説明

無線データ通信モジュール

【課題】2つのアンテナを近接配置してもその間の相関係数を低減できる無線データ通信モジュールを提供する。
【解決手段】無線データ通信モジュール100は、1つの同一共振周波数で動作する微小アンテナ110とMSA120からなるマルチアンテナと、GNDパターン135を有するモジュール基板130を備えている。MSA120がモジュール基板130の長手方向と直交する幅方向に共振するように形成され、微小アンテナ110による放射に主として寄与する電流がGNDパターン135の長手方向に流れるようにすることで、微小アンテナ110による共振方向がMSA120による共振方向と直交するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの同一周波数で動作する2つのアンテナからなるマルチアンテナを備えた無線データ通信モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線データ通信の高速大容量通信のニーズに対応して、WLAN(IEEE802.11n)、WiMax、LTE等の通信規格が順次導入されている。そのような中で、大容量通信の主要技術の一つとして、通信品質や伝送容量を向上させるために、送信側、受信側とも同じ周波数帯に対して複数のアンテナを用いて通信を行うMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)と呼ばれる技術が重要となっている。
【0003】
MIMOを適用するためには、複数のアンテナが同じ周波数帯の別々の信号をそれぞれ受信するようにアンテナ間の相関を低く(相関係数を小さく)保つことが重要である。一般に相関係数は、それぞれのアンテナ間の距離を十分に大きくすることで低減することができ、例えば2分の1波長程度離すのが理想的である。しかし、各種情報通信端末に搭載するためには、複数のアンテナを筺体内の限られたスペース内に収納しなければならず、アンテナ間の距離を十分に大きくするのは困難となる。その結果、アンテナ間の相関が高くなってしまい、期待される伝送速度が得られないといった問題がある。
【0004】
特に、LTEでは700MHz帯や800MHz帯を含めて導入されることが検討されており、このような周波数領域では波長が300〜400mm程度となる。そのため、複数のアンテナを端末筺体内に収納すると、アンテナ間の距離が波長に比べて非常に小さくなり、相関を低くするのが極めて困難になってしまう。そこで、アンテナ間距離を大きくすることなく相関を低くするための技術開発が強く望まれている。
【0005】
上記のような課題に対し、例えば特許文献1には、図7に示すような無線端末装置の技術が記載されている。特許文献1に記載の無線端末装置900では、筐体901にアンテナ素子902−1、902−2、902−3が立設されており、さらに、アンテナ素子間の相関を低減するために反射板903が設けられている。反射板903は、アンテナ素子902−1、902−2、902−3の間を遮る。アンテナ素子902−1、902−2、902−3及び反射板903は、それぞれ筺体901の上面部に垂直に設置され、反射板903の高さはアンテナ素子902−1、902−2、902−3の高さより高い。アンテナ素子902−1、902−2、902−3は、相互の距離が大きくなるように設置され、反射板903は、各アンテナ素子902−1、902−2、902−3との距離が均等で、かつ大きくなるように設置される。
【0006】
また特許文献2には、図8に示すような無給電素子を備えたマルチアンテナの技術が記載されている。特許文献2に記載のマルチアンテナ910は、複数の給電点911を有する回路基板914と、一端が開放され他端が給電点にそれぞれ接続された複数(2つ)の給電素子912と、一端が開放され他端が回路基板914に接続された単数または複数の無給電素子913とを備え、給電素子912及び無給電素子913は使用周波数帯の波長に換算して0.2波長乃至0.3波長の長さの素子長を有し、かつ無給電素子913が任意の上記給電点近傍において回路基板914に接続される。
【0007】
さらに、特許文献3には、図9に示すようなアンテナ装置の技術が記載されている。特許文献3に記載のアンテナ装置920は、誘電体からなり一方主面に接地電極922aを形成したL字状の基体922に、第1の放射電極923aと第1の接続電極923bと給電電極923cからなる逆Fアンテナ923と、第2の放射電極924aと第2の接続電極924bからなるマイクロストリップアンテナ924を、マイクロストリップアンテナ924の第2の放射電極924aの開放端を逆Fアンテナ923の給電電極923cに近接させ、第1および第2の放射電極923a及び924aの開放端と接地端を結ぶ線を略90度で交差するように配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−251682号公報
【特許文献2】特開2008−17047号公報
【特許文献3】特開1999−312923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の技術では以下のような問題があった。アンテナ間の相関を低減するために、特許文献1に記載の無線端末装置ではアンテナ間に反射板を配置した構成としており、特許文献2に記載のマルチアンテナでは1つ以上の無給電素子を配置した構成としている。このように、アンテナ以外に別の構成部材を追加するものでは、本来の小型化の要求に反して、端末が大型化するとともにコストアップの要因となる。また、特許文献3に記載のアンテナ装置では、共振方向を90°ずらす構成としているが、ここで用いられている2種のアンテナはそれぞれ異なる周波数帯に対応するものであり,同一周波数で用いるMIMO対応とはなっていない。また、このような構成ではアンテナ部分の寸法が非常に大きくなってしまう。
【0010】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、2つのアンテナを近接配置してもその間の相関係数を低減できるマルチアンテナを備えた無線データ通信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線データ通信モジュールの第1の態様は、少なくとも1つの同一周波数で動作する2つのアンテナからなるマルチアンテナと、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)通信機能を有するモジュール基板と、を備えた無線データ通信モジュールであって、前記モジュール基板は、長手方向の一端に切欠き部が形成されたGNDパターン(グランドパターン)と、少なくとも1つが前記切欠き部周辺に配置された2つの給電点と、を備え、前記2つのアンテナの一方は、前記切欠き部に配置された一方の前記給電点に接続される給電端子と、略線状の放射導体と、を備え、前記放射導体の長手方向の長さが前記同一周波数に対応する波長の4分の1以下に小型化されて前記切欠き部に配置される微小アンテナであり、前記2つのアンテナの他方は、前記2つの給電点の他方に接続される別の給電端子と、実質的に前記GNDパターンの上方に配置されて動作する略板状の放射導体と、を備えて共振方向が前記モジュール基板の長手方向に対して略垂直となるマイクロストリップアンテナであり、前記微小アンテナの放射に寄与する主要な電流が前記GNDパターンの長手方向に流れて共振方向が前記マイクロストリップアンテナの共振方向と略直交することを特徴とする。
【0012】
本発明の無線データ通信モジュールの他の態様は、前記微小アンテナの長手方向の長さは、前記同一周波数に対応する波長の10分の1以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の無線データ通信モジュールの他の態様は、前記他方の給電点は、前記切欠き部に配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の無線データ通信モジュールの他の態様は、外部の情報処理端末に接続するためのコネクタをさらに備え、前記モジュール基板は、前記コネクタに接続されるコネクタ接続端子を長手方向の前記切欠き部とは反対側に備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明の無線データ通信モジュールの他の態様は、前記GNDパターンは、前記コネクタを介して前記情報処理端末のグランドに接続されることを特徴とする。
【0016】
本発明の無線データ通信モジュールの他の態様は、前記切欠き部に接地点がさらに設けられ、前記微小アンテナは、前記接地点に接続される接地端子をさらに備えた逆Fアンテナであることを特徴とする。
【0017】
本発明の無線データ通信モジュールの他の態様は、前記マイクロストリップアンテナは、前記モジュール基板及び前記GNDパターンを両面から覆うモジュール筺体の裏面に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、2つのアンテナを近接配置してもその間の相関係数を低減できる無線データ通信モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の無線データ通信モジュールの概略構成を示す斜視図である。
【図2】微小アンテナとMSAのそれぞれで放射に主として寄与する電流の流れを模式的に示す説明図である。
【図3】従来及び第1実施形態の無線データ通信モジュールの平面図である。
【図4】従来及び第1実施形態の無線データ通信モジュールのそれぞれの2つのアンテナの電界強度を示す図である。
【図5】従来及び第1実施形態の無線データ通信モジュールのそれぞれの周波数に対する放射効率を示す図である。
【図6】従来及び第1実施形態の無線データ通信モジュールのそれぞれの相関係数を示す図である。
【図7】従来の複数のアンテナと反射板を備えた無線端末装置の構成を示す斜視図である。
【図8】従来の複数のアンテナと無給電素子を備えたマルチアンテナの構成を示す斜視図である。
【図9】従来の複数のアンテナとL字状の基体を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態における無線データ通信モジュールについて、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0021】
本発明の第1の実施形態に係る無線データ通信モジュールを図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の無線データ通信モジュール100の概略構成を示す斜視図である。同図(a)は、無線データ通信モジュール100を一方から見たときの斜視図であり、同図(b)は無線データ通信モジュール100を同図(a)とは反対側の他方から見たときの斜視図である。
【0022】
無線データ通信モジュール100は、2つのアンテナ110、120を有するマルチアンテナとモジュール基板130を備えており、モジュール筺体101の内部に収納されている。アンテナ110と120は、少なくとも1つの同一共振周波数で動作するMIMO対応のマルチアンテナを構成している。以下では、1つの同一共振周波数に対応する自由空間波長をλとする。
【0023】
モジュール基板130には、一方の面の長手方向の一端に第1給電点131及び第2給電点132が設けられ、同じ面上にGNDパターン(グランドパターン)135が形成されている。GNDパターン135は、モジュール基板130の一方の面のほぼ全面に形成されており、その長手方向がモジュール基板130の長手方向に一致する。但し、第1給電点131及び第2給電点132が配置されている近傍には、GNDパターン135が部分的に切欠かれた切欠き部135aが形成されている。
【0024】
マルチアンテナの一方のアンテナ110は、長手方向の寸法を波長λの4分の1以下に小型化した微小アンテナとなっており、好ましくは長手方向の寸法を波長λの10分の1以下にするのがよい。以下では、アンテナ110を微小アンテナ110と称する。微小アンテナ110は、略線状の放射導体111と、放射導体111の一端側に設けられて第1給電点131に接続される第1給電端子112を備えており、モジュール基板130上の切欠き部135aが形成されている位置に配置される。
【0025】
本実施形態では、微小アンテナ110を逆Fアンテナとしており、モジュール基板130に接地点133が設けられるとともに、微小アンテナ110に接地端子113が設けられている。微小アンテナ110は逆Fアンテナに限定されず、例えばモノポールアンテナとすることも可能である。微小アンテナ110をモノポールアンテナとした場合には、接地点133及び接地端子113は不要となる。
【0026】
微小アンテナ110は、放射導体111の配置に必要なスペースを小さくするために、放射導体111を折り返しやミアンダライン等を含むようなパターンに形成することができる。さらに、誘電体114あるいは磁性体を用いることで、放射導体111の長さを短くすることができる。
【0027】
マルチアンテナの他方のアンテナ120は、共振長がλ/2の略板状の放射導体121を備えたマイクロストリップアンテナ(以下ではMSAとする)となっている。以下では、アンテナ120をMSA120と称する。MSA120は、放射導体121を第2給電点132に接続するための第2給電端子122をさらに備えている。
【0028】
MSA120は、GNDパターン135の上方に非接触に配置されており、その共振方向がモジュール基板130の長手方向と直交する幅方向となるように、放射導体121がモジュール基板130の幅方向に長く形成されている。MSA120は、その共振長をλ/2とするために、共振長がλ/4のPIFAに比べて長さを2倍にする必要がある。そのため、モジュール基板130の幅方向に共振長λ/2の放射導体121を配置するのが困難になることが考えられるが、その場合には放射導体121をモジュール基板130の上下面を取り囲むように周囲に効率的に配置するのがよい。
【0029】
本実施形態では、共振長λ/2の放射導体121を効率的に配置するために、モジュール基板130及びGNDパターン135を取り囲むように、放射導体121をモジュール基板130の一方の面から長辺側で折り返し、さらにモジュール基板130の他方の面に非接触に配置している。なお、図1に示す無線データ通信モジュール100では、GNDパターン135の一部がモジュール基板130をシールドするためのシールドケース102として立体的な形状に形成されている。そのため、放射導体121がシールドケース102の外周を取り囲むように立体的に配置されている。尚、シールドケース102は、MSA120のグランドと等電位となっている。
【0030】
上記のように、放射導体121をモジュール基板130及びシールドケース102(GNDパターン135)を取り囲むように立体的に配置することにより、放射導体121をモジュール基板130の幅方向に長く配置することができ、かつ無線データ通信モジュール100のモジュール筺体101内の空間を有効的に活用することができる。
【0031】
本実施形態では、さらに放射導体121の長手方向と直交する方向に交互にスリット121aを形成している。このようなスリット121aを形成することで、共振長を放射導体121の長手方向(モジュール基板130の幅方向)の長さより実質的に長くすることができ、必要な共振長を確保することができる。
【0032】
無線データ通信モジュール100は、外部のパーソナルコンピュータ(PC)等に接続するためのコネクタ103をさらに備えており、コネクタ103を介してモジュール基板130がPC内のPC基板に接続される。図1では、PC基板に設けられているGNDパターンを符号10で示しているが、コネクタ103を介してモジュール基板130とPC基板とが接続されると、GNDパターン135もPC内のGNDパターン10に接続される。ここではUSBに代表されるコネクタを介しPCに接続されるものであるが、これに限らず、無線LAN (802.11b、g、またはn)によって周辺の情報処理端末に無線接続されるものであってもよい。
【0033】
微小アンテナ110とMSA120のそれぞれのアンテナ動作を、図2を用いて説明する。図2は、微小アンテナ110(同図(a))とMSA120(同図(b))のそれぞれで電磁波の放射に主として寄与する電流の流れを模式的に示した説明図である。微小アンテナ110は、GNDパターン135の一端側に接続されて不平衡給電により動作することから、放射導体111に加えてGNDパターン135にも電流が強く流れて放射に寄与する。微小アンテナ110の放射面積を小さくすることで、図2(a)に示すGNDパターン135を長手方向に流れる電流(矢印A1で示す)が支配的となって放射に寄与する。
【0034】
上記のように、マルチアンテナの一方のアンテナは、微小アンテナ110とGNDパターン135とが一体に動作するアンテナとなっている。さらに、コネクタ103を介してGNDパターン135がPC内のGNDパターン10に接続されると、微小アンテナ110が大きなGNDパターンに接続されことになってそのアンテナ特性がさらに向上する。
【0035】
一方、MSA120は、共振長が略λ/2で共振方向がモジュール基板130の幅方向となるように形成されている。共振長が略λ/2となっていることから、GNDパターン135にはほとんど電流が流れない。その結果、MSA120の放射に寄与する電流は、図2(b)に示すように、モジュール基板130の幅方向となる放射導体121の長手方向に強く流れる電流(矢印A2で示す)が支配的となる。
【0036】
図2に示すように、本実施形態の無線データ通信モジュール100では、実質的に放射に寄与する電流分布が、微小アンテナ110側ではGNDパターン135の長手方向に流れる電流分布であり、MSA120ではその長手方向に流れる電流分布である。すなわち、前者の電流分布はモジュール基板130の長手方向となり、後者の電流分布はモジュール基板130の幅方向となることから、両者は直交することになる。その結果、微小アンテナ110とMSA120との間の相関係数を低減させることができ、両者を近接させてもその間の相関係数を低い状態に維持することができる。
【0037】
本実施形態の無線データ通信モジュール100のアンテナ特性を、従来のマルチアンテナを有する無線データ通信モジュールと比較して説明する。図3(a)に、従来の無線データ通信モジュールの一例として、2つの微小アンテナ210、220を用い、これらをGNDパターン235の長手方向一端に配置された給電点231、232に接続した無線データ通信モジュール200の平面図を示す。また、本実施形態の無線データ通信モジュール100の平面図を図3(b)に示す。
【0038】
従来の無線データ通信モジュール200及び本実施形態の無線データ通信モジュール100について、それぞれの2つのアンテナ間の相関係数をシミュレーション解析により求めた結果を、それぞれ図4(a)、(b)に示す。図4(a)、(b)中の点は、それぞれの2つのアンテナの所定方向における電界強度を、横軸及び縦軸にそれぞれ示している。従来の無線データ通信モジュール200では、いずれの方向の場合も2つのアンテナの電界強度がほぼ1対1となっており、直線近似して得た直線L1の近傍に分布している。これに対し、本実施形態の無線データ通信モジュール100では、2つのアンテナの電界強度が広く分布しており、両者に強い相関は見られない。
【0039】
図4(a)より、従来の無線データ通信モジュール200では、2つのアンテナがほぼ同等の電界強度を示しており、両者の間に高い相関があることを示している。これに対し本実施形態の無線データ通信モジュール100では、微小アンテナ110の電界強度とMSA120の電界強度は、それぞればらばらに分布している。よって、本実施形態の微小アンテナ110とMSA120との間の相関が低いことがわかる。
【0040】
次に、本実施例の効果を実験結果を用いて説明する。
ここではモジュール筐体のサイズとして長さ80mm、幅30mm、高さ6mmとして従来例と本発明の第1実施形態を比較する。図3(a)で示した微小アンテナ210、220のサイズは長さ18mm、幅4mm、高さ3.5mmであり、両微小アンテナ間の距離を22mmとしている。一方、本発明の第1実施形態における微小アンテナ110のサイズは長さ25mm、幅3mm、高さ3mm、MSA120については、GND135を上下面から取り囲む構成をとり、投影面においては長さ30mm、幅24mm、高さ6mmと設定している。また、微小アンテナ110とMSA120の最短距離は10mmとしている。
【0041】
従来の無線データ通信モジュール200と本実施形態の無線データ通信モジュール100のそれぞれの周波数に対する放射効率を、測定した結果をそれぞれ図5(a)、(b)に示す。図5(a)は、従来の無線データ通信モジュール200の2つのアンテナの周波数に対する放射効率を示しており、符号51、52はそれぞれPIFA210、220を示している。同様に、図5(b)は、本実施形態の無線データ通信モジュール100の2つのアンテナの周波数に対する放射効率を示しており、符号53、54はそれぞれ微小アンテナ110、MSA120を示している。無線データ通信モジュール100、200とも、それぞれの2つのアンテナが同等度の最大放射効率を有することがわかる。
【0042】
さらに、リバーブレーションチャンバを用いて、従来の無線データ通信モジュール200と本実施形態の無線データ通信モジュール100のそれぞれの相関係数を測定した結果を図6に示す。同図において、符号61は従来の無線データ通信モジュール200の相関係数を示し、符号62は本実施形態の無線データ通信モジュール100の相関係数を示す。従来例と比較してアンテナ間距離が小さいにも関わらず相関係数62は、相関係数61に比べて低く抑えることができており、特にLTEで使用される可能性のある700MHz帯や800MHz帯で相関係数が顕著に低下することがわかる。
【0043】
上記のように、本実施形態の無線データ通信モジュール100で実現されるマルチアンテナは、一方のアンテナとして微小アンテナ110とGNDパターン135とが一体に動作し、他方のアンテナとしてMSA120が動作する構成となっており、実質的に放射に寄与する電流分布が直交する構成になっている。これにより、2つのアンテナを近接配置してもその間の相関係数を低い値に維持することが可能となり、無線データ通信モジュール100の小型化を実現することができる。
【0044】
本発明の無線データ通信モジュールの別の実施形態として、微小アンテナを別の形態で実現することができる。すなわち、微小アンテナを小型化するために、第1実施形態では放射導体に折り返しを形成したりミアンダラインを設けたりしたが、第1実施形態の放射導体の形状に限らず、放射導体の折り曲げ方等を変えてさらに小型化を図ってもよい。また給電方法式として、逆F方式に限らずモノポール方式等を用いてもよい。さらに、微小アンテナをマルチバンド対応としてもよい。微小アンテナの実装方法として、表面実装型(SMD)とする、あるいはプリントアンテナとすることができる。
【0045】
同様にMSAについても、第1実施形態のようにモジュール基板の両面に配置する形態に限らず、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)を用いてモジュール筺体の裏面に張り付けるようにすることも可能である。また、放射導体にさらに多くのスリットを形成して小型化を図るようにしてもよい。放射導体の給電方法として、第1実施形態では給電端子を用いて直接給電するようにしたが、これに限らず、例えば容量結合給電を行うようにしてもよい。容量結合給電方式を用いることで、周波数帯域の調整等を容易にすることができる。
【0046】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る無線データ通信モジュールの一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における無線データ通信モジュールの細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
100 無線データ通信モジュール
101 モジュール筺体
102 シールドケース
103 コネクタ
110 微小アンテナ
111 放射導体
112 第1給電端子
113 接地端子
120 マイクロストリップアンテナ
121 放射導体
122 第2給電端子
130 モジュール基板
131 第1給電点
132 第2給電点
133 接地点
135 GNDパターン
135a 切欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの同一周波数で動作する2つのアンテナからなるマルチアンテナと、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)通信機能を有するモジュール基板と、を備えた無線データ通信モジュールであって、
前記モジュール基板は、長手方向の一端に切欠き部が形成されたGNDパターン(グランドパターン)と、少なくとも1つが前記切欠き部周辺に配置された2つの給電点と、を備え、
前記2つのアンテナの一方は、
前記切欠き部に配置された一方の前記給電点に接続される給電端子と、略線状の放射導体と、を備え、前記放射導体の長手方向の長さが前記同一周波数に対応する波長の4分の1以下に小型化されて前記切欠き部に配置される微小アンテナであり、
前記2つのアンテナの他方は、
前記2つの給電点の他方に接続される別の給電端子と、実質的に前記GNDパターンの上方に配置されて動作する略板状の放射導体と、を備えて共振方向が前記モジュール基板の長手方向に対して略垂直となるマイクロストリップアンテナであり、
前記微小アンテナの放射に寄与する主要な電流が前記GNDパターンの長手方向に流れて共振方向が前記マイクロストリップアンテナの共振方向と略直交する
ことを特徴とする無線データ通信モジュール。
【請求項2】
前記微小アンテナの長手方向の長さは、前記同一周波数に対応する波長の10分の1以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の無線データ通信モジュール。
【請求項3】
前記他方の給電点は、前記切欠き部に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の無線データ通信モジュール。
【請求項4】
外部の情報処理端末に接続するためのコネクタをさらに備え、
前記モジュール基板は、前記コネクタに接続されるコネクタ接続端子を長手方向の前記切欠き部とは反対側に備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の無線データ通信モジュール。
【請求項5】
前記GNDパターンは、前記コネクタを介して前記情報処理端末のグランドに接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の無線データ通信モジュール。
【請求項6】
前記切欠き部に接地点がさらに設けられ、
前記微小アンテナは、前記接地点に接続される接地端子をさらに備えた逆Fアンテナである
ことを特徴とする請求項1に記載の無線データ通信モジュール。
【請求項7】
前記マイクロストリップアンテナは、前記モジュール基板及び前記GNDパターンを両面から覆うモジュール筺体の裏面に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の無線データ通信モジュール。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−75021(P2012−75021A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219537(P2010−219537)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】