説明

炎症性疾患の治療及び予防用医薬組成物

【課題】
長期投与による効果の減少と副作用の増大等の従来のリウマチ治療の問題点を解決できる新規な医薬組成物を提供する。
【解決手段】
オルニチン、イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる群より選択されるいずれか1種類以上の化合物と、前記化合物以外のリウマチ治療薬とを有効成分として含むことを特徴とする医薬組成物。前記オルニチン等の化合物は、それぞれ遊離体、薬理的に許容される塩、又は体内で遊離体に変換される誘導体等のいずれの形態であってもよい。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な医薬組成物、特に好ましくは、リウマチ等の炎症性疾患を治療及び/又は予防するための医薬組成物に関する。さらに詳細には、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、及びバリンの少なくとも1種と、これら以外のリウマチ治療薬とを有効成分として含み、リウマチ等の炎症性疾患を治療又は予防するために用いることのできる医薬組成物、並びに上記2種の有効成分の組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性関節リウマチは多発性関節痛を主症状とする全身性の炎症性疾患で、免疫異常を伴うことを特徴とする。リウマチでは滑膜の炎症細胞浸潤、滑膜細胞の増殖、重層化と血管新生を伴い、関節軟骨、骨、骨膜、靭帯、腱の破壊性変化が進行していく。マクロファージ様のA型滑膜細胞、線維芽細胞様のB型滑膜細胞、種々の炎症性細胞との相互作用により滑膜細胞の活性化が起こり、滑膜の肉芽組織であるパンヌスを形成して軟骨、骨破壊を引き起こす。炎症が持続すると関節破壊、変形を来たし、最終的には機能障害に至る。また、肺線維症、アミロイドーシスや血管炎に伴う多彩な関節外症状を合併することがある。
【0003】
リウマチの病態形成には遺伝的要因、環境要因が複雑に絡み合って炎症反応を誘導していると考えられているが、発症機構については不明な点が多い。遺伝要因として知られているのは、HLA−DR4、HLA−DR1等の特定のMHCクラスIIをもつ患者が多いということである。これはMHCクラスIIに拘束性をもつT細胞が関節炎の発症に関与している可能性を示唆している。環境要因としては、ウイルスや細菌、マイコプラズマ等の感染が引き金になっているのではないかと考えられている。
【0004】
リウマチの従来の治療法においては、まず非ステロイド系抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs; NSAIDs)により炎症を抑えて痛みをとり、効果のない活動性のリウマチにDMARDs(Disease Modifying Antirheumatics Drugs)やステロイド薬を使うピラミッド型の治療方針であった。近年は早期から病勢を抑え、骨の破壊を防ぎ、機能障害に陥らないよう積極的にDMARDsやステロイドを使うStep-down bridge療法が提唱されている。しかし、この療法も5〜10年という短期的には生活の質(Quality of Life; QOL)の向上をはかれるが、長期においては効果の低下と副作用の増大という問題を残している。
【0005】
多剤併用療法も試みられている。作用機序の異なる薬剤を併用することで、各々の薬剤の投与量を減少できるので副作用が軽減されるという考え方である。その他、抗サイトカイン療法、経口ペプチド療法、アンチセンス療法、抗接着分子による治療等の新治療薬が開発されつつある。
【0006】
ある種のアミノ酸が抗炎症作用、抗リウマチ作用があることは知られている。本発明者らは、オルニチンや分枝鎖アミノ酸が関節炎疾患の治療、予防、進展防止、改善等に優れた効果を有することを報告している(例えば、特許文献1参照)。また、アルギニンやその誘導体には抗リウマチ効果があることも知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、L-シスチンとステロイド薬を併用投与すると抗炎症作用が増強されるという報告もある(例えば、非特許文献1参照)。しかし、いずれも実用化には至っていない。他の抗リウマチ薬に比べて効果が低いためと考えられる。
【0007】
【特許文献1】国際公開第02/060431号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0119952号明細書
【非特許文献1】ブライアン、イー、メイヤーズ(Brian, E. Meyers)外2名、インフラメーション (Inflammation)、第3巻(No.3)、1979年、p.225−233
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リウマチ患者への薬剤の投与は長期間に及ぶことが多いが、長期投与は効果の減少と副作用の増大を招く危険性が高い。例えば、非ステロイド系抗炎症薬は重篤な胃出血、消化性潰瘍や腎障害等を引き起こすことがあり、ステロイド薬は免疫抑制作用による感染症の憎悪、消化性潰瘍、骨粗鬆症等多くの副作用を引きこす。従って、これらのリウマチ薬の投与効果を低下させずに極力薬物の投与量を減少させることができれば、長期投与が可能となり、同時に副作用の軽減を達成することができる。本発明の課題は、このようなリウマチ治療の問題点を解決できる新規な医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、イソロイシン、ロイシン及びバリンの分岐鎖アミノ酸、並びにオルニチンの少なくとも1種と、これら以外のリウマチ治療薬とを併用することにより、リウマチに代表される炎症性疾患が極めて効果的に、好ましい場合には相乗的効果で治療、及び/又は予防されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明はその1つの視点において以下の医薬組成物を提供するものであって、当該医薬組成物は、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、前記化合物以外のリウマチ治療薬とを有効成分として含むことを特徴とする。前記オルニチン等の化合物は、それぞれ遊離体、薬理的に許容される塩、又は体内で遊離体に変換される誘導体等のいずれの形態であってもよい。このような化合物を「本発明で使用する化合物」と称する場合がある。この医薬組成物において、前記化合物の合計量とこれら以外のリウマチ治療薬の量比は、特に制限はないが、好ましくは質量比で1:1〜10000:1、より好ましくは1:1〜5000:1、さらに好ましくは1:1〜2000:1である。
【0011】
好ましい実施形態において、前記化合物以外のリウマチ治療薬は、副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬)、寛解導入抗リウマチ薬(DMARDs)、及び非ステロイド系消炎症薬(NSAIDs)からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0012】
さらに好ましい実施形態において、前記ステロイド薬は、ハイドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、デキサメタゾン、及びベタメタゾンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0013】
他の好ましい実施形態において、前記DMARDsがメトトレキサート、ブシラミン、オーラノフィン、ペニシラミン、チオリンゴ酸ナトリウム、ミゾリビン、及びロベンザリット二ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0014】
別の好ましい実施形態において、前記NSAIDsが、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、メフェナム酸、及びピロキシカムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0015】
本発明の1つの好ましい実施形態において、上記医薬組成物は炎症性疾患の治療及び/又は予防のために使用することができ、特に好ましくは、リウマチの治療及び/又は予防に使用される。リウマチ治療剤として用いる場合には、その投与量が一日当たり、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、及びバリンの合計量として1mg〜60g、好ましくは500mg〜15gであることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の視点において、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、バリン、それらの塩、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の製剤と、前記化合物以外のリウマチ治療薬の製剤とを含む複数薬剤であって、それらを同時に、逐次的に、又は時間を置いて別々に投与することを特徴とするリウマチ治療剤が提供される。前記リウマチ治療薬は、副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬)、寛解導入抗リウマチ薬(DMARDs)、及び非ステロイド系消炎症薬(NSAIDs)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の医薬組成物の作用機作としては、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、バリンのいずれにも単独投与により炎症局所への浸潤免疫細胞数を減少させる効果が認められることから、併用されるその他のリューマチ治療薬の必要投与量を著しく低減することができると考えられる。実施例から、他のリウマチ治療薬の必要量を5分の1に減らせることが期待される。例えば、デキサメサゾンなどのステロイド剤は1日40mg(PSL換算)以上投与すると、易感染性をもたらすという報告がある。ステロイド剤は大量療法の場合、1日60mg(PSL換算)投与するケースがあるが、本発明においては、12mg(PSL換算)で同等の効果が期待されるため易感染性の回避が期待できる。DMARDsの一つであるメトトレキサートは1回2.5mg、週5〜7.5mgの投与が行なわれている。肝障害の副作用があるためアメリカリウマチ学会ガイドラインにおいて、総投与量が1.5gを超えた際には肝生検の実施が必要、患者が生検を拒否した場合メトトレキサートの投与を中止するとしている。メトトレキサートを週5mgで6年間連続投与した場合、1度は肝生検の必要が発生する。本発明の医薬組成物では、この期間が30年間に延長することが期待できる。さらに、NSAIDsの一つであるアスピリンはリウマチ様関節炎治療には1日3gの大量が必要であるが、血中濃度が20mg/dl以上になると耳鳴りがする。本発明においては0.6gで同様な効果が期待できるため、耳鳴りのために減量、中止を余儀なくされることは回避できるものと期待される。このように、本発明の医薬組成物は、含有する従来のリウマチ治療薬の投与量を削減することができるため、副作用の軽減や、有効期間の延長が可能であり、リウマチ性疾患及び同疾患に伴う合併症の治療、病態改善に極めて有用である。本発明により、従来のリウマチ治療薬に比較して優れた薬効を有するリウマチ治療剤(医薬組成物)が提供される。以上、本発明は、特に医薬品分野において広く実施可能であり、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
(本発明の医薬組成物)
本発明で使用されるオルニチン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンは、動物あるいは植物由来の天然タンパク質の加水分解から得られたもの、発酵法あるいは化学合成法によって得られたものいずれでも良い。オルニチン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンは光学異性体として、D体とL体が存在するが、本発明に使用するには、生体タンパク質であるL体が望ましい。オルニチンは種々の塩の形で用いても良い。オルニチンの塩としては、オルニチンが塩基性を示すために主に酸との塩が用いられる。酸としては、無機酸、有機酸いずれでも良い。無機酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等があげられる。有機酸の例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、ガンマリノレン酸、コハク酸トコフェロールモノエステル、トコフェロール燐酸、アスコルビン酸、アスコルビン燐酸、トコフェロールアスコルビル燐酸、チオクト酸、N-アセチルシステイン、N,N'−ジアセチルシステイン、リポ酸(lipoic acid)等が挙げられる。
【0019】
バリン、ロイシン、及びイソロイシンは、分枝鎖アミノ酸と呼ばれるグループに属し、側鎖に分枝アルキル基を持つ疎水性アミノ酸である。分子鎖アミノ酸は必須アミノ酸の約40%を占め、その代謝は、特に臨床的意義が高い。肝硬変症では摂取量が低下するだけでなく、血液中からの筋肉組織への分枝鎖アミノ酸の取り込みが高アンモニア血の解毒のために亢進すると考えられる。そこで、分枝鎖アミノ酸を経口投与して補充療法することにより肝臓が合成するアルブミン等が上昇し、肝性脳症と肝硬変症の改善が見られる。低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善を目的として、L−ロイシン、L−イソロイシン、及びL−バリン(何れも遊離体)を含む「リーバクト」(味の素株式会社登録商標)が医療現場に提供されている。
【0020】
本発明で使用されるオルニチン、及び分岐鎖アミノ酸は摂取されたときに生体内でオルニチン、又は分岐鎖アミノ酸に速やかに変換されるものなら何でも良いが、例えばペプチドが挙げられる。オルニチン、及び分岐鎖アミノ酸のペプチド中の含量は10〜30%以上であることが望ましい。ペプチド成分としてオルニチン、又は分岐鎖アミノ酸は活性本体であるから必須であるがそれ以外はアミノ酸の種類は問わない。ペプチドは化学合成、発酵法、天然タンパク質の加水分解、天然ペプチド等、種々の方法で入手できるが、いずれでも使用できる。
【0021】
本発明で使用する化合物以外のリウマチ治療薬(以下、「併用薬物」と略記する場合もある)とは、従来よりリウマチ治療薬として用いられている医薬であればどのようなものでもよいが、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬):ハイドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、パラメタゾン、デキサメサゾン、ベタメタゾン、ヘキセストロール、メチマゾール、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルオロメトロン、プロピオン酸ベクロメタゾン、エストリオール等。
【0022】
(2)寛解導入抗リウマチ薬(DMARDs):メトトレキサート、ブシラミン、金製剤オーラノフィン、ペニシラミン、チオリンゴ酸ナトリウム、ミゾリビン、ロベンザリット二ナトリウム、スルファサラジン、抗マラリア薬クロロキン、ピリミジン合成阻害薬レフルノマイド、プログラフ等。
【0023】
(3)非ステロイド系消炎症薬(NSAIDs):(i)Classical NSAIDsアルコフェナク、アセクロフェナク、スリンダク、トルメチン、エトドラク、フェノプロフェン、チアプロフェン酸、メクロフェナム酸、メロキシカム、テオキシカム、ロルノキシカム、ナブメトン、アセトアミノフェン、フェナセチン、エテンザミド、スルピリン、アンチピリン、ミグレニン、アスピリン、メフェナム酸、フルフェナム酸、ジクロフェナックナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、プラノプロフェン、フロクタフェニン、ピロキシカム、エピリゾール、塩酸チアラミド、ザルトプロフェン、メシル酸ガベキサート、メシル酸カモスタット、ウリナスタチン、コルヒチン、プロベネシド、スルフィンピラゾン、ベンズブロマロン、アロプリノール、金チオリンゴ酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、塩酸モルヒネ、サリチル酸、アトロピン、スコポラミン、モルヒネ、ペチジン、レボルファノール、オキシモルフォンまたはその塩等。(ii)シクロオキシゲナーゼ抑制薬(COX−1選択的阻害薬、COX−2選択的阻害薬等)サリチル酸誘導体(例、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリン)、MK-663、バルデコキシブ、SC-57666、チラコキシブ、S-2474、ジクロフェナック、インドメタシン、ロキソプロフェン等。(iii)COX阻害と5−リポキシゲナーゼ阻害を併せ持つ薬物 ML-3000、p54(COX阻害 & 5-リポキシゲナーゼ阻害)等。(iv)Nitric oxide遊離型 NSAIDs等。
【0024】
(4)免疫抑制剤:(i)T細胞分化調節薬6,7−ジメトキシ−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)キノリン−3−カルボン酸エチルエステル(特開平7−118266号公報)(ii)その他メトトレキサート、シクロフォスファミド、MX-68、アチプリモド ディハイドロクロライド、BMS-188667、CKD-461、リメクソロン、シクロスポリン、タクロリムス、グスペリムス、アザチオプリン、抗リンパ血清、乾燥スルホ化免疫グロブリン、エリスロポイエチン、コロニー刺激因子、インターロイキン、インターフェロン等。
【0025】
(5)抗サイトカイン薬:(I)タンパク質製剤(i)TNF阻害薬エタナーセプト、インフリキシマブ、D2E7、CDP-571、PASSTNF-α、可溶性TNF-α受容体、TNF-α結合蛋白、抗TNF-α抗体等。(ii)インターロイキン−1阻害薬アナキンラ(インターロイキン−1受容体拮抗薬)、可溶性インターロイキン−1受容体等。(iii)インターロイキン−6阻害薬 MRA (抗インターロイキン−6受容体抗体)、抗インターロイキン−6抗体等。(iv)インターロイキン−10薬インターロイキン−10等。(v)インターロイキン−12阻害薬抗インターロイキン−12抗体等。(vi)インターフェロン−α及びγ阻害、及びTNF-α阻害を併せ持つ薬物(ポリクローナル抗体)AGT−1(II)非タンパク質製剤(i)MAPキナーゼ阻害薬 PD-98059等。(ii)遺伝子調節薬 SP-100030、NF-κ、NF-κb、IKK-1、IKK-2、AP-1等シグナル伝達に関係する分子の阻害薬等。(iii)サイトカイン産生抑制薬 T-614、SR-31747、ソナチモド等。(iv)TNF-α変換酵素阻害薬。(v)インターロイキン−1β変換酵素阻害薬 HMR3480/VX-740等。(vi)インターロイキン−6拮抗薬 SANT-7等。(vii)インターロイキン−8阻害薬 IL-8拮抗薬、CXCR1 & CXCR2拮抗薬等。(viii)ケモカイン拮抗薬 MCP-1拮抗薬等。(ix)インターロイキン−2受容体拮抗薬デニロイキン、ディフチトックス等。(x)Therapeutic vaccines TNF-αワクチン等。(xi)遺伝子治療薬インターロイキン−4、インターロイキン−10、可溶性インターロイキン−1受容体、可溶性TNF-α受容体等抗炎症作用を有する遺伝子の発現を亢進させることを目的とした遺伝子治療薬。(xii)アンチセンス化合物 ISIS-104838等。
その他、抗接着分子療法、アンチセンス療法、モノクローナル抗体、細胞内シグナル伝達阻害薬、MHC結合性ペプチド療法等との併用も可能である。
【0026】
(本発明の医薬組成物が効果を奏する炎症性疾患)
本発明において、用語「リウマチ」とはリウマチ性疾患のことを意味し、リウマチ様関節炎の他に、リウマチ熱、回帰性リウマチ(palindromic rheumatism)やリウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica)といった疾患を含む。本発明の医薬組成物は、これらリウマチ性疾患及び同疾患に伴う合併症に広く適用できる。また、本発明の医薬組成物はこれらのリウマチ性疾患のほか、変形性関節症やウェジナー肉芽腫症、多発性動脈炎、ベーチェット病などの自己免疫疾患(膠原病)、ネフローゼ症候群、ループス腎炎などの各種腎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎などの腸疾患、乾癬、慢性活動性肝炎、多発性硬化症、重症筋無力症、肺繊維症、ぶどう膜炎、移植時の炎症反応などの炎症性疾患にも効果を奏する。
【0027】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物はリウマチ性疾患、特に、慢性関節リウマチの治療及び予防に有用である。慢性関節リウマチは再燃と寛解を繰り返す多発性関節炎で軽症例から関節破壊あるいは関節外症状をともなう症例まで幅広い疾患である。その原因はいまだ明らかにされていないが、現在2つの考え方がある。関節、特に滑膜や軟骨に存在するある自己抗原に対し、リンパ球等の免疫応答異常が生じた結果というものと、滑膜細胞自体の増殖活性がなんらかの原因で亢進した結果というものである。リウマチの主病変は滑膜組織であり、滑膜が異常増殖し、肉芽組織(パンヌス)を形成し、これにより軟骨や骨を侵蝕・破壊する。また、炎症滑膜にはT細胞の巨大な集積巣があり、炎症がさらに進展するとB細胞の浸潤巣も現れる。リウマチの病態にはT細胞や炎症によって誘導されたIL−1や腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor: TNF)-α等、数多いサイトカインが関わっている。また、リウマチ患者から頻繁にみられる自己の免疫グロブリン(Ig)Gに対する抗体として知られるリウマチ因子も病態に関与すると思われる。さらに、リウマチ患者の単球やマクロファージの細胞からは活性酸素やリソソーム酵素の放出も見られ、リウマチで見られる炎症等の病態にかかわると考えられる。
【0028】
(分岐鎖アミノ酸又はオルニチンとリウマチ治療薬の併用で効果を奏する作用機作)
本発明者らは、以前にポリアミンの原料ともいうべきオルニチンが関節腫脹を抑制することを3つの機序の異なる関節炎動物モデルを用いて明らかにした(上記特許文献1参照)。ポリアミンはポリアミンオキシデースにより酸化されてできる産物の一つ過酸化水素を介してIL−2の産生を抑制する。単核球はこのポリアミンを産生し、活性化T細胞のIL−2産生をひいては細胞増殖を抑制することが知られている。
【0029】
本発明ではオルニチン、イソロイシン、ロイシン、及びバリンの少なくとも1種とリウマチ治療薬(ステロイド薬、SMARDs、NSAIDs)を併用投与することで、リューマチ治療薬の投与量を減少させても同程度の関節腫脹抑制効果が得られることを関節炎動物モデルを用いて明らかにした。
【0030】
オルニチンの代謝経路はオルニチンデカルボキシラーゼ等の働きでポリアミンに代謝される経路とオルニチンアミノトランスフェラーゼの働きでプロリンに代謝される経路の2つがある。イソロイシン、ロイシン、及びバリンは、いずれもオルニチンアミノトランスフェラーゼを抑制する。結果、オルニチンからプロリンへの代謝経路が阻害され、オルニチンデカルボキシラーゼの基質としてのオルニチン量が増える。よって、イソロイシン、ロイシン、及びバリンの投与はオルニチンを投与するのと同等の効果が期待される。
【0031】
(本発明の医薬組成物の投与方法、及び製剤の形態等)
本発明で使用する化合物と併用薬物とを組み合わせることにより、(1)本発明で使用する化合物または併用薬物を単独で投与する場合に比べて、併用薬物の投与量を軽減することができる、(2)患者の症状(軽症、重症等)に応じて、本発明で使用する化合物と併用する薬物を選択することができる、(3)本発明で使用する化合物と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療期間を長く設定することができる、(4)本発明で使用する化合物と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療効果の持続を図ることができる、(5)本発明で使用する化合物と併用薬物とを併用することにより、好ましい場合相乗効果が得られる、等の優れた効果を得ることができる。本発明で使用する化合物と併用薬物とを複数製剤の形態で使用するに際しては、それぞれの製剤の投与時期は限定されず、本発明で使用する化合物と併用薬物とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。また、理学療法後、又は手術療法後等に用いることもできる。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。本発明の医薬組成物の投与形態は、特に限定されず、投与時に、本発明で使用する化合物と併用薬物とが組み合わされていればよい。このような投与形態としては、例えば、(1)本発明で使用する化合物と併用薬物とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)本発明で使用する化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)本発明で使用する化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)本発明で使用する化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)本発明で使用する化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、本発明で使用する化合物;併用薬物の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)等が挙げられる。
【0032】
本発明の医薬組成物は、毒性が低く、例えば、本発明で使用する化合物及び/又は上記併用薬物をそれ自体公知の方法に従って、薬理学的に許容される担体と混合して医薬組成物、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等として、経口的又は非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。注射剤は、静脈内、筋肉内、皮下又は臓器内投与あるいは直接病巣に投与することができる。薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が挙げられ、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
【0033】
賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。結合剤としては、例えば結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。溶剤としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。等張化剤としては、例えばブドウ糖、 D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられる。緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等が挙げられる。
【0034】
本発明の医薬組成物における本発明で使用する化合物と併用薬物との配合比は、投与対象、投与ルート、疾患等により適宜選択することができる。例えば、本発明の医薬組成物におけるオルニチン、イソロイシン、ロイシン、バリン、又はその薬理的に許容される塩若しくは誘導体の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし100質量%、好ましくは約0.1ないし50質量%、さらに好ましくは約0.5ないし20質量%程度である。本発明の医薬組成物における併用薬物の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし100質量%、好ましくは約0.1ないし50質量%、さらに好ましくは約0.5ないし20質量%程度である。本発明の医薬組成物における担体等の添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約1ないし99.99質量%、好ましくは約10ないし90質量%程度である。また、本発明で使用する化合物及び併用薬物をそれぞれ別々に製剤化する場合も同様の含有量でよい。
【0035】
これらの製剤は、製剤工程において通常一般に用いられる公知の方法により製造することができる。例えば、本発明で使用する化合物又は併用薬物は、分散剤(例、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO 60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン等)、安定化剤(例、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、界面活性剤(例、ポリソルベート80、マクロゴール等)、可溶化剤(例、グリセリン、エタノール等)、緩衝剤(例、リン酸及びそのアルカリ金属塩、クエン酸及びそのアルカリ金属塩等)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖等)、pH調節剤(例、塩酸、水酸化ナトリウム等)、保存剤(例、パラオキシ安息香酸エチル、安息香酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、ベンジルアルコール等)、溶解剤(例、濃グリセリン、メグルミン等)、溶解補助剤(例、プロピレングリコール、白糖等)、無痛化剤(例、ブドウ糖、ベンジルアルコール等)等と共に水性注射剤に、あるいはオリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油等の植物油、プロピレングリコール等の溶解補助剤に溶解、懸濁あるいは乳化して油性注射剤に成形し、注射剤とすることができる。
【0036】
経口投与用製剤とするには、公知の方法に従い、本発明で使用する化合物または併用薬物を例えば、賦形剤(例、乳糖、白糖、デンプン等)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウム等)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等)又は滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール 6000等)等を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより経口投与製剤とすることができる。そのコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン 80、プルロニック F68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合)及び色素(例、ベンガラ、二酸化チタン等)等が用いられる。経口投与用製剤は速放性製剤、徐放性製剤のいずれであってもよい。
【0037】
本発明で使用する化合物は、固形製剤(例、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤)又は液体製剤(液体成分に含有させたもの)等の経口投与用製剤に成型するか、坐剤等の直腸投与用製剤に成型するのが好ましい。特に経口投与用製剤が好ましい。併用薬物は、薬物の種類に応じて上記した剤形とすることができる。
【0038】
保存剤、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、着色剤、pH調整剤、香味料、甘味料若しくは食味マスキング剤等の二次成分を組成物中に含有していてよい。適当な着色剤としては、赤色、黒色ならびに黄色酸化鉄類及びエリス・アンド・エベラールド社のFD&Cブルー2号ならびにFD&Cレッド40号等のFD&C染料が挙げられる。適当な香味料には、ミント、ラスベリー、甘草、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、チェリーならびにグレープフレーバー及びその組合せたものが含まれる。適当なpH調整剤は、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩酸及びマレイン酸が含まれる。適当な甘味料としてはアスパルテーム、アセスルフェームKならびにタウマチン等が含まれる。適当な食味マスキング剤としては、重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包接化合物、吸着質物質ならびにマイクロカプセル化アポモルフィンが含まれる。製剤には通常約0.1〜約50質量%、好ましくは約0.1〜約30質量%の本発明で使用する化合物または併用薬物を含み、約1分〜約60分の間、好ましくは約1分〜約15分の間、より好ましくは約2分〜約5分の間に(水に)本発明で使用する化合物または併用薬物の90%以上を溶解させることが可能な製剤(上記、舌下錠、バッカル等)や、口腔内に入れられて1ないし60秒以内に、好ましくは1ないし30秒以内に、さらに好ましくは1ないし10秒以内に崩壊する口腔内速崩壊剤が好ましい。
【0039】
上記賦形剤の製剤全体に対する含有量は、約10〜約99質量%、好ましくは約30〜約90質量%である。β−シクロデキストリン又はβ−シクロデキストリン誘導体の製剤全体に対する含有量は0〜約30質量%である。滑沢剤の製剤全体に対する含有量は、約0.01〜約10質量%、好ましくは約1〜約5質量%である。等張化剤の製剤全体に対する含有量は、約0.1〜約90質量%、好ましくは、約10〜約70質量%である。親水性担体の製剤全体に対する含有量は約0.1〜約50質量%、好ましくは約10〜約30質量%である。水分散性ポリマーの製剤全体に対する含有量は、約0.1〜約30質量%、好ましくは約10〜約25質量%である。安定化剤の製剤全体に対する含有量は約0.1〜約10質量%、好ましくは約1〜約5質量%である。上記製剤はさらに、着色剤、甘味剤、防腐剤等の添加剤を必要に応じ含有していてもよい。
【0040】
本発明の医薬組成物の投与量は、本発明に係る病気の状態、病人の年齢、体重、症状、体質、体調、薬剤の剤形、投与方法、投与期間等により異なるが、例えば、リウマチの患者(成人、体重約60kg)一人当たり、一般に1日当たり、本発明で使用する化合物に関してはオルニチンに換算して1mg〜60g、好ましくは500mg〜15gの範囲で適宜選択することができる。また、併用薬物としてのリウマチ治療薬はその種類によって異なるが、それぞれの単独投与で有効な効果が得られる投与量の20%程度を含有することが好ましい。もちろん、前記したように投与量は種々の条件で変動するので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0041】
本発明の医薬組成物を投与するに際しては、本発明で使用する化合物と併用薬物とを同時期に投与してもよいが、併用薬物を先に投与した後、本発明で使用する化合物を投与してもよいし、本発明で使用する化合物を先に投与し、その後で併用薬物を投与してもよい。時間差をおいて投与する場合、時間差は投与する有効成分、剤形、投与方法等により異なるが、例えば、併用薬物を先に投与する場合、併用薬物を投与した後、好ましくは1分〜3日以内、より好ましくは10分〜1日以内、さらに好ましくは15分〜1時間以内に本発明で使用する化合物を投与する方法が挙げられる。本発明で使用する化合物を先に投与する場合、本発明で使用する化合物を投与した後、好ましくは1分〜7日以内、より好ましくは10分〜1日以内、さらに好ましくは15分〜6時間以内に併用薬物を投与する方法が挙げられる。
【0042】
好ましい投与方法としては、例えば、投与製剤に製形された本発明で使用する化合物を先に投与し、その後に経口投与製剤に製形された併用薬物を経口投与する。逆に、経口投与製剤に製形された併用薬物を先に投与し、その後に本発明で使用する化合物を投与してもよい。また、それらを同時に投与してもよい。また、経口投与が困難な場合、持続投与が望ましい場合などの理由を問わず、当該医薬組成物を含有する静脈内投与製剤、筋肉内投与製剤、皮下投与製剤、あるいは関節包内等リウマチ患部近傍に直接投与する製剤とすることができる。さらには、当該医薬組成物を含有する軟膏や貼り薬などの経皮吸収製剤として使用することもできる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスへのオルニチンとメトトレキサートの併用投与効果
DBA−1マウスを用いて定法によりコラーゲン誘導関節炎を誘導し、オルニチンとメトトレキサートの併用投与効果を検討した。コラーゲン誘導関節炎(CIA)はマウスをII型コラーゲンで感作することで誘発する実験的関節炎としてよく知られている(Courtenay et al.,Nature,283,666-668, 1980参照)。マウス1匹当たり抗原量100μg/0.1mlのエマルジョンを尾根部に皮内注射した。初回感作の3週間後に追加免疫として同組成のエマルジョンを初回感作と同様1匹当たり抗原量100μg/0.1mlを尾根部に皮内注射した。関節炎は追加免疫後4日目頃から発症し、発赤を伴う浮腫として観察された。関節炎の程度については追加免疫から約2週間後にピークとなった。浮腫の程度は4段階に分類し四肢各々について肉眼的に判定した。オルニチン(0.03%)は自由飲水にて、また、メトトレキサート(0.2mg/kg)あるいはメトトレキサート(1mg/kg)については週5回100μl/匹、強制経口投与にてそれぞれII型コラーゲンとCFAのエマルジョン皮内投与と同時に、単独あるいは併用投与を開始した。その結果を図1に示した。図1はCIAマウスにオルニチンとメトトレキサートを併用投与した際の関節スコアーの変化を追加免疫を行った日から経時的に示した図である。なお、スコアーの内容については0:未発症、1:手足あるいは指関節の何れかに赤い浮腫が認められた、2:関節の腫れが甚だしく、太さが通常の2倍以上であると認められた、3:関節にねじれ、変形等が認められた場合とし、肉眼で判定した。四肢のスコアーの合計をマウスのスコアーとした。
【0045】
追加免疫後17日目のControl群の関節スコア―が3.5、オルニチンの単独投与群が2前後、メトトレキサート(0.2mg/kg)単独投与群が2.8であったのに対して、オルニチンとメトトレキサート(0.2mg/kg)の併用投与群のスコアーはメトトレキサート(1mg/kg)単独投与群と同様の0.6であった。オルニチンとメトトレキサート(0.2mg/kg)の併用投与は、併用投与で用いたメトトレキサートの5倍量を投与したメトトレキサート(1mg/kg)単独投与と同程度の抑制効果を示した。
【0046】
(実施例2)コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスへのオルニチンとデキサメサゾンの併用投与効果
DBA−1マウスを用いて定法によりコラーゲン誘導関節炎を誘導し、オルニチンとデキサメサゾンの併用投与効果を実施例1と同様に検討した。条件は上記と同様である。オルニチン(0.03%)は自由飲水にて、また、デキサメサゾン(0.01mg/kg)あるいはデキサメサゾン(0.05mg/kg)については週5回100μl/匹、強制経口投与にてそれぞれII型コラーゲンとFCAのエマルジョン皮内投与と同時に単独あるいは併用投与を開始した。その結果を図2に示した。図2はCIAマウスにオルニチンとデキサメサゾンを併用投与した際の関節スコアーの変化を追加免疫を行った日から経時的に示した図である。なお、スコアーについては0:未発症、1:手足あるいは指関節の何れかに赤い浮腫が認められた、2:関節の腫れが甚だしく、太さが通常の2倍以上であると認められた、3:関節にねじれ、変形等が認められた場合とし、肉眼で判定した。四肢のスコアーの合計をマウスのスコアーとした。
【0047】
追加免疫後17日目のControl群の関節スコア―が3.5に対してオルニチンの単独投与群が2前後、デキサメサゾン(0.01mg/kg)の単独投与群が1.5前後であったのに対してオルニチンとデキサメサゾン(0.01mg/kg)の併用投与群では0.6と、デキサメサゾン(0.05mg/kg)単独投与の0.2に近い値を示した。オルニチンとデキサメサゾン(0.01mg/kg)の併用投与は,併用投与で用いたデキサメサゾンの5倍量を投与したデキサメサゾン(0.05mg/kg)単独投与と同程度の抑制効果を示した。
【0048】
(実施例3)コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスへのバリンとメトトレキサートの併用投与効果
DBA−1マウスを用いて定法によりコラーゲン誘導関節炎を誘導し、バリンとメトトレキサートの併用投与効果を検討した。バリン(0.0715%)は自由飲水にてII型コラーゲンとFCAのエマルジョン皮内投与と同時に、単独あるいは併用投与を開始した。また、メトトレキサート(0.2mg/kg)あるいはメトトレキサート(1mg/kg)は週5回100μl/匹、強制経口投与にて関節腫脹の発症を確認後、単独あるいは併用投与を開始した。その結果を図3に示した。図3はCIAマウスにバリンとメトトレキサートを併用投与した際の関節スコアーの変化を追加免疫を行った日から経時的に示した図である。なお、スコアーについては0:未発症、1:手足あるいは指関節の何れかに赤い浮腫が認められた、2:関節の腫れが甚だしく、太さが通常の2倍以上であると認められた、3:関節にねじれ、変形等が認められた場合とし、肉眼で判定した。四肢のスコアーの合計をマウスのスコアーとした。
【0049】
追加免疫後24日目のControl群の関節スコア―が5.8に対して、メトトレキサート(1mg/kg)単独投与群の関節スコアーは2.2、バリンとメトトレキサート(0.2mg/kg)の併用投与群は2.6であった。バリンとメトトレキサート(0.2mg/kg)の併用投与は、併用投与で用いたメトトレキサートの5倍量を投与したメトトレキサート(1mg/kg)単独投与と同程度の抑制効果を示した。
【0050】
(実施例4)コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスへのバリンとデキサメサゾンの併用投与効果
DBA−1マウスを用いて定法によりコラーゲン誘導関節炎を誘導し、バリンとデキサメサゾンの併用投与効果を検討した。バリン(0.0715%)は自由飲水にてII型コラーゲンとFCAのエマルジョン皮内投与と同時に、単独あるいは併用投与を開始した。また、デキサメサゾン(0.01mg/kg)あるいはデキサメサゾン(0.05mg/kg)は週5回100μl/匹、強制経口投与にて関節腫脹の発症を確認後、単独あるいは併用投与を開始した。その結果を図4に示した。図4はCIAマウスにオルニチンとデキサメサゾンを併用投与した際の関節スコアーの変化を追加免疫を行った日から経時的に示した図である。なお、スコアーについては0:未発症、1:手足あるいは指関節の何れかに赤い浮腫が認められた、2:関節の腫れが甚だしく、太さが通常の2倍以上であると認められた、3:関節にねじれ、変形等が認められた場合とし、肉眼で判定した。四肢のスコアーの合計をマウスのスコアーとした。
【0051】
追加免疫後24日目のControl群の関節スコア―が5.8に対して、デキサメサゾン(0.05mg/kg)単独投与群の関節スコアーが2.8、バリンとデキサメサゾン(0.01mg/kg)の併用投与群は2.4であった。バリンとデキサメサゾン(0.01mg/kg)の併用投与は、併用投与で用いたデキサメサゾンの5倍量を投与したデキサメサゾン(0.05mg/kg)単独投与と同程度の抑制効果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】CIAマウスモデルにおけるオルニチンとメトトレキサートの併用投与効果を示したグラフである。
【図2】CIAマウスモデルにおけるオルニチンとデキサメサゾンの併用投与効果を示したグラフである。
【図3】CIAマウスモデルにおけるバリンとメトトレキサートの併用投与効果を示したグラフである。
【図4】CIAマウスモデルにおけるバリンとデキサメサゾンの併用投与効果を示したグラフである。
【符号の説明】
【0053】
Cont: コントロール(対照)
Orn:オルニチン
Val:バリン
MTX:メトトレキサート
DEX: デキサメサゾン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルニチン、イソロイシン、ロイシン、バリン、それらの塩、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、前記化合物以外のリウマチ治療薬とを有効成分として含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記リウマチ治療薬が、副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬)、寛解導入抗リウマチ薬(DMARDs)、及び非ステロイド系消炎症薬(NSAIDs)からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ステロイド薬がハイドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、デキサメタゾン、及びベタメタゾンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記DMARDsがメトトレキサート、ブシラミン、オーラノフィン、ペニシラミン、チオリンゴ酸ナトリウム、ミゾリビン、及びロベンザリット二ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記NSAIDsが、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、メフェナム酸、及びピロキシカムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の医薬組成物。
【請求項6】
炎症性疾患治療剤であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
リウマチ治療剤であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
経口投与の場合、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、及びバリンの合計投与量が1日当り1mg〜60gであることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記化合物と前記リウマチ治療薬の比率が、質量比で1:1〜2000:1であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
オルニチン、イソロイシン、ロイシン、バリン、それらの塩、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の製剤と、前記化合物以外のリウマチ治療薬の製剤とを含む複数薬剤であって、それらを同時に、逐次的に、又は時間を置いて別々に投与することを特徴とするリウマチ治療剤。
【請求項11】
前記リウマチ治療薬が、副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬)、寛解導入抗リウマチ薬(DMARDs)、及び非ステロイド系消炎症薬(NSAIDs)からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載のリウマチ治療剤。
【請求項12】
前記化合物と前記リウマチ治療薬の比率が、質量比で1:1〜2000:1であることを特徴とする請求項10又は11に記載のリウマチ治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−55900(P2007−55900A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−416906(P2003−416906)
【出願日】平成15年12月15日(2003.12.15)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】