説明

炎症性障害及び疼痛の治療



T−細胞増殖に関連するか又は炎症促進性サイトカインによって媒介される状態の治療または予防のために用いられうる化合物は、式(I)[Rは、CHR−OR、若しくはCHR−SRであるか、又は1以上の基Rで場合により置換されたアリール若しくはヘテロアリールであり;Rは、アルキルであるか、又はRと共に環の部分であり;Rは、H、アルキル、又はCH(Rと共に環の部分を形成する場合)であり;Rは、H若しくはアルキルであるか、又はRと共に環の部分であり;Rは、Rで場合により置換されたアリール又はヘテロアリールであり;各Rは、独立に、アルキル、CF、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHSOアルキル、CONH、SOMe、SONH、Sアルキル、CHSOアルキル、又はOCONアルキルであり;Rは、Rであるか、又は(CHOR、R、CF、OH、OR、OCOR、COR、COOR、CONH、CHCONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHCONHR、NHCON(R、NHCOR、NHCOアリール、NHSOMe、CONH、SMe、SOMe、若しくはSONHであり;Rは、(CHOR、(CH)OR、(CHCOOR、又は(CHCOアリールであり;Rは、アルキル、又はシクロアルキルであり;そして
nは1〜4である]の化合物又はその塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性障害及び疼痛の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫駆動性炎症事象は、延長された炎症が組織破壊を生じて大規模な損傷及び影響された器官の最終的な不全症をもたらす、多くの慢性炎症性疾患の重大な原因である。これら疾患の原因は知られておらず、それらは自己に向かった個々の免疫系に由来すると考えられるため、それらはしばしば自己免疫と呼ばれる。状態には、全身性エリテマトーデス(SLE)及び強皮症のような複数の器官に関与するものが含まれる。他のタイプの自己免疫疾患は、筋骨格組織(リウマチ様関節炎、強直性脊椎炎)、胃腸管(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、中枢神経系(アルツハイマー病、多発性硬化症、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、及び慢性疲労症候群)、膵臓β細胞(インスリン依存性糖尿病)、副腎(アジソン病)、腎臓(グッドパスチャー症候群、IgAネフロパシー、間質性腎炎)、外分泌腺(シェーグレン症候群、及び自己免疫膵炎)、及び皮膚(乾癬、及びアトピー性皮膚炎)のような特定の組織又は器官に関与しうる。
【0003】
さらに、病因が多かれ少なかれ知られているがその炎症は慢性で絶え間ないものである、慢性炎症性疾患もある。これらは大規模な組織/器官破壊も示し、変形性関節症、歯周病、糖尿病性ネフロパシー、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化、移植片対宿主疾患、慢性骨盤炎症性疾患、子宮内膜症、慢性肝炎、及び結核症の様な状態が含まれる。これらの疾患においては、組織破壊は、しばしば器官機能を損傷し、クォリティオブライフの進展した減退及び器官不全をもたらす。これら状態は、発展途上世界における病気の主要な原因であり、現在の療法によっては殆ど治療されていない。
【0004】
皮膚構造の炎症(皮膚炎)は、よくある組の状態であり、それには、光線性角化症、赤鼻、尋常性座瘡、アレルギー性接触皮膚炎、血管性水腫、アトピー性皮膚炎、水疱性類天疱瘡、皮膚薬物反応、多形性紅斑、紅斑性狼瘡、光線皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、強皮症、及び蕁麻疹が含まれる。これら疾患は広範な療法を用いて治療され、それらの多くは非常に深刻な副作用を有する。
【0005】
免疫駆動性状態のための現在の疾患修飾性治療には(存在する場合には)、中和抗体、細胞毒、コルチコステロイド、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤、及び抗ムスカリン剤が含まれる。これら治療は、しばしば、不都合な投与経路及び深刻な副作用に関連し、コンプライアンスの問題をもたらす。その上、例えば、鼻炎についての抗ヒスタミン剤のように、一定の薬物クラスは一定のタイプの炎症性疾患にしか有効でない。
【0006】
β−アミノアルコール類は、α−及びβ−アドレナリンレセプターにおけるアゴニズム及びアンタゴニズムによる抗高血圧活性、血管拡張活性、交感神経興奮活性、気管支拡張活性、又は心臓刺激活性を有することが知られている。
【発明の開示】
【0007】
発明の要旨
驚くべきことに、β−アミノアルコール(I)が、サイトカイン類の阻害剤であり、抗炎症特性を有することが見出された。本発明によると、疼痛又は炎症性状態、例えば上記された状態は、一般式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
{式中、
は、CHR−OR若しくはCHR−SRであるか、又は1以上の基Rで場合により置換されたアリール若しくはヘテロアリールであり;
は、アルキルであるか、又はRと共に環の部分であり;
は、H、アルキル、又はCH(Rと共に環の部分を形成する場合)であり;
は、H若しくはアルキルであるか、又はRと共に環の部分であり;
は、Rで場合により置換されたアリール又はヘテロアリールであり;
各Rは、独立に、アルキル、CF、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHSOアルキル、CONH、SOMe、SONH、Sアルキル、CHSOアルキル、又はOCONアルキルであり;
は、Rであるか、又は(CHOR、R、CF、OH、OR、OCOR、COR、COOR、CONH、CHCONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHCONHR、NHCON(R、NHCOR、NHCOアリール、NHSOMe、CONH、SMe、SOMe、若しくはSONHであり;
は、(CHOR、(CH)OR、(CHCOOR、又は(CHCOアリールであり;
は、アルキル、又はシクロアルキルであり;そして
nは1〜4である}
の化合物又はその塩の使用により治療される。
【0010】
発明の説明
式(I)の化合物には、Rがアリール又はヘテロアリールであるもの、及びRがCHR−ORであるものが含まれる。本発明における使用のための具体的な化合物には、アルブテロール、アミデフリン(amidephrine)、アミテロール(amiterol)、アロチノール(arotinol)、バンブテロール(bambuterol)、バメタン(bamethan)、ブロンコソール(bronkosol)、ブカモロール(bucumolol)、ブチブリン(butidrine)、ブトキサミン(butoxamine)、カルブテロール(carbuterol)、シマテロール(cimaterol)、クレンブテロール、クロルプレナリン(clorprenaline)、コルテロール(colterol)、デテレノール(deterenol)、ジアセチルイロプレテレノール、ジクロロイソプレテレノール、ジオキフェドリン(dioxifedrine)、ジメトフリン(dimetofrine)、ジピベフリン(dipivefrin)、ジバブテロール(divabuterol)、エピネフリン、エフェドリン、エチレフリン(etilefrine)、フェノテロール(fenoterol)、フレロブテロール(flerobuterol)、ハロスタチン(halostachine)、イブテロール(ibuterol)、イソエタリン(isoetharine)、イソプレナリン、イソプロピルメトキサミン(isopropylmethoxamine)、イソプレテレノール、マブテロール(mabuterol)、メルアドリン(meluadrine)、メネチル(menetyl)、メタロール(metalol)、メタプロテレノール(metaproterenol)、メタテロール(metaterol)、メチプレナリン(metiprenaline)、ニフェナロール(nifenalol)、オキセドリン(oxedrine)、オキシロフリン(oxilofrine)、フェニレフリン、、プロカテロール、プロネタロール(pronetalol)、シュードエフェドリン、キンテレノール(quinterenol)、リミテロール(rimiterol)、サルブタモール、ソタロール(sotalol)、ソテレノール(soterenol)、スルフォンテロール(sulfonterol)、スロクチジル(suloctidil)、シンパトール(sympatol)、テルブタリン、及びツロブテロール;アルプレノロール、アテノロール、ブフェノロール(befunolol)、ベタキソロール(betaxolol)、ブニトロロール(bunitrolol)、ブノロール(bunolol)、ブプラノロール(bupranolol)、カルテオロール(carteolol)、クロラノロール(cloranolol)、エスモロール(esmolol)、エキサプロロール(exaprolol)、メピンドロール(mepindolol)、メチプラノロール(metipranolol)、メトプロロール(metoprolol)、モプロロール(moprolol)、ナドロール(nadolol)、ニトロロール(nitrolol)、オキシプレノロール(oxprenolol)、ペンブトロール(penbutolol)、ピンドロール、プラクトロール(practolol)、プレナルテロール(prenalterol)、プロパフェノン(propafenone)、プロパノロール(propanolol)、リダゾロール(ridazolol)、テルタロロール(tertalolol)、チプレノロール(tiprenolol)、タリノロール(talinolol)、チリソドール(tilisodol)、及びバニロール(vanilol)が含まれる。好ましい化合物は、クレンブテロール、マブテロール、プロカテロール及びリミテロールである。
【0011】
本発明における使用のための化合物には、その塩、例えば、塩酸塩、代謝物、及びプロドラッグが含まれることが理解される。本発明における使用のための化合物は、キラルであってよく、そして本発明には(I)の全てのジアステレオマー及びエナンチオマーが含まれることが理解されるであろう。
【0012】
(I)の好ましいジアステレオマー又はエナンチオマーは、α又はβアドレナリンレセプターにおいて殆ど又は全く活性を有さない。この活性は、適切な in vitro アッセイを用いることにより決定することができる。特に好ましい化合物には、(S)−(+)−クレンブテロ−ル、(S)−(+)−マブテロ−ル、erythro−(S)−3,4−ジヒドロキシフェニル−(R)−ピペリジン−2−イル−メタノール、threo−(S)−3,4−ジヒドロキシフェニル−(S)−ピペリジン−2−イル−メタノール、及びerythro−(S)−3,5−ジクロロ−4−アミノフェニル−(R)−ピペリジン−2−イル−メタノールが含まれる。
【0013】
本発明の式(I)の化合物は、炎症性疾患を治療するために用いられ、当該疾患には、全身性エリテマトーデス(SLE)及び強皮症のような複数の器官に関与する自己免疫疾患;特定の組織又は器官、例えば、筋骨格組織(リウマチ様関節炎、強直性脊椎炎)、胃腸管(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、中枢神経系(アルツハイマー病、多発性硬化症、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、及び慢性疲労症候群)、膵臓β細胞(インスリン依存性糖尿病)、副腎(アジソン病)、腎臓(グッドパスチャー症候群、IgAネフロパシー、間質性腎炎)、外分泌腺(シェーグレン症候群、及び自己免疫膵炎)、及び皮膚(乾癬、及びアトピー性皮膚炎)に関与する自己免疫疾患;変形性関節症、歯周病、糖尿病性ネフロパシー、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化、移植片対宿主疾患、慢性骨盤炎症性疾患、子宮内膜症、慢性肝炎、及び結核症のような慢性炎症性疾患;鼻炎、喘息、アナフィラキシー及び皮膚炎のようなIgE媒介(I型)過敏症が含まれるが、これらに限定されない。皮膚状態には、光線角化症、赤鼻、尋常性座瘡、アレルギー性接触皮膚炎、血管性水腫、アトピー性皮膚炎、水疱性類天疱瘡、皮膚薬物反応、多形性紅斑、紅斑性狼瘡、光線皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、強皮症、及び蕁麻疹が含まれる。糖尿病性網膜症、黄斑変性、ブドウ膜炎、及び結膜炎のような眼の状態も治療され得る。
【0014】
これら化合物は、本発明に従って、以下のものから選択される別の治療剤をも患者に投与されている場合又は当該別の治療剤と一緒に用いられ得る:コルチコステロイド(例には、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ジヒドロコルチゾン、フルドロコチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デフラザコルト(deflazacort)、フルニソリド(flunisolide)、ベコナーゼ(beconase)、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、及びデキサメタゾンが含まれる)、疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)(例には、アズルフィジン(azulfidine)、アウロチオマレート(aurothiomalate)、ブシラミン(bucillamine)、クロラムブシル(chlorambucil)、シクロホスファミド、レフノミド(leflunomide)、メトトレキサート(methotrexate)、ミゾリビン(mizoribine)、ペニシラミン(penicillamine)、及びスルファサラジン(sulphasalazine)が含まれる)、免疫抑制剤(例には、アザチオプリン、シクロスポリン、マイコフェノレート(mycophenolate)が含まれる)、COX阻害剤(例には、アセクロフェナク(aceclofenac)、アセメタシン、アルコフェナク(alcofenac)、アルミノプロフェン(alminoprofen)、アロキシピリン(aloxipirin)、アンフェナク(amfenac)、アミノフェナゾン、アントラフェニン(antraphenine)、アスピリン、アザプロパゾン、ベノリラート(benorilate)、ベノキサプロフェン(benoxaprofen)、ベンジダミン、ブチブフェン(butibufen)、セレコキシブ(celecoxib)、クロルテノキサシン(chlorthenoxacine)、サリチル酸コリン、クロメタシン(chlometacin)、デキスケトプロフェン(dexketoprofen)、ジクロフェナク、ジフルニサル(diflunisal)、エモルファゾン、エピリゾール、エトドラク(etodolac)、フェクロブゾン(feclobuzone)、フェルビナク(felbinac)、フェンブフェン、フェノクロフェナク、フルルビプロフェン、グラフェニン、サリチル酸ヒドロキシエチル、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ラクチルフェネチジン、ロキソプロフェン、メフェナム酸、メタミゾール(metamizole)、モフェブタゾン、モフェゾラク(mofezolac)、ナブメトン(nabumetone)、ナプロキセン、ニフェナゾン、オキサメタシン、フェナセチン、ピペブゾン(pipebuzone)、プラノプロフェン、プロピフェナゾン(propyphenazone)、プロクアゾン(proquazone)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、サリチルアミド、サルサラート、スリンダク(sulindac)、スプロフェン(suprofen)、チアラミド(tiaramide)、チノリジン(tinoridine)、トルフェナム酸(tolfenamic acid)、ゾミピラク(zomepirac)が含まれる)、中和抗体(例には、エタネルセプト(etanercept)及びインフリキシマブが含まれる)、抗生物質(例には、ドキシサイクリン及びミノサイクリンが含まれる)。
【0015】
本発明の別の側面によると、式(I)の化合物は、動物モデルにおいて鎮痛活性を示す。これら化合物の活性は、適切な in vivo アッセイを用いることにより測定することができる。
【0016】
本発明は、慢性、急性、又は神経障害性の疼痛を患う患者(ヒト及び/又は酪農、製肉又は毛皮産業においてか又はペットとして飼育される哺乳動物を含む)のための治療方法;そしてより具体的には、活性成分として式(I)の鎮痛剤を投与することを含む治療方法にも関する。
【0017】
従って、式(I)の化合物は、特に、急性及び慢性疼痛(並びに、ガン、外科手術、関節炎、歯科外科手術、外傷、筋骨格傷害又は疾患、内臓疾患に関連した疼痛であるが、これらに限定されない)、及び片頭痛のような疼痛状態の治療において用いられ得る。さらに、それら疼痛状態は、神経障害性であり得る;そのような状態の例は、ヘルペス後(post-helpetic)神経痛、糖尿病性神経障害、薬物誘発性神経障害、HIV媒介性神経障害、交感神経反射性ジストロフイィ又はカウザルギー、繊維筋肉痛、顔面筋疼痛、エントラップメント神経障害、幻肢痛、及び三叉神経痛である。神経障害性状態には、梗塞、多発性硬化症、脊髄傷害、クモ膜炎、新生物、脊髄空洞症、パーキンソン病、及び癲癇に関連した中枢疼痛が含まれる。
【0018】
式(I)の化合物を、疼痛療法に用いられる別の薬物と組み合わせて用いることは、しばしば有利である。そのような別の薬物は、アヘン剤であるか、又はバクロフェンのような非アヘン剤である。特に神経障害性疼痛の治療のためには、ガバペンチンとの共投与が好ましい。用いられうる他の化合物には、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬、麻薬性鎮痛剤、局所麻酔剤、NMDAアンタゴニスト、神経弛緩剤、抗痙攣剤、鎮痙剤、抗鬱剤、又は筋弛緩剤が含まれる。
【0019】
どのような適する投与経路も用いられ得る。例えば、経口、局所、非経口、眼、直腸、膣、吸入、バッカル、舌下、及び鼻腔内の投与経路のいずれもが適切であり得る。活性剤の投与量は、状態の性質及び程度、患者の年齢及び状態、及び当業者に知られている他の因子に依存する。典型的な投与量は、1日に1〜3回投与される0.1mg〜、例えば、10〜100mgである。
【0020】
次の研究は、本発明が基礎とする証拠を提供する。
【0021】
βアゴニズム機能アッセイ
モルモット気管リング調製物が、インドメタシンを含有するKreb’s溶液中に懸濁された。15分の安定化後、カルバコールを用いて当該調製物を繰返し収縮させると同時に試験化合物の増加性累積投与量で処置した(0.1nM〜0.1μM)。各試験化合物についてのβ2アゴニズムは、カルバコール刺激気管筋単収縮に対するその用量依存的阻害により測定した。
【0022】
(S)−クレンブテロールは、フォルモテロール(ポシティブコントロール)によって生じたものより少し低いレベルである−10〜−7logMにおいて75%までの阻害を生じた。(R)−クレンブテロールは、そのようなβ2アゴニスト活性を殆ど示さなかった。
【0023】
LPSマウスアッセイ
7週齢Balb C ByJマウス(24−28g)に、i.p.(5ml/kg)又は経口(10ml/kg)投与により賦形剤又は試験物品を投与した。30分後、これら動物が、1mg/kgLPSの腹腔内注射でチャレンジされた。LPSチャレンジの2時間後、逆眼窩穿刺によって、血液サンプルが軽いイソフルラン麻酔下で通常のチューブ内へ採取された。サンプルを室温で凝固させて、次いで6000gで3分間、4℃で回転させた。血清は、使用するまで−20℃で保存した。血清TNFα及びIL−10レベルは、ELISA技術により二重に分析された。
【0024】
(S)及び(R)−クレンブテロールは、各投与量、即ち、0.3〜1mg/kg p.o.((S)−クレンブテロールエナンチオマーについて)において有意な活性を示した。これら投与量は、β2アゴニスト活性濃度未満の血漿負荷を生じるものである。β2アゴニズムを生じなかったであろう投与量における(S)−クレンブテロールは、十分な免疫調整プロファイルを有した。この免疫調整効果は、はっきりとしたβ2アゴニズムを有しその薬理学が知られた抗炎症プロファイルを有する(R)−クレンブテロールよりも小さかった。しかしながら、その効果は明瞭であり、以前は認められていなかったと思われる薬力学的効果を通じて強い抗炎症活性を有すべきである。
【0025】
カラゲナン足アッセイ
絶食した(18時間)雄Wistarラット(105〜130g)の体重を測定し、後右足(paw)についての基礎の水銀プレスチモメーター値の読み取りを、当該足を脛足根関節まで水銀中に沈めることによって行った。その後、賦形剤、基準アイテム、及び試験品が経口強制栄養法によって投与された(10ml/kg)。処置の30分後、0.9%生理食塩水中の2%カラゲナン液0.1mlを右後足の足底下(subplanatar)領域内に注射した。当該右足を、カラゲニン投与の1、2、3、4及び5時間後に、プレチスモメーターを用いて再度測定した。
【0026】
(S)−クレンブテロールは、0.3、1及び3mg/kg経口で、β2アゴニズムに関与する見込みが非常に低い抗炎症性活性を強く、しかも用量依存的に有した。0.3mg/kg経口での細孔容量の経時変化は、100mg/kgでのイブプロフェンについて観測されたものと類似していた。
【0027】
ラットアジュバントアッセイ
雄Wistarラット(180〜200g)が、第0日における当該右足中へのFreund’sアジュバント(Mycobacterium butyricumの鉱油中懸濁物)の足底下(subplantar)注射により接種された。0.9%生理食塩水を用いて、マッチされたオスWistarラットにおいて擬似接種が同じように注射された。第2日に、動物が体重測定された。第3、4、7、9及び11日に、動物が体重測定され、そしてそれらの右及び左の両方の後足が、当該足を脛足根関節まで沈めることによるプレチスモメトリーによって測定された。第11日に、左後足の容量が20%増加したラットが研究の継続のために選択された。同じ日に、継続ラットが試験品を経口投与され(蒸留水中10ml/kg)、それから、研究が完結するまで一日一回経口投与された。左及び右後足の容量が第11、14、15、16、18及び21日に測定された。
【0028】
(S)−クレンブテロールは、このモデルにおいて、0.3、1及び3mg/kg/日の用量で、明確であるが非容量関連性の抗炎症効果を示した。(R)−アテノロールは、類似の効果を示した。
【0029】
コラーゲンII誘発関節炎アッセイ
6〜8週齢の雄DBA1マウスを、Freund’s完全アジュバント中に乳化したウシタイプIIコラーゲンの0.1ml皮内(尾)注射を用いて免疫化した(第0日)。第21日に、PBS中の追加のコラーゲン(腹腔内)接種が与えられた。同時に、所定の投与経路および投与頻度によって試験化合物の投与が与えられた。さらに、第21日に、臨床的徴候、体重、及び関節炎反応スコアの観察を開始した。関節炎スコアは、関節炎の発生の徴候についてスコアをつけられた4つの足全ての総和により評価した。
【0030】
(S)−クレンブテロールは、マウスにおけるコラーゲンII誘発関節炎モデルにおいて、0.3、1及び3mg/kgの用量で、明確であるが逆用量関連抗炎症効果を示した。
【0031】
要約すると、(S)−クレンブテロールは、明確な抗炎症効果を有することが示され、これは、そのラセミ体のβ2アゴニスト活性と関連しなかった。また、この抗炎症活性は、多数の炎症性アッセイを通じて観測され、このことは、潜在的に広範囲な治療有用性を示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T−細胞増殖に関連するか又は炎症促進性サイトカインによって媒介される状態の治療又は予防のための化合物の使用であって、当該化合物が、式(I):
【化1】

[式中、
は、CHR−OR、若しくはCHR−SRであるか、又は1以上の基Rで場合により置換されたアリール若しくはヘテロアリールであり;
は、アルキルであるか、又はRと共に環の部分であり;
は、H、アルキル、又はCH(Rと共に環の部分を形成する場合)であり;
は、H若しくはアルキルであるか、又はRと共に環の部分であり;
は、Rで場合により置換されたアリール又はヘテロアリールであり;
各Rは、独立に、アルキル、CF、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHSOアルキル、CONH、SOMe、SONH、Sアルキル、CHSOアルキル、又はOCONアルキルであり;
は、Rであるか、又は(CHOR、R、CF、OH、OR、OCOR、COR、COOR、CONH、CHCONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHCONHR、NHCON(R、NHCOR、NHCOアリール、NHSOMe、CONH、SMe、SOMe、若しくはSONHであり;
は、(CHOR、(CH)OR、(CHCOOR、又は(CHCOアリールであり;
は、アルキル、又はシクロアルキルであり;そして
nは1〜4である]
の化合物又はその塩である使用。
【請求項2】
前記状態が、リウマチ様関節炎、変形性関節炎、又は骨粗しょう症のような慢性変性性疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記状態が、多発性硬化症のような慢性脱髄性疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記状態が、喘息又は慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記状態が、潰瘍性大腸炎又はクローン病のような炎症性腸疾患(IBD)である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記状態が、乾癬、強皮症又はアトピー性皮膚炎のような皮膚科学的状態である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記状態が、歯周病又は歯肉炎のような歯科的疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記状態が、糖尿病性ネフロパシー、狼瘡性ネフロパシー、IgAネフロパシー、又は、糸球体腎炎である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記状態が全身性エリテマトーデス(SLE)である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記状態が移植片対宿主病である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記状態が疼痛状態である、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記疼痛状態が、慢性背痛、悪性疼痛、慢性頭痛(片頭痛及び群発性頭痛を包含する)のような慢性疼痛である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記疼痛状態が、術後疼痛、外傷後疼痛、又は急性疾患誘発性疼痛のような、急性疼痛である請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記疼痛が神経障害性疼痛である、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
が、CHR−ORであるか、又は1以上の基Rで場合により置換されたアリール若しくはヘテロアリールであり;
各Rが、独立して、アルキル、CF、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHSOアルキル、CONH、SOMe、Sアルキル、CHSOアルキル、又はOCONアルキルであり;そして
が、Rであるか、又は(CHOR、R、CF、OH、OR、OCOR、COR、COOR、CONH、CHCONH、CN、ハロゲン、NH、NO、NHCHO、NHCONH、NHCONHR7、NHCON(R、NHCOR、NHCOアリール、NHSOMe、CONH、SMe、若しくはSOMeである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
がアリール又はヘテロアリールである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
がCHR−ORである、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記化合物が、(S)−クレンブテロール、(S)−マブテロール、(S)(R)−リミテロール、又は(S)(S)−リミテロールである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記化合物がアテノロール、ブカモロール、またはプロカテロールである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
患者が、コルチコステロイド、細胞毒、抗生物質、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症薬、麻薬性鎮痛薬、局所麻酔剤、NMDAアンタゴニスト、神経弛緩剤、抗痙攣剤、鎮痙剤、抗鬱剤、及び筋弛緩剤から選択される別の治療剤をも投与されている、請求項1〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記化合物(I)と前記別の薬剤とが組み合わせて提供される、請求項20に記載の使用。

【公表番号】特表2008−512433(P2008−512433A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530760(P2007−530760)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003452
【国際公開番号】WO2006/027579
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(506298976)ソセイ・アール・アンド・ディー・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】