説明

無線通信移動局

【課題】 本発明は、受信状態を把握するためのパラメータとして、受信強度以外に変調精度や変調指数を示すパラメータを使用し、より詳細に受信状態を把握することで、エラーの発生が少ない最適な通信領域で通信を開始できる無線通信移動局を提供する。
【解決手段】 本発明の無線通信移動局は、基地局と移動局間で無線データを送受信する無線通信システムであって、基地局からの無線データを復調する復調手段と、この復調手段による復調処理により得られた無線伝搬特性を示す受信状態パラメータを算出する算出手段と、受信状態パラメータを所定の閾値と比較する受信状態比較手段と、受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断する判断手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信移動局に関し、詳細には狭域通信システム(DSRC;Dedicated Short-Range Communication System)における移動局に関する。
【背景技術】
【0002】
ITS(高度道路交通システム;Intelligent Transport System)では、近年ETC(自動料金支払い;Electronic Toll Collection)システムをはじめとするDSRC通信方式を用いて基地局(路側に設置された無線装置)と移動局(車両に搭載された無線装置)の間で無線通信を行うシステムが実用化されている。
【0003】
DSRCは5.8GHz帯の周波数帯を使用し、伝送速度はASK(振幅偏移変調;Amplitude Shift Keying)変調方式を用いた1Mbpsとπ/4 shift QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式を用いた4Mbpsの車用狭域通信方式で、通信可能な範囲は、およそ数mから30m程度である。
【0004】
π
現在、DSRC通信方式を用いたサービスのほとんどがETCに利用されているが、近年DSRCに関する通信規格や法律の整備が進み、今後は様々なサービスが実現することが期待されている。駐車場やガソリンスタンドにおける決済や、SA/PA(Service Area/Parking Area)等における情報接続サービスや道路上における情報提供など、DSRCを応用した様々なサービスが可能となる。これらのサービスを普及させるには現在普及しているASK変調方式のみに対応した通信システムだけでなく、より伝送速度の速いQPSK変調方式にも対応した両対応の通信システムが必要となる。
【0005】
また、ETCで使用されているASK変調方式は、振幅情報により復調を行うためフェージングの影響を受けやすく、通信エラーが発生しやすい。そのためこれまでETCを導入する際には道路の周りに電波吸収体を設置していた。このことは導入コストの増大につながる要因の一因となるため、電波吸収板を設置することなく基地局を配置できることが求められている。
【0006】
更に、現在使用されているETCは隣接したキャリアとの周波数間隔が10MHzで配置されている。しかし、狭域通信システム標準規格ARIB STD−T75では周波数間隔を5MHzと規定している。そのため、隣接したキャリアからの電波干渉を受けやすくなり、通信エラーが発生率を高める要因の一因となる。
【0007】
ところで、DSRCでは路側に設置された基地局と高速移動する車両に搭載された移動局との間で通信を行うため、無線データの送受信が行える時間は非常に短い。そのため、通信可能な領域の領域端のように通信エラーが多く発生する領域で無線データの通信を開始すると再送処理に時間がかかってしまい、却って送受信を行える無線データの量を低下させてしまう。そのため、受信状態の良い通信領域を把握し、通信エラーの発生しない領域で通信を開始することが望ましい。
【0008】
以上のように今後DSRC通信方式を用いたサービスの普及に向けては、高いスループットで安定した通信を行うために、ASK/QPSK変調方式に対応し、フェージングや隣接したキャリア間の電波干渉といった伝播特性の変化に影響を受けにくく、安定した通信が行える通信領域で通信を開始することができる狭域通信システムが求められている。
【0009】
安定した通信が行える通信領域を判断し、通信を開始する狭域通信システムとしては、従来からいくつか提案されている。その一つとして、特許文献1によれば、車載器が通信を開始するかどうかを路側器から送信される通信制御情報に加え、受信強度を監視することで通信路が安定しているかどうかを判断する。すなわち、受信強度がある閾値以上であれば、通信路が十分安定していると判断して通信を開始する。また、特許文献2では、受信強度に加え、ビットエラーレートを計測することで通信品質を把握している。
【特許文献1】特開平11−353586号公報
【特許文献2】特開2002−133481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1によれば、無線通信では受信強度が強くてもフェージングの影響や隣接チャネルの干渉波の影響を受けるので、電波環境としては、これらを含めて考慮しなくてはならない。即ち、受信強度が強くても、伝送特性を変化させる主な要因の一つであるフェージングによって帯域内の周波数特性が一様でなくなり、それが信号の振幅や位相の時間変動として現れ、受信エラーの要因となる。また、隣接チャンネルの送信局が近くに設置してある場合、その漏洩電力により帯域内の信号強度が増大する。これらのことから、受信強度が強い場合でも受信状況としてより良い受信環境であるとは必ずしも限らず、受信状態をより正確に把握するためには、受信強度のみでは不十分であることがわかる。更に、無線通信の送信機/受信機に用いられるRF回路は製造過程で特性や性能にばらつきが生じる。これらのばらつきも受信状態に影響する。しかし、受信強度を監視することのみでは、これら送信機/受信機の性能のばらつきを含めた受信状態を監視することはできない。
【0011】
また、特許文献2によれば、ビットエラーレートを計測するにはデータ通信中の定型データを用いなければならない。更には、その計測には多量なビットデータを必要とする。10−5のビットエラーの計測を十分な精度で行うには、10ビット以上のビットを使用して算出する必要があり、これはスループットの低下につながる。また、受信データに誤りが発生しない環境での受信状態を詳細に把握することができないという欠点があった。
【0012】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、受信状態を把握するためのパラメータとして、受信強度以外に変調精度や変調指数を示すパラメータを使用し、より詳細に受信状態を把握することで、エラーの発生が少ない最適な通信領域で通信を開始できる無線通信移動局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記問題点を解決するために、本発明の無線通信移動局は、基地局と移動局間で無線データを送受信する無線通信システムであって、基地局からの無線データを復調する復調手段と、この復調手段による復調処理により得られた無線伝搬特性を示す受信状態パラメータを算出する算出手段と、受信状態パラメータを所定の閾値と比較する受信状態比較手段と、受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断する判断手段とを有することに特徴がある。よって、受信状態を把握するためのパラメータとして、受信強度以外に受信状態パラメータを算出して使用するため、より詳細に受信状態を把握することで、エラーの発生が少ない最適な通信領域で通信を開始することができる。
【0014】
また、基地局から送信された無線データの受信レベルを検出する受信強度検出手段と、該受信強度検出手段より得られた受信レベルを所定の閾値と比較する受信強度比較手段とを有し、判断手段は、受信強度比較手段における比較結果と、受信状態比較手段における比較結果とに基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断する。よって、受信状態を把握するためのパラメータとして、受信状態パラメータとともに受信強度も併せて使用するため、より詳細に受信状態を把握することができ、エラーの発生が少ない最適な通信領域で通信を開始することができる。
【0015】
更に、復調手段は、受信ベクトルと判定ベクトルとの差であるエラーベクトルから変調精度値を算出する変調精度算出手段を備えている。
【0016】
また、受信状態比較手段は変調精度算出手段により算出された変調精度値を受信状態パラメータの1つとして所定の閾値と比較し、判断手段は受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断する。よって、変調精度は復調状態をより詳細に表す指標であり、これをパラメータして使用することで、より的確に受信状態を把握することができるため、より的確にエラーの発生が少ない最適な通信領域を把握することができる。
【0017】
更に、基地局から送信された無線データの変調方式がQPSK信号であった場合に、復調手段は、受信した現シンボルと1シンボル前のシンボルとの位相回転量を求め、受信回転量と判定回転量との差から受信回転誤差を算出する受信回転誤差算出手段を備えている。一般的にQPSK変調方式を用いた移動体通信では、受信した現シンボルと1シンボル前のシンボルとの位相回転量により復調を行う遅延検波方式が用いられることが多い。これは同期検波方式よりも遅延検波方式の方がフェージングなど振幅変動に強いためである。同期検波方式で復調する場合には受信ベクトルと判定ベクトルとの差から復調するため、変調精度を算出し受信状態を把握するためのパラメータとすることは大変有効である。しかし遅延検波方式では、シンボル間の位相回転量により復調が行われるため、受信回転量と判定回転量との差から算出される受信回転誤差の方が受信状態を把握するパラメータとして適している。一般に受信回転誤差算出は受信(復調)処理には必要ないため、本発明のように別途受信回転誤差算出手段を設ける。かかる発明によれば、復調手段は、受信した現シンボルと1シンボル前のシンボルとの位相回転量を求め、受信回転量と判定回転量との差から受信回転誤差を算出する受信回転誤差算出手段を備えるので、受信(復調)処理においても受信回転誤差を算出することができる。
【0018】
また、受信状態比較手段は受信回転誤差算出手段により算出された受信回転誤差値を受信状態パラメータの1つとして所定の閾値と比較し、判断手段は受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断する。受信回転誤差は復調状態をより詳細に表す指標であり、これをパラメータして使用することで、より的確に受信状態を把握することができるため、より的確にエラーの発生が少ない最適な通信領域を把握することができる。
【0019】
更に、基地局から送信された無線データの変調方式がASK信号であった場合に、復調手段は、変調信号の最大値及び最小値によって変調指数を算出する変調指数算出手段を備えている。一般に変調指数算出は受信(復調)処理には必要ないため、本発明のように別途変調指数算出手段を設ける。かかる発明によれば、復調手段は、最大値及び最小値によって与えられる変調指数を算出する変調指数算出手段を備えるので、受信(復調)処理においても変調指数を算出することができる。
【0020】
また、受信状態比較手段は変調指数算出手段により算出された変調指数値を受信状態パラメータの1つとして所定の閾値と比較し、判断手段は受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断する。狭域通信システム標準規格で規定されているASK変調方式はスプリットフェーズ符号を用いているので、復調処理はIチャネル、Qチャネルそれぞれのパワー演算(I+Q)を行った後、前シンボルパワーとの大小比較で行う。そのため変調指数はASK信号の復調状態をより詳細に表す指標であり、これをパラメータして使用することで、より的確に受信状態を把握することができるため、より的確にエラーの発生が少ない最適な通信領域を把握することができる。
【0021】
更に、受信状態パラメータは、受信シンボル毎に算出した値を、受信フレーム毎にフレーム内の全シンボルで平均したシンボルあたりの受信状態パラメータ値の平均値とすることが好ましい。
【0022】
また、受信状態比較手段は、受信シンボル毎に算出した値を、受信フレーム毎にフレーム内の予め設定された所定シンボル数で平均したシンボルあたりの受信状態パラメータ値の平均値とし、受信中の受信フレームが前記所定シンボル数よりも長いフレームで、かつ受信中の受信フレームの算出された前記受信状態パラメータの1つとして所定の閾値と比較し、前記判断手段が前記受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答しない通信領域であると判定された場合に、受信中の受信フレームの受信処理を中断する。よって、安定して通信が行える領域外での受信処理を最低限に抑えることができ、消費電力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、受信状態を把握するためのパラメータとして、受信強度以外に変調精度や変調指数を示すパラメータを使用し、より詳細に受信状態を把握することで、エラーの発生が少ない最適な通信領域で通信を開始できる無線通信移動局を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明に係る無線通信移動局の構成例を示すブロック図である。なお、狭域通信の受信機ブロックのみを示しており、その他機能については省略してある。本発明に係る無線通信移動局の受信機10は、RF部11、受信強度検出部12、ASK受信機13、π/4 shift QPSK受信機14、受信状態比較部15及び判断部16を含んで構成されている。そして、RF部11は無線信号を受信し、受信強度検出部12はRF部11により受信した無線データの受信強度を算出する。また、ASK受信機13は、ASK信号のフレームを検出する同期検出部13−1と、受信したASK信号の無線データを復調する復調部13−2とを含んで構成されている。更に、π/4 shift QPSK受信機14は、π/4 shift QPSK信号のフレームを検出する同期検出部14−1と、キャリア周波数の検出及び補正を行う周波数誤差補正部14−2と、受信したπ/4 shift QPSK信号の無線データを復調する復調部14−3とを含んで構成されている。また、受信状態比較部15は、データリンク層とアプリケーション層を表す上位層にある、受信状態パラメータと所定の閾値とを比較する。更に、判断部16は、受信状態比較部15による比較結果に基づいて基地局との通信を開始するかどうかを判断する。この例においては、受信状態比較部15及び判断部16は上位層にあるが、もちろん物理層で受信状態の比較を行ってもよい。
【0025】
次に、図1に示す本発明に係る無線通信移動局の受信機の概略動作について説明する。RF部11で受信した無線信号がASK信号であった場合にはASK受信機13の同期検出部13−1でASK信号が検出され、復調部13−2で受信データに復調される。この復調処理を行うときに、無線伝搬特性を示す受信状態パラメータを計算する。また、RF部11で受信した無線信号がπ/4 shift QPSK信号であった場合にはπ/4 shift QPSK受信機14の同期検出部14−1でπ/4 shift QPSK信号が検出され、周波数誤差補正部14−2により周波数を補正した後、復調部14−3で受信データに復調される。この復調処理を行うときに、無線伝搬特性を示す受信状態パラメータを計算する。それぞれの復調部13−2,14−3で算出された受信状態パラメータは、上位層へ通知される。上位層では、受信状態比較部15で通知された受信状態パラメータと所定の閾値とを比較し、判断部16で受信状態比較部15の比較結果と受信したデータフレームの内容を解析した結果により、基地局との通信を開始するかどうかを判断する。また、このときに受信状態パラメータに加え、受信強度検出部12で算出された受信強度と受信したデータフレームの内容を解析した結果で、判断部16は基地局との通信を開始するかどうかを判断する。例えば、受信強度はある所定の受信レベル以上であるが、受信状態パラメータが所定の閾値以下の時には通信を開始しない制御を行うことにより安定した通信を確保することができる。
【0026】
図1におけるπ/4 shift QPSK受信機14の復調部14−3ではIチャネル、Qチャネルごとに信号成分の判定するデマップ処理を行う。図2はπ/4 shift QPSK変調方式における極座標を示す図である。エラーベクトルは、理想シンボルと測定シンボルとのベクトル差であり、振幅成分と位相成分を含む複素量である。つまり、エラーベクトルは、理想シンボルを取ったあとに残る残留ノイズと歪みであるといえる。変調精度を算出するシンボル数をSとすると変調精度は次の式(1)で得られる。
【0027】
【数1】

【0028】
なお、この変調精度は、受信信号に上記式(1)をそのまま使用して算出しても良いし、測定シンボルのDCオフセットや周波数オフセット等を補正した後の受信信号を用いて上記式(1)により算出しても良い。
【0029】
図3はπ/4 shift QPSKを受信したときの変調精度とSNRとの関係の一例を示す特性図である。同図からわかるように、SNRは高く良好な受信状態になると変調精度値は低くなっていく。ここでは、閾値を図3の閾値Aの位置に設定した。この閾値Aよりも受信した無線データの変調精度が低かった場合には通信エラーが発生しない通信が安定している状態であるので通信を開始する。一方、閾値Aよりも受信した無線データの変調精度が高かった場合には通信エラーが発生しやすいので基地局からの通信に応答しない。
【0030】
π/4 shift QPSK変調方式において、受信した現シンボルと1シンボル前のシンボルとの位相回転量は以下の式で求まる。
【0031】
Rot(k)=R(k)*R(k-1)
=(ikik-1+qkqk-1)+j(qkik-1−ikqk-1)
=exp{jk−θk-1)}
【0032】
ここで、iはIチャネルのデータ、qはQチャネルのデータ、kはシンボル番号、は複素共役を示す。また、exp[jθk]=ik+jqkの関係が成り立つ。
【0033】
図4は受信回転量と判定回転量、受信回転誤差の関係を表した極座標を示す図である。π/4 shift QPSK変調での位相回転量は、±π/4、±3π/4と規定されている。受信回転誤差は、判定回転量と受信回転量とのベクトル差とする。受信回転誤差を算出するシンボル数をSとすると変調制度は次の式(2)で得られる。
【0034】
【数2】

【0035】
なお、この受信回転誤差は、受信信号に上記式(1)をそのまま使用して算出しても良いし、測定シンボルのDCオフセットや周波数オフセット等を補正した後の受信信号を用いて上記式(1)により算出しても良い。
【0036】
図5はπ/4 shift QPSKを受信したときの受信回転誤差とSNRとの関係の一例を示す特性図である。同図からわかるように、SNRは高く良好な受信状態になると受信回転誤差値は低くなっていく。ここでは、閾値を図5の閾値Bの位置に設定した。この閾値Bよりも受信した無線データの受信回転誤差が低かった場合には通信エラーが発生しない通信が安定している状態であるので通信を開始する。一方、閾値Bよりも受信した無線データの受信回転誤差が高かった場合には通信エラーが発生しやすいので基地局からの通信に応答しない。
【0037】
次に、ASK変調方式において、変調指数は以下の式(3)で求まる。
【0038】
【数3】

【0039】
図6は式(3)のVmaxとVminを示す図である。図7はASKを受信したときの変調指数とSNRとの関係の一例を示す特性図である。両図からわかるように、SNRは高く良好な受信状態になると変調指数値は高くなっていく。ここでは、閾値を図7の閾値Cの位置に設定した。この閾値Cよりも受信した無線データの変調指数が高かった場合には通信エラーが発生しない通信が安定している状態であるので通信を開始する。一方、閾値Cよりも受信した無線データの変調指数が低かった場合には通信エラーが発生しやすいので基地局からの通信に応答しない。
【0040】
また、上述の式(1)、式(2)、式(3)において、シンボル数Sを受信フレームの全シンボル数と設定する。更に、上述の式(1)において、シンボル数Sを10と設定すると、変調精度は次の式(4)のようになる。
【0041】
【数4】

【0042】
ここで、受信したフレームが10シンボルよりも大きいシンボル数をもつフレームであった場合に、受信中に変調精度が算出され、その結果が所定の閾値よりも高く、通信エラーが発生しやすいと判断できるならば、受信フレームの残り時間は受信処理を行わない。また、受信状態パラメータは、受信シンボル毎に算出した値を、受信フレーム毎にフレーム内の全シンボルで平均したシンボルあたりの受信状態パラメータ値の平均値とする。
【0043】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る無線通信移動局の構成例を示すブロック図である。
【図2】π/4 shift QPSK変調方式における極座標を示す図である。
【図3】π/4 shift QPSKを受信したときの変調精度とSNRとの関係の一例を示す特性図である。
【図4】受信回転量と判定回転量、受信回転誤差の関係を表した極座標を示す図である。
【図5】π/4 shift QPSKを受信したときの受信回転誤差とSNRとの関係の一例を示す特性図である。
【図6】式(3)のVmaxとVminを示す図である。
【図7】ASKを受信したときの変調指数とSNRとの関係の一例を示す特性図である。
【符号の説明】
【0045】
10;受信機、11;RF部、12;受信強度検出部、
13;ASK受信機、13−1,14−1;同期検出部、
13−2,14−3;復調部、14;π/4 shift QPSK受信機、
14−2;周波数誤差補正部、15;受信状態比較部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と移動局間で無線データを送受信する無線通信システムであって、
前記基地局からの無線データを復調する復調手段と、
該復調手段による復調処理により得られた無線伝搬特性を示す受信状態パラメータを算出する算出手段と、
前記受信状態パラメータを所定の閾値と比較する受信状態比較手段と、
前記受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断する判断手段と
を有することを特徴とする無線通信移動局。
【請求項2】
基地局から送信された無線データの受信レベルを検出する受信強度検出手段と、該受信強度検出手段より得られた受信レベルを所定の閾値と比較する受信強度比較手段とを有し、
前記判断手段は、前記受信強度比較手段における比較結果と、前記受信状態比較手段における比較結果とに基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断することを特徴とする請求項1に記載の無線通信移動局。
【請求項3】
前記復調手段は、受信ベクトルと判定ベクトルとの差であるエラーベクトルから変調精度値を算出する変調精度算出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信移動局。
【請求項4】
前記受信状態比較手段は前記変調精度算出手段により算出された変調精度値を前記受信状態パラメータの1つとして所定の閾値と比較し、前記判断手段は前記受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断することを特徴とする請求項1又は3のいずれか1項に記載の無線通信移動局。
【請求項5】
基地局から送信された無線データの変調方式がQPSK信号であった場合に、前記復調手段は、受信した現シンボルと1シンボル前のシンボルとの位相回転量を求め、受信回転量と判定回転量との差から受信回転誤差を算出する受信回転誤差算出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信移動局。
【請求項6】
前記受信状態比較手段は前記受信回転誤差算出手段により算出された受信回転誤差値を前記受信状態パラメータの1つとして所定の閾値と比較し、前記判断手段は前記受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断することを特徴とする請求項1又は5に記載の無線通信移動局。
【請求項7】
基地局から送信された無線データの変調方式がASK信号であった場合に、前記復調手段は、変調信号の最大値及び最小値によって変調指数を算出する変調指数算出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信移動局。
【請求項8】
前記受信状態比較手段は前記変調指数算出手段により算出された変調指数値を前記受信状態パラメータの1つとして所定の閾値と比較し、前記判断手段は前記受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答するかしないかを判断することを特徴とする請求項7に記載の無線通信移動局。
【請求項9】
前記受信状態パラメータは、受信シンボル毎に算出した値を、受信フレーム毎にフレーム内の全シンボルで平均したシンボルあたりの受信状態パラメータ値の平均値とすることを特徴とする請求項1、3、5又は7のいずれか1項に記載の無線通信移動局。
【請求項10】
前記受信状態比較手段は、受信シンボル毎に算出した値を、受信フレーム毎にフレーム内の予め設定された所定シンボル数で平均したシンボルあたりの受信状態パラメータ値の平均値とし、受信中の受信フレームが前記所定シンボル数よりも長いフレームで、かつ受信中の受信フレームの算出された前記受信状態パラメータの1つとして所定の閾値と比較し、前記判断手段が前記受信状態比較手段における比較結果に基づいて基地局からの通信に応答しない通信領域であると判定された場合に、受信中の受信フレームの受信処理を中断することを特徴とする請求項1、3、5又は7のいずれか1項に記載の無線通信移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−131317(P2008−131317A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313698(P2006−313698)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】