説明

無線タグ通信装置

【課題】無線タグ回路素子との情報送受信の確実性・信頼性を向上する。
【解決手段】無線タグTに対し、少なくとも搬送波を含む信号を非接触で送信してアクセスを行う送信アンテナ素子1B,1Cと、この送信アンテナ素子1B,1Cにより送信された信号に応じてリプライ信号を非接触で受信する受信アンテナ素子1A,1Dと、この受信時における受信半値角Krを送信アンテナ素子1B,1Cの送信時における送信半値角Ktよりも小さくし、受信アンテナ素子1A,1Dによる受信メインローブ方向θrxが送信アンテナ素子1B,1Cの電波到達範囲のうちの所定範囲内となるように、受信アンテナ素子1A、1Dを制御する高周波送受信部34B,34C、高周波受信部34A,34D、受信ウェイト掛算部28、及びPAAウェイト制御部46とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部と情報の無線通信が可能な無線タグに対し情報の読み取り又は書き込みを行う無線タグ通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の無線タグとリーダ(読みとり装置)/ライタ(書き込み装置)との間で非接触で情報の読みとり/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。例えばラベル状の無線タグに備えられた無線タグ回路素子は、所定の情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナ部とを備えており、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても、リーダ/ライタ側よりIC回路部に対して情報の読み取り/書き込みが可能であり、物品管理や物流等の様々な分野において実用化されている。
【0003】
このような無線タグに対する通信において、通信距離の増大を図った従来技術として、例えば特許文献1に記載のものが既に提唱されている。
【0004】
この従来技術は、2個のリーダ/ライタと1つの無線タグ回路素子(非接触タグ)との間で電磁誘導結合により無線通信を行うシステムにおいて、一方のリーダ/ライタの内部磁束と他方のリーダ/ライタの内部磁束の極性が時間的に常に反転するように、かつ当該一方のリーダ/ライタの外部磁束と他方のリーダ/ライタの外部磁束の極性が時間的に常に反転するように同一情報の時間信号を発生することにより、無線タグ回路素子のコイルに鎖交する磁束密度を強くし、これによって通信距離の拡大を図るものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−297308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、無線通信における磁束や電波の到達距離は有限であるため一定の通信限界距離(通信可能範囲)が存在し、上記従来技術はこの有限である通信可能範囲をなるべく大きくすることを主眼としている。しかしながら、この通信可能範囲の境界位置付近にある無線タグ回路素子については、上記通信限界近傍であるがゆえに、例えば周囲の磁気的・電波的環境や他の妨害要素等の存在により、リーダ/ライタからの磁束や電波は到達し、無線タグ回路素子が起動したものの、これに応じた無線タグ回路素子からの返信信号を含む磁束や電波はリーダ/ライタへ到達できない畏れがある。この場合、当該無線タグ回路素子は一応通信可能範囲内に存在し無線タグ回路素子への情報送信は可能であるにもかかわらず、無線タグ回路素子からの情報受信は不可能であり、情報送受信の確実性・信頼性に乏しくなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、無線タグ回路素子との情報送受信の確実性・信頼性を向上することができる無線タグ通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、所定の情報を記憶するIC回路部及びこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナを備えた無線タグ回路素子に対し、少なくとも搬送波を含む信号を非接触で送信し、前記IC回路部にアクセスを行う送信アンテナ手段と、この送信アンテナ手段により送信された前記信号に応じて前記IC回路部より返信された返答信号を非接触で受信する受信アンテナ手段と、この受信アンテナ手段の受信時における受信半値角を前記送信アンテナ手段の送信時における送信半値角よりも小さくし、前記受信アンテナ手段によるメインローブ方向が前記送信アンテナ手段の電波到達範囲のうちの所定範囲内となるように、前記受信アンテナ手段を制御する受信制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
送信アンテナ手段より搬送波を含む信号がその電波到達範囲内の無線タグ回路素子へと送信されて、非接触で当該無線タグ回路素子のIC回路部へのアクセスが行われる。そして、その信号に応じて返信された返答信号は受信アンテナ手段で非接触で受信され、これによって無線タグ回路素子との間で情報の送受が行われる。このとき、本願第1発明においては、受信制御手段が受信アンテナ手段を制御し、その受信半値角を、送信アンテナ手段の送信半値角より小さくなるようにする。受信半値角をこのようにより狭く絞ることで、受信アンテナ手段による電波受信可能範囲の最大距離を、上記送信アンテナ手段による電波到達範囲の最大距離よりも大きくすることができる。さらにこのとき、受信制御手段が、受信アンテナ手段の受信時のメインローブ方向を、送信時の上記電波到達範囲の所定範囲内に位置させることで、受信アンテナ手段の電波受信可能範囲を、少なくとも上記送信アンテナ手段の電波到達範囲の当該所定範囲を含み、その所定範囲の最大距離よりも遠い範囲まで到達させることができる。
【0010】
この結果、少なくとも上記所定範囲に存在する無線タグ回路素子の返答信号については、その所定範囲よりも遠い範囲までカバーできる受信特性の受信アンテナ手段により、もれなく確実に受信することができる。したがって、受信アンテナ手段の受信メインローブ方向を適宜に設定することで、実質的に送信アンテナ手段による送信可能範囲よりも受信アンテナ手段の受信可能範囲を広く設定することが可能となり、情報送受信の確実性・信頼性を向上することができる。
【0011】
特に、送受信ともに通信可能範囲を広げようとする場合には、送信側における法的規制の存在により送信電力が制限されるため十分に当該範囲を広げられず、範囲境界位置付近に位置する無線タグ回路素子との情報送受信の確実性に乏しいという制約がある。これに対し本願第1発明においては、上記のようにして受信側の通信可能範囲を送信側の通信可能範囲よりも大きくしていることにより、上記送信側における法的規制の制約の下でも、受信側の通信範囲はそれを超えて大きく設定することができ、上記範囲境界位置付近の無線タグ回路素子とも確実に情報送受信を行うことができる。
【0012】
また、送信可能範囲より受信可能範囲が広いことにより、他の無線タグ通信装置と混信することなく無線タグ回路素子と通信できる効果もある。すなわち、通信可能範囲が広い場合には他の無線タグ通信装置の送信範囲に位置する無線タグ回路素子からの応答が受信されて混信する可能性があるが、本願第1発明のように送信可能範囲より受信可能範囲を広くすることにより、送信範囲が重ならないように配置することで混信することなく正常に無線タグ回路素子との通信を行うことができる。
【0013】
第2発明は、上記第1発明において、前記受信制御手段は、前記所定範囲内として、前記受信アンテナ手段による受信メインローブ方向が前記送信半値角範囲内となるように、前記受信アンテナ手段を制御することを特徴とする。
【0014】
所定範囲よりも遠い範囲までカバーできる受信特性の受信アンテナ手段の受信メインローブ方向を、送信手段の送信半値角範囲内となるように制御することで、少なくとも、当該所定範囲に存在する無線タグ回路素子の返答信号についてもれなく確実に受信することができる。
【0015】
第3発明は、上記第2発明において、前記受信制御手段は、前記送信半値角範囲内で前記受信メインローブ方向を順次変化させるように、前記受信アンテナ手段を制御することを特徴とする。
【0016】
所定範囲よりも遠い範囲までカバーできる受信特性の受信アンテナ手段の受信メインローブ方向を送信半値角範囲内で順次変化させることにより、少なくとも送信半値角範囲に存在する無線タグ回路素子の返答信号については、その範囲よりも遠い範囲までカバーできる受信アンテナ手段でもれなく確実に受信することができる。この結果、実質的に送信アンテナ手段による送信可能範囲よりも受信アンテナ手段の受信可能範囲を広く設定することができる。
【0017】
第4発明は、上記第3発明において、前記送信アンテナ手段による送信メインローブ方向を順次変化させるように、当該送信アンテナ手段を制御する送信制御手段を設けたことを特徴とする。
【0018】
送信制御手段が送信メインローブ方向を順次変化させることで、より広い範囲にわたってまんべんなく送信した電波を到達させ、電波到達範囲を大きくすることができる。
【0019】
第5発明は、上記第4発明において、前記送信制御手段が前記送信アンテナ手段の前記送信メインローブ方向を順次変化させながら、前記受信制御手段が前記送信半値角範囲内で前記受信アンテナ手段の前記受信メインローブ方向を順次変化させていくとき、前記順次変化する前記送信メインローブ方向の1つと、前記順次変化する前記受信メインローブ方向の1つとが略同一の方向となるように、前記送信制御手段及び前記受信制御手段がそれぞれ制御を行うことを特徴とする。
【0020】
送信と受信のメインローブ方向を同じにした時に最も送受信感度が高くなることから、その送信指向性で送信することで通信距離をより長くすることができる。
【0021】
第6発明は、上記第4発明において、前記送信制御手段が前記送信アンテナ手段の前記送信メインローブ方向を順次変化させながら、前記受信制御手段が前記送信半値角範囲内で前記受信アンテナ手段の前記受信メインローブ方向を順次変化させていくとき、前記送信メインローブ方向の1つにおいて前記順次変化する前記受信メインローブ方向の1つと、前記送信メインローブ方向の他の1つにおいて前記順次変化する前記受信メインローブ方向の1つとが、略同一の方向となるように、前記送信制御手段及び前記受信制御手段がそれぞれ制御を行うことを特徴とする。
【0022】
これにより、当該略同一の方向となる受信メインローブ同士については、例えば指向性制御における位相制御因子(ウェイト)等の制御要素についても共有することができるので、装置に備えられた制御手段の制御負担や当該位相制御因子の記憶手段の容量負担等を軽減することができる。
【0023】
第7発明は、上記第1乃至第6発明のいずれかにおいて、前記送信アンテナ手段は、複数の送信用アンテナ素子を備えたアレイ型の送信アンテナであり、前記受信アンテナ手段は、複数の受信用アンテナ素子を備えたアレイ型の受信アンテナであることを特徴とする。
【0024】
送信アンテナ又は受信アンテナの各アンテナ素子における位相制御因子(ゲイン)を変化させることで、容易に送信指向性又は受信指向性を変化させることが可能となる。
【0025】
第8発明は、上記第7発明において、前記受信アンテナの前記受信用アンテナ素子の数を、前記送信アンテナの前記送信用アンテナ素子の数よりも多くしたことを特徴とする。
【0026】
これにより、受信アンテナの受信半値角を容易に送信アンテナの送信半値角よりも小さくし、狭く絞ることができる。
【0027】
第9発明は、上記第8発明において、前記受信アンテナは、4つの前記受信用アンテナ素子を備えており、前記送信アンテナは、2つの前記送信用アンテナ素子を備えていることを特徴とする。
【0028】
送信アンテナの送信用アンテナ素子数2つに対し、受信アンテナの受信用アンテナ素子数をそれよりも多く2倍相当の4つにすることにより、受信アンテナの受信半値角を確実に送信アンテナの送信半値角よりも小さくすることができる。
【0029】
第10発明は、上記第7乃至第9発明のいずれかにおいて、前記複数の送信用アンテナ素子及び前記複数の受信用アンテナ素子のうち、少なくとも一部を送受信兼用のアンテナ素子としたことを特徴とする。
【0030】
少なくとも一部のアンテナ素子を送受信兼用アンテナ素子として共有することにより、例えば送信アンテナと受信アンテナとをそれぞれ別個のアンテナとして構成する場合に比べ、アンテナ構成を簡素化することができる。
【0031】
第11発明は、上記第7乃至第9発明のいずれかにおいて、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを、それぞれ別個のアンテナとして構成したことを特徴とする。
【0032】
送信アンテナ及び受信アンテナを別個に構成することにより、例えば一部のアンテナ素子を共有化する場合に比べ、装置に設けられる制御手段による制御を簡素化することができるとともに、相互の影響や干渉等を防止し通信精度を向上することができる。
【0033】
第12発明は、上記第11発明において、前記送信用アンテナ素子と前記受信用アンテナ素子とを、互いに放射指向性が略最小となる領域に位置するように、配置したことを特徴とする。
【0034】
送信用アンテナ素子及び受信用アンテナ素子を、互いに放射指向性がほとんどないいわゆるヌル領域に配置することにより、送信アンテナからの送信時における受信アンテナからの影響や干渉、受信アンテナでの受信時における送信アンテナからの影響や干渉等を防止し、通信精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、無線タグ回路素子との情報送受信の確実性・信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図1は、本実施形態の適用対象である無線タグ通信装置の全体概略を表すシステム構成図である。
【0038】
図1において、本実施形態による無線タグ通信装置100は質問器として機能するものであり、応答器として機能する複数の無線タグTに対して無線通信を介した情報の送受を行うものである。
【0039】
無線タグTは、アンテナ(タグ側アンテナ)151とIC回路部150とを備えた無線タグ回路素子Toを有している。
【0040】
無線タグ通信装置100は、アレイ型のアンテナユニット1と、このアンテナユニット1を介して無線タグ回路素子ToのIC回路部150へアクセスする(この例では読み取りを行う)ための高周波回路2と、無線タグ回路素子Toから読み出された信号を処理するための信号処理回路3と、上記アンテナ1と高周波回路2を介して無線タグ回路素子Toから読み取った情報等を表示する表示部4と、読み取った情報等を格納保持するデータベース(図中ではDBと省略)5と、上記信号処理回路3を介し無線タグ回路素子Toから読み出された信号を処理するとともに表示部4及びデータベース5を介し無線タグ通信装置100全体を制御するための中央制御部6とを有する。
【0041】
アレイ型アンテナユニット1は、無線タグ回路素子Toの上記アンテナ151との間で無線通信により搬送波を含む信号(質問波)の送信と受信を兼用して行う複数(この例では2つ)の送受信アンテナ素子(送信アンテナ手段、受信アンテナ手段、送受信兼用のアンテナ素子)1B,1Cと、信号の受信のみを行う複数(この例では2つ)の受信アンテナ素子(受信アンテナ手段)1A,1Dとを備えている。
【0042】
全てのアンテナ素子(図1中では斜視で表している)1A,1B,1C,1Dはそれぞれ例えば略直線状のダイポールアンテナで構成されており、そのうち2つの送受信アンテナ素子1B,1Cが内側に平行に配置され、さらに他の2つの受信アンテナ素子1A,1Dがそれら2つの送受信アンテナ素子1B,1Cの外側を挟んで略平行に配置されて略同じ所定の間隔で並設されている。これら4つのアンテナ素子1A〜1Dが特に図示しない基板上に固定設置されてアンテナユニット1を構成する。送信時には内側の2つの送受信アンテナ素子1B,1Cが送信アンテナとして機能し、受信時には4つ全てのアンテナ素子1A〜1Dが受信アンテナとして機能するようになっており、それぞれの場合で後述する指向性制御によりアンテナユニット1全体としての指向性方向(メインローブの方向)が電子的に制御されるように構成されている。
【0043】
中央制御部6は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM、及びRAM等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。
【0044】
図2は、上記無線タグTに備えられた無線タグ回路素子Toの機能的構成の一例を表すブロック図である。
【0045】
図2において、無線タグ回路素子Toは、上記無線タグ通信装置100側の上記アンテナ1A〜1DとUHF帯等の高周波を用いて非接触で信号の送受信を行う上記アンテナ151と、このアンテナ151に接続された上記IC回路部150とを有している。
【0046】
IC回路部150は、アンテナ151により受信された搬送波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された搬送波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、上記アンテナ151により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、無線タグTの識別情報(以下、タグIDという)などの所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部155と、上記アンテナ151に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部156と、上記整流部152、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介して上記無線タグ回路素子Toの作動を制御するための制御部157とを備えている。
【0047】
変復調部156は、アンテナ151により受信された上記無線タグ通信装置100のアンテナ1A〜1Dからの通信信号の復調を行うと共に、上記制御部157からの返信信号に基づき、アンテナ1A〜1Dより受信された搬送波を反射変調する。
【0048】
この制御部157は、無線タグ通信装置100と通信を行うことにより上記メモリ部155に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ151により受信された質問波を上記変復調部156において上記メモリ部155に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波として上記アンテナ151から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0049】
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出して制御部157にクロックを抽出するものであり、受信した信号のクロック成分の速度に対応したクロックを制御部157に供給する。
【0050】
図3は、無線タグ通信装置100の詳細構成を表す機能ブロック図である。この図3に示すように、信号処理回路3は、無線タグTへの送信信号に対応するコマンドビット列を生成するコマンドビット列生成部20と、そのコマンドビット列生成部20から出力されたディジタル信号をパルス幅変調等の所定の公知の手法により符号化する符号化部22とを有している。
【0051】
高周波回路2は、上記符号化部22により符号化された信号をAM方式で変調して送信メモリ部26に供給(記憶)するAM変調部24と、その送信メモリ部26に記憶された送信信号を随時読み出して所定の送信PAAウェイトを掛算する送信PAA(Phased Array
Antenna)処理部としての送信ウェイト掛算部28とを有している。
【0052】
また、高周波回路2は、所定の局発信号を出力する局部発振器32と、その局部発振器32から出力される局発信号に応じて上記送信ウェイト掛算部28から出力される送信信号をアップコンバートして所定の増幅率で増幅し上記2つの送受信アンテナ素子1B,1Cから上記質問波として送信すると共に、各送受信アンテナ素子1B,1Cによりそれぞれ受信される受信信号を上記送信時の場合と異なる増幅率で増幅し上記局部発振器32から出力される局発信号に応じてダウンコンバートして受信メモリ部36に供給(記憶)する2つの高周波送受信部34B,34Cと、2つの受信アンテナ素子1A,1Dによりそれぞれ受信される受信信号を上記高周波送受信部34B,34Cにおける受信時の場合と同じ増幅率で増幅し上記局部発振器32から出力される局発信号に応じてダウンコンバートして受信メモリ部36に供給(記憶)する2つの高周波受信部34A,34Dも有している。
【0053】
また、一方、信号処理回路3は、上記受信メモリ部36に記憶された受信信号を随時読み出して所定の受信PAAウェイトを掛算する受信PAA処理部としての受信ウェイト掛算部38と、その受信ウェイト掛算部38から出力される受信信号をAM方式で復調してAM復調波を検出するAM復調部40と、送信ウェイト掛算部28において掛算される送信PAAウェイト、受信ウェイト掛算部38において掛算される受信PAAウェイト、及び、高周波送受信部34B,34Cにおいて送信信号及び受信信号を増幅する増幅率を個別に制御(算出)するPAAウェイト制御部(指向性制御手段)46も有している。
【0054】
さらに、信号処理回路3は、上記AM復調部40により復調されたAM復調波を所定の公知の手法により復号する復号部42と、その復号部42により復号された復号信号を解釈して上記無線タグTの変調に関する情報信号を読み出す返答ビット列解釈部44も有している。
【0055】
図4は、送信ウェイト掛算部28の詳細機能を表す機能ブロック図である。この図4に示すように、送信ウェイト掛算部28は、送信メモリ部26から読み出される送信信号に上記PAAウェイト制御部46から供給される送信PAAウェイトをそれぞれ掛算して各高周波送受信部34B,34Cに供給する複数(図4では2つ)の掛算器48b,48cを備えている。ここで、上記掛算器48bが高周波送受信部34Bに、掛算器48cが高周波送受信部34Cに、それぞれ対応しており、各掛算器48b,48cからの出力が対応する高周波送受信部34B,34Cに供給されるようになっている。
【0056】
図5は、高周波送受信部34B,34Cの詳細機能を表す機能ブロック図である。この図5に示すように、高周波送受信部34B,34Cは、送信ウェイト掛算部28から供給される送信信号をアナログ信号に変換する送信信号D/A変換器50と、その送信信号D/A変換器50によりアナログ変換された送信信号の周波数を上記局部発振器32から出力される局発信号の周波数だけ高くするアップコンバータ52と、そのアップコンバータ52によりアップコンバートされた送信信号を後述するPAAウェイト制御部46から設定される増幅率で増幅する送信信号増幅器54と、その送信信号増幅器54から出力される送信信号を対応する送受信アンテナ素子1B,1Cに供給すると共に、その送受信アンテナ素子1B,1Cから供給される受信信号を受信信号増幅器58に供給する方向性結合器56と、その方向性結合器56から供給される受信信号を後述するPAAウェイト制御部46から設定される増幅率で増幅する受信信号増幅器58と、その受信信号増幅器58から出力される受信信号の周波数を局部発振器32から出力される局発信号の周波数だけ低くするダウンコンバータ60と、そのダウンコンバータ60によりダウンコンバートされた受信信号をディジタル信号に変換して上記受信メモリ部36に供給する受信信号A/D変換器62とを有している。
【0057】
図6は、高周波受信部34A,34Dの詳細機能を表す機能ブロック図である。この図6に示すように、高周波受信部34A,34Dは、受信アンテナ素子1A,1Dから供給される受信信号を上記同様PAAウェイト制御部46から設定される増幅率で増幅する受信信号増幅器59と、その受信信号増幅器59から出力される受信信号の周波数を局部発振器32から出力される局発信号の周波数だけ低くするダウンコンバータ61と、そのダウンコンバータ61によりダウンコンバートされた受信信号をディジタル信号に変換して上記受信メモリ部36に供給する受信信号A/D変換器63とを有している。
【0058】
図7は、受信ウェイト掛算部38の詳細機能を表す機能ブロック図である。この図7に示すように、受信ウェイト掛算部38は、受信メモリ部36から読み出される受信信号それぞれにPAAウェイト制御部46から供給される所定の受信PAAウェイトを掛算する複数(図7では4つ)の掛算器64a、64b、64cと、それら掛算器64a〜64dから出力される信号を合成してAM復調部40に供給する合成器66とを有している。ここで、上記掛算器64aが高周波受信部34Aに、掛算器64bが高周波送受信部34Bに、掛算器64cが高周波送受信部34Cに、掛算器64dが高周波受信部34Dに、それぞれ対応している。
【0059】
以上の構成の無線タグ通信装置100においては、中央制御部6が設定した送信PAAウェイトを順次変化させながらPAAウェイト制御部46に出力することによって送信時における最大指向性方向(以下、送信メインローブ方向という)を順次対応する角度に変化させ、2つの送受信アンテナ素子1B,1Cによる送信メインローブ方向を、上記送信PAAウェイトに対応する一つの方向のみ強くなるように保持しつつその方向を順次変化させる、いわゆるフェイズドアレイ制御を行うことができる。
【0060】
また、中央制御部6は送信時と受信時とで異なる通信電力を設定し、それぞれに対応する増幅制御信号(増幅率)がPAAウェイト制御部46から高周波送受信部34B,34Cに出力され、これに応じてそれら高周波送受信部34B,34Cの前述の送信信号増幅器54又は受信信号増幅器58で電波信号を増幅することで、アンテナユニット1からの有効通信距離(電波到達範囲の最大距離、電波受信可能範囲の最大距離;詳細は後述する)を送信時と受信時で個別に制御できるようになっている。また、前述したように高周波受信部34A,34Bの受信信号増幅器59においては、上記高周波送受信部34B,34Cの受信信号増幅器58が受信する時にPAAウェイト制御部46により設定される増幅率と同じ増幅率となるように制御され、結果として4つのアンテナ素子1A〜1Dから供給される受信信号がそれぞれ同じ増幅率で増幅される。
【0061】
ここで、上述したフェイズドアレイ制御のように指向性を持たせた場合(=指向性制御時)の電波通信の一般的な特性として、送信時及び受信時のどちらにおいても通信電力を大きく設定して電波信号を大きく増幅するほど、アンテナユニット1からの有効通信距離が長くなり、一方、通信電力を小さく設定して電波信号を小さく増幅するほど、アンテナユニット1からの有効通信距離が短くなる。
【0062】
また、同様に指向性制御実行時においては、アンテナ素子が多いほど半値角が狭くなるとともにアンテナユニット1からの有効通信距離が長くなり、逆にアンテナ素子が少ないほど半値角が広くなるとともにアンテナユニット1からの有効通信距離が短くなる性質がある。このため、上記構成のアンテナユニット1では2つのアンテナ素子(送受信アンテナ素子1B,1C)を使用する送信時の場合よりも4つのアンテナ素子(送受信アンテナ素子1B,1Cと受信アンテナ素子1A,1D)を使用する受信時の場合の方が容易に半値角を狭く絞ることができる。
【0063】
以上において、本実施形態の最も大きな特徴は、受信時における受信半値角を送信時における送信半値角より狭く絞ることで、受信時での電波受信可能範囲の最大距離を送信時での電波到達範囲の最大距離よりも大きくすることにある。以下、その詳細を順次説明する。
【0064】
図8は、上記構成の無線タグ通信装置100の中央制御部6によって実行される制御手順を表すフローチャートである。なお、このフローチャートの例では、指定した1つのタグIDに対応する無線タグTを探索対象としてその存在方向を探索する制御手順を表している。
【0065】
この図8において、特に図示しない操作手段またはPCなどの上位の制御手段により、タグIDの指定とそれに対応する無線タグTの探索の開始が指令されるとこのフローが開始される。
【0066】
まずステップS5において、探索対象の無線タグTが存在しているか否か(応答があったか否か)を示す応答フラグFを0にリセットし、次のステップS10へ移る。
【0067】
ステップS10では、指定タグIDを含む「Scroll ID」(指定したタグの応答を求めるコマンド)などのコマンドを信号処理回路3のコマンドビット列生成部20へ出力する。これにより、信号処理回路3において、入力したコマンドに対応するコマンドビット列が生成されて符号化部22により符号化され、その符号化情報が信号処理回路3のAM変調部24によりAM変調されて送信メモリ部26に記憶される。
【0068】
次にステップS15へ移り、送信PAAウェイトを送信開始時の初期値に設定する。この例では、送信時のフェイズドアレイ制御における送信メインローブ方向θtxを最初の−30°に設定し(後述の図10参照)、それに対応する送信PAAウェイトを算出し設定する。
【0069】
次にステップS20へ移り、送信PAAウェイトを信号処理回路3の送信ウェイト掛算部28に出力する。これにより、送信ウェイト掛算部28において送信メインローブ方向がθtx方向になるよう各送信信号の位相を制御し、各高周波送受信部34B,34Cが送信メモリ26に記憶されている送信信号を所定の増幅率で増幅し、実際に2つの送受信アンテナ素子1B,1Cから発信される送信信号(質問波)が合成されて、主に送信メインローブ方向θtxを中心とした電波到達範囲に向けて送信される。このときの増幅率と送信ウェイトによって電波到達範囲内の最大距離と送信半値角(後述の図11参照)が決定する。なお、この電波到達範囲については、無線タグTを起動させるために必要な電力供給を行える強さの電波が到達できる範囲とする。
【0070】
ここで、探索対象の無線タグTが上記発信された送信信号を受信した場合それに応答するリプライ信号(返答信号)が発信されるが、そのリプライ信号は4つのアンテナ素子(2つの送受信アンテナ素子1B,1Cと2つの受信アンテナ素子1A,1D)でそれぞれ受信される。このとき、各アンテナ素子1A〜1Dから受信されたリプライ信号は所定の増幅率で増幅され、受信メモリ36に記憶される。
【0071】
そして次のステップS100の探索演算処理により、受信メモリ36に記憶されている4つのリプライ信号に基づいてフェイズドアレイ制御の演算により無線タグTの存在方向を探索する。この例では、上記ステップS20で送信信号送信した際の送信メインローブ方向θtxを中心とした送信半値角範囲内で受信メインローブ方向θrxを3回変化させるよう演算した場合のそれぞれのリプライ信号の有無と受信信号強度を検出する(後述の図9、図10、図11参照)。
【0072】
次にステップS30へ移り、送信メインローブ方向θtxにこの例でのきざみ角である30°を加算するよう(後述の図10参照)送信PAAウェイトを更新し、ステップS35へ移る。
【0073】
ステップS35では、送信メインローブ方向θtxがこの例で最後に取るべき値である30°を超えているか否か、すなわち探索すべき全ての送信メインローブ方向θtxに対して探索が終了したか否かを判定する。なおこの判定は、送信PAAウェイトが送信メインローブ方向θtx=30°の場合に対応する値を超えているか否かで判定してもよい。送信メインローブ方向θtxが30°を超えていない場合、判定が満たされず、すなわちその時点の送信メインローブ方向θtxでも無線タグTの探索を行う必要があるとしてステップS20に戻り同様の手順を繰り返す。一方、送信メインローブ方向θtxが30°を超えている場合、判定が満たされ、すなわち探索が終了したとして次のステップS40へ移る。
【0074】
ステップS40では、応答フラグFが1となっているか否か、すなわち探索対象の無線タグTからのリプライ信号を受信してその存在が確認できたか否かを判定する(後述の図9におけるステップS120参照)。応答フラグFが1である場合、判定が満たされ、すなわち探索対象の無線タグTが存在していたとして次のステップS45へ移り、データベース5に記録されているリプライ信号の受信信号強度のうち最大強度に対応する受信メインローブ方向θrxを無線タグTの存在方向として表示部4に表示させ、このフローを終了する。一方、応答フラグFが1ではない場合(=0のままの場合)、判定が満たされず、すなわち探索対象の無線タグTが探索対象範囲に存在していなかったとしてステップS50へ移り、表示部4に無線タグTが存在していなかった旨の表示を行わせ、このフローを終了する。
【0075】
図9は、上記図8におけるステップS100の探索演算処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0076】
この図9において、まずステップS105において、受信PAAウェイトを初期値に設定する。この例では、その時点における送信メインローブ方向θtxから15°引いた値を最初の受信メインローブ方向θrxとして設定し(後述の図10参照)、それに対応する受信PAAウェイトを算出し設定する。
【0077】
次にステップS110へ移り、受信PAAウェイトを信号処理回路3の受信ウェイト掛算部38に出力する。これにより、受信ウェイト掛算部38が受信メモリ36に記憶されている4つのリプライ信号のそれぞれの位相を制御し、受信メインローブ方向θrxを中心とした電波受信可能範囲で受信した場合の受信信号として合成することができる。このときの受信信号増幅器58の増幅率と受信ウェイトによって電波受信可能範囲の最大距離と受信半値角(後述の図11参照)が決定する。そして、この受信信号がAM復調部40によりAM復調され、この復調化情報が信号処理回路3の復号部42により復号されて返答ビット列解釈部44により中央制御部6で判別可能なリプライ信号となって、中央制御部6に入力される。
【0078】
次にステップS115へ移り、入力されたリプライ信号が探索対象の無線タグTからのリプライ信号として正常な状態であるか否かを(例えばCRC符号等を用いた)公知の誤り検出の手法により判定する。入力されたリプライ信号が正常である場合、判定が満たされ、すなわち探索対象の無線タグTが検出されたとみなされて、次のステップS120へ移る。
【0079】
ステップS120では、探索対象の無線タグTの存在が確認されたことを示すよう応答フラグFを1に更新し、次のステップS125でその時点での受信メインローブ方向θrxとAM復調部40から得られるリプライ信号の受信信号強度をデータベース5に保存する(なお図3においてAM復調部40から中央制御部6へ受信信号強度を入力する信号線については図示省略している)。そしてステップS130へ移る。
【0080】
なお、一方、上記ステップS115の判定において、入力されたリプライ信号が正常でない場合、判定が満たされず、すなわち探索対象の無線タグTは検出されなかったとみなされて、そのままステップS130へ移る。
【0081】
ステップS130では、受信メインローブ方向θrxにこの例でのきざみ角である15°を加算するよう(後述の図10参照)受信PAAウェイトを更新し、ステップS135へ移る。
【0082】
ステップS135では、受信メインローブ方向θrxがこの例で送信メインローブ方向θtxに15°を加算した値を超えているか否か、すなわちこの探索演算処理で探索すべき全ての受信メインローブ方向θrxに対して探索演算が終了したか否かを判定する。なおこの判定は、受信PAAウェイトが受信メインローブ方向θrx=θtx+15°の場合に対応する値を超えているか否かで判定してもよい。受信メインローブ方向θrxがθtx+15°を超えていない場合、判定が満たされず、すなわちその時点での受信メインローブ方向θrxについても無線タグTの探索演算を行う必要があるとしてステップS110に戻り同様の手順を繰り返す。一方、受信メインローブ方向θrxがθtx+15°を超えている場合、判定が満たされ、すなわち探索演算が終了したとしてこのフローを終了する。
【0083】
図10は、上記図8、図9の制御手順により送信時の電波到達範囲と受信時の電波受信可能範囲の変化を概念的に表す図であり、図10(a)は送信メインローブ方向θtxが−30°の場合の例を表し、図10(b)は送信メインローブ方向θtxが0°の場合の例を表し、図10(c)は送信メインローブ方向θtxが30°の場合の例を表している。
【0084】
まず、アンテナユニット1全体の中央位置Oよりその正面方向をメインローブ方向の0°とする。そして、その0°から時計方向に向かう角度を正の角度、反時計方向に向かう角度を負の角度とする。そして、図8のフローにおいて、ステップS20〜ステップS35のループ中のフェイズドアレイ制御により送信メインローブ方向θtxを3通りに変化させるうち、最初の−30°の方向の場合には図10(a)中の破線部に表すような電波到達範囲Ht0で送信信号の送信が行われる。この時に、探索対象の無線タグTが電波到達範囲Ht0内に存在した場合、1回送信される送信信号に応答して無線タグTがリプライ信号を発信し、4つのアンテナ素子1A〜1Dがそれぞれ受信する。
【0085】
そして、このように送信メインローブ方向θtxが−30°の場合に行われる図9の探索演算処理のフローにおいて、ステップS110〜ステップS135のループ中では受信メインローブ方向θrxが順に−45°、−30°、−15°の3通りに変化し、これら受信メインローブ方向θrxに対してそれぞれフェイズドアレイ制御の演算により図10(a)中の点線部に表すような電波受信可能範囲Hr0,Hr1,Hr2が設定される。そして、上記4つのアンテナ素子1A〜1Dでそれぞれ受信した受信信号に基づいて、各電波受信可能範囲Hr0,Hr1,Hr2にそれぞれ対応したリプライ信号とその受信信号強度が演算される。
【0086】
また、送信メインローブ方向θtxを0°に設定した場合には、図10(b)中の破線部に表すような電波到達範囲Ht1で送信信号の送信が行われ、それに対応して受信メインローブ方向θrxが順に−15°、0°、15°の3通りに変化し、これら受信メインローブ方向θrxに対してそれぞれフェイズドアレイ制御の演算により図10(b)中の点線部に表すような電波受信可能範囲Hr2,Hr3,Hr4が設定される。
【0087】
また、送信メインローブ方向θtxを30°に設定した場合には、図10(c)中の破線部に表すような電波到達範囲Ht2で送信信号の送信が行われ、それに対応して受信メインローブ方向θrxが順に15°、30°、45°の3通りに変化し、これら受信メインローブ方向θrxに対してそれぞれフェイズドアレイ制御の演算により図10(c)中の点線部に表すような電波受信可能範囲Hr4,Hr5,Hr6が設定される。
【0088】
なお、送信メインローブ方向θtxがそれぞれ異なる図10(a),図10(b),図10(c)の場合においても、受信メインローブ方向θrxが一致する場合には略同一の電波受信可能範囲が設定される。例えば図10(a)と図10(b)のそれぞれの場合で、同じ受信メインローブ方向θrx=−15°に対応する電波受信可能範囲Hr2が同一となり、又は図10(b)と図10(c)のそれぞれの場合で、同じ受信メインローブ方向θrx=15°に対応する電波受信可能範囲Hr4が同一となる。
【0089】
なお、上記フェイズドアレイ制御による各メインローブ方向θtx,θrxの変化は、上記のように角度の小さい方向順に変化させるだけでなく、角度の大きい方向順やランダムに変化させてもよい。
【0090】
上述したように、実際に送信が行われた一つの電波到達範囲に対して3つの電波受信可能範囲が設定されるが、本実施形態におけるそれら電波到達範囲及び電波受信可能範囲の配置関係について、以下に図11を参照しつつ説明する。
【0091】
図11は、一例として送信メインローブ方向θtxが0°である場合の電波到達範囲Ht1と電波受信可能範囲Hr2,Hr3,Hr4の配置関係を表す図であり、図11(a)は電波到達範囲Ht1と電波受信可能範囲Hr2,Hr3,Hr4を重ね合わせて表し、図11(b)は電波到達範囲Ht1だけを表し、図11(c)は受信メインローブ方向θrxが−15°である場合の電波受信可能範囲Hr2だけを表し、図11(d)は受信メインローブ方向θrxが0°である場合の電波受信可能範囲Hr3だけを表し、図11(e)は受信メインローブ方向θrxが15°である場合の電波受信可能範囲Hr4だけを表している。
【0092】
まず図11(a)は、上記図10(b)中から送信時における一つの電波到達範囲Ht1(破線部)と受信時における3つの電波受信可能範囲Hr2,Hr3,Hr4(点線部)だけを抜き出して表しており、各範囲はアンテナユニット(特に図示せず)の中央位置Oから有効通信距離である最大距離Lt,Lrの長さで放射状に伸びるように展開し、さらに互いに所定範囲で重なり合う配置となっている。
【0093】
そのうち図11(b)に示す電波到達範囲Ht1については、送信メインローブ方向θtx=0°に向けて伸びるよう展開しており、そのうち本発明において実際に通信が有効に行われる範囲とみなせるのは、送信メインローブ方向θtxを中心とした送信半値角Ktの範囲の領域(図11(b)中斜線部分;以下、送信半値角領域という)である。そして本実施形態においては、中央位置Oからの最大距離Ltが電波法上の規定距離以内に設定されており、またこれに対応する送信半値角Ktが30°より少し大きくなっている。
【0094】
なお前述したように、この電波到達範囲の最大距離Ltと送信半値角Ktは相関関係にあり、有効アンテナ素子数および高周波送信部での増幅率を変えることで最大距離Ltと送信半値角Ktの両方を同時に変化させることができるが、本実施形態では、フェイズドアレイ制御により最大距離Ltと送信半値角Ktをそれぞれ略一定に維持したまま(送信半値角領域の形状を略維持したまま)、送信メインローブ方向θtxのみを変化させるように各送信ウェイトを設定している(図8のフローのステップS20)。
【0095】
また図11(a)〜図11(c)にそれぞれ示す電波受信可能範囲Hr2,Hr3,Hr4において、本発明ではそれぞれの受信半値角Krが上記送信半値角Ktより小さく(30°より小さい)設定されており、すなわち受信半値角領域は送信半値角領域よりも細長い形状となっている。また前述したように、送信時に用いる送信アンテナ素子1B,1Cの数が2本で、受信時に用いる受信アンテナ素子1A,1Dの数の方が4本で多いことからも、受信半値角領域は送信半値角領域よりも細長い形状にしやすくなっている。そして、上記電波到達範囲Ht1と同様にフェイズドアレイ制御により最大距離Lrと送信半値角Krを一定に維持したまま、受信メインローブ方向θrxのみを変化させて各受信半値角領域を設定するよう演算している(図9のフローのステップS110)。
【0096】
そして図11(a)に示されるように、各受信メインローブ方向θrx=−15°,0°,15°はいずれも電波到達範囲Ht1内を通過する方向であり、対応する各受信半値角領域はいずれも送信半値角領域と部分的に重なる配置関係となっている。特に本実施形態においては各受信メインローブ方向θrx=−15°,0°,15°が送信半値角Ktの角度範囲内に収まっている。
【0097】
なお、以上のような1つの送信半値角領域とそれに対応する3つの受信半値角領域との間の配置関係は、他の送信メインローブ方向θtx=−30°,30°の場合(図10(a)、図10(c))でも同様である。
【0098】
以上において、2つの高周波送受信部34B,34Cと2つの高周波受信部34A,34Dと受信ウェイト掛算部38とPAAウェイト制御部46とが、送受信アンテナ素子1B,1C及び受信アンテナ素子1A,1Dの受信時における受信半値角Krを、送受信アンテナ素子1B,1Cの送信時における送信半値角Ktよりも小さくし、送受信アンテナ素子1B,1C及び受信アンテナ素子1A,1Dによる受信メインローブ方向θrxが送受信アンテナ素子1B,1Cの電波到達範囲Ht0,Ht1,Ht2のうちの所定範囲内となるように受信指向性を制御する受信制御手段を構成する。
【0099】
また、2つの高周波送受信部34B,34Cと送信ウェイト掛算部28とPAAとウェイト制御部46とが、送受信アンテナ素子1B,1Cによる送信メインローブ方向θtxを順次変化させるように、送信指向性を制御する送信制御手段を構成する。
【0100】
以上のように構成した本実施形態においては、2つの高周波送受信部34B,34Cと2つの高周波受信部34A,34Dと受信ウェイト掛算部38とPAAウェイト制御部46が、図9のステップS110の手順でフェイズドアレイ制御の演算により受信に使用される全ての送受信アンテナ素子1B,1C及び受信アンテナ素子1A,1Dによる受信指向性を制御し、その受信半値角Krを、送受信アンテナ素子1B,1Cの送信半値角Ktより小さくなるようにする。受信半値角Krをこのようにより狭く絞ることで、全てのアンテナ素子1A〜1Dによる電波受信可能範囲の最大距離Lrを、送受信アンテナ素子1B,1Cによる電波到達範囲の最大距離Ltよりも大きくすることができる。さらにこのとき、高周波送受信部34B,34Cと高周波受信部34A,34Dと受信ウェイト掛算部38とPAAウェイト制御部46が、全てのアンテナ素子1A〜1Dの受信メインローブ方向θrxを、送信時の電波到達範囲Ht0,Ht1,Ht2の所定範囲内に位置させることで、送受信アンテナ素子1B,1C及び受信アンテナ素子1A,1Dの電波受信可能範囲Hr0〜Hr6を、少なくとも送受信アンテナ素子1B,1Cの電波到達範囲Ht0,Ht1,Ht2の当該所定範囲を含み、その所定範囲の最大距離Ltよりも遠い範囲まで到達させることができる。
【0101】
この結果、少なくとも所定範囲に存在する無線タグTのリプライ信号については、その所定範囲よりも遠い範囲までカバーできる受信特性の送受信アンテナ素子1B,1C及び受信アンテナ素子1A,1Dにより、もれなく確実に受信することができる。したがって、実質的に送受信アンテナ素子1B,1Cによる送信可能範囲よりも送受信アンテナ素子1B,1C及び受信アンテナ素子1A,1Dの受信可能範囲を広く設定することが可能となり、情報送受信の確実性・信頼性を向上することができる。
【0102】
特に、送受信ともに通信可能範囲を広げようとする場合には、送信側における法的規制の存在により送信電力が制限されるため十分に当該範囲を広げられず、範囲境界位置付近に位置する無線タグTとの情報送受信の確実性に乏しいという制約がある。これに対し本実施形態においては、上記のようにして受信側の通信可能範囲を送信側の通信可能範囲よりも大きくしていることにより、上記送信側における法的規制の制約の下でも、受信側の通信範囲はそれを超えて大きく設定することができ、上記範囲境界位置付近の無線タグTとも確実に情報送受信を行うことができる。
【0103】
また、電波到達範囲Ht0,Ht1,Ht2よりも電波受信可能範囲Hr0〜Hr6が広く設定されているため、複数の無線タグ通信装置100を配置する場合でも、それぞれの電波受信可能範囲Hr0〜Hr6どうしを重ねつつ電波到達範囲Ht0,Ht1,Ht2どうしの重なりを回避するレイアウトで無線タグ通信装置100を配置することが容易となる。このような配置レイアウトで複数の無線タグ通信装置100を設置することにより、電波受信可能範囲Hr0〜Hr6を広く確保して無線タグTの探索のもれを少なくできるとともに電波到達範囲Ht0,Ht1,Ht2どうしの重なりによる混信を回避して確実に無線タグTとの正常な通信を行うことができる。
【0104】
また、この実施形態では特に、2つの高周波送受信部34B,34Cと送信ウェイト掛算部28とPAAウェイト制御部46が図8のステップS20の手順でフェイズドアレイ制御により送受信アンテナ素子1B,1Cによる送信メインローブ方向θtxを順次変化させるよう制御することで、より広い範囲にわたってまんべんなく送信した電波を到達させ、電波到達範囲Ht0,Ht1,Ht2を大きくすることができる。
【0105】
また、この実施形態では特に、送信メインローブ方向θtxを順次変化させながら、送信半値角範囲内で全てのアンテナ素子1A〜1Dの受信メインローブ方向θrxを演算により順次変化させていくとき、順次変化する送信メインローブ方向θtxの1つにおいて順次変化する受信メインローブ方向θrxの1つと、別の送信メインローブ方向θtxにおいて順次変化する受信メインローブ方向θrxの1つとが略同一の方向となるよう制御している。これは、本実施形態の例では、図10(a)及び図10(b)における−15°、図10(b)及び図10(c)における15°が相当する。当該略同一の方向となる送信メインローブ方向θtxと受信メインローブ方向θrxについては、例えば指向性制御における位相制御因子(この例ではPAAウェイト)等の制御要素についても共有することができるので、装置に備えられた中央制御部6の制御負担や当該位相制御因子を記憶するROMなどのメモリの容量負担等を軽減することができる。
【0106】
上記のことについて図12を参照して具体的に説明する。図12は、中央制御部6のROMに予め記憶される各PAAウェイトのテーブルを表す図であり、図12(a)は送信メインローブ方向θtxの値と各送受信アンテナ素子1B,1Cとに関連付けて記憶される送信PAAウェイトのテーブルであり、図12(b)は受信メインローブ方向θrxの値と各送受信アンテナ素子1B,1C及び各受信アンテナ素子1A,1Dとに関連付けて記憶される送信PAAウェイトのテーブルである。
【0107】
本実施形態の例では、図10(a)及び図10(b)における−15°、図10及び図10(c)における15°でそれぞれ受信メインローブ方向θrxが一致するため、これらの場合に対応して受信時に使用する受信PAAウェイトは互いに同じ値(共通)となる(図12(b)中の太線枠の値)。これにより、受信PAAウェイトのテーブル中の容量負担を軽減することができる効果がある。
【0108】
また、この実施形態では特に、送信メインローブ方向θtxを順次変化させながら、送信半値角範囲内で全てのアンテナ素子1A〜1Dの受信メインローブ方向θrxを演算により順次変化させていくとき、順次変化する送信メインローブ方向θtxの1つと、順次変化する受信メインローブ方向θrxの1つとが略同一の方向となるよう制御している。これは、本実施形態の例では、図10(a)における−30°、図10(b)における0°、図10(c)における30°が相当する。一般に、送信メインローブ方向θtxと受信メインローブ方向θrxが一致した際には最も送受信感度が高くなるため、上記3つの場合には当該メインローブ方向を用いることで通信距離をより長くすることができるという効果がある。
【0109】
また、この実施形態では特に、4つ備えるアンテナ素子1A〜1Dのうち2つを送受信兼用の送受信アンテナ素子1B,1Cとして共有することにより、例えば送信アンテナ素子と受信アンテナ素子とをそれぞれ別個のアンテナ素子として構成する場合に比べ、アンテナ構成を簡素化することができる。
【0110】
なお、上記本実施形態が備えるアンテナユニット1は、送受信兼用の送受信アンテナ素子1B,1Cと受信専用の受信アンテナ素子1A,1Dをそれぞれ2本ずつの組合せで設けた構成となっているが、本発明はこのようなアンテナ素子の本数の組合せに限られるものではなく、例えば特に図示しないが受信アンテナ素子は2本のままで送受信アンテナ素子を3本設ける組合せで構成してもよい。この場合でも3本の送受信アンテナ素子を内側に平行に配置し、さらに他の2本の受信アンテナ素子を上記送受信アンテナ素子の列の外側を挟んで平行に配置し、全て同じ所定の間隔で並設するのが望ましい。このようにアンテナ素子の本数を増やすことで、容易に送信半値角Kt及び受信半値角Krを小さくすることができ(各半値角領域を細長くできる)、無線タグTの存在方向の探索精度を向上させることができる。
【0111】
さらに、本発明は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0112】
(1)送信アンテナ素子と受信アンテナ素子をそれぞれ別個に設ける場合
上記実施形態では、複数の送信アンテナ素子及び複数の受信アンテナ素子のうち一部を送受信兼用の送受信アンテナ素子として共有する構成としていたが、本発明はこれに限らず、全ての送信アンテナ素子と受信アンテナ素子をそれぞれ別個に構成してもよい。
【0113】
本変形例の構成は、上記実施形態の構成とアンテナユニットの周辺の構成のみが異なるだけであり、以下その相違する構成のみを説明し、同等の構成については同じ符号を付して適宜説明を省略する(以下の各変形例についても同様)。
【0114】
図13は、本変形例の場合の無線タグ通信装置のうちアンテナユニットの周辺の詳細構成を表す機能ブロック図である。なお、アンテナユニット201は各アンテナ素子201A〜201F(いずれも直線状のダイポールアンテナ)の長手方向に直交する断面で表している。この図13において、アンテナユニット201は2本の送信アンテナ素子201A,201Bと4本の受信アンテナ素子201C,201D,201E,201Fを備えており、4本の受信アンテナ素子201C〜201Fが所定の間隔で平行に配置され、2本の送信アンテナ素子201A,201Bどうしも同じ所定の間隔で平行でまた受信アンテナ素子201C〜201Fのうちの内側2本の受信アンテナ素子201D,201Eともそれぞれ平行となる配置で並設固定されている。
【0115】
そして各送信アンテナ素子201A,201Bはそれぞれ高周波送信部234A,234Bに接続されており、これら高周波送信部234A,234Bは送信ウェイト掛算部28から出力される送信信号を局部発振器32から出力される局発信号に応じてアップコンバートして所定の増幅率で増幅し各送信アンテナ素子201A,201Bに出力している。また、各受信アンテナ素子201C〜201Fは、それぞれ上記実施形態の高周波受信部34A,34Dと同等の構成の高周波受信部234C〜234Fに接続されている。
【0116】
図14は、高周波送信部234A,234Bの詳細機能を表す機能ブロック図である。この図14に示すように、高周波送信部234A,234Bは、送信ウェイト掛算部28から供給される送信信号をアナログ信号に変換する送信信号D/A変換器50と、その送信信号D/A変換器50によりアナログ変換された送信信号の周波数を上記局部発振器32から出力される局発信号の周波数だけ高くするアップコンバータ52と、そのアップコンバータ52によりアップコンバートされた送信信号をPAAウェイト制御部46から設定される増幅率で増幅する送信信号増幅器54とを有している。
【0117】
なお、中央制御部6が実施する制御手順についても、上記実施形態と同じ図8、図9のフローチャートに従って同様の制御を行うことができる。
【0118】
以上のように構成した本変形例においても、上記実施形態と同様に送信及び受信におけるフェイズドアレイ制御によって無線タグTの探索を行うことができ、情報送受信の確実性・信頼性を向上することができる。さらに送信アンテナ素子201A,201Bと受信アンテナ素子201C〜201Fとをそれぞれ別個のアンテナ素子として構成したことで、上記実施形態のように一部のアンテナ素子を共有化する場合に比べ、装置に設けられる中央制御部6及びPAAウェイト制御部46による制御を簡素化して動作の高速化を図ることができるとともに、相互の影響や干渉等を防止し通信距離や通信精度を向上することができる。
【0119】
(2)送信アンテナ素子と受信アンテナ素子を別個に直列配置で設ける場合
上記第1の変形例では、別個に構成した複数の送信アンテナ素子201A,201Bと複数の受信アンテナ素子201C〜201Fをそれぞれ異なる列で配置したが、本発明はこれに限られず、全てのアンテナ素子を直列に配置して設けてもよい。
【0120】
図15は、本変形例の場合の無線タグ通信装置のうちアンテナユニットの周辺の詳細構成を表す機能ブロック図である。なお、アンテナユニット301は各アンテナ素子301A〜301Gの長手方向に直交する断面で表している。この図15において、アンテナユニット301は3本の送信アンテナ素子301A,301B,301Cと4本の受信アンテナ素子301D,301E,301F,301Gを備えており、4本の受信アンテナ素子301D〜301Gが所定の間隔で平行に配置され、それら隣り合う受信アンテナ素子どうしの間の中間にそれぞれ送信アンテナ素子301A,301B,301Cが配置され、全てのアンテナ素子301A〜301Gが平行かつ同一平面上に位置する配置で並設固定されている。
【0121】
以上のように構成した本変形例によっても、上記第1の変形例と同様の効果を得る。
【0122】
(3)送信アンテナ素子と受信アンテナ素子とが互いの方向において利得が略最小となる領域に位置する場合
上記第2の変形例では、別個に構成した複数の送信アンテナ素子301A〜301Cと複数の受信アンテナ素子301D〜301Gが全て直列に配置したが、本発明はこれに限られず、送信アンテナ素子と受信アンテナ素子とを互いの軸線延長方向に略沿った方向の領域に配置してもよい。
【0123】
図16は、本変形例の場合の無線タグ通信装置のうちアンテナユニットの周辺の詳細構成を表す機能ブロック図である。なお、アンテナユニット401は各アンテナ素子401A〜401Fを配置した同一平面の正面から見て表している。この図16において、アンテナユニット401は2本の送信アンテナ素子401A,401Bと4本の受信アンテナ素子401C,401D,401E,401Fを備えており、4本の受信アンテナ素子401C〜401Fが所定の間隔で平行に配置され、それらのうちの内側の2本の受信アンテナ素子401D,401Eの軸線延長方向に沿った方向の領域にそれぞれ送信アンテナ素子401A,401Bを平行に配置され、全てのアンテナ素子401A〜401Fが平行かつ同一平面上に位置する配置で並設固定されている。
【0124】
このような配置構成において、送信アンテナ素子401A,401Bからの信号放射パターン(放射指向性;素子401のみ例示して図示)について、受信アンテナ素子401C〜401Fは送信アンテナ素子401A,401Bの指向性の範囲R外であってほぼヌル方向Nにあることになる。また逆に、特に図示しないが受信アンテナ素子401C〜401Fからの信号放射パターンと送信アンテナ素子401A,401Bとの位置関係についても同様の関係となる。
【0125】
以上のように構成した本変形例によれば、上記第1の変形例と同様の効果が得られると共に、さらに送信アンテナ素子401A,401B及び受信アンテナ素子401C〜401Fを互いにの方向において利得がほとんどない(送信アンテナ素子401A,401Bと受信アンテナ素子401C〜401Fのそれぞれ互いの方向からの信号の電界強度が小さくなる)いわゆるヌル領域に配置することになり、送信アンテナ素子401A,401Bからの送信時における受信アンテナ素子401C〜401Fからの影響や干渉、受信アンテナ素子401C〜401Fでの受信時における送信アンテナ素子401A,401Bからの影響や干渉等を防止し、通信精度を向上することができる。
【0126】
なお、以上で用いた「Scroll ID」信号等は、EPC globalが策定した仕様に準拠しているものとする。EPC globalは、流通コードの国際機関である国際EAN協会と、米国の流通コード機関であるUniformed Code Council(UCC)が共同で設立した非営利法人である。なお、他の規格に準拠した信号でも、同様の機能を果たすものであればよい。
【0127】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0128】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の一実施形態の適用対象である無線タグ通信装置の全体概略を表すシステム構成図である。
【図2】無線タグに備えられた無線タグ回路素子の機能的構成の一例を表すブロック図である。
【図3】無線タグ通信装置の詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図4】送信ウェイト掛算部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図5】高周波送受信部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図6】高周波受信部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図7】受信ウェイト掛算部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図8】無線タグ通信装置の中央制御部によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図9】図8におけるステップS100の探索演算処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図10】送信時の電波到達範囲と受信時の電波受信可能範囲の変化を送信メインローブ方向別で概念的に表す図である。
【図11】送信メインローブ方向θtxが0°である場合の電波到達範囲と電波受信可能範囲の配置関係を表す図である。
【図12】中央制御部のROMに予め記憶される送信PAAウェイト及び受信PAAウェイトの各テーブルを表す図である。
【図13】送信アンテナ素子と受信アンテナ素子をそれぞれ別個に設ける変形例におけるアンテナユニットの周辺の詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図14】高周波送信部の詳細機能を表す機能ブロック図である。
【図15】送信アンテナ素子と受信アンテナ素子を別個に直列配置で設ける変形例におけるアンテナユニットの周辺の詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図16】送信アンテナ素子と受信アンテナ素子とが互いに放射指向性が略最小となる領域に位置する変形例におけるアンテナユニットの周辺の詳細構成を表す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0130】
1 アンテナユニット
1A 受信アンテナ素子(受信アンテナ手段)
1B 送受信アンテナ素子(送信アンテナ手段、受信アンテナ手段、送受信兼用のアンテナ素子)
1C 送受信アンテナ素子(送信アンテナ手段、受信アンテナ手段、送受信兼用のアンテナ素子)
1D 受信アンテナ素子(受信アンテナ手段)
2 高周波回路
3 信号処理回路
4 表示部
5 データベース
6 中央制御部
28 送信ウェイト掛算部(送信制御手段)
34A 高周波受信部(受信制御手段)
34B 高周波送受信部(受信制御手段、送信制御手段)
34C 高周波送受信部(受信制御手段、送信制御手段)
34D 高周波受信部(受信制御手段)
38 受信ウェイト掛算部(受信制御手段)
46 PAAウェイト制御部(受信制御手段、送信制御手段)
100 無線タグ通信装置
T 無線タグ
To 無線タグ回路素子
Ht 電波到達範囲
Hr 電波受信可能範囲
Kt 送信半値角
Kr 受信半値角
Lt 電波到達範囲の最大距離
Lr 電波受信可能範囲の最大距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の情報を記憶するIC回路部及びこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナを備えた無線タグ回路素子に対し、少なくとも搬送波を含む信号を非接触で送信し、前記IC回路部にアクセスを行う送信アンテナ手段と、
この送信アンテナ手段により送信された前記信号に応じて前記IC回路部より返信された返答信号を非接触で受信する受信アンテナ手段と、
この受信アンテナ手段の受信時における受信半値角を前記送信アンテナ手段の送信時における送信半値角よりも小さくし、前記受信アンテナ手段によるメインローブ方向が前記送信アンテナ手段の電波到達範囲のうちの所定範囲内となるように、前記受信アンテナ手段を制御する受信制御手段と
を有することを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線タグ通信装置において、
前記受信制御手段は、前記所定範囲内として、前記受信アンテナ手段による受信メインローブ方向が前記送信半値角範囲内となるように、前記受信アンテナ手段を制御することを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項3】
請求項2記載の無線タグ通信装置において、
前記受信制御手段は、前記送信半値角範囲内で前記受信メインローブ方向を順次変化させるように、前記受信アンテナ手段を制御することを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項4】
請求項3記載の無線タグ通信装置において、
前記送信アンテナ手段による送信メインローブ方向を順次変化させるように、当該送信アンテナ手段を制御する送信制御手段を設けたことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項5】
請求項4記載の無線タグ通信装置において、
前記送信制御手段が前記送信アンテナ手段の前記送信メインローブ方向を順次変化させながら、前記受信制御手段が前記送信半値角範囲内で前記受信アンテナ手段の前記受信メインローブ方向を順次変化させていくとき、
前記順次変化する前記送信メインローブ方向の1つと、前記順次変化する前記受信メインローブ方向の1つとが略同一の方向となるように、前記送信制御手段及び前記受信制御手段がそれぞれ制御を行うことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項6】
請求項4記載の無線タグ通信装置において、
前記送信制御手段が前記送信アンテナ手段の前記送信メインローブ方向を順次変化させながら、前記受信制御手段が前記送信半値角範囲内で前記受信アンテナ手段の前記受信メインローブ方向を順次変化させていくとき、
前記送信メインローブ方向の1つにおいて前記順次変化する前記受信メインローブ方向の1つと、前記送信メインローブ方向の他の1つにおいて前記順次変化する前記受信メインローブ方向の1つとが、略同一の方向となるように、前記送信制御手段及び前記受信制御手段がそれぞれ制御を行うことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の無線タグ通信装置において、
前記送信アンテナ手段は、複数の送信用アンテナ素子を備えたアレイ型の送信アンテナであり、
前記受信アンテナ手段は、複数の受信用アンテナ素子を備えたアレイ型の受信アンテナである
ことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項8】
請求項7記載の無線タグ通信装置において、
前記受信アンテナの前記受信用アンテナ素子の数を、前記送信アンテナの前記送信用アンテナ素子の数よりも多くしたことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項9】
請求項8記載の無線タグ通信装置において、
前記受信アンテナは、4つの前記受信用アンテナ素子を備えており、
前記送信アンテナは、2つの前記送信用アンテナ素子を備えている
ことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか1項記載の無線タグ通信装置において、
前記複数の送信用アンテナ素子及び前記複数の受信用アンテナ素子のうち、少なくとも一部を送受信兼用のアンテナ素子としたことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項11】
請求項7乃至9のいずれか1項記載の無線タグ通信装置において、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとを、それぞれ別個のアンテナとして構成したことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項12】
請求項11記載の無線タグ通信装置において、
前記送信用アンテナ素子と前記受信用アンテナ素子とを、互いに放射指向性が略最小となる領域に位置するように、配置したことを特徴とする無線タグ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−219927(P2007−219927A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40935(P2006−40935)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】