説明

無灰定置ガスエンジン潤滑剤

定置ガスエンジンにおける使用に適した低灰分、低リン潤滑組成物は、粘性潤滑油、1.0〜8重量%のスクシンイミド分散剤、0.8〜4.0重量%のヒンダードエステル置換フェノール抗酸化剤、および金属またはアンモニウム部分の重量を除いて0.1〜3.0重量%のスルホネート部分またはフェネート部分を提供する量の少なくとも1種の金属またはアンモニウム含有スルホネート清浄剤または金属またはアンモニウム含有フェネート清浄剤を含む。この潤滑剤は、0.08重量%までのリンおよび0.2%までの硫酸化灰分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、特に、定置ガスエンジンにおける高性能基準を提供する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン、特に、定置ガスエンジンの性能特性を改善する絶え間ない必要性、およびそこで使用するための潤滑油の絶え間ない必要性がある。定置ガスエンジンは、代表的に、天然ガスおよび他の類似の燃料で作動するように設計された大きく、頑丈な固定エンジンである。このようなエンジンの傾向は、高性能潤滑剤が重要である、より小さい4サイクルのリーンバーンエンジンの開発を含む。
【0003】
特定の課題を解決するための種々の潤滑組成物について報告された多数の研究が存在する。例えば、特許文献1(Ripple、1993年11月9日)は、1%未満の硫酸灰分を提供し、カルボン酸分散剤の添加剤パッケージ、さび止め混合物、ヒドロカルビル置換フェノールおよび中性酸またはフェノールを含む、潤滑油を開示する。この潤滑剤は、ガソリンおよびディーゼルエンジンにおいて使用され得る。
【0004】
特許文献2(1996年8月7日)は、低硫酸灰分潤滑油組成物を開示し、この組成物は、粘性潤滑油、カルシウム過塩基化酸性物質、マグネシウム過塩基化材料およびアルキレン結合ヒンダードフェノール抗酸化剤と別の抗酸化剤との組み合わせを含み、定置ガスエンジンを潤滑するために特に有用である。
【0005】
特許文献3(2001年10月11日)は、潤滑添加剤として使用するために適した組成物を開示し、この組成物は、エステル置換ヒンダードフェノール抗酸化剤、および清浄剤(detergent)または分散剤のような潤滑剤として適切な他の添加剤を含む。
【0006】
特許文献4(Sougawaら、2000年11月24日)は、過塩基化金属サリチル酸塩、アミン抗酸化剤、フェノール抗酸化剤、ポリアルケニルスクシンイミド、および亜鉛ジアルキルチジオホスフェートを含む潤滑油組成物を開示する。この潤滑剤は、ガスエンジン熱ポンプ用の長寿命エンジンオイルとして適切である。
【特許文献1】米国特許5,259,967号明細書
【特許文献2】欧州特許公開EP725129 A
【特許文献3】PCT特許公開WO01/74978
【特許文献4】米国特許第6,147,035号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くの定置ガス潤滑剤処方物は、現場の使用の間に所望でない量のピストン堆積物(これらは、ポートの遮断を引き起こし得る)を生じる。作動中の潤滑剤の高レベルのニトロ化と、受け入れがたいピストン堆積物との間に相関関係が存在することが観察されている。本発明は、潤滑剤のニトロ化の程度を低減することによって、このようなエンジン中のピストン堆積物を改善することに焦点を当てる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明はまた、定置ガスエンジンを潤滑させる方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:
2サイクル定置ガスエンジンで使用するのに適当な低灰分低リン潤滑剤組成物であって、該潤滑剤組成物は、以下を含有する:
(a)粘性潤滑油;
(b)約1.0〜約8.0重量%のスクシンイミド分散剤;
(c)約0.2〜約4.0重量%のヒンダードフェノール抗酸化剤;
(d)金属またはアンモニウム部分の重量を除いて約0.1〜約3.0重量%のスルホネート部分またはフェネート部分を提供する量の少なくとも1種の金属またはアンモニウム含有スルホネート清浄剤または金属またはアンモニウム含有フェネート清浄剤であって、この清浄剤は、オイルを含まない基準で約100までの全塩基価を有する、清浄剤、
ここで、この潤滑剤は、約0.08重量%までのリンおよび約0.2重量%までの硫酸塩灰分を含有する。
【0009】
(発明の詳細な説明)
種々の好ましい特徴および実施形態は、非限定的な例示として以下に記載される。
【0010】
本発明の潤滑剤は、火花点火内燃機関および圧力点火内燃機関(自動車およびトラック用エンジン、2サイクルエンジン、飛行機用ピストンエンジン、ならびに船舶および鉄道用ディーゼルエンジン)のためのクランクケース潤滑油を含む。これらはまた、ガスエンジン、固定出力エンジンおよびタービンにおいて使用され得る。オートマティックトランスミッション液、トランスアクスル潤滑剤、ギア潤滑剤、金属作動潤滑剤、作動液および他の潤滑油、ならびにグリース組成物もまた、本発明の組成物中に組み込むことにより有益であり得る。
【0011】
(粘性潤滑油)
粘性潤滑油としては、天然および合成の潤滑油ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0012】
天然油としては、動物性油および植物性油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、ならびに液体石油およびパラフィン系、ナフテン系またはパラフィン−ナフテン混合系の溶媒処理または酸処理した鉱物潤滑油が挙げられる。石炭または頁岩由来の粘性潤滑油もまた、有用な基油である。合成潤滑油としては、炭化水素油(例えば、ポリマーオレフィンおよびインターポリマーオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびこれらの混合物));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、およびジ(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、およびアルキル化ポリフェニル)、アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにその誘導体、アナログおよびホモログが挙げられる。
【0013】
末端ヒドロキシル基が、エステル化、エーテル化または類似の反応により修飾された、アルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマー、ならびにそれらの誘導体は、別の種類の公知の合成潤滑油を構成する。これらは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合によって調製された油、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテルおよびアリールエーテルによって例示される。
【0014】
別の適切な種類の合成潤滑油は、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、およびプロピレングリコール)と、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノレン酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、およびアルケニルマロン酸)とのエステルを含む。これらのエステルの特定の例としては、ジブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−n−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、および1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸とを反応させることによって形成される複合エステルが挙げられる。
【0015】
合成油として有用なエステルとしてはまた、C〜C12モノカルボン酸、およびポリオールおよびポリオールエステル(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトール)から作製されるエステルが挙げられる。エステルはまた、モノエステル(例えば、Priolube 1976TM(C18−アルキル−COO−C20アルキル)との商品名で入手可能なもの)であり得る。
【0016】
上に開示されたタイプの未精製、精製または再精製の油(および互いとの混合物)が、本発明の潤滑組成物で使用され得る。使用され得る他の油は、例えば、Fischer−Tropsch処理を含む処理のような、ガス−液体プロセスから調製される油である。
【0017】
本発明の十分に配合された潤滑剤中の潤滑剤(添加パッケージ中に存在する希釈剤またはキャリア油を含む)の量は、代表的に、80〜99.5重量%、好ましくは85〜96重量%、より好ましくは90〜95重量%である。潤滑油はまた、本発明の添加剤を高濃度で含む濃縮物を調製するために使用され得る。濃縮物中のこのような油の量は、代表的に、20〜80重量%である。
【0018】
(スクシンイミド分散剤)
スクシンイミド分散剤は、潤滑剤の分野で周知であり、これは主に、(潤滑組成物中に混合する前に)灰分形成金属を含まず、かつ潤滑剤に添加された場合に、通常はいかなる灰分形成金属にも寄与しないため、時折「無灰」分散剤と称される分散剤を含む。スクシンイミド分散剤は、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤と、有機ヒドロキシ化合物、または好ましくは窒素原子に結合した少なくとも1つの水素を含むアミン、またはこのヒドロキシ化合物とアミンの混合物、との反応生成物である。用語「コハク酸アシル化剤」とは、炭化水素置換コハク酸またはコハク酸生成化合物(これはまた酸自体を包含する)をいう。このような物質は、代表的に、ヒドロカルビル置換コハク酸、無水物、エステル(ハーフエステルを含む)およびハライドを含む。
【0019】
コハク酸ベースの分散剤は、代表的に以下のような構造を含む種々の化学構造を有する:
【0020】
【化1】

上記の構造において、各Rは、独立して、ヒドロカルビル基、好ましくは、500または700〜10,000の数平均分子量を有するポリオレフィン由来の基である。代表的に、ヒドロカルビル基は、アルキル基であり、しばしば、500または700〜5000の分子量、好ましくは1500または2000〜5000の分子量を有するポリイソブチル基である。別の表現では、R基は、40〜500個の炭素原子、好ましくは少なくとも50個(例えば、50〜300個の炭素原子)、好ましくは脂肪族炭素原子を含み得る。Rは、アルキレン基、通常は、エチレン(C)基である。このような分子は、通常、アルケニルアシル化剤とポリアミンとの反応によって誘導され、そして上に示される単純なイミド構造に加えて2つの分子間の種々の結合が可能であり、これは、種々のアミドおよび4級アンモニウム塩を含む。スクシンイミド分散剤は、米国特許第4,234,435号および同第3,172,892号により十分に記載される。
【0021】
置換基が誘導されるポリアルケンは、代表的に、2〜16個の炭素原子、通常は2〜6個の炭素原子の重合可能なオレフィンモノマーのホモポリマーまたはインターポリマーである。
【0022】
ポリアルケンが誘導されるオレフィンモノマーは、1つ以上のエチレン性不飽和基(すなわち、>C=C<)の存在によって特徴付けられる重合可能なオレフィンモノマーである;すなわち、これらは、モノオレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンおよび1−オクテン)またはポリオレフィンモノマー(通常は、ジオレフィンモノマー)(例えば、1,3−ブタジエン)およびイソプレン)である。これらのオレフィンモノマーは、通常、重合可能な末端オレフィンである;すなわち、その構造中の>C=CH基の存在によって特徴付けられるオレフィンである。比較的少量の非炭化水素置換基が、このオレフィン中に含まれ得るが、ただし、このような置換基は、置換コハク酸アシル化剤の形成を実質的に妨害しない。
【0023】
各R基は、1つ以上の反応性基(例えば、コハク酸基)を含み得、従って、以下のような構造によって表される(アミンとの反応の前):
【0024】
【化2】

ここで、yは、R基に結合したこのようなコハク酸基の数である。1つのタイプの分散剤において、y=1である。別のタイプの分散剤において、yは、1より大きく、好ましくは、1.3より大きいか、または1.4より大きく;そして最も好ましくは、yは、1.5以上である。好ましくは、yは、1.4〜3.5であり、特に、1.5〜3.5であり、最も特に1.5〜2.5である。もちろん、異なる特定のR鎖が異なる数のコハク酸基と反応し得るので、yの分数値が生じ得る。
【0025】
コハク酸アシル化剤と反応してカルボン酸分散剤組成物を形成するアミンは、モノアミンまたはポリアミンであり得る。いずれかの場合において、これらは、式RNHによって特徴付けられ、ここで、RおよびRの各々は、独立して、水素または炭化水素、アミノ置換炭化水素、ヒドロキシ置換炭化水素、アルコキシ置換炭化水素、アミノ、カルバミル、チオカルバミル、グアニル、およびアシルイミドイル基であるが、ただし、RおよびRのうち1つより多くは水素である。従って、すべての場合において、これらは、その構造中の少なくとも1つのH−N<基の存在によって特徴付けられる。従って、これらは、少なくとも1つの1級アミノ(すなわち、HN−)または2級アミノ(すなわち、H−N<)基を有する。モノアミンの例としては、エチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、アルキルアミン、イソブチルアミン、ココアミン、ステアリルアミン、ラウリルアミン、メチルラウリルアミン、オレイルアミン、N−メチル−オクチルアミン、ドデシルアミンおよびオクタデシルアミンが挙げられる。
【0026】
分散剤が誘導されるポリアミンとしては、主に、大部分が以下の式に従うアルキレンアミンが挙げられ:
【0027】
【化3】

ここで、tは、好ましくは10未満の整数であり、Aは、水素、または好ましくは30個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、アルキレン基は、好ましくは、8個未満の炭素原子を有するアルキレン基である。アルキレンアミンとしては、主に、メチレンアミン、エチレンアミン、ヘキシレンアミン、ヘプチレンアミン、オクチレンアミン、他のポリメチレンアミンが挙げられる。これらは、特に以下によって例示される:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、デカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(トリメチレン)トリアミン。高級同族体(例えば、2種以上の上記のアルキレンアミンを同様に縮合することによって得られるもの)が有用である。テトラエチレンペンタミンは、特に有用である。
【0028】
エチレンアミン(ポリエチレンポリアミンとも称される)は、特に有用である。これらは、Encyclopedia of Chemical Technology,KirkおよびOthmer、第5巻、pp898−905、Interscience Publishers,New York(1950)において、「Ethylene Amines」との表題でいくぶん詳細に記載されている。
【0029】
ヒドロキシアルキル置換アルキレンアミン(すなわち、窒素原子上に1つ以上のヒドロキシアルキル置換基を有するアルキレンアミン)もまた同様に有用である。このようなアミンの例としては、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシ−エチル)−エチレンジアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、モノヒドロキシプロピルピペラジン、ジ−ヒドロキシプロピル置換テトラエチレンペンタミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)−テトラ−メチレンジアミン、および2−ヘプタデシル−1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾリンが挙げられる。
【0030】
上記のアルキレンアミンまたはヒドロキシアルキル置換アルキレンアミンのアミノラジカルまたはヒドロキシラジカルによる凝集によって得られるような、より高い相同体が、同様に有用である。縮合ポリアミンは、少なくとも1種のヒドロキシ化合物と、少なくとも1種の一級または二級アミン基を含む少なくとも1種のポリアミン反応物との縮合反応によって形成され、そして米国特許第5,230,714号(Steckel)に記載される。
【0031】
スクシンイミド分散剤は、通常、イミド官能基の形態で大部分の窒素を含むので、このようにいわれるが、アミン塩、アミド、イミダゾリンならびにそれらの混合物の形態であり得る。スクシンイミド分散剤を調製するために、1つ以上コハク酸生成化合物および1つ以上のアミンを、代表的に水の除去をしながら、必要に応じて通常の液体(実質的に不活性有機液体溶媒/希釈剤)の存在下で、高温(一般的に、80℃〜混合物または生成物の分解点の範囲;代表的に100℃〜300℃)で、加熱する。
【0032】
コハク酸アシル化剤とアミン(もしくは有機ヒドロキシ化合物またはそれらの混合物)とを、代表的に、酸生成化合物の等量あたり少なくとも2分の1等量のアミン(または場合に応じて、ヒドロキシ化合物)を提供するのに十分な量で反応させる。一般的に、存在するアミンの最大量は、コハク酸アシル化剤の等量あたり約2モルのアミンである。本発明の目的について、アミンの等量は、アミンの全量を存在する窒素原子の総数で割ったものに対応するアミンの量である。コハク酸生成化合物の等量の数は、化合物に存在するコハク酸基の数と共に変化し、一般的に、アシル化剤中の各コハク酸基について2等量のアシル化剤が存在する。本発明のスクシンイミド分散剤を調製するための手順のさらなる詳細および実施例は、例えば、米国特許第3,172,892号;同第3,219,666号;同第3,272,746号;および同第4,234,435号に含まれる。
【0033】
分散剤は、ホウ酸塩処理(borated)物質であり得る。ホウ酸塩処理分散剤は、周知の物質であり、そしてホウ酸のようなホウ酸塩処理試薬(borating agent)で処理されることによって調製され得る。代表的な条件は、ホウ酸を有する分散剤を100〜150℃で加熱することを包含する。分散剤はまた、WO00/26327に記載されるような無水マレイン酸との反応によって処理され得る。
【0034】
完全に処方された潤滑剤中のスクシンイミド分散剤の量は、代表的に1.0〜8重量%、好ましくは1.1〜7重量%または1.2〜6重量%、およびより好ましくは、2.0.〜5.5重量%である。濃縮物中のその濃度は、例えば、15〜80重量%まで対応して増加する。
【0035】
(ヒンダードフェノール抗酸化剤)
ヒンダードエステル置換フェノール抗酸化剤は、代表的に以下:
【0036】
【化4】

の式のアルキルフェノールであり、
ここで、Rは、1〜24個の炭素原子を含むアルキル基であり、そしてaは、1〜4の整数である。好ましくはRは、4〜18個の炭素原子を含み、最も好ましくは、4〜12個の炭素原子を含む。Rは、直鎖または分枝鎖のいずれかであり得る;分枝鎖が一般的に好ましい。aの好ましい値は、1〜4であり、最も好ましくは1〜3であり、特に2が好ましい。好ましいアルキレン基は、2または3個のt−ブチル基を含むブチル置換フェノールである。Rは、アルキレン基であり、好ましくは1〜8または2〜4個の炭素原子であり、そしてEは、エステル基であり(すなわち、−C(O)OR)、ここでRは、さらに以下に記載されるようなヒドロカルビルである。
【0037】
aが2である場合、t−ブチル基は、好ましくは2,6−位を占有する(すなわち、フェノールは、立体的障害的(sterically hindered)である)。
【0038】
【化5】

特に好ましい抗酸化剤は、以下
【0039】
【化6】

の式によって表されるヒンダードエステル置換フェノールであり、ここでRは、2〜22個の炭素原子、好ましくは2〜8、2〜6または4〜8個の炭素原子、およびより好ましくは4または8個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖のアルキル基である。Rは、2−エチルヘキシル基またはn−ブチル基が所望される。
【0040】
ヒンダードエステル置換フェノールは、塩基性触媒条件(例えば、KOH水溶液)下で、アシル化エステルと共に2,6−ジアルキルフェノールを加熱することによって調製され得る。このような物質およびこれらの調製は、PCT特許公開WO01/74978により詳細に記載される。
【0041】
ヒンダードエステル置換フェノール抗酸化剤の量は、組成物の0.2〜4.0重量%、好ましくは0.5重量%または0.9重量%または1重量%または1.2重量%〜3.75重量%または3.5重量%または3.0重量%または2.0重量%である。従って、好ましい範囲は、1〜0.75重量%であり得る。ある濃度で使用される場合、量は、比例して高くなる(例えば、8〜40重量%)。
【0042】
(金属またはアンモニウム含有清浄剤)
本発明はまた、金属またはアンモニウム含有スルホネート清浄剤または金属またはアンモニウム含有フェネート清浄剤を含む。一般的に清浄剤は塩であり、そして一般的に酸性有機化合物(すなわち、スルホン酸またはフェノール)の塩基性アルカリ塩またはアルカリ土類金属塩である。これらの塩は、一般的に(しかし必ずしもそうではないが)、過塩基化物質(overbased material)である。過塩基化物質はまた、金属およびその金属と反応した特定の酸性有機化合物の化学量論に従って存在する過剰な金属含有量により特徴付けられる均質なニュートン系である。過塩基化清浄剤中の過剰な金属量は、一般的に、金属比で表される。用語「金属比」は、酸性有機化合物の当量に対する金属(または、アンモニウム清浄剤の場合、アンモニウム部分)の総当量の比である。中性金属塩は、約1(例えば、1.0から1.5まで)の名目金属比を有する。通常の塩の4.5倍の金属を有する塩は、3.5当量の金属過剰(すなわち、金属比4.5)を有する。
【0043】
本発明の過塩基化金属の塩基性は、全塩基価(total base number)(ASTM D−2896)で表され得る。全塩基価は、過塩基化金属の塩基性の全てを中和するのに必要とされる酸(過塩素酸または塩化水素)の量である。酸の量は、水酸化カリウム当量(mg KOH/gサンプル)で表される。
【0044】
過塩素化物質は、酸性物質(代表的には、無機酸または低級カルボン酸、好ましくは二酸化炭素)と、酸性有機化合物、スルホン酸またはフェノールに対して不活性な少なくとも1つの有機溶媒(例えば、鉱油、ナフサ、トルエン、またはキシレン)を含有する反応媒体、化学量論過剰の金属またはアンモニウム塩基、および促進因子(promoter)を含む混合物とを反応させることにより調製される。
【0045】
本発明の清浄剤を生成するのに有用なスルホン酸としては、スルホン酸およびチオスルホン酸が挙げられる。一般的に、これらはスルホン酸の塩である。スルホン酸としては、単核または多核芳香族または環状脂肪族化合物が挙げられる。油溶性スルホン酸は、その主要部が以下の式のうちのひとつにより表され得る:R−T−(SOおよびR−(SO(ここで、Tは、環状の核(例えば、ベンゼンまたはナフタレン)であり;Rは、脂肪族基(例えば、アルキル、アルケニル、アルコキシ、またはアルコキシアルキル)であり;そしてRは、少なくとも15個の炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0046】
これらのスルホン酸の例示的な例としては、モノエイコサニル置換ナフタレンスルホ酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルベンゼンスルホン酸、ジラウリルβ−ナフタレンスルホン酸、および500〜5000の範囲の数平均分子量(M)を有するポリブテンのクロロスルホン酸処理により得られるスルホン酸が挙げられる。スルホン酸の別のグループは、モノ−、ジ−、およびトリ−アルキル化ベンゼンおよびナフタレンスルホン酸である。
【0047】
油溶性スルホン酸の特定の例は、マホガニー(mahogany)スルホン酸;ブライトストックスルホン酸;他の置換スルホン酸(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸);およびアルカリルスルホン酸(例えば、ドデシルベンゼン「ボトム(bottom)」スルホン酸である。ドデシルベンゼン「ボトム」は、家庭用洗剤のドデシルベンゼンスルホン酸を生成するのに使用されるドデシルベンゼンの除去後の残留物質である。これらの物質は一般的に、ジアルキル化ベンゼンまたは高級オリゴマーとアルキル化したベンゼンである。ボトムは、直鎖アルキレートまたは分枝鎖アルキレートであり得、直鎖ジアルキレートが好ましい。
【0048】
清浄剤製造副産物(例えば、SOとの反応による副産物)からのスルホネートの生成は、当業者に周知である。例えば、論説「Sulfonate」(Kirk−Othmer「Encyclopedia of Chemical Technology」、第二版、第19巻、291ページ参照、John Wiley & Sons,N.Y.(1969)出版)を参照のこと。
【0049】
本発明の清浄剤を生成するのに有用なフェノールは、式(R−Ar−(OH)により表され得る(ここで、Rは、芳香族基Arに直接結合したヒドロカルビル基である)。Rは、好ましくは、6〜80個の炭素原子、好ましくは6〜30個または8〜15個または25個の炭素原子を含有する。R基は、上記ポリアルケンの一つ以上から誘導され得る。R基の例としては、ブチル、イソブチル、ペンチル、オクチル、ノニル、ドデシル、および上記ポリアルケンから誘導される置換基(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、および酸化エチレンプロピレンコポリマー)が挙げられる。
【0050】
上式において、Arは芳香族基であり、そしてaおよびbは独立して、少なくとも1の数であり、aおよびbの和は2から芳香族核またはAr核上の置換可能な水素の数までの範囲である。好ましくは、aおよびbは各々1〜4、より好ましくは1〜2である。好ましくは、各々のフェノール化合物について平均少なくとも8個の脂肪族炭素原子が存在する。
【0051】
用語「フェノール」が本明細書中で使用される場合、この用語はフェノールの芳香族基をベンゼンに限定することを意図しないことが理解されるべきである。従って、「Ar」で表される芳香族基(および本明細書中のその他)は、単核(例えば、フェノール、ピリジル、またはチエニル)または縮合型もしくは結合(架橋)型の多核であり得ることが理解されるべきである。特に、「フェノール」は、米国特許第6,310,009号(サリゲニン誘導体清浄剤)および米国特許第6,200,936号ならびにPCT公報WO01/56968(サリキサレート清浄剤)により詳細に開示されるヒドロカルビル置換架橋構造および置換フェノール構造を含むことが意図される(両方の型は、一般的に、アルキレン(例えば、メチレン)架橋基で架橋された複数のヒドロカルビル置換フェノール芳香族環を含む)。
【0052】
塩基性金属塩を生成するのに有用な金属化合物は、好ましくは、第1属または第2属のいずれかの金属化合物(CAS版の元素周期表)である。第1属金属の金属化合物としては、第1a属アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウムなど)および第1b属金属(例えば、銅)が挙げられる。第1属金属は、好ましくは、ナトリウム、カリウム、リチウム、および銅であり、より好ましくはナトリウムまたはカリウムであり、そしてより好ましくはナトリウムである。第2属金属の金属塩基としては、第2a属アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、およびバリウム)および第2b属金属(例えば、亜鉛またはカドミウム)が挙げられる。好ましくは、第2属金属は、マグネシウム、カルシウム、バリウム、または亜鉛であり、好ましくは、マグネシウムまたはカルシウムであり、より好ましくは、カルシウムである。一般的には、金属化合物は、金属塩として送達される。塩のアニオン部分は、水酸化物、酸化物、炭酸塩、ホウ酸塩、または硝酸塩である。アンモニウム塩のアンモニウム部分は、アンモニウムそれ自体(NH)または式NR4−a(ここで、Rは、ヒドロカルビル基であり、そして「a」は、1〜4である)のヒドロカルビルアンモニウム(すなわち、アミン)であり得る。用語「アンモニウム」は、本明細書中では、前述の物質の全てを包含するように使用される。このアンモニウム部分はまた、アミン含有清浄剤(上記スクシンイミド清浄剤)のアミン官能基に基づくかまたはそれから誘導できる。
【0053】
スルホネート清浄剤およびフェネート清浄剤の混合物が使用され得、そして、実際、他の酸置換基(例えば、カルボン酸)に基づく清浄剤もまた存在し得る。特定の型の置換基は、同じ芳香族環上のカルボン酸官能基およびフェノール官能基の両方を含み得る(例えば、サリチレート)。サリチレートは、本発明の組成物中に含み得るが、それらはフェネート清浄剤として数えることが考慮されるべきでない。
【0054】
上記スルホン酸および他の酸の塩基性塩を生成するための技術を詳細に記載している特許としては、米国特許第2,501,731号;同第2,616,905号;同第2,616,911号;同第2,616,925号;同第2,777,874号;同第3,256,186号;同第3,384,585号;同第3,365,396号;同第3,320,162号;同第3,318,809号;同第3,488,284号;および同第3,629,109号が挙げられる。
【0055】
過塩基化清浄剤はまた、ホウ酸塩処理(borated)複合体であり得る。この型のホウ酸塩処理複合体は、ホウ酸と共に塩基性金属清浄剤を50〜100℃で加熱することによって調製され得、ホウ酸の当量数は、この塩の金属の当量数とほぼ等しい。米国特許第3,929,650号は、ホウ酸塩処理複合体およびそれらの調製を開示する。
【0056】
本発明の組成物中の清浄剤の量は、便宜上、酸性基質(スルホン酸またはフェノール部分)の量で表される(通常は過塩基化清浄剤の一部である金属またはアンモニウムおよび他の成分(例えば、CO−2)の重量を除く)。従って、基質の量は、潤滑処方物の少なくとも0.1〜3.0重量%、好ましくは、0.15〜2.0重量%、さらに好ましくは、上限が1.1重量%である。濃縮物においては、その量は、例えば、少なくとも10の倍率で、それに対応して増加する。存在する酸性基質の量を計算する目的では、ヒンダードフェノール抗酸化剤の量は含まれない。
【0057】
本発明において、所望の場合、その組成物に望ましくない過剰な金属を提供しないように、清浄剤に対して基質が提供され得る。すなわち、清浄剤は、比較的低TBN処方(すなわち、比較的低い金属比を有する)において供給される。一つの実施形態において、清浄剤(その市販形態では、従来通りの量の希釈油(代表的には、清浄剤処方物の40〜50%である)を含む)は、100未満、好ましくは、50未満、さらに好ましくは、30未満のTBNを示す。処方物中の金属量((硫酸化灰分(Sulfated Ash)、ASTM D−874として表される)が、0.2重量%まで、好ましくは、0.05〜0.1重量%であることが時には望ましい。硫酸化灰分についての合理的な下限は、0.02または0.03%であり得、従って、好ましい範囲は、0.02〜0.12%および0.03〜0.1%である。硫酸化灰分含有量は、金属含有清浄剤の量および全ての他の金属源に依存する。
【0058】
(任意物質)
本発明の組成物はまた、潤滑組成物中で一般的に見出される他の成分を含み得るし、またはそれらを排除し得る。一つのこのような物質は、リン酸の金属塩である。以下の式:
【0059】
【化7】

の金属塩(ここでRおよびRは、独立して、3〜30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)が、五硫化リン(PまたはP10)とアルコールまたはフェノールを反応させ、以下の式:
【0060】
【化8】

に対応するO,O−ジヒドロカルビルホスホールホスホロジチオ酸を形成することによって容易に取得可能である。
【0061】
この反応は、20〜200℃の温度で、4モルのアルコールまたはフェノールと、1モルの五硫化リンとを混合する工程を包含する。この反応において硫化水素が遊離する。次いで、酸を塩基性金属化合物と反応させて塩を形成させる。価数nを有する金属Mは、一般的にアルミニウム鉛、スズ、マグネシウム、コバルト、ニッケル、亜鉛、または銅であり、または最も好ましくは亜鉛である。従って、塩基性金属化合物は、好ましくは、酸化亜鉛であり、そして得られる金属化合物は、以下の式:
【0062】
【化9】

により表される。
【0063】
基およびR基は、独立してヒドロカルビル基であり、好ましくは、アセチレンを含まず、そして通常は、エチレン不飽和物を含まない。それらは代表的に、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、またはアルカリル基であり、3〜20個の炭素原子、好ましくは3〜16個の炭素原子、および最も好ましくは13個までの炭素原子(例えば、3〜12個の炭素原子)を有する。R基およびR基を提供するよう反応するアルコールは、1つ以上の第1級アルコール、1つ以上の第2級アルコール、1つ以上の第2級アルコールと1つ以上の第1級アルコールの混合物であり得る。2つの第2級アルコールの混合物(例えば、イソプロパノールおよび4−メチル−2−ペンタノール)がしばしば望ましい。
【0064】
このような物質は、多くの場合、ジアルキルジチオリン酸亜鉛または単にジチオリン酸亜鉛と称される。それらは周知であり、そして潤滑処方物の分野の当業者にとっては容易に入手可能である。完全に処方された潤滑剤中のリン酸の金属塩の量は、存在する場合、代表的に0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜2重量%、そしてより好ましくは0.5〜1.5重量%である。濃縮物におけるその濃度は、例えば、5〜60重量%までそれに対応して増加する。最終処方物において、リンの総量は、最大0.08重量%、好ましくは0.07重量%、0.06%またはそれ以下であることが好ましい。代表的には、潤滑剤は、リンを完全に含まないわけではなく、例えば、0.005または0.01%のリンを含む。
【0065】
他の耐摩耗剤は、リン含有酸エステルであり得る。1実施形態では、このリン含有酸エステルは、亜リン酸ジ−またはトリヒドロカルビルである。好ましくは、各ヒドロカルビル基は、1個〜24個の炭素原子、または1個〜18個の炭素原子、または2個〜8個の炭素原子を有する。各ヒドロカルビル基は、別個に、アルキル、アリール、およびそれらの混合物であり得る。このヒドロカルビル基は、アリール基であるとき、少なくとも6個の炭素原子;または6個〜18個の炭素原子を含有する。これらのアルキルまたはアルケニル基の例には、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オレイル、リノレイルおよびステアリルが挙げられる。アリール基の例には、フェニル、ナフチルおよびヘプチルフェノールが挙げられる。1実施形態では、各ヒドロカルビル基は、別個に、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オレイルまたはフェニル、さらに好ましくは、ブチル、オレイルまたはフェニル、さらに好ましくは、ブチルまたはオレイルである。亜リン酸エステルおよびそれらの調製は、公知であり、多くの亜リン酸エステルは、市販されている。有用な亜リン酸エステルには、亜リン酸ジブチル水素、亜リン酸トリオレイルおよび亜リン酸トリフェニルがある。1実施形態では、この亜リン酸エステルは、アルファピネンと五硫化リンとを4:1のモル比で反応させることにより製造される生成物である。存在しているリンエステルの量は、その組成物に、0.1重量%までのリン、さらに好ましくは、0.01〜0.08重量%のリン、最も好ましくは、0.02〜0.06重量%のリンを送達するのに十分である。0.05重量%のリンパッケージは、最終流体組成物において、0.5重量%の典型的なリンエステルレベルに相当している。
【0066】
他の一般的な添加物が使用され得る。これらとしては、腐食防止剤、極圧剤、および耐摩耗剤が挙げられ、これらとしては、塩素化脂肪族炭化水素;ホウ素含有化合物(ホウ酸エステルを含む);およびモリブデン化合物が挙げられる。粘度改善剤としては、ポリイソブテン、ポリメチルアクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール結合ジエンコポリマー、ポリオレフィン(例えば、エチレン/プロピレンコポリマー)、および多機能性粘度改善剤(分散性粘度調整剤(分散性および粘度の両方の改善を与える)を含む)が挙げられる。流動点降下剤は、特に有用な型の添加剤であり、しばしば、潤滑油中に含まれ、通常は、ポリメタクリレート、スチレンベースのポリマー、架橋アルキルフェノール、またはアルキルナフタレンのような基質を含む。例えば、C.V.SmalheerおよびR.Kennedy Smithによる「Lubricant Additives」の8ページ(Lesius−Hiles Company Publishers,Cleveland,Ohio,1967)を参照のこと。摩擦調整剤は公知の添加剤であり、脂肪アミン、エステル、特にグリセロールエステル(例えば、モノオレイン酸グリセロール、ホウ素化グリセロールエステル、脂肪亜リン酸塩、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、ホウ素化脂肪エポキシド、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ素化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、硫酸化オレフィン、脂肪イミダゾール、カルボン酸の縮合産物、ポリアルキレンポリアミン、アルキルリン酸のアミン塩、およびモリブデンジチオカルバメート(Mo IV、V、またはVI))を含み得る。安定な泡の形成を減少または防止するのに使用される発泡防止剤としては、シリコーンまたは有機ポリマーが挙げられる。これらおよびさらなる発泡防止組成物の例は、Henry T.Kernerによる「Foam Control Agents」(Noyes Data Corporation,1976)、125−162ページに記載されている。本発明と組み合わせて使用され得るこれらおよび他の添加物の多くは、米国特許第4,582,618号(第14欄第52行〜第17欄第16行、包括)においてより詳細に記載される。
【0067】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。特に、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、炭化水素特性を主に有する基をいう。ヒドロカルビル基の例としては、以下が挙げられる:
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族、脂肪族、および脂環式置換芳香族置換基、ならびに環式置換基(ここで、環は、その分子の別の部分を通って完成する(例えば、2つの置換基が一緒になって環を形成する);
置換炭化水素置換基、すなわち、非炭化水素基(本発明の関係で、その置換基の炭化水素の性質の大部分を変更しない)を含有する置換基(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ);
ヘテロ置換基、すなわち、本発明の関係で、主に炭化水素特性を有しつつ、その他に炭素原子で構成される環または鎖に炭素以外を含む置換基。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、窒素が挙げられ、そしてピリジル、フリル、チエニル、およびイミダゾリルのような置換基を含む。一般的に、2つ以下、好ましくは1つ以下の非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基中の10個毎の原子に対して存在し;代表的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基が存在しない。
【0068】
上記物質のいくつかは、最終処方物中で相互作用し得、その結果、最終処方物の成分が、最初に添加した成分と異なり得ることが公知である。例えば、金属イオン(例えば、洗浄剤の金属イオン)は、他の分子の他の酸性またはアニオン性部位に移動し得る。それによって形成される産物(その意図する用途において本発明の組成物を用いた場合に形成される産物を含む)は、簡単に記載するのは困難であり得る。そうであるにも関わらず、全てのこのような改良および反応産物は、本発明の範囲に含まれる;本発明は、上記成分を混合することによって調製された組成物を包含する。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
650N鉱物性基油中で、以下の添加成分を含む処方物を調製する(量は重量%で表す):
4.24%高TBN縮合アミンスクシンイミド分散剤(これは、40%の油を含有する)
1.0%Caスルホネート清浄剤(TBN 13、これは、50%の油を含有する)
0.5%亜リン酸トリフェニル(これは、0%の油を含有する)
1.0%ヒンダードフェノールエステル抗酸化剤(市販品)
<0.01%市販シリコーン消泡剤。
【0070】
この処方物は、0.05重量%のリンおよび0.5%の基質を含む。
【0071】
実施例2および3は、分散剤、抗酸化剤および耐摩耗剤を含有する市販品である。
【0072】
上記処方物を、パネルコカイン試験(これは、堆積物の蓄積を示すために使用される試験である)に供する。これは、試験油を105℃で4時間、325℃で維持されたアルミニウムパネルにかける工程を包含する試験である。得られた堆積物のデジタル画像化は、0〜100の規模のUniversal Rating(ユニバーサル評点)を提供し、より高い等級はより良い性能を示す。実施例1の処方物は、68のUniversal Ratingを有するのに対して、実施例2および3は、それぞれ、3および9のUniversal Ratingを有する。実施例1で強調された本発明が堆積物の蓄積を少なくする(このことは、特に望ましい)ことが明らかである。
【0073】
これらの処方物を、さらに、酸化およびニトロ化防止試験にかける。これは、完全に処方した油に酸および金属ナフタネートを加えて高速で60秒間混合する工程を包含する試験である。混合した試料を145℃で加熱し、そして22時間にわたって、NOxでパージする。試験終了(end−of−test(eot))試料を、ニトロ−酸化成分について、FTIRによって測定する。注記:ΔC=Oは、初期C=Oとeot C=Oとの間の差である。
【0074】
【表1】

この酸化およびニトロ化防止試験の結果から、本発明は、低いΔC=O、RONO2およびRNO2値を有することが明らかであり、このことは、それぞれ、酸化およびニトロ化が少ないことを示している。
【0075】
これまでに言及した各文献は、本明細書中に参考として援用される。実施例を除いて、またはそうでないことが明示的に示される場合、物質量、反応条件、分子量、炭素原子数などを特定する記載における全ての数値は、単語「約」によって修飾されていることが理解されるべきである。そうでないことが示されない限り、本明細書中で言及される各化学物質または組成物は、市販の等級の物質であり、異性体、副産物、誘導体、および通常市販等級に存在すると理解される他のそのような物質を含み得ると解釈されるべきである。しかし、各化学成分の量は、そうでないことが示されない限り、市販物質に通常存在し得る任意の溶媒または希釈油を除いて表される。本明細書中に示される量、範囲、および比の上限および下限は、独立して組み合わされ得ることが理解されるべきである。同様に、本発明の各エレメントの範囲および量は、任意の他のエレメントの範囲または量と一緒に使用され得る。本明細書中で使用される場合、表現「本質的に〜からなる」は、考慮する組成物の塩基性および新規の特性に物質的に影響を与えない物質を含むことを許容する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2サイクル定置ガスエンジンで使用するのに適当な低灰分低リン潤滑剤組成物であって、該潤滑剤組成物は、以下を含有する:
(a)粘性潤滑油;
(b)1.0〜8.0重量%のスクシンイミド分散剤;
(c)0.2〜4.0重量%のヒンダードフェノール抗酸化剤;
(d)金属またはアンモニウム部分の重量を除いて0.1〜3.0重量%のスルホネート部分またはフェネート部分を提供する量の少なくとも1種の金属またはアンモニウム含有スルホネート清浄剤または金属またはアンモニウム含有フェネート清浄剤であって、該清浄剤は、オイルを含まない基準で100までの全塩基価を有する、清浄剤、
ここで、該潤滑剤は、0.08重量%までのリンおよび0.2重量%までの硫酸塩灰分を含有する、
組成物。
【請求項2】
前記スクシンイミド分散剤が、ヒドロカルビル無水コハク酸と縮合ポリアミンとの反応生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒンダードフェノール抗酸化剤が、ヒンダードエステル置換フェノール抗酸化剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒンダードフェノール抗酸化剤(c)の量が、0.75〜3.0重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成分(d)中の前記金属が、カルシウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
(d)の前記清浄剤が、50までの全塩基価を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
(d)の清浄剤の前記スルホネート部分またはフェネート部分の量が、前記組成物の0.15〜2.0重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、リンエステルを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記リンエステルが、前記組成物に0.08重量%までのリンを供給するのに適当な量で、存在している、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、5までの全塩基価を有する、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
請求項1の成分を合わせることによって調製される、組成物。
【請求項12】
2サイクル定置ガスエンジンを潤滑させる方法であって、該エンジンに、請求項1に記載の潤滑剤組成物を供給する工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2007−506840(P2007−506840A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528087(P2006−528087)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030685
【国際公開番号】WO2005/030913
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】