説明

無線通信装置および通信制御方法

【課題】路側機から大容量のデータを受信する場合において、ユーザに不快感を与えることなく、当該データの受信が完了するまでの時間が長くなってしまう可能性を低減することができるようにすることが可能な「無線通信装置および通信制御方法」を提供する。
【解決手段】車両が停止しており、かつ、DSRC路側機140との間でDSRC通信方式による無線通信を行っている場合、車両の移動開始が検出されたとき、携帯電話通信方式による無線通信への接続切り替えを開始することにより、DSRC通信方式による無線通信の受信電界強度を低下させる外的要因となる車両の移動開始が発生した場合に、実際に受信電界強度の低下が現れる前に、DSRC通信方式の無線通信による通信可能範囲外でもデータ通信することが可能な携帯電話通信方式による無線通信への接続切り替えが前もって行われるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および通信制御方法に関し、特に、車両に搭載され、路側機との間でDSRC通信方式によりデータ通信を行うことが可能な無線通信装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路側に設置された路側機と車両に搭載された無線通信装置との間で無線通信を行う際に用いられる通信方式には、DSRC(Dedicated Short Range Communication)と呼ばれるものがある。このDSRCは、ETC(Electronic Toll Collection Systems)やITS(Intelligent Transport Systems)向けに標準化が進められた狭域の無線通信方式である。DSRCは、通信可能な距離が数メートル〜数十メートルと短いが、通信可能範囲をあえて狭くすることで、特定のスポット内での高速な通信(4Mbps程度)を実現している。ITSにおいては、例えば、DSRCによるデータ通信を利用して、サービスエリアやパーキングエリアに設置された路側機から、当該路側機の通信可能範囲に進入した車両に対して、観光情報、道路交通情報、地域情報またはイベント情報などのデータを送信(プッシュ型配信)することが提案されている。
【0003】
しかし、DSRCの通信可能範囲は狭いため、当該通信可能範囲内において無線通信装置が路側機からデータを受信している最中に、車両の移動により無線通信装置がDSRCの通信可能範囲から外れてしまい、路側機と無線通信装置との間で行われていた大容量のデータ通信が途中で切断されてしまうことがあるという問題があった。
【0004】
路側機と無線通信装置との間でデータ通信が切断された場合、DSRCに代えて、他の通信方式(例えば、携帯電話)で再接続する方法も考えられるが、次のような問題がある。すなわち、他の通信方式で再接続するためのユーザ操作(再接続先の入力操作など)が必要であり、このユーザ操作が煩雑である。それ故、車両の移動中に再接続のための操作をユーザが行うことは、運転への集中が出来なくなって好ましくない。
【0005】
このような問題に対しては、例えば、特許文献1に記載の技術を適用することが考えられる。すなわち、特許文献1に記載の技術では、現在選択している通信方式の受信電界レベルの状況に応じて、他の通信方式の受信電界レベルのサーチを開始することにより、移動通信端末を携帯するユーザの移動等によって、選択している通信方式の電波受信状態の悪化によって受信不可能な状態に陥る前に、自動で他の通信方式に切り替えられるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−297459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、現在の通信方式(狭域の無線通信方式)によるデータ通信の受信電界強度の低下が発生したことを検出してから後追い的に、他の通信方式(広域の無線通信方式)によるデータ通信へ切り替えている。この場合、通信方式を遅れて切り替えた後にデータ受信を最初からやり直す必要があるため、データ受信が完了するまでの時間が長くなってしまう場合があるという問題があった。
【0008】
また、データ通信の受信電界強度が低下してから通信方式を切り替えることにより、当該通信方式の切り替え前から受信状態が悪くなることが考えられる。つまり、データ受信の遅延やデータの欠落などが生じることによって、受信したデータの表示が乱れたり、音声が途切れたり、ノイズが目立ったりすることがあるため、ユーザに不快感を与えるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、路側機から大容量のデータを受信する場合において、当該データの受信が完了するまでの時間が長くなってしまう可能性や受信状態が悪化してしまう可能性を低減することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明では、車両が停止しており、かつ、通信可能範囲が狭域の無線通信によりデータ通信を行っている場合、車両の移動開始が検出されたとき、当該狭域の無線通信から通信可能範囲が広域の無線通信への接続切り替えを開始するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、狭域の無線通信によるデータ通信の受信電界強度を低下させる外的要因となる車両の移動開始が発生した場合に、実際に受信電界強度の低下が現れる前に、狭域の無線通信による通信可能範囲外でもデータ通信することが可能な広域の無線通信への接続切り替えが前もって行われる。よって、車両の移動に伴い受信電界強度が実際に低下してから広域の無線通信に切り替える従来技術と比べて、より早いタイミングで広域の無線通信に切り替えて大容量のデータを受信することができる。さらに、通信方式の切り替え前から受信状態が悪くなることがなくなり、データ受信の遅延やデータの欠落による表示の乱れ等は生じない。これにより、データの受信が完了するまでの時間が長くなってしまう可能性や受信状態が悪化してしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態による無線通信装置を用いた無線通信システムの全体構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による無線通信装置の通信制御動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による無線通信装置180を用いた無線通信システム100の全体構成例を示す図である。図1に示すように、無線通信システム100は、Webサーバ120、DSRC路側機140、携帯電話基地局160、無線通信装置180、モニタ200およびスピーカ220を備えて構成されている。このうち、Webサーバ120は、例えばデータ配信センタに設置されている。DSRC路側機140は、例えば高速道路のサービスエリアやパーキングエリアに設置されている。無線通信装置180、モニタ200およびスピーカ220は、ユーザが運転する車両内部に設置されている。そして、Webサーバ120とDSRC路側機140および携帯電話基地局160との間が有線または無線の通信回線にて接続されている。
【0014】
まず、Webサーバ120の機能構成について説明する。図1に示すように、Webサーバ120は、IPデータ記憶部300、接続先情報記憶部320、IPパケット処理部340および通信部360を備えて構成されている。IPデータ記憶部300は、例えば、HTMLデータまたはXMLデータ等のIPデータを記憶している。具体的には、IPデータは、WWWブラウザで解析可能な画像情報および音声情報を含んで構成され、路側機140が設置されている場所付近にちなんだ観光情報、道路交通情報、地域情報またはイベント情報などを内容としている。
【0015】
接続先情報記憶部320は、無線通信装置180がWebサーバ120を接続先として指定するためのURL(Uniform Resource Locator)を示す接続先情報を記憶する。IPパケット処理部340は、IPデータ記憶部300に記憶されているIPデータと接続先情報記憶部320に記憶されている接続先情報とをIPパケット化し、当該IPパケットを通信部360に出力する。
【0016】
通信部360は、IPパケット処理部340から出力されたIPパケットをDSRC路側機140に送信する。DSRC路側機140は、無線通信装置180との間でDSRC通信方式による無線通信接続の確立処理を行った後に、Webサーバ120に対してIPパケットの送信を要求する。そして、DSRC路側機140は、Webサーバ120から受信したIPパケットの無線通信装置180に対する送信を開始する。
【0017】
また、通信部360は、IPパケット処理部340から出力されたIPパケットを携帯電話基地局160に送信する。携帯電話基地局160は、無線通信装置180との間で携帯電話通信方式による無線通信接続の確立処理を行った後に、Webサーバ120に対してIPパケットの送信を要求する。そして、DSRC路側機140は、Webサーバ120から受信したIPパケットの無線通信装置180に対する送信を開始する。
【0018】
なお、DSRC路側機140は、あらかじめWebサーバ120からIPパケットを受信しておき、無線通信装置180との間でDSRC通信方式による無線通信接続の確立処理を行った後に、当該受信しておいたIPパケットの無線通信装置180に対する送信を開始するようにしても良い。また、携帯電話基地局160は、あらかじめWebサーバ120からIPパケットを受信しておき、無線通信装置180との間で携帯電話通信方式による無線通信接続の確立処理を行った後に、当該受信しておいたIPパケットの無線通信装置180に対する送信を開始するようにしても良い。
【0019】
次に、無線通信装置180の機能構成について説明する。図1に示すように、無線通信装置180は、狭域無線通信部400、広域無線通信部420、データデコーダ440、接続先情報記憶部460、WWWブラウザ480、OSD(On Screen Display)表示処理部500、音声処理部520、パーキングブレーキ制動検出部540、パーキングブレーキ制動解除検知部560、移動開始検出部580および接続切り替え制御部600を備えて構成されている。
【0020】
狭域無線通信部400は、DSRC路側機140との間でDSRC通信方式による無線通信(狭域の無線通信)を行う。具体的には、狭域無線通信部400は、DSRC路側機140の通信可能範囲に車両(無線通信装置180)が進入することによって、DSRC路側機140との間でDSRC通信方式による無線通信接続の確立処理を行う。そして、狭域無線通信部400は、確立処理が完了した後に、DSRC路側機140を介して、Webサーバ120から送信されたIPパケットの受信を開始する。狭域無線通信部400は、逐次受信したIPパケットをデータデコーダ440に出力する。
【0021】
また、狭域無線通信部400は、車両がDSRC路側機140の通信可能範囲の外に移動することによって、DSRC路側機140との間における無線通信接続の解除処理を行う。この場合、狭域無線通信部400は、無線通信接続の解除処理を行った旨を接続切り替え制御部600に通知する。
【0022】
また、狭域無線通信部400は、DSRC路側機140との間における無線通信接続の解除処理を行うことを要求する解除要求信号を接続切り替え制御部600から受けて、DSRC路側機140との間でDSRC通信方式による無線通信接続の解除処理を行う。この場合、狭域無線通信部400は、無線通信接続の解除処理を行った旨を接続切り替え制御部600に通知する。
【0023】
広域無線通信部420は、携帯電話基地局160との間で携帯電話通信方式による無線通信(広域の無線通信)を行う。具体的には、広域無線通信部420は、携帯電話基地局160との間で携帯電話通信方式による無線通信接続の確立処理を行うことを要求する接続要求信号を接続切り替え制御部600から受けて、携帯電話基地局160との間で携帯電話通信方式による無線通信接続の確立処理を行う。この場合、広域無線通信部420は、無線通信接続の確立処理を行った旨を接続切り替え制御部600に通知する。
【0024】
広域無線通信部420は、確立処理が完了した後に、接続先情報記憶部460に記憶されている接続先情報を用いて、Web120にアクセスを行う。そして、広域無線通信部420は、携帯電話基地局160を介して、Web120から送信されたIPパケットの受信を開始する。広域無線通信部420は、逐次受信したIPパケットをデータデコーダ440に出力する。
【0025】
データデコーダ440は、狭域無線通信部400から出力されたIPパケットを復号し、当該復号により得た接続先情報を接続先情報記憶部460に記憶させるとともに、同じく復号により得たIPデータをWWWブラウザ480に出力する。また、データデコーダ440は、広域無線通信部420から出力されたIPパケットを復号し、当該復号により得たIPデータをWWWブラウザ480に出力する。
【0026】
WWWブラウザ480は、データデコーダ440から出力されたIPデータを解析することによって表示画像を生成する。そして、WWWブラウザ480は、生成した表示画像をOSD表示処理部500に出力する。OSD表示処理部500は、WWWブラウザ480から出力された表示画像をモニタ200に出力する。
【0027】
また、WWWブラウザ480は、データデコーダ440から出力されたIPデータを構成する音声情報を解析することによって音声信号を生成する。そして、WWWブラウザ480は、生成した音声信号を音声処理部520に出力する。音声処理部520は、WWWブラウザ480から出力された音声信号をスピーカ220に出力する。
【0028】
パーキングブレーキ制動検出部540は、図示しない車内LANを介して送られてくるパーキングブレーキの状態を示すパーキングブレーキ状態信号に基づいて、車両のパーキングブレーキの制動(すなわち、車両が停止したこと)を検出する。パーキングブレーキ制動検出部540は、パーキングブレーキの制動を検出した場合、その旨を移動開始検出部580に通知する。
【0029】
パーキングブレーキ制動解除検出部560は、図示しない車内LANを介して送られてくるパーキングブレーキ状態信号に基づいて、パーキングブレーキの制動解除を検出する。パーキングブレーキ制動解除検出部560は、パーキングブレーキの制動解除を検出した場合、その旨を移動開始検出部580に通知する。
【0030】
移動開始検出部580は、パーキングブレーキの制動を検出した旨の通知をパーキングブレーキ制動検出部540から受けた後に、パーキングブレーキの制動解除を検出した旨の通知をパーキングブレーキ制動解除検出部560から受けたことによって、車両の移動開始を検出する。移動開始検出部580は、車両の移動開始を検出した場合、その旨を接続切り替え制御部600に通知する。
【0031】
接続切り替え制御部600は、車両の移動開始を検出した旨の通知を移動開始検出部580から受けて、狭域無線通信部400による無線通信から広域無線通信部420による無線通信への接続切り替えを開始する。具体的には、まず、接続切り替え制御部600は、広域無線通信部420に対して、携帯電話基地局160との間で携帯電話通信方式による無線通信接続の確立処理を行うことを要求する接続要求信号を送信する。次に、接続切り替え制御部600は、確立処理を行った旨の通知を広域無線通信部420から受けて、狭域無線通信部400に対して、DSRC路側機140との間でDSRC通信方式による無線通信接続の解除処理を行うことを要求する解除要求信号を送信する。最後に、接続切り替え制御部600は、解除処理を行った旨の通知を狭域無線通信部400から受ける。
【0032】
次に、本実施形態の無線通信装置180の通信制御動作について説明する。図2は、本実施形態の無線通信装置180の通信制御動作例を示すフローチャートである。図2におけるステップS100の処理は、例えば、DSRC路側機140の通信可能範囲に車両(無線通信装置180)が進入することによって開始する。
【0033】
まず、狭域無線通信部400は、DSRC路側機140との間でDSRC通信方式による無線通信接続の確立処理を行う(ステップS100)。次に、狭域無線通信部400は、DSRC路側機140を介して、Webサーバ120から送信されたIPパケットの受信を開始する(ステップS120)。ここで、狭域無線通信部400は、逐次受信したIPパケットをデータデコーダ440に出力する。
【0034】
次に、データデコーダ440は、狭域無線通信部400から出力されたIPパケットを復号し、当該復号により得た接続先情報を接続先情報記憶部460に記憶させる(ステップS140)。一方、復号により得たIPデータについては、逐次WWWブラウザ480に出力する。なお、データデコーダ440は、IPパケットの受信が開始した後に1回だけ、接続先情報を記憶させれば良い。
【0035】
次に、移動開始検出部580は、パーキングブレーキの制動を検出した旨の通知をパーキングブレーキ制動検出部540から受けたか否か(すなわち、車両が停止したか否か)について判定する(ステップS160)。もし、パーキングブレーキの制動を検出した旨の通知を受けていないと移動開始検出部580にて判定した場合(ステップS160にてNO)、接続切り替え制御部600は、狭域無線通信部400から送られてくる接続解除の通知の有無に基づいて、DSRC路側機140との間における無線通信接続の解除処理が行われたか否か(すなわち、DSRC路側機140の通信可能範囲外に車両が移動したか否か)について判定する(ステップS180)。
【0036】
もし、無線通信接続の解除処理が行われていないと接続切り替え制御部600にて判定した場合(ステップS180にてNO)、処理はステップS160に遷移する。一方、無線通信接続の解除処理が行われたと接続切り替え制御部600にて判定した場合(ステップS180にてYES)、無線通信装置180は図2における処理を終了する。
【0037】
一方、パーキングブレーキの制動を検出した旨の通知を受けたと移動開始検出部580にて判定した場合(ステップS160にてYES)、移動開始検出部580は、パーキングブレーキの制動解除を検出した旨の通知をパーキングブレーキ制動解除検出部560から受けたか否か(すなわち、車両が移動を開始したか否か)について判定する(ステップS200)。もし、パーキングブレーキの制動解除を検出した旨の通知を受けていないと移動開始検出部580にて判定した場合(ステップS200にてNO)、無線通信装置180は、ユーザによる電源オフ操作が行なわれたか否かについて判定する(ステップS220)。
【0038】
もし、電源オフ操作が行なわれていないと無線通信装置180にて判定した場合(ステップS220にてNO)、処理はステップS200に遷移する。一方、電源オフ操作が行なわれたと無線通信装置180にて判定した場合(ステップS220にてYES)、無線通信装置180は図2における処理を終了する。
【0039】
一方、パーキングブレーキの制動解除を検出した旨の通知をパーキングブレーキ制動解除検出部560から受けたと移動開始検出部580にて判定した場合(ステップS200にてYES)、接続切り替え制御部600は、広域無線通信部420に対して、携帯電話基地局160との間で携帯電話通信方式による無線通信接続の確立処理を行うことを要求する接続要求信号を送信する(ステップS240)。次に、広域無線通信部420は、接続切り替え制御部600からの接続要求信号を受けて、携帯電話基地局160との間で携帯電話通信方式による無線通信接続の確立処理を行う(ステップS260)。広域無線通信部420は、無線通信接続の確立処理を行った旨を接続切り替え制御部600に通知する。
【0040】
次に、広域無線通信部420は、接続先情報記憶部460に記憶されている接続先情報を用いて、Web120にアクセスを行い、携帯電話基地局160を介してWeb120から送信されたIPパケットの受信を開始する(ステップS280)。次に、接続切り替え制御部600は、確立処理を行った旨の通知を広域無線通信部420から受けて、狭域無線通信部400に対して、DSRC路側機140との間でDSRC通信方式による無線通信接続の解除処理を行うことを要求する解除要求信号を送信する(ステップS300)。最後に、狭域無線通信部400は、接続切り替え制御部600からの解除要求信号を受けて、DSRC路側機140との間でDSRC通信方式による無線通信接続の解除処理を行う(ステップS320)。狭域無線通信部400は、無線通信接続の解除処理を行った旨を接続切り替え制御部600に通知する。ステップS320における処理が完了することによって、無線通信装置180は図2における処理を終了する。
【0041】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、車両が停止しており、かつ、DSRC路側機140との間でDSRC通信方式による無線通信を行っている場合、移動開始検出部580により車両の移動開始が検出されたとき、接続切り替え制御部600は、DSRC通信方式による無線通信から携帯電話通信方式による無線通信への接続切り替えを開始するようにしている。
【0042】
このように構成した本実施形態によれば、DSRC通信方式の無線通信によるデータ通信の受信電界強度を低下させる外的要因となる車両の移動開始が発生した場合に、実際に受信電界強度の低下が現れる前に、DSRC通信方式の無線通信による通信可能範囲外でもデータ通信することが可能な携帯電話通信方式の無線通信への接続切り替えが前もって行われる。よって、車両の移動に伴い受信電界強度が実際に低下してから携帯電話通信方式の無線通信に切り替える従来技術と比べて、より早いタイミングで携帯電話通信方式の無線通信に切り替えて大容量のデータを受信することができる。さらに、通信方式の切り替え前から受信状態が悪くなることがなくなり、データ受信の遅延やデータの欠落による表示の乱れ等は生じない。これにより、データの受信が完了するまでの時間が長くなってしまう可能性や受信状態が悪化してしまう可能性を低減することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、パーキングブレーキの制動解除が検出されたことによって、車両の移動開始を検出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、車両の位置を検出する車両位置検出部を備え、車両位置検出部による位置検出結果に基づいて、当該車両の位置が所定時間以上固定した状態から変化を開始した場合、車両の移動開始を検出するようにしても良い。
【0044】
また、車両の速度を検出する車両速度検出部を備え、車両速度検出部による速度検出結果に基づいて、当該車両の速度がゼロの状態からゼロより大きい値に変化した場合、車両の移動開始を検出するようにしても良い。
【0045】
その他、本実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
180 無線通信装置
400 狭域無線通信部
420 広域無線通信部
560 パーキングブレーキ制動解除検出部
580 移動開始検出部
600 接続切り替え制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される無線通信装置であって、
通信可能範囲が狭域の無線通信を行う狭域無線通信部と、
通信可能範囲が広域の無線通信を行う広域無線通信部と、
前記狭域無線通信部による無線通信と前記広域無線通信部による無線通信との接続切り替えを行なうように制御する接続切り替え制御部と、
前記車両の移動開始を検出する移動開始検出部とを備え、
前記接続切り替え制御部は、前記車両が停止しており、かつ、前記狭域無線通信部による無線通信を行っている場合、前記移動開始検出部により前記車両の移動開始が検出されたとき、前記狭域無線通信部による無線通信から前記広域無線通信部による無線通信への接続切り替えを開始することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記車両のパーキングブレーキの制動解除を検出するパーキングブレーキ制動解除検出部を更に備え、
前記移動開始検出部は、前記パーキングブレーキ制動解除検出部により前記パーキングブレーキの制動解除が検出されたことによって、前記車両の移動開始を検出することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記車両の位置を検出する車両位置検出部を更に備え、
前記移動開始検出部は、前記車両位置検出部による位置検出結果に基づいて、前記車両の位置が所定時間以上固定した状態から変化を開始した場合、前記車両の移動開始を検出することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記車両の速度を検出する車両速度検出部を更に備え、
前記移動開始検出部は、前記車両速度検出部による速度検出結果に基づいて、前記車両の速度がゼロの状態からゼロより大きい値に変化した場合、前記車両の移動開始を検出することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
車両に搭載され、通信可能範囲が狭域の無線通信と広域の無線通信との接続切り替えを行うことが可能な無線通信装置における通信制御方法であって、
前記車両が停止しているか否かを判定する第1のステップと、
前記狭域の無線通信を行っているか否かを判定する第2のステップと、
前記第1のステップにより前記車両が停止していると判定され、かつ、前記第2のステップにより前記狭域の無線通信を行っていると判定された場合、前記車両の移動開始を検出する第3のステップと、
前記第3のステップにより前記車両の移動開始が検出されたとき、前記狭域の無線通信から前記広域の無線通信への接続切り替えを開始する第4のステップとを有することを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−268334(P2010−268334A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119492(P2009−119492)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】