説明

潤滑油添加剤組成物およびその製造方法

【課題】エンジン油に使用される改良された分散添加剤組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】(I)環状カーボネート、線状モノカーボネート、線状ポリカーボネート、芳香族ポリカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸無水物または芳香族ポリカルボン酸エステルから選ばれた後処理剤、および(II)共重合体を少なくとも一種のエーテル化合物と、少なくとも一種のモノカルボン酸又はそのエステルまたはジカルボン酸、その無水物又はエステルと反応することができる少なくとも一種の脂肪族化合物とを反応させることを含む方法により製造された油溶性潤滑油添加剤組成物を反応させることを含む後処理済高分子分散剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン油に使用される改良された分散添加剤組成物に関するものであり、またその製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油組成物の配合に、窒素を含有する分散剤および/または清浄剤を用いることが知られている。公知の多数の清浄分散剤化合物は、アルケニルコハク酸又は無水物をアミンまたはポリアミンと反応させて、選択した反応条件で決まるアルケニルコハク酸イミドまたはアルケニルスクシンアミド酸を生成させることにより製造される。潤滑剤製造業者が直面する一つの問題は、内燃機関における粒子状物質の分散性にある。充分な粒子状物質分散性を有することができなければ、フィルタ詰りやスラッジ堆積、油増粘が生じる可能性がある。
【0003】
特許文献1には、主要量の潤滑粘度の油、および少量の酸化防止・分散添加剤と分散添加剤の相乗作用的組合せであって、(i)ポリイソブチレンコハク酸イミド(PIBSAD)と(ii)エチレン・プロピレンコハク酸イミド(LEPSAD)とからなる組合せを含有する潤滑油組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、C3−C10アルファ−モノオレフィンと任意に、ホルムアルデヒド化合物およびアミノ−芳香族ポリアミン化合物と反応させた非共役ジエン又はトリエンとの、酸化エチレン共重合体又は三元共重合体を含有する添加剤組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、少なくとも一種のモノエチレン不飽和C4−C6ジカルボン酸又はその無水物と、オリゴマーと一種のモノエチレン不飽和化合物とのラジカル共重合により得られた共重合体が開示されている。
【0006】
特許文献4には、潤滑油、および少なくとも一種のモノエチレン不飽和C4−C6ジカルボン酸又はその無水物と、オリゴマーと一種のモノエチレン不飽和化合物とのラジカル共重合により得られた共重合体を、更にアミンと反応させた共重合体を含有する潤滑油組成物が開示されている。
【0007】
特許文献5には、分散剤の三元共重合体、およびその三元共重合体から誘導されたポリコハク酸イミド組成物が開示されている。三元共重合体は、不飽和酸性試薬と1−オレフィンと1,1−二置換オレフィンとを、ラジカル開始剤の存在下でラジカル共重合させることにより得られる。
【0008】
特許文献6には、(i)ラジカル開始剤で共重合させたオレフィンと不飽和カルボン酸アシル化剤単量体、および(ii)ポリオレフィンとアシル化剤を、出発ポリオレフィンの少なくとも75モル%が炭化水素置換コハク酸アシル化剤に変換されるような条件で、反応させて製造した非環式炭化水素置換コハク酸アシル化剤と、ポリアミンとから製造したコハク酸イミド、の反応生成物である潤滑油添加剤組成物が開示されている。
【0009】
特許文献7には、ポリアルケンと不飽和酸性試薬を共重合させた後、如何なる未反応ポリアルケンも高温、強酸の存在下で不飽和酸性試薬と反応させることが開示されている。
【0010】
特許文献8及び9には、官能基が共重合体にグラフトしている誘導体化したエチレン・アルファオレフィン共重合体の混合物が開示されている。官能基化した共重合体を、ポリオール、アミノアルコール等を含むアミン、アルコールのうちの少なくとも一種と混合して、多機能の粘度指数向上添加剤成分にする。
【0011】
特許文献10には、不飽和酸性反応体と、高分子量オレフィン全体のうちの少なくとも20%がアルキルビニリデン異性体からなる高分子量オレフィンとの新規な共重合体が開示されていて、その共重合体は、潤滑油や燃料に分散剤として有用であり、またポリコハク酸イミド類および潤滑油や燃料に有用な別の後処理添加剤を製造するのに使用することもできる。
【0012】
特許文献11には、コハク酸イミド組成物が開示されている。
【0013】
特許文献7には、ポリコハク酸イミド類の製造方法が開示されている。
【0014】
特許文献12には、コハク酸イミドが開示されている。
【0015】
特許文献13には、曇りの無い後処理コハク酸イミドが開示されている。
【0016】
特許文献14には、複合清浄・腐食防止剤を含む新規な潤滑油組成物が開示されている。
【0017】
特許文献15には、アミンと、モノカルボン酸およびアルキレン又はアリーレンジカルボン酸などの高分子量カルボン酸との反応から得られた窒素含有組成物が開示されている。
【0018】
特許文献16には、高度の立体障害があるアシル化アルキレンポリアミン類を含む炭化水素媒体に分散したテレフタル酸が開示されている。
【0019】
特許文献17には、新規な分散添加剤組成物が開示されている。
【0020】
特許文献18には、油溶性分散剤が開示されている。
【0021】
特許文献19には、機械部分を潤滑にする方法が開示されている。
【0022】
特許文献20には、潤滑油添加剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第6117825号明細書、リュウ、外
【特許文献2】米国特許第5139688号明細書、ネイルスニク
【特許文献3】米国特許第6512055号明細書、ギュンター、外
【特許文献4】米国特許第6284716号明細書、ギュンター、外
【特許文献5】米国特許第5792729号明細書、ハリソン、外
【特許文献6】米国特許第5670462号明細書、バー、外
【特許文献7】米国特許第6451920号明細書、ハリソン、外
【特許文献8】米国特許第5427702号明細書、チャン、外
【特許文献9】米国特許第5744429号明細書、チャン、外
【特許文献10】米国特許第5112507号明細書、ハリソン、外
【特許文献11】米国特許第6358892号明細書、ハリソン、外
【特許文献12】米国特許第5849676号明細書、ハリソン
【特許文献13】米国特許第号明細書、ハリソン
【特許文献14】米国特許第3287271号明細書、フランク、外
【特許文献15】米国特許第3374174号明細書、ルスール
【特許文献16】米国特許第3692681号明細書、リストン
【特許文献17】米国特許第4747964号明細書、デュランド、外
【特許文献18】米国特許第6255258号明細書、クラーク、外
【特許文献19】欧州特許出願公開第0438848A1号明細書、スカターグッド、外
【特許文献20】日本国特許第51130408号明細書、ミチオ、外
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、エンジン油に使用される改良分散添加剤組成物に関するものであり、またその製造方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
最も広義の態様では、本発明は、(I)環状カーボネート、線状モノカーボネート、線状ポリカーボネート、芳香族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸無水物または芳香族ポリカルボン酸エステルから選ばれた後処理剤と、(II)下記の物質を反応させることを含む方法により製造された潤滑油添加剤組成物とを、反応させることを含む方法により製造された後処理済高分子分散剤に関する:
(A)下記の共重合体のうちの少なくとも一種:
(i)下記からなる成分のラジカル共重合により得られた共重合体:
(a)少なくとも一種のモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステル、またはC4−C28ジカルボン酸、その無水物もしくはエステル、
(b)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、および
(c)(a)及び(b)の単量体と共重合可能で、かつ下記からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノオレフィン化合物:
(1)アルキル基がヒドロキシル、アミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシで置換されているかまたは未置換で、かつ炭素原子約1乃至約40個を含む、アルキルビニルエーテルおよびアリルアルキルエーテル、
(2)アルキルアミン及び炭素原子数約3乃至約10のモノエチレン不飽和モノもしくはジカルボン酸のN−アルキルアミド、ただし、アルキル置換基は炭素原子約1乃至約40個を含む、
(3)炭素原子数約1乃至約8のカルボン酸のN−ビニルカルボキサミド、
(4)N−ビニル置換窒素含有複素環化合物、および
(5)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至約360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、ただし、用いるオレフィンは(i)(b)で用いるオレフィンと同じではない;
(ii)化合物(i)(a)と化合物(i)(b)をラジカル開始剤の存在下で反応させることにより得られた共重合体;
(iii)(a)化合物(i)(a)を化合物(i)(b)もしくは(i)(c)と、共重合体(i)もしくは共重合体(ii)または両者の存在下で非ラジカル的触媒反応で反応させることにより、あるいは(b)共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)又は(i)(c)との非ラジカル的触媒反応による生成物と接触させることにより得られた共重合体;
(B)少なくとも二種のモノカルボン酸又はそのエステル、または少なくとも二種のジカルボン酸、その無水物又はエステル、またはそれらの混合物と反応することができる少なくとも一種のエーテル化合物;
(C)少なくとも2個の官能基を持ち、官能基の一方は少なくとも一種のモノカルボン酸もしくはそのエステルまたはジカルボン酸、その無水物もしくはエステルと反応することができ、他方の官能基は少なくとも一種の後処理剤と反応することができる、少なくとも一種の脂肪族化合物。
【0026】
一つの態様では、本発明は、主要量の潤滑粘度の油、および少量の後処理済高分子分散剤であって、(I)環状カーボネート、線状モノカーボネート、線状ポリカーボネート、芳香族ポリカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸無水物または芳香族ポリカルボン酸エステルから選ばれた後処理剤と、(II)下記の物質を反応させることを含む方法により製造された潤滑油添加剤組成物とを、反応させることを含む方法により製造された後処理済高分子分散剤、を含む潤滑油組成物に関する:
(A)下記の共重合体のうちの少なくとも一種:
(i)下記からなる成分のラジカル共重合により得られた共重合体:
(a)少なくとも一種のモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステル、またはC4−C28ジカルボン酸、その無水物もしくはエステル、
(b)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、および
(c)(a)及び(b)の単量体と共重合可能で、かつ下記からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノオレフィン化合物:
(1)アルキル基がヒドロキシル、アミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシで置換されているかまたは未置換で、かつ炭素原子約1乃至約40個を含む、アルキルビニルエーテルおよびアリルアルキルエーテル、
(2)アルキルアミン及び炭素原子数約3乃至約10のモノエチレン不飽和モノ又はジカルボン酸のN−アルキルアミド、ただし、アルキル置換基は炭素原子約1乃至約40個を含む、
(3)炭素原子数約1乃至約8のカルボン酸のN−ビニルカルボキサミド、
(4)N−ビニル置換窒素含有複素環化合物、および
(5)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至約360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、ただし、用いるオレフィンは(i)(b)で用いるオレフィンと同じではない;
(ii)化合物(i)(a)と化合物(i)(b)をラジカル開始剤の存在下で反応させることにより得られた共重合体;
(iii)(a)化合物(i)(a)を化合物(i)(b)又は(i)(c)と、共重合体(i)または共重合体(ii)または両者の存在下で非ラジカル的触媒反応で反応させることにより、あるいは(b)共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)又は(i)(c)との非ラジカル的触媒反応による生成物と接触させることにより、得られた共重合体;
(B)少なくとも二種のモノカルボン酸もしくはそのエステル、または少なくとも二種のジカルボン酸、その無水物もしくはエステル、またはそれらの混合物と反応することができる少なくとも一種のエーテル化合物;
(C)少なくとも2個の官能基を持ち、官能基の一方は少なくとも一種のモノカルボン酸又はそのエステルまたはジカルボン酸、その無水物又はエステルと反応することができ、他方の官能基は少なくとも一種の後処理剤と反応することができる、少なくとも一種の脂肪族化合物。
【0027】
一つの態様では、本発明は、(I)環状カーボネート、線状モノカーボネート、線状ポリカーボネート、芳香族ポリカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸無水物または芳香族ポリカルボン酸エステルから選ばれた後処理剤と、(II)下記の物質を反応させることを含む潤滑油添加剤組成物とを、反応させることを含む後処理済高分子分散剤の製造方法に関する:
(A)下記の共重合体のうちの少なくとも一種:
(i)下記からなる成分のラジカル共重合により得られた共重合体:
(a)少なくとも一種のモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステル、またはC4−C28ジカルボン酸、その無水物もしくはエステル、
(b)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、および
(c)(a)及び(b)の単量体と共重合可能で、かつ下記からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノオレフィン化合物:
(1)アルキル基がヒドロキシル、アミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシで置換されているかまたは未置換で、かつ炭素原子約1乃至約40個を含む、アルキルビニルエーテルおよびアリルアルキルエーテル、
(2)アルキルアミン及び炭素原子数約3乃至約10のモノエチレン不飽和モノ又はジカルボン酸のN−アルキルアミド、ただし、アルキル置換基は炭素原子約1乃至約40個を含む、
(3)炭素原子数約1乃至約8のカルボン酸のN−ビニルカルボキサミド、
(4)N−ビニル置換窒素含有複素環化合物、および
(5)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至約360個を含み、かつビニル、ビニリデンもしくはアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、ただし、用いるオレフィンは(i)(b)で用いるオレフィンと同じではない;
(ii)化合物(i)(a)と化合物(i)(b)をラジカル開始剤の存在下で反応させることにより得られた共重合体;
(iii)(a)化合物(i)(a)を化合物(i)(b)又は(i)(c)と、共重合体(i)または共重合体(ii)または両者の存在下で非ラジカル的触媒反応で反応させることにより、あるいは(b)共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)又は(i)(c)との非ラジカル的触媒反応による生成物と接触させることにより得られた共重合体;
(B)少なくとも二種のモノカルボン酸又はそのエステル、または少なくとも二種のジカルボン酸、その無水物又はエステル、またはそれらの混合物と反応することができる少なくとも一種のエーテル化合物;
(C)少なくとも2個の官能基を持ち、官能基の一方は少なくとも一種のモノカルボン酸又はそのエステルまたはジカルボン酸、その無水物又はエステルと反応することができ、他方の官能基は少なくとも一種の後処理剤と反応することができる、少なくとも一種の脂肪族化合物。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、内燃機関において分散剤として有用である多機能の潤滑油添加剤に関する。分散剤は、後処理したものであり、後処理していない分散剤よりも改善された分散性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明には様々な変更や代替形態が可能であるが、本明細書では本発明の特定の態様について詳細に説明する。しかしながら、特定の態様についての本明細書の説明は、開示する特定の形態に本発明を限定しようとするものではなく、むしろ反対に本発明は、添付した特許請求の範囲で規定する本発明の真意および範囲内に含まれる全ての変更、等価及び代替形態を包含するものである。
【0030】
[定義]
説明に付随して使用する以下の用語を、次のように定義する。
【0031】
「PIB」は、ポリイソブテンの略語である。
【0032】
「PIBSA」は、ポリイソブテニル又はポリイソブチルコハク酸無水物の略語である。
【0033】
「ポリPIBSA」は、本発明の範囲内で用いられる共重合体の部類を意味し、ポリイソブテンとモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸又はそのエステルまたはC4−C28ジカルボン酸、その無水物又はエステルとの共重合体であって、カルボキシル基、好ましくはコハク酸基とポリイソブチル基を持つ共重合体である。好ましいポリPIBSAは、ポリイソブテンと無水マレイン酸の共重合体であり、下記一般式を有する。
【0034】
【化1】

【0035】
式中、nは1以上であり;R1、R2、R3およびR4は、水素、メチルおよび炭素原子数少なくとも約8、好ましくは炭素原子数が少なくとも約30、より好ましくは炭素原子数が少なくとも約50のポリイソブチルから選ばれる、ただし、R1とR2両方ともが水素で、R3とR4のうちの一方がメチルで他方がポリイソブチルであるか、あるいはR3とR4が水素で、R1とR2のうちの一方がメチルで他方がポリイソブチルである。ポリPIBSA共重合体は、交互共重合体でも、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体でもよい。
【0036】
「コハク酸基」は、下記式を有する基を意味する。
【0037】
【化2】

【0038】
式中、WおよびZは、独立に−OH、−Cl、−O−アルキルからなる群より選ばれるか、あるいは一緒には−O−であって無水コハク酸基を形成している。「−O−アルキル」は、炭素原子数約1乃至約40、好ましくは炭素原子数約1乃至約8のアルコキシが含まれることを意味する。
【0039】
「重合度」は、重合体鎖における平均の反復構造単位数を意味する。
【0040】
「三元共重合体」は、少なくとも3種類の単量体のラジカル共重合から誘導された重合体を意味する。
【0041】
「1−オレフィン」は、1位に二重結合を持つ一不飽和オレフィンを意味する。アルファ−オレフィンとも呼ばれ、次のような構造を有する。

CH2=CHR

ただし、Rはオレフィン分子の残部である。
【0042】
「1,1−二置換オレフィン」は、次のような構造を有する二置換オレフィンを意味し、ビニリデンオレフィンとも呼ばれる。

CH2=CR56

ただし、R5およびR6は、同じでも異なっていてもよく、オレフィン分子の残部を構成する。好ましくは、R5とR6のどちらかがメチル基であって、他方はメチル基ではない。
【0043】
「コハク酸イミド」には、多数のアミド、イミド等、および無水コハク酸とアミンの反応により生成するものも含まれると当該分野では理解されている。しかしながら、主な生成物はコハク酸イミドであり、この用語は一般に、アルケニル又はアルキル置換コハク酸又は無水物とアミンとの反応の生成物を意味すると受け取られている。アルケニル又はアルキルコハク酸イミド類は多数の参考文献に開示され、当該分野でもよく知られている。コハク酸イミド類のある基本的な種類および「コハク酸イミド」なる技術用語に含まれる関連物質については、米国特許第2992708号、第3018291号、第3024237号、第3100673号、第3219666号、第3172892号及び第3272746号の各明細書に教示されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0044】
「ポリコハク酸イミド」は、コハク酸基含有共重合体とアミンとの反応生成物を意味する。
【0045】
「アルケニル又はアルキルコハク酸誘導体」は、下記式を有する構造を意味する。
【0046】
【化3】

【0047】
式中、R7は、水素、メチルおよび炭素原子数が少なくとも約8、好ましくは炭素原子数が少なくとも約30、より好ましくは炭素原子数少なくとも約50のポリイソブチルから選ばれ;LおよびMは、独立に−OH、−Cl、−O−アルキルからなる群より選ばれるか、あるいは一緒には−O−であってアルケニル又はアルキルコハク酸無水物基を形成している。
【0048】
「アルキルビニリデン」又は「アルキルビニリデン異性体」は、次のようなビニリデン構造を有するオレフィンを意味する。
【0049】
【化4】

【0050】
ただし、R8はアルキルまたは置換アルキルである。R8は、一般に炭素原子数が少なくとも約5、好ましくは炭素原子数が少なくとも約30、より好ましくは炭素原子数が少なくとも約50であり、そしてR9は、炭素原子数が約1乃至約6の低級アルキルである。
【0051】
「潤滑油に可溶性」とは、物質が潤滑油や燃料のような脂肪族及び芳香族炭化水素に、基本的にあらゆる比率で溶解する能力を意味する。
【0052】
「高分子量オレフィン類」は、それらの反応生成物を潤滑油に可溶性とするのに充分な分子量と鎖長を持つオレフィン類(残存不飽和を持つ重合オレフィン類を含む)を意味する。一般には、炭素数が約30又はそれ以上のオレフィン類で充分である。
【0053】
「高分子量ポリアルキル」は、製造された充分な分子量の生成物が潤滑油に可溶性であるぐらい充分な分子量を持つポリアルキル基を意味する。これら高分子量ポリアルキル基は、一般に炭素原子数が少なくとも約30、好ましくは炭素原子数が少なくとも約50である。これら高分子量ポリアルキル基は、高分子量ポリオレフィン類から誘導することができる。
【0054】
「アミノ」は、−NR1011(ただし、R10およびR11は独立に水素または炭化水素基である)を意味する。
【0055】
「アルキル」は、直鎖及び分枝鎖両方のアルキル基を意味する。
【0056】
「低級アルキル」は、炭素原子数が約1乃至約6のアルキル基を意味し、第一級、第二級及び第三級アルキル基が含まれる。代表的な低級アルキル基としては例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、およびn−ヘキシル等が挙げられる。
【0057】
「ポリアルキル」は、モノ−オレフィン類、特には1−モノ−オレフィン類、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレン等の重合体または共重合体であるポリオレフィン類から、一般に誘導されたアルキル基を意味する。好ましくは、用いられるモノ−オレフィンは炭素原子数が約2乃至約24であり、より好ましくは炭素原子数が約3乃至約12である。より好ましいモノ−オレフィン類としては、プロピレン、ブチレン、特にはイソブチレン、1−オクテン、および1−デセンが挙げられる。そのようなモノ−オレフィン類から製造された好ましいポリオレフィン類としては、ポリプロピレン、ポリブテン、特にはポリイソブテンが挙げられる。
【0058】
[潤滑油添加剤組成物]
本発明の一態様は、下記の物質を反応させることを含む方法により製造された油溶性の潤滑油添加剤組成物である:
(A)下記の共重合体のうちの少なくとも一種:
(i)下記からなる成分のラジカル共重合により得られた共重合体:
(a)少なくとも一種のモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステル、またはC4−C28ジカルボン酸、その無水物もしくはエステル、
(b)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、および
(c)(a)及び(b)の単量体と共重合可能で、かつ下記からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノオレフィン化合物:
(1)アルキル基がヒドロキシル、アミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシで置換されているかまたは未置換で、かつ炭素原子1乃至40個を含む、アルキルビニルエーテルおよびアリルアルキルエーテル、
(2)アルキルアミン及び炭素原子数が3乃至10のモノエチレン不飽和モノ又はジカルボン酸のN−アルキルアミド、ただし、アルキル置換基は炭素原子1乃至40個を含む、
(3)炭素原子数1乃至8のカルボン酸のN−ビニルカルボキサミド、
(4)N−ビニル置換窒素含有複素環化合物、および
(5)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至約360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、ただし、用いるオレフィンは(i)(b)で用いるオレフィンと同じではない;
(ii)化合物(i)(a)と化合物(i)(b)をラジカル開始剤の存在下で反応させることにより得られた共重合体;
(iii)(a)化合物(i)(a)を化合物(i)(b)又は(i)(c)と、共重合体(i)または共重合体(ii)または両者の存在下で非ラジカル触媒反応で反応させることにより、あるいは(b)共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)又は(i)(c)との非ラジカル触媒反応による生成物と接触させることにより、得られた共重合体;
(B)少なくとも二種のモノカルボン酸もしくはそのエステル、またはジカルボン酸、その無水物もしくはエステル、またはそれらの混合物と反応することができる少なくとも一種のエーテル化合物;
(C)少なくとも二種のモノカルボン酸もしくはそのエステル、またはジカルボン酸、その無水物もしくはエステルと反応することができる少なくとも一種の脂肪族化合物。
【0059】
共重合体(i)
(a)モノエチレン不飽和モノカルボン酸又はそのエステルまたはジカルボン酸、その無水物又はエステル
本発明では、共重合体(i)の共重合体を製造するのに、少なくとも一種のモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステル、またはC4−C28ジカルボン酸、その無水物もしくはエステルが使用される。少なくとも一種のモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステルまたはC4−C28ジカルボン酸、その無水物もしくはエステルは、ジカルボン酸、その無水物又はエステルであることが好ましい。
【0060】
好ましいジカルボン酸、その無水物もしくはエステルの一般式は、次の通りである。
【0061】
【化5】

【0062】
式中、XとX’のうちの少なくとも一方が、反応してアルコール類をエステル化したり、アンモニアまたはアミン類とアミド類またはアミン塩類を形成したり、反応性金属または塩基的に反応する金属化合物と金属塩類を形成したり、あるいはアシル化剤として機能することができる基である限り、XおよびX’は同じであっても異なっていてもよい。一般にXおよび/またはX’は、−OH、−O−炭化水素、OM+(ただし、M+は1当量の金属、アンモニウムまたはアミンカチオンを表す)、−NH2、−Cl、−Brであり、また一緒にはXおよびX’は、無水物を形成するように−O−であってもよい。好ましくは、XおよびX’は両カルボン酸官能基がアシル化反応に携わることができるようなものである。無水マレイン酸は好ましい反応体である。他の好適な反応体としては、電子欠乏オレフィン類、例えばモノフェニルマレイン酸無水物;モノメチル、ジメチル、モノクロロ、モノブロモ、モノフルオロ、ジクロロ及びジフルオロマレイン酸無水物;N−フェニルマレイミドおよび他の置換マレイミド類、イソマレイミド類;フマル酸、マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸水素アルキル類、フマル酸及びマレイン酸ジアルキル類、フマロニリック酸類およびマレアニック酸類;並びにマレオニトリルおよびフマロニトリルを挙げることができる。
【0063】
(a)に適した単量体は、炭素原子数約4乃至28のモノエチレン不飽和ジカルボン酸類もしくは無水物であり、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、メチレンマロン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物およびメチレンマロン酸無水物、およびこれら相互の混合物からなる群より選ばれ、その中でも無水マレイン酸が好ましい。
【0064】
他の好適な単量体は、モノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸類であり、アクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、アリル酢酸およびビニル酢酸からなる群より選ばれ、その中でもアクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。
【0065】
好適な単量体の別の群は、モノエチレン不飽和C3−C10モノ又はC4−C10ジカルボン酸のC1−C40アルキルエステル類、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、および炭素原子数約14乃至28の工業用アルコール混合物のエステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸オクタデシル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸モノデシル、マレイン酸ジドデシル、マレイン酸モノオクタデシル、およびマレイン酸ジオクタデシルがある。
【0066】
(b)1−オレフィンまたはポリオレフィン
本発明では、炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、もしくは炭素原子約4乃至360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィンが用いられる。
【0067】
共重合体(i)を製造するのに適した1−オレフィン類は、炭素原子約2乃至約40個、好ましくは炭素原子約6乃至約30個を含み、例えばデセン、ドデセン、オクタデセン、およびC20−C241−オレフィンとC24−C281−オレフィンの混合物があり、より好ましくは炭素原子約10乃至約20個を含む。アルファオレフィンとしても知られている1−オレフィン類は、数平均分子量が100−4500又はそれ以上の範囲にあることが好ましく、より好ましくは分子量が200−2000の範囲にある。例えば、アルファオレフィン類はパラフィンろうの熱分解から得られる。一般に、これらオレフィン類の長さは炭素原子数約5乃至約20の範囲にある。別のアルファオレフィン源はエチレン成長法にあり、炭素数が偶数のオレフィン類を与える。別のオレフィン源は、アルファオレフィン類を公知のジーグラー触媒など適切な触媒で二量化することによる。内部オレフィン類は、アルファオレフィン類をシリカなど好適な触媒で異性化することにより容易に得られる。C6−C30の1−オレフィン類を使用することが好ましい、というのは、これらの物質は市販されていて容易に入手でき、また分子尾の長さと三元共重合体の非極性溶媒への溶解度との望ましい釣合いをもたらすからである。オレフィンの混合物も用いることができる。
【0068】
共重合体(i)を製造するのに適したポリオレフィン類は、炭素原子約4乃至約360個を含むポリオレフィン類である。これら重合体の数平均分子量(Mn)は、約56乃至約5000g/molである。これらの例としては、エチレン、イソブテンを含むブテンのオリゴマー類、およびペンテン、ヘキセン、オクテン及びデセンの分枝異性体のオリゴマー類(ただし、オリゴマーの共重合可能な末端基はビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で存在する)、炭素原子数約9乃至約200のオリゴプロペン類及びオリゴプロペン混合物があり、特には、例えば独国特許出願公開第2702604号明細書(それに対応した米国特許第4152499号明細書)に従って得られるオリゴイソブテン類が好ましい。上記オリゴマーの混合物も適していて、例えばエチレンと他のアルファオレフィンの混合物がある。他の好適なポリオレフィン類は米国特許第6030930号明細書に記載されていて、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。オリゴマー類の分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーにより従来のようにして決定することができる。
【0069】
不飽和モノ又はジカルボン酸反応体と反応する共重合可能なポリオレフィンは、C2−C8モノ−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンおよびペンテンを主要量で含む重合体である。これら重合体は、ポリイソブチレンのような単独重合体であっても、また二種以上のそのようなオレフィンの共重合体、例えばエチレンとプロピレン、ブチレンおよびイソブチレン等との共重合体であってもよい。
【0070】
ポリオレフィン重合体は通常、炭素原子約4乃至約360個を含むが、好ましくは炭素原子8乃至200個、より好ましくは炭素原子約12乃至約175個を含む。
【0071】
本発明の共重合体を製造するのに使用される高分子量オレフィン類は、一般に分子量の異なる別個の分子の混合物であるので、得られた個々の共重合体分子は一般に、分子量の異なる高分子量ポリアルキル基の混合物を含んでいる。また、重合度の異なる共重合体分子の混合物も生成する。
【0072】
本発明の共重合体の平均重合度は1以上であり、好ましくは約1.1乃至約20、より好ましくは約1.5乃至約10である。
【0073】
(c)モノ−オレフィン化合物
本発明には、(a)及び(b)の単量体と共重合可能で、かつ下記からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノオレフィン化合物が用いられる。
【0074】
(1)アルキルビニルエーテルおよびアリルアルキルエーテル(ただし、アルキル基は、ヒドロキシル、アミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシで置換されているかもしくは未置換であり、かつ炭素原子約1乃至約40個を含む)
好適な単量体としては次のものが挙げられる:アルキル基が炭素原子数約1乃至約40であるビニル及びアリルアルキルエーテル類も適していて、アルキル基は更に、ヒドロキシル、アミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシなどの置換基を持っていてもよい。例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−(ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、2−(ジ−n−ブチルアミノ)エチルビニルエーテル、およびそれらに対応したアリルエーテル類がある。
【0075】
(2)アルキルアミン及び炭素原子数約3乃至約10のモノエチレン不飽和モノもしくはジカルボン酸のN−アルキルアミド(ただし、アルキル置換基は炭素原子約1乃至約40個を含む)
単量体の別の群は、C1−C40アルキルアミン及びモノエチレン不飽和C3−C10のモノもしくはジカルボン酸のC1−C40N−アルキルアミド類からなり、例えばアクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジブチルアミノエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N,N’−ジブチルアクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、およびN−オクタデシルメタクリルアミドがある。
【0076】
(3)炭素原子数が約1乃至約8のカルボン酸のN−ビニルカルボキサミド
単量体の別の群としては次のものが挙げられる:炭素原子数が約1乃至約8のカルボン酸のN−ビニルカルボキサミド類、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、およびN−ビニルプロピオンアミド。
【0077】
(4)N−ビニルで置換された窒素含有複素環化合物
単量体の別の群としては次のものが挙げられる:窒素含有複素環のN−ビニル化合物、例えばN−ビニルイミダゾール、N−ビニルメチルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、およびN−ビニルカプロラクタム。
【0078】
(5)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至約360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物(ただし、用いられるオレフィンは(i)(b)で用いられたオレフィンと同じではない)
好適な1−オレフィン類は、炭素原子約2乃至40個、好ましくは炭素原子約8乃至約30個を含み、例えばデセン、ドデセン、オクタデセン、およびC20−C241−オレフィンとC24−C281−オレフィンの混合物がある。アルファオレフィンとしても知られている1−オレフィン類は、数平均分子量が約28乃至約560の範囲にあることが好ましく、より好ましくは分子量が約112乃至約420の範囲にある。例えば、パラフィンろうの熱分解から得られたアルファオレフィン類を用いることができる。一般に、これらオレフィン類の長さは炭素原子数約5乃至約20の範囲にある。別のアルファオレフィン源はエチレン生長法にあり、炭素数が偶数のオレフィン類を与える。別のオレフィン源は、アルファオレフィン類を公知のジーグラー触媒など適切な触媒で二量化することによる。内部オレフィン類は、アルファオレフィン類をシリカなど好適な触媒で異性化することにより容易に得られる。C10−C30の1−オレフィン類を使用することが好ましい、というのは、これらの物質は市販されていて容易に入手でき、また分子尾の長さと三元共重合体の非極性溶媒への溶解度との望ましい釣合いをもたらすからである。オレフィンの混合物も適している。
【0079】
(共重合体(i)の製造)
共重合体反応体(i)は、当該分野で説明されている公知の方法により製造することができ、これらに限定されるものではないが、次の特許文献(それらの内容も参照内容として本明細書の記載とする)に開示されているような方法が挙げられる:米国特許第5792729号(ハリソン、外)、米国特許第6284716号(ギュンター、外)及び米国特許第6512055号(ギュンター、外)の各明細書。
【0080】
本発明の一態様では共重合体反応体は、ポリアルケニルコハク酸無水物三元共重合体である。これら三元共重合体は、前述した単量体(a)乃至(c)のうちの少なくとも一種から構成される。
【0081】
一般に本発明の三元共重合体は、(a)乃至(c)の各群から少なくとも一種の単量体を含んでいる。一般にこれらの成分が反応して三元共重合体が生成し、該共重合体は、ランダム三元共重合体でも交互三元共重合体でもブロック三元共重合体でもよく、公知の共重合体製造方法により製造することができる。さらに、単量体(a)と(b)および単量体(a)と(c)からなる共重合体が、少ないパーセントで生成することもある。成分(a)のモノカルボン酸又はそのエステルまたはジカルボン酸もしくはその無水物又はエステルは、前に開示したものの中から選ばれるが、好ましくは無水マレイン酸である。成分(b)の1−オレフィンまたはポリオレフィンは、好ましくはポリブテンである。成分(c)のモノオレフィンは、好ましくは炭素原子約12乃至18個を含む線状アルファオレフィンである。
【0082】
三元共重合体の重合度は広範囲にわたって変えることができる。好ましくは、重合度は約2乃至約10である。一般に、三元共重合体の重合度は重合温度が上がるにつれて減少する。
【0083】
三元共重合は好適なラジカル開始剤の存在下で行う。好適な重合開始剤の例としては、ペルオキシド化合物、例えばtert−ブチルペルピバレート、tert−ブチルペルネオセカノエート、tert−ブチルペルエチルヘキサノエート、tert−ブチルペルイソブチレート、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジ−tert−アミルペルオキシド、ジアセチルペルオキシジカロネート、およびジシクロヘキシルジカロネート、もしくはアゾ化合物、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリルがある。開始剤は単独でも、あるいは相互の混合物としても使用することができる。レドックス補助開始剤も存在していてよい。好ましくは開始剤は、ジ(t−ブチル)ペルオキシド、ジクミルペルオキシドなどのペルオキシド型開始剤、またはイソブチルニトリル型開始剤などのアゾ型開始剤である。ポリ1−オレフィン共重合体の製造方法は、例えば米国特許第3560455号及び第4240916号の各明細書に記載されていて、それらの内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。三元共重合体を製造するのにそれらの方法を用いることができよう。両特許文献には各種の開始剤も記載されている。
【0084】
反応に第二のオレフィンを用いる場合には、共重合体(i)は以下に記載する共重合体(ii)と同じ方法で製造することができる。
【0085】
共重合体(ii)
本発明の別の態様では、共重合体反応体は、(a)少なくとも一種のモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステルまたはC4−C28ジカルボン酸、その無水物もしくはエステルと、(b)プロペンまたは炭素原子数約4乃至約10の分枝1−オレフィンのうちの少なくとも3個のオレフィン分子からなり、数平均分子量Mnが約112乃至約5000で、かつ共重合可能な末端基をビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で持つ少なくとも一種の共重合可能な重合体とを、ラジカル開始剤の存在下で反応させることにより得られた共重合体である。
【0086】
従って、好ましい本発明の共重合体は、例えば次のようなアルキルビニリデン構造中に、不飽和が高い割合で、少なくとも約20%ある「反応性」高分子量オレフィンと、不飽和酸性反応体とをラジカル開始剤の存在下で反応させることにより製造される。
【0087】
【化6】

【0088】
ただし、R8およびR9は、得られた分子を潤滑油や燃料中で安定とするのに充分な鎖長を持つアルキルまたは置換アルキルであり、よってR8は、一般に炭素原子数が少なくとも約30、好ましくは炭素原子数少なくとも約50であり、そしてR9は、炭素原子数が約1乃至約6の低級アルキルである。
【0089】
一般に共重合体生成物は、交互にポリアルキレン基とコハク酸基を持ち、平均重合度が1以上である。
【0090】
好ましい本発明の共重合体(ii)は、下記一般式を有する。
【0091】
【化7】

【0092】
式中、W’およびZ’は、独立に−OH、−O−アルキルからなる群より選ばれるか、あるいは共同して−O−であって無水コハク酸基を形成し、nは1以上であり、そしてR1、R2、R3およびR4は、水素、炭素原子数が約1乃至約40のアルキルおよび高分子量ポリアルキルから選ばれる、ただし、R1とR2両方ともが水素で、R3とR4のうちの一方が炭素原子数が約1乃至約6の低級アルキルで他方が高分子量ポリアルキルであるか、あるいはR3とR4が水素で、R1とR2のうちの一方が炭素原子数が約1乃至6の低級アルキルで他方が高分子量ポリアルキルである。
【0093】
共重合体(ii)は、交互共重合体でもブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。
【0094】
好ましい態様では、反応体として無水マレイン酸を使用すると、反応により主として下記式を持つ共重合体が生成する。
【0095】
【化8】

【0096】
式中、nは、約1乃至約100であり、好ましくは約2乃至約20、より好ましくは約2乃至約10であり、そしてR1、R2、R3およびR4は、水素、炭素原子数が約1乃至約6の低級アルキルおよび高分子量ポリアルキルから選ばれる、ただし、R1とR2両方ともが水素で、R3とR4のうちの一方が炭素原子数が約1乃至約6の低級アルキルで他方が高分子量ポリアルキルであるか、あるいはR3とR4が水素で、R1とR2のうちの一方が低級アルキルで他方が高分子量ポリアルキルである。
【0097】
高分子量ポリアルキル基は、炭素原子数が少なくとも約30であることが好ましい(より好ましくは、炭素原子数少なくとも約50である)。好ましい高分子量ポリアルキル基としてはポリイソブチル基が挙げられる。好ましいポリイソブチル基としては、数平均分子量が約500乃至約5000のもの、より好ましくは約900乃至約2500のものが挙げられる。好ましい低級アルキル基としてはメチルおよびエチルが挙げられ、特に好ましい低級アルキル基としてはメチルが挙げられる。
【0098】
オレフィン重合体の特に好ましい部類はポリブテン類からなり、イソブテンの重合により製造される。これらポリブテン類は、当該分野の技術者によく知られた容易に入手できる市販物質である。その開示は例えば米国特許第4152499号及び第4605808号の各明細書に見られ、それらの内容も好適なポリブテンの開示に関して参照内容として本明細書の記載とする。
【0099】
三元共重合体に高分子量で油溶性の尾を付与するのに、1,1−二置換オレフィン類を使用することが好ましい。1,1−二置換オレフィンの数平均Mnは約500乃至約5000であることが好ましい。特に有用な一種の1,1−二置換オレフィンは、メチルビニリデンポリイソブチレンなどの1,1−二置換ポリイソブチレンである。
【0100】
共重合可能な重合体は、高分子量オレフィンから誘導された高分子量ポリアルキル基を含むことが好ましい。本発明の共重合体の製造に使用される高分子量オレフィン類は、得られた組成物が鉱油や燃料等に可溶性で混合性であるように充分に長い鎖長を有し、そして高分子量オレフィンのアルキルビニリデン異性体が全オレフィン組成物の少なくとも約20%を占めている。好ましくは、アルキルビニリデン異性体は全オレフィン組成物の少なくとも50%を占め、より好ましくは少なくとも70%を占める。
【0101】
そのような高分子量オレフィン類は一般に、分子量の異なる分子の混合物であり、鎖上の炭素原子6個当り分枝が少なくとも1つ、好ましくは鎖上の炭素原子4個当り分枝が少なくとも1つあってよく、特に好ましいのは鎖上の炭素原子2個当り分枝が約1つあることである。これら分枝鎖オレフィン類は、炭素原子数が約3乃至約6のオレフィンの重合により、好ましくは炭素原子数が約3乃至約4のオレフィン、より好ましくはプロピレンまたはイソブチレンの重合により製造されたポリアルケン類からなることが都合が良い。用いられる付加重合可能なオレフィン類は普通は1−オレフィン類である。分枝は炭素原子数が約1乃至約4であってよく、通常は炭素原子数が約1乃至約2であり、好ましくはメチルである。
【0102】
好ましいアルキルビニリデン異性体は、メチル又はエチルビニリデン異性体からなり、より好ましくはメチルビニリデン異性体からなる。
【0103】
本発明の共重合体を製造するのに使用される特に好ましい高分子量オレフィン類は、より反応性の高いメチルビニリデン異性体を少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%含むポリイソブテン類である。好適なポリイソブテン類としては、BF3触媒を用いて製造されたものが挙げられる。メチルビニリデン異性体が全組成物のうちの高いパーセントを占めるそのようなポリイソブテン類の製造については、米国特許第4152499号及び第4605808号の各明細書に記載されている。
【0104】
(共重合体(ii)の製造)
上述のように、本発明の共重合体(ii)は、オレフィンと不飽和酸性反応体をラジカル開始剤の存在下で反応させることにより製造される。共重合体(ii)の製造方法については米国特許第5112507号明細書(ハリソン)に記載されていて、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0105】
反応は、約−30℃乃至約210℃、好ましくは約40℃乃至約160℃の温度で行うことができる。重合度は温度に反比例する。よって、好ましい高分子量共重合体を得るには低い反応温度を用いることが有利である。
【0106】
反応は無溶媒で行うことができる、すなわち、高分子量オレフィンと酸性反応体とラジカル開始剤を適正な比率で一緒にしたのち反応温度で撹拌する。
【0107】
あるいは、溶媒中で反応を行ってもよい。好適な溶媒としては、反応体とラジカル開始剤が可溶性であるようなものが挙げられ、アセトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トルエン、ジオキサン、クロロベンゼンまたはキシレン等を挙げることができる。反応が終了した後、揮発物をストリッピングして除去してもよい。溶媒を用いる場合には、溶媒は反応体と生成する生成物に不活性であることが好ましく、一般には効率的な混合を確実にするのに充分な量で使用する。
【0108】
あるいは、希釈剤がラジカル重合を妨害する成分、例えば硫黄化合物や酸化防止剤等を含まない限り、鉱油などの希釈剤中で反応を行ってもよい。
【0109】
一般に、共重合は任意のラジカル開始剤によって開始することができる。そのような開始剤は当該分野でよく知られている。ただし、用いる反応温度がラジカル開始剤の選択に影響を与えることがある。
【0110】
好ましいラジカル開始剤は、ペルオキシド型重合開始剤およびアゾ型重合開始剤である。所望により、放射線も反応を開始するのに使用することができる。
【0111】
ペルオキシド型ラジカル開始剤は有機物でも無機物でもよく、有機物は、一般式:R12OOR13(式中、R12は任意の有機基であり、そしてR13は水素および任意の有機基からなる群より選ばれる)を有する。R12とR13は両方とも有機基であってもよく、好ましくは炭化水素基、アリール基およびアシル基であり、所望によりハロゲン等のような置換基を持つ。好ましいペルオキシド類としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、およびジ−tert−アミルペルオキシドを挙げることができる。
【0112】
他の好適なペルオキシド類の例としては、限定的なものではないが、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、他の第三級ブチルペルオキシド類、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、第三級ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、アセチルヒドロペルオキシド、ジエチルペルオキシカーボネート、および第三級ブチルペルベンゾエート等を挙げることができる。
【0113】
アゾ型化合物も、アルファ,アルファ’−アゾビスイソブチロニトリルで代表されるが、よく知られたラジカル促進物質である。これらアゾ化合物は、分子中に−N=N−基が存在し、その残部が有機基で満たされている化合物と定義することができ、有機基のうちの少なくとも一つは第三級炭素に結合していることが好ましい。他の好適なアゾ化合物としては、これらに限定されるものではないが、p−ブロモベンゼンジアゾニウムフルオロボレート、p−トリルジアゾアミノベンゼン、p−ブロモベンゼンジアゾニウムヒドロキシド、アゾメタン、およびフェニルジアゾニウムハライド類を挙げることができる。好適なアゾ型化合物の一覧表は、米国特許第2551813号明細書(ポール・ピンクニー、1951年5月8日発行)に見られる。
【0114】
放射線を除けば、用いるべき開始剤の量は勿論、選んだ特定の開始剤、使用する高分子オレフィンおよび反応条件に大いに依存する。開始剤の通常の濃度は、酸性反応体のモル当り開始剤0.001:1から0.2:1モルの間にあり、好ましい量は0.005:1から0.10:1の間にある。
【0115】
重合温度は、開始剤を分解して所望のラジカルを生じさせるほど充分に高くなければならない。例えば、開始剤としてベンゾイルペルオキシドを使用するとき、反応温度は約75℃から約90℃の間にあってよく、好ましくは約80℃から約85℃の間にあるが、それより高い温度も低い温度も用いることができて、適した広い温度範囲は約20℃から約200℃の間であり、好ましい温度は約50℃から約150℃の間にある。
【0116】
反応圧力は、溶媒を液相で維持するのに充分な圧力とすべきである。よって、圧力はほぼ大気圧から100psig又はそれ以上の間で変えることができる。
【0117】
反応時間は通常、酸性反応体と高分子量オレフィンから共重合体への実質的に完全な変換が起こるのに充分な時間である。反応時間は1から24時間の間が適していて、好ましい反応時間は2から10時間の間にある。
【0118】
上記のように、目的の反応は溶液型重合反応である。高分子量オレフィン、酸性反応体、溶媒および開始剤を任意の好適な方法で一緒にすることができる。重要な要因は、高分子量オレフィンと酸性反応体をラジカル生成物質の存在下で充分に接触させることにある。例えば反応をバッチ装置で行うことができ、酸性反応体と開始剤と溶媒の混合物に高分子量オレフィンを最初に全部添加するか、あるいは高分子量オレフィンを断続的または連続的に反応器に添加することができる。あるいは、反応体を別の順序で一緒にしてもよく、例えば反応器内の高分子量オレフィンに酸性反応体と開始剤を添加してもよい。別の方法では、撹拌中の反応器に反応混合物の成分を連続的に添加しながら、生成物の一部を連続的に回収トレーンまたは別の一連の反応器に取り出すことができる。また別の方法では、バッチ操作で反応を実施してもよく、高分子量オレフィンを最初に反応器に加え、次に酸性反応体と開始剤を時間をかけて徐々に添加する。チューブ形反応器でも反応を好適に起こすことができ、チューブに沿って一箇所以上で成分を加える。
【0119】
共重合体(iii)
ある態様では、共重合体反応体(iii)は、(a)化合物(i)(a)を化合物(i)(b)又は(i)(c)と、共重合体(i)または共重合体(ii)または両者の存在下で非ラジカル触媒反応で反応させることにより、あるいは(b)共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)又は(i)(c)との非ラジカル触媒反応による生成物と接触させることにより得られる。
【0120】
(共重合体(iii)の製造)
共重合体(iii)の製造方法については、例えば米国特許第6451920号明細書(ハリソン、外)に記載されていて、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0121】
上記の作業工程(a)では、如何なる未反応オレフィンであれ、一般には立体障害のより大きなオレフィン類、すなわち、モノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸又はそのエステルまたはC4−C28ジカルボン酸又はその無水物又はエステルとラジカル条件で容易に反応しないベータ−ビニリデンを、加熱条件、すなわち約180℃乃至約280℃の温度で、モノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステルまたはC4−C28ジカルボン酸もしくはその無水物又はエステルと反応させる。これらの条件は、熱的方法でPIBSAを製造するのに使用する条件と同様である。任意に、スルホン酸など強酸の存在下でこの反応を起こす。例えば、米国特許第6156850号明細書を参照されたい。
【0122】
任意に、反応体を溶解するために溶媒を使用してもよい。反応溶媒は、酸性反応体と高分子量オレフィンの両方が溶解するものでなければならない。溶液重合反応で酸性反応体と高分子量オレフィンの充分な接触をもたらすためには、それらを溶解する必要がある。溶媒はまた、得られた共重合体が可溶性であるものでもなければならない。
【0123】
好適な溶媒としては、炭素原子数が約6乃至約20の液体の飽和もしくは芳香族炭化水素、炭素原子数が約3乃至約5のケトン類、および分子当り炭素原子数が約1乃至約5、好ましくは分子当り炭素原子数が約1乃至約3の液体飽和脂肪族二ハロゲン化炭化水素を挙げることができる。「液体」とは、重合条件で液体であることを意味する。二ハロゲン化炭化水素では、ハロゲンは隣接する炭素原子上にあることが好ましい。「ハロゲン」とは、F、ClおよびBrを意味する。溶媒の量は、酸性反応体と高分子量オレフィンが溶解でき、更に得られた共重合体も溶解できるような量でなければならない。溶媒と高分子量オレフィンとの容量比は、1:1から100:1の間にあることが適していて、好ましくは1.5:1から4:1の間にある。
【0124】
好適な溶媒の例としては、炭素原子数が約3乃至約6のケトン類、および炭素原子数約1乃至約5、より好ましくは炭素原子数が約1乃至約3の飽和二塩素化炭化水素を挙げることができる。
【0125】
好適な溶媒の例としては、これらに限定されるものではないが、下記のものを挙げることができる。
1)ケトン類、例:アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、およびメチルイソブチルケトン、
2)芳香族炭化水素、例:ベンゼン、キシレン、およびトルエン、
3)飽和二ハロゲン化炭化水素、例:ジクロロメタン、ジブロモメタン、1−ブロモ−2−クロロエタン、1,1−ジブロモエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモ−2−メチルプロパン、1,2−ジクロロプロパン、1,1−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン、1−ブロモ−2−クロロプロパン、1,2−ジクロロブタン、1,5−ジブロモペンタン、および1,5−ジクロロペンタン、または
4)上記の混合物、例:ベンゼンとメチルエチルケトン。
【0126】
相分離、溶媒蒸留および沈殿等の従来法によって、共重合体を溶媒からも如何なる未反応酸性反応体からも分離することが好都合である。所望により、反応過程で分散剤および/または補助溶媒を使用してもよい。
【0127】
ポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)は、共重合体反応体(i)又は(ii)に直接添加することができるが、一般にはここに開示する方法を含む公知の多数の方法により製造される。例えば、よく知られた熱的方法(例えば、米国特許第3361673号明細書参照)、同じくよく知られた塩素化法(例えば、米国特許第3172892号明細書参照)、熱的方法と塩素化法の組合せ(例えば、米国特許第3912764号明細書参照)、触媒強酸法(例えば、米国特許第3819660号及び第6156850号各明細書参照)、およびラジカル法(例えば、米国特許第5286799号及び第5319030号各明細書参照)がある。そのような組成物としては、一対一単量体付加物(例えば、米国特許第3219666号及び第3381022号各明細書参照)、並びに高コハク酸比生成物である、アルケニル誘導置換基にアルケニル誘導置換基当り少なくとも1.3個のコハク酸基が付加した付加物(例えば、米国特許第4234435号明細書参照)を挙げることができる。
【0128】
ポリアルキレンコハク酸無水物は、米国特許第4152499号明細書に開示されているように、高メチルビニリデンポリブテンから熱的に製造することもできる。この方法については、コハク酸比が1.3未満である場合は米国特許第5241003号明細書に、またコハク酸比が1.3より大きい場合は欧州特許第0355895号明細書に詳しく記述されている。欧州特許第0602863号及び第0587381号及び米国特許第5523417号の各明細書には、高メチルビニリデンポリブテンから製造したポリアルキレンコハク酸無水物から、ポリ無水マレイン酸樹脂を洗い出す方法が開示されている。コハク酸比が1.0のポリアルキレンコハク酸無水物が開示されている。高メチルビニリデンポリブテンからのポリアルキレンコハク酸無水物の一つの利点は、本質的に塩素無しで製造できることにある。米国特許第4234435号明細書には、数平均(Mn)が約1500乃至約3200の範囲にある好ましいポリアルケン誘導置換基が教示されている。ポリブテン類では、特に好ましい数平均(Mn)範囲は約1700乃至約2400である。この特許文献にはまた、コハク酸イミド類のコハク酸比は少なくとも1.3でなければならないとも教示されている。すなわち、ポリアルケン誘導置換基当量当り少なくとも1.3個のコハク酸基があるべきである。最も好ましくは、コハク酸比は1.5乃至2.5である。
【0129】
その他の好適なアルケニルコハク酸無水物としては、米国特許第6030930号明細書に記載されているものが挙げられる。この製造に使用される代表的なアルケニルは、エチレンと1−ブテンの共重合体である。
【0130】
(B)エーテル化合物
本発明の一態様では、共重合体を更に、2個のコハク酸イミド基を結合することができるエーテル化合物と反応させることができる。好適なエーテル化合物としては、これらに限定されるものではないが、下記のものが挙げられる。
【0131】
(ポリエーテルポリアミン類)
好適なポリエーテルアミン類の例としては、下記構造を有する化合物が挙げられる。
【0132】
【化9】

【0133】
ただし、R14は独立に水素または炭素数が約1乃至約4の炭化水素基であり、そしてnは重合度である。本発明に使用するのに適したポリエーテルポリアミン類は、一般にエーテル単位を少なくとも約1個含み、好ましくはエーテル単位を約5乃至約100個、より好ましくは約10乃至約50個、更に好ましくは約15乃至約25個含んでいる。
【0134】
ポリエーテルポリアミン類は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドなどのC2−C6エポキシド類から誘導された重合体を基本とすることができる。ポリエーテルポリアミン類の例としては、ジェファミン(Jeffamine、商標)のブランド名で販売され、ハンストマン・コーポレーション(Hunstman Corporation、テキサス州ハウストン所在)より市販されているものがある。
【0135】
他の好適なポリエーテルアミン類の例としては、下記構造を有するポリオキシテトラメチレンポリアミン化合物が挙げられる。
【0136】
【化10】

【0137】
ただし、nは重合度(すなわち、単量体のエーテル単位の数)である。
【0138】
(ポリエーテルアミン誘導体)
また、共重合体反応体をポリエーテルアミノアルコール又はアミノチオールと反応させてもよい。
【0139】
(ポリエーテルアミノアルコール)
一般に、還元アミノ化などの反応過程で化合物の末端アルコール基がアミンに完全に変換されないときに、アミノアルコール類が生成しうる。また、あるものはアミノ基から重合体鎖を開始して(すなわち、プロピレン又はエチレンオキシドを生長させて)、よって重合体鎖の一方の端部のアミノ(すなわち、開始剤)とアルコール末端とを持つか、あるいは複数のアルコール末端を持つ分子では内部にアミンを持つことができる。
【0140】
好適なポリエーテルアミノアルコール類の例としては、下記構造を有する化合物が挙げられる。
【0141】
【化11】

【0142】
ただし、R15は独立に水素または炭素数が約1乃至約4の炭化水素基であり、そしてnは重合度である。本発明に使用するのに適したポリエーテルアミノアルコール類は、一般にエーテル単位を少なくとも約1個含み、好ましくはエーテル単位を約5乃至約100個、より好ましくは約10乃至約50個、更に好ましくは約15乃至約25個含んでいる。
【0143】
他の好適なポリエーテルアミノアルコール類の例としては、下記構造を有するポリオキシテトラメチレンアミノアルコール化合物が挙げられる。
【0144】
【化12】

【0145】
ただし、nは重合度である。
【0146】
(ポリエーテルアミノチオール)
好適なポリエーテルアミノチオール類の例としては、下記構造を有する化合物が挙げられる。
【0147】
【化13】

【0148】
ただし、R16は独立に水素または炭素数が約1乃至約4の炭化水素基であり、そしてnは重合度である。
【0149】
他の好適なポリエーテルアミノチオール類の例としては、下記構造を有するポリオキシテトラメチレンアミノチオールが挙げられる。
【0150】
【化14】

【0151】
ただし、nは重合度である。
【0152】
本発明に使用するのに適したポリエーテルアミノチオール類は、一般にエーテル単位を少なくとも約1個含み、好ましくはエーテル単位を約5乃至約100個、より好ましくは約10乃至約50個、更に好ましくは約15乃至約25個含んでいる。
【0153】
(エーテルポリアミン類)
エーテルジアミン類
本発明のまた別の態様では、共重合体をエーテルジアミン類と反応させてもよい。好適なジアミン類、例えばデシルオキシプロピル−1,3−ジアミノプロパン、イソデシルオキシプロピル−1,3−ジアミノプロパン、イソドデシルオキシプロピル−1,3−ジアミノプロパン、ドデシル/テトラデシルオキシプロピル−1,3−ジアミノプロパン、イソトリデシルオキシプロピル−1,3−ジアミノプロパン、テトラデシルオキシプロピル−1,3−ジアミノプロパンを、共重合体と反応させる。
【0154】
エーテルトリアミン類
本発明のまた別の態様では、共重合体をエーテルトリアミン類と反応させてもよい。好適なトリアミン類としては次のものを挙げることができる。
【0155】
【化15】

【0156】
ただし、R’はC1−C6であり、x+y+z=1〜85である。
【0157】
【化16】

【0158】
ただし、x+y+z=およそ5〜6である。
【0159】
この種のトリアミン類は、ハンツマン・ペトロケミカル・コーポレーション(Huntsman Petrochemical Corporation、テキサス州ウッドランズ)より購入することができる。
【0160】
(ポリエーテルポリオール)
本発明のまた別の態様では、共重合体を、少なくとも2個の末端ヒドロキシル基を含むポリエーテルと反応させてエステルにしてもよい。ポリエーテルポリオール類は下記構造を有する。
【0161】
【化17】

【0162】
ただし、R17は独立に水素または炭素数が約1乃至約4の炭化水素基であり、そしてnは重合度である。
【0163】
他の好適なポリエーテルポリオール類の例としては、下記構造を有するポリオキシテトラメチレンポリオール化合物、例えばデュポン・コーポレーション(DuPont Corporation、デラウェア州ウィルミントン)より購入できるテラタン(Terathane、商標)と呼ばれるものが挙げられる。
【0164】
【化18】

【0165】
ただし、nは重合度である。
【0166】
好適なポリエーテルポリオール類としては、これらに限定されるものではないが、次のものが挙げられる:ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、およびポリオキシテトラメチレングリコール。
【0167】
本発明に用いられるポリエーテルポリオールの数平均分子量は、一般に約150乃至約5000の範囲にあり、好ましくは約500乃至約2000の範囲にある。
【0168】
本発明に使用するのに適したポリエーテル化合物は、一般にエーテル単位を少なくとも1個含み、好ましくはエーテル単位を約5乃至約100個、より好ましくは約10乃至約50個、更に好ましくは約15乃至約25個含んでいる。
【0169】
一般に、本発明に使用するのに適したポリエーテル化合物は、たった一つのエーテル種からでも、エーテル種の混合物からでも誘導することができ、例えばポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン共重合)ジアミンがある。エーテル単位の混合物はブロック共重合体でも、ランダム共重合体でも、交互共重合体でもよい。本発明に用いられるエーテル化合物は、少なくとも2個のカルボン酸基又はその無水物誘導体と反応することができるものである。
【0170】
一般に共重合体を、ポリエーテルポリアミン、ポリエーテルアミノアルコール、ポリエーテルアミノチオール、ポリエーテルポリオール又はエーテルジアミンの混合物と反応させて、イミド、アミド及びエステルの混合物を生成させてもよい。
【0171】
(C)脂肪族化合物
本発明に用いられる脂肪族化合物は、少なくとも2個の官能基を持ち、官能基の一方は、少なくとも一種のモノカルボン酸又はそのエステルまたはジカルボン酸、その無水物又はエステルと反応することができ、他方の官能基は、後述する少なくとも一種の後処理剤と反応することができる。好ましくは、脂肪族化合物は2個以上のアミノ官能基、または2個以上のヒドロキシル官能基または両方を含んでいる。より好ましくは、脂肪族化合物は2個以上のアミノ官能基を含んでいる。
【0172】
(アミノ脂肪族化合物)
上記のエーテル化合物(すなわち、ポリエーテルポリアミン、ポリエーテルポリアミン誘導体、ポリエーテルポリオール、エーテルジアミン類およびエーテルトリアミン)に加えて、共重合体を脂肪族化合物とも反応させる。用いられる脂肪族化合物はアミノ脂肪族化合物であってもよい。
【0173】
アミノ脂肪族化合物は、(a)脂肪族ジアミン類、(b)脂肪族ポリアミン類、または(c)ポリアルキレンジアミン及びポリアミン類から選ぶことができる。アミノ脂肪族化合物は少なくとも2個の反応性アミノ基、すなわち第一級又は第二級アミノ基を持ち、好ましくは第一級アミノ基を持っている。好適な例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン、アミノエチルピペラジン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、および重質ポリアミンであるHPA(ダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company)、ミシガン州ミドランド製)を挙げることができる。そのようなアミン類には、分枝鎖ポリアミン類、環状ポリアミン類および炭化水素置換ポリアミン類などの異性体も含まれる。
【0174】
第一級又は第二級アミノ基が1個より多く存在するので、反応条件および/または化学量論は油溶性を維持できるようなものとすべきである。
【0175】
(ヒドロキシル脂肪族化合物)
前記のエーテル化合物(すなわち、ポリエーテル芳香族化合物)に加えて、任意に共重合体を、ヒドロキシル脂肪族化合物であってよい少なくとも一種の脂肪族化合物とも反応させることができる、ただし、ヒドロキシル脂肪族化合物は少なくとも2個の官能基を持ち、官能基の一方は少なくとも一種のモノカルボン酸又はそのエステルまたはジカルボン酸、その無水物又はエステルと反応することができ、他方の官能基は後述する少なくとも一種の後処理剤と反応することができる。
【0176】
本発明の方法に従って使用される多官能ヒドロキシル化合物には、第一級、第二級又は第三級アルコール類が含まれる。
【0177】
好適なヒドロキシル脂肪族化合物としては、これらに限定されるものではないが、グリセロール、ペンタエリトリトール、およびトリメチロールプロパン等が挙げられる。さらに、ヒドロキシル脂肪族化合物は少なくとも2個のヒドロキシル基を含むポリエーテルであってもよい。
【0178】
(アミン官能基とヒドロキシ官能基両方を含む脂肪族化合物)
本発明の別の態様では、脂肪族化合物は少なくとも1個のアミン基と少なくとも1個のヒドロキシル基を持っていてもよい。そのような化合物の例としては、これらに限定されるものではないが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミン等が挙げられる。
【0179】
[潤滑油添加剤組成物の製造方法]
潤滑油添加剤組成物は、反応体の共重合体(例えば、前述した共重合体(i)、(ii)及び(iii)のうちの少なくとも一種)を、任意に窒素でパージしながら反応器に充填し、そして約80℃乃至約170℃の温度で加熱することを含む方法により製造される。任意に希釈油を、任意に窒素でパージしながら同じ反応器に入れてもよく、それにより希釈した共重合体反応体が生じる。希釈した共重合体における希釈油の量は、最大で約80質量%であり、より好ましくは約20乃至約60質量%、最も好ましくは約30乃至約50質量%である。脂肪族化合物とエーテル化合物両方を、任意に窒素でパージしながら反応器に充填する。この混合物を窒素パージ下で約130℃乃至約200℃の範囲の温度に加熱する。任意に、混合物を約0.5乃至約2.0時間減圧状態にして余分な水分を取り除く。
【0180】
また、反応体全部(反応体共重合体(i)、(ii)又は(iii)、脂肪族化合物、およびエーテル化合物)を、所望の比率で同時に反応器に充填することを含む方法を用いて、潤滑油添加剤組成物を製造することもできる。混合および反応を容易にするために、一種以上の反応体を高温で充填することができる。反応体の混合を容易にするために、それらを反応器に入れながら静的混合機を使用することができる。約130℃乃至約200℃の温度で約0.5乃至約2時間反応を行う。任意に反応時間中、反応混合物を減圧状態にする。
【0181】
脂肪族化合物に官能基が1個より多く存在するので、反応条件および/または化学量論を油溶性を維持できるようなものとすべきである。例えば、多官能脂肪族化合物を使用するので、リンカー基(すなわち、ポリエーテル化合物)と共重合体を最初に反応器に充填して、多官能脂肪族化合物の添加前に反応させることが好ましい。さらに、多官能脂肪族化合物を反応器に充填するときに、一般に多官能脂肪族化合物モル当り反応座が約1モル残っているような化学量論とすべきである。この反応順序と化学量論によって、共重合体中の未反応反応座数を多官能脂肪族化合物の反応座数に相関して制限することで、余分な架橋が減少する。余分な架橋の減少によりゲル形成の確率が低くなり、よって油溶性となる確率が高まる。
【0182】
[潤滑油添加剤組成物の後処理]
本発明の一態様では、潤滑油添加剤組成物を、環状カーボネート、線状モノカーボネート、線状ポリカーボネート、芳香族モノ又はポリカルボン酸、芳香族モノ又はポリカルボン酸無水物または芳香族モノ又はポリカルボン酸エステルから選ばれた後処理剤を用いて後処理を行なう。
【0183】
本発明に使用される代表的な環状カーボネート類としては、次のものが挙げられる:1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレンカーボネート)、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(プロピレンカーボネート)、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−5−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジエチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5,5−ジヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−ヒドロキシ−1,3−ジオキサン−2−オン、5−ヒドロキシメチル−5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5,5−ジエチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−メチル−5−プロピル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,4,6−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、およびスピロ[1,3−オキサ−2−シクロヘキサノン−5,5’−1’,3’−オキサ−2’−シクロヘキサノン]。他の好適な環状カーボネート類は、ソルビトール、グルコース、フルクトースおよびガラクトース等のサッカリド類から、またC1−C30オレフィン類から製造された近接ジオール類から、当該分野で知られている方法により製造することができる。
【0184】
これら環状カーボネート類のうちの幾つか、例えば1,3−ジオキソラン−2−オンまたは4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンは市販されている。環状カーボネート類は公知の反応により容易に製造することができる。例えば、一例として米国特許第4115206号明細書におけるように(その内容も参照内容として本明細書の記載とする)、ホスゲンと好適なアルファアルカンジオールまたはアルカン−1,3−ジオールとの反応により、本発明の範囲内で使用できるカーボネートが生じる。
【0185】
同様に、好適なアルファアルカンジオールまたはアルカン−1,3−ジオールを、例えばジエチルカーボネートでエステル交換条件にてエステル交換することによっても、本発明に使用できる環状カーボネート類を製造することができる。例えば米国特許第4384115号及び第4423205号の各明細書を参照されたく、それらの内容も環状カーボネート製造の教示に関して参照内容として本明細書の記載とする。
【0186】
代表的な線状モノカーボネート類としては、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、およびジプロピルカーボネート等が挙げられる。代表的な線状ポリカーボネート類としては、ポリ(プロピレンカーボネート)等が挙げられる。
【0187】
代表的な芳香族ポリカルボン酸無水物としては、2,3−ピラジンジカルボン酸無水物、2,3−ピリジンジカルボン酸無水物、3,4−ピリジンジカルボン酸無水物、ジフェン酸無水物、イサト酸無水物、フェニルコハク酸無水物、1−ナフタレン酢酸無水物、および1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物等を挙げることができる。代表的な芳香族ポリカルボン酸類としては、上記無水物の酸類が挙げられる。
【0188】
代表的な芳香族ポリカルボン酸エステル類としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチルヘキシル、フタル酸モノメチルヘキシル、フタル酸モノエチル、およびフタル酸モノメチルを挙げることができる。
【0189】
ある態様では後処理剤は、環状カーボネートまたは線状モノ又はポリカーボネートである。別の態様では後処理剤は、芳香族ポリカルボン酸、無水物又はエステルである。
【0190】
潤滑油添加剤組成物を、エチレンカーボネート、無水フタル酸またはナフタル酸無水物から選ばれた後処理剤で後処理することが好ましい。
【0191】
一般に、後処理剤(すなわち、エチレンカーボネート、無水フタル酸または1,8−ナフタル酸無水物)を、潤滑油添加剤組成物を含む反応器に加えて加熱し、それにより後処理した潤滑油添加剤組成物が生成する。
【0192】
[その他の添加剤]
以下の添加剤成分は、本発明に好ましく用いることができる成分の一部の例である。これら添加剤の例は、本発明を説明するために記載するのであって、本発明を限定しようとするものではない。
【0193】
1)金属清浄剤
硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート類、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート類、ホウ酸化スルホネート類、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩類、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート類、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート類、アルカノール酸の金属塩類、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩類、およびそれらの化学的及び物理的混合物。
【0194】
2)酸化防止剤
酸化防止剤は、鉱油がサービス中に劣化する傾向を低減するものであり、その劣化の証拠は、金属表面のスラッジ及びワニス状堆積物のような酸化生成物および粘度の増加にある。本発明に使用できる酸化防止剤の例としては、これらに限定されるものではないが、フェノール型(フェノール系)酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−1−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−10−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)を挙げることができる。ジフェニルアミン型酸化防止剤としては、これらに限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化アルファ−ナフチルアミンを挙げることができる。その他の型の酸化防止剤としては、金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、および15−メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)が挙げられる。
【0195】
3)耐摩耗性添加剤
その名称が意味するように、これら添加剤は可動金属部分の摩耗を低減する。そのような添加剤の例としては、これらに限定されるものでないが、リン酸エステル類及びチオリン酸エステル類およびそれらの塩類、カルバメート類、エステル類、およびモリブデン錯体を挙げることができる。
【0196】
4)さび止め添加剤(さび止め剤)
a)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
b)その他の化合物:ステアリン酸および他の脂肪酸類、ジカルボン酸類、金属石鹸類、脂肪酸アミン塩類、重質スルホン酸の金属塩類、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0197】
5)抗乳化剤
アルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0198】
6)極圧耐摩耗剤(EP/AW剤)
硫化オレフィン類、ジアルキル−1−ジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキル及びアリール型)、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛、中和又は部分中和リン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、および無硫黄リン酸エステル類。
【0199】
7)摩擦緩和剤
脂肪アルコール、脂肪酸(ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸および他の脂肪酸又はそれらの塩類)、アミン、ホウ酸化エステル、他のエステル類、リン酸エステル類、三及び二炭化水素亜リン酸エステル以外の亜リン酸エステル類、およびホスホン酸エステル類。
【0200】
8)多機能添加剤
硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン・モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0201】
9)粘度指数向上剤
ポリメタクリレート型重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水和スチレン・イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散型粘度指数向上剤。
【0202】
10)流動点降下剤
ポリメチルメタクリレート。
【0203】
11)消泡剤
アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【0204】
12)金属不活性化剤
ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、メルカプトベンゾチアゾール類、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾール類。
【0205】
13)分散剤
アルケニルコハク酸イミド類、他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド類、エチレンカーボネート又はホウ酸による後処理で変性したアルケニルコハク酸イミド類、ポリアルコールとポリイソブテニルコハク酸無水物のエステル類、フェネート−サリチレート類及びそれらの後処理類似物、アルカリ金属又は混合アルカリ金属、アルカリ土類金属のホウ酸塩類、水和アルカリ金属ホウ酸塩の分散物、アルカリ土類金属ホウ酸塩の分散物、およびポリアミド無灰分散剤等、またはそのような分散剤の混合物。
【0206】
[潤滑油組成物]
上述した潤滑油添加剤組成物は一般に、可動部分、例えば内燃機関、ギヤおよび変速機を潤滑にするのに充分な基油に添加される。一般に本発明の潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の油と少量の潤滑油添加剤組成物を含有している。
【0207】
用いられる基油は、種々様々な潤滑粘度の油のいずれであってもよい。そのような組成物に使用される潤滑粘度の基油は、鉱油であっても合成油であってもよい。粘度が40℃で少なくとも2.5cStで流動点が20℃未満、好ましくは0℃以下である基油が望ましい。基油は合成原料からでも天然原料からでも誘導することができる。
【0208】
本発明に基油として使用される鉱油としては例えば、通常潤滑油組成物に使用されているパラフィン系、ナフテン系及びその他の油が挙げられる。合成油としては例えば、所望の粘度を有する炭化水素合成油と合成エステル類両方およびそれらの混合物が挙げられる。炭化水素合成油としては例えば、エチレンの重合により製造された油、ポリアルファオレフィン又はPAO油、またはフィッシャー・トロプシュ法におけるような一酸化炭素ガスと水素ガスを用いた炭化水素合成法により製造された油を挙げることができる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものはC6−C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー類、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン類、例えばジドデシルベンゼンも使用することができる。使用できる合成エステル類としては、モノカルボン酸およびポリカルボン酸とモノヒドロキシアルカノールおよびポリオールとのエステル類が挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から製造された複合エステル類も使用することができる。鉱油と合成油のブレンドも使用できる。
【0209】
従って、基油は、精製パラフィン型基油、精製ナフテン系基油、または潤滑粘度の合成炭化水素又は非炭化水素油であってよい。また、基油は鉱油と合成油の混合物であってもよい。
【0210】
[本発明の使用方法]
本発明の潤滑油添加剤組成物を潤滑粘度の油に添加し、それにより潤滑油組成物を製造する。潤滑油組成物をエンジンに接触させて分散性を改善する。従って、本発明は、内燃機関内のスス分散性、スラッジ分散性またはそれら両方を改善する方法であって、本発明の潤滑油組成物を用いて内燃機関を作動させることを含む方法にも関する。
【0211】
任意に、上述した潤滑油添加剤組成物は燃料添加剤としても使用することができる。燃料に使用する場合に、所望の清浄性を達成するのに必要とされる添加剤の適正濃度は、使用する燃料の種類、他の清浄剤又は分散剤又は他の添加剤の有無等を含む種々の要因に依存する。だが、基材燃料中の添加剤の濃度範囲は、一般には添加剤百万分の10乃至10000質量部であり、好ましくは百万分の30乃至5000部である。他の清浄剤が存在するならば、添加剤をもっと少ない量で使用してもよい。上述した添加剤は、沸点が約150−400°F(65.6−204.4℃)の範囲にある不活性で安定な親油性溶媒を用いて、燃料濃縮物として配合することもできる。好ましい溶媒の沸点はガソリンまたはディーゼル燃料の沸点範囲にある。好ましくは、脂肪族又は芳香族炭化水素溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレンまたは高沸点芳香族炭化水素又は芳香族シンナー類が使用される。また、炭素原子数約3乃至8の脂肪族アルコール類、例えばイソプロパノール、イソブチルカルビノールおよびn−ブタノール等も炭化水素溶媒と組み合わせて、燃料添加剤と一緒に使用するのに適している。燃料濃縮物では添加剤の量は、通常は少なくとも5質量%で、一般に70質量%を越えることはなく、好ましくは5乃至50質量%、より好ましくは10乃至25質量%である。
【0212】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明するために供するのであって、決して本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【実施例】
【0213】
[実施例1(比較)] MW1000ポリPIBSA、ポリエーテルジアミン及び重質ポリアミンから誘導したポリコハク酸イミド
2Lガラス反応器に、MW1000のPIBから誘導したポリPIBSA(610.92g、シェブロン・オロナイトLLC(Chevron Oronite LLC)製)、およびエクソン100N基油(793.45g)を充填した。溶液を窒素雰囲気中で160℃に加熱した。次に、ジェファミン(Jeffamine、商標)XTJ−501ポリエーテルジアミン(151.60g、ハンツマン(Huntsman)製)を加え、そして混合物を1時間加熱した。160℃で30分間減圧状態(<20mmHg)にした。減圧を解いた後、重質ポリアミン(36.66g)を反応器に加えた。混合物を160℃で1時間加熱した。次いで、160℃で30分間減圧状態(<20mmHg)にした。最終生成物の分析により次のことが判明した。
100℃粘度=43.16cSt
窒素分=1.09質量%
全塩基価(ASTM D2896)=25.77mgKOH/g
【0214】
[実施例2] MW1000ポリPIBSA/ポリエーテルジアミン/重質ポリアミンから誘導した無水フタル酸後処理ポリコハク酸イミド
500mLガラス反応器に、実施例1で製造したポリコハク酸イミド(429.93g)を充填し、そして窒素雰囲気中で160℃に加熱した。無水フタル酸(5.36g、シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)製)を加え、そして混合物を160℃で2時間加熱した。最終生成物の分析により次のことが判明した。
100℃粘度=702.2cSt
全塩基価=19.64mgKOH/g
【0215】
[実施例3] MW1000ポリPIBSA/ポリエーテルジアミン/重質ポリアミンから誘導したエチレンカーボネート後処理ポリコハク酸イミド
500mLガラス反応器に、実施例1で製造したポリコハク酸イミド(392.34g)を充填し、そして窒素雰囲気中で160℃に加熱した。エチレンカーボネート(14.23g)を160℃で1時間かけて加えた。混合物を160℃で更に7時間加熱した。
【0216】
[実施例4(比較)] MW2300ポリPIBSA、ポリエーテルジアミン及び重質ポリアミンから誘導したポリコハク酸イミド
2Lガラス反応器に、MW2300のPIBから誘導したポリPIBSA(1183.18g、シェブロン・オロナイトLLC製)、およびエクソン100N基油(129.66g)を充填した。溶液を窒素雰囲気中で160℃に加熱した。ジェファミン(商標)XTJ−501ポリエーテルジアミン(141.71g)を加え、そして混合物を160℃で1時間加熱した。160℃で30分間減圧状態(<20mmHg)にした。減圧を解いた後、重質ポリアミン(34.27g)を反応器に加えた。混合物を160℃で1時間加熱した。160℃で30分間減圧状態(<20mmHg)にした。最終生成物の分析により次のことが判明した。
100℃粘度=577.8cSt
窒素分=1.10質量%
全塩基価=24.04mgKOH/g
【0217】
[実施例5] MW2300ポリPIBSA/ポリエーテルジアミン/重質ポリアミンから誘導した無水フタル酸後処理ポリコハク酸イミド
500mLガラス反応器に、実施例4で製造したポリコハク酸イミド(351.48g)を充填し、そして窒素雰囲気中で160℃に加熱した。無水フタル酸(4.38g)を加えて、混合物を160℃で2時間加熱した。最終生成物の分析により次のことが判明した。
100℃粘度=696.2cSt
全塩基価=18.44mgKOH/g
【0218】
[実施例6] MW2300ポリPIBSA/ポリエーテルジアミン/重質ポリアミンから誘導したエチレンカーボネート後処理ポリコハク酸イミド
500mLガラス反応器に、実施例4で製造したポリコハク酸イミド(390.21g)を充填し、そして窒素雰囲気中で160℃に加熱した。エチレンカーボネート(14.15g)を160℃で1時間かけて加えた。混合物を160℃で更に5.5時間加熱した。
【0219】
[実施例7(比較)] MW2300三元共重合体PIBSA、ポリエーテルジアミン及び重質ポリアミンから誘導したポリコハク酸イミド
1L反応器に、MW2300PIBから誘導した三元共重合体PIBSA(645.22g、シェブロン・オロナイトLLC製)を充填した。溶液を窒素雰囲気中に置いて160℃に加熱した。次いで、ジェファミン(商標)XTJ−501ポリエーテルジアミン(84.59g)を15分かけて加えた。混合物を160℃で1時間加熱した。160℃で45分間減圧状態(22mmHg)にした。減圧を解いた後、重質ポリアミン(20.56g)を10分かけて溶液に加えた。混合物を160℃で1時間加熱した後、160℃で45分間減圧状態(24mmHg)にした。
【0220】
[実施例8] MW2300三元共重合体PIBSA/ポリエーテルジアミン/重質ポリアミンから誘導した無水フタル酸後処理ポリコハク酸イミド
実施例7の生成物を1L反応器に充填し、そして窒素雰囲気中で160℃に加熱した。無水フタル酸(8.31g)を加えて、混合物を160℃で1時間加熱した。次いで、30分間減圧状態(20mmHg)にした。
【0221】
[実施例9] MW2300三元共重合体PIBSA/ポリエーテルジアミン/HPAから誘導したナフタル酸無水物後処理ポリコハク酸イミド
0.5L反応器に、MW2300PIBから誘導した三元共重合体PIBSA(334.86g、シェブロン・オロナイトLLC製)を充填した。溶液を窒素雰囲気中に置いて160℃に加熱した。次に、ジェファミン(商標)XTJ−501ポリエーテルジアミン(43.39g)を10分かけて加えた。混合物を160℃で1時間加熱した。160℃で30分間減圧状態(<20mmHg)にした。減圧を解いた後、重質ポリアミン(9.79g)を7分かけて混合物に加えた。混合物を160℃で1時間加熱した後、160℃で30分間減圧状態(<20mmHg)にした。減圧を解いた後、ナフタル酸無水物(5.32g)を加えた。混合物を160℃で1時間加熱した後、180℃で1時間加熱した。次いで30分間減圧状態(<20mmHg)にした。
【0222】
[実施例10(比較)] MW2300三元共重合体PIBSA、ポリエーテルジアミン及びジエチレントリアミン(DETA)から誘導したポリコハク酸イミド
1L反応器に、MW2300PIBから誘導した三元共重合体PIBSA(445.69g、シェブロン・オロナイトLLC製)を充填した。混合物を窒素雰囲気中に置いて160℃に加熱した。次いで、ジェファミン(商標)XTJ−501ポリエーテルジアミン(57.55g)を15分かけて加えた。混合物を160℃で1時間加熱した。160℃で30分間減圧状態(<20mmHg)にした。減圧を解いて反応器を95℃まで冷却した。次に、DETA(4.89g)を混合物に加えた。混合物を160℃に加熱し、そしてこの温度で1時間維持した。その後、160℃で37分間減圧状態(<20mmHg)にした。
【0223】
[実施例11] MW2300三元共重合体PIBSA/ポリエーテルジアミン/DETAから誘導した無水フタル酸後処理ポリコハク酸イミド
0.5L反応器に、MW2300PIBから誘導した三元共重合体PIBSA(296.53g、シェブロン・オロナイトLLC製)を充填した。溶液を窒素雰囲気中に置いて160℃に加熱した。次いで、ジェファミン(商標)XTJ−501ポリエーテルジアミン(38.29g)を8分かけて加えた。混合物を160℃で1時間加熱した。160℃で30分間減圧状態(<20mmHg)にした。減圧を解いて反応混合物を95℃まで冷却した。次に、DETA(3.25g)を3分かけて混合物に加えた。混合物を160℃に加熱し、そしてこの温度で1時間維持した。その後、160℃で30分間減圧状態(<20mmHg)にした。減圧を解き、ナフタル酸無水物(3.52g)を加え、そして混合物を160℃で1.5時間加熱した。次に、30分間減圧状態(<20mmHg)にした。
【0224】
[実施例12] MW2300三元共重合体PIBSA/ポリエーテルジアミン/DETAから誘導したナフタル酸無水物後処理ポリコハク酸イミド
実施例10の生成物269.11gを0.5L反応器に充填し、そして窒素雰囲気中で160℃に加熱した。ナフタル酸無水物(3.78g)を加えて、混合物を160℃で1.5時間加熱した。次いで、30分間減圧状態(<20mmHg)にした。
【0225】
(スス増粘台上試験の結果)
実施例1−12からのポリコハク酸イミドおよび後処理ポリコハク酸イミドを、スス増粘台上試験にて反応させたが、この試験では、配合物がススの代用品であるカーボンブラックを分散させて、その添加により生じる粘度増加を抑制する能力を測定する。この試験では、試験試料98.0gを計量して250mLビーカーに入れた。試験試料は、試験分散剤7.6質量%、過塩基性フェネート清浄剤50ミリモル、ジチオリン酸亜鉛摩耗防止剤18ミリモル、およびVI向上剤7.3質量%を、150N油85%と600N油15%中に含有した。これに、ヴァルカン(Vulcan)XC−72(商標)カーボンブラック(キャボット社(Cabot Co.)製)2.0gを加えた。混合物を撹拌した後、デシケーター内に16時間保管した。カーボンブラック無しの第二の試料を、ウィレムズ・ポリトロン・ホモジナイザ、モデルPF45/6を用いて60秒間混合し、次いで真空オーブン内で50乃至55℃で30分間ガス抜きをした。次に、二つの試料の粘度を細管粘度計を用いて100℃で測定した。カーボンブラック有りと無しの試料の粘度を比較することにより、粘度増加パーセントを計算した。よって、粘度増加パーセントが低いほど分散剤の分散性が優れている。第1表に、スス増粘台上試験の結果を示す。
【0226】
【表1】

【0227】
第1表に明示したように、スス増粘台上試験の結果は、無水フタル酸、エチレンカーボネート又はナフタル酸無水物で後処理したポリコハク酸イミドを含む配合油の粘度増加パーセントが、後処理していないポリコハク酸イミドを含む配合油の粘度増加パーセントよりも、著しく低かったことを示している。この試験は、本発明の潤滑油添加剤が非後処理ポリコハク酸イミドに比べて非常に優れた分散性を有することを示している。
【0228】
本発明の真意および範囲から逸脱することなく本発明の変更や変形を行うことができるが、添付した特許請求の範囲に示したような制限しか課されないことを理解されたい。
【0229】
少なくとも一種の脂肪族化合物が、モノカルボン酸もしくはそのエステルまたはジカルボン酸もしくはその無水物又はエステルと反応することができる官能基を1個より多く持っている、後処理済高分子分散剤。
【0230】
少なくとも一種のエーテル化合物(B)がポリエーテルポリアミンである後処理済高分子分散剤。
【0231】
ポリエーテルポリアミンが、各アルキレン単位が別々に炭素原子約2乃至約5個を含むポリオキシアルキレンジアミンである、後処理済高分子分散剤。
【0232】
オキシアルキレン部がオキシエチレンまたはオキシプロピレンまたはそれらの混合物である後処理済高分子分散剤。
【0233】
共重合体が共重合体(i)である後処理済高分子分散剤。共重合体が共重合体(ii)である後処理済高分子分散剤。共重合体(ii)が、無水マレイン酸とポリイソブチレンのラジカル触媒反応により得られたポリPIBSAである、後処理済高分子分散剤。共重合体が共重合体(iii)である後処理済高分子分散剤。
【0234】
アミノ脂肪族化合物が、脂肪族ジアミン類、脂肪族ポリアミン類およびポリアルキレンポリアミン類からなる群より選ばれたものである、後処理済高分子分散剤。
【0235】
脂肪族化合物が脂肪族ジアミンである後処理済高分子分散剤。
【0236】
脂肪族ジアミンがエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびブチレンジアミンである後処理済高分子分散剤。
【0237】
脂肪族化合物がポリアルキレンポリアミンである後処理済高分子分散剤。
【0238】
共重合体(i)の化合物(i)(b)が数平均分子量(Mn)約112乃至約5000のポリイソブテンである後処理済高分子分散剤。
【0239】
数平均分子量(Mn)が約500乃至約3000である後処理済高分子分散剤。
【0240】
数平均分子量(Mn)が約1000乃至約2500である後処理済高分子分散剤。
【0241】
(i)(a)がジカルボン酸、その無水物もしくはエステルである後処理済高分子分散剤。
【0242】
(i)(a)が無水マレイン酸もしくはそのエステルである後処理済高分子分散剤。
【0243】
(i)(c)のモノオレフィンが1−オレフィンである後処理済高分子分散剤。
【0244】
少なくとも一種の脂肪族化合物が、モノカルボン酸もしくはそのエステルまたはジカルボン酸もしくはその無水物又はエステルと反応することができる官能基を1個より多く持っている、潤滑油組成物。
【0245】
共重合体(iii)(b)において、該共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を成分(C)の存在下で、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)又は(i)(c)との非ラジカル触媒反応による生成物と接触させる潤滑油組成物。
【0246】
少なくとも一種のエーテル化合物(B)がポリエーテルポリアミンである潤滑油組成物。
【0247】
ポリエーテルポリアミンが、各アルキレン単位が別々に炭素原子約2乃至約5個を含むポリオキシアルキレンジアミンである、潤滑油組成物。
【0248】
オキシアルキレン部がオキシエチレンまたはオキシプロピレンまたはそれらの混合物である潤滑油組成物。
【0249】
共重合体が共重合体(i)である潤滑油組成物。
【0250】
共重合体が共重合体(ii)である潤滑油組成物。
【0251】
共重合体(ii)が、無水マレイン酸とポリイソブチレンのラジカル触媒反応により得られたポリPIBSAである、潤滑油組成物。
【0252】
共重合体が共重合体(iii)である潤滑油組成物。
【0253】
脂肪族化合物がアミノ脂肪族化合物である潤滑油組成物。
【0254】
アミノ脂肪族化合物が、脂肪族ジアミン類、脂肪族ポリアミン類およびポリアルキレンポリアミン類からなる群より選ばれたものである、潤滑油組成物。
【0255】
脂肪族化合物が脂肪族ジアミンである潤滑油組成物。
【0256】
脂肪族ジアミンがエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびブチレンジアミンである潤滑油組成物。
【0257】
脂肪族化合物がポリアルキレンポリアミンである潤滑油組成物。
【0258】
共重合体(i)の化合物(i)(b)が数平均分子量(Mn)約112乃至約5000のポリイソブテンである潤滑油組成物。
【0259】
数平均分子量(Mn)が約500乃至約3000である潤滑油組成物。
【0260】
数平均分子量(Mn)が約1000乃至約2500である潤滑油組成物。
【0261】
(i)(a)がジカルボン酸、その無水物又はエステルである潤滑油組成物。
【0262】
(i)(a)が無水マレイン酸又はそのエステルである潤滑油添加剤組成物。
【0263】
(i)(c)のモノオレフィンが1−オレフィンである潤滑油組成物。
【0264】
後処理剤が環状カーボネート、線状モノカーボネートまたは線状ポリカーボネートである後処理済高分子分散剤の製造方法。
【0265】
後処理剤が芳香族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸無水物または芳香族ポリカルボン酸エステルである後処理済高分子分散剤の製造方法。
【0266】
後処理剤がエチレンカーボネート、無水フタル酸またはナフタル酸無水物である後処理済高分子分散剤の製造方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)環状カーボネート、線状モノカーボネート、線状ポリカーボネート、芳香族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸無水物または芳香族ポリカルボン酸エステルから選ばれた後処理剤と、(II)下記のものを反応させることを含む方法により製造された潤滑油添加剤組成物とを反応させることを含む方法により製造された後処理済高分子分散剤:
(A)下記の共重合体のうちの少なくとも一種:
(i)下記のものを含む成分のラジカル共重合により得られた共重合体:
(a)少なくとも一種のモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステル、またはC4−C28ジカルボン酸、その無水物もしくはエステル、
(b)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至360個を含み、かつビニル、ビニリデンもしくはアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、および
(c)(a)及び(b)の単量体と共重合可能で、かつ下記からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノオレフィン化合物:
(1)アルキル基がヒドロキシル、アミノ、ジアルキルアミノもしくはアルコキシで置換されているか、あるいは未置換で、かつ炭素原子約1乃至約40個を含む、アルキルビニルエーテルおよびアリルアルキルエーテル、
(2)アルキルアミンおよび炭素原子数約3乃至約10のモノエチレン不飽和モノもしくはジカルボン酸のN−アルキルアミド、ただし、アルキル置換基は炭素原子約1乃至約40個を含む、
(3)炭素原子数約1乃至約8のカルボン酸のN−ビニルカルボキサミド、
(4)N−ビニル置換窒素含有複素環化合物、および
(5)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至約360個を含み、かつビニル、ビニリデンもしくはアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、ただし、用いるオレフィンは(i)(b)で用いるオレフィンと同じではない;
(ii)化合物(i)(a)と化合物(i)(b)とをラジカル開始剤の存在下で反応させることにより得られた共重合体;
(iii)(a)化合物(i)(a)を化合物(i)(b)又は(i)(c)と、共重合体(i)または共重合体(ii)または両者の存在下で非ラジカル的触媒反応で反応させることにより、あるいは(b)共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)又は(i)(c)との非ラジカル的触媒反応による生成物と接触させることにより得られた共重合体;
(B)少なくとも二種のモノカルボン酸もしくはそのエステル、または少なくとも二種のジカルボン酸、その無水物もしくはエステル、またはそれらの混合物と反応することができる少なくとも一種のエーテル化合物;
(C)少なくとも2個の官能基を持ち、官能基の一方は少なくとも一種のモノカルボン酸もしくはそのエステルまたはジカルボン酸、その無水物もしくはエステルと反応することができ、他方の官能基は少なくとも一種の後処理剤と反応することができる少なくとも一種の脂肪族化合物。
【請求項2】
後処理剤が、環状カーボネート、線状モノカーボネートまたは線状ポリカーボネートである請求項1に記載の後処理済高分子分散剤。
【請求項3】
後処理剤が、芳香族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸無水物または芳香族ポリカルボン酸エステルである請求項1に記載の後処理済高分子分散剤。
【請求項4】
後処理剤が、エチレンカーボネート、無水フタル酸またはナフタル酸無水物である請求項1に記載の後処理済高分子分散剤。
【請求項5】
少なくとも一種のエーテル化合物(B)が、エーテルポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ポリエーテルアミノアルコール、ポリエーテルアミノチオールおよびポリエーテルポリオールからなる群より選ばれる請求項1に記載の後処理済高分子分散剤。
【請求項6】
共重合体(iii)(b)において、該共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を成分(C)の存在下で、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)または(i)(c)との非ラジカル的触媒反応による生成物と接触させる請求項1に記載の後処理済高分子分散剤。
【請求項7】
脂肪族化合物がアミノ脂肪族化合物である請求項1に記載の後処理済高分子分散剤。
【請求項8】
主要量の潤滑粘度の油、および少量の後処理済高分子分散剤であって、(I)環状カーボネート、線状モノカーボネート、線状ポリカーボネート、芳香族ポリカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸無水物または芳香族ポリカルボン酸エステルから選ばれた後処理剤と、(II)下記のものを反応させることを含む方法により製造された潤滑油添加剤組成物とを反応させることを含む方法により製造された後処理済高分子分散剤を含む潤滑油組成物:
(A)下記の共重合体のうちの少なくとも一種:
(i)下記からなる成分のラジカル共重合により得られた共重合体:
(a)少なくとも一種のモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステル、またはC4−C28ジカルボン酸、その無水物又はエステル、
(b)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、および
(c)(a)及び(b)の単量体と共重合可能で、かつ下記からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノオレフィン化合物:
(1)アルキル基がヒドロキシル、アミノ、ジアルキルアミノもしくはアルコキシで置換されているかまたは未置換で、かつ炭素原子約1乃至約40個を含む、アルキルビニルエーテルおよびアリルアルキルエーテル、
(2)アルキルアミン及び炭素原子数約3乃至約10のモノエチレン不飽和モノもしくはジカルボン酸のN−アルキルアミド、ただしアルキル置換基は炭素原子約1乃至約40個を含む、
(3)炭素原子数約1乃至約8のカルボン酸のN−ビニルカルボキサミド、
(4)N−ビニル置換窒素含有複素環化合物、および
(5)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至約360個を含み、かつビニル、ビニリデンもしくはアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、ただし、用いるオレフィンは(i)(b)で用いるオレフィンと同じではない;
(ii)化合物(i)(a)と化合物(i)(b)をラジカル開始剤の存在下で反応させることにより得られた共重合体;
(iii)(a)化合物(i)(a)を化合物(i)(b)又は(i)(c)と、共重合体(i)または共重合体(ii)または両者の存在下で非ラジカル的触媒反応で反応させることにより、あるいは(b)共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)又は(i)(c)との非ラジカル的触媒反応による生成物と接触させることにより得られた共重合体;
(B)少なくとも二種のモノカルボン酸もしくはそのエステル、または少なくとも二種のジカルボン酸、その無水物もしくはエステル、またはそれらの混合物と反応することができる少なくとも一種のエーテル化合物;
(C)少なくとも2個の官能基を持ち、官能基の一方は少なくとも一種のモノカルボン酸もしくはそのエステルまたはジカルボン酸、その無水物もしくはエステルと反応することができ、他方の官能基は少なくとも一種の後処理剤と反応することができる少なくとも一種の脂肪族化合物。
【請求項9】
後処理剤が、環状カーボネート、線状モノカーボネートまたは線状ポリカーボネートである請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
後処理剤が、芳香族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸無水物または芳香族ポリカルボン酸エステルである請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
後処理剤が、エチレンカーボネート、無水フタル酸またはナフタル酸無水物である請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
少なくとも一種のエーテル化合物(B)が、エーテルポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ポリエーテルアミノアルコール、ポリエーテルアミノチオールおよびポリエーテルポリオールからなる群より選ばれる請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
(I)環状カーボネート、線状モノカーボネート、線状ポリカーボネート、芳香族ポリカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸無水物または芳香族ポリカルボン酸エステルから選ばれた後処理剤と、(II)下記のものを反応させることを含む潤滑油添加剤組成物とを反応させることを含む後処理済高分子分散剤の製造方法:
(A)下記の共重合体のうちの少なくとも一種:
(i)下記からなる成分のラジカル共重合により得られた共重合体:
(a)少なくとも一種のモノエチレン不飽和C3−C28モノカルボン酸もしくはそのエステル、またはC4−C28ジカルボン酸、その無水物又はエステル、
(b)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至360個を含み、かつビニル、ビニリデン又はアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、および
(c)(a)及び(b)の単量体と共重合可能で、かつ下記からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノオレフィン化合物:
(1)アルキル基がヒドロキシル、アミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシで置換されているかまたは未置換で、かつ炭素原子約1乃至約40個を含む、アルキルビニルエーテルおよびアリルアルキルエーテル、
(2)アルキルアミン及び炭素原子数約3乃至約10のモノエチレン不飽和モノもしくはジカルボン酸のN−アルキルアミド、ただし、アルキル置換基は炭素原子約1乃至約40個を含む、
(3)炭素原子数約1乃至約8のカルボン酸のN−ビニルカルボキサミド、
(4)N−ビニル置換窒素含有複素環化合物、および
(5)炭素原子約2乃至40個を含む少なくとも一種の1−オレフィン、または炭素原子約4乃至約360個を含み、かつビニル、ビニリデンもしくはアルキルビニリデン基の形で共重合可能な末端基を持つ少なくとも一種のポリオレフィン、またはそれらの混合物、ただし、用いるオレフィンは(i)(b)で用いるオレフィンと同じではない;
(ii)化合物(i)(a)と化合物(i)(b)をラジカル開始剤の存在下で反応させることにより得られた共重合体;
(iii)(a)化合物(i)(a)を化合物(i)(b)又は(i)(c)と、共重合体(i)または共重合体(ii)または両者の存在下で非ラジカル的触媒反応で反応させることにより、あるいは(b)共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)又は(i)(c)との非ラジカル的触媒反応による生成物と接触させることにより得られた共重合体;
(B)少なくとも二種のモノカルボン酸もしくはそのエステル、または少なくとも二種のジカルボン酸、その無水物もしくはエステル、またはそれらの混合物と反応することができる少なくとも一種のエーテル化合物;
(C)少なくとも2個の官能基を持ち、官能基の一方は少なくとも一種のモノカルボン酸又はそのエステルまたはジカルボン酸、その無水物又はエステルと反応することができ、他方の官能基は少なくとも一種の後処理剤と反応することができる少なくとも一種の脂肪族化合物。
【請求項14】
共重合体(iii)(b)において、該共重合体(i)または共重合体(ii)または両者を成分(C)の存在下で、化合物(i)(a)と化合物(i)(b)又は(i)(c)との非ラジカル的触媒反応による生成物と接触させる請求項13に記載の後処理済高分子分散剤の製造方法。
【請求項15】
内燃機関内のスス分散性またはスラッジ分散性または両方を改善する方法であって、主要量の潤滑粘度の油および有効量の請求項1に記載の後処理済高分子分散剤を含む潤滑油組成物を用いて内燃機関を作動させることを含む方法。

【公表番号】特表2011−518925(P2011−518925A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506475(P2011−506475)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/041631
【国際公開番号】WO2009/132250
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】