説明

炭素ナノチューブの大量生産のための装置および方法

【課題】 炭素ナノチューブの大量生産のための装置を提供する。
【解決手段】 その装置は互いに異なる反応段階にある多数の反応チェンバー(20)を必要な温度に加熱する移動可能なヒーター(30)を有する。ヒーターは移動することによって、多数の反応チェンバーを反応の進行に応じた複数の温度で同時に加熱する。一実施例では、ヒーターは低温領域、反応領域、及び冷却領域を有する。低温領域、反応領域、及び冷却領域にそれぞれ隣接した反応チェンバーで予熱工程、反応工程及び冷却工程が同時に行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素ナノチューブの大量生産のための装置および方法に係るものであって、さらに詳しくは多数の反応温度領域を有する加熱ヒーターを通じて多数の反応区間で炭素ナノチューブを連続的に生産する炭素ナノチューブの大量生産のための装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素ナノチューブを製造する代表的な技術方式には、電気放電式、レーザー蒸着式、熱化学気相蒸着式などがあり、幾つかの他の方式にても可能である(例えば特許文献1、2参照)。これらの中、熱化学気相蒸着式炭素ナノチューブ合成方式を簡略に紹介する。熱化学気相蒸着式は、比較的高温の反応炉内に、炭素成分のガスを流通させて、炭素ナノチューブを自然生成させる方法であり、触媒と600〜1000℃の高熱が使用される。
【特許文献1】特開2004−18309号公報
【特許文献2】特開2003−277029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の熱化学気相蒸着式合成方法では、反応炉内における反応ガスの流速が変わると、触媒を担持した基板に供給される反応ガス量の不均一のため、反応炉の温度変化と位置によって、反応状態が影響を受ける。合成装置の構造は単純である点で比較的大量合成に向いているが現実的には所望の炭素ナノチューブを大量生産することはできない。
【0004】
特に、従来の熱化学気相蒸着式装置は熱を供給するヒーターの温度を上げてから下げるまでに要する時間が長く、単位時間当りの炭素ナノチューブの生産効率が低かった。また、触媒を反応装置の内部へ連続的に供給するのが難しく、炭素ナノチューブを大量に合成するのは困難であった。熱化学装置を応用した既存の大量合成装置が提案されているが、反応に必要な温度の安定化とガス供給の調節についての問題が解決されていない。従って、従来の熱化学気相蒸着式方法を利用して合成された炭素ナノチューブは、大量生産の難しさのために高価である。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するために案出されたものであって、その目的は炭素ナノチューブを大量生産する装置および方法を提供することである。より具体的には、多様な構造の炭素ナノチューブ(MWCNT、DWCNT、SWCNT)を多数のチェンバーでそれぞれ大量生産する装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、炭素ナノチューブの大量合成装置であって、炭素ナノチューブの触媒反応が行なわれる多数の反応チェンバーと、上記多数の反応チェンバーに、炭素ナノチューブの合成段階別反応温度を同時に提供するように区画された複数の合成段階別温度領域を有する加熱ヒーターと、上記加熱ヒーターの複数の合成段階別温度領域が対応する合成段階にある反応チェンバーに位置するように、上記加熱ヒーターと前記反応チェンバーとを一定間隔毎に相対移動させて、前記多数の反応チェンバーにおいて炭素ナノチューブの合成反応を連続的に進行させる駆動手段と、上記駆動手段の作動に伴って作動し、各反応チェンバーの合成段階に応じたガスを各反応チェンバーに供給し排出させるガス供給および排出部とを含む大量合成装置を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、炭素ナノチューブの大量合成装置であって、炭素ナノチューブの合成反応が行なわれる多数の反応チェンバーと、上記多数の反応チェンバーに、炭素ナノチューブの合成段階別反応温度を同時に提供するように区画された複数の合成段階別温度領域を有する加熱ヒーターと、上記加熱ヒーターの複数の合成段階別温度領域が、対応する合成段階にある反応チェンバーに位置するように、上記反応チェンバーを前記加熱ヒーターに対して一定間隔毎に移動させて、前記多数の反応チェンバーにおいて炭素ナノチューブの合成反応を連続的に進行させる駆動手段と、上記駆動手段の作動に伴って作動し、各反応チェンバーの合成段階に応じたガスを各反応チェンバーに供給し排出させるガス供給および排出部;を含むことを特徴とする炭素ナノチューブの大量合成装置を提供する。
【0008】
本発明の第3の態様は、炭素ナノチューブの大量生産方法であって、低温領域、反応領域および冷却領域の各々を少なくとも一つ以上有する加熱ヒーターを、複数の反応チェンバーに対して移動させて、上記加熱ヒーターの低温領域に隣接した反応チェンバーを予熱するとともに、その反応チェンバーの内部の空気をArガスで置換する予熱段階と、上記加熱ヒーターの高温領域が予熱された上記反応チェンバーに隣接するように上記加熱ヒーターを移動させて、上記加熱ヒーターの高温領域に隣接した反応チェンバーを反応温度に加熱するとともに、その反応チェンバー内のArガスを炭化ガスに置換して、炭化ガスの触媒反応により炭素ナノチューブを合成する反応段階と、上記加熱ヒーターの冷却領域が反応温度に加熱された上記反応チェンバーに隣接するように上記加熱ヒーターを移動させて、上記加熱ヒーターの冷却領域に隣接した反応チェンバーを冷却するとともに、その反応チェンバーの内部のガスをArガスに置換して、その反応チェンバー内の炭素ナノチューブを冷却させる冷却段階;を含むことを特徴とする炭素ナノチューブの大量生産方法を提供する。
【0009】
本発明の第4の態様は、炭素ナノチューブの大量生産方法であって、複数の反応チェンバーを、低温領域、反応領域および冷却領域の各々を少なくとも一つ以上有する加熱ヒーターに対して移動させて、上記加熱ヒーターの低温領域に隣接した反応チェンバーを予熱するとともに、その反応チェンバーの内部の空気をArガスで置換する予熱段階と、上記加熱ヒーターの高温領域が予熱された上記反応チェンバーに隣接するように上記複数の反応チェンバーを移動させて、上記加熱ヒーターの高温領域に隣接した反応チェンバーを反応温度に加熱するとともに、その反応チェンバー内のArガスを炭化ガスに置換して、炭化ガスの触媒反応により炭素ナノチューブを合成する反応段階と、上記加熱ヒーターの冷却領域が反応温度に加熱された上記反応チェンバーに隣接するように上記複数の反応チェンバーを移動させて、上記加熱ヒーターの冷却領域に隣接した反応チェンバーを冷却するとともに、その反応チェンバーの内部のガスをArガスに置換して、その反応チェンバー内の炭素ナノチューブを冷却させる冷却段階とを含むことを特徴とする炭素ナノチューブの大量生産方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炭素ナノチューブの大量生産のための装置および方法によれば、短時間で炭素ナノチューブを大量に合成することができる。また、複数のチェンバーで、多様な構造の炭素ナノチューブ(MWCNT、DWCNT、SWCNT)を同時に合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明する。
図1は本発明の好ましい実施例に従う炭素ナノチューブを大量生産する合成装置の平面図である。
【0012】
合成装置は、炭素ナノチューブの合成細部段階が個別に行なわれる多数の反応チェンバー20、反応チェンバー20の周囲に移動可能に配置され、反応チェンバー20内の合成反応に必要な温度を供給する加熱ヒーター30、反応チェンバー20が配置された区間で加熱ヒーター30を移動させる駆動モーター40、反応チェンバー20内に合成反応に必要な反応ガスを安定に供給および排出するガス供給および排出部50、51、52、53で構成される。
【0013】
多数の反応チェンバー20が基台であるセラミックプレート10上に設置される。各反応チェンバー20の内部では炭素ナノチューブの生産のための多様な工程が個別に実施される。即ち、炭素ナノチューブの生産のための合成段階が多数の反応チェンバー20で個別に実施される。
【0014】
炭素ナノチューブの生産のための合成段階は、予熱段階、反応段階および冷却段階からなる。反応チェンバー20それぞれが上記それぞれの合成段階の中、一つの反応段階を個別に行う。
【0015】
このような反応チェンバー20内の合成段階別温度供給は加熱ヒーター30を通じて行なわれる。合成段階別反応チェンバー20に対する多様な温度の供給が可能になるように加熱ヒーター30は低温領域、反応領域および冷却領域の3領域に分けて形成される。これにより、炭素ナノチューブの全体合成工程の温度を安定化させる。
【0016】
加熱ヒーター30の低温領域は予熱段階を行う反応チェンバー20へ100ないし700℃の温度を安定に供給する。加熱ヒーター30の反応領域は反応段階を行う反応チェンバー20へ800ないし1000℃の温度を安定に供給する。加熱ヒーター30の冷却領域は冷却段階を行う反応チェンバー20へ700ないし200℃の温度を安定に供給する。
【0017】
このように、多数の反応チェンバー20の各々へ適切な反応温度を提供する加熱ヒーター30は、駆動モーター40に連結されている。加熱ヒーター30は駆動モーター40により、触媒の収容された多数の反応チェンバー20設置区間を一定な時間間隔に移動されて、それぞれの反応チェンバー20で連続的に合成工程を進行させる。
【0018】
即ち、低温領域、反応および冷却領域を有する加熱ヒーター30は駆動モーター40の駆動に基づいて一定時間間隔に反応チェンバー20設置区間を移動する。この移動時、駆動モーター40の駆動によって、加熱ヒーター30の低温領域が予熱段階を行う反応チェンバー20へ反応に必要な温度を安定に供給することができるように、加熱ヒーター30の位置は制御される。同じく、加熱ヒーター30の反応領域と冷却領域が反応段階と冷却段階を行う反応チェンバー20へそれぞれ反応に必要な温度を安定に供給することができるように、加熱ヒーター30の位置は制御される。
【0019】
このように多数の反応チェンバー20が別個の合成段階を進行することに従って、それぞれの合成段階に基づく反応気体と安定化気体が混合するのを防ぐことができ、それぞれの反応チェンバー20のガスが他の反応チェンバー20のガスと混合されず、ガス供給が安定化される。
【0020】
反応ガスの合成段階別運用を説明する。
本発明の炭素ナノチューブの大量生産のための大量合成装置は温度に基づく反応ガスの安定供給のために200ないし700℃の温度範囲で触媒をAr雰囲気で安定に溶解する予熱工程、800ないし1000℃の温度範囲でメタンガス、アセチレンガス、エチレンガスなどの炭化水素を10ないし1000sccmで触媒に供給して炭素ナノチューブを合成させる反応工程、反応終了後、700ないし200℃の温度でAr雰囲気で急激に温度を低下する冷却工程を行う。
【0021】
合成時、ガス供給および排出部50、51、52、53は多数のガスを安定に混合し、混合ガスを各反応チェンバー20へ供給し、反応チェンバー20からガスを排出させる。
図1を参照してこれをより詳しく説明する。ガス混合器50は反応チェンバー20の各合成段階別必要ガスを安定に混合して排出させる。このようにガス混合器50から排出された反応ガスはガス供給器51を通じて反応チェンバー20の下部に設置されたガス拡散口21へ送達され、ガス拡散口21が反応ガスを反応チェンバー20の下から反応チェンバー20内に拡散させる。
【0022】
そして、反応終了後、反応ガスは反応チェンバー20内の下部と上部に設置されたガス排気口22を通じて排気される。ガス排出器52は上記排気されたガスを排出ガス燃焼器53に送達する。排出ガスは排出ガス燃焼器53によって燃焼されて大気中に放出される。
【0023】
チェンバー内部のガス供給器51およびガス排出器52は例えば高純度アルミニウム製のガス管であり、ガスの供給と排出を調節してチェンバーの内部でガスを安定供給することができる。
【0024】
即ち、反応区間を多数のチェンバーの形態の領域に区分けしてそれぞれのチェンバーで生産目的に合う炭素ナノチューブの合成のためのガスの調節が行なわれるばかりでなく、それぞれの反応区間領域であるチェンバーが他のチェンバーの反応気体と混合しないように気体を安定に供給することができる。
【0025】
これに基づいて、それぞれの反応区間である反応チェンバー20は他の反応チェンバー20の気体から影響を受けず、与えられた条件下で安定に反応を起こすことができる。個々の反応チェンバー20へ目的に合うガスが安定に供給されることにより、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)、二重壁炭素ナノチューブ(DWCNT)、単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)などの多様な構造の炭素ナノチューブに対する合成をそれぞれの反応チェンバー20内で個別に進行させることができる。
【0026】
従って、それぞれの反応チェンバー20は加熱ヒーター30の移動に従って、加熱ヒーター30の低温領域、反応領域および冷却領域で各合成段階別必要温度の提供を受け、ガス供給および排出部50、51、52、53から合成段階別必要ガスの提供を受けて、炭素ナノチューブの大量生産は勿論個別なチェンバー別合成過程の進行を通じて多様な構造の炭素ナノチューブを同時に生産できる。
【0027】
以上説明した合成装置を利用した炭素ナノチューブの大量生産工方法を具体的に説明する。
先ず、炭素ナノチューブの合成工程中、予熱工程の進行のためにArガスをガス混合器50に準備する。Arガスをガス混合器50からガス供給器51を通じて低温工程(予熱工程)のための反応チェンバー20へ供給する。Arガスはその反応チェンバー20内のガス拡散口21からチェンバーの下から拡散される。これにより、その反応チェンバー20はArガスに置換される(S10)。
【0028】
そして、駆動モーター40は加熱ヒーター30の低温領域を上記Ar雰囲気の反応チェンバー20へ移動させて、その反応チェンバー20へ200ないし700℃の温度が供給されるようにする(S20)。
【0029】
この予熱工程により、上記反応チェンバー20では反応触媒が反応に適当な温度に加熱されて安定に溶解状態に維持される。この時、Arガスは空気中の触媒反応を抑制するために反応チェンバー20内の空気をパージするので、上記ガス排気口22はそのチェンバー20内の空気を下部と上部から同時に排気させる。空気はガス排気口22からガス排出器52を通じて外部へ放出される(S30)。
【0030】
次に、炭素ナノチューブの合成工程中、反応工程の進行のためにメタンガス、アセチルガス、エチレンガスなどの炭素を含有する炭化ガスをガス混合器50に準備する。ガス供給器51は上記低温工程(予熱工程)を終えた反応チェンバー20へ10ないし1000scmの炭化ガスを供給する。これに基づいて該反応チェンバー20内のガス拡散口21とガス排気口22は上記低温のArガスを上記炭化ガスに置換させ炭化ガスをチェンバー内に拡散させる(S40)。
【0031】
これと同時に駆動モーター40は加熱ヒーター30を駆動させ加熱ヒーター30の高温領域を上記炭化ガスで満たされた反応チェンバー20へ移動させ反応チェンバー20へ800ないし1000℃の温度を供給させる。これにより、このチェンバー20内部で炭素を含有したガスと触媒とが反応して炭素ナノチューブが合成される(S50)。
【0032】
次に、炭素ナノチューブの合成工程中、冷却工程の進行のためにガス混合器50にArガスを準備する。ガス供給器51はArガスを冷却工程のための反応チェンバー20へ供給する(S60)。
【0033】
そして、これと同時に駆動モーター40は加熱ヒーター30の冷却領域を上記反応が終わった後の反応チェンバー20へ移動させる。これに基づいて反応チェンバー20内の残留ガスが上記Arガスの供給(パージ)により、ガス排気口22およびガス排出器52を通じて排出され、反応チェンバー20の内部が冷却されて、合成されたナノチューブは冷却される(S70)。これによって反応を終えた炭素ナノチューブが炭素成分を含有した残留ガスの影響を受けず安全に冷却されて収集される。
【0034】
上述の本発明の炭素ナノチューブの合成方法では、先ず、加熱ヒーター30の200ないし700℃の低温領域で一つの反応チェンバー20はArガス雰囲気の状態に満たされており、反応触媒が反応に適当な温度まで加熱されて安定に溶解される。この時に供給されるArガスは空気中での触媒反応を抑制するために、そのチェンバー20内の空気をパージする役割を有する。
【0035】
次に、加熱ヒーター30の低温領域にあったArガスは800ないし1000℃の高温領域でエタンやメタンガスなどの炭素を含有するガスに置換される。炭素を含有したガスが触媒反応により炭素ナノチューブを生成する。
【0036】
最後に700ないし200℃の冷却領域では反応が終わった後の残留ガスをArガスのパージによりチェンバー20の外部へ排出させる。その低温の冷却領域では、合成された炭素ナノチューブが残留する炭素ガスから影響を受けることなく、冷却される。
【0037】
上記炭素ナノチューブの合成工程についての説明は多数の反応チェンバー20中一つの反応チェンバー20で起こる合成工程を説明したに過ぎない。実施例の合成装置では、図2に示したように加熱ヒーター30は低温領域、反応領域および冷却領域の温度領域を有しているので、多数の反応チェンバー20中の一つの反応チェンバー20へ低温領域を位置させ、その予熱工程を進行させるとともに上記低温領域外の高温領域および冷却領域は他の反応チェンバー20へ位置させ上記他の反応チェンバー20の反応工程や冷却工程に必要な温度を同時に提供することにより、多数の反応チェンバー20に対する炭素ナノチューブの合成工程を同時に進行させる。
【0038】
即ち、加熱ヒーター30の位置に基づいて多数の反応チェンバー20で互いに異なる工程を同時に行なうことができる。駆動モーター40の駆動によって加熱ヒーター30が一定の時間間隔で移動されるに基づいて、多数の反応チェンバー20に進行工程に応じた適正な温度を連続的に提供することにより、連続的に炭素ナノチューブが合成される。
【0039】
温度に従って、低温領域、反応領域および冷却領域に分けられた加熱ヒーター30は駆動モーター40の駆動に基づいて一定に配置された少なくとも三つ以上の反応チェンバー20上を移動して、合成段階の進行応じた適正な温度を三つ以上の反応チェンバー20の各々に提供する。このような加熱ヒーター30の移動と、ガス供給および排出部50、51、52、53が反応チェンバー20へガスを順次に供給し排出させる工程とを反復することにより、三つ以上の反応チェンバー20で互いに異なる他の合成工程を同時に進行させて、連続的に大量の炭素ナノチューブを合成させる。
【0040】
ここで、加熱ヒーター30の一例として、低温、反応領域および冷却領域の3領域に分けられたものを説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、多数の低温領域、多数の反応領域および多数の冷却領域からなる加熱ヒーターに変更してもよい。このような加熱ヒーターを移動することで、同時に多数の反応チェンバーに対する合成工程を並行に進行させることができる。
【0041】
好ましい実施例では、固定されている反応チェンバー20に対して加熱ヒーター30を移動させたが、加熱ヒーター30を固定して、多数の反応チェンバー20を駆動モーターによって移動させてもよい。この構成によっても加熱ヒーター30と反応チェンバー20とが相対移動されて、炭素ナノチューブを連続的に合成することができる。
【0042】
例えば、図3に示すように、低温領域、反応領域および冷却領域の3領域の形成された加熱ヒーター30は固定されている。多数の反応チェンバー20は、加熱ヒーター30の低温領域、反応領域および冷却領域を一定の時間間隔で順次移動するように駆動モーター40’によって駆動される。従って、多数の反応チェンバー20は固定された加熱ヒーター30の各領域を移動して、適正な温度の提供を受ける。反応チェンバー20の移動と、ガス供給および排出部50、51’、52’、53からガスが反応チェンバー20へ順次供給及び排出とを反復することにより、多数の反応チェンバー20で互いに異なる合成工程を同時に進行させる。これにより、炭素ナノチューブを連続に合成することができ、炭素ナノチューブを大量生産することができる。
【0043】
このように固定配置された加熱ヒーター20と移動可能な反応チェンバー30の構成時、上述の本発明の炭素ナノチューブの合成工程で加熱ヒーター20の動きのための駆動モーター40の制御を単純に反応チェンバー30の動きのための駆動モーター40’の制御で代替することにより、簡単に行なうことができる。
【0044】
本発明の炭素ナノチューブの大量合成装置には、薄い金属基板を利用した金属触媒やナノ粉末を利用した触媒を用いることができる。また、ナノ触媒の製造技法を適用することができる。金属基板の例は、鉄、ニッケル、コバルト、鉄−ニッケル、コバルト−ニッケルなどの多種類の遷移金属膜である。ナノ粉末触媒の例は、共浸法やSol−Gel法などの公知のナノ粉末の製造方法を利用して製造されたナノ粉末である。
【0045】
上記ナノ触媒粒子を製造するために一般に使用する溶液上で遷移金属を沈澱させる沈澱法によれば、Fe、Ni、Coなどの金属因子を含有した溶液を、ナノ気孔を有する粒子(MgO、Al2O3)の溶液に混合した後、アンモニア水や塩酸を使用して沈澱させることでナノ粒子が得られる。ナノ気孔の物質の例は、MgO、Al2O3である。Fe、Ni、Coなどの金属触媒を含有した溶液の例は、Fe2(SO4)3・5H2Oの水溶液やNi2(SO4)3・5H2Oの水溶液である。高温で金属触媒粒子が溶解する時、Fe、Ni、Coなどの粒子が相互に結合して触媒粒子が大きくなるのを防ぐために、高い温度においても容易に溶解しない遷移金属Moを上の溶液上に一緒に一定割合で混合するのが好ましい。遷移金属は(NH4)6Mo7O24のような遷移金属を含有した溶液から容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の好ましい実施例に従う炭素ナノチューブの大量生産のための大量合成装置の平面図。
【図2】本発明が適用された炭素ナノチューブの大量合成工程を説明するための図面。
【図3】図1の大量合成装置の変更例の平面図。
【符号の説明】
【0047】
20…反応チェンバー、30…加熱ヒーター、40…駆動手段、50,51,52,53…ガス供給および排出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素ナノチューブの大量合成装置であって、
炭素ナノチューブの触媒反応が行なわれる多数の反応チェンバー;
上記多数の反応チェンバーに、炭素ナノチューブの合成段階別反応温度を同時に提供するように区画された複数の合成段階別温度領域を有する加熱ヒーター;
上記加熱ヒーターの複数の合成段階別温度領域が、対応する合成段階にある反応チェンバーに位置するように、上記加熱ヒーターを前記反応チェンバーに対して一定間隔毎に移動させて、前記多数の反応チェンバーにおいて炭素ナノチューブの合成反応を連続的に進行させる駆動手段;および
上記駆動手段の作動に伴って作動し、各反応チェンバーの合成段階に応じたガスを各反応チェンバーに供給し排出させるガス供給および排出部;を含むことを特徴とする大量合成装置。
【請求項2】
炭素ナノチューブの大量合成装置であって、
炭素ナノチューブの合成反応が行なわれる多数の反応チェンバー;
上記多数の反応チェンバーに、炭素ナノチューブの合成段階別反応温度を同時に提供するように区画された複数の合成段階別温度領域を有する加熱ヒーター;
上記加熱ヒーターの複数の合成段階別温度領域が、対応する合成段階にある反応チェンバーに位置するように、上記反応チェンバーを前記加熱ヒーターに対して一定間隔毎に移動させて、前記多数の反応チェンバーにおいて炭素ナノチューブの合成反応を連続的に進行させる駆動手段;および
上記駆動手段の作動に伴って作動し、各反応チェンバーの合成段階に応じたガスを各反応チェンバーに供給し排出させるガス供給および排出部;を含むことを特徴とする炭素ナノチューブの大量合成装置。
【請求項3】

上記加熱ヒーターは合成段階別反応温度を反応チェンバー別に提供する低温領域、反応領域および冷却領域の各々を少なくとも一つ以上ずつ有することを特徴とする請求項1または2に記載の炭素ナノチューブの大量合成装置。
【請求項4】
炭素ナノチューブの大量生産方法であって、
低温領域、反応領域および冷却領域の各々を少なくとも一つ以上有する加熱ヒーターを、複数の反応チェンバーに対して移動させて、上記加熱ヒーターの低温領域に隣接した反応チェンバーを予熱するとともに、その反応チェンバーの内部の空気をArガスで置換する予熱段階;
上記加熱ヒーターの高温領域が予熱された上記反応チェンバーに隣接するように上記加熱ヒーターを移動させて、上記加熱ヒーターの高温領域に隣接した反応チェンバーを反応温度に加熱するとともに、その反応チェンバー内のArガスを炭化ガスに置換して、炭化ガスの触媒反応により炭素ナノチューブを合成する反応段階;および
上記加熱ヒーターの冷却領域が反応温度に加熱された上記反応チェンバーに隣接するように上記加熱ヒーターを移動させて、上記加熱ヒーターの冷却領域に隣接した反応チェンバーを冷却するとともに、その反応チェンバーの内部のガスをArガスに置換して、その反応チェンバー内の炭素ナノチューブを冷却させる冷却段階;を含むことを特徴とする炭素ナノチューブの大量生産方法。
【請求項5】
炭素ナノチューブの大量生産方法であって、
複数の反応チェンバーを、低温領域、反応領域および冷却領域の各々を少なくとも一つ以上有する加熱ヒーターに対して移動させて、上記加熱ヒーターの低温領域に隣接した反応チェンバーを予熱するとともに、その反応チェンバーの内部の空気をArガスで置換する予熱段階;
上記加熱ヒーターの高温領域が予熱された上記反応チェンバーに隣接するように上記複数の反応チェンバーを移動させて、上記加熱ヒーターの高温領域に隣接した反応チェンバーを反応温度に加熱するとともに、その反応チェンバー内のArガスを炭化ガスに置換して、炭化ガスの触媒反応により炭素ナノチューブを合成する反応段階;および
上記加熱ヒーターの冷却領域が反応温度に加熱された上記反応チェンバーに隣接するように上記複数の反応チェンバーを移動させて、上記加熱ヒーターの冷却領域に隣接した反応チェンバーを冷却するとともに、その反応チェンバーの内部のガスをArガスに置換して、その反応チェンバー内の炭素ナノチューブを冷却させる冷却段階;を含むことを特徴とする炭素ナノチューブの大量生産方法。
【請求項6】
上記予熱段階、反応段階、及び冷却段階は、上記複数の反応チェンバーで同時に進行されることを特徴とする請求項4または5に記載の炭素ナノチューブの大量生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−327921(P2006−327921A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201322(P2005−201322)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(505262044)ビコ システム カンパニー リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】VIKO SYSTEM CO.,LTD
【Fターム(参考)】