説明

濁水処理システム及びその濁水処理方法

【課題】低コストで大量の濁水を処理可能な濁水処理システムおよびその濁水処理方法を提供する。
【解決手段】所定の敷地を包囲した畦2aで形成する滞留部2に濁水を滞留させ、畦の一部の越流畦2bで濁水の表層の余剰水を越流させ、土粒子を補足する中詰め材3bを詰め入れた濁水濾過溝3に越流した濁水を導入させ、濁水濾過溝3から排水された濁水に凝集剤添加装置4により土粒子凝集剤を添加し、混合撹拌槽5で土粒子凝集剤と濁水の混合液を底部から汲み上げて水面上から噴射することで撹拌しその表層の余剰水を排水させ、沈殿分離槽6のうち上方の仕切筒6aにより仕切られた一方の領域で排水された混合液を受け入れ下方の連通する部分で土粒子凝結体21を沈殿分離し上方の仕切られた他方の領域から表層の余剰水を排水する。これらは簡易な設備で構成でき、大量の濁水を処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば耕地、裸地において降雨時等に生じる大量の濁水を処理する濁水処理システム及びその濁水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、耕地・裸地に含まれる土粒子は、降雨時に雨水に溶出して大量の濁水となる。また、宅地造成等の大規模な土木工事においても、掘削土砂と共に大量の濁水が発生する。この濁水中には様々な粒径の土粒子が混在しており、濁水が場外に流出した場合には、比較的おおきな粒径の土粒子によって広範囲に泥幕をつくり植物の生態に影響を及ぼすという問題がある。また微細な土粒子によっては、河川・海を汚濁し、水棲動植物の生態に影響を及ぼしてしまう。このため工事現場においては、このような濁水から土粒子を除去して排水基準値をクリアーするための設備を設置する必要がある。
【0003】
一般に、上記のようにして発生する濁水を、例えばメスシリンダーに取り静止状態で放置すると、まず水面付近の表層部分に上澄みができ、その後土粒子がメスシリンダー底部に沈殿する(沈殿に要する時間は濁水中の土粒子の性状による)。このように濁水は水と土粒子との混合物であるため、外部からの振動や多量の濁水の流入等により土粒子の沈殿が妨げられない限り、土粒子と上澄水とに分離することができる。
【0004】
そこで、従来より、工事現場においては、上記したような大量の濁水を処理するための沈砂池の設置が条例などにより義務付けられている。この沈砂池によれば、上記メスシリンダーと同様の原理により、発生した濁水を一旦貯留することで濁水中の土粒子を自然沈殿させ、その上澄水のみを河川や湖沼に放流することができる。
【0005】
またこの沈砂池以外にも、濁水から土粒子を除去する濁水処理装置を使用する方法がある。この濁水処理装置の一般的な処理方法としては、濁水中に凝集剤を混入させることで濁水中の微細土粒子を凝集を促進し、粒径の大きい土粒子凝結体とすることで沈殿速度を速め、排水可能な清水と沈殿した汚泥との固液分離を効率よく行うものである。
【0006】
また他にも、不織布膜を用いた分離膜ユニットに低い圧力で濁水中の土粒子を濾過する濁水処理装置も提案されている(例えば、特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開2001−104953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、比較的広い面積を有する工事現場では、降雨量がわずかに増加するだけで濁水の発生量が急増することになり、沈澱池だけでは処理しきれずに排水基準値をクリアーすることが困難となる。
【0009】
また濁水処理装置を使用して処理する場合でも、凝集剤を混入するだけの方法や上記特許文献1に記載の濾過処理方法による従来の濁水処理技術では、理論的に大量の濁水処理は不可能である。したがって、処理量の増加に対しては処理装置の設置台数を増加する必要があり、コストの負担が大きく経済的ではなかった。
【0010】
本発明の目的は、低コストで大量の濁水を処理可能な濁水処理システムおよびその濁水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の濁水処理システムは、所定の敷地を包囲した畦で濁水を滞留させ、畦の一部を濁水の表層の余剰水が越流可能な越流畦で造成した滞留部と、越流畦から越流した濁水を導入させる配置に造成した地中排水溝に土粒子を補足可能な中詰め材を詰め入れた濁水濾過溝と、濁水濾過溝から排水された濁水に土粒子凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、土粒子凝集剤と濁水とを受け入れて混合し、底部から汲み上げた混合液を水面上から噴射して内部の混合液を撹拌し土粒子結合体をつくりその表層の余剰水を排水する混合撹拌槽と、混合撹拌槽から排水された混合液を受け入れ、内部の上方を仕切り壁により混合液を受け入れる領域と表層の余剰水を排水する領域とに仕切るとともに、下方のそれら領域が連通する部分で土粒子凝結体を沈殿分離する沈殿分離槽とを有するものである。
【0012】
また、本発明による濁水処理システムは、撹拌槽及び沈殿分離槽の少なくとも一方の底部に、土粒子凝結体を濾過可能な袋状の透水性不織布とこれを水面上に引き上げ可能な牽引具とからなる凝結体除去手段を設置することが望ましい。
【0013】
また、本発明による濁水処理システムは、滞留部の所定の敷地内にも越流畦を造成することが望ましい。
【0014】
また、本発明による濁水処理システムは、沈殿分離槽の外槽は沈砂池を利用して構成するのが望ましい。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の濁水処理方法は、所定の敷地を包囲した畦で濁水を滞留させ、畦の一部で濁水の表層の余剰水を越流させ、土粒子を補足する中詰め材を詰め入れた濁水濾過溝に越流した濁水を導入させ、濁水濾過溝から排水された濁水に土粒子凝集剤を添加し、混合撹拌槽で土粒子凝集剤と濁水の混合液を底部から汲み上げて水面上から噴射することで撹拌し土粒子結合体をつくりその表層の余剰水を排水させ、沈殿分離槽のうちの上方の仕切り壁により仕切られた一方の領域で排水された混合液を受け入れ下方の連通する部分で土粒子凝結体を沈殿分離し上方の仕切られた他方の領域から表層の余剰水を排水する方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、滞留部において濁水を滞留させて越流畦で越流させることにより粒径の大きな土粒子を除去できる。さらに中詰め材を詰め入れた濁水濾過溝に通過させることにより土粒子を除去できる。その後の濁水に土粒子凝集剤を添加して混合撹拌槽にて撹拌することで微細土粒子を土粒子凝結体として凝集し、その混合液を沈殿分離槽にて土粒子凝結体と清水とにすばやく固液分離することができる。このように単純な設備で濁水から土粒子を効率よく除去できるため、低コストで大量の濁水を処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態による濁水処理システムの全体の構成を示す平面図である。この図1において、本実施形態による濁水処理システム1は、概略的に言うと、降雨によって濁水が発生する滞留部2と、この滞留部2から排水された濁水を導くとともに濾過する濁水濾過溝3と、この濁水濾過溝3から排水された濁水に土流子凝集剤(詳細は後述する)を添加する凝集剤添加装置4と、土粒子凝集剤が添加された濁水を受け入れて混合撹拌し混合液を排水する混合撹拌槽5と、この混合撹拌槽5から排水された混合液を受け入れて土粒子凝結体を沈殿させて清水を排出する沈殿分離槽6とを有している。
【0019】
以下において、各部をそれぞれ詳細に説明する。
【0020】
図2は、図1中のI−I断面による側断面図であり、これにより滞留部の構成を説明する。この図2において、滞留部2は、工事現場である敷地11を四辺で包囲する畦2a(土積堤防)で構成されており、特に最も低い位置にある畦が越流畦2bとなっている。
【0021】
滞留部2内の敷地11の地表面に数cmの水溜りができると、その後の降雨水で敷地11の表土を溶かして濁水化することがない。したがって、敷地11を畦2a,2bで包囲した滞留部2で表土の土粒子を溶かす初期降雨を滞留させ、初期降雨で発生した濁水を自然沈澱処理・自然浸透させて大きい粒径の土粒子の流出を抑止する。仮に滞留面積を5000mとすれば、約水深10cmの滞留水量は500mとなる。単純計算で1日当り100mmの降雨量を滞留でき、土粒子の流出抑止が可能である。現場敷地がさらに広大な場合は、図3に示すように敷地11内にさらに越流畦2bを造成して適当な面積に区分すれば良い。
【0022】
そして、所定の滞留水位以上の降雨水を余剰水として越流畦2bから場外に排出する。つまり、滞留部2内の滞留水の表層の余剰水を越流畦2bから越流させて排水する。このため、少なくとも初期降雨により形成される滞留範囲の1辺を越流させるよう越流畦2bを造成することが望ましい。
【0023】
また、滞留水が再度濁水化(土粒子により濁る)することがないよう、越流畦2bにおいて越流する流速を小さくする。降雨量が少ない場合は、敷地11内で浸透、あるいは自然蒸発で土粒子の流出は抑止できる。降雨量が多い場合や、越流畦2bが短い場合は、越流水が集中して流速が速くなり、滞留水を乱し、土粒子が沈殿していた滞留水が再び濁水となって土粒子が流出してしまうことになる。そのため、越流畦2bの長さを少なくとも滞留範囲となる敷地の1辺長全体で形成することが望ましい。また越流畦2bの上端の縁部は水平に形成して表面をコンクリートで覆うようにし、それにより長手方向に渡って均一に越流させることができるため、滞留水を乱すことなく上澄み水となっている表層の余剰水を場外に排水できる。そして図3に示したように、敷地11内に越流畦2bを何段にも設けることで濁水の多段浄化も行えることになる。
【0024】
また、図4に示すように越流畦2bは、土積堤防の代わりにコンクリート壁12で構成することもできる。そしてその場合には、コンクリート壁12の設置を確実にするために、図示するように後述する濁水濾過溝3との間にコンクリートなどで固めた固定領域13を設ける必要がある。
【0025】
次に、濁水濾過溝3について説明する。
【0026】
図5は、濁水濾過溝3と混合撹拌槽5と沈殿分離槽6を拡大して示した平面図であり、図6は図1中のII−II断面による側断面図であり、これらにより濁水濾過溝3の構成を説明する。この図3において、濁水濾過溝3は、地中に掘削した排水溝3aに土粒子を補足可能な中詰め材3bを詰め入れたものであり、それら中詰め材3b間の空隙に越流した余剰水を溜め、濁水濾過溝3内で自然浸透及び土粒子沈澱を行って、土粒子の流出を防止するものである。滞留水が増量し、濁水となって越流畦2bから越流した余剰水中の土粒子を沈澱して、土粒子の流出を抑止するとともに余剰水中の浮遊物質を除去する。
【0027】
濁水濾過溝3は越流畦2bに沿って造成し、越流畦2bから越流した余剰水を場外の地表面に流下させずに、その場で濁水濾過溝3内に浸透させる。余剰水によって二次的濁水を発生させない(二次的に濁らせない)ように濁水濾過溝3は越流畦2bの付近に造成する。余剰水は濁水濾過溝3の下流側に設置した混合撹拌槽5と沈殿分離槽6とからなる濁水処理装置7に導く。
【0028】
余剰水の越流畦2bの越流において二次的濁水発生がない小規模の工事現場では、濁水濾過溝3の代わりに既製品のコンクリートなどからなるU字溝の排水溝でも良い。また、図2に示したように越流畦2bから越流した余剰水が濁水濾過溝3の表面を通過して外部へ流出することがないよう、反対側に流出防止畦14を造成しておくのが望ましい。
【0029】
中詰め材3bは、間隙率の大きいものを使用する。例えば、砂や砂利あるいは掘削土砂を固粒化剤で砂利状に固結させたものでもよい。この固粒土砂は濁水濾過溝3の掘削土砂にセメントと凝集剤水溶液をコンクリートミキサーで混練し形成する。濁水濾過溝3は、滞留範囲の越流水が浮遊物質量の排水基準値200mg/1000L(濁水1000L中に含まれる土粒子等の浮遊物の質量が200mg以下)をクリアーしていない濁水である場合に、濁水濾過溝3内で土粒子を沈殿させて浄化する。
【0030】
次に、凝集剤添加装置4について説明する。
凝集剤添加装置4は、濁水濾過溝3から流出された濁水中の土粒子の凝結を促進させて土粒子凝結体を生成させる凝集剤を添加する装置である。凝集剤は粉状のものや液状のものを利用でき、それに合わせてポンプやホッパを利用する。混合撹拌槽5に流入する流速を検知して凝集剤添加口が自動的に開閉するものを使用する。また、この開閉操作は現場管理者が操作してもよい。
【0031】
次に、混合撹拌槽5について説明する。
【0032】
図5、図6において、混合撹拌槽5は、流入する濁水を一時的に貯水する混合貯水槽15を有し、槽内に設置した潜水ポンプ16の揚水力を利用して添加された凝集剤と濁水を強制的に混合撹拌して土粒子凝結体と清水の混合液を生成するものである。底部に設けた潜水ポンプ16は吐出口に接続した揚水パイプ17を介して混合液を水面より上方に汲み上げ、適当な落差で多口ノズル18から噴射して落下させ、混合撹拌槽5へ混合液を環流させる。混合液は樋19を通じて沈殿分離槽6へ排水する。
【0033】
混合撹拌槽5に流入した濁水がそのまま水面を通過して樋へ排水されることがないよう、混合撹拌槽5入口の水面には通過防止板20を設置する。混合撹拌槽5内に設置した潜水ポンプ16から混合液を汲み上げ、揚水パイプ17を通じて水面で複数に分岐した多口ノズル18から水面へそのまま下方へ噴射する。
【0034】
多口ノズル18は混合撹拌槽5の上端から適当な高さで配置し、噴射水に落下落差を持たせて噴射させ、潜水ポンプ16の吸引による渦の流れと併せて凝集剤と濁水の混合撹拌を効果的に行う。凝集剤と濁水を混合撹拌させると、濁水中の微細土粒子が凝集剤と結合して土粒子凝結体21を生成し、清水と土粒子凝結体21の混合液となる。樋19の側壁は側部から混合液が漏水しないように、側壁を十分に高く形成する必要がある。
【0035】
次に、沈殿分離槽6について説明する。
【0036】
図5、図6において、沈殿分離槽6は、沈殿貯水槽22の中に底のない四角筒状の仕切筒6a(仕切り壁)を設置してその外側の領域の外槽部23と内側の領域の内槽部24とに仕切っている。仕切筒6aは底から支柱で支えても上方から吊り下げてもよく、その下方で外槽部23と内槽部24とを連通させるようになっている。混合液が外槽部23に入って仕切筒6aの下方の連通している部分を介して内槽部24内の水面を押し上げる状態となり、内槽部24の水面の表層の余剰水は余水吐溝25を通じて最終的な排水路に排水される。沈殿分離槽6内で重さのある土粒子凝結体21は仕切筒6aの下方の連通部分で沈殿し、清水は上澄みとなって水面の表層に押し上げられ固液分離する。上記の混合撹拌槽5及び沈殿分離槽6の各貯水槽15,22の水平断面形状は図示する円形に限らず、矩形などに形成してもよい。
【0037】
発明者の実験によると、凝集剤により微細土粒子が凝結した土粒子凝結体21は、比較的粒径が大きく重くなるため静止状態で約2cm/秒で沈澱する。沈殿分離槽6の内槽部は、外槽部に流入水があっても静止状態を維持できるため、土粒子凝結体21は沈澱作用を起こす。
【0038】
仮に、土粒子凝結体21の沈澱速度を2cm/秒とすれば、外槽部23に混合液を流入させ、内槽部24内の水位上昇速度が2cm/秒未満であれば、内槽部24の上澄み水は清水である。内槽部24の面積を仮にAmとすれば、内槽部24で固液分離してできる上澄み水の排水量は、0.02Am/秒となる。仮に濁水処理量を1時間500tとすれば、内槽部24の面積を7mとすれば良い。内槽部24の面積に比例して濁水処理水量が増加する。
【0039】
本実施形態のものと異なる高分子ポリマー凝集剤を利用した濁水処理装置が従来よりあるが、通常は30〜50t処理級のものであり、最大処理能力200t/時間の装置は数億円の設備となってしまう。本実施形態における濁水処理装置7は潜水ポンプ16と簡易な設備を備えた貯水槽だけで構成でき、経済的に濁水を処理できる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の濁水処理システム1によれば、滞留部2において濁水を滞留させて余剰水を越流畦2bで越流させることにより粒径の大きな土粒子を除去できる。さらに中詰め材3bを詰め入れた濁水濾過溝3に通過させることにより土粒子を除去できる。その後の濁水に土粒子凝集剤を添加して混合撹拌槽5にて撹拌することで微細土粒子を土粒子凝結体21として凝集し、その混合液を沈殿分離槽6にて土粒子凝結体21と清水とにすばやく固液分離することができる。このように単純な設備で濁水から土粒子を効率よく除去できるため、低コストで大量の濁水を処理することができる。
【0041】
なお、濁水濾過溝3で濾過した後に水中の浮遊物質量が排水基準値をクリアーした状態となっている場合は、濁水濾過溝3から最終排水路へ直接排水してもよい。この場合は、凝集剤添加装置4を停止し、混合撹拌槽5から沈澱分離槽6を通過して最終排水路へ導水すればよい。
【0042】
混合撹拌槽5及び沈殿分離槽6の流入部は越流畦2bにおける水面より低い位置にして濁水や混合液が円滑に流入できるようにしておく。また、樋19に流れる混合液と余水吐溝25に流れる清水はほぼ同じ水位とするべきであるため、樋19と余水吐溝25はほぼ水平な配置で設置すべきである。したがって、樋19を載置させる沈殿分離槽6の流入部の上端は樋の底面と同じ高さに切り下げた構造とし、また沈殿分離槽6の流出部の上端は余水吐溝25の底面を載置できるよう切り下げた構造とする。そして、樋19の側壁部と余水吐溝25の側壁部のそれぞれの上端の高さ、及び各貯水槽15,22の流入部と流出部を除いた周囲の上端の高さは外部へ漏水しないように高く形成する。
【0043】
本実施形態における混合撹拌槽5と沈殿分離槽6のそれぞれの内側底部には、沈殿した土粒子凝結体21を溜めるために、図7(a)の平面図と図7(b)の側面図で示すような透水性の不織布26を袋状に形成したものを内張した鉄筋篭27(牽引具)を、凝結体除去部材51(凝結体除去手段)としてあらかじめ設置しておく。引き上げやすいように、鉄筋篭27の縁には吊り手28を設けておく。
【0044】
吊り手28は沈澱した土粒子凝結体21は水分を多く含むため、吊り上げ強度に耐えるものでなければならない。濁水処理工程が終了し、各槽のうわ澄み水を除去した後、鉄筋篭27を引き上げることで内部の透水性不繊布26に堆積した沈殿物(土粒子凝結体21)を除去できる。
【0045】
沈殿物(土粒子凝結体21)は、凝集剤で凝結したものであるため、比較的排水性の良い性状に変化しており、透水性不繊布26内で自然排水できる。また排水した沈殿物は、土砂として再利用ができる。
【0046】
このような凝結体除去部材51を用いることで、混合撹拌槽5と沈殿分離槽6の底面にはコンクリートを堅固にうちこむ必要がなく、特に沈殿分離槽6の場合は沈砂池のように素掘りの池をそのまま利用できることになる(これについては後述する)。また引き上げ作業を行う場合には、混合撹拌槽5から通過防止板20、潜水ポンプ16、揚水パイプ17及び多口ノズル18を、沈殿分離槽6からは仕切筒6a及び余水吐溝25を取り外してから引き上げることになる。なお、牽引具として鉄筋篭27を用いる以外に、ワイヤーを編んで柔軟に構成した網状のものを利用してもよい。
【0047】
また、上記のように沈殿分離槽は、既設の沈砂池を利用して構成してもよい。工事現場によっては、自然沈殿により濁水処理を行うための沈砂池を設置するよう条例で義務づけられている場合がある。図8(a)はこのような既設の沈砂池61を利用して構成した沈殿分離槽の平面図であり、図8(b)は図8(a)中のIII−III断面による側断面図である。図示するように、沈砂池61に仕切筒6aや余水吐溝25などの必要設備を設置することで、コンクリートを打ち込むことなくそのまま沈殿分離槽として利用することができ、簡易かつ低コストで濁水処理量を拡大することができる。
【0048】
本実施形態のように凝結剤を使用する濁水処理においては、濁水中の微細土粒子が、凝集剤で凝結し、土粒子凝結体21は沈砂池61の底に沈澱する。濁水処理量の増加によって沈殿物は増加するため適宜除去しなければならない。沈砂池61に堆積した沈殿物(土粒子凝結体21)は一般的にバキューム車で吸引することもでき、自然乾燥あるいは脱水装置を使用して土砂として再利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態による濁水処理システムの全体の構成を示す平面図である。
【図2】図1中のI−I断面による側断面図である。
【図3】滞留部の変形例を示す側断面図である。
【図4】越流畦の変形例を示す側断面図である。
【図5】濁水濾過溝と混合撹拌槽と沈殿分離槽を拡大して示した平面図である。
【図6】図1中のII−II断面による側断面図である。
【図7】図7(a)は凝結体除去部材の平面図であり、図7(b)はその側面図である。
【図8】図8(a)は沈砂池を利用して構成した沈殿分離槽の平面図であり、図8(b)は図8(a)中のIII−III断面による側断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 濁水処理システム
2 滞留部
2a 畦
2b 越流畦
3 濁水濾過溝
3a 地中排水溝
3b 中詰め材
4 凝集剤添加装置(凝集剤添加手段)
5 混合撹拌槽
6 沈殿分離槽
6a 仕切筒(仕切り壁)
7 濁水処理装置
11 敷地
12 コンクリート壁
13 固定領域
14 流出防止畦
15 混合貯水槽
16 潜水ポンプ
17 揚水パイプ
18 多口ノズル
19 樋
20 通過防止壁
21 土粒子凝結体
22 沈殿貯水槽
23 外槽部
24 内槽部
25 余水吐溝
26 透水性不織布
27 鉄筋篭
28 吊り手
51 凝結体除去部材(凝結体除去手段)
61 沈砂池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の敷地を包囲した畦で濁水を滞留させ、前記畦の一部を前記濁水の表層の余剰水が越流可能な越流畦で造成した滞留部と、
前記越流畦から越流した濁水を導入させる配置に造成した地中排水溝に土粒子を補足可能な中詰め材を詰め入れた濁水濾過溝と、
前記濁水濾過溝から排水された濁水に土粒子凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、
前記土粒子凝集剤と濁水とを受け入れて混合し、底部から汲み上げた混合液を水面上から噴射して内部の混合液を撹拌しその表層の余剰水を排水する混合撹拌槽と、
前記混合撹拌槽から排水された混合液を受け入れ、内部の上方を仕切り壁により前記混合液を受け入れる領域と表層の余剰水を排水する領域とに仕切るとともに、下方のそれら領域が連通する部分で土粒子凝結体を沈殿分離する沈殿分離槽とを有することを特徴とする濁水処理システム。
【請求項2】
請求項1記載の濁水処理システムにおいて、
前記撹拌槽及び前記沈殿分離槽の少なくとも一方の底部に、土粒子凝結体を濾過可能な袋状の透水性不織布とこれを水面上に引き上げ可能な牽引具とからなる凝結体除去手段を設置したことを特徴とする濁水処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の濁水処理システムにおいて、
前記滞留部の前記所定の敷地内にも越流畦を造成したことを特徴とする濁水処理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の濁水処理システムにおいて、
前記沈殿分離槽は沈砂池を利用して構成したことを特徴とする濁水処理システム。
【請求項5】
所定の敷地を包囲した畦で濁水を滞留させ、
前記畦の一部で前記濁水の表層の余剰水を越流させ、
土粒子を補足する中詰め材を詰め入れた濁水濾過溝に越流した前記濁水を導入させ、
前記濁水濾過溝から排水された濁水に土粒子凝集剤を添加し、
混合撹拌槽で前記土粒子凝集剤と濁水の混合液を底部から汲み上げて水面上から噴射することで撹拌しその表層の余剰水を排水させ、
沈殿分離槽のうちの上方の仕切り壁により仕切られた一方の領域で排水された混合液を受け入れ下方の連通する部分で土粒子凝結体を沈殿分離し上方の仕切られた他方の領域から表層の余剰水を排水することを特徴とする濁水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−82005(P2006−82005A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269113(P2004−269113)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(504077456)株式会社球建設 (4)
【Fターム(参考)】