説明

無線中継装置、通信方法

【課題】対向装置との間で同期転送モード信号の送受信に障害が生じた場合であっても、装置を制御又は監視するための様々な装置間情報を確実に通信可能にする無線中継装置、通信方法を提供する。
【解決手段】SDH伝送システムにおいて、無線中継装置は、対向する他の装置との間で送受信される装置間情報を、SOHを含むSTM1信号に対して付加されるRFCOHに多重化するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SDH(Synchronous Digital Hierarchy;同期ディジタルハイアラーキ)対応の無線中継装置の通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各国でSDH対応のディジタル多重システム(以下、SDH伝送システム)の構築が進められている。特に、山間部、又は海峡を含む地理的環境においては、伝送網の構築が比較的容易なSDH対応の無線中継装置の需要が高まっている。
【0003】
一般にSDH伝送システムでは、標準化されたSTM(Synchronous Transfer Mode;同期転送モード)フレームフォーマットによりディジタル信号が伝送される。この場合、例えばSTM−1(155.52Mbps)フレーム(同期転送モード信号)は、セクションオーバヘッド(以下、SOH:Section Overhead)とペイロードとから構成される。そして、SDH伝送システムの無線区間に設けられる対向した無線中継装置間では、STM−1フレームに無線伝送オーバヘッド(以下、RFCOH;Radio Frame Complementary Overhead)が付加されて伝送される。
【0004】
SDH伝送システムでは、対向した無線中継装置間で、装置を制御又は監視するための様々な装置間情報(回線切替の制御情報、オーダワイヤ情報、DCC(Data Communication Channel)情報、トレース情報、エラー情報等)の送受信を行っている。従来、これらの装置間情報は、SOH及びRFCOH内の固定領域に配置されている。例えば、オーバワイヤ情報はSOHのE1バイトに配置され、DCC情報はSOHのD1〜D3バイトに配置される。
【0005】
SDH伝送システムについては、例えば以下の特許文献1,2にも開示されている。
【特許文献1】特開平7−107013号公報
【特許文献2】特開平9−135229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SDH伝送システムでは、本来は単一のマスタクロック源によって網内の複数の装置を同期させる方式を採ってきたが、近年、例えば発展途上国においては、安価に伝送網を構築するためにマスタクロック源を設置しない場合がある。かかる場合に、対向した無線中継装置間の通信においてフレームロスが発生する可能性があるという問題がある。このような問題が生ずると、装置間情報の授受が行われないため、主回線を補助回線に切り替えるための制御ができない、及び/又は、一方の無線中継装置から対向装置に対して遠隔的にアクセスできないことになり、無線中継装置のメンテナンス作業に支障を来たす。
【0007】
上記問題について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、マスタクロック源を備えたSDH伝送システムを示す図である。図8は、マスタクロック源を備えていないSDH伝送システムを示す図である。各図では、有線区間において無線中継装置と多重装置の間で通信が行われ、無線区間において対向する無線中継装置同士で通信が行われる。
図7に示すSDH伝送システムでは、マスタクロック源1が設けられ、マスタクロック源1で生成されるクロックは多重装置4の基準クロックとなる。この基準クロックに同期して生成される上り(又は下り)回線の信号(STM−1フレーム)内の所定のデータに基づいて、他の装置(無線中継装置2、無線中継装置3、多重装置5)では、クロック処理部が基準クロックを再生する。これにより、図7に示すSDH伝送システムでは、伝送網内のすべての装置間で共通のクロックに基づく同期(いわゆる網内同期)が実現する。
【0008】
一方、図8に示すSDH伝送システムでは、マスタクロック源が設けられていないため、システム内の上り又は下り回線の各々の信号(STM−1フレーム)は、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)で規定されている無線周波数偏差の許容最大偏差±4.6ppmの影響を受けうる。この偏差が上り回線、下り回線共に発生した場合には、対向する無線中継装置間で最大9.2ppmの偏差が生じ、フレームロスが発生する。
【0009】
上述した観点に鑑み、本発明の目的は、対向装置との間で同期転送モード信号の送受信に障害が生じた場合に、装置を制御又は監視するための様々な装置間情報を通信できる可能性を高めた無線中継装置、通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この無線中継装置及び通信方法は、SDHに対応しており、対向する他の装置との間で送受信される装置間情報を、第1オーバヘッドを含む同期転送モード信号に付加される第2オーバヘッド、に多重化するようにしたものである。
好ましくは、上記無線中継装置及び通信方法は、装置間情報を第1オーバヘッドに挿入された状態で送受信する第1通信形態、又は装置間情報を第2オーバヘッドに多重化された状態で送受信する第2通信形態、のいずれかを選択するように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対向装置との間で同期転送モード信号の送受信に障害が生じた場合に、装置を制御又は監視するための様々な装置間情報を通信できる可能性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(1)第1の実施形態
(1−1)SDH伝送システム
以下、本発明の無線中継装置の第1の実施形態について説明する。実施形態の無線中継装置は、マスタクロック源を持たないSDH伝送網において、無線区間の両端に配置される多重無線中継装置である。この無線中継装置を含むSDH伝送システムと無線中継装置間の通信方法について、図1を参照して説明する。図1は、この実施形態において、無線中継装置を含むSDH伝送システムの概略の構成と通信方法を説明するための図である。
【0013】
図1に示すSDH伝送システムでは、無線区間において無線中継装置10と無線中継装置11とが対向している。無線中継装置10は、信号処理部20と監視制御部30を備え、無線中継装置11は、信号処理部21と監視制御部31を備える。各無線中継装置における信号処理部(送受信部)は、無線中継装置間の上り又は下りの信号の送受信を行う。
【0014】
図1に示すように、このSDH伝送システムでは、無線区間における無線中継装置間の信号の送受信は、標準化されたSTMフレームフォーマットのSTM−1フレーム(155.52Mbps)に15.552Mbpsの無線伝送オーバヘッド(以下、RFCOH;Radio Frame Complementary Overhead)が付加されて行われる。このSTM−1フレームは、セクションオーバヘッド(以下、SOH:Section Overhead)とペイロードとから構成される。
なお、SOH、RFCOHは、それぞれ第1オーバヘッド、第2オーバヘッドの一実施形態である。
【0015】
このSDH伝送システムでは、無線中継装置間で送受信される装置間情報が外部機器(図示しない)から与えられる。そして、各監視制御部は、この装置間情報をRFCOH内にオプション帯域として確保されている2048Kbps(2.048Mbps)の通信信号(以下、適宜「WS」又は「WS信号」と略記する。)にマッピングして生成するとともに、受信した通信信号から装置間情報を抽出する。図1に示すように、このSDH伝送システムでは、無線中継装置間で、通信信号が冗長構成(WS_X信号,WS_Y信号)で送受信される。
すなわち、無線中継装置20の無線送信部23は、上りのSTM−1フレームに対して、WS_X信号及びWS_Y信号を含むRFCOHを付加して無線中継装置21へ送信する。そして、このSTM−1フレームとRFCOHが無線中継装置21の無線受信部26で受信される。同様に、無線中継装置21の無線送信部27は、下りのSTM−1フレームに対して、WS_X信号及びWS_Y信号を含むRFCOHを付加して無線中継装置20へ送信する。そして、このSTM−1フレームとRFCOHが無線中継装置20の無線受信部24で受信される。
【0016】
上述したように、図1に示すSDH伝送システムでは、マスタクロック源が設けられていないため、システム内の上り又は下り回線の各々の信号(STM−1フレーム)は、ITU−Tで規定されている無線周波数偏差の許容最大偏差±4.6ppmの影響を受けうる。この偏差が上り回線、下り回線共に発生した場合には、対向する無線中継装置間で最大9.2ppmの偏差が生じる。したがって、仮に、装置間情報をSTM−1フレームのSOHに挿入したとすれば、STM−1フレームのロスにより装置間で装置間情報の授受ができなくなる虞がある。そのため、本実施形態においては、装置間情報をRFCOH内に確保されている通信信号(WS信号)にマッピングするようにしている。なお、RFCOH内に確保されている通信信号の通信容量(2048Kbps)を考慮して、装置間情報の中でも重要なものに限定して通信信号にマッピングするようにしてもよい。
【0017】
なお、無線回線上では、通信信号(WS信号)に対して2048.2048Kbps通信容量が確保されている。そして、一方の無線中継装置の監視制御部が2048KbpsのWS信号を生成し、この2048KbpsのWS信号に0.2048Kbps(=100ppm)に相当するダミービットを挿入(スタッフ処理)して、2048.2048KbpsのWS信号を無線送信部から送信する。他方の無線中継装置では、無線受信部が2048.2048KbpsのWS信号を受信した後、ダミービットを除去(デスタッフ処理)して、監視制御部が2048KbpsのWS信号を取得する。
以下では、WS信号の通信容量に関する記述は、主として、監視制御部内における通信容量である2048Kbpsを基準として行う。
【0018】
(1−2)通信信号(WS信号)の構成
次に、図2を参照してWS信号の構成について説明する。図2は、通信信号(WS信号)の構成を示すとともに、WS信号に対する装置間情報のマッピング方法を示す図である。なお、冗長構成のWS_X信号,WS_Y信号はともに、図2に示すWS信号と同様の構成を備えている。
【0019】
図2では、装置間情報として、(d)RSC(Radio Service Channel)信号、(e)OWE1信号(オーバワイヤ信号のE1ビット)、(f)DCC(Data Communication Channel)信号が、(b)2MCLK(2.048MHzのクロック)に基づいて(a)WS信号にマッピングされる例を示している。すなわち、RSC信号(832Kbps)、OWE1信号(64Kbps)、DCC信号(192Kbps)が、2.048MbpsのWS信号のフレームに多重化される例を示している。
具体的には、図2(a)に示す例では、WS信号の1フレーム(256クロック(CLK)相当)は、16クロック相当の所定のフレームパターンビットの後、順に、104クロック相当のRSC信号、8クロック相当のOWE1信号、24クロック相当のDCC信号、104クロック相当の空き領域(すべて0)で構成される。本実施形態の無線中継装置は、このWS信号をRFCOHに組み込み、対向する他の無線中継装置と間で送受信を行う。このとき、図1に示すように、WS信号は、監視制御部内の送信用クロック源のクロックに基づくタイミングで送出される。
【0020】
図2に示したように、本実施形態の無線中継装置では、対向する他の無線中継装置との間で送受信される装置間情報を、RFCOHに設けられる通信信号(WS信号)に多重化するようにしている。したがって、仮に、対向する無線中継装置同士の無線周波数で許容される最大偏差により同期転送モード信号(STM−1フレーム)のフレームを検出できなかった(フレームロス)としても、この無線中継装置では、同期転送モード信号のフレームロスの影響を受けずに、装置間情報の送受信を行うことができる。
【0021】
図2において、装置間情報としてのRSC信号(832Kbps)、OWE1信号(64Kbps)、DCC信号(192Kbps)をすべて含めてもWS信号の通信容量(2048Kbps)の約半分程度であり、WS信号の通信容量に対して十分に余裕がある。そのため、対向する無線中継装置同士の無線周波数で許容される最大偏差が生じた場合であっても、WS信号にマッピングされた装置間情報を装置間通信で失う可能性は非常に低い。
さらに言えば、WS信号は、上述したスタッフ/デスタッフ処理により、帯域の100ppmの偏差に対する耐性(受信側での補正能力)を備えており、監視制御部内でのWS信号の通信容量(2048Kbps)に対して、図2に例示したものよりも多くの装置間情報を多重化したとしても、装置間通信で装置間情報を失う可能性は非常に低い。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の無線中継装置では、対向する他の無線中継装置との間で、装置間通信を制御又は監視するための装置間情報を、同期転送モード信号であるSTM−1フレームのSOHではなく、RFCOH内の通信信号にマッピングして送受信するようにする。これにより、マスタクロック源を持たないSDH伝送システムに本実施形態の無線中継装置が設けられたとしても、無線周波数偏差に伴う同期転送モード信号の偏差の影響を受けずに、対向する他の無線中継装置との間で装置間情報を確実に送受信することができる。
【0023】
(2)第2の実施形態
次に無線中継装置の第2の実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態において、無線中継装置が設けられるSDH伝送システムは図1に示したものと同様である。また、以降の各実施形態においても、装置間通信を制御又は監視するための装置間情報として、RSC信号、OWE1信号、DCC信号をWS信号にマッピングする場合(図2)を例として説明する。
【0024】
本実施形態の無線中継装置では、装置間情報をSTM−1フレーム(同期転送モード信号)のSOHに挿入された状態で送受信する第1通信形態、又は装置間情報をRFCOH内のWS信号にマッピングして送受信する第2通信形態、のいずれかを選択する選択部が、監視制御盤内に設けられる。
以下、図3及び図4を参照し、本実施形態の無線中継装置10の構成について、特に監視制御部30に着目して説明する。図3は、無線中継装置10の要部を示すブロック図である。図4は、無線中継装置10の監視制御盤32の構成例を示す図である。
【0025】
(2−1)無線中継装置の構成
先ず図3を参照すると、監視制御部30は、監視制御盤32と中継通信補助盤34からなる。監視制御盤32は、シリアルインタフェース(シリアルI/F)36、MUX/DMUX部50(多重化部)、選択部60、監視制御処理部90、RSC(Radio Service Channel)処理部92、RPS(Radio Protection Switch)処理部93、VF/DGTL処理部94、OWE1処理部95、ハブ(HUB)96、LAN(Local Area Network)/WAN(Wide Area Network)処理部97を備える。中継通信補助盤34は、B−U/U−B変換部71、クロック源72、PLL(Phase Locked Loop)73を備える。
【0026】
図3において、OWE1処理部95は、外部装置(図示せず)と通信可能に接続されるとともに、選択部60に対するOWE1信号の入出力を行う。LAN/WAN処理部97は、ハブ96を経由して外部のLANネットワーク機器又はWANネットワーク機器(図示せず)と通信可能に接続されるとともに、選択部60に対するDCC信号の入出力を行う。RSC処理部92は、装置間の切替情報を処理するRPS処理部93と、ディジタルオーダワイヤ信号を処理するVF/DGTL処理部94とに接続され、選択部60に対するRSC信号(RSC_X信号,RSC_Y信号の冗長構成)の入出力を行う。
【0027】
選択部60は、RSC処理部92、OWE1処理部95、LAN/WAN処理部97からそれぞれ、装置間情報としてのRSC_X信号、RSC_Y信号、OWE1信号、DCC信号を入力し、これらの装置間情報を送信する場合に、監視制御処理部90の指令に応じて、シリアルインタフェース36、又はMUX/DMUX部50のいずれかへ装置間情報を出力する。また、選択部60は、装置間情報としてのRSC_X信号、RSC_Y信号、OWE1信号、DCC信号を受信する場合に、シリアルインタフェース36、又はMUX/DMUX部50のいずれかから装置間情報を入力し、RSC処理部92、OWE1処理部95、LAN/WAN処理部97へ出力する。
選択部60の構成例については、図4を参照して後述する。
【0028】
MUX/DMUX部50は、選択部60からRSC_X信号、RSC_Y信号、OWE1信号、DCC信号を入力した場合、これらの信号を多重化して2048KbpsのWS信号(WS_X,WS_Y)を生成し、中継通信補助盤34へ出力する。また、MUX/DMUX部50は、中継通信補助盤34からWS信号(WS_X,WS_Y)を入力した場合、WS信号を分離して、RSC_X信号、RSC_Y信号、OWE1信号、DCC信号を抽出し、選択部60へ出力する。
MUX/DMUX部50の構成例については、図4を参照して後述する。
【0029】
監視制御処理部90は、主としてマイクロコントローラにより構成され、監視制御盤32全体の制御処理を行う。例えば、監視制御処理部90は、選択部60に対して選択動作に関する指令を送出する。
【0030】
中継通信補助盤34において、B−U/U−B変換部71は、B−U変換器81及びU−B変換器82を備える(図4参照)。B−U/U−B変換部71は、受信したWS信号を、無線区間に適した伝送符合であるバイポーラ符合から、搬送区間に適した伝送符合であるユニポーラ符合へ変換(B−U変換)するとともに、送信対象のWS信号をユニポーラ符合からバイポーラ符合へ変換(U−B変換)する。
クロック源72は、WS信号を送出するときの基準となるクロックを生成するクロック源であり、WS信号を生成する際の基準周波数である2.048MHzよりも十分に高い周波数(例えば79MHz)のクロックを生成するように構成される。PLL73は、受信処理を行うために受信信号に対する位相同期を行う。
【0031】
シリアルインタフェース36は、信号処理部20との間で、0系/1系冗長構成のSTM−1フレームの信号の入出力処理を行う。シリアルインタフェース36は、信号処理部20へSTM−1フレームを出力する場合、選択部60からのOWE1信号をSOHのE1バイトに配置し、選択部60からのDCC信号をSOHのD1〜D3バイトに配置するようにして多重化する。一方、シリアルインタフェース36は、信号処理部20からSTM−1フレームを入力する場合、STM−1フレームを分離して、SOHからOWE1信号及びDCC信号を抽出して選択部60へ出力する。
また、シリアルインタフェース36は、信号処理部20との間で、RSC信号の冗長信号(RSC_X信号、RSC_Y信号)の入出力処理を行う。このRSCの冗長信号は、0系/1系冗長構成のSTM−1フレームに付加されるRFCOHに対応して設けられている。RSC信号は、信号処理部20においてRFCOHのRSC(Radio Service Channel)に組み込まれる。
【0032】
上述した構成により、監視制御部30では、第1通信形態を適用する場合、シリアルインタフェース36(第1通信インタフェース)経由で、装置間情報(OWE1信号、DCC信号)をSTM−1フレーム(同期転送モード信号)のSOHに挿入された状態で、信号処理部20との間で信号の入出力処理を行う。さらに、第1通信形態を適用する場合には、RSC信号は、信号処理部20においてRFCOHのRSCに組み込まれる。
一方、監視制御部30では、第2通信形態を適用する場合、中継通信補助盤34(第2通信インタフェース)経由で、信号処理部20との間で、装置間情報(OWE1信号、DCC信号、RSC信号)が多重化されたWS信号の入出力処理を行う。このWS信号は、信号処理部20においてRFCOHに組み込まれる。
【0033】
(2−2)MUX/DMUX部及び選択部の構成例
次に図4を参照して、MUX/DMUX部50及び選択部60の構成例について説明する。
図4に示すように、MUX/DMUX部50は、多重化器(MUX)51、分離器(DMUX)52,53、セレクタ(SEL)54、フレーム検出器55,56、分周器57を備える。選択部60は、セレクタ(SEL)61〜67を備える。
【0034】
以下の説明では、監視制御処理部90は、装置間情報をSTM−1フレーム(同期転送モード信号)のSOHに挿入された状態で送受信する第1通信形態を適用すると判断した場合に、選択部60に対して指令C1を送出するものとする。また、監視制御処理部90は、装置間情報をRFCOH内のWS信号にマッピングして送受信する第2通信形態を適用すると判断した場合に、選択部60に対して指令C2を送出するものとする。
【0035】
選択部60において、セレクタ65,63,61は、送信時に動作するセレクタである。
セレクタ65,63,61は、監視制御処理部90から指令C1を受けた場合には、それぞれRSC処理部92、OWE1処理部95、LAN/WAN処理部97から入力するRSC信号、OWE1信号、DCC信号の出力先として、シリアルインタフェース36を選択する。このとき、図4に示すように、シリアルインタフェース36には、RSC信号がRSC_X信号とRSC_Y信号の冗長構成で出力される。一方、セレクタ65,63,61は、監視制御処理部90から指令C2を受けた場合には、それぞれに対応する信号の出力先として、MUX/DMUX部50の多重化器51を選択する。
【0036】
選択部60において、セレクタ66,67,64,62は、受信時に動作するセレクタである。
セレクタ66,67,64,62は、監視制御処理部90から指令C1を受けた場合には、それぞれに対応するRSC_X信号、RSC_Y信号、OWE1信号、DCC信号の入力先として、シリアルインタフェース36を選択する。一方、セレクタ66,67,64,62は、監視制御処理部90から指令C2を受けた場合には、それぞれに対応する信号の入力先として、MUX/DMUX部50のセレクタ54を選択する。
【0037】
多重化器51は、送信時にセレクタ65,63,61から、それぞれに対応するRSC信号、OWE1信号、DCC信号を受けると、これらの信号を多重化し、2048KbpsのWS信号(WS_X,WS_Yの冗長構成)を生成する。RSC信号、OWE1信号、DCC信号のWS信号に対するマッピング方法は、図2を参照して説明したとおりである。
【0038】
受信したWS信号(WS_X,WS_Y)を処理するため、中継通信補助盤34のクロック源72で生成されるクロックを2.048MHzに分周したクロック2MCLK(X側、Y側の冗長構成)が、中継通信補助盤34から監視制御盤32に対して供給される。」
フレーム検出器56,55は、B−U変換器81によりユニポーラ符合に変換されたWS_X信号,WS_Y信号をそれぞれ入力し、各信号を分離器53,52へ出力するとともに、各信号のフレーム(図2(a)に示す256クロック相当の各フレーム)の検出を行う。そして、フレーム検出器56,55は、フレームが正しく検出できたか否かを示す信号であるLOF(X),LOF(Y)をフレーム単位でそれぞれセレクタ54へ出力する。
【0039】
分離器53,52は、それぞれWS_X信号,WS_Y信号を、装置間情報としてのRSC_X信号、RSC_Y信号、OWE1信号、DCC信号に分離して出力する。
セレクタ54は、各フレーム検出器からのLOF(X),LOF(Y)に基づいて、分離器53又は52のいずれかの出力信号を選択する。例えば、WS_X信号のみ正しくフレーム検出ができた場合には、分離器53により出力された装置間信号が選択され、分離器52の出力信号は無視される。WS_X信号及びWS_Y信号の双方のフレーム検出ができた場合に、分離器53又は52のいずれにより出力された装置間信号を選択するかについては予め決めておく。
【0040】
分周器57は、PLL73により位相同期されたクロックとして79MCLK(例えば79MHzのクロック)を入力し、監視制御盤32内の各種の処理に必要な特定の周波数に分周する。
【0041】
以上説明したように、第2実施形態の無線中継装置は、装置間情報をSTM−1フレーム(同期転送モード信号)のSOHに挿入された状態で送受信する第1通信形態、又は装置間情報をRFCOH内のWS信号にマッピングして送受信する第2通信形態、のいずれかを選択する選択部が監視制御盤内に設けられ、監視制御処理部によって選択部の選択動作を制御できるように構成される。そのため、第1通信形態で装置間情報を対向装置との間で送受信しているときに、同期転送モード信号の送受信に障害が生じた場合であっても、第2通信形態で装置間情報を送受信するように切り替えることで、装置間情報の送受信が可能な状態に復帰することができる。そのような障害が生ずる場合として、例えば、対向する無線中継装置同士の無線周波数で許容される最大偏差が生じたために、STM−1フレーム(同期転送モード信号)を正しく受信できない場合が考えられる。
【0042】
(3)第3の実施形態
次に無線中継装置の第3の実施形態について、図5を参照して説明する。図5に示す無線中継装置10aの要部ブロック図は、図3のものと比較すると、検出部91が追加された点で異なる。
また、この実施形態の無線中継装置では、中継通信補助盤34(第2ユニット)が監視制御盤32(第1ユニット)に対して着脱可能で構成されることを前提にしている。図5において、検出部91は、中継通信補助盤34の監視制御盤32aに対する装着状態を検出するために設けられる。
【0043】
この実施形態において、監視制御処理部90は、検出部91からの検出結果に基づき、中継通信補助盤34が監視制御盤32aに装着されていないと判定すると、装置間情報をSTM−1フレーム(同期転送モード信号)のSOHに挿入された状態で送受信する第1通信形態を適用するように、選択部60を制御する。一方、監視制御処理部90は、検出部91からの検出結果に基づき、中継通信補助盤34が監視制御盤32aに装着されていると判定すると、装置間情報をRFCOH内のWS信号にマッピングして送受信する第2通信形態を適用するように、選択部60を制御する。選択部60による選択処理は、第2の実施形態で説明したとおりである。
【0044】
上述した検出部91を設けることで、無線中継装置を、信頼性を維持しつつ低コスト化を図ることができる。すなわち、中継通信補助盤34をオプション化する(監視制御盤32aに標準状態としては装着せず、オプションで装着可能とする)ことで、標準状態では、無線中継装置の低コスト化が実現できる一方、対向装置との間で同期転送モード信号の送受信に障害が生じた場合には、中継通信補助盤34の装着することで、第2通信形態により装置間情報に対する信頼性の高い通信に切り替えることが可能となる。なお、監視制御盤32a内において、監視制御処理部90、VF/DGTL処理部94、OWE1処理部95、ハブ96を除く構成部分(図3参照)については、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって実現可能であるため、選択部60による選択処理を実現するための追加のハードウエア上のコストは抑制されうる。
【0045】
この実施形態の無線中継装置に関連して、
(A)中継通信補助盤34が監視制御盤32に装着されないときに、装置間情報を監視制御盤32aにより送受信するステップと、(B)中継通信補助盤34が監視制御盤32aに装着されたことを検出部91が検出するステップと、(C)検出部91による検出により、装置間情報を中継通信補助盤34により送受信するように切り替えるステップと、を備える方法が開示される。
【0046】
(4)第4の実施形態
次に無線中継装置の第4の実施形態について、図6を参照して説明する。図6に示す無線中継装置10bの要部ブロック図は、図3のものと比較すると、通信異常検出部99が追加された点で異なる。
この通信異常検出部99は、信号処理部20からのSTM−1フレーム(同期転送モード信号)が正しく受信できたか否かを検出し、その検出結果を監視制御処理部90へ通知する。監視制御処理部90は、通信異常検出部99からの検出結果に基づき、STM−1フレームが正しく受信できた(すなわち、通信異常無し)と判定すると、装置間情報をSTM−1フレーム(同期転送モード信号)のSOHに挿入された状態で送受信する第1通信形態を適用するように、選択部60を制御する。一方、監視制御処理部90は、通信異常検出部99からの検出結果に基づき、STM−1フレームが正しく受信できない(すなわち、通信異常有り)と判定すると、装置間情報をRFCOH内のWS信号にマッピングして送受信する第2通信形態を適用するように、選択部60を制御する。選択部60による選択処理は、第2の実施形態で説明したとおりである。
なお、フレームの受信可否に基づく通信異常検出方法は、いかなる公知の方法を適用することができる。
【0047】
この実施形態の無線中継装置によれば、信号処理部20からのフレームの検出結果に応じて、監視制御盤内で自律的に通信形態(第1通信形態、第2通信形態)を切り替えることができる。
【0048】
この実施形態の無線中継装置に関連して、
(D)STM−1フレーム(同期転送モード信号)が正常であるときに、装置間情報をSTM−1フレームのSOHに挿入された状態で送受信するステップと、(E)STM−1フレームの通信異常を検出するステップと、(F)STM−1フレームの通信異常の検出により、装置間情報をRFCOHに挿入された状態で送受信するように切り替えるステップと、を備える方法が開示される。
【0049】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0050】
(付記1)
同期ディジタルハイアラーキに対応した無線中継装置であって、
対向する他の装置との間で送受信される装置間情報を、第1オーバヘッドを含む同期転送モード信号に付加される第2オーバヘッド、に多重化する多重化部と、
多重化された前記装置間情報を前記他の装置との間で送受信する送受信部と、
を備えた無線中継装置。
【0051】
(付記2)
前記装置間情報を前記第1オーバヘッドに挿入された状態で送受信する第1通信形態、又は前記装置間情報を前記第2オーバヘッドに多重化された状態で送受信する第2通信形態、のいずれかを選択する選択部を備えたことを特徴とする、
付記1に記載された無線中継装置。
【0052】
(付記3)
前記第1通信形態による送受信のための第1通信インタフェースを備える第1ユニットに対し、前記第2通信形態による送受信のための第2通信インタフェースを備える第2ユニットが着脱可能に設けられ、
前記選択部は、前記第2ユニットが前記第1ユニットに装着されたことが検出されたときに、前記第2通信形態を選択することを特徴とする、
付記2に記載された無線中継装置。
【0053】
(付記4)
前記選択部は、同期転送モード信号の通信異常が検出されたときに、前記第2通信形態を選択することを特徴とする、
付記2に記載された無線中継装置。
【0054】
(付記5)
前記装置間情報は冗長構成であることを特徴とする、
付記1に記載された無線中継装置。
【0055】
(付記6)
同期ディジタルハイアラーキに対応した無線中継装置による通信方法であって、
対向する他の装置との間で送受信される装置間情報を、第1オーバヘッドを含む同期転送モード信号に付加される第2オーバヘッド、に多重化するステップと、
多重化された前記装置間情報を前記他の装置との間で送受信するステップと、
を備えた通信方法。
【0056】
(付記7)
前記無線中継装置の内、前記装置間情報を前記第1オーバヘッドに挿入された状態で送受信するための第1ユニットにより、前記装置間情報を送受信するステップと、
前記無線中継装置の内、前記装置間情報を前記第2オーバヘッドに多重化された状態で送受信するための第2ユニットが前記第1ユニットに装着されたことを検出するステップと、
前記検出により、前記装置間情報を第2ユニットにより送受信するように切り替えるステップと、
を備えたことを特徴とする、付記6に記載された通信方法。
【0057】
(付記8)
同期転送モード信号が正常であるときに、前記装置間情報を前記第1オーバヘッドに挿入された状態で送受信するステップと、
同期転送モード信号の通信異常を検出するステップと、
同期転送モード信号の通信異常の検出により、前記装置間情報を前記第2オーバヘッドに多重化された状態で送受信するように切り替えるステップと、
を備えたことを特徴とする、付記6に記載された通信方法。
【0058】
(付記9)
前記装置間情報は冗長構成であることを特徴とする、
付記6に記載された通信方法。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施形態の無線中継装置を含むSDH伝送システムの概略の構成と通信方法を説明するための図。
【図2】通信信号(WS信号)の構成を示すとともに、WS信号に対する装置間情報のマッピング方法を示す図。
【図3】第2の実施形態の無線中継装置の要部を示すブロック図。
【図4】第2の実施形態の無線中継装置の監視制御部の構成例を示す図。
【図5】第3の実施形態の無線中継装置の要部を示すブロック図。
【図6】第4の実施形態の無線中継装置の要部を示すブロック図。
【図7】マスタクロック源を備えた従来のSDH伝送システムを示す図。
【図8】マスタクロック源を備えていない従来のSDH伝送システムを示す図。
【符号の説明】
【0060】
10…無線中継装置
20…信号処理部
30…監視制御部
32…監視制御盤
34…中継通信補助盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期ディジタルハイアラーキに対応した無線中継装置であって、
対向する他の装置との間で送受信される装置間情報を、第1オーバヘッドを含む同期転送モード信号に付加される第2オーバヘッド、に多重化する多重化部と、
多重化された前記装置間情報を前記他の装置との間で送受信する送受信部と、
を備えた無線中継装置。
【請求項2】
前記装置間情報を前記第1オーバヘッドに挿入された状態で送受信する第1通信形態、又は前記装置間情報を前記第2オーバヘッドに多重化された状態で送受信する第2通信形態、のいずれかを選択する選択部を備えたことを特徴とする、
請求項1に記載された無線中継装置。
【請求項3】
前記第1通信形態による送受信のための第1通信インタフェースを備える第1ユニットに対し、前記第2通信形態による送受信のための第2通信インタフェースを備える第2ユニットが着脱可能に設けられ、
前記選択部は、前記第2ユニットが前記第1ユニットに装着されたことが検出されたときに、前記第2通信形態を選択することを特徴とする、
請求項2に記載された無線中継装置。
【請求項4】
前記選択部は、同期転送モード信号の通信異常が検出されたときに、前記第2通信形態を選択することを特徴とする、
請求項2に記載された無線中継装置。
【請求項5】
同期ディジタルハイアラーキに対応した無線中継装置による通信方法であって、
対向する他の装置との間で送受信される装置間情報を、第1オーバヘッドを含む同期転送モード信号に付加される第2オーバヘッド、に多重化するステップと、
多重化された前記装置間情報を前記他の装置との間で送受信するステップと、
を備えた通信方法。
【請求項6】
前記無線中継装置の内、前記装置間情報を前記第1オーバヘッドに挿入された状態で送受信するための第1ユニットにより、前記装置間情報を送受信するステップと、
前記無線中継装置の内、前記装置間情報を前記第2オーバヘッドに多重化された状態で送受信するための第2ユニットが前記第1ユニットに装着されたことを検出するステップと、
前記検出により、前記装置間情報を第2ユニットにより送受信するように切り替えるステップと、
を備えたことを特徴とする、請求項5に記載された通信方法。
【請求項7】
同期転送モード信号が正常であるときに、前記装置間情報を前記第1オーバヘッドに挿入された状態で送受信するステップと、
同期転送モード信号の通信異常を検出するステップと、
同期転送モード信号の通信異常の検出により、前記装置間情報を前記第2オーバヘッドに多重化された状態で送受信するように切り替えるステップと、
を備えたことを特徴とする、請求項5に記載された通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−157883(P2010−157883A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334783(P2008−334783)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】