での移動距離も短いことから、前回計測時からの経過時間が短時間である場合には、推定ではあるが、さほど大きな誤差が含まれていない位置を算出することができる。
【0029】
(第3の実施の形態)
次に、本発明にかかる第3の実施の形態について説明する。この実施の形態は第1の実施の形態と同様の構成を備えた測位装置において、位置計測時に、図2で既説した動作に続いて図5に示した動作を行うものである。
【0030】
すなわち、図5に示すように、前述した動作(図2参照)によって再計測処理を開始すると、先ず前回計測時からの経過時間が短いか否かを、事前に決めておいた所定の判断基準(但し前述した再計測処理を行う許容時間よりも短い時間である。)に従い判断する(ステップSB1)。そして、長い場合にはカウンター補正モードとして通常モードを設定し(ステップSB2)、短い場合にはカウンター補正モードとして繰り返しモードを設定し(ステップSB3)、設定した補正モードに従ってGPS部2の第1のカウンター8のカウント値を補正しつつ、つまり受信タイミングを補正しつつ受信動作を繰り返し行う(ステップSB4、BS5、SB6でYES)。
【0031】
ここで、前述した通常モードと繰り返しモードとの違いについて説明する。通常モードは、第1及び第2の実施の形態で示したものと同様に、逐次受信タイミングを変化させる補正である。また、繰り返しモードは、受信試行回数が所定回数となる毎に受信タイミングを変化させる補正である。したがって、前回計測時との時間差が僅かであっても、つまり受信タイミングのズレが僅かであっても、受信環境の影響によって受信に失敗する場合、例えば林の中のよう木々に遮られていたような場合にあっては木々の僅かな動きで受信が可能となるが、そうした場合、前記繰り返しモードが設定されることによって、同一の受信タイミングで複数回受信が試行されることにより短時間で受信ができることとなる。
【0032】
なお、前記受信動作を繰り返し行う間に、第1のカウンター7のカウント値の補正回数(受信試行回数)が所定回数Nを越えたとき(ステップSB6でNO)、つまり所定範囲の全域で受信タイミングを変えても計測ができなかったときには、エラー処理を行った後(ステップSB7)、ステップSB11へ進む。また、前記受信動作を繰り返し行う間に計測ができれば(ステップSB5でYES)、第1の実施の形態で説明したステップSA9〜SA12と同様の処理を行い(ステップSB8〜SB11)、計測処理を終了する。
【0033】
(その他の実施の形態)
また、前述した第3の実施の形態と異なり、1回の計測動作時において、前述した受信試行回数を図6に示したように制御させてもよい。すなわち、前回計測時からの経過時間が短い場合には(ステップSC1でYES)、試行回数を多くし(ステップSC2)、経過時間が長い場合には(ステップSC1でNO)、試行回数を少なくする(ステップSC3)。かかる制御を行う場合には、以下のような利点がある。すなわち、前回計測時からの経過時間がある程度長い(但し、前述した再計測処理を行う許容時間よりも短い時間である。)場合には、例えば使用者が車等で移動することにより、前回計測時から大きく移動している可能性が大きいが、そうした場合には、前記制御により再計測処理を速やかに終了して、直ちに通常の新規計測処理を行うこととなる。したがって、その時々の受信状態により適した効率的な受信試行が行えるため、計測時間がさらに短時間で行えることとなる。なお、以上の制御においては、前記受信試行回数を前回計測時からの経過時間に比例して増減させた方が、その時々の状態により一層適した効率的な受信試行が行える。
【0034】
また、これとは別に、1回の計測動作時において、第1のカウンター8のカウント値の補正を行うとき(受信タイミングのズレ幅を変えるとき)、一度の補正量(ズレ幅)を図7に示したように制御させてもよい。すなわち、前回計測時からの経過時間が短い場合には(ステップSD1でYES)、各々の補正量(ズレ幅)を小さくし、経過時間が長い場合には(ステップSD1でNO)、各々の補正量(ズレ幅)を大きくする(ステップSD3)。かかる制御を行う場合には、以下のような利点がある。すなわち、経過時間が短いときには、前回計測時からの移動距離が小さい場合が多く、その場合には、補正量を小さくすることによって、単位時間当たりの計測試行回数を増やすことができるため、計測に成功する確率が高くなる。逆に、経過時間が長いときには、前回計測時からの移動距離が大きい場合が多く、その場合には、補正量を大きくすることにより、結果として試行回数が少なくなり、直ちに通常の新規計測処理に移行することとなる。したがって、その時々の受信状態により適した効率的な受信試行が行えるため、計測時間がさらに短時間で行えることとなる。なお、以上の制御においては、前述した一度の補正量(ズレ幅)を前回計測時からの経過時間に比例して増減させた方が、その時々の状態により一層適した効率的な受信試行が行える。
【0035】
また、1回の計測動作時において、第1のカウンター8のカウント値の補正を行うとき(受信タイミングのズレ幅を変えるとき)、その全体の補正幅を、図8に示したように制御させてもよい。すなわち、前回計測時からの経過時間が短い場合には(ステップSE1でYES)、補正幅を狭くし(ステップSE2)、前回計測時からの経過時間が長い場合には(ステップSE1でNO)、広くする(ステップSE3)。かかる制御を行えば、前回計測時からの移動距離が小さい場合、つまり受信タイミングのズレ幅が小さいと予想される場合には補正幅を狭めることにより、より速く受信タイミングを送信タイミングに同期させることができる。したがって、その時々の受信状態により適した効率的な受信試行が行えるため、計測時間がさらに短時間で行えることとなる。なお、以上の制御においては、前述した全体の補正幅を前回計測時からの経過時間に比例して増減させた方が、その時々の状態により一層適した効率的な受信試行が行える。
【0036】
さらに、フローチャートには示さないが、前述した再計測処理及び新規計測処理においても位置計測ができない時間が予め決められた時間以上となった場合には、時計部1のCPU9によって、一旦前記GPS部2への電源を切断する制御を行わせるとともに、それ以後は、一定時間毎(例えば1分毎)に自動的に、前述した計測処理を行わせる構成としても良い。その場合においては、測位装置の使用者が、例えば山陰やトンネルのようにGPS衛星からの電波が全く受信できないような環境にいる間に電池が無駄に消費されることを防止することができる。しかも、受信環境が良好な場所に移動した際には、前述した再計測処理によって位置計測を短時間で行うことが可能となり、便利である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す測位装置のブロック図である。
【図2】同実施の形態の位置計測処理にかかる動作を示すフローチャートである。
【図3】図2に続くフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す図3に対応するフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示す図3に対応するフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施の形態にかかる試行回数制御処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施の形態にかかるカウンターの補正量制御処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の他の実施の形態にかかるカウンターの補正幅制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1 時計部
2 GPS部
3 受信部
7 信号処理部
8 第1のカウンター
9 第1のタイミングレジスタ
12 RAM
13 制御部
14 第2のカウンター
15 第2のタイミングレジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測位衛星から送られてくる測位情報を受信する受信手段と、
この受信手段により受信された複数の測位情報に基づき自己位置を計測する計測手段と、
時刻をカウントするとともに、前記受信手段の受信動作終了時の前記測位情報の受信タイミングとの同期を確保するタイミング保持カウンターと、
前記計測手段により前回自己位置が計測された時点から所定時間内における、前記受信手段の受信動作開始時の前記測位情報の受信タイミングを、前記タイミング保持カウンターのタイミングに同期させる制御手段と
を備えたことを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記タイミング保持カウンターが、前記受信部の動作の有無に関係なく連続して動作する一方、前記受信部が前記受信タイミングを生成する受信用カウンターを有し、前記制御手段は、前記受信部の動作終了時には前記タイミング保持カウンターを前記受信用カウンターと同期させ、かつ前記受信部の動作開始時には前記受信用カウンターを前記タイミング保持カウンターと同期させることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記受信手段により前記複数の測位情報の受信が行えなかった時間が決められた時間以上となることに伴い、前記受信部の動作を停止させるとともに、それ以後所定の時間間隔で前記受信部を動作させる制御手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の測位装置。
【請求項4】
前記受信手段により受信された測位情報を記憶する記憶手段を備え、前記計測手段は、前記受信手段により受信された測位情報の数が、自己位置の計測に必要な数に一定数以下足りないとき、前記記憶手段に記憶されている他の測位衛星の測位情報を加えた複数の測位情報に基づき自己位置を計測する計測手段と
を備えたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の測位装置。
【請求項5】
前記計測手段による計測動作に伴い前記受信手段が前記測位情報の受信を試行するとき、その試行回数が所定回数となる毎に前記測位情報の受信タイミングを補正する補正手段を備えたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の測位装置。
【請求項6】
前記計測手段による計測動作に伴い前記受信手段が前記測位情報の受信を試行するとき、前記測位情報の受信タイミングを補正する補正手段と、
この補正手段により補正される各試行時の受信タイミングの補正量を前回の計測動作終了時からの経過時間の長さに応じて設定する設定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の測位装置。
【請求項7】
前記計測手段による計測動作に伴い前記受信手段が前記測位情報の受信を試行するとき、前記測位情報の受信タイミングを補正する補正手段と、
この補正手段により補正される受信タイミングの補正幅を前回の計測動作終了時からの経過時間の長さに応じて設定する設定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の測位装置。
【請求項8】
前記計測手段による計測動作に伴い前記受信手段が前記測位情報の受信を試行するとき、その試行回数を、前回の計測動作終了時からの経過時間の長さに応じて制御する試行回数制御手段を備えたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の測位装置。
【請求項9】
複数の測位衛星から送られてくる測位情報に基づき自己位置を計測する測位装置における前記測位情報の受信方法において、
前記測位情報の受信動作を終了した時点で前記測位情報の受信タイミングを保存しておき、それ以後の時点から所定時間内における次回の受信動作時には、保存しておいた受信タイミングを用いた受信動作を行うことを特徴とする測位情報受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−111852(P2008−111852A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335440(P2007−335440)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【分割の表示】特願平10−377445の分割
【原出願日】平成10年12月28日(1998.12.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】