説明

潤滑油組成物中でのポリアルキル(メタ)アクリレートの使用

本発明は、潤滑油組成物中での温度を低減するためのポリアルキルエステルの使用に関し、その際、ポリアルキルエステルはクロロホルム中25℃で測定して5〜30ml/gの比粘度ηsp/cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物中でのポリアルキル(メタ)アクリレートの使用に関する。
【0002】
困難な運転条件下での可動の液圧式装置の過熱は公知の問題である。液圧式装置の個々の部材の摩擦、高い圧力低下を伴う体積流量および導管系における配管抵抗は作動液の温度上昇につながる。
【0003】
空気−油熱交換器、装置部材の対流および熱放射は同時に温度の上昇に抵抗する。個々の装置部材の構造設計、周囲条件、運転の種類および時間は、使用される作動液に生じる運転温度に作用する。
【0004】
構造設計において、断続的に運転されるタイプの装置に応じて、相応する静止時間および生じる液体の冷却が出発点となる。周囲温度を評価する際にも同じことが想定される。
【0005】
これらの構造的な想定から運転が逸脱すると(極めて高い出力および高い周囲温度での運転の長い時間)、このことにより液体温度は常に上昇し続ける。液体温度の上昇は、作動液の粘度および個々の装置部材、特に液圧式ポンプおよび原動機の機能および寿命を低下させる。
【0006】
装置部材を保護するために、臨界的な液体温度に達すると第一に、音響または視覚による警告が作動される。さらに温度が上昇する場合には装置が停止される。このような出来事は建築措置の完成または比較可能な期日と結びついた作業の進行にとって予測が困難であり、従って著しい妨げとなる。
【0007】
しかし、単純な構造上の解決方法、たとえば液体貯蔵容器の拡大、冷却装置の効果の拡充もしくは低い圧力で運転される液圧式ポンプの拡大は同様に欠点と結びついている。というのも、このことは装置の寸法、装置コストひいては装置価格が高くなることと結びついており、これは市場では認められえなかった。これに対して、寸法、作業圧力および特に作動液のための貯蔵容器の大きさを歴史的に見ると、装置構造はより高い圧力、明らかにより小さい貯蔵容器および冷却性能の不足が展開されている。さらに、原動機および液圧式ポンプの音響上のカプセル化は環境への自然な熱の放出を制限する。
【0008】
この問題については装置の運転者および部材の供給者からしばしば苦情が出ている。典型的な作業装置はたとえば浚渫機、ホイールローダー、トラクターおよび農業、林業および露天掘りのための特殊装置である。
【0009】
従って従来技術を考慮すると、本発明の課題は先に議論した液圧式装置の過熱の問題のための簡単な解決方法を提供することである。特にこの解決方法は性能を著しく損なうことなく達成されるべきである。
【0010】
さらに本発明の課題は、すでに運転されている液圧式装置においても使用することができる解決方法を提供することであった。
【0011】
さらに、特に安価に転換することができる解決方法を見いだすことを課題として見なすことができる。この場合、特に環境負荷を回避することができるべきである。
【0012】
前記の課題ならびに明示的に挙げられていないものの、本明細書中で導入的に議論した関係から容易に想到するか、もしくは推論することができる別の課題は、請求項1の全ての特徴を有するポリアルキル(メタ)アクリレートの使用により解決される。本発明による使用の有利な実施態様は請求項1を引用する従属請求項に記載されている。特別な潤滑油組成物に関して、請求項14は根本的な課題の解決方法を提供する。
【0013】
潤滑油組成物中での温度を回避するためのポリアルキル(メタ)アクリレートの使用により、容易に予測することができない方法で、前記の問題を容易な方法で低減することができる作動液を提供することができる。
【0014】
同時に本発明による使用により一連のその他の利点を達成することができる。これには特に以下のものが属する:
→本発明による使用は、すでに製造された液圧式装置において使用することができる。
→本発明による使用は、液圧式装置の過熱を防止する。
→本発明による使用により、温度が臨界的な範囲に上昇することなく、液圧式装置の高い性能が可能になる。従って本発明による使用は該装置の性能向上および作動液の温度の低下に貢献する。
→本発明による使用は特に容易かつ簡単に実施することができる。
→本発明による使用は、高い環境相容性を示す。
【0015】
本発明によれば、潤滑油組成物中でポリアルキルエステルを使用する。
【0016】
ポリアルキルエステルは本発明の範囲では、オレフィン系エステルから誘導されるポリマーである。これらのポリマーは専門業界で公知であり、かつ市販されている。この群の特に有利なポリマーは、特に種々のアルコール基を有していてもよい(メタ)アクリレート、マレエートおよび/またはフマレートを含有していてもよいモノマー組成物の重合により得ることができる。
【0017】
(メタ)アクリレートという表現は、メタクリレートおよびアクリレートならびに両者の混合物を含む。これらのモノマーは周知である。この場合、アルキル基は線状、環式または分枝鎖状であってよい。
【0018】
有利なポリアルキルエステルが得られる有利な混合物は、ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して、1もしくは複数の式(I)
【化1】

[式中、Rは水素またはメチルを表し、R1は1〜5個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、R2およびR3は無関係に水素を表すか、または式−COOR′の基を表し、その際、R′は水素を表すか、または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を表す]のエチレン性不飽和エステル化合物を0〜50質量%、特に2〜40質量%およびとりわけ有利には10〜30質量%含有していてよい。
【0019】
成分a)のための例は特に次のものである:
飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、フマレートおよびマレエート、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソ−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートおよびペンチル(メタ)アクリレート、
シクロアルキル(メタ)アクリレート、たとえばシクロペンチル(メタ)アクリレート、
不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、たとえば2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートおよびビニル(メタ)アクリレート。
【0020】
有利なポリアルキルエステルを製造するために重合すべき組成物は別の成分として、ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して、1もしくは複数の式(II)
【化2】

[式中、Rは水素またはメチルを表し、R4は6〜30個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、R5およびR6は無関係に水素を表すか、または式−COOR″の基を表し、その際、R″は水素を表すか、または6〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表す]のエチレン性不飽和エステル化合物を50〜100質量%、特に60〜98質量%および特に有利には70〜90質量%含有していてよい。
【0021】
これらには特に次のものが属する
飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、フマレートおよびマレエート、たとえばヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソ−プロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソ−プロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートおよび/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、たとえば2,4,5−トリ−t−ブチル−3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート;
不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、たとえばオレイル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、たとえば3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、ならびに相応するフマレートおよびマレエート。
【0022】
長鎖のアルコール基を有するエステル化合物、特に成分(b)に記載の化合物はたとえば(メタ)アクリレート、フマレート、マレエートおよび/または相応する酸と、長鎖の脂肪アルコールとの反応により得られ、その際、一般にエステルの混合物、たとえば種々の長鎖のアルコール基を有する(メタ)アクリレートが生じる。これらの脂肪アルコールには特にMonsanto社のOxo Alcohol(R)7911およびOxo Alcohol(R)7900、Oxo Alcohol(R)1100;ICI社のAlphanol(R)79;Sasol社のNafol(R)1620、Alfol(R)610およびAlfol(R)810;Ethyl Corporation社のEpal(R)610およびEpal(R)810;Shell AG社のLinevol(R)79、Linevol(R)911およびDobanol(R)25L;Sasol社のLial 125;Cognis社のDehydad(R)−およびLorol(R)タイプである。
【0023】
本発明の特別な態様によれば、有利なポリアルキルエステルを製造するための混合物は、ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して、少なくとも60質量%、有利には少なくとも70質量%の式(II)のモノマーを含有する。
【0024】
エチレン性不飽和エステル化合物の中から(メタ)アクリレートはマレエートおよびフマレートに対して特に有利である。つまり式(I)および(II)のR2、R3、R5およびR6は特に有利な実施態様では水素を表す。一般にメタクリレートはアクリレートに対して有利である。
【0025】
本発明の特別な実施態様によれば、式(II)の基R4の有利に少なくとも50質量%、特に有利には少なくとも70質量%が線状である。
【0026】
有利には式(II)の基R4の分枝鎖状の側鎖対線状の側鎖の比は、0.0001〜0.3の範囲、特に有利には0.001〜0.1の範囲である。
【0027】
本発明の特別な態様によれば、式(II)のエチレン性不飽和エステル化合物の質量に対して、式(II)のエチレン性不飽和エステル化合物の少なくとも60質量%がアルキル(メタ)アクリレートであるポリアルキル(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0028】
本発明の特別な態様によれば、有利には式(II)の成分に記載の長鎖のアルキル(メタ)アクリレートの混合物を使用し、その際、該混合物はアルコール基中に6〜15個の炭素原子を有する少なくとも1の(メタ)アクリレートならびにアルコール基中に16〜30個の炭素原子を有する少なくとも1の(メタ)アクリレートを含有する。有利にはアルコール基中に6〜15個の炭素原子を有する(メタ)アクリレートの割合は、ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して20〜95質量%の範囲である。アルコール基中に16〜30個の炭素原子を有する(メタ)アクリレートの割合は有利にはポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して0.5〜60質量%の範囲である。
【0029】
本発明のもう1つの態様によれば、8〜14個の炭素原子を有するオレフィン系不飽和エステルの割合は有利には、16〜18個の炭素原子を有するオレフィン系不飽和エステルの割合より大きいか、または同じである。
【0030】
有利なポリアルキルエステルを製造するための有利な混合物はさらに、式(I)および/または(II)のエチレン性不飽和エステル化合物と共重合することができるエチレン性不飽和モノマーを含んでいてよい。コモノマーにおける割合は、ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して有利には0〜50質量%の範囲、特に2〜40質量%およびとりわけ有利には5〜30質量%である。
【0031】
この場合、次の式
【化3】

[式中、R1*およびR2*は無関係に、水素、ハロゲン、CN、1〜20個、有利には1〜6個および特に有利には1〜4個の炭素原子を有し、1〜(2n+1)個のハロゲン原子(nはアルキル基の炭素原子の数である(たとえばCF3))により置換されていてもよい線状もしくは分枝鎖状のアルキル基、2〜10個、有利には2〜6個および特に有利には2〜4個の炭素原子を有し、1〜(2n−1)個のハロゲン原子、有利には塩素(nはアルキル基の炭素原子の数、たとえばCH2=CCl−である)により置換されていてもよいα,β−不飽和の線状もしくは分枝鎖状のアルケニル基またはアルキニル基、3〜8個の炭素原子を有し、1〜(2n−1)個のハロゲン原子、有利には塩素(nはシクロアルキル基の炭素原子の数である)により置換されていてもよいシクロアルキル基、6〜24個の炭素原子を有し、1〜(2n−1)個のハロゲン原子(nはアリール基の炭素原子の数である)、有利には塩素、および/または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基により置換されていてもよいアリール基、C(=Y*)R5*、C(=Y*)NR6*7*、Y*C(=Y*)R5*、SOR5*、SO25*、OSO25*、NR8*SO25*、PR5*2、P(=Y*)R5*2、Y*PR5*2、Y*P(=Y*)R5*2、NR8*2(付加的なR8*基、アリール基またはヘテロシクリル基により四級化されていてもよい)からなる群から選択されており、その際、Y*は、NR8*、SまたはO、有利にはOであってよく、R5*は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキルチオ、OR15*(R15*は水素またはアルカリ金属)、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ、アリールオキシまたはヘテロシクリルオキシであり、R6*およびR7*は無関係に水素または1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であるか、またはR6*およびR7*は一緒になって2〜7個、有利には2〜5個の炭素原子を有するアルケニル基を形成してもよく、その際、該基は、3員〜8員の、有利には3員〜6員の環を形成し、かつR8*は水素、1〜20個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状のアルキル基またはアリール基であり、
3*およびR4*は無関係に、水素、ハロゲン(有利にはフッ素または塩素)、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基およびCOOR9*(式中でR9*は、水素、アルカリ金属または1〜40個の炭素原子を有するアルキル基である)からなる群から選択されているか、またはR3*およびR4*は一緒になって式(CH2n′の基を形成してもよく、該基は1〜2n′個のハロゲン原子またはC1〜C4−アルキル基により置換されていてもよく、または式C(=O)−Y*−C(=O)を形成し、その際、n′は2〜6、有利には3または4であり、かつY*は前記で定義したとおりであり、かつその際、基R1*、R2*、R3*およびR4*の少なくとも2つは水素またはハロゲンである]に相応するコモノマーは、本発明による重合のために特に適切である。
【0032】
これらには、特にハロゲン化ビニル、たとえば塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン、
ビニルエステル、たとえばビニルアセテート;
スチレン、側鎖にアルキル置換基を1つ有する置換されたスチレン、たとえばα−メチルスチレンおよびα−エチルスチレン、環にアルキル置換基を1つ有する置換されたスチレン、たとえばビニルトルエンおよびp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、たとえばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレン、
複素環式ビニル化合物、たとえば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾールおよび水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾールおよび水素化ビニルオキサゾール、
ビニル−およびイソプレニルエーテル、
マレイン酸およびマレイン酸誘導体、たとえばマレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、マレイミド、メチルマレイミド
フマル酸およびフマル酸誘導体、
アクリル酸および(メタ)アクリル酸、
ジエン、たとえばジビニルベンゼン
が属する。
【0033】
特に有利には有利なポリアルキルエステルを製造するための組成物は、式(III)
【化4】

[式中、Rは無関係に水素またはメチルであり、R7は無関係に2〜1000個の炭素原子を有し、少なくとも1のヘテロ原子を有する基であり、Xは無関係に硫黄原子または酸素原子であるか、または式NR11(式中、R11は無関係に水素であるか、または1〜20個の炭素原子を有する基である)であり、かつnは3以上の整数である]により記載されるモノマーを含有している。
【0034】
基R7は2〜1000個、特に2〜100個、有利には2〜20個の炭素原子を有する基である。「2〜1000個の炭素原子を有する基」という表現は、2〜1000個の炭素原子を有する有機化合物の基を表す。これは芳香族およびヘテロ芳香族の基ならびにアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルケニル基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基ならびにヘテロ脂肪族基を含む。その際、前記の基は分枝鎖状であっても非分枝鎖状であってもよい。さらにこれらの基は通例の置換基を有していてもよい。置換基はたとえば1〜6個の炭素原子を有する線状および分枝鎖状のアルキル基、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチルまたはヘキシル;シクロアルキル基、たとえばシクロペンチルおよびシクロヘキシル;芳香族基、たとえばフェニルまたはナフチル;アミノ基、エーテル基、エステル基ならびにハロゲン化物である。
【0035】
本発明により芳香族基は、有利に6〜20個、特に6〜12個の炭素原子を有する単環式もしくは多環式の芳香族化合物の基を表す。ヘテロ芳香族基は、少なくとも1のCH基がNにより置換されており、かつ/または少なくとも2つの隣接するCH基がS、NHまたはOにより置換されているアリール基を表し、その際、ヘテロ芳香族基は3〜19個の炭素原子を有する。
【0036】
本発明によれば有利な芳香族もしくはヘテロ芳香族の基は、ベンゼン、ナフタリン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−トリアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,5−トリフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、インドール、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[c]フラン、イソインドール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンズイソチアゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ピリジン、ビピリジン、ピラジン、ピラゾール、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,4,5−トリアジン、テトラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、キノリン、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、プテリジンまたはキノリジン、4H−キノリジン、ジフェニルエーテル、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾオキサチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジン、ベンゾピリミジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アシリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリンおよびフェナントレンから誘導され、これらは場合により置換されていてもよい。
【0037】
有利なアルキル基にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、ノニル基、1−デシル基、2−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基およびエイコシル基が属する。
【0038】
有利なシクロアルキル基にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基が属し、該基は場合により分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のアルキル基により置換されている。
【0039】
有利なアルケニル基にはビニル基、アリル基、2−メチル−2−プロペン基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−デセニル基および2−エイコセニル基が属する。
【0040】
有利なアルキニル基にはエチニル基、プロパルギル基、2−メチル−2−プロピン基、2−ブチニル基、2−ペンチニル基および2−デシニル基が属する。
【0041】
有利なアルカノイル基にはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、2−メチルプロピオニル基、ブチリル基、バレロイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、デカノイル基およびドデカノイル基が属する。
【0042】
有利なアルコキシカルボニル基には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、2−メチルヘキシルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基またはドデシルオキシカルボニル基が属する。
【0043】
有利なアルコキシ基には、その炭化水素基が前記の有利なアルキル基の1つであるアルコキシ基が属する。
【0044】
有利なシクロアルコキシ基には、その炭化水素基が前記の有利なシクロアルキル基の1つであるシクロアルコキシ基が属する。
【0045】
基R10中に含有されている有利なヘテロ原子には特に酸素、窒素、硫黄、ホウ素、ケイ素およびリンが属する。
【0046】
本発明の特別な実施態様によれば、式(III)中の基R7は式−OHまたは−NR88の少なくとも1の基を有し、その際、R8は無関係に水素または1〜20個の炭素原子を有する基を含む。
【0047】
有利には式(III)中の基Xは式NHにより表すことができる。
【0048】
式(III)の基R7中の炭素原子に対するヘテロ原子の数の比は、広い範囲であってよい。有利にはこの比は1:1〜1:10の範囲、特に1:1〜1:5および特に有利には1:2〜1:4である。
【0049】
式(III)の基R7は2〜1000個の炭素原子を有する。特別な態様によれば基R7は最大で10個の炭素原子を有する。
【0050】
特に有利なコモノマーには特に、次のものが属する:
アリール(メタ)アクリレート、たとえばベンジルメタクリレートまたは
フェニルメタクリレート、その際、アリール基はそのつど非置換であるか、または4置換までであってもよい;
ハロゲン化アルコールのメタクリレート、たとえば
2,3−ジブロモプロピルメタクリレート、
4−ブロモフェニルメタクリレート、
1,3−ジクロロ−2−プロピルメタクリレート、
2−ブロモエチルメタクリレート、
2−インドエチルメタクリレート、
クロロメチルメタクリレート、
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、たとえば
3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、
3,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、
2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、
1,10−デカンジオール(メタ)アクリレート;
カルボニル含有メタクリレート、たとえば
2−カルボキシエチルメタクリレート、
カルボキシメチルメタクリレート、
オキサゾリジニルエチルメタクリレート、
N−(メタクリロイルオキシ)ホルムアミド、
アセトニルメタクリレート、
N−メタクリロイルモルホリン、
N−メタクリロイル−2−ピロリジノン、
N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、
N−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノン、
N−(2−メタクリロイルオキシペンタデシル)−2−ピロリジノン、
N−(3−メタクリロイルオキシヘプタデシル)−2−ピロリジノン;
グリコールジメタクリレート、たとえば1,4−ブタンジオールメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、
2−エトキシエトキシメチルメタクリレート、
2−エトキシエチルメタクリレート;
エーテルアルコールのメタクリレート、たとえば
テトラヒドロフルフリルメタクリレート、
ビニルオキシエトキシエチルメタクリレート、
メトキシエトキシエチルメタクリレート、
1−ブトキシプロピルメタクリレート、
1−メチル−(2−ビニルオキシ)エチルメタクリレート、
シクロヘキシルオキシメチルメタクリレート、
メトキシメトキシエチルメタクリレート、
ベンジルオキシメチルメタクリレート、
フルフリルメタクリレート、
2−ブトキシエチルメタクリレート、
2−エトキシエトキシメチルメタクリレート、
2−エトキシエチルメタクリレート、
アリルオキシメチルメタクリレート、
1−エトキシブチルメタクリレート、
メトキシメチルメタクリレート、
1−エトキシエチルメタクリレート、
有利に1〜20個、特に2〜8個のエトキシ基を有するエトキシメチルメタクリレートおよびエトキシ化(メタ)アクリレート;
アミノアルキル(メタ)アクリレートおよびアミノアルキル(メタ)アクリレートアミド、たとえばN−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、
ジメチルアミノプロピルメタクリレート、
3−ジエチルアミノペンチルメタクリレート、
3−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸のニトリルおよびその他の窒素含有メタクリレート、たとえば
N−(メタクリロイルオキシエチル)ジイソブチルケチミン、
N−(メタクリロイルオキシエチル)ジヘキサデシルケチミン、
メタクリロイルアミドアセトニトリル、
2−メタクリロイルオキシエチルメチルシアナミド、
シアノメチルメタクリレート;
複素環式(メタ)アクリレート、たとえば2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレートおよび1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン;
オキシラニルメタクリレート、たとえば
2,3−エポキシブチルメタクリレート、
3,4−エポキシブチルメタクリレート、
10.11−エポキシウンデシルメタクリレート、
2,3−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、
10,11−エポキシヘキサデシルメタクリレート;
グリシジルメタクリレート;
硫黄含有メタクリレート、たとえば
エチルスルフィニルエチルメタクリレート、
4−チオシアナトブチルメタクリレート、
エチルスルホニルエチルメタクリレート、
チオシアナトメチルメタクリレート、
メチルスルフィニルメチルメタクリレート、
ビス(メタクリロイルオキシエチル)スルフィド;
リン−、ホウ素−および/またはケイ素含有メタクリレート、たとえば
2−(ジメチルホスファト)プロピルメタクリレート、
2−(エチレンホスファイト)プロピルメタクリレート、
ジメチルホスフィノメチルメタクリレート、
ジメチルホスホノエチルメタクリレート、
ジエチルメタクリロイルホスホネート、
ジプロピルメタクリロイルホスフェート、2−(ジブチルホスホノ)エチルメタクリレート、
2,3−ブチレンメタクリロイルエチルボレート、
メチルジエトキシメタクリロイルエトキシシラン、
ジエチルホスファトエチルメタクリレートが属する。
【0051】
これらのモノマーを単独で、または混合物として使用することができる。
【0052】
エトキシ化(メタ)アクリレートはたとえば特に有利には1〜20個、とりわけ2〜8個のエトキシ基を有するエトキシ化アルコールによるアルキル(メタ)アクリレートのエステル交換により得ることができる。エトキシ化アルコールの疎水基は、有利には1〜40個、特に4〜22個の炭素原子を有していてよく、その際、線状ならびに分枝鎖状のアルコール基を使用することができる。別の有利な実施態様によればエトキシ化(メタ)アクリレートはOH末端基を有する。
【0053】
エトキシ化(メタ)アクリレートを製造するために考慮することができる市販のエトキシレートのための例は、商標Lutensol(R)Aのエーテル、特にLutensol(R)A3N、Lutensol(R)A4N、Lutensol(R)A7NおよびLutensol(R)A8N、商標Lutensol(R)TOのエーテル、特にLutensol(R)TO2、Lutensol(R)TO3、Lutensol(R)TO5、Lutensol(R)TO6、Lutensol(R)TO65、Lutensol(R)TO69、Lutensol(R)TO7、Lutensol(R)TO79、Lutensol(R)8およびLutensol(R)89、商標Lutensol(R)AOのエーテル、特にLutensol(R)AO3、Lutensol(R)AO4、Lutensol(R)AO5、Lutensol(R)AO6、Lutensol(R)AO7、Lutensol(R)AO79、Lutensol(R)AO8およびLutensol(R)AO89、商標Lutensol(R)ONのエーテル、特にLutensol(R)ON30、Lutensol(R)ON50、Lutensol(R)ON60、Lutensol(R)ON65、Lutensol(R)ON66、Lutensol(R)ON70、Lutensol(R)ON79およびLutensol(R)ON80、商標Lutensol(R)XLのエーテル、特にLutensol(R)XL300、Lutensol(R)XL400、Lutensol(R)XL500、Lutensol(R)XL600、Lutensol(R)XL700、Lutensol(R)XL800、Lutensol(R)XL900およびLutensol(R)XL1000、商標Lutensol(R)APのエーテル、特にLutensol(R)AP6、Lutensol(R)AP7、Lutensol(R)AP8、Lutensol(R)AP9、Lutensol(R)AP10、Lutensol(R)AP14およびLutensol(R)AP20、商標IMBENTIN(R)のエーテル、特に商標IMBENTIN(R)AG、IMBENTIN(R)U、IMBENTIN(R)C、IMBENTIN(R)T、IMBENTIN(R)OA、IMBENTIN(R)POA、IMBENTIN(R)NならびにIMBENTIN(R)Oのエーテル、ならびに商標Marlipal(R)のエーテル、特にMarlipal(R)1/7、Marlipal(R)1012/6、Marlipal(R)1618/1、Marlipal(R)24/20、Marlipal(R)24/30、Marlipal(R)24/40、Marlipal(R)O13/20、Marlipal(R)O13/30、Marlipal(R)O13/40、Marlipal(R)O25/30、Marlipal(R)O25/70、Marlipal(R)O45/30、Marlipal(R)O45/40、Marlipal(R)O45/50、Marlipal(R)O45/70およびO45/80である。
【0054】
これらのうちでアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、たとえばN−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド(DMAPMAM)、およびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、たとえば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が特に有利である。
【0055】
ポリアルキルエステルを製造するために特に有利な混合物はメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレートおよび/またはスチレンを含有する。
【0056】
これらの成分を単独で、または混合物として使用することができる。
【0057】
ポリアルキルエステルはクロロホルム中25℃で測定される比粘度ηsp/cが、ISO 1628−6により測定して5〜30ml/gの範囲、有利には10〜25ml/gの範囲である。
【0058】
不飽和エステル化合物を重合することにより得ることができる有利なポリアルキルエステルは、有利に1.2〜4.0の範囲の多分散度Mw/Mnを有する。このパラメータはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により確認することができる。
【0059】
前記の組成物からのポリアルキルエステルの製造は、自体公知である。たとえばこれらのポリマーは特にラジカル重合により、ならびに類似の方法、たとえばATRP(=Atom Transfer Radical Polymerization:原子移動ラジカル重合)またはRAFT(=Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer:可逆的な付加断片化連鎖移動)により行うことができる。
【0060】
通常の遊離基重合は特にUllmanns’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版に記載されている。一般にはこのために、重合開始剤ならびに連鎖移動剤を使用する。
【0061】
これには特に専門業界で周知のアゾ開始剤、たとえばAIBNおよび1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ならびにペルオキシ化合物、たとえばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロキシペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、前記の化合物2種類以上の相互の混合物ならびに前記の化合物と、前記に記載しなかったが、同様にラジカルを形成することができる化合物との混合物が属する。連鎖移動剤として特に油溶性のメルカプタン、たとえばt−ドデシルメルカプタンまたは2−メルカプトエタノールまたはテルペンの群からの連鎖移動剤、たとえばテルピノールが適切である。
【0062】
ATRP−法は自体公知である。これは「リビング」ラジカル重合であるが、メカニズムの記載により限定されるべきではないと考えられる。この方法で遷移金属化合物を、移動可能な原子基を有する化合物と反応させる。この場合、移動可能な原子基を遷移金属化合物に移動させ、このことにより金属が酸化される。この反応の際に、エチレン基に付加する基が形成される。しかし遷移金属化合物への原子基の移動は可逆的であるので、原子基は成長しているポリマー鎖に逆戻りし、このことによって制御された重合系が形成される。相応してポリマーの構造、分子量および分子量分布を制御することができる。
【0063】
この反応実施はたとえばJ−S.Wang等によりJ.Am.Chem.Soc.、第117巻、第5614〜5615頁(1995)に、MatyjaszewskiによりMacromolecules、第28巻、第7901〜7910(1995)に記載されている。さらに特許出願WO96/30421、WO97/47661、WO97/18247、WO98/40415およびWO99/10387は前記のATRPの変法を開示している。
【0064】
さらに本発明によるポリマーはたとえばRAFT法によっても得られる。この方法はたとえばWO98/01478に詳細に記載されており、これを開示の目的のために明言をもって引用する。
【0065】
重合は標準圧力、減圧または過圧で実施することができる。重合温度もまた重要ではない。しかし温度は一般に−20℃〜200℃、有利には0℃〜130℃および特に有利には60℃〜120℃の範囲である。
【0066】
重合は溶剤を用いても用いなくても実施することができる。溶剤の概念はこの場合、広く理解すべきである。
【0067】
有利には重合を無極性溶剤中で実施する。これには炭化水素溶剤、たとえば芳香族溶剤、たとえばトルエン、ベンゼンおよびキシレン、飽和炭化水素、たとえばシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンが属し、これらは分枝鎖状で存在していてもよい。これらの溶剤を単独で、ならびに混合物として使用することができる。特に有利な溶剤は鉱油、天然油および合成油ならびにこれらの混合物である。これらの中で鉱油が特に有利である。
【0068】
さらに、ポリアルキルエステルを潤滑油組成物中で使用する。潤滑油組成物は少なくとの1の潤滑油を含有する。
【0069】
潤滑油には、特に鉱油、合成油および天然油が属する。
【0070】
鉱油は自体公知であり、市販されている。鉱油は一般に石油または原油から蒸留および/または抽出および場合によりその後の精製により得られ、その際、鉱油の概念の下には特に高沸点の原油または石油の割合が該当する。一般に鉱油の沸点は5000Paで200℃よりも高く、有利には300℃より高い。シェール油の乾留、石炭乾留、褐炭の空気の遮断下での蒸留ならびに石炭もしくは褐炭の水素化による製造が同様に可能である。より少ない割合のために鉱油はまた植物性(たとえばホホバ、ナタネ)または動物性(たとえば牛脚油)に由来の原料からも製造される。相応して鉱油は、その由来に応じて、芳香族、環式、分枝鎖状および線状の炭化水素の異なった割合を有する。
【0071】
一般に原油もしくは鉱油中のパラフィンベース、ナフテン系および芳香族の割合は区別され、その際、パラフィンベースの割合という概念は、長鎖もしくは著しく分岐したイソ−アルカンを表し、かつナフテン系の割合という概念はシクロアルカンを表す。さらに鉱油はその由来および精製に応じて、低い分岐度を有する異なったn−アルカン、イソ−アルカンの割合、いわゆるモノメチル分枝鎖状パラフィン、およびヘテロ芳香族、特にO、Nおよび/またはSを有する化合物を有し、極性の特性は限定的にここに属することが認められる。しかしこの分類は困難である。というのも、個々のアルカン分子は長鎖で分枝鎖状の基を有していても、シクロアルカン基と芳香族割合とを有していてもよいからである。本発明の目的のために、この分類はたとえばDIN51378に従って行うことができる。極性の割合はASTM D2007に従って決定することもできる。
【0072】
n−アルカンの割合は有利な鉱油中で3質量%より少なく、O、Nおよび/またはS含有化合物の割合は6質量%より少ない。芳香族およびモノメチル分枝鎖状のパラフィンの割合は一般にそのつど0〜40質量%の範囲である。興味深い側面によれば鉱油は主としてナフテン系およびパラフィンベースのアルカンを含み、これは一般に13個より多くの、有利には18個より多くの、および特に有利には20個より多くの炭素原子を有する。これらの化合物の割合は一般に≧60質量%、有利には≧80質量%であるが、このことにより限定されるべきではない。有利な鉱油は、そのつど鉱油の全質量に対して、芳香族割合を0.5〜30質量%、ナフテン系割合を15〜40質量%、パラフィンベースの割合を35〜80質量%、n−アルカンを3質量%まで、および極性化合物を0.05〜5質量%含有している。
【0073】
従来の方法、たとえば尿素分離およびシリカゲルを用いた液体クロマトグラフィーにより行われていた特に有利な鉱油の分析は、たとえば以下の成分を有しており、その際、パーセントの記載はそのつど使用される鉱油の全質量に対するものである:
約18〜31個のC原子を有するn−アルカン:0.7〜1.0%、
18〜31個のC原子を有するわずかに分枝したアルカン:1.0〜8.0%、
14〜32個のC原子を有する芳香族化合物:0.4〜10.7%、
20〜32個のC原子を有するイソアルカン及びシクロアルカン:60.7〜82.4%、
極性化合物:0.1〜0.8%、
損失:6.9〜19.4%。
【0074】
鉱油の分析に関する貴重な示唆ならびに異なった組成を有する鉱油の列挙はたとえばUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、CD−ROM版の第5版、1997、キーワード「潤滑剤および関連製品」に見ることができる。
【0075】
合成油は特に有機エステル、たとえばジエステルおよびポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、合成炭化水素、特にポリオレフィン、シリコーン油および過フルオロアルキルエーテルを含み、これらの中からポリアルファオレフィン(PAO)が有利である。これらは多くの場合、鉱油よりも若干高価であるが、しかしその性能に関して利点を有する。
【0076】
天然油は動物性もしくは植物性の油、たとえば牛脚油またはホホバ油である。
【0077】
これらの潤滑油は混合物として使用することもでき、かつ多様なものが市販されている。
【0078】
潤滑油組成物中でのポリアルキルエステルの濃度は、組成物の質量に対して有利には2〜40質量%の範囲、特に有利には4〜20質量%の範囲である。
【0079】
前記の成分以外に、潤滑油組成物は別の添加剤を含有していてもよい。
【0080】
これらの添加剤には特に酸化防止剤、腐食防止剤、消泡剤、摩耗防止成分、着色剤、色安定剤、界面活性剤、流動点降下剤および/またはDI添加剤が属する。
【0081】
少なくとも1のポリアルキルエステルを含有する潤滑油組成物を有利に作動液として使用する。
【0082】
特に有利にはベーンポンプ、歯車ポンプ、ラジアルピストンポンプまたはアキシャルピストンポンプにおいて使用することができる。
【0083】
有利には、潤滑油組成物を50〜450バールの圧力で、特に100〜350バールの圧力範囲で、およびとりわけ有利には120〜200バールの圧力範囲で使用することができる。
【0084】
さらに、本発明は、
a)ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して、1もしくは複数の式(I)
【化5】

[式中、Rは水素またはメチルを表し、R1は、水素、1〜5個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、R2およびR3は無関係に水素を表すか、または式−COOR′の基を表し、その際、R′は水素を表すか、または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を表す]のエチレン性不飽和エステル化合物を0〜50質量%、有利には2〜40質量%およびとりわけ有利には10〜30質量%、
b)ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して、1もしくは複数の式(II)
【化6】

[式中、Rは水素またはメチルを表し、R4は6〜30個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、R5およびR6は無関係に水素を表すか、または式−COOR″の基を表し、その際、R″は水素を表すか、または6〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表す]のエチレン性不飽和エステル化合物を50〜100質量%、有利には60〜98質量%およびとりわけ有利には70〜90質量%、
c)ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して、コモノマーを0〜50質量%、有利には2〜40質量%およびとりわけ有利には5〜30質量%
からなるモノマー組成物を重合することにより得ることができる少なくとも1のポリアルキルエステルを含有する新規の潤滑油組成物に関し、
その際、ポリアルキルエステルは、クロロホルム中25℃で測定して5〜30ml/g、特に10〜25ml/gの比粘度ηsp/cを有し、
その際、潤滑油組成物はポリアルキルエステルの添加により温度T1+xで油圧作動性能Paを有し、その際、T1は20℃以上であり、その際、T1は有利には50〜120℃の範囲であり、かつxは5℃以上であり、その際、zは有利には10〜90℃の範囲であり、これらは少なくとも温度T1でポリアルキルエステルを添加しない作動液の油圧作動性能Pbと同じ大きさであり、
その際、ポリアルキルエステルを含有する潤滑油組成物の、温度に条件付けられた性能の低下d(Pa)/dTは、ポリアルキルエステルを含有していない潤滑油組成物の、温度により条件付けられた性能の低下d(Pb)/dTよりも小さい。
【0085】
ポリアルキルエステル、特に新規の化合物の使用は、少なくとも60℃、有利には少なくとも80℃およびとりわけ有利には少なくとも90℃での高温での油圧作動性能の改善につながる。
【0086】
有利にはポリアルキルエステルは高い油圧作動性能での潤滑油組成物の不所望の過熱を抑制する。高い油圧作動性能は短期的な最大性能に対して、有利には少なくとも60%、特に少なくとも70%およびとりわけ有利には少なくとも80%である。
【0087】
有利な潤滑油組成物は、ASTM D445によれば40℃で測定して10〜120mm2/sの範囲、特に有利には22〜100mm2/sの範囲の粘度を有する。
【0088】
本発明の特別な態様によれば、有利な潤滑油組成物はASTM D 2270により測定して、120〜350の範囲、特に140〜200の範囲の粘度指数を有する。
【0089】
以下では本発明を例および比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるべきではない。
【0090】
A)測定方法
液圧式装置の性能/温度挙動に対する作動液の影響を測定するために、天候により条件付けられる運転条件の変動を排除するために、液圧式ポンプのための性能試験ベンチを選択した。性能試験ベンチを実施するための以下の構造的な基準値を規定した:
→空間的に閉じられた実験室に温度および処理量により調整される調整可能な吸気および排気の構成
→回転数により調整される電動機の液圧式ポンプの駆動、出力22kW、測定装置、回転数および運転トルク、
→ベーンポンプを有する液圧式装置、270バールまでの圧力範囲、
→作動液(HF)のための断熱された貯蔵容器、
→種々の運転の種類のための自動化された運転、
→自動化された測定データ把握、測定データを統計学的に評価する手段。
【0091】
性能試験ベンチの構造は図1に記載されており、図面で使用されている番号の意味および部材は以下の表の最初の2つの欄から読み取ることができる。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
作動液を加熱および冷却するために熱交換器を有する吸い込み管を使用した。高圧精密濾過器および低圧精密濾過器ならびに電気的に制御される圧力調整弁を270バールまで使用した。
【0095】
生じる結果の再現性のために、厳しく定義された試験プログラムにより実施した。
【0096】
試験ベンチの運転開始後にまず新しいベーンポンプを回転数および負荷を変えながら一日運転した。このために、ISO 46またはISO 68のクラスの市販の作動液を使用した。その後、全ての試験作動液を以下の試験プログラムで処理した:
1.試験ベンチおよび全ての装置部材を20℃にコンディショニング(一夜)。
2.洗浄した高圧精密濾過器および低圧精密濾過器の設置(フィルターの最初のセット)。
3.フラッシング:試験液55kgによる貯蔵容器の充てん。引き続き以下の条件での運転:ポンプ回転数750l/分、圧力50バール、液体吸い込み温度80℃、2時間。
4.試験液の放出、高圧精密濾過器および低圧精密濾過器の取り外し。
5.洗浄した高圧精密濾過器および低圧精密濾過器の設置(フィルターの第二のセット)、試験液80kgによる貯蔵容器の充てん。
6.加熱試験:ポンプ回転数1500l/分、圧力150バール、冷却および加熱を停止、周囲温度20℃、液体の吸い込み温度は開始時に約40℃、終了時に約90℃。
7.効率試験:ポンプ回転数1500l/分、圧力は開始時に50バール、終了時に250バール、工程で50バール、液体の吸い込み温度は一定して80℃。
8.冷却サイクル:ポンプ回転数750l/分、圧力0バール、液体吸い込み温度は開始時に約90℃、終了時に約40℃。
9.加熱試験:ポンプ回転数1500l/分、圧力250バール、冷却および加熱を停止、周囲温度20℃、液体の吸い込み温度は開始時に約40℃、終了時に約90℃。
10.効率試験:ポンプ回転数1500l/分、圧力は開始時に50バール、終了時に250バール、工程で50バール、液体の吸い込み温度は一定して80℃。
11.試験液の放出、高圧精密濾過器および低圧精密濾過器の取り外し。
【0097】
本発明の基礎となっているデータは、上記の試験プログラムの工程6および9において測定した。これはそのつど、冷却を停止した時に進行した試験段階である。これによりポンプ中の温度上昇を測定することができる。従って添加剤を含有する作動液が有するわずかな温度上昇は、添加剤を含有しない作動液に対する温度の低下と同一視することができる。工程6を150バールの圧力で、工程9を250バールの圧力で実施した。
【0098】
油圧作動性能は液圧式ポンプの実際の流量により直接、導き出すことができる。一般に次のことが該当する:液圧式装置中の実際の流量Qaひいてはこの流量と関連する体積流が高いほど、油圧作動性能は高い。実際の流量は、前記の流量測定装置により上記の液体循環において直接読み取ることができた。油圧作動性能は、文献(たとえばF.W.Hoefer等、Memento de Technologie Automobile、第1版、第650頁、Robert Bosch GmbH、1988)に記載されている文脈で測定することができた。
【0099】
PH(kW)=(Pout×Qa)/600
その際、Pout=バールで記載されるポンプ出口の圧力ならびにQa=l/分で記載される実際の流量。
【0100】
試験は、実際の流量を測定される液体温度に依存して150バールもしくは250バール(ポンプ出口)の圧力で測定することである。上記の文脈に関して、一定の液体温度での油圧作動性能を直接、推論することができる。
【0101】
B)ポリアルキルエステルの製造
ポリマー溶液A〜Dの合成は、そのつど鉱油中で、たとえばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版に記載されているように、通例の遊離基重合により行った。重合開始剤として、t−ブチルペルオクトエートならびに連鎖移動剤としてドデシルメルカプタンを使用する。溶剤として使用される鉱油はKuwait Petroleum社の100 Solvent Neutral油である。100℃の温度で重合し、t−ブチルペルオクトエートを後供給し、かつその後、製造されるポリマー溶液の残留モノマー含有率が2質量%より少なくなるまで重合する。これは通常、6時間の全工程時間後に該当する。ポリマーA〜Dは、そのつど使用されるモノマーの全質量に対して、メチルメタクリレート11〜27質量%ならびに長鎖のアルキル置換C12〜C18−メタクリレートからなる混合物63〜89質量%を含有していた。クロロホルム中で25℃で測定される比粘度ηspecは、ポリマーAに関しては17ml/g、ポリマーBに関しては21ml/g、ポリマーCに関しては25ml/gならびにポリマーDに関しては40ml/gであった。
【0102】
a)ポリマーAの製造
モノマー混合物の組成:
12〜C18−アルキルメタクリレート混合物 54.375kg、
メチルメタクリレート 18.125kg、
装入物:
100Nの鉱油 27.5kg、
モノマー混合物 4.1kg、
ドデシルメルカプタン 0.01kg、
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.026kg。
【0103】
供給流:
モノマー混合物 68.4kg、
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.20kg。
【0104】
ドデシルメルカプタン 0.86kg、
後供給工程:
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.126kg。
【0105】
工程の記載:
還流冷却器および攪拌装置を備えた150lの重合反応器に室温で上記の成分(装入物)を充てんする。引き続き、該装入物をドライアイス0.62kgで脱気し、かつ100℃の温度に加熱する。5分後に、装入物に関して計算される開始剤量を添加し、かつ同時に供給を開始する。全供給量を3.5時間で反応器に供給する。その後、100℃で2時間、後攪拌する。引き続き、生成物に開始剤を後供給し、かつ100℃でさらに2時間、後攪拌する。
【0106】
ηsp/c=17ml/g。
【0107】
b)ポリマーBの製造
モノマー混合物の組成:
12〜C18−アルキルメタクリレート混合物 62.35kg、
メチルメタクリレート 10.15kg、
装入物:
100Nの鉱油 27.5kg、
モノマー混合物 4.1kg、
ドデシルメルカプタン 0.01kg、
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.026kg。
【0108】
供給流:
モノマー混合物 68.4kg、
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.19kg。
【0109】
ドデシルメルカプタン 0.53kg、
後供給工程:
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.126kg。
【0110】
工程の記載:
製造は、ポリマーA)において記載したように行う。
【0111】
ηsp/c=21ml/g。
【0112】
c)ポリマーCの製造
モノマー混合物の組成:
12〜C18−アルキルメタクリレート混合物 60.9kg、
メチルメタクリレート 9.1kg、
装入物:
100Nの鉱油 30.0kg、
モノマー混合物 4.1kg、
ドデシルメルカプタン 0.01kg、
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.026kg。
【0113】
供給流:
モノマー混合物 65.9kg、
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.22kg。
【0114】
ドデシルメルカプタン 0.27kg、
後供給工程:
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.126kg。
【0115】
工程の記載:
製造は、ポリマーA)において記載したように行う。
【0116】
ηsp/c=25ml/g。
【0117】
d)ポリマーD)の製造
モノマー混合物の組成:
12〜C18−アルキルメタクリレート混合物 54.8kg、
メチルメタクリレート 8.2kg、
装入物:
100Nの鉱油 37.0kg、
モノマー混合物 4.1kg、
ドデシルメルカプタン 0.01kg、
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.026kg。
【0118】
供給流:
モノマー混合物 58.9kg、
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.15kg。
【0119】
ドデシルメルカプタン 0.12kg、
後供給工程:
t−ブチル−ペル−2−エチル−ヘキサノエート 0.126kg。
【0120】
工程の記載:
製造は、ポリマーA)において記載したように行う。
【0121】
ηsp/c=40ml/g。
【0122】
C)実施例1〜7および比較例1〜4
ポリマーから種々の油圧油を製造した。油圧油の組成は第1表に記載されている。調製物はDIN51524により製造した。従って、ISOのグレード46の油の動粘度は46mm2/s±10%の粘度範囲にあり、ならびにISOのグレード68の油の粘度は68mm2/s±10%の範囲にあった。
【0123】
調製物を製造するために鉱油中にあらかじめ溶解したポリマー(第1表でポリマー溶液として記載)を使用した。使用されるポリマー溶液のポリマー濃度は、ポリマーAおよびBの場合には72.5質量%、ポリマーCの場合には70質量%ならびにぽリマーDの場合には63質量%であった。
【0124】
DIパケットとして、第1表に記載されている全ての調製物に関してOronite社の市販品Oloa 4992を使用した。Oloa 4992の濃度は、試験した全ての調製物に関して、0.6質量%で一定に維持した。
【0125】
使用した油は、全て鉱油であり、その粘度指数は約100(±5)の狭い範囲で変動する。使用される鉱油は市場で入手することができる。たとえばEsso 80は、Exxon Mobil社のSN80の油であり、KPE100はKuwait Petroleum社のSN100の油であり、かつEsso 600はExxon Mobil社のSN600の油である。Nexbase 3020は前記の油に対してFortum社の水素処理した油である。
【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
調製物を製造する際の油もしくは油混合物の選択(上記の例および比較調製物ではEsso 80、KPE 100、Esso 600ならびにNexbase 3020の質量比)は、この関連では、油を狭い範囲のVI範囲で使用し、かつ全ての調製物を同一の動粘度に調整する場合には重要ではない。第1表に記載されている種々の油組成物の選択は単に、40℃で測定される動粘度を、ISO46の液体に関しては46mm2/s(±10%)ならびにISO68の液体に関しては68mm2/s(±10%)の一定の値に維持することのみに起因する。このことは必要である。というのも、異なったポリマー濃度を有する調製物ならびに異なった分子量を有するポリマーを使用するからである。
【0129】
異なった温度で測定される油圧作動性能は以下の第2表および第3表から読み取ることができる。
【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
【表7】

【0133】
【表8】

【0134】
【表9】

【0135】
【表10】

【0136】
【表11】

【0137】
ISO 46に分類される液体を用いて圧力150バールで実施した全ての試験において、ポリマーを含有していない液体(比較例1)と比較して、ポリマー溶液A、BまたはCを含有する調製物を例1〜6により使用した場合にはより良好な性能/温度比が達成された。このことは特に、高い液体温度(たとえば60℃より高い温度)で明らかであった。同様に、付録に見られるデータは、このことは、そのつどのポリマー溶液A、BまたはCの相対的に低い(例1、2および3の場合には4.9〜8.4質量%)または比較的高い(例4、5および6の場合には11.0〜19.6質量%)濃度を使用するかどうかとは無関係に達成することができた。しかし、溶液A、BまたはCと比較してポリマーの分子量がより高いことを特徴とするポリマー溶液Dを使用する場合、ポリマーを含有していない調製物と直接比較した場合により劣った性能/温度比が観察された。
【0138】
同じ試験をISO46の液体を使用して圧力150バールではなく250バールで実施した場合、ポリマー溶液Cを4.9質量%含有していた例3による調製物による改善は、ポリマーを含有していない油に対して低下した。これに対して比較例2に記載のポリマーDを含有する調製物は、比較例1に記載のポリマーを含有していない油より明らかに劣っており、このことはすでに150バールの圧力でも該当した。例1および2に記載のポリマー溶液AもしくはBを含有する油は、圧力250バールで比較例1に記載のポリマー不含の油よりも明らかに優れていた。
【0139】
この効果は動粘度に限定されていない。たとえば例7および8は比較例4と比べて、ISO68の液体を用いても予測していなかった性能の向上を達成することができる(第3表の比較例4ならびに例7および8を参照のこと)。このことは150バールでも250バールでも示すことができた。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】性能試験ベンチの構造を示す図
【符号の説明】
【0141】
1 油圧ポンプ、 2 駆動モーター、 3 フラッシュモーター、 4 フラッシュポンプ、 5 タンク、 6 主導管系、 7 流量計、 8 比例バルブ、 9 フィルター、 10、11、12 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物中での温度を低減するためのポリアルキルエステルの使用であって、その際、ポリアルキルエステルはクロロホルム中25℃で測定して5〜30ml/gの比粘度ηsp/cを有する、ポリアルキルエステルの使用。
【請求項2】
ポリアルキルエステルが、高温における油圧作動性能の改善につながることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
温度が少なくとも60℃、特に少なくとも80℃であることを特徴とする、請求項2記載の使用。
【請求項4】
ポリアルキルエステルが、高い油圧作動性能における潤滑油組成物の不所望の過熱を抑制することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
潤滑油組成物が作動液であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
ポリアルキルエステルがポリアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
潤滑油組成物が40℃で測定して10〜120mm2/sの範囲の動粘度を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
潤滑油組成物が、120〜350の範囲の粘度指数を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
潤滑油組成物がポリアルキルエステルを2〜40質量%含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
潤滑油組成物が少なくとも1の鉱油および/または合成油を含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
潤滑油組成物が、酸化防止剤、腐食防止剤、消泡剤、摩耗防止成分、着色剤、着色安定剤、界面活性剤、流動点降下剤またはDI添加剤を含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
潤滑油組成物をベーンポンプ、歯車ポンプ、ラジアルピストンポンプまたはアキシャルピストンポンプ中で使用することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
潤滑油組成物を、圧力50〜450バール、特に100〜350バールの圧力範囲で使用することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
a)ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して、1もしくは複数の式(I)
【化1】

[式中、Rは水素またはメチルを表し、R1は水素、1〜5個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、R2およびR3は無関係に水素を表すか、または式−COOR′の基を表し、その際、R′は水素を表すか、または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を表す]のエチレン性不飽和エステル化合物を0〜50質量%、
b)ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物の質量に対して、1もしくは複数の式(II)
【化2】

[式中、Rは水素またはメチルを表し、R4は6〜30個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、R5およびR6は無関係に水素を表すか、または式−COOR″の基を表し、その際、R″は水素を表すか、または6〜30個の炭素原子を有するアルキル基を表す]のエチレン性不飽和エステル化合物を50〜100質量%、
c)ポリアルキルエステルを製造するためのモノマー組成物に対して、コモノマーを0〜50質量%
からなるモノマー組成物を重合することにより得られる少なくとも1のポリアルキルエステルを含有し、その際、該ポリアルキルエステルはクロロホルム中25℃で測定して5〜30ml/gの比粘度ηsp/cを有する潤滑油組成物において、該潤滑油組成物はポリアルキルエステルの添加により温度T1+xで油圧作動性能Paを有し、その際、T1は20℃以上であり、かつxは5℃以上であり、これは温度T1でポリアルキルエステルが添加されていない作動液の油圧作動性能Pbと少なくとも同じ大きさであり、その際、ポリアルキルエステルを含有する潤滑油組成物の、温度により条件付けられる性能低下d(Pa)/dTは、ポリアルキルエステルを含有していない潤滑油組成物の、温度により条件付けられる性能低下d(Pb)/dTよりも小さいことを特徴とする、潤滑油組成物。
【請求項15】
1が50〜120℃の範囲であることを特徴とする、請求項14記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
xが10〜90℃の範囲であることを特徴とする、請求項14または15記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
式(II)に記載の基R4の少なくとも50質量%が線状であることを特徴とする、請求項14から16までのいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
式(II)に記載の基R4の分枝鎖状の側鎖対線状の側鎖の比が、0.0001〜0.3の範囲であることを特徴とする、請求項14から17までのいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
8〜C15の割合が、C16〜C18の割合と同じであるか、または該割合よりも大である、請求項14から18までのいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
ポリアルキルエステルが、1.2〜4.0の範囲の多分散度Mw/Mnを有することを特徴とする、請求項14から19までのいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
ポリアルキルエステルが、ポリアルキル(メタ)アクリレートであり、その際、式(II)のエチレン性不飽和エステル化合物の全質量に対して、式(II)のエチレン性不飽和エステル化合物の少なくとも60質量%がアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項14から20までのいずれか1項記載の潤滑油組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−535596(P2007−535596A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509895(P2007−509895)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001907
【国際公開番号】WO2005/108531
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(399020957)ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (38)
【氏名又は名称原語表記】RohMax Additives GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】