説明

炭素複合材料およびその製造方法

炭素複合材の製造方法を提供する。当該方法は、炭素含有樹脂材料を提供する工程を含み、この材料には適切な濃度の触媒粒子が添加されていてもよい。この工程の後、触媒添加樹脂を高温領域に供してもよく、この時点において、樹脂内の炭素が触媒粒子との結合を開始する。連続的に高温に曝露することによって、粒子上に存在する炭素へのさらなる炭素の結合が得られる。その後、樹脂材料内において、炭素ナノチューブの配列が成長し、そして、複合材料が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、炭素複合材およびその製造方法に関し、さらに詳細には、炭素ナノチューブを比較的多く充填した炭素複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
炭素ナノチューブは、高い終局ひずみおよび比較的高い引張り係数を含む驚くべき引張り強さを有することが知られている。また、炭素ナノチューブは、疲労、放射線によるダメージおよび熱に対して高い耐性を有し得る。そのため、炭素ナノチューブの複合材への添加は引張り強さおよびスチフネスを向上させることができる。ナノチューブが配合された複合材の例としては、エポキシ−ナノチューブ、Krayton−ナノチューブ、PEEK(ポリアリールエーテルケトン)−ナノチューブ、フェニルホルムアルデヒド−ナノチューブ、RESOL−ナノチューブ、フルフリルアルコール−ナノチューブ、ピッチ−ナノチューブ、ラテックス−ナノチューブ、ポリエチレン−ナノチューブ、ポリアミド−ナノチューブまたは炭素−炭素(ナノチューブ)の複合材が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、樹脂マトリクスに少量の炭素ナノチューブを添加してその後に所望の複合材を得たとしても、不幸にも、マトリクスの粘度が顕著に増加する可能性がある。その結果、現行の混合技術を用いても最大でも炭素ナノチューブの1重量%〜5重量%しか樹脂に添加することができない。
【0004】
従って、比較的多量の炭素ナノチューブを含む複合材の製造方法の提供には利点があり、その結果、低密度かつ高係数および高強度の複合材を製造することができる。また、このような特性を有する炭素ナノチューブ複合材の提供にも利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、1つの実施形態において、複合材の製造方法に関し、それによって、少なくとも1枚の不織炭素ナノチューブまたはナノ繊維のシートに適切な樹脂を含浸させてもよい。1つの実施形態によると、当該方法は、まず、炭素ナノチューブの複数の不織シートを積層する工程を含む。次に、樹脂材料を不織シートに塗布し、炭素ナノチューブ間の空隙に樹脂材料を含浸させてもよい。1つの実施形態において、各不織シートを樹脂材料でコーティングしてもよい。あるいは、ポリマー樹脂のシートは、隣接した不織シートの間に位置し、溶融して空隙に浸入してもよい。必要に応じて、空隙を樹脂材料で含浸させる前に、炭素ナノチューブを表面処理工程に付して樹脂材料のナノチューブへの結合を促進してもよい。含浸シートは、その後、互いに結合して、形成された物品(a formed mass)または構造物を提供してもよい。次いで、含浸シートを約1000℃〜約2000℃の範囲の温度に曝露し、含浸シートを複合材料に変換してもよい。
【0006】
別の実施形態において、本発明は別の方法を提供し、この方法において、適切な触媒を高炭素含有樹脂に添加し、炭素ナノチューブの「成長」配列(a "grown-in" array of carbon nanotubes)によって強化されたガラス状炭素マトリクスを含む複合材を系中(インサイチュウ(in situ))で製造してもよい。当該方法は、まず、炭素含有樹脂材料を提供する工程を含む。次に、適切な濃度の触媒粒子を炭素含有樹脂材料に添加してよもよい。1つの実施形態において、触媒粒子の濃度は、樹脂材料中の炭素に対して、約0.005重量%〜約5重量%(触媒粒子)とすることができる。その後、触媒添加樹脂(catalyzed resin)を不活性雰囲気下に配置し、約1000℃〜約2000℃の範囲の温度に付してもよく、この時点で樹脂内の炭素が触媒粒子との結合を開始する。炭素の粒子との結合、続く、粒子に存在する炭素との連続的な結合によって、炭素ナノチューブの配列の成長(growth)が樹脂材料内においてもたらされ、複合材料を形成することができる。1つの実施形態において、触媒添加樹脂を高温に付す場合、硫黄含有化合物を触媒添加樹脂に添加して後の工程での触媒粒子の活性を増強させることができる。
【0007】
さらに、本発明は、約0.01mmから約3mmを超える範囲の厚さを有する物品(mass)を含む複合材料を提供する。また、当該複合材は、物品にわたって分散された複数の不織ナノチューブを含むことによって、ナノチューブ間に複数の空隙が存在するようになる。当該複合材は、さらに、不織ナノチューブ間の空隙内に位置する樹脂材料を含み、物品に構造健全性(structural integrity)を付与する。1つの実施形態において、複合材内に存在するナノチューブの量は、物品の約5容量%超とすることができる。さらに、樹脂材料は、物品の領域毎に異なっていてもよく、各領域において、異なる特性を物品に付与してもよい。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、ガラス状炭素マトリクスを含む複合材料を提供する。また、当該複合材料は、マトリクスにわたって分散された複数の触媒粒子を含む。当該複合材料はナノチューブの配列をさらに含み、その各々が触媒粒子から伸び、その結果、ガラス状炭素マトリクスにさらなる構造健全性を付与する。触媒粒子は、1つの実施形態において、x線コントラスト剤(x-ray contrasting agent)として作用することができ、そして、触媒粒子は、触媒粒子が磁気特性を有する程度に作用し、複合材に磁気特性を付与することができる。さらに、複合材に存在するナノチューブの量は、物品の約5重量%超とすることができる。さらに、樹脂材料は、物品の領域毎に異なっていてもよく、その結果、各領域において、異なる特性を物品に付与してもよい。
【0009】
さらに、本発明は、管内に配置されるステンを提供する。ステントは、1つの実施形態において、複数の交差フィラメントを含むチューブ状の伸張可能なマトリクスを含む。また、ステントは、各フィラメントのコア内に位置する複数のナノチューブを含む。1つの実施形態において、ガラス状炭素材料は、ナノチューブの周囲に位置していてもよい。ステントは、さらに、チューブ状マトリクスの一方の端部から他方の端部に延びる通路を含み、管内の流体がその中を流れることが可能となる。また、通路はガラス状炭素材料によって規定される表面を有する。1つの実施形態において、パターン化された表面(patterned surface)がチューブ状マトリクスの周囲に提供されていてもよく、マトリクスが管の表面と係合することが可能となり、その結果、管内でのステントの運動を最小にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(具体的な実施形態の説明)
本発明に関連して使用される炭素ナノチューブは様々なアプローチを用いて作製することができる。現在、炭素ナノチューブを成長させるための様々な方法およびその改変法が存在する。これらの方法としては以下の(1)〜(3)が挙げられる:
(1)化学蒸着法(Chemical Vapor Deposition)(CVD)、これは常圧付近または高圧で実施できる一般的な方法である;(2)アーク放電(Arc Discharge)、これは完成度の高いチューブを提供することができる高温法である;および(3)レーザーアブレーション(Laser ablation)。
【0011】
炭素ナノチューブの大量生産の観点から、現在、より魅力的なアプローチの1つがCVDであると考えられる。しかし、CVDにおける成長温度は、比較的低い範囲、例えば、約600℃〜約1300℃とすることができるので、1つの実施形態において、炭素ナノチューブは、シングルウォール(SWNT)またはマルチウォール(MWNT)ともに、炭素含有ガス(すなわち、ガス状炭素源)試薬によって供給されるナノ構造触媒粒子から成長させることができる。
【0012】
CVDに関連して使用することのできる触媒粒子の例としては、強磁性遷移金属、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、これらの金属の酸化物、硝酸塩もしくは塩化物が挙げられる。特定の場合において、これらの触媒粒子をモリブデンまたはセラミックキャリアと組み合わせてもよく、あるいは、互いに組み合わせてもよい。酸化物の場合、過剰の水素がこれらの反応に存在するために酸化物が金属形態に還元されてもよい。
【0013】
CVD法に適切な炭素含有ガスとしては、1つの実施形態において、アセチレン、メタン、エチレン、エタノール蒸気、メタノール蒸気などが挙げられる。
【0014】
様々なCVD法が存在するが、本発明に関連して用いることのできるCVD法の例は、米国特許出願公開第US2005/0170089号明細書に開示されており、この出願は本明細書中に参考として援用される。
【0015】
本発明に関連して使用するために製造される炭素ナノチューブには特定の特性が付与されていてもよい。1つの実施形態によると、製造される炭素ナノチューブの直径は触媒粒子の大きさと相関を有していてもよい。特に、シングルウォールナノチューブの直径は、典型的には、シングルウォールナノチューブに関しては、約0.5ナノメートル(nm)〜約2nmの範囲あるいはそれよりも大きくてもよく、マルチウォールナノチューブに関しては、約2nm〜約50nmの範囲あるいはそれよりも大きくてもよい。さらに、注目すべきは、これらの炭素ナノチューブの性質、例えば、炭素ナノチューブの金属または半導体としての特性は、必要に応じて、炭素ナノチューブの直径、炭素ナノチューブのキラリティーおよび/または炭素ナノチューブの欠陥(defects)に対応していてもよい。従って、これらのナノチューブの性質または特性を制御するためには、ナノチューブの寸法を十分な精度で制御する必要があるのかもしれない。
【0016】
さらに、本発明に関連して使用するために製造されるSWNTおよびMWNTの強度を最大で約30GPaとしてもよい。注目すべきこととして、強度は欠陥に対して過敏となるはずである。それにも関わらず、本発明で使用するために製造されるSWNTおよびMWNTの弾性率は、典型的には、欠陥に対して過敏ではなく、約1〜約1.5TPaで変動してもよい。さらに、終局ひずみは一般に構造に敏感なパラメータであるはずであるが本発明においては数%から最大で約10%の範囲としてもよい。
【0017】
これらのパラメータおよび特性は、総合して考慮した場合、本発明の方法によって製造される炭素ナノチューブが後続の炭素複合材の製造において十分な強度の材料として使用できることを示唆する。
【0018】
(炭素−炭素複合材)
本発明は、1つの実施形態において、不織炭素ナノチューブまたはナノ繊維の少なくとも1枚のシート(すなわち、炭素ナノチューブペーパー)から炭素−炭素複合材を製造する方法を提供する。
【0019】
不織繊維のシートは、1つの実施形態において、米国特許出願公開第US2005/0170089号明細書(この出願は本明細書中に参考として援用される)に開示のCVD法に従って製造された炭素ナノチューブを最初に得ることによって製造することができる。
【0020】
ここで図1を参照すると、得られる炭素ナノチューブ11は、その後、不織状態の層とすることができ、バインダー材料の存在下で重ね合わせる方法によって、シート10を形成することができる。これは紙を製造する方法と同様である。あるいは、ナノチューブ11を繊維中に絡ませてもよく、繊維を不織状態の層とすることができ、バインダー材料の存在下で重ね合わせる方法によって、シート10を形成することができる。適切なバインダー材料の例としては任意の熱可塑性樹脂が挙げられ、例えば、以下のものが挙げられる:ポリオレフィン類(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1およびポリ−4−メチル−ペンテン−1);ポリビニル類(例えば、ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリドおよびポリビニリデンクロリド;ポリビニルエステル類(例えば、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートおよびポリビニルピロリドン);ポリビニルエーテル類;ポリビニルスルフェート類;ポリビニルホスフェート類;ポリビニルアミン類;ポリオキシジアゾール類;ポリトリアゾール類;ポリカルボジイミド類;コポリマー類およびブロックインターポリマー類(例えば、エチレン−ビニルアセテートコポリマー類);ポリスルホン類;ポリカーボネート類;ポリエーテル類(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリメチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド);ポリアリーレンオキシド類;ポリアリールエステル類(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を含むポリエステル類;ポリイミド類、ならびに、これらのポリマーの改変体、および置換基(例えば、ヒドロキシル、ハロゲン、低級アルキル基、低級アルコキシ基、単環式アリール基など)を有する他のポリマーの改変体、ならびに、他の熱可塑性の溶融可能な固体材料。
【0021】
あるいは、不織炭素ナノチューブのシートは、任意の市販品の供給源から入手してもよい。
【0022】
次に、複数の不織シート10を互いに隣接して積層してもよく、1つの実施形態においては、樹脂材料(例えば、フルフリルアルコール(C)の少なくとも1つのコーティングを付与してもよい。重なり合った炭素ナノチューブ11間の空隙12に樹脂材料のコーティングを含浸させることができ、その後、得られる複合材料に構造健全性を付与することができる。使用するフルフリルアルコールの量は、不織シート10内の炭素ナノチューブ11の量に応じて決定することができる。特に、フルフリルアルコール由来の炭素:ナノチューブ11中の炭素の比は、1つの実施形態において、約1:1〜約10:1の範囲とすることができる。実質的に非多孔性の複合材を製造することができる1つの実施形態において、フルフリルアルコール由来の炭素:ナノチューブ11中の炭素の比を約3:1としてもよい。
【0023】
不織シート10のコーティングは各シート10それぞれに実施することができ、その後、シート10を互いに積層できることに留意すべきである。さらに、所望の場合、樹脂材料を用いて空隙を含浸する前に、表面処理工程を炭素ナノチューブに適用して樹脂材料によるナノチューブの湿潤(すなわち、結合)を促進することができる。このような表面処理は、当該分野で周知の方法によって実施することができる。
【0024】
不織炭素ナノチューブ11のシート10におけるフルフリルアルコールのコーティングは、次いで、エバポレートに付されて、約50℃〜約150℃の範囲の温度でナノチューブ11と重合させてもよい。重合した形態で樹脂材料が有用となり得る態度まで、熱に曝露して重合させる必要はないのかもしれない。
【0025】
その後、コーティングが施されたシート10をホットプレスに付して不織炭素ナノチューブのシートを互いに結合させて物品または構造物13を形成することができる。プレス工程は、1つの実施形態において、約125℃〜約350℃の範囲の温度で少なくとも約3000psiの圧力で約10分間またはシート10が互いに結合するまで実施してもよい。温度、圧力および時間の長さは選択した樹脂の種類に依存し得ることを理解すべきである。
【0026】
代替の実施形態において、ここで図2を参照すると、ポリマー樹脂(例えば、RESOL樹脂、ポリアミド、エポキシ、Krayton、ポリエチレンまたはPEEK(ポリアリールエーテルケトン)樹脂、他の市販品として入手可能な樹脂、あるいはこれらの組み合わせ)の薄いシート20を隣接する不織炭素ナノチューブ11のシート10の間に設置してもよい。
【0027】
次いで、不織シート10および樹脂20のサンドイッチ構造体21をホットプレスに付して、不織炭素ナノチューブ11のシート10を互いに結合させて形成物としてもよい。プレス工程は、1つの実施形態において、約125℃〜約350℃の温度範囲において、少なくとも約3000psiの圧力で約10分間またはシートが結合するまで実施してもよい。このような方法でのプレス工程によって、ポリマー樹脂のシート20は軟化して流れ、各不織シート10内の重なり合った炭素ナノチューブ11の間の空隙12に浸入してもよく、不織シート10が互いに結合して、形成された物品または構造物13を提供することができる。また、温度、圧力および時間の長さは、選択した樹脂の種類に依存し得る。
【0028】
コーティングのアプローチと同様に、所望の場合、樹脂材料を用いて空隙を含浸する前に、表面処理工程を炭素ナノチューブに適用して樹脂材料のナノチューブへの結合を促進することができることを理解すべきである。また、このような表面処理は、当該分野で周知の方法によって実施することができる。
【0029】
結合後、形成された物品13内の不織炭素ナノチューブ11のシート10は、熱分解(pyrolysis)に付して硬化させてもよい。特に、形成された構造物13を例えば1℃/1分未満のゆっくりとした温度上昇に付してもよい。1つの実施形態において、硬化温度を少なくとも約1000℃〜約2000℃、より好ましくは約1700℃に上昇して炭素−炭素複合材を形成してもよい。このゆっくりとした加熱速度によって、1つの実施形態においては、形成された構造物13の外に反応の主な流体副生成物である水を放散させることが可能となり、構造物13が硬化して炭素−炭素複合材とすることができる。
【0030】
所望に応じて、この硬化または無効化(paralyzed)された炭素−炭素複合材は、最終の製品または構造体の形状を有する鋳型上もしくは鋳型内でのホットプレスに付されてもよく、さらに熱分解に付して、最終的に硬化してもよい。詳細には、この複合材を最大約3000℃の最終ランプ温度に供して、所望の製品または構造物の形状に複合材をアニーリング(すなわち、あらゆる欠陥を排除)してもよい。
【0031】
参照として不織炭素ナノチューブ11の複数のシート10の使用を示すが、不織シート10を1枚だけ使用して炭素−炭素複合材を製造してもよいことが理解されるべきである。用いるシート10の数は、1つの実施形態において、製造される複合材の1単位面積当たりの炭素ナノチューブの所望の重量パーセントに依存してもよい。換言すると、1単位面積当たり、炭素ナノチューブの重量パーセントが比較的に高いものを得るためには、不織炭素ナノチューブ11のシート10をさらに使用してもよい。
【0032】
さらに、各不織シート10の厚さは、1つの実施形態において、約0.01mm〜約1cmを超える範囲とすることができる。硬化に関して、反応生成物を構造物13の外に放散させる時間を考慮に入れる必要があってもよいことを理解すべきである。この工程における主な反応生成物が水などの流体であるため、硬化に必要な時間は、約3mmを超える厚さに対して有意であればよい。
【0033】
各不織シート10の厚さを約3mmを超えて増加させる方法の1つは、加熱した基体上で各層(すなわち、シート)を希釈した樹脂でコーティングしてもよく、その結果、樹脂を硬化させることができ、その後、次の層10が付与されてもよい。厚手のシートおよびそのような複合材を作製する別の方法としては、不織シート10内への経路の提供であってもよく、これによって反応生成物(例えば、水)をより簡便に排出することができる。
【0034】
ポリマー樹脂の薄いシート20を使用してもよい実施形態において、様々なポリマーの樹脂シートを隣接した様々な不織シート10の間に設置して、様々な特性を内側面ではなく外側面にも有する防護ヘルメットなどの構造物またはデバイスを作製してもよいことに留意すべきである。例えば、着色されたポリマー樹脂層を複合材の外側面に配置して塗装を省略してもよい。
【0035】
あるいは、軍用ヘルメットで現在使用されているクルミの殻の破片などの滑り止め要素(roughening element)を含むポリマー樹脂層を成型工程で配合することができる。また、特性の他の種類のグラジエント(gradients)は、より大きな容積のエレメントにわたって、発射体からの衝撃エネルギーを分散させるのに役立ち、有益と成り得る。これは、不織炭素ナノチューブシート10を外側の層に向かって近接して互いに積層し、これらのシートを内側の層に向けて引っ張ることによって、ならびに/あるいは、厚さと関連して使用するバインダーの種類を変更することによって実施することができる。
【0036】
さらに、本発明の当該方法に従って製造された複合材から作製された構造物またはデバイスは、これらの特性を高温でも維持することができる。例えば、PEEK樹脂を用いると、その複合材は、その強度および特性を約160℃の温度で維持することが期待され、最大で約260℃の温度で使用可能である。
【0037】
(ガラス状炭素マトリクス複合材)
本発明の別の実施形態によると、炭素ナノチューブの「成長」配列によって強化されたガラス状炭素マトリクスを有する複合材料を製造する方法が提供される。換言すると、当該方法は、炭素含有樹脂材料内での固体状態での輸送(solid state transport)によって、ナノチューブ配列の形成および成長を可能としてもよいアプローチを提供し、この樹脂材料は、後に、ガラス状炭素マトリクス複合材に変換することができる。
【0038】
特に、当該方法は、まず、適切な触媒を炭素含有樹脂に添加する工程を含む。適切な触媒の例としては、フェロセン、鉄ナノ粒子、鉄ペンタカルボニル、磁性遷移金属(例えば、コバルト、コバルトヘキサカルボニル、ニッケル、ニッケルヘキサカルボニル、モリブデン)またはそれらの合金のナノ粒子、あるいはこれらの金属の酸化物、硝酸塩もしくは塩化物、あるいはこれらの酸化物または他の還元可能な塩(例えば、硫酸アンモニウム鉄(iron ammonium sulfate)または塩化鉄)の任意の組み合わせ、あるいはこれらの金属の有機金属化合物が挙げられる。本発明の方法で使用する適切な炭素含有樹脂の例としては、RESOL樹脂(すなわち、触媒添加アルキル−フェニルホルムアルデヒド(catalyzed alkyl-phenyl formaldehyde)であり、これは、Georgia Pacificから入手可能である)などの高炭素含有樹脂、フルフリルアルコールまたはピッチ(pitch)が挙げられる。
【0039】
1つの実施形態においては、触媒粒子を適切な濃度で炭素含有樹脂に添加し、その結果、得られる複合材料に最適な特性を付与してもよい。そのためには、本発明に関連して使用される触媒粒子の濃度は、樹脂内の炭素濃度と関連していてもよい。高炭素含有RESOLフェニルホルムアルデヒドにフェロセン(Fe(C)を添加する例では、フェロセンの濃度を約0.005重量%〜約5重量%の範囲としてもよい。さらに特定すると、フェロセンの(炭素に対する鉄の)割合を約2重量%としてもよい。あるいは、触媒粒子は樹脂にわたって実質的に均一に分散され、適切な濃度を提供してもよい。
【0040】
続いて、その中に触媒粒子が分散された高炭素含有樹脂を熱分解に供して硬化させてもよい。特に、触媒粒子を含む樹脂をアルゴンまたはヘリウムなどの不活性雰囲気下でのゆっくりとした温度上昇(例えば、1℃/分未満)に付してもよい。1つの実施形態において、温度を少なくとも約1000℃〜約2000℃、より好ましくは約1700℃に上昇してもよい。1つの実施形態においては、このゆっくりとした温度上昇によって、反応の主な副生成物である水を樹脂材料の外に放散させることが可能となる。さらに、フェロセンなどの触媒物質は高温下で分解し、例えば、鉄の粒子を形成し、これは高炭素含有樹脂内の炭素が結合することのできるテンプレートとして作用することができる。テンプレート粒子への炭素の結合、続くテンプレート粒子上に存在する炭素への結合が連続して起こり、その結果、粒子からナノチューブが成長し、樹脂内で炭素ナノチューブの配列が形成される。結果、炭素ナノチューブの「成長」配列によって強化されたガラス状炭素マトリクスを有する複合材料を形成することができる。図3に示すように、本発明のこの実施形態に従って製造された複合材料の表面の走査電子顕微鏡写真は、マルチウォール炭素ナノチューブ31の配列の存在を示す。1つの実施形態においては、当該方法によって、実質的に整列したナノチューブを形成することができる(図6参照)。
【0041】
必要に応じて、触媒粒子(例えば、鉄粒子)の活性を増強する必要があってもよい。本発明の1つの実施形態において、チオフェン(CS)または別の硫黄含有化合物を例えば熱分解の前または熱分解の間に樹脂に添加して触媒粒子の活性を増強させてもよい。さらに、望ましくは、例えば、微量のNb、Mo、Crまたはそれらの組み合わせを熱分解の前または熱分解の間に樹脂に添加して触媒粒子の大きさを改善(refine)し、成長するナノチューブの大きさを制御してもよい。
【0042】
さらに、所望の場合、ガラス状炭素マトリクス複合材を最大で約3000℃の最終ランプ温度に曝露して複合材をアニーリングし、複合材においてあらゆる可能性の欠陥を排除してもよい。
【0043】
本明細書中に炭素ナノチューブを開示するが、本発明の方法は、炭素の全てまたは一部を化学的に修飾する工程を含むように、あるいは、例えば、ケイ素、ホウ素または窒素で炭素を置換する工程によって、実施されてもよいことに留意すべきであり、その結果、炭素に加えて、炭素以外の元素を含むナノチューブを製造することができる。例えば、ナノチューブは、ケイ素−炭素ナノチューブ、ホウ素−炭素ナノチューブ、窒素−炭素ナノチューブまたはそれらの組み合わせであってもよい。
【0044】
上記の方法に従って作製した炭素ナノチューブの「成長」配列によって強化されたガラス状炭素マトリクスを有するインサイチュウ(in situ)複合材は、機械的な特性だけでなく、化学的および電気的な特性にも基づいて広範な様々な用途を有していてもよい。他の種類の繊維複合材とは異なって、この種のインサイチュウ複合材は、例えば、複雑な三次元形状または三次元構造へとキャスト成型し、基体上にコーティングし、薄膜として提供することができ、あるいは、フィラメント繊維として押出成型し、続いて無効化(paralyzed)して所望の構造物またはコーティング繊維を形成することができる。重合、その後の熱分解の後、構造物内でナノチューブが成長するので、液体の粘度が実質的に変化しないことに留意すべきである。
【0045】
フィラメント繊維として押出成形するためには、1つの実施形態において、開口部を有するノズルを通して、約50℃〜約150℃の範囲の温度で触媒添加樹脂を押出成形し、出てきたモノフィラメントまたは繊維を重合させてもよい。1つの実施形態によると、ノズルまたは開口部は、約0.5ミクロン〜約500ミクロンの直径を備え、同じ大きさのモノフィラメントを押出成形してもよい。その後の約1000℃〜約2000℃の範囲の温度、その後、最大で約3000℃のランプアップ温度での熱分解の際、押出成形されたモノフィラメントをガラス状炭素のフィラメントに変換することができ、これは、その全長にわたって、実質的な量の炭素ナノチューブを含む。
【0046】
さらに、このインサイチュウ複合材から形成された構造物、コーティングまたは押出物の特性は、複合材、薄膜コーティングまたはフィラメント内における触媒濃度または材料を変更することによって、適宜調整することができる。例えば、ケイ素を構造物の外側部分に添加し、熱分解の際、炭化ケイ素の耐酸化コーティングを形成してもよい。これらの可能性によって、医療用および外科用デバイスを含む、心臓弁または血管ステントなどのデバイスならびにデバイスの構成要素(すなわち、部品)を作製することができる。これらのデバイスまたは構成要素は、1つの実施形態において、ナノチューブが比較的高強度を有することが知られていることから、高強度領域にナノチューブを備えていてもよく、そして、苛酷な化学環境にさらされる領域または生体適合性が重要となり得る領域には純粋なガラス状炭素マトリクスを備えていてもよい。その理由は、ガラス状炭素マトリクスがこのような環境に耐えることができるからである。
【0047】
例えば、RESOL樹脂は、上述のように触媒添加され、まず、図4に示したエンボス加工パターンのステント40を提供するように設計された再利用可能な鋳型に配置されてもよい。この鋳型は、1つの実施形態において、2つの部品からなっていてもよく、シリコーンゴムから作製することができる。一方の部品は上述のパターンを備え得る内側の鋳型であり、他方の部品は樹脂を保持することができる外側の鋳型である。次に、この鋳型をバキュームチャンバに設置し、ほぼ真空に減圧してもよい。その後、キャスト成型の分野で周知の方法で樹脂を鋳型に配置してもよい。次いで、鋳型および樹脂を約150℃の温度に非常にゆっくりと加熱してもよく、この温度で樹脂が重合し、続けて冷却することによってガラス状炭素前駆体を形成することができる。ここで重合したガラス状炭素前駆体は、その後、鋳型から慎重に取り出し、約1000℃〜約2000℃の範囲の温度、1℃/分未満の速度で再加熱して所望の構造物を形成してもよい。この種の構造物は薄くしてもよく、水を構造物から迅速に放散させることができるので、温度上昇速度をさらに大きくすることが可能であってもよいことを理解すべきである。他の部品またはデバイスを同様の方法でキャスト成型してもよい。
【0048】
比較的に厚みのある構造物が必要とされ得る代替の実施形態においては、高炭素含有樹脂をエアロゾルとして提供してもよい。例えば、触媒の存在下、加熱した基体上に高炭素含有樹脂のエアロゾルをスプレーしてもよい。基体からの熱が存在する場合、炭素ナノチューブの形成および成長を上記の方法で開始することができる。このようなアプローチによって、とりわけ、基体が回転していてもよい場合および製造される複合材が中心対称(centro-symmetric)である必要がある場合において、さらに厚みのある実質的にさらに均一な複合材またはデバイスを構築することができる。
【0049】
(用途)
本発明の1つの実施形態によると、上記の方法のいずれかで製造された複合材料は、約5重量%よりも多くの炭素ナノチューブを含んでいてもよく、また、様々な用途に利用することができる。
【0050】
ここで図4A〜Bを参照すると、図4A〜Bには上記の複合材料から作製されたステント40が示されている。ステント40は、1つの実施形態において、実質的にチューブ状 本体41を含み、本体41は通路413を有し、通路413は端部411および412の間に延びている。チューブ状の本体41は、1つの実施形態において、交差フィラメント43を有する伸張可能なマトリクス42を含むように製造されていてもよく、これによって、ステント40は、動脈または管(例えば、血管)への挿入前の伸張した状態または折り畳んだ状態(図4A)と、動脈または管への挿入後の広がった状態(図4B)との間での変形が可能となる。チューブ状の本体41が、折りたたんだ状態と、挿入して広がった状態との間で可動である限り、マトリクス42が様々な方法でパターン化されていてもよいことを理解すべきである。採用してもよいマトリクスパターンの例を図5Aおよび5Bに示す。
【0051】
ステント40は上記の複合材料から作製することができるので、ここで図6を参照すると、各フィラメント43は、1つの実施形態において、フィラメント43の内部に向かって炭素ナノチューブ60を含んでいてもよく、これによってステント40に十分な強度を付与することができる。さらに、各フィラメント43は、ナノチューブ60の周囲にガラス状炭素材料61をフィラメント43の外部に向けて含んでいてもよく、これによって、管内での流体との相互作用が可能となる。チューブ状本体41の通路42は、フィラメント43の外観によって規定することができるので、そこにある生体適合性のガラス状炭素材料の存在によって、通路42は生物学的適合様式で管内の流体と相互作用することができる。
【0052】
さらに、提供されるナノチューブ60の各々は、鉄触媒などの触媒粒子から成長することができるので、各ナノチューブ60は、一方の端部に触媒粒子63を有していてもよい。すなわち、この端部から成長が開始した。フィラメント43の内部にある触媒粒子63の存在によって、ステント40を明視化することができ、例えば、管内にステント40を位置または配置する場合、X線によって高い精度を得ることができる。ステント40の可視性をさらに高めるためには、フィラメント43の内部にコントラスト剤をさらに容易に添加することができる。使用してもよいコントラスト剤の例としては、BaO、TaO、WO、HfO、WC、AUのナノまたはマイクロパウダーあるいはそれらの組み合わせが挙げられる。この出願において、鉄触媒の存在が有効であり、ステント40に磁気特性を付与することができる。磁気特性を有する触媒を使用した場合も、もちろん、磁気特性を付与することができる。
【0053】
チューブ状の本体41は、1つの実施形態において、パターン化することのできる外部表面44をさらに含んでいてもよい。チューブ状の本体41にパターン化された外部表面44を提供することによって、パターン化された表面44が作用し、チューブ状本体41を管の表面に固定することができるので、管に沿ったステント40の運動、または、管内でのステント40の運動を最小にすることができる。チューブ状の本体41に関連して外部表面44に様々なパターンを設けてもよく、このようなパターンによって、管内でのステント40の運動を最小化または防止できることに留意すべきである。図7〜8は、外部表面44に関連して用いることのできる様々なパターン化されたデザインを示し、これには、ラチェットパターン(図7A〜B)、または他のパターン、例えば、エッチングによる図形、渦巻き状または任意の他の幾何学形状、例えば図8に示すパターンが挙げられる。
【0054】
ステント40のチューブ状本体41の展開は、当該分野で公知の任意の方法、例えば、バルーンデバイスによって、あるいは、管内へのチューブ状の本体41の挿入後に自動的に広がることのできる形状記憶の技術の使用によって達成されてもよい。さらに、ステント40の展開によって、ステント40のパターン化された外部表面44が管の内壁とさらにより良好に係合することを可能とすることができ、管内にステント40を配置してステント40を適切に保持および維持してもよい。1つの実施形態においては、パターン化された外部表面44の保持力ならびに複合材の弾性特性によって、ステント40の形状に由来して放射線状に作用する圧力を制御してもよい。
【0055】
ステントを参照しているが、本発明で説明した複合材料を用いて、生体適合性の移植可能な生物医学的な他のデバイスを作製してもよいことに留意すべきである。例えば、ACLおよびPCL再構築(ACL and PCL reconstruction)で使用する固定スクリューならびに他の整形外科学的インプラント。
【0056】
上記で説明した当該方法は、当該方法で製造した複合材料と関連して、他の用途あるいは他のデバイスの製造に利用することができる。例えば、当該方法を使用して、弾道アーマー(ballistic armor)を形成することができる。1つの実施形態において、弾道アーマーは、まず、炭素ナノチューブ、炭素ナノチューブから製造した紡糸または炭素ナノチューブの編物もしくはベルトから作製した市販のボディーアーマー用織布または織物を結合または積層することによって形成することができる。次に、上記で説明した触媒添加樹脂を使用して複数のボディーアーマー用織布のシートをコーティングまたは結合してもよく、シートを互いに保持することによって、アーマーの強度に寄与し、さらに、アーマーの亀裂を最小化または防止するのに役立ててもよい。コーティングされたシートを熱分解に付して最終製品を製造してもよい。
【0057】
他の用途としては以下の(1)〜(7)が挙げられる:
(1)高強度の成形部品(例えば、コンバットヘルメット、モーターサイクルヘルメット、フットボールヘルメットなど)、
(2)高温用途で使用する航空宇宙部品(例えば、極超音速用途の先端部(leading edges)、ロケットノズルなど)、
(3)モーター部品(例えば、ブレーキパッドおよびベアリング)、
(4)スポーツ用品(例えば、ラケット、ゴルフクラブ、自転車フレーム)、
(5)実質的に高温で使用する部品であって、熱伝導体、電気伝導体、建築用軽量パネルならびに、グラファイト用のコーティングが挙げられ、これらはコストを削減し、その一方で、高強度の耐摩耗性の表面を維持する。
(6)ガラス状炭素から作製された版画用プレートであって、これによって、耐水性を高めることができ、凹刻印刷または他の形態の印刷で使用するインクによる耐腐食特性を高めることができる、および
(7)生体適合性の移植可能な部品または構成要素(例えば、心臓弁およびステント)であって、ガラス状炭素マトリクスが体液と実質的に接触し、その一方で、ナノチューブ部分が複合材の中心領域またはコア領域および高ストレス領域に位置し得るように分割されているもの。
【0058】
本発明の特定の実施形態と関連して本発明を説明してきたが、さらなる変更が可能であることが理解できるだろう。さらに、本願は、本発明のあらゆる変更、用途または適用を包含することを意図しており、本発明に関する当該分野で公知となっているかまたは従来から実施されている範囲内となるような本明細書の開示からのこのような逸脱を含む。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従って炭素−炭素複合材を製造するのに使用する不織炭素ナノチューブのシートを示す。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態に従って炭素−炭素複合材を製造するのに使用する不織炭素ナノチューブのシートを示す。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態に従って製造されるガラス状炭素マトリクス複合材を示す。
【図4】図4(A〜B)は、本発明の複合材料から製造されたステントを示す。
【図5】図5(A〜B)は、図4(A〜B)に示すステントのステント用途について、マトリクスまたはフィラメントの様々なデザインを示す。
【図6】図6は、図4に示すステントのフィラメントの断面図である。
【図7】図7(A〜B)は、図4に示すステントの外部表面のパターン化されたデザインの1つを示し、ステントを管内で固定することができる。
【図8】図8は、他のパターン化されたデザインを示し、図4のステントと関連して使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料の製造方法であって、以下の工程:
不織ナノチューブのシートを提供する工程であって、該不織ナノチューブがナノチューブ間に空隙を有する、工程;
該ナノチューブ間の空隙に樹脂材料を含浸させる工程;
該含浸シートを不活性雰囲気下に配置する工程;および
該含浸シートを約1000℃〜約2000℃の範囲の温度に曝露し、該含浸シートを複合材料に変換する工程;
を含む、方法。
【請求項2】
前記提供工程において、前記ナノチューブが炭素ナノチューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記含浸工程が、前記シートを流体樹脂材料でコーティングする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング工程において、前記流体樹脂材料がフルフリルアルコールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記含浸工程が、ポリマー樹脂材料のシートを前記不織シート上で溶融させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融工程において、前記樹脂材料のシートが、RESOL樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、Krayton樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂の1つあるいはその組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記配置工程において、不活性雰囲気が、アルゴン、ヘリウムまたは他の不活性ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記曝露工程において、温度が約1700℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記曝露工程が、1℃/分未満〜約1℃/分の速度で温度を上昇させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記曝露工程が、前記シートからの流体副生成物を放散させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記提供工程が、複数の不織シートを互いに積層する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記含浸工程が、加熱した基体上で各不織シートをコーティングする工程を含み、樹脂の硬化が生じた後に次の不織シートをその上に積層することができる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記含浸工程が、隣接した不織シート間にポリマー樹脂のシートを設置する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記設置工程において、1対の隣接した不織シート間のポリマー樹脂のシートが、
別の1対の隣接した不織シート間のポリマー樹脂シートとは異なり、得られる複合材料の異なる領域において異なる特性を提供する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の不織シートを互いに結合させて、形成された物品を提供する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記結合工程が、約125℃〜約350℃の範囲の温度でシートの層に熱を付与する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記形成された物品を最大で約3000℃の最終ランプ温度に供する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
約0.01mmから約3mmを超える範囲の厚さを有する物品;
該物品にわたって分散された複数の不織ナノチューブであって、該ナノチューブ間に複数の空隙を提供する、不織ナノチューブ;および
該不織ナノチューブ間の空隙に位置する樹脂材料であって、物品に構造健全性を付与する、樹脂材料;
を含む、複合材料。
【請求項19】
前記物品にわたって延びる経路をさらに含み、該経路によって、複合材料の製造の間に、流体副生成物を排出することができる通路を提供する、請求項18に記載の複合材料。
【請求項20】
前記複数の不織ナノチューブが、前記物品の約5容量%よりも大きな量で存在する、請求項18に記載の複合材料。
【請求項21】
前記ナノチューブが、炭素ナノチューブ、ケイ素−炭素ナノチューブ、ホウ素−炭素ナノチューブ、窒素−炭素ナノチューブの1つあるいはそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の複合材料。
【請求項22】
前記物品のある領域の樹脂材料が、前記物品の別の領域の樹脂材料とは異なり、これらの領域において異なる特性を提供する、請求項18に記載の複合材料。
【請求項23】
前記物品を三次元形状または三次元構造に形成することができる、請求項18に記載の複合材料。
【請求項24】
三次元形状または三次元構造が、コンバットヘルメット、モーターサイクルヘルメット、フットボールヘルメットなどを含む高強度の成形部品;極超音速の部品およびロケットノズルを含む高温用途の部品;ならびに心臓弁(hear valves)およびステントを含む生物医学的なデバイスおよび部品を含む、請求項23に記載の複合材料。
【請求項25】
複合材料の製造方法であって、以下の工程:
炭素含有樹脂材料を提供する工程;
適切な濃度の触媒粒子を該炭素含有樹脂材料に添加する工程;
該触媒添加樹脂を約1000℃〜約2000℃の範囲の温度に供する工程;
該樹脂中の炭素を該触媒粒子と結合させる工程;および
続いて、該樹脂材料内において、該触媒粒子からの炭素ナノチューブの配列の成長を許容する工程であって、複合材料の形成をもたらす工程;
を含む、方法。
【請求項26】
前記提供工程において、前記樹脂材料が、アルキル−フェニルホルムアルデヒドを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記添加工程において、前記触媒粒子の濃度が、前記樹脂材料中の炭素に対して、約0.005重量%〜約5重量%(触媒粒子)の範囲である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記添加工程において、前記触媒粒子が、フェロセン;鉄ナノ粒子;鉄ペンタカルボニル;磁性遷移金属またはその合金のナノ粒子;これらの金属の酸化物、硝酸塩または塩化物;酸化物と還元可能な塩の任意の組み合わせ;あるいはこれらの金属の有機金属化合物の1つを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記添加工程が、前記触媒添加樹脂に硫黄含有化合物を添加する工程を含み、該触媒添加樹脂を高温に付す際に前記触媒粒子のその後の活性を増強させる、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記添加工程が、Nb、Mo、Crの1つあるいはその組み合わせを前記触媒添加樹脂に添加する工程を含む、触媒粒子の大きさを改善して、成長するナノチューブの大きさを制御する、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記添加工程が、樹脂材料の異なる領域に異なる触媒粒子を添加する工程を含み、その後、得られる複合材料の異なる領域に異なる特性を提供する、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記温度に供する工程が、アルゴン、ヘリウムまたは他の不活性ガスを含む不活性雰囲気に前記触媒添加樹脂を配置する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記温度に供する工程において、温度が約1700℃である、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記温度に供する工程が、1℃/分未満〜約1℃/分の速度で温度を上昇させる工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記温度に供する工程が、前記樹脂から流体副生成物を放散させる工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記許容工程において、前記炭素が前記触媒粒子上に存在する炭素へと連続して結合することによって、触媒粒子からの炭素ナノチューブの成長をもたらす、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記複合材料を最大で約3000℃の最終ランプ温度に供する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
ガラス状炭素マトリクス;
該マトリクスにわたって分散された複数の触媒粒子;および
ナノチューブの配列であって、各々が触媒粒子から伸びて、該ガラス状炭素マトリクスにさらなる構造健全性を付与する、ナノチューブの配列;
を含む、複合材料。
【請求項39】
前記ナノチューブの配列が前記複合材の約5容量%よりも大きな量で存在する、請求項38に記載の複合材料。
【請求項40】
前記ナノチューブが、炭素ナノチューブ、ケイ素−炭素、ホウ素−炭素ナノチューブ、窒素−炭素ナノチューブの1つあるいはその組み合わせを含む、請求項38に記載の複合材料。
【請求項41】
前記複数の触媒粒子が、前記マトリクスの異なる領域において、製造法または濃度が異なり、これらの領域において複合材料に異なる特性を提供する、請求項38に記載の複合材料。
【請求項42】
前記複数の触媒粒子がコントラスト剤として作用する、請求項38に記載の複合材料。
【請求項43】
前記ナノチューブの配列をその中に有する三次元形状または三次元構造へと前記ガラス状炭素マトリクスを形成することができる、請求項38に記載の複合材料。
【請求項44】
前記ナノチューブの配列をその中に有する薄膜またはコーティングとして、前記ガラス状炭素マトリクスを形成することができる、請求項38に記載の複合材料。
【請求項45】
前記ナノチューブの配列をその中に有するフィラメント繊維へと前記ガラス状炭素マトリクスを押出成形することができる、請求項38に記載の複合材料。
【請求項46】
前記フィラメント繊維が約0.5ミクロン〜約500ミクロンの範囲の直径を有する、請求項45に記載の複合材料。
【請求項47】
前記ガラス状炭素マトリクスが、コンバットヘルメット、モーターサイクルヘルメット、フットボールヘルメットなどを含む高強度の成形部品;極超音速の部品およびロケットノズルを含む高温用途の部品;心臓弁(hear valves)およびステントを含む生物医学的なデバイスおよび部品;ならびにラケットおよびゴルフクラブなどのスポーツ用品に形成することができる、請求項38に記載の複合材料。
【請求項48】
管内に配置するステントであって、
複数の交差フィラメントを有するチューブ状の伸張可能なマトリクス;
各フィラメントのコア内に位置する複数のナノチューブ;
ナノチューブの周囲に位置するガラス状炭素材料;および
該チューブ状マトリクスの一方の端部から他方の端部に延び、ガラス状炭素材料によって規定される表面を有する通路であって、該管内の流体がその中を流れることが可能となる、通路;
を含む、ステント。
【請求項49】
前記チューブ状マトリクスの周囲にパターン化された表面をさらに含み、該マトリクスと前記管の表面との係合が可能となり、該管内でのステントの運動が最小となる、請求項48に記載のステント。
【請求項50】
各ナノチューブの一方の端部に触媒粒子をさらに含み、該粒子がコントラスト剤として作用することができる、請求項48に記載のステント。
【請求項51】
前記各ナノチューブの一方の端部の触媒粒子が、前記ステントに磁気特性を提供する、請求項50に記載のステント。
【請求項52】
複合材繊維の製造方法であって、以下の工程:
炭素含有樹脂材料を提供する工程;
適切な濃度の触媒粒子を該炭素含有樹脂材料に添加する工程;
該触媒添加樹脂材料をフィラメント繊維へと該フィラメントの重合が可能な温度で押出成形する工程;
該押出成形フィラメント繊維を約1000℃〜約2000℃の範囲の温度に供する工程;
該樹脂中の炭素を該触媒粒子と結合させる工程;および
続いて、該樹脂材料内において、該触媒粒子からの炭素ナノチューブの配列の成長を許容する工程であって、複合材繊維の形成をもたらす工程;
を含む、方法。
【請求項53】
前記押出成形工程において、前記温度が約50℃〜約150℃の範囲である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記押出成形工程において、前記繊維が、約0.5ミクロン〜約500ミクロンの範囲の直径を有する、請求項52に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A−B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−540857(P2008−540857A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510112(P2008−510112)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/016691
【国際公開番号】WO2007/086909
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(506243220)ナノコンプ テクノロジーズ インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】